電磁超音波を用いた配管減肉検査方法及び装置
【課題】電磁超音波送信機から送信される電磁超音波が軸方向上の一方向のみとなるように制御することにより、配管長さの如何にかかわらず配管全長について効率的な減肉検査を可能にする。
【解決手段】送信機1A,1Bは、配管の軸方向上に位相角90°分の距離L1だけずれた位置に配置されている。送信機1Aは、図6(a)に示されるように、位相角0°(ゼロクロス点)を送信制御開始点として電磁超音波を送信し、また、送信機1Bは、図6(b)に示されるように、送信機1Aよりも90°遅れた位相角90°(ピーク点)を送信制御開始点として電磁超音波を送信する。したがって、これらの重畳波形は図6(c)に示される通りとなり、送信機1AのR側にのみ送信が行われる結果となる。
【解決手段】送信機1A,1Bは、配管の軸方向上に位相角90°分の距離L1だけずれた位置に配置されている。送信機1Aは、図6(a)に示されるように、位相角0°(ゼロクロス点)を送信制御開始点として電磁超音波を送信し、また、送信機1Bは、図6(b)に示されるように、送信機1Aよりも90°遅れた位相角90°(ピーク点)を送信制御開始点として電磁超音波を送信する。したがって、これらの重畳波形は図6(c)に示される通りとなり、送信機1AのR側にのみ送信が行われる結果となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁超音波を用いた配管減肉検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラントにおいて敷設されている配管には、敷設後ある程度の期間が経過すると、経年劣化により腐食が著しく進行した個所すなわち減肉部がしばしば発生する。したがって、保守作業員は定期又は不定期に実施されるメンテナンス作業において、このような配管減肉部の発生の有無、及び発生した場合にはその発生個所が何処であるかを検査しなければならない。
【0003】
この検査は、ガイド波と呼ばれる配管軸方向に伝播する超音波を発生させ、減肉部から反射されて戻ってくる反射エコーを解析することにより行われる。ここで、従来技術の一つとして、超音波発生手段に圧電素子を有する超音波探触子を用いたものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、圧電素子を有する超音波探触子を超音波発生手段として用いる場合には、カプラント(接触媒質)を介して超音波探触子を配管表面に接触させた状態で取り付けなければならず、また、配管表面に塗装が施されている場合には塗膜をグラインダ等で除去した後に超音波探触子の取付を行わなければならない。すなわち、特許文献1に係る従来技術を採用した場合、配管表面に対する超音波探触子の取付作業に多大な労力及び時間を費やさざるを得ないことになる。
【0005】
そのため、最近では、電磁超音波を配管材料の軸方向に伝播させることにより、配管内の減肉部の有無を発生させる手法も次第に多く採用されつつある(例えば、特許文献2)。この手法で用いられる電磁超音波送信機は、ローレンツ力を利用して配管材料に電磁超音波を発生させるので、配管表面上に非接触の状態で配置することが可能である。したがって、特許文献1に係る従来技術のように取付作業に多大な労力及び時間を費やすことを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−64540号公報
【特許文献2】特開2008−76296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に係る電磁超音波送信機は、電磁超音波がこの電磁超音波送信機を中心として配管の左右両方向(軸方向)に伝播されてしまうという厄介な性質を有している(この点については同公報には詳しい説明がなされていない。)。そのため、電磁超音波受信機が減肉部からの反射エコー信号を受信した場合、この反射エコー信号が左右いずれの方向からのものであるかを判別するのが困難となり、減肉部の個所を特定できないことがあった。
【0008】
例えば、電磁超音波送信機及び電磁超音波受信機による減肉部検出可能距離を片側で最大6mと仮定すると、配管長さが12m以内であれば、配管の一端側に送信機及び受信機を取り付けて超音波送信・受信動作を行った後に、配管の他端側に送信機及び受信機を再び取り付けて超音波送信・受信動作を行うようにすれば、ほぼ配管全長について配管減肉検査を実施することができる。
【0009】
しかし、配管長さが12mを超えるような場合は、送信機及び受信機を配管の一端側と他端側の間の中間領域にも取り付けなければならないが、この場合、受信機が減肉部からの反射エコー信号を受信したとしても、この反射エコー信号が左右いずれの方向から反射されたものであるかを正確且つ迅速に識別するのが困難となる。
【0010】
結局、特許文献2に係る電磁超音波送信機を用いた場合、検査可能な配管長さは実質的には一定以下に制限され、一定長さを超える配管の中間領域については別の手法(例えば、特許文献1に係る超音波探触子を用いる手法等)を採用しなければならず、充分な作業効率を得ることができない結果となっていた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電磁超音波送信機から配管材料の軸方向に向けて送信される電磁超音波が一方向のみとなるように制御することにより、配管長さの如何にかかわらず配管全長について効率的な検査が可能な電磁超音波を用いた配管減肉検査方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段として、本発明に係る配管減肉検査方法は、配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査方法において、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1及び第2の2つの電磁超音波送信機を、電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ軸方向へ相互にずらして配管表面に配置し、前記第1の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせると共に、前記第2の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせることにより、前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る配管減肉検査装置は、配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査装置において、前記配管の表面に配置されており、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1の電磁超音波送信機と、電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ前記第1の電磁超音波送信機から軸方向へずらした配管表面上の位置に配置され、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第2の電磁超音波送信機と、を備え、前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電磁超音波送信機から配管材料の軸方向に向けて送信される電磁超音波が一方向のみとなるように制御することができ、したがって、配管長さの如何にかかわらず配管全長について効率的な減肉検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る配管減肉検査装置の説明図であり、(a)は配管周りの斜視図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図2】図1における電磁超音波送信機1A(又は1B)の構成及び作用についての説明図。
【図3】図1における電磁超音波受信機2の構成及び作用についての説明図。
【図4】本発明で用いる電磁超音波送信機単体の一般的な動作特性についての説明図であり、(a)は超音波制御装置3が電磁超音波送信機1A(又は1B)のコイル12に供給する交流電流を制御することにより、この電磁超音波送信機から発生させる電磁超音波について、0°〜360°の位相角の範囲の正弦波形を示した説明図、(b)は送信機1A(又は1B)からの電磁超音波の送信方向を示す説明図。
【図5】図4(a)における0°、90°、180°、270°の各位相角を送信制御開始点とした場合に、送信機1A(又は1B)のR側及びL側に伝播する電磁超音波の波形を示した説明図。
