電磁調理器具

【課題】加熱時において器具本体の底壁を厚さ方向の変形を容易に制御し、安定して加熱することが可能な電磁調理器具を提供する。
【解決手段】非磁性材からなる器具本体100と、該器具本体100の底壁に接合される磁性材からなる金属板200とを備える電磁調理器具である。器具本体100は、底壁の中央部が非加熱時において厚さ方向の上側に緩やかに突出している。金属板200は、器具本体100の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板210から構成され、隣り合う分割金属板210の隙間220における器具本体100上に線状凹部310が形成されている
【解決手段】非磁性材からなる器具本体100と、該器具本体100の底壁に接合される磁性材からなる金属板200とを備える電磁調理器具である。器具本体100は、底壁の中央部が非加熱時において厚さ方向の上側に緩やかに突出している。金属板200は、器具本体100の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板210から構成され、隣り合う分割金属板210の隙間220における器具本体100上に線状凹部310が形成されている
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱器により加熱されるアルミニウム又はアルミニウム合金製等の非磁性材の電磁調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導加熱(Induction Heatingの頭文字からIHと称される)によりフライパンや鍋などの調理器具を加熱する電磁誘導加熱器が知られている。この電磁誘導加熱器に用いられるフライパンや鍋などの調理器具は総じて電磁調理器具と呼ばれ、アルミニウム又はアルミニウム合金製等の非磁性材の器具本体と、該器具本体の底面に接合される磁性材からなる金属板とを備え、電磁誘導により金属板が発熱し、その熱が器具本体に伝導して器具全体が加熱される。近年、オール電化の人気も相俟って、この電磁調理器具は広く使用されるに至っている。
【0003】
そして、この電磁調理器具として種々工夫されたものが知られている。
例えば、特許文献1は、アルミニウム合金製容器本体の底壁の構造を、内部に埋設した磁性体金属板と該磁性体金属板の両面を被覆するアルミ層との三層構造とし、容器本体の外底壁面に外底面側アルミ層を分断するスリットを設け、該スリットの底から埋設された磁性体金属板が露出するように構成したものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2は、磁性材からなる発熱体5を8枚の分割プレート6で構成し、これら分割プレート6を非磁性材からなる鍋本体2底面に接合して分割プレート6が鍋本体2底面に円形に配置されたIH調理用鍋1が開示されている。
【0005】
また、特許文献3は、調理用容器30の底部外面に固着される金属板40であって、この金属板40は、調理用容器30の底部31の略中央を中心とする直径30mm以上70mm未満の円形領域を囲む円環領域に配設されているものが開示されている。
【0006】
また、特許文献4は、アルミ合金製電磁調理器用調理器具の底部に一面を外部に露出して磁性材料を埋設した電磁調理器用調理器具において、該磁性材料は、外側の帯状部材、内側の帯状部材、両帯状部材をその端部間で連結する放射状の連結部材及び該内・外の帯状部材と連結部材とで囲まれた密閉空間とよりなる扇形状の有孔盤状体とし、該有孔盤状体のいくつかを、該有孔盤状体の密閉空間及びその周辺部へのアルミ合金により一体化して埋設してなるものが開示されている。
【0007】
また、特許文献5は、加熱用調理容器の本体部の底部に積層部を設け、前記積層部には本体部の素材が露出した複数の露出部を形成し、前記複数の露出部が加熱用調理容器の底面中心部から等距離の一定範囲に亘って平面的に重合した重合部を形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2558429号公報
【特許文献2】特開2001−203070号公報
【特許文献3】特開2005−205196号公報
【特許文献4】特開2006−122410号公報
【特許文献5】実用新案登録3111695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の電磁調理器具では、調理器具本体の底壁の中央部が加熱により厚さ方向に変形することから、その底壁の厚さ方向の変形を制御することが重要である。
【0010】
すなわち、電磁調理器具を加熱器に載置したときに、加熱器上で器具がぐらつかないように器具の底壁の中央部を厚さ方向上側に突出させて形成するのが一般的である。特に現在のSG規格では、非加熱時において底壁の突出高さ(加熱器の上面から器具の底壁の中央部までの距離)が調理器具の底壁の直径×0.6%以下となるように製造することが要求される。
【0011】
そして、加熱調理器具を加熱器により加熱すると、従来の電磁調理器具では底壁の中央部が厚さ方向上側にさらに突出するように変形し、電磁誘導加熱器のトッププレートから離れるという問題があった。特にSG規格では、加熱時において底壁の突出高さが調理器具の底壁の直径×0.5%以下となるように製造することが要求されている。
【0012】
このため非加熱時はもとより、加熱時においてもSG規格をパスするように、電磁調理器具の底壁の厚さ方向の変形を制御することが問題となっていた。
【0013】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、加熱時において器具本体の底壁を厚さ方向の変形を容易に制御することができ、ひいては安定して加熱することが可能な電磁調理器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、非磁性材からなる器具本体と、該器具本体の底壁に接合される磁性材からなる金属板とを備える電磁調理器具であって、前記器具本体は、底壁の中央部が非加熱時において厚さ方向の上側に緩やかに突出し、前記金属板は、前記器具本体の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板から構成され、前記器具本体の底壁の裏面側または使用面側に線状の溝部が形成されていることを特徴とする。これによれば、加熱時における器具本体の底壁の厚さ方向の変形について、当該変形量が調理器具の底壁の直径×0.5%以下となるように制御することができる。
【0015】
この溝部は、前記器具本体の底壁の裏面側における前記分割金属板の表面に形成されたり、前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板の表面にまたがって形成されたり、隣り合う前記分割金属板の隙間に沿って線状に形成されたり、隣り合う前記分割金属板の連結部分上に形成されるのがよい。さらに前記器具本体の底壁の周縁部に第2の溝部が形成されていてもよい。
【0016】
また、前記金属板は、前記器具本体の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板と、前記器具本体の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体の中央部を空けた状態で前記器具本体の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板とから構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱時における器具本体の底壁の厚さ方向の変形について、当該変形量が調理器具の底壁の直径×0.5%以下となるように制御することができる。このため本調理器具を使用して調理する際、安定して加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る本器具の断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図3】第2の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図4】第3の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図5】第4の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図6】本器具において溝部の形成可能な位置の一例を示した図である。
【図7】第5の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図8】第6の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図9】第7の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図10】第8の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図11】第9の実施形態に係る本器具の上側から見た平面図である。
【図12】本器具の寸法を示すための構成概略図である。
【図13】従来器具の実施例を示す製品写真に係る図である。
【図14】本器具の実施例を示す製品写真に係る図である。
【図15】本器具の他の実施例を示す製品写真に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態に係る電磁調理器具(以下、本器具という)について説明する。
【0020】
図1は第1の実施形態に係る本器具の断面図、図2は同じく本器具の底側から見た平面図である。
【0021】
本器具は、図示略の電磁誘導加熱器(IH)のトッププレート上に載置され、電磁誘導加熱される平面視円形のフライパンである。
【0022】
一般に電磁誘導加熱器のトッププレートの下方には誘導コイルが渦巻き状に配置され、その下方には高周波電流発生装置が配置される。そして、高周波電流発生装置から高周波電流を誘導コイルに供給すると、磁力線が本器具の後述する金属板200を横切るように発生し、この金属板200内部に渦電流が発生する。この渦電流がジュール熱に変換されることで金属板200が発熱して本器具を加熱する。
【0023】
本器具は、図1および図2に示すように、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金あるいはセラミック等の非磁性材からなる器具本体100を備える。この器具本体100は、例えば開口直径260mm、深さ60mmの上面開口の器状に形成され、一枚の板からプレス成形により形成されるのが一般的である。但し、セラミックの場合は別の形成方法で行う。
【0024】
また、器具本体100の中央部は、非加熱時において厚さ方向上側に突出するように形成されている。このときの突出高さはSG規格に適合するように、器具本体100の底壁の直径の0.6%以下とするのがよい。このように非加熱時において厚さ方向上側に突出させることにより、本器具を電磁誘導加熱器のトッププレート上に安定して載置することができる。なお、実際には突出高さは非常に低いため、図1ではその突出高さが表現されていない。
【0025】
また、器具本体100の底壁には、ほぼ全面に亘って、鉄や磁性ステンレススチール等の磁性材からなる金属板200が接合されている。接合に際しては、一般に接着剤などを使用せずに、器具本体100の底壁と金属板200を重ね合わせた状態でプレス加工により接合する。但し、セラミックの場合は別の接合方法で行う。
【0026】
この金属板200は、図2に示すように、器具本体の周方向に沿って8枚の略扇状の分割金属板210に均等に略分割されている。これら各分割金属板210は、器具本体100の周方向に沿って等間隔に並んで配置され、各分割金属板210の間には径方向に延びる8本の線状の隙間220が形成されている。
【0027】
