説明

電磁石装置及びシムコイルの製造方法

【課題】外乱磁場を打ち消すような補正磁場を発生できるシムコイルを備えた電磁石装置を提供する。
【解決手段】互いに中心軸が一致する複数の静磁場コイルを有し、中心軸に平行な方向の静磁場を均一磁場領域に発生させる電磁石装置において、均一磁場領域に生じる中心軸に略垂直な方向の内の静磁場コイルの任意の半径方向の磁場を、打ち消せる磁場を発生させ、均一磁場領域における磁場の均一性を向上させる複数(No.1〜6)のシムコイル1を有する。静磁場コイルは超伝導コイルであり、シムコイル1は超伝導コイルを有し、これらの超伝導コイルの超伝導状態における磁束保存を利用して受動的に外部由来の誤差磁場を打ち消す。静磁場コイルとシムコイル1の超伝導コイルは、永久電流モードで運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静磁場を発生させる静磁場コイルとその静磁場の均一性を向上させるシムコイルとを有する電磁石装置と、そのシムコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁石装置は、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置等で用いられている。MRI装置に用いられる電磁石装置では、静磁場を発生させる静磁場コイルとして、超伝導コイルが用いられている。超伝導コイルに永久電流モードで通電している場合、その内部の磁束は保存され、静磁場の磁場強度を時間的に一定に保つことができる。また、MRI装置に用いられる電磁石装置では、シムコイルを有するものが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。シムコイルは、その時間的に一定な静磁場の空間的な均一性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−28107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁石装置は、粒子保持機にも用いられている。粒子保持機は、イオン等の荷電粒子をループ軌道上に運動させることでその荷電粒子を保持することができる。そして、荷電粒子を保持することで、その荷電粒子の寿命等を測定することができる。粒子保持機に用いられる電磁石装置でも、静磁場を発生させる静磁場コイルとして、超伝導コイルが用いられている。これにより、静磁場の磁場強度を時間的に一定に保つことができ、荷電粒子のループ軌道を安定させることができる。
【0005】
しかし、このループ軌道が不安定になる場合があった。この場合を詳細に検討してみると、静磁場コイルによって発生させている静磁場の方向と垂直な方向の磁場が、電磁石装置の外部から外乱磁場として、ループ軌道上に入り込み、ループ軌道を乱すことがわかった。静磁場コイルである超伝導コイルに永久電流モードで通電している場合、その超伝導コイルをくぐる磁束は保存され、静磁場の磁場強度を時間的に一定に保つが、超伝導コイルをくぐってこない外乱磁場による磁束は、ループ軌道上に入り込むと考えられた。そして、このような外乱磁場を打ち消すような補正磁場を発生できれば、ループ軌道を安定させることができると考えられた。
【0006】
ただ、外乱磁場は、いつ発生するかわからず(時間的に不定であり)、その大きさもその方向もまちまちである。そこで、このような外乱磁場であっても打ち消すことができる補正磁場を発生できるシムコイルを有する電磁石装置があれば有用である。そして、このようなシムコイルを製造することができる製造方法があれば有用である。さらに、そのシムコイルの製造方法によって、時間的に不定の外乱磁場を打ち消し静磁場の空間的な均一性を向上させるシムコイルだけでなく、時間的に一定の静磁場に対して時間的に一定の補正磁場を発生させ静磁場の空間的な均一性を向上させるシムコイルも製造できれば、一層有用である。
【0007】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、外乱磁場を打ち消すような補正磁場を発生できるシムコイルを備えた電磁石装置を提供することであり、また、そのようなシムコイルを含め静磁場の均一性を向上できるシムコイルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、
互いに中心軸が一致する複数の静磁場コイルを有し、前記中心軸に平行な方向の静磁場を発生させる電磁石装置において、
前記中心軸に略垂直な方向の内の前記静磁場コイルの任意の半径方向の磁場を、打ち消せる磁場を発生させ、前記静磁場の均一性を向上させる複数のシムコイルを有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、
互いに中心軸が一致し前記中心軸に平行な方向の静磁場を発生させる複数の静磁場コイルの近傍に、前記静磁場の均一性を向上させる複数のシムコイルを配置する電流面と、前記静磁場を囲むように磁場評価面とを設け、
前記磁場評価面上の評価点毎に、大きさが前記磁場評価面内で均一である目標磁場を設定し、