【図6】送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図7】図6と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図8】図6の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図9】図8と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図10】送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図11】図10と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図12】図10の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図13】図12と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図14】図6〜図13の制御内容の概略をまとめて示した図表。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る配管減肉検査装置の説明図であり、(a)は配管周りの斜視図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
【0017】
図1(a)において、検査対象である配管Mの表面に複数台の第1の電磁超音波送信機1A、第2の電磁超音波送信機1B、及び電磁超音波受信機2が配置されている。この送信機1A,1Bは組を形成しており、配管Mの軸方向に所定の距離L1だけ相互にずれた状態で配置されている。そして、この送信機1A,1Bは、図1(b)に示すように、配管Mの周方向へ90°間隔で4組が配置されており、また、各組の送信機1A,1B同士の間に4台の電磁超音波受信機2が配置されている。
【0018】
送信機1A,1Bは、後述する重畳波形の性質により、右方向にのみ送信波W1を、あるいは左方向にのみ送信波W3を送信できるようになっている。そして、電磁超音波受信機2は、右側の減肉部F1からの反射エコーW2、あるいは左側の減肉部F2からの反射エコーW4を受信できるようになっている。したがって、このような構成によれば、電磁超音波受信機2の受信した信号が、右側からの反射エコーW2であるのか、あるいは左側からの反射エコーW4であるのかについて直ちに識別することが可能である。
【0019】
なお、本実施形態では電磁超音波受信機2の軸方向上の位置は第1の電磁超音波送信機1Aと同じ位置になっているが、第2の電磁超音波送信機1Bと同じ位置にすることもできる。
【0020】
これら電磁超音波送信機1A,1B及び電磁超音波受信機2の送信制御及び受信制御は超音波制御装置3により行われるようになっており、この超音波制御装置3の制御により得られたデータは、コンピュータ等により構成されるデータ解析装置4に送られて解析されるようになっている。
【0021】
図2は、図1における電磁超音波送信機1A(又は1B)の構成及び作用についての説明図である(これらの構成及び作用は周知のものである。)。電磁超音波送信機1Aは、配管表面に近い側がN極、遠い側がS極に磁化された永久磁石11を有しており、この永久磁石11にコイル12が巻回されている。超音波制御装置3は、このコイル12の両端間に交流電圧を印加して交流電流を流すことができるようになっている。
【0022】
配管表面には、永久磁石11の影響により符号14の矢印方向で示す磁束が分布しているが、コイル12に交流電流13が流れると磁束14の分布が変化しようとするので、この変化を妨げる方向に渦電流15が配管表面に流れる。すると、磁束14と渦電流15の向きは直交しているので、フレミングの左手の法則により配管Mの周方向には符号16で示す矢印方向にローレンツ力が発生する。そして、交流電流13の向きが反対になると、渦電流15の向きも反対になり、したがってローレンツ力16の向きも反対になる。このように周方向の向きが逐次変化するローレンツ力16によって、伝播方向が配管Mの軸方向となる電磁超音波(ガイド波)が発生する。
【0023】
ここで、電磁超音波送信機1A,1Bが送信する電磁超音波の周波数について説明すると、この周波数は一定以下の低周波数である。例えば、配管Mの肉厚を10mmとして考えてみると、電磁超音波の周波数を例えば5MHzの高周波数にした場合には、電磁超音波の波長は0.6mmとなって肉厚よりも短くなってしまう。そのため、この場合には、発生した電磁超音波は通常の横波超音波として配管Mの肉厚方向にしか伝播しないことになる。
【0024】
一方、電磁超音波の周波数を例えば50kHzの低周波数にした場合には、電磁超音波の波長は60mmとなって肉厚よりも長くなる。したがって、この場合には、発生した電磁超音波は肉厚方向には伝播せず、軸方向に伝播するガイド波となる。これらのことから、電磁超音波の周波数は、一般には数十kHz〜数百kHzの範囲になると考えられる。
【0025】
なお、本発明では、このように電磁超音波送信機1A,1Bが送信する電磁超音波の周波数は低周波数とならざるを得ないので、圧電素子を用いた超音波探触子(特許文献1)のようには高い解像度を得ることができず、検査対象の配管に対して微小な疵やき裂等を精度良く検出することが期待できない。それ故、本発明では、検出しようとする欠陥部分を減肉部に限定することとしている。
【0026】
図3は、図1における電磁超音波受信機2の構成及び作用についての説明図である(これらの構成及び作用は周知のものである。)。この電磁超音波受信機2は、図2で説明した電磁超音波送信機1A(又は1B)と略同様の構成を有するものであり、その作用も電磁超音波送信機1Aの場合の逆プロセスとなる。
【0027】
すなわち、電磁超音波受信機2は、配管表面に近い側がN極、遠い側がS極に磁化された永久磁石21を有しており、この永久磁石21にコイル22が巻回されている。超音波制御装置3は、このコイル22の両端間に発生する起電圧Vを検出できるようになっている。
【0028】
配管表面付近の肉厚部には、永久磁石21の影響により符号23の矢印方向で示す磁束が分布している。この状態で、電磁超音波送信機1A,1Bから送信された電磁超音波の反射エコーが到達すると、この到達した反射エコーに基づくローレンツ力24により、配管表面に渦電流25が発生する(フレミングの右手の法則)。そして、この渦電流25の発生により、コイル22の内部を通過する鎖交磁束が発生するので、コイル22にはこの磁束変化を抑制する誘導電流26が流れ、コイル22の両端間にはファラデーの法則に基づき起電圧Vが誘起される。超音波制御装置3は、この誘起された起電圧Vの検出に基づき反射エコーの波形を検出することができる。
【0029】
次に、本発明で用いる電磁超音波送信機単体の一般的な動作特性を図4及び図5を参照しつつ説明する。
【0030】
図4(a)は、超音波制御装置3が電磁超音波送信機1A(又は1B)のコイル12に供給する交流電流を制御することにより、この電磁超音波送信機から発生させる電磁超音波について、0°〜360°の位相角の範囲の正弦波形を示した説明図である。本明細書では、この超音波波形における0°、180°、360°等を「ゼロクロス点」と呼び、90°、270°等を「ピーク点」と呼ぶことにする。
【0031】
そして、本発明では、超音波制御装置3が電磁超音波送信機1A(又は1B)に対して、ゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として電流(又は電圧)制御を行うが、送信制御開始点以降は矢印方向で示した「位相角増大方向」へ向けて電流制御を行うようになっている。
【0032】
このような超音波制御装置3の電磁超音波送信機1A(又は1B)に対する電流制御により、図4(b)に示すように、電磁超音波送信機1A(又は1B)は、自身の配置位置を基準として左右両方向へ電磁超音波(ガイド波)を送信することになる。なお、以降の説明では、図4(b)に示すように、電磁超音波送信機1A(又は1B)の右方向を「R側」(一方の軸方向)と呼び、左方向を「L側」(他方の軸方向)と呼ぶことにする。
【0033】
図5は、図4(a)における0°、90°、180°、270°の各位相角を送信制御開始点とした場合に、電磁超音波送信機1A(又は1B)のR側及びL側に伝播する電磁超音波の波形を示した説明図である。なお、図5(及び以降の図6〜図13も含む)においては、超音波波形中に送信機1A(又は1B)も図示しているが、これは理解を容易にするために配管Mの軸方向(左右方向)上のみの位置を明らかにしたものである(したがって、上下方向については正しい送信機位置を示すものではない。)。
【0034】
図5(a)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を0°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0035】