この略分割とは、各分割金属板210が完全に分割された状態ではなく、各分割金属板210が器具本体100の周縁部または中央部付近において連結された状態をいう。本実施形態では、各分割金属板210が、連結部分230及び240を介して器具本体100の周方向に沿って交互に連結された状態となっている。
【0028】
また、各分割金属板210には、全面に亘って直径4mmの小孔250が複数穿設されている。この小孔250は、接合時において小孔250のバリが器具本体100の底壁にめり込んで確実に接合することを目的とするものであり、従来の電磁調理器具にも使用されている。
【0029】
また、隣り合う分割金属板210の8本の隙間220のうち、5本の隙間220における器具本体100上に線状溝部310、320が形成されている。より具体的には、図2の上側および下側の各2本の斜め方向の隙間220の間に線状溝部310が形成されるとともに、図2の下側の1本の上下方向の隙間230の間にやや長めの線状溝部320が形成されている。
【0030】
この線状溝部は、例えば幅2.0〜3.0mm、深さ0.5〜1.2mm、長さ35〜65mmに形成される。この線状溝部310、320の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば打刻や切削などの方法が挙げられる。
【0031】
而して、本器具を電磁誘導加熱器により加熱すると、金属板200が上述の電磁誘導加熱の原理により発熱して、その熱が器具本体100に伝導して器具本体100全体が加熱される。このとき加熱によって器具本体100と金属板200に応力が加わるが、器具本体100の底壁の中央部は厚さ方向に大きく変形せず、SG規格に適合するように器具本体100の底壁の直径の0.5%以下となる。
【0032】
このように加熱時における器具本体の底壁の厚さ方向の変形量が小さくなるように制御できるのは以下の理由によるものと考えられる。
【0033】
第1に、器具本体100および金属板200は平面上の2次元構造物であるため、その膨張率は加熱されると線状の1次元構造物の膨張率の2乗となり、一般に器具本体は2次元で膨張することになる。しかし、本発明のように線状溝部310,320を形成すると、各線状溝部310,320で囲まれた部分は1次元構造物に近い状態となり、その膨張も1次元に近くなって軽減される。
【0034】
第2に、加熱初期には器具本体100の抵抗が少なく、金属板200が比較的スムーズに伸びることにより加熱側(トッププレート側)に引っ張られる。そして、以後、金属板200から器具本体100に熱が伝導するときには器具本体100が伸びすぎないように金属板200が抵抗し、最終的に全体の伸びをおさえることができる。
【0035】
第3に、線状溝部が器具本体100や金属板200の応力の吸収部になり、器具本体100の中央部の膨らみをおさえることができる。
【0036】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る本器具を底側から見た平面図である。
【0037】
本実施形態では、図1の本器具の分割金属板を4つに完全分割したものである。すなわち、8枚の分割金属板のうち、図2の外側の各連結部分230が完全に分けられた状態となっている。これにより2枚1組の分割金属板210が完全に分割された状態で、底壁の周方向に沿って等間隔に並んで配置されている。そして、第1の実施形態と同様にして、分割金属板の8本の隙間220のうち、5本の隙間220(図2の下側3本と上側2本)における器具本体100上に線状溝部310,320が形成されている。
【0038】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る本器具を底側から見た平面図である。
【0039】
本実施形態では、図1の本器具の線状溝部330を外周部分にも追加したものである。すなわち、器具本体100の底壁の周縁部であって、最下部の分割金属板220の外側の位置に、2本の線状溝部330が周方向に沿って形成されている。この2本の線状溝部330はそれぞれ分割金属板220の外周と同じ長さに形成され、その幅や深さも5本の線状溝部310,320と同一である。
【0040】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る本器具を底側から見た平面図である。
【0041】
本実施形態では、図1の本器具の分割金属板200の形状を変更したものである。すなわち、金属板200は、前記器具本体100の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板250と、前記器具本体100の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体100の中央部を空けた状態で前記器具本体100の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板260、270とから構成される。そして、隣り合う第2分割金属板250,260の間の隙間220に4本の線状溝部340が隙間220に沿って形成されている。
【0042】
図6は、本器具において線状溝部の形成可能な位置の一例を示したものである。
【0043】
図6に示すように、線状溝部310,350は略分割された分割金属板210の隙間220に形成されている。線状溝部320は完全分割された分割金属板210の隙間220に形成されている。線状溝部360,370は略分割された分割金属板210の連結部分に形成されている。このように線状溝部は分割金属板210の間の隙間220であればどの位置に形成されてもよい。なお、略分割された分割金属板210の連結部分230,240は厳密には隙間220ではないが、分割金属板の間であって隙間220の延長上にあるため、本発明では当該連結部分も隙間220の一つであると定義する。
【0044】
図7は、本発明の第5の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部381が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されたもので、すべての分割金属板210が連結されていることからO型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち3枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部381が径方向に延びる態様で形成されている。
【0045】
図8は、本発明の第6の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部382が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されるとともに、隣り合う分割金属板210の1箇所(図8の下部)において連結されいないもので、分割金属板210の1箇所が連結されていないことからC型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち3枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部382径方向に延びる態様で形成されている。
【0046】
図9は、本発明の第7の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部383が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されるとともに、隣り合う分割金属板210の1箇所(図9の下部)において連結されいないもので、分割金属板210の1箇所が連結されていないことからC型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち、3枚の分割金属板210と4枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部383、383がそれぞれ3枚の分割金属板210と4枚の分割金属板210を直線状にまたがる態様で形成されている。
【0047】
図10は、本発明の第8の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部384が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されたで、全ての分割金属板210が連結されていることからC型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち、それぞれ2枚の分割金属板210と3枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部384、384がそれぞれ2枚の分割金属板210と3枚の分割金属板210を曲線状にまたがる態様で形成されている。
【0048】
図11は、本発明の第9の実施形態にかかる本器具を上側から見た平面図である。
本実施形態では、本器具の使用面(料理素材を入れる面)に線状溝部410が形成されている。具体的には、本器具は、図2の本器具と同様に、底壁の裏面に分割金属板200が設けられている。ただし、器具本体100の底壁の裏面には線状溝部310,320は形成されておらず、図7に示すように、その使用面に複数の線状溝部410が形成されている。この線状溝部410は、底壁の裏面の分割金属板200の隙間220に対応する使用面側の位置において当該隙間220に沿って形成されている。本実施形態では、図7に示すように、5本の線状溝部410が形成されているが、4本以下であってもよいし、6本以上あってもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、電磁調理器具として平面視円形のフライパンに適用した例を説明したが、平面視四角形など他の形状のフライパンや鍋などにも適用可能である。
【0050】
また、分割金属板210は上記実施形態の形状に限定されるものではない。要は、器具本体100の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板210から構成されていればよい。
【0051】
また、上記各線状溝部は直線状または曲線状のものとしたが、ジグザグ状などのその他の形状であってもよい。
【実施例】
【0052】
次に本器具の実施例について、従来の電磁調理器具の比較例と対比しつつ説明することとする。なお、本実施例では、各器具内に油を入れて、実際の調理現場と同一環境にて実施している。
【0053】
本実施例では、図12に示すように、L、Xを次のとおり定義する。なお、図12では、説明の便宜上、突出高さXを実際の突出高さよりも高く表現している。
【0054】
L:器具本体100の底壁の直径
X:非加熱時の底壁の突出高さ(トッププレートTから底壁外面の中央部までの距離)
【0055】
また、同じく本実施例では、Y、Zを次のとおり定義する。
【0056】
Y:加熱時の高さ変化量(加熱によって非加熱時の底壁外面の中心部Aの位置から変化した高さ)
Z:加熱時の底壁の突出高さ(トッププレートTから底壁外面の中心部Aまでの距離)
<従来器具A>
【0057】
従来器具Aは、図13(a)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの韓国製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.5mmの金属板が接合されている。
【0058】
この従来器具Aの非加熱時の突出高さXは1.5mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以上であり、SG規格に適合していない。
【0059】
従来器具Aを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表1のとおりとなる。
【表1】

