説明

電線・ケーブル被覆用難燃性組成物および電線・ケーブル

【課題】ハロゲンフリーで、優れた難燃性および耐水・耐湿性を併せ持つ電線・ケーブル被覆用難燃性組成物、およびこのような組成物を用いた電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】ノンハロゲン難燃性組成物であって、(A)オレフィン系ポリマーに、難燃剤として金属水酸化物を配合してなる比重1.26以上の成分と、(B)シラン架橋性のオレフィン系ポリマーを含む成分とを、50:50〜95:5の質量比で混合してなり、90℃の熱水に80日間浸漬した後の吸水率が7%以下である電線・ケーブル被覆用難燃性組成物、およびこのような組成物からなる被覆を有する電線・ケーブルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリーで難燃性および耐水・耐湿性に優れる難燃性樹脂組成物およびこれを用いた電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電線・ケーブル分野においては、環境への負荷を低減するため、焼却時にハロゲン化水素などの有害なガスを発生するポリ塩化ビニル(PVC)やハロゲン系難燃剤を配合した組成物に代えて、ポリオレフィンに水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を多量に添加して難燃化したハロゲンフリーの組成物を被覆材料として用いた電線・ケーブルが使用されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、そのようなハロゲンフリーの難燃性組成物は、金属水酸化物が多量に添加されているため、吸水性、吸湿性が高く、一度、吸水乃至吸湿すると体積固有抵抗率が低下し、絶縁体としての機能が維持できなくなるという問題があった。
【0004】
従来、この種のポリオレフィン系難燃性組成物の特性を向上させる方法は、例えば耐熱性や機械的特性を向上させるためシラン架橋を行うなど、種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、吸水性、吸湿性については未だ有効な対策は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−212291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ハロゲンフリーの難燃性組成物であって、優れた難燃性および耐水・耐湿性を併せ持つ電線・ケーブル被覆用難燃性組成物、およびこのような難燃性組成物を用いた電線・ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するため、請求項1に記載された発明は、ノンハロゲン難燃性組成物であって、(A)オレフィン系ポリマーに、難燃剤として金属水酸化物を配合してなる比重1.26以上の成分と、(B)シラン架橋性のオレフィン系ポリマーを含む成分とを、50:50〜95:5の質量比で混合してなり、90℃の熱水に80日間浸漬した後の吸水率が7%以下であることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物である。
である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において、前記吸水率が5%以下であることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において、前記(A)成分と(B)成分の混合比が、質量比で50:50〜90:10であることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において、前記(A)成分および(B)成分のオレフィン系ポリマーは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において、前記(A)成分の金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物である。
【0012】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において、前記(B)成分のシラン架橋性のオレフィン系ポリマーは、低密度ポリエチレンにビニルトリメトキシシランをグラフトさせたものであることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物である。
【0013】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において、90℃の熱水に80日間浸漬した後の体積固有抵抗率が1.0×1011Ω・cm以上であることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物である。
【0014】
請求項8に記載された発明は、請求項1乃至7のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物からなる被覆を有することを特徴とする電線・ケーブルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、ハロゲンフリーであって、優れた難燃性と耐水・耐湿性を併せ持つことができる。
【0016】
また、本発明の電線・ケーブルは、上記のような特性を有する被覆を備えるので、ハロゲンフリーの優れた難燃性と耐水・耐湿性を併せ持つ電線・ケーブルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電線・ケーブルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
まず、本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物について説明する。
【0020】
本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において使用される(A)成分のオレフィン系ポリマーとしては、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)などのエチレンプロピレンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリイソブチレンなどが例示される。また、メタロセン触媒によりエチレンにプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィンや環状オレフィンなどを共重合させたものなども使用することができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。(A)成分のオレフィン系ポリマーとしては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましく、その他のオレフィン系ポリマーはそれらの併用成分としての使用が好ましい。(A)成分のオレフィン系ポリマーは、エチレン・酢酸ビニル共重合体であることがより好ましい。