図5(b)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を90°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)の位相角90°の右側部分と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0036】
図5(c)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を180°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)の位相角180°の右側部分と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0037】
図5(d)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を270°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)の位相角270°の右側部分と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0038】
次に、上述したような一般的動作特性を有する第1の電磁超音波送信機1A及び第2の電磁超音波送信機1Bを、配管Mの軸方向へ互いに所定距離L1だけずらして配置した状態で行う送信制御につき説明する。
【0039】
図6は、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0040】
図6(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角0°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。
【0041】
また、図6(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角90°(送信機1Aよりも90°遅れ)を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0042】
したがって、図6(c)に示すように、図6(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0043】
図7は、図6と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0044】
図7(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角90°を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。
【0045】
また、図7(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角0°(送信機1Aよりも90°進み)を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0046】
したがって、図7(c)に示すように、図7(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0047】
ここで、図6(c)と図7(c)とを比較してみれば明らかなように、前者では送信機1AのR側にのみ電磁超音波が送信され、後者では送信機1BのL側にのみ電磁超音波が送信されている。そして、本実施形態では図1(a)に示されているように、電磁超音波受信機2の軸方向上の位置は送信機1Aと同じ位置になっている。したがって、電磁超音波受信機2が、図6(c)の送信波に対応する減肉部からの反射エコーを受信する場合は問題がないが、図7(c)の送信波に対応する減肉部からの反射エコーを受信する場合は距離L1分のズレを考慮した距離補正を行った上で減肉部の位置を演算する必要がある(以降の図8〜図13においても同様である。)。
【0048】
図8は、図6の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0049】
図8(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角180°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。
【0050】
また、図8(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角270°(送信機1Aよりも90°遅れ)を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0051】
したがって、図8(c)に示すように、図8(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0052】
図9は、図8と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0053】
図9(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角270°を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。
【0054】
また、図9(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角180°(送信機1Aよりも90°進み)を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0055】
したがって、図9(c)に示すように、図9(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0056】
図10は、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0057】
図10(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角0°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。
【0058】
また、図10(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角270°(送信機1Aよりも270°遅れ)を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0059】
したがって、図10(c)に示すように、図10(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0060】
図11は、図10と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0061】
図11(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角270°を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。
【0062】
また、図11(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角0°(送信機1Aよりも270°進み)を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0063】
したがって、図11(c)に示すように、図11(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0064】
図12は、図10の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0065】
図12(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角180°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。
【0066】
また、図12(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角90°(90°を450°と考えれば送信機1Aよりも270°遅れ)を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0067】
したがって、図12(c)に示すように、図12(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0068】