【0060】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に2.25mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.5mm)に当該高さ変化量Y200(2.25mm)を加算した3.75mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具B>
【0061】
従来器具Bは、図13(b)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの中国製のフライパン(チタンハード)であって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.4mmの金属板が接合されている。
【0062】
この従来器具Bの非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0063】
従来器具Bを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表2のとおりとなる。
【表2】

【0064】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.70mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)に当該高さ変化量Y200(3.70mm)を加算した4.30mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具C>
【0065】
従来器具Cは、図13(c)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの中国製のフライパン(メリアックス)であって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.4mmの金属板が接合されている。
【0066】
この従来器具Cの非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0067】
従来器具Cを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表3のとおりとなる。
【表3】

【0068】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.30mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)に当該高さ変化量Y200(3.30mm)と加えた3.90mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具D>
【0069】
従来器具Dは、図13(d)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの韓国製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.5mmの金属板が接合されている。
【0070】
この従来器具Dの非加熱時の突出高さXは1.00mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0071】
従来器具Dを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表4のとおりとなる。
【表4】

【0072】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に2.30mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.00mm)に当該高さ変化量Y200(2.30mm)を加算した3.30mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具E>
【0073】
従来器具Eは、図13(e)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ3.0mmのベトナム製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.45mmの金属板が接合されている。
【0074】
この従来器具Eの非加熱時の突出高さXは0.30mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0075】
従来器具Eを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表5のとおりとなる。
【表5】