【0021】
また、(A)成分に難燃剤として配合される金属水酸化物は、高温に曝されると水を放出し、その際の気化熱で昇温を抑制して難燃効果を発現するものであり、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、などが例示される。これらの金属水酸化物は、ステアリン酸などの高級脂肪酸、シランカップリング剤、モリブデン酸塩などによる表面処理が施されていてもよい。このような表面処理された金属水酸化物を使用することにより、ポリマー成分と混練する際の分散性を高めることができる。金属水酸化物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
この金属水酸化物の配合量は、オレフィン系ポリマー100質量部に対して30〜200質量部の範囲が好ましく、50〜150質量部の範囲がより好ましい。30質量部未満では難燃性が低下し、200質量部を超えると機械的特性や柔軟性が低下する。
【0023】
(A)成分には、上述した金属水酸化物以外の他のノンハロゲン系難燃剤も、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。そのようなノンハロゲン系難燃剤としては、グアニジン系、メラミン系などの窒素系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤燐などのリン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、炭酸カルシウムなどが例示される。
【0024】
(A)成分には、さらに、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱老化防止剤、充填剤、加工助剤、滑剤、着色剤などの添加剤を配合することができる。
【0025】
なお、難燃性と耐水・耐湿性をバランスさせる観点からは、(A)成分は比重が1.26以上であることが好ましく、1.3〜1.4であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物において使用される(B)成分のシラン架橋性のオレフィン系ポリマーは、オレフィン系ポリマーにシラン化合物をグラフトさせたものである。このシラン架橋性のオレフィン系ポリマーは、オレフィン系ポリマーにシラン化合物をラジカル発生剤とともに添加し、押出機、ニーダなどで加熱混練して、シラン化合物をオレフィン系ポリマーのポリマー鎖にグラフトさせることによって得られる。
【0027】
オレフィン系ポリマーとしては、前述した(A)成分のオレフィン系ポリマーと同様のものが例示されるが、なかでも低密度エチレン、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましい。また、シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、ビニトリブトキシシランなど、一般にシランカップリング剤として知られているものが使用される。これらのシラン化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらに、ラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどが挙げられる。シラン化合物は、オレフィン系ポリマー100質量部に対し、通常0.5〜5質量部添加される。また、ラジカル発生剤は、オレフィン系ポリマー100質量部に対し、通常0.02〜1質量部添加される。
【0028】
(B)成分には、上述したシラン架橋性のオレフィン系ポリマー以外のオレフィン系ポリマーを、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。また、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱老化防止剤、充填剤、加工助剤、滑剤、着色剤などの添加剤を配合することができる。(B)成分には、さらに、シラン架橋性オレフィン系ポリマーの分子間の架橋を促進するための触媒を添加する配合することができる。このような触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫メチルカプチド、オクタン酸第一錫、テトラブテンチタネートなどが挙げられる。この架橋触媒は、シラン架橋性のオレフィン系ポリマー100質量部に対して、通常0.01〜0.2質量部配合される。なお、触媒は(A)成分に配合してもよく、(A)および(B)成分の両方に配合してもよい。
【0029】
本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、上記(A)成分に配合される各成分および(B)成分に配合される各成分を、それぞれバンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合し、さらにそれらの混合物を通常の混練機を用いて均一に混合することにより容易に製造することができる。
【0030】
上記(A)成分および(B)成分の混合比は、質量比で50:50〜90:10とすることが好ましい。(A)成分の割合が前記範囲より少ないと難燃性が低下し、逆に(A)成分の割合が前記範囲より多いと耐水・耐湿性を十分に向上させることができない。
【0031】
本願発明においては(A)成分および(B)成分としてそれぞれ市販の組成物を用いることも可能である。(A)成分の市販品としては、例えばEJ−C2102、EJ−C2104(以上、昭和化成工業社製 商品名)、QE1594、QE1597−1(以上、アプコ社製)、ANA9906P(リケンテクノス社製 商品名)などが挙げられる。また、(B)成分の市販品としては、例えばXLE815N、XCF710N、XCF730N(以上、三菱化学社製 商品名)、QS161Z、QS183NZ、QS672RZ(以上、アプコ社製)などが挙げられる。
【0032】
本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、優れた難燃性を有しているうえに、90℃の熱水に80日間浸漬した後の吸水率が7%以下であるという優れた耐水・耐湿性を有している。90℃の熱水に80日間浸漬した後の吸水率は5%以下であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、90℃の熱水に80日間浸漬した後の体積固有抵抗率が1.0×1011Ω・cm以上であることが好ましく、1.0×1012Ω・cm以上であることがより好ましい。
【0034】
さらに、本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、JIS K 6251により測定される酸素指数が、25以上であることが好ましく、28以上であることがより好ましい。