図13は、図12と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0069】
図13(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角90°(450°)を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。
【0070】
また、図13(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角180°(送信機1Aよりも270°進み)を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0071】
したがって、図13(c)に示すように、図13(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0072】
図14は、上述した図6〜図13の制御内容の概略をまとめて示した図表であり、(a)は図6〜図9についての図表、(b)は図10〜図13についての図表である。
【0073】
ところで、上述した図6乃至図13の説明では、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、位相角90°分又は位相角270°分の距離としている。しかし、これは理解を容易にするため及び図示の都合上、位相角の範囲を超音波波形の1周期分以内に限定したものである。実際には、この距離L1は、[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離となる。
【0074】
つまり、図2の説明において述べたように、電磁超音波の1周期の波長が例えば60mmであったとすると、位相角90°分の距離は15mm、位相角270°分の距離は45mmという短いものになるので、送信機1A,1Bを同一軸方向に配置できなくなることがある(送信機の大きさにもよるが)。それ故、実際には、この距離L1を、90°に360°の整数倍を加えた位相角、又は270°に360°の整数倍を加えた位相角に、適宜調整する必要がある。
【0075】
なお、図1に示したように、本実施形態では、4組の送信機1A,1Bが配管Mの周方向へ90°間隔で配置され、各組の送信機1A,1B同士の間に4台の電磁超音波受信機2が配置された構成としたが、これら送信機1A,1Bの組数及び受信機2の台数は適宜変更可能である。
【0076】
また、本実施形態では、受信機2の軸方向上の位置を送信機1Aと同じにし、重畳波形が送信機1BのL側にのみ現れる場合に距離補正を行う構成としているが、受信機2の軸方向上の位置を送信機1Bと同じにし、重畳波形が送信機1AのR側にのみ現れる場合に距離補正を行う構成としてもよい。
【0077】
以上説明したように、本発明では、2つの電磁超音波送信機1A,1Bを、電磁超音波波形の90°又は270°の位相角に対応する距離だけ軸方向へ相互にずらして配管Mの表面に配置し、電磁超音波送信機1Aからの電磁超音波を、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせると共に、電磁超音波送信機1Bからの電磁超音波を、第1の電磁超音波送信機1Aの送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせることにより、2つの電磁超音波送信機1A,1Bの電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにしている。
【0078】
したがって、本発明によれば、2台の送信機を組み合わせることにより、送信機単体ではその両側に超音波が送信されてしまうという厄介な性質を解消することができ、配管長さの如何にかかわらず配管全長について効率的な配管減肉検査を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0079】
M:配管、1A:第1の電磁超音波送信機、1B:第2の電磁超音波送信機、11:永久磁石、12:コイル、13:交流電流、14:磁束、15:渦電流、16:ローレンツ力、2:電磁超音波受信機、21:永久磁石、22:コイル、23:磁束、24:ローレンツ力、25:渦電流、26:誘導電流、3:超音波制御装置、4:データ解析装置、F1,F2:減肉部、W1,W3:送信波、W2,W4:反射エコー、L1:送信機1A,1B間の距離。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁超音波を用いた配管減肉検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラントにおいて敷設されている配管には、敷設後ある程度の期間が経過すると、経年劣化により腐食が著しく進行した個所すなわち減肉部がしばしば発生する。したがって、保守作業員は定期又は不定期に実施されるメンテナンス作業において、このような配管減肉部の発生の有無、及び発生した場合にはその発生個所が何処であるかを検査しなければならない。
【0003】
この検査は、ガイド波と呼ばれる配管軸方向に伝播する超音波を発生させ、減肉部から反射されて戻ってくる反射エコーを解析することにより行われる。ここで、従来技術の一つとして、超音波発生手段に圧電素子を有する超音波探触子を用いたものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、圧電素子を有する超音波探触子を超音波発生手段として用いる場合には、カプラント(接触媒質)を介して超音波探触子を配管表面に接触させた状態で取り付けなければならず、また、配管表面に塗装が施されている場合には塗膜をグラインダ等で除去した後に超音波探触子の取付を行わなければならない。すなわち、特許文献1に係る従来技術を採用した場合、配管表面に対する超音波探触子の取付作業に多大な労力及び時間を費やさざるを得ないことになる。
【0005】
そのため、最近では、電磁超音波を配管材料の軸方向に伝播させることにより、配管内の減肉部の有無を発生させる手法も次第に多く採用されつつある(例えば、特許文献2)。この手法で用いられる電磁超音波送信機は、ローレンツ力を利用して配管材料に電磁超音波を発生させるので、配管表面上に非接触の状態で配置することが可能である。したがって、特許文献1に係る従来技術のように取付作業に多大な労力及び時間を費やすことを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−64540号公報
【特許文献2】特開2008−76296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に係る電磁超音波送信機は、電磁超音波がこの電磁超音波送信機を中心として配管の左右両方向(軸方向)に伝播されてしまうという厄介な性質を有している(この点については同公報には詳しい説明がなされていない。)。そのため、電磁超音波受信機が減肉部からの反射エコー信号を受信した場合、この反射エコー信号が左右いずれの方向からのものであるかを判別するのが困難となり、減肉部の個所を特定できないことがあった。
【0008】
例えば、電磁超音波送信機及び電磁超音波受信機による減肉部検出可能距離を片側で最大6mと仮定すると、配管長さが12m以内であれば、配管の一端側に送信機及び受信機を取り付けて超音波送信・受信動作を行った後に、配管の他端側に送信機及び受信機を再び取り付けて超音波送信・受信動作を行うようにすれば、ほぼ配管全長について配管減肉検査を実施することができる。
【0009】
しかし、配管長さが12mを超えるような場合は、送信機及び受信機を配管の一端側と他端側の間の中間領域にも取り付けなければならないが、この場合、受信機が減肉部からの反射エコー信号を受信したとしても、この反射エコー信号が左右いずれの方向から反射されたものであるかを正確且つ迅速に識別するのが困難となる。
【0010】