【0076】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.50mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.30mm)に当該高さ変化量Y200(3.50mm)を加算した3.80mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<本器具1>
【0077】
本発明に係る本器具1は、図14(a)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.65mmである。本器具1の分割金属板の形状や配置は、図2に示すものに対応している。
【0078】
この本器具1の非加熱時の突出高さXは0.65mmであり、底壁の直径の0.6%(1.04mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0079】
本器具1を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表6のとおりとなる。
【表6】

【0080】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に0.18mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.65mm)に当該高さ変化量Y200(0.18mm)を加算した0.47mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.865mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具2>
【0081】
本発明に係る本器具2は、図14(b)に示すように、底壁の直径190mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.70mmである。本器具2の分割金属板の形状や配置は、図2に示すものに対応している。
【0082】
この本器具2の非加熱時の突出高さXは0.70mmであり、底壁の直径の0.6%(1.14mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0083】
本器具2を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表7のとおりとなる。
【表7】

【0084】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.01mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.70mm)から当該高さ変化量Y200(0.01mm)を減算した0.69mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.95mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具3>
【0085】
本発明に係る本器具3は、図14(c)に示すように、底壁の直径190mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.35mmである。本器具3の分割金属板の形状や配置は、図2に示すものに対応している。
【0086】
この本器具3の非加熱時の突出高さXは0.35mmであり、底壁の直径の0.6%(1.14mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0087】
本器具3を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表8のとおりとなる。
【表8】

【0088】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.20mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.35mm)から当該高さ変化量Y200(0.20mm)を減算した0.15mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.95mm)以下であり、SG規格に適合している
<本器具4>
【0089】
本発明に係る本器具4は、図14(d)に示すように、底壁の直径190mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.60mmである。
【0090】
この本器具4の非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.14mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0091】
本器具4を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表9のとおりとなる。
【表9】

【0092】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.17mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)から当該高さ変化量Y200(0.17mm)を減算した0.43mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.95mm)以下であり、SG規格に適合している
<本器具5>
【0093】
本発明に係る本器具5は、図14(e)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0094】
この本器具5の非加熱時の突出高さXは0.50mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0095】
本器具5を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表10のとおりとなる。
【表10】

【0096】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.06mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.50mm)から当該高さ変化量Y200(0.06mm)を減算した0.44mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具6>
【0097】
本発明に係る本器具6は、底壁の直径175mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、図2の本器具と同様の配列形状にて、器具本体100の底壁の裏面全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、図11に示すように、器具本体100の使用面に5本の線状凹部410が形成されており、その線状凹部410の叩きの深さは0.50mmである。
【0098】
この本器具6の非加熱時の突出高さXは0.55mmであり、底壁の直径の0.6%(1.05mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0099】
本器具6を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表11のとおりとなる。
【表11】

【0100】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に0.20mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.55mm)に当該高さ変化量Y200(0.20mm)を加算した0.75mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.875mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具7>
【0101】
本発明に係る本器具7は、図15(a)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmのいわゆるC型の金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0102】
この本器具7の非加熱時の突出高さXは1.0mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0103】
本器具7を油を入れ徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表12のとおりとなる。
【表12】

【0104】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.35mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.0mm)から当該高さ変化量Y200(0.35mm)を減算した0.65mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0105】
なお、本器具7では、油を入れずに加熱する空焚きの場合についても検証した。本器具7を空焚きで徐々に加熱していき、30秒後、1分後、1分30秒後、2分後の高さ変化量Yを取ると、下表13のとおりとなる。
【表13】

【0106】
最高変化時における高さ変化量Yはいずれも厚さ方向下側に0.55mmである。底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.0mm)から当該高さ変化量Y(0.55mm)を減算した0.45mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具8>
【0107】
本発明に係る本器具8は、図15(b)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmのいわゆるO型の金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0108】
この本器具8の非加熱時の突出高さXは1.05mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0109】
本器具8を油を入れ徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表14のとおりとなる。
【表14】

【0110】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.50mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.05mm)から当該高さ変化量Y200(0.50mm)を減算した0.55mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0111】
なお、本器具8では、油を入れずに加熱する空焚きの場合についても検証した。本器具6を空焚きで徐々に加熱していき、30秒後、1分後、1分30秒後、2分後の高さ変化量Yを取ると、下表15のとおりとなる。
【表15】

【0112】
最高変化時における高さ変化量Yは厚さ方向下側に0.9mmである。底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.05mm)から当該高さ変化量Y(0.9mm)を減算した0.15mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具9>
【0113】
本発明に係る本器具9は、図15(c)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmのいわゆるC型の金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0114】
この本器具9の非加熱時の突出高さXは0.8mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0115】
本器具9を油を入れ徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表16のとおりとなる。
【表16】