前記電流面上の接点の電流ポテンシャル値を要素に持つ電流ポテンシャルベクトルによって、前記評価点に生じる磁場を要素に持つ磁場ベクトルが求められる応答行列を取得し、
前記応答行列を特異値分解し、特異値の大きい順に複数の前記電流ポテンシャルベクトルの固有ベクトルを取得し、
複数の前記固有ベクトルに基づいて、前記固有ベクトル毎に前記電流面上における前記電流ポテンシャル値の等高線を取得するシムコイルの製造方法であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外乱磁場を打ち消すような補正磁場を発生できるシムコイルを備えた電磁石装置を提供できる。また、そのようなシムコイルを含め静磁場の均一性を向上できるシムコイルの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電磁石装置に用いられる複数のシムコイルそれぞれの展開図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電磁石装置を備えた粒子保持機の縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電磁石装置に複数のシムコイルを配置する配置方法のフローチャートである。
【図4】複数のシムコイルの配置方法で使用する計算体系(電流面と磁場評価面)の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る電磁石装置を備えたMRI装置の縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る電磁石装置を備えたMRI装置の縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る電磁石装置に用いられる複数のシムコイルそれぞれの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図2に、本発明の第1の実施形態に係る電磁石装置2を備えた粒子保持機11の縦断面図を示す。粒子保持機11は、円筒形状の電磁石装置2と、電磁石装置2の円筒内に差し込まれている円柱形状の真空ダクト3を有している。粒子保持機11は、イオン等の荷電粒子をループ軌道5上に運動させることで、その荷電粒子を保持することができる。そして、荷電粒子を保持することで、その荷電粒子の寿命等を測定することができる。
【0014】
電磁石装置2は、互いに中心軸10(Z軸)が一致する環形状の複数(図2の例では4個)の静磁場コイル2aを有している。複数の静磁場コイル2aは、中心軸10(Z軸)の方向に並べられている。これら複数の静磁場コイル2aは、中心軸10に平行な方向の静磁場7を、真空ダクト3内に発生させる。中心軸10(Z軸)が鉛直方向に平行になるように、電磁石装置2(粒子保持機11)は、設置されている。
【0015】
静磁場コイル2aには、超伝導コイルを利用することが多く、その場合、3層構造の容器内に収納されている。まず、静磁場コイル2aは、冷媒の液体ヘリウム(He)と共に冷媒容器2e内に収容されている。冷媒容器2eは内部への熱輻射を遮断する熱輻射シールド2dに内包されている。そして、真空容器2cは、冷媒容器2e及び熱輻射シールド2dを収容しつつ、自身の内部を真空に保持している。真空容器2cは、普通の室温の室内に配置されても、真空容器2c内が真空になっているので、室内の熱が伝導や対流で、冷媒容器2eに伝わることはない。また、熱輻射シールド2dは、室内の熱が輻射によって真空容器2cから冷媒容器2eに伝わることを抑制している。このため、静磁場コイル2aは、冷媒の温度である極低温に安定して設定することができ、超伝導電磁石として機能することができる。
【0016】
電磁石装置2は、複数のシムコイル1を有している。複数のシムコイル1は、冷媒容器2eの内部で、静磁場コイル2aの径方向の外側に設けられる電流面4a上に配置することができる。また、複数のシムコイル1は、冷媒容器2eの内部で、静磁場コイル2aの径方向の内側に設けられる電流面4b上に配置してもよい。また、静磁場コイル2aと同じ位置に静磁場コイル2aを重ねて重ね巻きにしてもよい。複数のシムコイル1は、真空容器2c(冷媒容器2e)の外部で、静磁場コイル2aの径方向の内側に設けられる電流面4c上に配置してもよい。複数のシムコイル1は、電流面4a、4b、4c上に、分散して配置してもよい。複数のシムコイル1は、中心軸10に略垂直な方向の内の静磁場コイル2aの任意の径方向の磁場を、打ち消せる磁場を発生させ、静磁場7の均一性を向上させることができる。
【0017】
電流面4a、4bに配置され、冷媒容器2eの内部に設けられるシムコイル1には、超伝導コイルを用いることができる。シムコイル1の超伝導コイルを永久電流モードで運転することにより、超伝導コイルの超伝導状態における磁束保存を利用して、受動的に、中心軸10に対して垂直方向の外部由来の誤差磁場を打ち消すことができる。なお、静磁場コイル2aの超伝導コイルも、永久電流モードで運転することにより、超伝導コイルの超伝導状態における磁束保存を利用して、受動的に、中心軸10に対して平行方向の外部由来の誤差磁場を打ち消すことができる。これは、静磁場コイル2aの超伝導コイルのコイル面は、中心軸10に対して平行方向の誤差磁場の磁束と交差し、シムコイル1の超伝導コイルのコイル面は、中心軸10に対して垂直方向の誤差磁場の磁束と交差するからである。
