説明

電線ホルダ

【課題】本発明は、電線14を保持する際の作業性を向上させた電線ホルダ10を提供する。
【解決手段】各弧状部31は、爪部33を嵌合凹部34内に嵌合させることで、個別に本体26と組付け可能になっている。これにより、ハウジング11から導出された3本の各電線14を、電線収容部38内に、個別に位置決めしながら保持することができる。これにより、電線14を電線ホルダ10に保持する際の作業効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線ホルダとしては、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、上記文献においてはハウジングに嵌合されたゴム栓を抜け止めするゴム栓ホルダとしても機能している。この電線ホルダは、一対の半割体の端部同士をヒンジで連結してなる。一対の半割体の間に電線を挟み付けた状態で半割体同士を合体させ、この状態で電線ホルダをハウジングに取り付けることで、電線が保持される。
【特許文献1】特開2005−129356公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のハウジングには、3本の電線の端末に配設された各端子金具を収容するためのキャビティが左右方向(水平方向)に並んで形成されている。このため、キャビティから導出される電線も左右方向に並んで導出されるから、各電線を、左右に並んだ状態のまま半割体同士でまとめて挟み付けることで、容易に電線を電線ホルダで保持できる。
【0004】
しかしながら上記の構成によると、キャビティが左右方向(水平方向)に並んで形成されているので、ハウジングの左右方向の幅寸法を小さくすることは困難である。そこでハウジングの小型化を図るために、例えば、3本の電線の端末に配設された各端子金具を収容するための3つのキャビティを概ね正三角形の頂点に位置するように形成することが考えられる。
【0005】
しかしながら上記構成によると、ハウジングに形成されたキャビティから導出される電線は、電線の導出方向から見て概ね三角形の頂点の位置に配される。このような位置関係にある3本の電線を、それぞれの位置を揃えながら、電線ホルダで保持するのは困難である。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線を保持する際の作業性を向上させた電線ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、3本の電線を導出するための3つの電線導出口が、前記電線の導出方向から見て略正三角形の各頂点に位置するように形成されてなるコネクタハウジングに取り付けられて前記電線を保持する電線ホルダであって、前記電線の近傍に配される本体と、前記本体に対して個別に取付可能な3つの電線挟持部とを備え、前記本体と前記電線挟持部との間に形成された電線収容部内に前記電線を保持する。
【0008】
本発明によれば、コネクタハウジングから導出された3本の各電線を、電線収容部内に、個別に位置決めしながら保持することができる。これにより、電線を電線ホルダに保持する際の作業効率を向上させることができる。
【0009】
本発明の実施態様として、以下の構成が好ましい。
電線挟持部は、本体とヒンジで連結されて一体に形成されていてもよい。上記の構成によれば、電線ホルダは一体に形成されているので、本体と、電線挟持部とが別体である場合に比べて電線の組付け作業が容易である。
【0010】
各電線収容部は、前記コネクタハウジングに形成された各電線導出口相互の位置関係に対応して、略正三角形の各頂点の位置に設けられてもよい。上記の構成によれば、電線導出口から導出された電線を大きく曲げる必要がないので、電線の位置決めが容易である。
【0011】