【0116】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.47mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.8mm)から当該高さ変化量Y200(0.47mm)を減算した0.33mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
【符号の説明】
【0117】
100・・・器具本体
200・・・金属板
210・・・分割金属板
220・・・隙間
230、240・・・連結部分
310、320、330、340、350、360、370、381、382、383、384・・・線状溝部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱器により加熱されるアルミニウム又はアルミニウム合金製等の非磁性材の電磁調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導加熱(Induction Heatingの頭文字からIHと称される)によりフライパンや鍋などの調理器具を加熱する電磁誘導加熱器が知られている。この電磁誘導加熱器に用いられるフライパンや鍋などの調理器具は総じて電磁調理器具と呼ばれ、アルミニウム又はアルミニウム合金製等の非磁性材の器具本体と、該器具本体の底面に接合される磁性材からなる金属板とを備え、電磁誘導により金属板が発熱し、その熱が器具本体に伝導して器具全体が加熱される。近年、オール電化の人気も相俟って、この電磁調理器具は広く使用されるに至っている。
【0003】
そして、この電磁調理器具として種々工夫されたものが知られている。
例えば、特許文献1は、アルミニウム合金製容器本体の底壁の構造を、内部に埋設した磁性体金属板と該磁性体金属板の両面を被覆するアルミ層との三層構造とし、容器本体の外底壁面に外底面側アルミ層を分断するスリットを設け、該スリットの底から埋設された磁性体金属板が露出するように構成したものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2は、磁性材からなる発熱体5を8枚の分割プレート6で構成し、これら分割プレート6を非磁性材からなる鍋本体2底面に接合して分割プレート6が鍋本体2底面に円形に配置されたIH調理用鍋1が開示されている。
【0005】
また、特許文献3は、調理用容器30の底部外面に固着される金属板40であって、この金属板40は、調理用容器30の底部31の略中央を中心とする直径30mm以上70mm未満の円形領域を囲む円環領域に配設されているものが開示されている。
【0006】
また、特許文献4は、アルミ合金製電磁調理器用調理器具の底部に一面を外部に露出して磁性材料を埋設した電磁調理器用調理器具において、該磁性材料は、外側の帯状部材、内側の帯状部材、両帯状部材をその端部間で連結する放射状の連結部材及び該内・外の帯状部材と連結部材とで囲まれた密閉空間とよりなる扇形状の有孔盤状体とし、該有孔盤状体のいくつかを、該有孔盤状体の密閉空間及びその周辺部へのアルミ合金により一体化して埋設してなるものが開示されている。
【0007】
また、特許文献5は、加熱用調理容器の本体部の底部に積層部を設け、前記積層部には本体部の素材が露出した複数の露出部を形成し、前記複数の露出部が加熱用調理容器の底面中心部から等距離の一定範囲に亘って平面的に重合した重合部を形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2558429号公報
【特許文献2】特開2001−203070号公報
【特許文献3】特開2005−205196号公報
【特許文献4】特開2006−122410号公報
【特許文献5】実用新案登録3111695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の電磁調理器具では、調理器具本体の底壁の中央部が加熱により厚さ方向に変形することから、その底壁の厚さ方向の変形を制御することが重要である。
【0010】
すなわち、電磁調理器具を加熱器に載置したときに、加熱器上で器具がぐらつかないように器具の底壁の中央部を厚さ方向上側に突出させて形成するのが一般的である。特に現在のSG規格では、非加熱時において底壁の突出高さ(加熱器の上面から器具の底壁の中央部までの距離)が調理器具の底壁の直径×0.6%以下となるように製造することが要求される。
【0011】
そして、加熱調理器具を加熱器により加熱すると、従来の電磁調理器具では底壁の中央部が厚さ方向上側にさらに突出するように変形し、電磁誘導加熱器のトッププレートから離れるという問題があった。特にSG規格では、加熱時において底壁の突出高さが調理器具の底壁の直径×0.5%以下となるように製造することが要求されている。
【0012】
このため非加熱時はもとより、加熱時においてもSG規格をパスするように、電磁調理器具の底壁の厚さ方向の変形を制御することが問題となっていた。
【0013】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、加熱時において器具本体の底壁を厚さ方向の変形を容易に制御することができ、ひいては安定して加熱することが可能な電磁調理器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、非磁性材からなる器具本体と、該器具本体の底壁に接合される磁性材からなる金属板とを備える電磁調理器具であって、前記器具本体は、底壁の中央部が非加熱時において厚さ方向の上側に緩やかに突出し、前記金属板は、前記器具本体の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板から構成され、前記器具本体の底壁の裏面側または使用面側に線状の溝部が形成されていることを特徴とする。これによれば、加熱時における器具本体の底壁の厚さ方向の変形について、当該変形量が調理器具の底壁の直径×0.5%以下となるように制御することができる。
【0015】
この溝部は、前記器具本体の底壁の裏面側における前記分割金属板の表面に形成されたり、前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板の表面にまたがって形成されたり、隣り合う前記分割金属板の隙間に沿って線状に形成されたり、隣り合う前記分割金属板の連結部分上に形成されるのがよい。さらに前記器具本体の底壁の周縁部に第2の溝部が形成されていてもよい。
【0016】
また、前記金属板は、前記器具本体の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板と、前記器具本体の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体の中央部を空けた状態で前記器具本体の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板とから構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱時における器具本体の底壁の厚さ方向の変形について、当該変形量が調理器具の底壁の直径×0.5%以下となるように制御することができる。このため本調理器具を使用して調理する際、安定して加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る本器具の断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図3】第2の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図4】第3の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図5】第4の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図6】本器具において溝部の形成可能な位置の一例を示した図である。
【図7】第5の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図8】第6の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図9】第7の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図10】第8の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図11】第9の実施形態に係る本器具の上側から見た平面図である。
【図12】本器具の寸法を示すための構成概略図である。
【図13】従来器具の実施例を示す製品写真に係る図である。
【図14】本器具の実施例を示す製品写真に係る図である。
【図15】本器具の他の実施例を示す製品写真に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態に係る電磁調理器具(以下、本器具という)について説明する。
【0020】
図1は第1の実施形態に係る本器具の断面図、図2は同じく本器具の底側から見た平面図である。
【0021】
本器具は、図示略の電磁誘導加熱器(IH)のトッププレート上に載置され、電磁誘導加熱される平面視円形のフライパンである。
【0022】
一般に電磁誘導加熱器のトッププレートの下方には誘導コイルが渦巻き状に配置され、その下方には高周波電流発生装置が配置される。そして、高周波電流発生装置から高周波電流を誘導コイルに供給すると、磁力線が本器具の後述する金属板200を横切るように発生し、この金属板200内部に渦電流が発生する。この渦電流がジュール熱に変換されることで金属板200が発熱して本器具を加熱する。
【0023】
本器具は、図1および図2に示すように、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金あるいはセラミック等の非磁性材からなる器具本体100を備える。この器具本体100は、例えば開口直径260mm、深さ60mmの上面開口の器状に形成され、一枚の板からプレス成形により形成されるのが一般的である。但し、セラミックの場合は別の形成方法で行う。
【0024】
また、器具本体100の中央部は、非加熱時において厚さ方向上側に突出するように形成されている。このときの突出高さはSG規格に適合するように、器具本体100の底壁の直径の0.6%以下とするのがよい。このように非加熱時において厚さ方向上側に突出させることにより、本器具を電磁誘導加熱器のトッププレート上に安定して載置することができる。なお、実際には突出高さは非常に低いため、図1ではその突出高さが表現されていない。
【0025】
また、器具本体100の底壁には、ほぼ全面に亘って、鉄や磁性ステンレススチール等の磁性材からなる金属板200が接合されている。接合に際しては、一般に接着剤などを使用せずに、器具本体100の底壁と金属板200を重ね合わせた状態でプレス加工により接合する。但し、セラミックの場合は別の接合方法で行う。
【0026】
この金属板200は、図2に示すように、器具本体の周方向に沿って8枚の略扇状の分割金属板210に均等に略分割されている。これら各分割金属板210は、器具本体100の周方向に沿って等間隔に並んで配置され、各分割金属板210の間には径方向に延びる8本の線状の隙間220が形成されている。
【0027】
この略分割とは、各分割金属板210が完全に分割された状態ではなく、各分割金属板210が器具本体100の周縁部または中央部付近において連結された状態をいう。本実施形態では、各分割金属板210が、連結部分230及び240を介して器具本体100の周方向に沿って交互に連結された状態となっている。