【0018】
図1に、複数(図1の例では6種類)のシムコイル1それぞれの展開図を示す。複数のシムコイル1は、No.1〜6の6種類のシムコイル1を有している。No.1〜6の6種類のシムコイル1はそれぞれ、横軸が円筒状の電流面4a(4b、4c)の周回方向の角度(ラジアン)であり、縦軸が中心軸10の軸方向位置(0.1m単位)である展開面上に、展開されている。軸方向位置の±0.7m(±7.00×0.1m(単位))に描いている横線(直線)は、筒状の電流面4a(4b、4c)、すなわち、No.1〜6の6種類のシムコイル1の中心軸(Z軸)10の方向の両端部を表している。
【0019】
No.1〜6の6種類のシムコイル1は、円筒状の電流面4a(4b、4c)に沿って、互いに重ねられて配置される。No.1〜6の6種類のシムコイル1には、多くの巻き線が存在するが、表示の簡単化のために数十巻きに1巻き程度の割合で簡単化して描いている。また、No.1〜6の6種類のシムコイル1には、受動的配線の場合には、巻き線間を接続する渡り線(もしくは段落とし線)および戻り線が配置され、能動的配線の場合には、さらに、給電線と電源が配置されるが、図示を省略している。シムコイル1は、ドットのハッチングが施されている領域に配置されているものと、白抜きのハッチングが施されている領域に配置されているものとがある。ドットのハッチングが施されている領域に配置されているシムコイル1に、例えば、時計周りの方向に電流が流れるとすると、白抜きのハッチングが施されている領域に配置されているシムコイル1には、反時計周りの方向に電流が流れ、互いの領域で反対方向に電流が流れるようになっている。
【0020】
No.1のシムコイル1は、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とを、周回方向(横軸方向)に1つずつ有している。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、周回方向(横軸方向)に均等に配置されている。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、中心軸10(図2参照)を挟んで対向するように配置されることになり、中心軸10に垂直な補正磁場を発生することができ、同様に垂直な外乱磁場を打ち消すことができる。No.1のシムコイル1は、軸方向(縦軸方向)には、1つのシムコイル1が配置されている。このように、No.1のシムコイル1は、電流面4a(4b、4c)上に2つのシムコイル1を有している。
【0021】
No.2のシムコイル1は、No.1のシムコイル1に対して、周回方向(横軸方向)に、1.57(=3.14/2)ラジアン(90°)回転させた構造をしている。No.2のシムコイル1は、No.1のシムコイル1による補正磁場に対して垂直な方向であり、中心軸10に対しても垂直な方向である補正磁場を発生させることができる。
【0022】
No.3のシムコイル1は、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とを、周回方向(横軸方向)に2つずつ有している。2つの時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、2つの反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、周回方向(横軸方向)に均等にかつ交互に配置(配列)されている。2つの時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1が中心軸10(図2参照)を挟んで対向するように配置され、2つの反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1が中心軸10(図2参照)を挟んで対向するように配置されることになる。No.3のドットのハッチングが施されている領域に配置されている2つのシムコイル1の巻き線の渦の中心の位置(周回方向角度と軸方向位置)は、No.1の2つのシムコイル1の巻き線の渦の中心の位置に一致している。
【0023】
No.3のシムコイル1による補正磁場の磁束は、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1との一方から入って両隣にある他方から出る。このため、中心軸10上では中心軸10に垂直な補正磁場を発生することはできないが、中心軸10から離れた領域では、中心軸10に垂直な補正磁場を発生することができ、同様に垂直な外乱磁場を打ち消すことができる。No.3のシムコイル1は、軸方向(縦軸方向)には、1つのシムコイル1が配置されている。このように、No.3のシムコイル1は、電流面4a(4b、4c)上に4つのシムコイル1を有している。
【0024】
