説明

電線の織布保護材および電線の織布保護材の形成方法

【課題】電線の屈曲部に織布保護材を巻き付ける。
【解決手段】予め屈曲しているワイヤハーネス12に織布保護材10を巻き付けて電線を保護する。織布保護材10は、ワイヤハーネス12に密着させて巻き付けられており、少なくともワイヤハーネス12の屈曲部12aを覆う部分において、織布保護材10を構成する縦横両素線が、電線の長手方向に対し斜め方向に向いて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め屈曲している電線の束に巻き付けて電線を保護する電線の織布保護材およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータ、ポンプ、ランプなど多くの電気機器が用いられており、これらの制御装置も各種知られている。例えば、車両では、各種の機器が、電気によって動作し、これら機器をパワーコントロールユニットを用いて制御する。従って、パワーコントロールユニットには多くの電線が接続され、これら電線の束は、まとめて適切な形に配策される。このようなまとめられた電線の束は、ワイヤハーネスと呼ばれる。
【0003】
ここで、パワーコントロールユニットでは、車両側からの各種配線のコネクタと、パワーコントロールユニットの基板のコネクタを接続するワイヤハーネスが利用され、このワイヤハーネスは両端にワイヤハーネス側コネクタが設けられてコネクタ間の接続を行う。このようなワイヤハーネスは、比較的狭い空間に配設する必要があり、屈曲部を有する場合が多い。一方、車両はその走行などのため振動し、ワイヤハーネスを振動から保護する必要がある。このため、ワイヤハーネスの電線の束に織布などの保護材を巻き付けてワイヤハーネスの電線が保護される。このようなワイヤハーネスの保護材は、例えば特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2718571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、保護材を電線の束に密着させて巻き付けるために、電線の束をまっすぐにして巻き付けている。ところが、このように保護材を巻き付けると、その後の電線の束が屈曲しにくくなる。すなわち、屈曲部の最小半径が比較的大きくなる。このため、狭い空間にワイヤハーネスを配策する場合の自由度が小さくなって、配策がしにくくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予め屈曲している電線の束に巻き付けて電線を保護する電線の織布保護材であって、電線の束に密着させて巻き付けられており、少なくとも電線の束の屈曲部を覆う部分において、織布保護材を構成する縦横両素線が、電線の長手方向に対し斜め方向に向いて配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、予め屈曲している電線の束に巻き付けて電線を保護する電線の織布保護材であって、織布保護材は、縦横両素線が斜め方向に位置するように織って構成されており、電線の束に密着させて巻き付けられ、少なくとも電線の束の屈曲部を覆う部分において、前記素線が電線の長手方向に対し、斜め方向に向いていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、織布保護材を電線の束に巻き付ける電線の織布保護材の形成方法であって、電線の束の屈曲部において、織布保護材を構成する縦横両素線が電線の長手方向に対し、斜め方向に向くようにして織布保護材を電線の束に密着させ、前記屈曲部において電線の束の長手方向に沿って織布を引き延ばしながら前記屈曲部を覆うように織布を巻き付け、織布保護材を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、織布保護材の素線が斜め方向を向いているため、電線の束の屈曲部に対しても引き延ばしながら巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】市販の織布保護材の模式図である。
【図2】実施形態の織布保護材の模式図である。
【図3】織布保護材のワイヤハーネスへの巻き付けを説明する図である。
【図4】屈曲部への織布保護材の巻き付けを説明する図である。
【図5】織布保護材の伸びを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1には、織布保護材1の模式図が示してある。図1(A)は、縦横素線の状態を示しており、縦横素線が織られることで織布が形成されている市販の織布である。図1(B)は、模式的に表したものである。
【0013】
図2(A)は、実施形態に係る織布保護材10を示している。この実施形態の織布保護材10は、図1の織布保護材1を斜め方向に裁断することで、容易に得られる。四角形の織布保護材10の縦横素線が両方とも斜め方向に配置されている。この例では、縦横素線は、四角形の各辺に対し、45度の角度をなしている。なお、このような織布保護材10について、図2(B)のように模式的に表す。