結局、特許文献2に係る電磁超音波送信機を用いた場合、検査可能な配管長さは実質的には一定以下に制限され、一定長さを超える配管の中間領域については別の手法(例えば、特許文献1に係る超音波探触子を用いる手法等)を採用しなければならず、充分な作業効率を得ることができない結果となっていた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電磁超音波送信機から配管材料の軸方向に向けて送信される電磁超音波が一方向のみとなるように制御することにより、配管長さの如何にかかわらず配管全長について効率的な検査が可能な電磁超音波を用いた配管減肉検査方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段として、本発明に係る配管減肉検査方法は、配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査方法において、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1及び第2の2つの電磁超音波送信機を、電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ軸方向へ相互にずらして配管表面に配置し、前記第1の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせると共に、前記第2の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせることにより、前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る配管減肉検査装置は、配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査装置において、前記配管の表面に配置されており、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1の電磁超音波送信機と、電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ前記第1の電磁超音波送信機から軸方向へずらした配管表面上の位置に配置され、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第2の電磁超音波送信機と、を備え、前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電磁超音波送信機から配管材料の軸方向に向けて送信される電磁超音波が一方向のみとなるように制御することができ、したがって、配管長さの如何にかかわらず配管全長について効率的な減肉検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る配管減肉検査装置の説明図であり、(a)は配管周りの斜視図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図2】図1における電磁超音波送信機1A(又は1B)の構成及び作用についての説明図。
【図3】図1における電磁超音波受信機2の構成及び作用についての説明図。
【図4】本発明で用いる電磁超音波送信機単体の一般的な動作特性についての説明図であり、(a)は超音波制御装置3が電磁超音波送信機1A(又は1B)のコイル12に供給する交流電流を制御することにより、この電磁超音波送信機から発生させる電磁超音波について、0°〜360°の位相角の範囲の正弦波形を示した説明図、(b)は送信機1A(又は1B)からの電磁超音波の送信方向を示す説明図。
【図5】図4(a)における0°、90°、180°、270°の各位相角を送信制御開始点とした場合に、送信機1A(又は1B)のR側及びL側に伝播する電磁超音波の波形を示した説明図。
【図6】送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図7】図6と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図8】図6の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図9】図8と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図10】送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図11】図10と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図12】図10の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図13】図12と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形。
【図14】図6〜図13の制御内容の概略をまとめて示した図表。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る配管減肉検査装置の説明図であり、(a)は配管周りの斜視図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
【0017】
図1(a)において、検査対象である配管Mの表面に複数台の第1の電磁超音波送信機1A、第2の電磁超音波送信機1B、及び電磁超音波受信機2が配置されている。この送信機1A,1Bは組を形成しており、配管Mの軸方向に所定の距離L1だけ相互にずれた状態で配置されている。そして、この送信機1A,1Bは、図1(b)に示すように、配管Mの周方向へ90°間隔で4組が配置されており、また、各組の送信機1A,1B同士の間に4台の電磁超音波受信機2が配置されている。
【0018】
送信機1A,1Bは、後述する重畳波形の性質により、右方向にのみ送信波W1を、あるいは左方向にのみ送信波W3を送信できるようになっている。そして、電磁超音波受信機2は、右側の減肉部F1からの反射エコーW2、あるいは左側の減肉部F2からの反射エコーW4を受信できるようになっている。したがって、このような構成によれば、電磁超音波受信機2の受信した信号が、右側からの反射エコーW2であるのか、あるいは左側からの反射エコーW4であるのかについて直ちに識別することが可能である。
【0019】
なお、本実施形態では電磁超音波受信機2の軸方向上の位置は第1の電磁超音波送信機1Aと同じ位置になっているが、第2の電磁超音波送信機1Bと同じ位置にすることもできる。
【0020】
これら電磁超音波送信機1A,1B及び電磁超音波受信機2の送信制御及び受信制御は超音波制御装置3により行われるようになっており、この超音波制御装置3の制御により得られたデータは、コンピュータ等により構成されるデータ解析装置4に送られて解析されるようになっている。
【0021】
図2は、図1における電磁超音波送信機1A(又は1B)の構成及び作用についての説明図である(これらの構成及び作用は周知のものである。)。電磁超音波送信機1Aは、配管表面に近い側がN極、遠い側がS極に磁化された永久磁石11を有しており、この永久磁石11にコイル12が巻回されている。超音波制御装置3は、このコイル12の両端間に交流電圧を印加して交流電流を流すことができるようになっている。
【0022】
配管表面には、永久磁石11の影響により符号14の矢印方向で示す磁束が分布しているが、コイル12に交流電流13が流れると磁束14の分布が変化しようとするので、この変化を妨げる方向に渦電流15が配管表面に流れる。すると、磁束14と渦電流15の向きは直交しているので、フレミングの左手の法則により配管Mの周方向には符号16で示す矢印方向にローレンツ力が発生する。そして、交流電流13の向きが反対になると、渦電流15の向きも反対になり、したがってローレンツ力16の向きも反対になる。このように周方向の向きが逐次変化するローレンツ力16によって、伝播方向が配管Mの軸方向となる電磁超音波(ガイド波)が発生する。
【0023】
ここで、電磁超音波送信機1A,1Bが送信する電磁超音波の周波数について説明すると、この周波数は一定以下の低周波数である。例えば、配管Mの肉厚を10mmとして考えてみると、電磁超音波の周波数を例えば5MHzの高周波数にした場合には、電磁超音波の波長は0.6mmとなって肉厚よりも短くなってしまう。そのため、この場合には、発生した電磁超音波は通常の横波超音波として配管Mの肉厚方向にしか伝播しないことになる。
【0024】
一方、電磁超音波の周波数を例えば50kHzの低周波数にした場合には、電磁超音波の波長は60mmとなって肉厚よりも長くなる。したがって、この場合には、発生した電磁超音波は肉厚方向には伝播せず、軸方向に伝播するガイド波となる。これらのことから、電磁超音波の周波数は、一般には数十kHz〜数百kHzの範囲になると考えられる。
【0025】
なお、本発明では、このように電磁超音波送信機1A,1Bが送信する電磁超音波の周波数は低周波数とならざるを得ないので、圧電素子を用いた超音波探触子(特許文献1)のようには高い解像度を得ることができず、検査対象の配管に対して微小な疵やき裂等を精度良く検出することが期待できない。それ故、本発明では、検出しようとする欠陥部分を減肉部に限定することとしている。
【0026】
図3は、図1における電磁超音波受信機2の構成及び作用についての説明図である(これらの構成及び作用は周知のものである。)。この電磁超音波受信機2は、図2で説明した電磁超音波送信機1A(又は1B)と略同様の構成を有するものであり、その作用も電磁超音波送信機1Aの場合の逆プロセスとなる。
【0027】