No.4のシムコイル1は、No.3のシムコイル1に対して、周回方向(横軸方向)に、0.78(=3.14/4)ラジアン(45°)回転させた構造をしている。No.4のシムコイル1も、No.3のシムコイル1による補正磁場と同様に、中心軸10から離れた領域で、中心軸10に垂直な補正磁場を発生することができ、同様に垂直な外乱磁場を打ち消すことができる。
【0025】
No.5のシムコイル1は、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とを、周回方向(横軸方向)に1つずつ有している。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、周回方向(横軸方向)に均等に配置されている。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1は、中心軸10(図2参照)を挟んで対向するように配置されている。
【0026】
また、No.5のシムコイル1は、軸方向(縦軸方向)に、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とを、1つずつ有している。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、軸方向(縦方向)に均等に配置されている。No.5のシムコイル1の巻き線の渦の中心に配置される周回方向角度は、No.1の2つのシムコイル1の巻き線の渦の中心の周回方向角度に一致している。このように、No.5のシムコイル1は、電流面4a(4b、4c)上に4つ(=2×2)のシムコイル1を有している。
【0027】
No.5のシムコイル1による補正磁場の磁束は、軸方向に並んでいる時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1との一方から入って他方から出る。このため、中心軸10近傍では中心軸10に平行な補正磁場を発生するが、中心軸10から離れた領域では、中心軸10に垂直な補正磁場を発生することができ、同様に垂直な外乱磁場を打ち消すことができる。
【0028】
No.6のシムコイル1は、No.5のシムコイル1に対して、周回方向(横軸方向)に、1.57(=3.14/2)ラジアン(90°)回転させた構造をしている。No.6のシムコイル1も、No.5のシムコイル1による補正磁場と同様に、中心軸10から離れた領域で、中心軸10に垂直な補正磁場を発生することができ、同様に垂直な外乱磁場を打ち消すことができる。
【0029】
No.1〜6の6種類のシムコイル1はそれぞれ、軸方向位置の0.00m(0.00×0.1m(単位))に描いてある横線(直線)に対して、線対称になっている。
【0030】
図3に、本発明の第1の実施形態に係る電磁石装置2に複数のシムコイル1を配置する配置方法のフローチャートを示す。
【0031】
ステップS1で、汎用のコンピュータ等を用い、計算体系データを作成する。具体的には、まず、シムコイル面と磁場評価面(MFES= Magnetic Field Evaluation Surface)8aを生成(追加)する。シムコイル面とは、シムコイル1を配置する、いわゆる電流面(CCS = Current Carrying Surface)4a(4b、4c)のことであり、例えば、図2に示すような電流面4a〜4cが計算体系として設けられることになる。また、磁場評価面8aとしては、例えば、外乱磁場による磁力線の真空ダクト3内部への侵入経路となりやすい真空ダクト3の側面(電磁石装置2の内周面)に計算体系として設定することで、シールド効果を評価することができる。電流面4a〜4cと、磁場評価面8aは、静磁場コイル2aの近傍に配置され、静磁場コイル2aが作る静磁場7、すなわち、荷電粒子のループ軌道5を、取り囲むように配置される。
【0032】
図4に、設定した計算体系データの電流面4a(4b、4c)と、磁場評価面8aの斜視図を示す。電流面4a(4b、4c)は、任意の断面形状を許容するが、静磁場コイル2a(図2参照)に沿った形状が望ましく、断面形状が円形となる円筒形状に設定している。また、磁場評価面8aは、真空ダクト3(図2参照)の側面に沿った形状が望ましく、円筒形状に設定している。
【0033】
ステップS2で、汎用のコンピュータ等を用い、電流面4a(4b、4c)上にメッシュを形成する。三角形のメッシュの交点(角)を、接点4dとする。また、磁場評価面8a上にも三角形のメッシュを形成する。三角形のメッシュの交点(角)に、磁場評価点8bを形成する。磁場評価点8bは、磁場評価面8aの面上に構成する必要はないが、図4においては、メッシュに切った三角形の頂点に設定している。
【0034】
ステップS3で、汎用のコンピュータ等を用い、図2に示すように、磁場評価点8b毎に、磁場評価面8aの法線方向(半径方向)を向き、大きさが磁場評価面8a内で均一の目標磁場Btgを設定する。
【0035】