【0035】
本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、例えば電力ケーブル、制御用ケーブル、通信ケーブル、信号用ケーブル、移動用ケーブル、船用ケーブル、絶縁電線などの各種電線・ケーブルの絶縁材、シース材、介在材料などとして用いることができる。特に、本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、優れた難燃性および耐水・耐湿性を有しているので、屋外配線用電線をはじめ、高湿環境あるいは直接、水に接触するような環境で使用される電線・ケーブルの絶縁材、シース材、介在材料として有用である。
【0036】
次に、本発明の電線・ケーブルについて説明する。
【0037】
本発明の電線・ケーブルは、上述した電線・ケーブル被覆用難燃性組成物を、導体外周に直接もしくは他の被覆を介して押出被覆するか、あるいはテープ状に成形したものを巻き付けることにより製造される。組成物は、被覆後もしくは成形後、シラン架橋される。
【0038】
図1は、本発明の電線・ケーブルの一実施形態を示す横断面図である。
【0039】
図1において、1は、例えば断面積が2mmからなる銅撚線導体を示し、この銅撚線導体1上には、前述した電線・ケーブル被覆用難燃性組成物を押出被覆することによって例えば厚さ0.8mmの絶縁体2が形成されている。
【0040】
このように構成される絶縁電線においては、ハロゲンフリーの優れた難燃性を有するとともに、耐水・耐湿性にも優れたものとなる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
実施例1〜6、比較例1、2
エチレン・酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル社製 商品名 EV250)100質量部、水酸化マグネシウム(神島化学工業社製 商品名 マグシーズS−4) 100 質量部、および酸化防止剤(チバ・スペシャリティ社製 商品名 イルガノックス1010)0.5質量部を加圧ニーダを用いて均一に混練して(A)成分を得た。また、低密度ポリエチレン100質量部に、ビニルトリメトキシシラン2質量部およびジクミルパーオキサイド0.1質量部を配合して押出機に投入し、加熱混練して、低密度ポリエチレンにビニルトリメトキシシランをグラフトさせたコンパウンドを得、さらに、このコンパウンドにジブチル錫ジラウレート0.05質量部を添加し、押出機を用いて均一に混練して(B)成分を得た。
【0043】
得られた(A)成分と(B)成分とを表1に示す配合比(質量比)でミキシングロールにより均一に混練した後、シート状に押し出した。
【0044】
次いで、上記各シートを60℃の温水に24時間浸漬してシラン架橋させ、試験用シートを作製した。なお、試験用シートは、厚さ2mmと厚さ3mmの2種類を作製した。
【0045】
得られた試験用シートについて、吸水率、体積固有抵抗率(初期および熱水浸漬後)および酸素指数を下記に示す方法で測定した。吸水率および体積固有抵抗率の測定には、厚さ2mmの試験用シートを使用し、酸素指数の測定には、厚さ3mmの試験用シートを使用した。
【0046】
[吸水率]
試験用シートを90℃の熱水に80日間浸漬した後、速やかにカールフィッシャー法により測定した。
[体積固有抵抗率(初期および熱水浸漬後)]
JIS K 6723に基づき測定した。浸漬後の体積固有抵抗率は、試験用シートを90℃の熱水に80日間浸漬した後、アルミ箔で密封して23℃まで冷却し、その後測定した。
[酸素指数]
JIS K 7201−2に準拠して測定した。
【0047】
これらの結果を表1の下欄に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から明らかなように、実施例に係る電線・ケーブル被覆用難燃性組成物は、熱水浸漬後の吸水率が7%以下であることから、90℃の熱水に80日間浸漬後も1.0×1011Ω・cm以上の体積固有抵抗を有しており、絶縁体として十分に機能する絶縁性能が維持されていた。また、酸素指数も25以上で、難燃性も良好であった。特に、(A)成分と(B)成分との混合比が70:30〜80:20である実施例3〜5では、難燃性および耐水・耐湿性がともにより良好であった。これに対し、シラン架橋性のオレフィン系ポリマーが未配合の比較例1では、体積固有抵抗率は大きく低下し、また、シラン架橋性のオレフィン系ポリマーを過剰配合した比較例2では、酸素指数が小さく、良好な難燃性を得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0050】
1…銅撚線導体、2…絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンハロゲン難燃性組成物であって、
(A)オレフィン系ポリマーに、難燃剤として金属水酸化物を配合してなる比重1.26以上の成分と、(B)シラン架橋性のオレフィン系ポリマーを含む成分とを、50:50〜95:5の質量比で混合してなり、90℃の熱水に80日間浸漬した後の吸水率が7%以下であることを特徴とする電線・ケーブル被覆用難燃性組成物。
【請求項2】
前記吸水率が5%以下であることを特徴とする請求項1記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物。
【請求項3】
前記(A)成分と(B)成分の混合比が、質量比で50:50〜90:10であることを特徴とする請求項1または2記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物。
【請求項4】
前記(A)成分および(B)成分のオレフィン系ポリマーは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物。
【請求項6】
前記(B)成分のシラン架橋性のオレフィン系ポリマーは、低密度ポリエチレンにビニルトリメトキシシランをグラフトさせたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物。
【請求項7】
90℃の熱水に80日間浸漬した後の体積固有抵抗率が1.0×1011Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物からなる被覆を有することを特徴とする電線・ケーブル。

【図1】
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【公開番号】特開2011−49116(P2011−49116A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198669(P2009−198669)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】