すなわち、電磁超音波受信機2は、配管表面に近い側がN極、遠い側がS極に磁化された永久磁石21を有しており、この永久磁石21にコイル22が巻回されている。超音波制御装置3は、このコイル22の両端間に発生する起電圧Vを検出できるようになっている。
【0028】
配管表面付近の肉厚部には、永久磁石21の影響により符号23の矢印方向で示す磁束が分布している。この状態で、電磁超音波送信機1A,1Bから送信された電磁超音波の反射エコーが到達すると、この到達した反射エコーに基づくローレンツ力24により、配管表面に渦電流25が発生する(フレミングの右手の法則)。そして、この渦電流25の発生により、コイル22の内部を通過する鎖交磁束が発生するので、コイル22にはこの磁束変化を抑制する誘導電流26が流れ、コイル22の両端間にはファラデーの法則に基づき起電圧Vが誘起される。超音波制御装置3は、この誘起された起電圧Vの検出に基づき反射エコーの波形を検出することができる。
【0029】
次に、本発明で用いる電磁超音波送信機単体の一般的な動作特性を図4及び図5を参照しつつ説明する。
【0030】
図4(a)は、超音波制御装置3が電磁超音波送信機1A(又は1B)のコイル12に供給する交流電流を制御することにより、この電磁超音波送信機から発生させる電磁超音波について、0°〜360°の位相角の範囲の正弦波形を示した説明図である。本明細書では、この超音波波形における0°、180°、360°等を「ゼロクロス点」と呼び、90°、270°等を「ピーク点」と呼ぶことにする。
【0031】
そして、本発明では、超音波制御装置3が電磁超音波送信機1A(又は1B)に対して、ゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として電流(又は電圧)制御を行うが、送信制御開始点以降は矢印方向で示した「位相角増大方向」へ向けて電流制御を行うようになっている。
【0032】
このような超音波制御装置3の電磁超音波送信機1A(又は1B)に対する電流制御により、図4(b)に示すように、電磁超音波送信機1A(又は1B)は、自身の配置位置を基準として左右両方向へ電磁超音波(ガイド波)を送信することになる。なお、以降の説明では、図4(b)に示すように、電磁超音波送信機1A(又は1B)の右方向を「R側」(一方の軸方向)と呼び、左方向を「L側」(他方の軸方向)と呼ぶことにする。
【0033】
図5は、図4(a)における0°、90°、180°、270°の各位相角を送信制御開始点とした場合に、電磁超音波送信機1A(又は1B)のR側及びL側に伝播する電磁超音波の波形を示した説明図である。なお、図5(及び以降の図6〜図13も含む)においては、超音波波形中に送信機1A(又は1B)も図示しているが、これは理解を容易にするために配管Mの軸方向(左右方向)上のみの位置を明らかにしたものである(したがって、上下方向については正しい送信機位置を示すものではない。)。
【0034】
図5(a)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を0°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0035】
図5(b)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を90°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)の位相角90°の右側部分と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0036】
図5(c)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を180°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)の位相角180°の右側部分と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0037】
図5(d)は、送信機1A(又は1B)の送信制御開始点を270°としたものであるが、送信機1A(又は1B)のR側には図4(a)の位相角270°の右側部分と同様の超音波波形が現れ、送信機1A(又は1B)のL側にはR側の波形と対称な超音波波形が現れる。
【0038】
次に、上述したような一般的動作特性を有する第1の電磁超音波送信機1A及び第2の電磁超音波送信機1Bを、配管Mの軸方向へ互いに所定距離L1だけずらして配置した状態で行う送信制御につき説明する。
【0039】
図6は、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0040】
図6(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角0°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。
【0041】
また、図6(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角90°(送信機1Aよりも90°遅れ)を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0042】
したがって、図6(c)に示すように、図6(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0043】
図7は、図6と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0044】
図7(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角90°を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。
【0045】
また、図7(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角0°(送信機1Aよりも90°進み)を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0046】
したがって、図7(c)に示すように、図7(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0047】
ここで、図6(c)と図7(c)とを比較してみれば明らかなように、前者では送信機1AのR側にのみ電磁超音波が送信され、後者では送信機1BのL側にのみ電磁超音波が送信されている。そして、本実施形態では図1(a)に示されているように、電磁超音波受信機2の軸方向上の位置は送信機1Aと同じ位置になっている。したがって、電磁超音波受信機2が、図6(c)の送信波に対応する減肉部からの反射エコーを受信する場合は問題がないが、図7(c)の送信波に対応する減肉部からの反射エコーを受信する場合は距離L1分のズレを考慮した距離補正を行った上で減肉部の位置を演算する必要がある(以降の図8〜図13においても同様である。)。
【0048】
図8は、図6の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0049】
図8(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角180°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。
【0050】
また、図8(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角270°(送信機1Aよりも90°遅れ)を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0051】
したがって、図8(c)に示すように、図8(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0052】
図9は、図8と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0053】
図9(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角270°を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。
【0054】
また、図9(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角90°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角180°(送信機1Aよりも90°進み)を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0055】