【0028】
また、各分割金属板210には、全面に亘って直径4mmの小孔250が複数穿設されている。この小孔250は、接合時において小孔250のバリが器具本体100の底壁にめり込んで確実に接合することを目的とするものであり、従来の電磁調理器具にも使用されている。
【0029】
また、隣り合う分割金属板210の8本の隙間220のうち、5本の隙間220における器具本体100上に線状溝部310、320が形成されている。より具体的には、図2の上側および下側の各2本の斜め方向の隙間220の間に線状溝部310が形成されるとともに、図2の下側の1本の上下方向の隙間230の間にやや長めの線状溝部320が形成されている。
【0030】
この線状溝部は、例えば幅2.0〜3.0mm、深さ0.5〜1.2mm、長さ35〜65mmに形成される。この線状溝部310、320の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば打刻や切削などの方法が挙げられる。
【0031】
而して、本器具を電磁誘導加熱器により加熱すると、金属板200が上述の電磁誘導加熱の原理により発熱して、その熱が器具本体100に伝導して器具本体100全体が加熱される。このとき加熱によって器具本体100と金属板200に応力が加わるが、器具本体100の底壁の中央部は厚さ方向に大きく変形せず、SG規格に適合するように器具本体100の底壁の直径の0.5%以下となる。
【0032】
このように加熱時における器具本体の底壁の厚さ方向の変形量が小さくなるように制御できるのは以下の理由によるものと考えられる。
【0033】
第1に、器具本体100および金属板200は平面上の2次元構造物であるため、その膨張率は加熱されると線状の1次元構造物の膨張率の2乗となり、一般に器具本体は2次元で膨張することになる。しかし、本発明のように線状溝部310,320を形成すると、各線状溝部310,320で囲まれた部分は1次元構造物に近い状態となり、その膨張も1次元に近くなって軽減される。
【0034】
第2に、加熱初期には器具本体100の抵抗が少なく、金属板200が比較的スムーズに伸びることにより加熱側(トッププレート側)に引っ張られる。そして、以後、金属板200から器具本体100に熱が伝導するときには器具本体100が伸びすぎないように金属板200が抵抗し、最終的に全体の伸びをおさえることができる。
【0035】
第3に、線状溝部が器具本体100や金属板200の応力の吸収部になり、器具本体100の中央部の膨らみをおさえることができる。
【0036】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る本器具を底側から見た平面図である。
【0037】
本実施形態では、図1の本器具の分割金属板を4つに完全分割したものである。すなわち、8枚の分割金属板のうち、図2の外側の各連結部分230が完全に分けられた状態となっている。これにより2枚1組の分割金属板210が完全に分割された状態で、底壁の周方向に沿って等間隔に並んで配置されている。そして、第1の実施形態と同様にして、分割金属板の8本の隙間220のうち、5本の隙間220(図2の下側3本と上側2本)における器具本体100上に線状溝部310,320が形成されている。
【0038】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る本器具を底側から見た平面図である。
【0039】
本実施形態では、図1の本器具の線状溝部330を外周部分にも追加したものである。すなわち、器具本体100の底壁の周縁部であって、最下部の分割金属板220の外側の位置に、2本の線状溝部330が周方向に沿って形成されている。この2本の線状溝部330はそれぞれ分割金属板220の外周と同じ長さに形成され、その幅や深さも5本の線状溝部310,320と同一である。
【0040】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る本器具を底側から見た平面図である。
【0041】
本実施形態では、図1の本器具の分割金属板200の形状を変更したものである。すなわち、金属板200は、前記器具本体100の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板250と、前記器具本体100の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体100の中央部を空けた状態で前記器具本体100の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板260、270とから構成される。そして、隣り合う第2分割金属板250,260の間の隙間220に4本の線状溝部340が隙間220に沿って形成されている。
【0042】
図6は、本器具において線状溝部の形成可能な位置の一例を示したものである。
【0043】
図6に示すように、線状溝部310,350は略分割された分割金属板210の隙間220に形成されている。線状溝部320は完全分割された分割金属板210の隙間220に形成されている。線状溝部360,370は略分割された分割金属板210の連結部分に形成されている。このように線状溝部は分割金属板210の間の隙間220であればどの位置に形成されてもよい。なお、略分割された分割金属板210の連結部分230,240は厳密には隙間220ではないが、分割金属板の間であって隙間220の延長上にあるため、本発明では当該連結部分も隙間220の一つであると定義する。
【0044】
図7は、本発明の第5の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部381が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されたもので、すべての分割金属板210が連結されていることからO型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち3枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部381が径方向に延びる態様で形成されている。
【0045】
図8は、本発明の第6の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部382が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されるとともに、隣り合う分割金属板210の1箇所(図8の下部)において連結されいないもので、分割金属板210の1箇所が連結されていないことからC型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち3枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部382径方向に延びる態様で形成されている。
【0046】
図9は、本発明の第7の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部383が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されるとともに、隣り合う分割金属板210の1箇所(図9の下部)において連結されいないもので、分割金属板210の1箇所が連結されていないことからC型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち、3枚の分割金属板210と4枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部383、383がそれぞれ3枚の分割金属板210と4枚の分割金属板210を直線状にまたがる態様で形成されている。
【0047】
図10は、本発明の第8の実施形態にかかる本器具を底側から見た平面図である。
本実施形態では、溝部384が前記器具本体の底壁の裏面側における分割金属板210の表面に形成されている。本実施形態における金属板200は、8枚の分割金属板210が器具本体の外周部付近と中央部付近において交互に連結されたで、全ての分割金属板210が連結されていることからC型の金属板と呼ばれている。そして、これら分割金属板210のうち、それぞれ2枚の分割金属板210と3枚の分割金属板210の表面において、線状の溝部384、384がそれぞれ2枚の分割金属板210と3枚の分割金属板210を曲線状にまたがる態様で形成されている。
【0048】
図11は、本発明の第9の実施形態にかかる本器具を上側から見た平面図である。
本実施形態では、本器具の使用面(料理素材を入れる面)に線状溝部410が形成されている。具体的には、本器具は、図2の本器具と同様に、底壁の裏面に分割金属板200が設けられている。ただし、器具本体100の底壁の裏面には線状溝部310,320は形成されておらず、図7に示すように、その使用面に複数の線状溝部410が形成されている。この線状溝部410は、底壁の裏面の分割金属板200の隙間220に対応する使用面側の位置において当該隙間220に沿って形成されている。本実施形態では、図7に示すように、5本の線状溝部410が形成されているが、4本以下であってもよいし、6本以上あってもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、電磁調理器具として平面視円形のフライパンに適用した例を説明したが、平面視四角形など他の形状のフライパンや鍋などにも適用可能である。
【0050】
また、分割金属板210は上記実施形態の形状に限定されるものではない。要は、器具本体100の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板210から構成されていればよい。
【0051】
また、上記各線状溝部は直線状または曲線状のものとしたが、ジグザグ状などのその他の形状であってもよい。
【実施例】
【0052】
次に本器具の実施例について、従来の電磁調理器具の比較例と対比しつつ説明することとする。なお、本実施例では、各器具内に油を入れて、実際の調理現場と同一環境にて実施している。
【0053】
本実施例では、図12に示すように、L、Xを次のとおり定義する。なお、図12では、説明の便宜上、突出高さXを実際の突出高さよりも高く表現している。
【0054】
L:器具本体100の底壁の直径
X:非加熱時の底壁の突出高さ(トッププレートTから底壁外面の中央部までの距離)
【0055】
また、同じく本実施例では、Y、Zを次のとおり定義する。
【0056】
Y:加熱時の高さ変化量(加熱によって非加熱時の底壁外面の中心部Aの位置から変化した高さ)
Z:加熱時の底壁の突出高さ(トッププレートTから底壁外面の中心部Aまでの距離)
<従来器具A>
【0057】
従来器具Aは、図13(a)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの韓国製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.5mmの金属板が接合されている。
【0058】
この従来器具Aの非加熱時の突出高さXは1.5mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以上であり、SG規格に適合していない。
【0059】
従来器具Aを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表1のとおりとなる。
【表1】