本体には前記電線挟持部が取りつけられた状態で電線挟持部と対向する領域に第1凹部が設けられており、電線挟持部に本体に取りつけられた状態で本体と対向する領域に第2凹部が設けられていてもよい。また、本体には電線挟持部が取りつけられた状態で電線挟持部と対向する領域に第1凹部が設けられていてもよい。また、電線挟持部に本体に取りつけられた状態で本体と対向する領域に第2凹部が設けられていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、電線を第1凹部又は第2凹部に当接させることで、電線ホルダに対して容易に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電線を電線ホルダに保持する際の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図1ないし図10を参照して説明する。本発明に係る電線ホルダ10はコネクタハウジング(以下、ハウジング)11に取り付けられて使用される。図1に示すように合成樹脂製のハウジング11には端子金具12を収容するための3つのキャビティ13が、図1における左右方向に延びて形成されている。各キャビティ13内には、電線14の端末に圧着された端子金具12が、図1における左方から挿入される。電線14は、心線15の外周を絶縁被覆16で包囲してなる。キャビティ13の内壁には弾性変形可能なランス17が突設されており、ランス17が端子金具12の底壁と係合することで端子金具12が抜け止め状態で保持される。
【0015】
3つの各キャビティ13の左端縁は、電線14がハウジング11から導出される電線導出口19とされる。図2に示すように、3つの電線導出口19は、ハウジング11の左端面において、略正方形の各頂点の位置に設けられている。
【0016】
円筒形をなす電線14の外周には円筒形の防水ゴム栓18が液密状に外嵌されている。この防水ゴム栓18の外周面が、電線導出口19の内周面に対して液密状に密着している。この防水ゴム栓18により、電線14と、電線導出口19の内面との間がシールされる。
【0017】
図1におけるハウジング11の左端部には、電線ホルダ10を取り付けるための電線ホルダ収容部20が凹設されている。図2に示すように電線ホルダ収容部20は角の丸められた略正三角形状をなしており、電線ホルダ10を収容可能になっている。電線ホルダ10は、電線14を保持する機能と有すると共に、防水ゴム栓18がハウジング11の左方に離脱するのを規制するためのゴム栓ホルダとしての機能も有している。
【0018】
図3及び図4に示すように、電線ホルダ10は、合成樹脂製の板状の部材であり、図3の紙面を貫通する方向から見て角の丸められた略正三角形状をなす。電線ホルダ10の外縁部のうち、三角形の頂点に対応する位置の近傍には、ハウジング11に設けられた係合孔21(図5参照)に係合可能な係合突起22が設けられている。この係合突起22は弾性変形可能な弾性撓み片23に形成されている。弾性撓み片23は、図5における電線ホルダ10の右端縁から左方に延びて形成されている。弾性撓み片23は、例えば図5における上下方向に弾性撓み可能になっている。図5に示す弾性撓み片23においては、弾性撓み片23の下面に、下方に突出して係合突起22が設けられている。係合突起22の右側面は傾斜の緩やかなテーパ面24とされ、左側面は切り立った受け面25とされる。電線ホルダ10に対してハウジング11から離脱する方向(図5における左方)の力が加わったときに、受け面25は、係合孔21の内壁と左方から当接することで、電線ホルダ10を抜け止め状態に保持する。
【0019】
電線ホルダ10は、図6及び図7に示すように、1つの本体26と、本体26に個別に取付可能な3つの電線挟持部27とを備える。本体26は、図3に示すように、3本の電線14の軸線を結んだ領域の内側に位置する基部28と、基部28から各電線14側に延びて設けられた3本の腕部29とを備える。
【0020】
各腕部29は、図6及び図7に示すように、基部28から放射状に延びており、全体として半円弧状をなす。各腕部29の端部には、ヒンジ35を介して電線挟持部27が連結されている。これにより、本体26と電線挟持部27とは一体に形成されている。また、電線挟持部27は、本体26に対し、ヒンジ35を支点として回動可能になっている。上述した弾性撓み片23及び係合突起22は、腕部29に設けられている。
【0021】
図8に示すように、電線挟持部27は、電線挟持部27を本体26に取り付けたときに略三角形状の外形の一部を形成するフレーム30と、電線挟持部27を本体26に取り付けたときにフレーム30から電線ホルダ10の内方へ突出して、略弧状をなす弧状部31とを備える。
【0022】