したがって、図9(c)に示すように、図9(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0056】
図10は、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0057】
図10(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角0°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。
【0058】
また、図10(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角270°(送信機1Aよりも270°遅れ)を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0059】
したがって、図10(c)に示すように、図10(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0060】
図11は、図10と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0061】
図11(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角270°を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側及びL側には図5(d)と同様の超音波波形が現れる。
【0062】
また、図11(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角0°(送信機1Aよりも270°進み)を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(a)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0063】
したがって、図11(c)に示すように、図11(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0064】
図12は、図10の場合と同様に、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角270°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1AのR側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0065】
図12(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角180°を送信制御開始点(ゼロクロス点)としているので、送信機1AのR側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。
【0066】
また、図12(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角90°(90°を450°と考えれば送信機1Aよりも270°遅れ)を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1Bには、送信機1Aの位置のR側方向で送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1Aの位置のL側方向で送信機1Aの逆波形が現れる。
【0067】
したがって、図12(c)に示すように、図12(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1AのL側では相殺されて現れず、送信機1AのR側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Aの配置位置を基準として、R側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0068】
図13は、図12と対になる説明図であって、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、超音波波形における位相角90°分の距離とし、送信機1A,1Bの重畳波形が送信機1BのL側にのみ向かう波形とする場合の説明図であり、(a)は送信機1Aの超音波波形、(b)は送信機1Bの超音波波形、(c)は送信機1A,1Bの重畳波形である。
【0069】
図13(a)に示すように、送信機1Aは図4(a)の位相角90°(450°)を送信制御開始点(プラス側ピーク点)としているので、送信機1AのR側には図5(b)と同様の超音波波形が現れる。
【0070】
また、図13(b)に示すように、送信機1Bは、送信機1Aよりも位相角270°分だけR側にずれた位置で、図4(a)の位相角180°(送信機1Aよりも270°進み)を送信制御開始点(マイナス側ピーク点)としているので、送信機1BのR側及びL側には図5(c)と同様の超音波波形が現れる。つまり、送信機1BのL側方向では送信機1Aと同じ超音波波形が現れ、一方、送信機1BのR側方向では送信機1Aの逆波形が現れる。
【0071】
したがって、図13(c)に示すように、図13(a),(b)の波形を重畳した重畳波形は、送信機1BのR側では相殺されて現れず、送信機1BのL側にのみ強めあって現れる。つまり、送信機1A,1Bに対して上記のような送信制御を行うことにより、送信機1Bの配置位置を基準として、L側のみの軸方向に向かう電磁超音波を送信することが可能になる。
【0072】
図14は、上述した図6〜図13の制御内容の概略をまとめて示した図表であり、(a)は図6〜図9についての図表、(b)は図10〜図13についての図表である。
【0073】
ところで、上述した図6乃至図13の説明では、送信機1A,1B間の軸方向上の距離L1を、位相角90°分又は位相角270°分の距離としている。しかし、これは理解を容易にするため及び図示の都合上、位相角の範囲を超音波波形の1周期分以内に限定したものである。実際には、この距離L1は、[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離となる。
【0074】
つまり、図2の説明において述べたように、電磁超音波の1周期の波長が例えば60mmであったとすると、位相角90°分の距離は15mm、位相角270°分の距離は45mmという短いものになるので、送信機1A,1Bを同一軸方向に配置できなくなることがある(送信機の大きさにもよるが)。それ故、実際には、この距離L1を、90°に360°の整数倍を加えた位相角、又は270°に360°の整数倍を加えた位相角に、適宜調整する必要がある。
【0075】
なお、図1に示したように、本実施形態では、4組の送信機1A,1Bが配管Mの周方向へ90°間隔で配置され、各組の送信機1A,1B同士の間に4台の電磁超音波受信機2が配置された構成としたが、これら送信機1A,1Bの組数及び受信機2の台数は適宜変更可能である。
【0076】
また、本実施形態では、受信機2の軸方向上の位置を送信機1Aと同じにし、重畳波形が送信機1BのL側にのみ現れる場合に距離補正を行う構成としているが、受信機2の軸方向上の位置を送信機1Bと同じにし、重畳波形が送信機1AのR側にのみ現れる場合に距離補正を行う構成としてもよい。
【0077】
以上説明したように、本発明では、2つの電磁超音波送信機1A,1Bを、電磁超音波波形の90°又は270°の位相角に対応する距離だけ軸方向へ相互にずらして配管Mの表面に配置し、電磁超音波送信機1Aからの電磁超音波を、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせると共に、電磁超音波送信機1Bからの電磁超音波を、第1の電磁超音波送信機1Aの送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせることにより、2つの電磁超音波送信機1A,1Bの電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにしている。
【0078】
したがって、本発明によれば、2台の送信機を組み合わせることにより、送信機単体ではその両側に超音波が送信されてしまうという厄介な性質を解消することができ、配管長さの如何にかかわらず配管全長について効率的な配管減肉検査を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0079】