【0060】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に2.25mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.5mm)に当該高さ変化量Y200(2.25mm)を加算した3.75mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具B>
【0061】
従来器具Bは、図13(b)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの中国製のフライパン(チタンハード)であって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.4mmの金属板が接合されている。
【0062】
この従来器具Bの非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0063】
従来器具Bを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表2のとおりとなる。
【表2】

【0064】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.70mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)に当該高さ変化量Y200(3.70mm)を加算した4.30mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具C>
【0065】
従来器具Cは、図13(c)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの中国製のフライパン(メリアックス)であって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.4mmの金属板が接合されている。
【0066】
この従来器具Cの非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0067】
従来器具Cを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表3のとおりとなる。
【表3】

【0068】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.30mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)に当該高さ変化量Y200(3.30mm)と加えた3.90mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具D>
【0069】
従来器具Dは、図13(d)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの韓国製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.5mmの金属板が接合されている。
【0070】
この従来器具Dの非加熱時の突出高さXは1.00mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0071】
従来器具Dを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表4のとおりとなる。
【表4】

【0072】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に2.30mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.00mm)に当該高さ変化量Y200(2.30mm)を加算した3.30mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具E>
【0073】
従来器具Eは、図13(e)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ3.0mmのベトナム製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.45mmの金属板が接合されている。
【0074】
この従来器具Eの非加熱時の突出高さXは0.30mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0075】
従来器具Eを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表5のとおりとなる。
【表5】

【0076】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.50mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.30mm)に当該高さ変化量Y200(3.50mm)を加算した3.80mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<本器具1>
【0077】
本発明に係る本器具1は、図14(a)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.65mmである。本器具1の分割金属板の形状や配置は、図2に示すものに対応している。
【0078】
この本器具1の非加熱時の突出高さXは0.65mmであり、底壁の直径の0.6%(1.04mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0079】
本器具1を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表6のとおりとなる。
【表6】

【0080】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に0.18mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.65mm)に当該高さ変化量Y200(0.18mm)を加算した0.47mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.865mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具2>
【0081】
本発明に係る本器具2は、図14(b)に示すように、底壁の直径190mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.70mmである。本器具2の分割金属板の形状や配置は、図2に示すものに対応している。
【0082】
この本器具2の非加熱時の突出高さXは0.70mmであり、底壁の直径の0.6%(1.14mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0083】
本器具2を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表7のとおりとなる。
【表7】

【0084】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.01mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.70mm)から当該高さ変化量Y200(0.01mm)を減算した0.69mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.95mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具3>
【0085】
本発明に係る本器具3は、図14(c)に示すように、底壁の直径190mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.35mmである。本器具3の分割金属板の形状や配置は、図2に示すものに対応している。
【0086】
この本器具3の非加熱時の突出高さXは0.35mmであり、底壁の直径の0.6%(1.14mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0087】
本器具3を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表8のとおりとなる。
【表8】