図2で、磁場評価面8aで達成すべき目標磁場Btgの概念を説明する。図2では、目標磁場Btgを、磁場評価面8a(磁場評価点8b)を始点とする矢印で表している。目標磁場Btgの矢印の方向は、目標磁場(磁力線)Btgの方向を、矢印の長さは目標磁場Btgの強さを表している。磁場評価面8aでの目標磁場Btgの方向は、中心軸(Z軸)10と垂直に交わる方向(径方向)である。磁場評価面8aでの目標磁場Btgの強さは、磁場評価面8a内で均一になっている。このような径方向に対して均一な目標磁場Btgを、複数のシムコイル1それぞれで形成される磁場の合成磁場として形成できるのであれば、その複数のシムコイル1の中の一部のシムコイル1を用いることで、均一な磁場ではなく、不均一な磁場を形成することができ、その不均一な磁場により、径方向における任意な方向から入射しようとする磁力線(外乱磁場)を打ち消すような、あらゆる方向の補正磁場を形成できると考えられる。そのために、複数のシムコイル1は、それぞれ、独立に閉回路を構成し、シムコイル1毎に異なる大きさで異なる方向の電流を流せるようになっている。
【0036】
ステップS4で、汎用のコンピュータ等を用い、電流面4a(4b、4c)上の接点4dの電流ポテンシャル値を要素に持つ電流ポテンシャルベクトルTによって、磁場評価面8a上の磁場評価点8bに生じる磁場を要素に持つ磁場ベクトルBが求められる応答行列Aを取得する。具体的には、前記計算体系データにおける方程式(1)を構築する。なお、応答行列Aは、磁場評価点8bの数を行数とし、接点4dの数を列数とする行列である。電流ポテンシャルベクトルTは、式(∇T)×n=j(ここで、nは電流面の法線方向の単位ベクトルである)を用いて、その勾配(∇T)から電流密度ベクトルjに換算することができ、電流分布を計算することができる。算出された電流分布から、ビオサバールの式を用いて、磁場ベクトルBを計算できる。そこで、適当な電流ポテンシャルベクトルTに対して、電流密度ベクトルj、電流分布、磁場ベクトルBを順に算出し、適当な電流ポテンシャルベクトルTと算出した磁場ベクトルBの方程式(1)の応答関係を満足するように応答行列Aを決定する。
B=AT ・・・(1)
【0037】
ステップS5で、汎用のコンピュータ等を用い、応答行列Aを特異値分解する。その際には、特異値の大きい順に、複数の電流ポテンシャルベクトルTの固有ベクトルを取得する。複数の特異値λ、λ、λ、λ、λ、λを大きいものから順に取得し(λ≧λ≧λ≧λ≧λ≧λ)、それらに対応する磁場分布(磁場ベクトルB)の複数の固有ベクトルu、u、u、u、u、uと、電流ポテンシャル分布(電流ポテンシャルベクトルT)の複数の固有ベクトルv、v、v、v、v、vを取得する。ここでは、図1にNo.1〜6の6種類のシムコイル1が示されているのに対応して、特異値λ、λ、λ、λ、λ、λと、磁場ベクトルBの固有ベクトルu、u、u、u、u、uと、電流ポテンシャルベクトルTの固有ベクトルv、v、v、v、v、vとを、6個ずつ取得している。
【0038】
磁場ベクトルBの固有ベクトルuと電流ポテンシャルベクトルTの固有ベクトルvと特異値λの間には、式(2)の関係がある。また、特異値λの添え字jは特異値の大きさ順の番号であり、式(2)の関係において対応する固有ベクトルu、vにも同じ番号を付している。すなわち、特異値λと固有ベクトルuと固有ベクトルvとはセットになっている。
λ・u=A・v ・・・(2)
【0039】
ステップS6で、汎用のコンピュータ等を用い、大きさ順に取得している特異値λ、λ、λ、λ、λ、λが、最も大きい第1特異値λの10分の1以上か否かを判定する。大きさ順に取得している特異値λ、λ、λ、λ、λ、λが、最も大きい第1特異値λの10分の1以上であれば(ステップS6、Yes)、その特異値を取得し記憶するとともに、ステップS5へ戻り、次に大きい特異値を取得する。大きさ順に取得している特異値λ、λ、λ、λ、λ、λが、最も大きい第1特異値λの10分の1以上でなければ(ステップS6、No)、その特異値を記憶せずに、ステップS7へ進む。特異値λ、λ、λ、λ、λ、λは単位電流あたりの磁場強度であり、第1番目の特異値λと比較して10分の1以上の特異値λ、λ、λ、λ、λ、λを選択することにより、外乱磁場の内、90%は打ち消し(除去)可能になる。
【0040】
ステップS7で、汎用のコンピュータ等を用い、電流ポテンシャル分布(電流ポテンシャルベクトルT)の固有分布関数(固有ベクトル)v、v、v、v、v、v毎の等高線に、巻き線が沿う複数のシムコイルパターンを取得する。電流ポテンシャルベクトルTの固有ベクトルを、電流面4a(4b、4c)における電流ポテンシャル分布とみて、電流ポテンシャル値の等高線を生成する。等高線は複数本の閉曲線であり、互いにクロスしないように幾重にも配置される。この複数本の等高線に基づいて、シムコイル1のコイルパターンを形成する。固有ベクトルv、v、v、v、v、v毎に、図1に示すように、それぞれに対応するNo.1〜6のシムコイル1のコイルパターンが取得される。
【0041】
ステップS8で、汎用のコンピュータ等を用い、No.1〜6のシムコイル1のコイルパターン上に導体を配置することで、シムコイル1を製作することができる。シムコイル1は、超伝導材で製作しても、常電導材で製作してもよい。シムコイル1は、電源を接続するしないに関わらず、閉回路として使用する。固有ベクトル(電流分布)vの電流面4a(4b、4c)での電流ポテンシャル値の等高線に沿って導体を配置すれば、磁場ベクトルBの固有ベクトルuの分布を磁場評価面8aに持つシムコイル1を構成できる。なお、図1では、巻き線間を結ぶ渡り線や戻り線および電源からの給電線を結ぶ配線の記載は、省略している。以上で、複数(No.1〜6)のシムコイル1を配置する配置方法のフロー(チャート)を終了する。