図3に示すように、各弧状部31の先端と本体26とには、それぞれ、電線挟持部27を本体26に組み付けた状態において、各弧状部31の先端と本体26とが当接する領域に合わせ面32A,32Bが形成されている。各弧状部31には、合わせ面32Bにおいて爪部33が突設されている。一方、本体26には、合わせ面32Aにおいて嵌合凹部34が形成されている。電線挟持部27を本体26に組みつけた状態では、この爪部33は、嵌合凹部34内に嵌合し、弧状部31がヒンジ35を支点として開き方向に変位しないように規制する。上記の構成により、各弧状部31は、爪部33を嵌合凹部34内に嵌合させることで、個別に本体26と組付け可能になっている。
【0023】
図3に示すように、弧状部31の爪部33を本体26の嵌合凹部34内に嵌合させた状態において、腕部29のうち弧状部31と対向する面には第1凹部36が形成されている。また、弧状部31には、腕部29と対向する面に第2凹部37が形成されている。そして、電線挟持部27と本体26とを組み付けた状態では、腕部29の第1凹部36と、弧状部31の第2凹部37により、断面が略円形をなす電線収容部38が形成される。この電線収容部38の内径は、電線14の外径と略同じかやや大きく設定されている。
【0024】
図9に示すように、基部28、腕部29、フレーム30、及び弧状部31には、肉抜き部39が形成されている。これにより電線ホルダ10のヒケが防止される。
【0025】
次に、本実施形態の作用、効果について説明する。上述したように、ハウジング11の電線導出口19は電線14の導出方向から見て略正三角形の各頂点に位置するように配されている(図2参照)。このため、3本の電線14は、電線14の軸線同士を結んだときに略正三角形となるような配置でハウジング11から導出されている。
【0026】
まず、図6及び図7に示すように、弧状部31の爪部33と、本体26の嵌合凹部34との係合を解除する。次いで、電線ホルダ10の基部28を、3本の電線14の軸線同士を結んだ領域の内側に差し入れる。その後、電線14のうちの1本を、1つの腕部29の第1凹部36に当接させて位置決めする。この状態で、ヒンジ35を支点として、電線14と当接した腕部29に連結されている電線挟持部27を基部28側に回動させる。そして、弧状部31の合わせ面32Bと本体26の合わせ面32Aとを当接させる。このとき、弧状部31の爪部33が本体26の嵌合凹部34内に嵌合し、弧状部31がヒンジ35を支点として開き変位することが規制される。
【0027】
上記の場合において、1つの電線14を、1つの弧状部31の第2凹部37に当接させて位置決めしてもよい。この場合には、弧状部31の第2凹部37に電線14を当接させた状態で、ヒンジ35を支点として電線挟持部27を基部28側に回動させて、弧状部31の爪部33を本体26の嵌合凹部34内に嵌合させる。
【0028】
上記のように、弧状部31の爪部33と本体26の嵌合凹部34とが嵌合した状態では、腕部29の第1凹部36と弧状部31の第2凹部37との間に形成された電線収容部38内に電線14が保持された状態になる。これにより、1つの電線14が1つの電線収容部38により個別に位置決めされる(図10参照)。
【0029】
次に、図10において一点鎖線で示すように、2つめの電線14を、上記と同様にして電線収容部38により位置決めする。更に、同様にして、3つめの電線14も電線収容部38により位置決めする(図3参照)。
【0030】
電線ホルダ10により3本の電線14を保持した状態で、電線ホルダ10をハウジング11側に変位させて、ハウジング11の電線ホルダ収容部20内に収容する。このとき、電線ホルダ10の係合突起22がハウジング11の外壁と当接して、弾性撓み片23がその肉厚方向内方に弾性撓みする。さらに電線ホルダ10をハウジング11側に押し込むと、弾性撓み片23が復帰変形し、係合突起22がハウジング11の係合孔21内に嵌合する。これにより、電線ホルダ10がハウジング11に抜け止め状態で保持される。このようにして、ハウジング11から導出された3本の電線14が電線ホルダ10により保持される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、ハウジング11から導出された3本の各電線14を、電線収容部38内に、個別に位置決めしながら保持することができる。これにより、電線14を電線ホルダ10に保持する際の作業効率を向上させることができる。
【0032】
また、電線挟持部27は、本体26とヒンジ35で連結されて一体に形成されているから、本体26と、電線挟持部27とが別体である場合に比べて電線14の組付け作業が容易である。
【0033】