M:配管、1A:第1の電磁超音波送信機、1B:第2の電磁超音波送信機、11:永久磁石、12:コイル、13:交流電流、14:磁束、15:渦電流、16:ローレンツ力、2:電磁超音波受信機、21:永久磁石、22:コイル、23:磁束、24:ローレンツ力、25:渦電流、26:誘導電流、3:超音波制御装置、4:データ解析装置、F1,F2:減肉部、W1,W3:送信波、W2,W4:反射エコー、L1:送信機1A,1B間の距離。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査方法において、
前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1及び第2の2つの電磁超音波送信機を、電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ軸方向へ相互にずらして配管表面に配置し、
前記第1の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせると共に、前記第2の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせることにより、
前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、
ことを特徴とする電磁超音波を用いた配管減肉検査方法。
【請求項2】
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をゼロクロス点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ゼロクロス点よりも90°又は270°だけ遅れたピーク点とした場合には、前記重畳波形が、第1の電磁超音波送信機の配置位置を基準として一方の軸方向に向かう波形となり、
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をピーク点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ピーク点よりも90°又は270°だけ進んだゼロクロス点とした場合には、前記重畳波形が、第2の電磁超音波送信機の配置位置を基準として他方の軸方向に向かう波形となる、
ことを特徴とする請求項1記載の電磁超音波を用いた配管減肉検査方法。
【請求項3】
配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査装置において、
前記配管の表面に配置されており、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1の電磁超音波送信機と、
電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ前記第1の電磁超音波送信機から軸方向へずらした配管表面上の位置に配置され、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第2の電磁超音波送信機と、
を備え、前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、
ことを特徴とする電磁超音波を用いた配管減肉検査装置。
【請求項4】
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をゼロクロス点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ゼロクロス点よりも90°又は270°だけ遅れたピーク点とした場合には、前記重畳波形が、第1の電磁超音波送信機の配置位置を基準として一方の軸方向に向かう波形となり、
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をピーク点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ピーク点よりも90°又は270°だけ進んだゼロクロス点とした場合には、前記重畳波形が、第2の電磁超音波送信機の配置位置を基準として他方の軸方向に向かう波形となる、
ことを特徴とする請求項3記載の電磁超音波を用いた配管減肉検査装置。
【請求項1】
配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査方法において、
前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1及び第2の2つの電磁超音波送信機を、電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ軸方向へ相互にずらして配管表面に配置し、
前記第1の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせると共に、前記第2の電磁超音波送信機からの電磁超音波を、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら送信を行わせることにより、
前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、
ことを特徴とする電磁超音波を用いた配管減肉検査方法。
【請求項2】
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をゼロクロス点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ゼロクロス点よりも90°又は270°だけ遅れたピーク点とした場合には、前記重畳波形が、第1の電磁超音波送信機の配置位置を基準として一方の軸方向に向かう波形となり、
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をピーク点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ピーク点よりも90°又は270°だけ進んだゼロクロス点とした場合には、前記重畳波形が、第2の電磁超音波送信機の配置位置を基準として他方の軸方向に向かう波形となる、
ことを特徴とする請求項1記載の電磁超音波を用いた配管減肉検査方法。
【請求項3】
配管材料の軸方向に電磁超音波を伝播させることにより配管内の減肉部の有無を検査する、電磁超音波を用いた配管減肉検査装置において、
前記配管の表面に配置されており、超音波波形のゼロクロス点又はピーク点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第1の電磁超音波送信機と、
電磁超音波波形の[90+360*n]°又は[270+360*n]°の位相角(nはゼロ又は正の整数)に対応する距離だけ前記第1の電磁超音波送信機から軸方向へずらした配管表面上の位置に配置され、前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点から90°又は270°の位相角だけずらしたピーク点又はゼロクロス点を送信制御開始点として、位相角増大方向へ向けて超音波波形を変化させながら、前記配管材料の一方及び他方の双方の軸方向へ電磁超音波を送信する第2の電磁超音波送信機と、
を備え、前記第1及び第2の2つの電磁超音波送信機の電磁超音波の重畳波形が、いずれか一方の電磁超音波送信機の配置位置を基準として、1方向のみの軸方向に向かう波形となるようにした、
ことを特徴とする電磁超音波を用いた配管減肉検査装置。
【請求項4】
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をゼロクロス点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ゼロクロス点よりも90°又は270°だけ遅れたピーク点とした場合には、前記重畳波形が、第1の電磁超音波送信機の配置位置を基準として一方の軸方向に向かう波形となり、
前記第1の電磁超音波送信機の送信制御開始点をピーク点にすると共に、前記第2の電磁超音波送信機の送信制御開始点を該ピーク点よりも90°又は270°だけ進んだゼロクロス点とした場合には、前記重畳波形が、第2の電磁超音波送信機の配置位置を基準として他方の軸方向に向かう波形となる、
ことを特徴とする請求項3記載の電磁超音波を用いた配管減肉検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−75499(P2011−75499A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229638(P2009−229638)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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