【0042】
複数(No.1〜6)のシムコイル1によれば、中心軸(Z軸)10と垂直な方向の外乱磁場に対しても静磁場を補正する補正磁場を生成することができる。粒子保持機(研究用加速器)11で、荷電粒子のループ軌道(粒子軌道)5を一定に保つことが要求される場合、粒子軌道に垂直な外乱磁場が入り込むと、粒子軌道は乱れるが、複数(No.1〜6)のシムコイル1によれば、補正磁場を発生し、外乱磁場を打ち消すので、粒子軌道の乱れは少なくできる。特に、複数(No.1〜6)のシムコイル1を超伝導コイルとすれば、外乱磁場の発生を受けて、受動的に外乱磁場を補正する電流を流すことができる。外乱磁場は特定の方向からでは無く、不特定の方向から粒子軌道に入り込む可能性がある。そのために、複数(No.1〜6)のシムコイル1では、互いに配置位置を変えて配置されている。そして、このような複数(No.1〜6)のシムコイル1(シムコイル群)を求める設計手法として、M.Abeらによる非特許文献(M. ABE, T. NAKAYAMA, S. OKAMURA, K. MATSUOKA , “A new technique to optimize coil winding path for the arbitrarily distributed magnetic field and application to a helical confinement system”, Phys. Plasmas. Vol.10 No.4 (2003)1022.)の計算手法を用いることができる。
【0043】
複数(No.1〜6)のシムコイル1に、超伝導コイルを用い、超伝導状態とし、永久電流モードで通電している場合、その内部の磁束は保存され、磁場強度は一定に保たれる。すなわち、粒子軌道上の静磁場の磁場強度は、外乱磁場によらず、一定に保たれる。なお、複数(No.1〜6)のシムコイル1に、常電導コイルを用いてもよい。これによっても、外乱磁場によって、複数(No.1〜6)のシムコイル1に、逆起電力が生じ、電流が流れ、外乱磁場を打ち消す補正磁場を発生させることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図5に、本発明の第2の実施形態に係る電磁石装置2を備えたMRI装置12の縦断面図を示す。MRI装置12と電磁石装置2を、水平軸である中心軸(Z軸)10と鉛直軸であるY軸とを含む平面で切断した縦断面図を、図5に示している。MRI装置12は、被健診者9をベッド6に載せたまま内部の撮像領域8に導入可能な円筒形状の電磁石装置2と、以下、図示は省略したが、導入された被健診者9の生体組織を構成する原子核に核磁気共鳴を起こさせるために高周波信号を照射する照射コイル(図示省略)と、被健診者9から発せられる各々の磁気共鳴信号に位置情報を与えるための傾斜磁場発生装置(図示省略)と、被健診者9から発せられる磁気共鳴信号を受信するための受信コイル(図示省略)等で構成されている。
【0045】
電磁石装置2は、被健診者9の生体組織を構成する原子のスピンを配向させるために、撮像領域8に静磁場7の均一磁場(均一磁場領域)を生成する。第2の実施形態の電磁石装置2は、中心軸(Z軸)10が水平方向に平行になっている点が、第1の実施形態の電磁石装置2と異なっており、第1の実施形態の電磁石装置2を横にねかしたような構成になっている。そして、複数の静磁場コイル2aは、略球形状の撮像領域(均一磁場領域)8に、均一磁場となる静磁場7を生成する。
【0046】
第1の実施形態では、荷電粒子のループ軌道5に、外乱磁場が入らないように、荷電粒子のループ軌道5の外側に、磁場評価面8aを設定した(図3のステップS1参照)。第2の実施形態では、撮像領域8に、外乱磁場が入らないように、撮像領域8の外側に、円筒形状の磁場評価面8aを設定している。また、磁場評価面を、球形状の撮像領域8の外周面に設定してもよい。この場合、図3のステップS2において、磁場評価点8bは、撮像領域8の外周面(球面)の磁場評価面上に設定される。そして、図5に示すように、図3のステップS3において、磁場評価点8b毎に、撮像領域8の外周面(球面)の磁場評価面の法線方向(半径方向)を向き、大きさが撮像領域8の外周面(球面)の磁場評価面内で均一の目標磁場Btgを設定される。そして、これによっても、図1に示したシムコイル1と同様なシムコイル1を設定することができる。また、またシムコイル1自体の調整も行うことが想定される場合には、撮像領域8の外周面(球面)の磁場評価面近傍で応答性がよい、常温ボア内部の電流面4cに、シムコイル1を設ければよい。
【0047】
(第3の実施形態)
図6に、本発明の第3の実施形態に係る電磁石装置2を備えたMRI装置12の縦断面図を示す。第3の実施形態の電磁石装置2(MRI装置12)が、第2の実施形態の電磁石装置2(MRI装置12)と異なっている点は、目標磁場Btgの方向が、中心軸(Z軸)10の方向(静磁場7の方向)と平行に設定されている点である。
【0048】