また、各電線収容部38は、ハウジング11に形成された各電線導出口19相互の位置関係に対応して、略正三角形の各頂点の位置に設けられている。これにより、電線導出口19から導出された電線14を大きく曲げる必要がないので、電線14の位置決めが容易である。
【0034】
また、腕部29には電線挟持部27が取りつけられた状態で電線挟持部27と対向する領域に第1凹部36が設けられており、電線挟持部27に本体26に取りつけられた状態で腕部29と対向する領域に第2凹部37が設けられている。これにより、電線14を第1凹部36又は第2凹部37に当接させることで、電線ホルダ10に対して容易に位置決めすることができる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では、本体26(腕部29)に第1凹部36が形成され、且つ、電線挟持部27(弧状部31)に第2凹部37が形成される構成としたが、これに限られず、本体26にのみ第1凹部36が形成されてもよく、また、電線挟持部27にのみ第2凹部37が形成される孔性としてもよい。
(2)本実施形態では、本体26と電線挟持部27とはヒンジ35で連結される構成としたが、これに限られず、本体26と電線挟持部27とは別体であってもよい。
(3)本実施形態では、電線収容部38は略正三角形の頂点に位置するように配されていたが、これに限られず、例えば一列に並んで配されてもよく、本体26と電線挟持部27とが個別に取付可能であれば、任意の配置で設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る電線ホルダをハウジングに取り付けた状態を示す断面図
【図2】ハウジングを電線の導出面側から見た正面図
【図3】電線を保持した状態の電線ホルダを示す正面図
【図4】電線ホルダの側面図
【図5】電線ホルダとハウジングとの嵌合構造を示す要部拡大断面図
【図6】爪部と嵌合凹部との嵌合を外した状態の電線ホルダを示す正面図
【図7】爪部と嵌合凹部との嵌合を外した状態の電線ホルダを示す背面図
【図8】爪部と嵌合凹部とを嵌合させた状態の電線ホルダを示す背面図
【図9】電線ホルダの全体斜視図
【図10】電線を電線ホルダに保持する過程を示す正面図
【符号の説明】
【0037】
10…電線ホルダ
11…ハウジング(コネクタハウジング)
14…電線
19…電線導出口
26…本体
27…電線挟持部
35…ヒンジ
36…第1凹部
37…第2凹部
38…電線収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本の電線を導出するための3つの電線導出口が、前記電線の導出方向から見て略正三角形の各頂点に位置するように形成されてなるコネクタハウジングに取り付けられて前記電線を保持する電線ホルダであって、
前記電線の近傍に配される本体と、前記本体に対して個別に取付可能な3つの電線挟持部とを備え、前記本体と前記電線挟持部との間に形成された電線収容部内に前記電線を保持する電線ホルダ。
【請求項2】
前記電線挟持部は、前記本体とヒンジで連結されて一体に形成されている請求項1記載の電線ホルダ。
【請求項3】
前記各電線収容部は、前記コネクタハウジングに形成された前記各電線導出口相互の位置関係に対応して、略正三角形の各頂点の位置に設けられる請求項1または請求項2に記載の電線ホルダ。
【請求項4】
前記本体には前記電線挟持部が取りつけられた状態で前記電線挟持部と対向する領域に第1凹部が設けられており、前記電線挟持部に前記本体に取りつけられた状態で前記本体と対向する領域に第2凹部が設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線ホルダ。
【請求項5】
前記本体には前記電線挟持部が取りつけられた状態で前記電線挟持部と対向する領域に第1凹部が設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線ホルダ。
【請求項6】
前記電線挟持部に前記本体に取りつけられた状態で前記本体と対向する領域に第2凹部が設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−4179(P2009−4179A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162865(P2007−162865)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】