【0014】
図3(A)は、実施形態に係る織布保護材10をワイヤハーネス12に巻き付けて固定した状態を示してある。ワイヤハーネス12の一端には車両側コネクタ14、他端には基板側コネクタ16が接続されている。なお、ワイヤハーネス12は、30〜40本程度の電線の束からなっている。
【0015】
織布保護材10は、ワイヤハーネス12に引き延ばしながら巻き付けられる。特に、ワイヤハーネス12は、屈曲部12aを有しているが、織布保護材10は、この屈曲部12aについても、引き延ばしながら、巻き付けられる。
【0016】
なお、図3(B)には、ワイヤハーネス12がまっすぐな場合の織布保護材10の巻き付けについて、示している。このように、ワイヤハーネス12を織布保護材10で覆って、織布保護材1の両端をワイヤハーネス12の短手方向に伸ばしながら、巻き付ける。
【0017】
図4(A)には、織布保護材10が、屈曲部12aに引き延ばしながら巻き付けられる状態を示してある。図4(B)は、織布保護材10を示している。
【0018】
ワイヤハーネス12の上側水平部分においては、矢印で示すように、織布保護材10の左右両端部を下に向けて引っ張ることによって、ワイヤハーネス12に巻き付けられる。
【0019】
そして、屈曲部12aにおいては、矢印で示すように、織布保護材10を屈曲部12aの外面に沿って下方向に引っ張りながら、屈曲部12aの外周面を覆うように密着させる。その後、織布保護材10の左右両端を引っ張りながら、ワイヤハーネス12に巻き付ける。
【0020】
なお、織布保護材10をワイヤハーネス12に引っ張りながら巻き付けたら、端部を固定テープで固定する。なお、固定手段は、固定テープに限定されず、弾性テープの両端にフックが設けられているものなどでもよい。
【0021】
ここで、本実施形態においては、織布保護材10は、縦横素線がその端に対し、斜め方向に位置するようになっている。従って、織布保護材10を縦方向または横方向に引っ張った場合に、素線に対し斜め方向に引っ張ることになる。すなわち、図5(A)に示すように、縦横素線は両方とも斜め方向に伸びている。これを横方向に引っ張ると、図5(B)に示すように各素線が構成する四角形の穴が横方向に広がることで織布保護材10が広がる。また、縦方向に引っ張ると、図5(C)に示すように各素線が構成する四角形の穴が縦方向に広がることで織布保護材10が広がる。このため、素線自体が伸びなくても、織布保護材10が伸びることができ、これによってワイヤハーネス12に織布保護材10を密着させて巻き付けることが可能になる。
【0022】
なお、織布保護材10は、各種の繊維が利用可能であるが、耐久性、耐薬品性などから合成繊維が好適であり、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどが好適である。また、織り方は各種あるが、平織りが好ましい。
【符号の説明】
【0023】
1,10 織布保護材、12 ワイヤハーネス、12a 屈曲部、14 車両側コネクタ、16 基板側コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め屈曲している電線の束に巻き付けて電線を保護する電線の織布保護材であって、
電線の束に密着させて巻き付けられており、少なくとも電線の束の屈曲部を覆う部分において、織布保護材を構成する縦横両素線が、電線の長手方向に対し斜め方向に向いて配置されていることを特徴とする電線の織布保護材。
【請求項2】
予め屈曲している電線の束に巻き付けて電線を保護する電線の織布保護材であって、
織布保護材は、縦横両素線が斜め方向に位置するように織って構成されており、
電線の束に密着させて巻き付けられ、少なくとも電線の束の屈曲部を覆う部分において、前記素線が電線の長手方向に対し、斜め方向に向いていることを特徴とする電線の織布保護材。
【請求項3】
織布保護材を電線の束に巻き付ける電線の織布保護材の形成方法であって、
電線の束の屈曲部において、織布保護材を構成する縦横両素線が電線の長手方向に対し、斜め方向に向くようにして織布保護材を電線の束に密着させ、前記屈曲部において電線の束の長手方向に沿って織布を引き延ばしながら前記屈曲部を覆うように織布を巻き付け、織布保護材を形成することを特徴とする電線の織布保護材の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161170(P2012−161170A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19445(P2011−19445)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】