図7に、本発明の第3の実施形態に係る電磁石装置2(MRI装置12)に用いられる複数(No.1〜6の6種類)のシムコイル1それぞれの展開図を示す。これらの複数(No.1〜6の6種類)のシムコイル1のコイルパターンは、図3に示したシムコイルの配置方法において、目標磁場Btgの方向の設定を第1(2)の実施形態とは変えて求めたものである。目標磁場Btgの方向が、静磁場7の方向と同じ方向に設定され、目標磁場Btgの大きさは磁場評価面8a内で均一に設定されているので、複数(No.1〜6の6種類)のシムコイル1は、静磁場7の方向と同じ方向の外乱磁場を打ち消すような補正磁場を発生させることができ、静磁場7の外乱磁場による変動を抑えることができる。
【0049】
図7のNo.1のシムコイル1は、周回方向(横軸方向)に流れ、周回方向角度の増加する方向に電流が流れるシムコイル1と、周回方向角度の減少する方向に電流が流れるシムコイル1とを有している。シムコイル1は、ドットのハッチングが施されている領域に配置されているものと、白抜きのハッチングが施されている領域に配置されているものとがある。ドットのハッチングが施されている領域に配置されているシムコイル1に、例えば、周回方向角度の増加する方向(時計周りの方向)に電流が流れるとすると、白抜きのハッチングが施されている領域に配置されているシムコイル1には、周回方向角度の減少する方向(反時計周りの方向)に電流が流れ、互いの領域で反対方向に電流が流れるようになっている。周回方向角度の増加する方向に電流が流れるシムコイル1と、周回方向角度の減少する方向に電流が流れるシムコイル1との、どちらか一方は、軸方向位置(縦軸)の中央部に配置され、他方は、軸方向位置(縦軸)の両端部に配置されている。これによれば、中心軸10(図6参照)に平行な補正磁場を発生することができ、同様に平行な外乱磁場を打ち消すことができる。No.1のシムコイル1は、軸方向(縦軸方向)には、3つのシムコイル1が配置されている。このように、No.1のシムコイル1は、電流面4a(4b、4c)上に3つのシムコイル1を有している。
【0050】
No.2のシムコイル1は、周回方向角度の増加する方向に電流が流れるシムコイル1と、周回方向角度の減少する方向に電流が流れるシムコイル1との、どちらか一方は、軸方向位置(縦軸)の一端側(正側)に配置され、他方は、軸方向位置(縦軸)の他端側(負側)に配置されている。これによれば、中心軸10(図6参照)に平行な補正磁場を発生することができ、同様に平行な外乱磁場を打ち消すことができる。No.2のシムコイル1は、軸方向(縦軸方向)には、2つのシムコイル1が配置されている。このように、No.2のシムコイル1は、電流面4a(4b、4c)上に2つのシムコイル1を有している。
【0051】
No.3のシムコイル1は、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とを、周回方向(横軸方向)に1つずつ有している。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、周回方向(横軸方向)に均等に配置されている。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1は、中心軸10(図6参照)を挟んで対向するように配置されている。
また、No.3のシムコイル1は、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1との一方を、軸方向(縦軸方向)に1つ有し、他方を、軸方向(縦軸方向)にその一方の両側に1つずつ計2つ有している。No.3のシムコイル1の巻き線の渦の中心に配置される周回方向角度は、図1のNo.1の2つのシムコイル1の巻き線の渦の中心の周回方向角度に一致している。このように、No.3のシムコイル1は、電流面4a(4b、4c)上に6つ(=2×3)のシムコイル1を有している。
【0052】
No.3のシムコイル1による補正磁場の磁束は、軸方向に平行に並んでいる時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1との一方から入って他方から出る。このため、中心軸10に平行な補正磁場を発生することができ、同様に平行な外乱磁場を打ち消すことができる。
【0053】
No.4のシムコイル1は、No.3のシムコイル1に対して、周回方向(横軸方向)に、1.57(=3.14/2)ラジアン(90°)回転させた構造をしている。No.4のシムコイル1も、No.3のシムコイル1による補正磁場と同様に、中心軸10に平行な補正磁場を発生することができ、同様に平行な外乱磁場を打ち消すことができる。
【0054】
No.5のシムコイル1は、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とを、周回方向(横軸方向)に1つずつ有している。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、周回方向(横軸方向)に均等に配置されている。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1は、中心軸10(図6参照)を挟んで対向するように配置されている。