【0088】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.20mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.35mm)から当該高さ変化量Y200(0.20mm)を減算した0.15mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.95mm)以下であり、SG規格に適合している
<本器具4>
【0089】
本発明に係る本器具4は、図14(d)に示すように、底壁の直径190mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.60mmである。
【0090】
この本器具4の非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.14mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0091】
本器具4を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表9のとおりとなる。
【表9】

【0092】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.17mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)から当該高さ変化量Y200(0.17mm)を減算した0.43mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.95mm)以下であり、SG規格に適合している
<本器具5>
【0093】
本発明に係る本器具5は、図14(e)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0094】
この本器具5の非加熱時の突出高さXは0.50mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0095】
本器具5を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表10のとおりとなる。
【表10】

【0096】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.06mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.50mm)から当該高さ変化量Y200(0.06mm)を減算した0.44mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具6>
【0097】
本発明に係る本器具6は、底壁の直径175mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、図2の本器具と同様の配列形状にて、器具本体100の底壁の裏面全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。また、図11に示すように、器具本体100の使用面に5本の線状凹部410が形成されており、その線状凹部410の叩きの深さは0.50mmである。
【0098】
この本器具6の非加熱時の突出高さXは0.55mmであり、底壁の直径の0.6%(1.05mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0099】
本器具6を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表11のとおりとなる。
【表11】

【0100】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に0.20mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.55mm)に当該高さ変化量Y200(0.20mm)を加算した0.75mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.875mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具7>
【0101】
本発明に係る本器具7は、図15(a)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmのいわゆるC型の金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0102】
この本器具7の非加熱時の突出高さXは1.0mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0103】
本器具7を油を入れ徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表12のとおりとなる。
【表12】

【0104】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.35mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.0mm)から当該高さ変化量Y200(0.35mm)を減算した0.65mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0105】
なお、本器具7では、油を入れずに加熱する空焚きの場合についても検証した。本器具7を空焚きで徐々に加熱していき、30秒後、1分後、1分30秒後、2分後の高さ変化量Yを取ると、下表13のとおりとなる。
【表13】

【0106】
最高変化時における高さ変化量Yはいずれも厚さ方向下側に0.55mmである。底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.0mm)から当該高さ変化量Y(0.55mm)を減算した0.45mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具8>
【0107】
本発明に係る本器具8は、図15(b)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmのいわゆるO型の金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0108】
この本器具8の非加熱時の突出高さXは1.05mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0109】
本器具8を油を入れ徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表14のとおりとなる。
【表14】

【0110】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.50mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.05mm)から当該高さ変化量Y200(0.50mm)を減算した0.55mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0111】
なお、本器具8では、油を入れずに加熱する空焚きの場合についても検証した。本器具6を空焚きで徐々に加熱していき、30秒後、1分後、1分30秒後、2分後の高さ変化量Yを取ると、下表15のとおりとなる。
【表15】

【0112】
最高変化時における高さ変化量Yは厚さ方向下側に0.9mmである。底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.05mm)から当該高さ変化量Y(0.9mm)を減算した0.15mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具9>
【0113】
本発明に係る本器具9は、図15(c)に示すように、底壁の直径180mm、厚さ3mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmのいわゆるC型の金属板が接合されている。また、線状溝部の叩きの深さは0.50mmである。
【0114】
この本器具9の非加熱時の突出高さXは0.8mmであり、底壁の直径の0.6%(1.08mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0115】
本器具9を油を入れ徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表16のとおりとなる。
【表16】

【0116】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.47mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.8mm)から当該高さ変化量Y200(0.47mm)を減算した0.33mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(0.9mm)以下であり、SG規格に適合している。
【符号の説明】
【0117】
100・・・器具本体
200・・・金属板
210・・・分割金属板
220・・・隙間
230、240・・・連結部分
310、320、330、340、350、360、370、381、382、383、384・・・線状溝部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性材からなる器具本体と、該器具本体の底壁に接合される磁性材からなる金属板とを備える電磁調理器具であって、
前記器具本体は、底壁の中央部が非加熱時において厚さ方向の上側に緩やかに突出し、
前記金属板は、前記器具本体の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板から構成され、
前記器具本体の底壁の裏面側または使用面側に線状の溝部が形成されていることを特徴とする電磁調理器具。
【請求項2】
前記溝部は、前記器具本体の底壁の裏面側における前記分割金属板の表面に形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項3】
前記溝部は、前記器具本体の底壁の裏面側における前記分割金属板の表面にまたがって形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項4】
前記溝部は、隣り合う前記分割金属板の隙間に沿って形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項5】
前記溝部は、隣り合う前記分割金属板の連結部分上に形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項6】
前記器具本体の底壁の周縁部に第2の溝部が形成されている請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電磁調理器具。
【請求項7】
前記金属板は、前記器具本体の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板と、前記器具本体の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体の中央部を空けた状態で前記器具本体の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板とから構成される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電磁調理器具。
【請求項1】
非磁性材からなる器具本体と、該器具本体の底壁に接合される磁性材からなる金属板とを備える電磁調理器具であって、
前記器具本体は、底壁の中央部が非加熱時において厚さ方向の上側に緩やかに突出し、
前記金属板は、前記器具本体の周方向に分割又は略分割された状態で配置された複数の分割金属板から構成され、
前記器具本体の底壁の裏面側または使用面側に線状の溝部が形成されていることを特徴とする電磁調理器具。
【請求項2】
前記溝部は、前記器具本体の底壁の裏面側における前記分割金属板の表面に形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項3】
前記溝部は、前記器具本体の底壁の裏面側における前記分割金属板の表面にまたがって形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項4】
前記溝部は、隣り合う前記分割金属板の隙間に沿って形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項5】
前記溝部は、隣り合う前記分割金属板の連結部分上に形成されている請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項6】
前記器具本体の底壁の周縁部に第2の溝部が形成されている請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電磁調理器具。
【請求項7】
前記金属板は、前記器具本体の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板と、前記器具本体の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体の中央部を空けた状態で前記器具本体の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板とから構成される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電磁調理器具。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


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【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】


【公開番号】特開2012−33460(P2012−33460A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14802(P2011−14802)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(505297312)有限会社タカ商 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(505297312)有限会社タカ商 (3)
【Fターム(参考)】
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