【0055】
また、No.5のシムコイル1は、軸方向(縦軸方向)に、時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とを、1つずつ有している。時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と、反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1とは、軸方向(縦方向)に均等に配置されている。No.5のシムコイル1の巻き線の渦の中心に配置される周回方向角度は、図1のNo.1の2つのシムコイル1の巻き線の渦の中心の周回方向角度に一致している。このように、No.5のシムコイル1は、電流面4a(4b、4c)上に4つ(=2×2)のシムコイル1を有している。
【0056】
No.5のシムコイル1による補正磁場の磁束は、軸方向に平行に並んでいる時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1と反時計周りの方向に電流が流れるシムコイル1との一方から入って他方から出る。このため、中心軸10に平行な補正磁場を発生することができ、同様に平行な外乱磁場を打ち消すことができる。
【0057】
No.6のシムコイル1は、No.5のシムコイル1に対して、周回方向(横軸方向)に、1.57(=3.14/2)ラジアン(90°)回転させた構造をしている。No.6のシムコイル1も、No.5のシムコイル1による補正磁場と同様に、中心軸10に平行な補正磁場を発生することができ、同様に平行な外乱磁場を打ち消すことができる。
【0058】
No.1〜6の6種類のシムコイル1はそれぞれ、軸方向位置の0.00m(0.00×0.1m(単位))に描いてある横線(直線)に対して、線対称になっている。
【0059】
No.1〜6の6種類のシムコイル1によれば、補正磁場が電流に対して最も大きくなるようなコイルパターンであり、No.1〜6の6種類の個々のシムコイル1は、不均一な補正磁場を発生させる。そして、No.1〜6の6種類のシムコイル1を組み合わせることより、ランダムな方向から生じる外乱磁場を打ち消すような、あらゆる方向の補正磁場を発生させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 シムコイル(超伝導コイル、電流ポテンシャル値の等高線)
2 電磁石装置
2a 静磁場コイル(超伝導コイル)
2c 真空容器(導体物)
2d 熱輻射シールド
2e 冷媒容器
3 真空ダクト
4a、4b、4c 電流面
4d 接点
5 荷電粒子のループ軌道
6 ベッド
7 静磁場
8 撮像領域(均一磁場領域、中央領域)
8a 磁場評価面(均一磁場領域)
8b 磁場評価点(評価点)
9 被健診者
10 対称軸(中心軸、Z軸)
11 粒子保持機
12 MRI装置
Btg 目標磁場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに中心軸が一致する複数の静磁場コイルを有し、前記中心軸に平行な方向の静磁場を発生させる電磁石装置において、
前記中心軸に略垂直な方向の内の前記静磁場コイルの任意の半径方向の磁場を、打ち消せる磁場を発生させ、前記静磁場の均一性を向上させる複数のシムコイルを有することを特徴とする電磁石装置。
【請求項2】
前記静磁場コイルは、超伝導コイルであり、
前記シムコイルは、超伝導コイルを有し、
これらの超伝導コイルの超伝導状態における磁束保存を利用して受動的に外部由来の誤差磁場を打ち消すことを特徴とする請求項1に記載の電磁石装置。
【請求項3】
前記静磁場コイルと前記シムコイルの超伝導コイルは、永久電流モードで運転することを特徴とする請求項2に記載の電磁石装置。
【請求項4】
互いに中心軸が一致し前記中心軸に平行な方向の静磁場を発生させる複数の静磁場コイルの近傍に、前記静磁場の均一性を向上させる複数のシムコイルを配置する電流面と、前記静磁場を囲むように磁場評価面とを設け、
前記磁場評価面上の評価点毎に、大きさが前記磁場評価面内で均一である目標磁場を設定し、
前記電流面上の接点の電流ポテンシャル値を要素に持つ電流ポテンシャルベクトルによって、前記評価点に生じる磁場を要素に持つ磁場ベクトルが求められる応答行列を取得し、
前記応答行列を特異値分解し、特異値の大きい順に複数の前記電流ポテンシャルベクトルの固有ベクトルを取得し、
複数の前記固有ベクトルに基づいて、前記固有ベクトル毎に前記電流面上における前記電流ポテンシャル値の等高線を取得することを特徴とするシムコイルの製造方法。
【請求項5】
前記固有ベクトル毎に前記等高線に沿ったコイルパターンの超伝導コイルを形成することを特徴とする請求項4に記載のシムコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98439(P2013−98439A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241689(P2011−241689)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】