説明

電線保護回路および電線の保護方法

【課題】モータ駆動回路に用いられる電線の許容電流値を極力小さく抑えることにより、電線コスト、電線重量の低減が可能な電線保護回路を提供する。
【解決手段】電源12とモータ14とが電線18によって接続されたモータ駆動回路に回路遮断手段16が設けられ、前記回路遮断手段16は、一旦作動しても復帰させることができる復帰型の回路遮断器161を備え、該復帰型の回路遮断器の最小作動電流値Ibは、前記モータ14の定格電流値Irより大きくなるように設定され、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値Ibより大きい電流が流れた場合における前記復帰型の回路遮断器26が作動するまでの時間は、前記電線18が焼損するまでの時間より短くなるように設定されると共に、前記電線18の許容電流値Icは、前記モータが14ロックした場合に前記モータ駆動回路に流れるモータロック電流値Ifより小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線保護回路および電線の保護方法に関し、さらに詳しくは、過電流の通電によるモータ駆動回路を構成する電線の焼損を防ぐため、異常時に回路を遮断する回路遮断手段をモータ駆動回路に設けた電線保護回路、および回路遮断手段によるモータ駆動回路における電線の保護方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されるように、モータ等の装置を駆動させる駆動回路は、過電流の通電による電線の焼損を防止するため、ヒューズを有する回路遮断手段を備える。具体的には、図7に示される電線保護回路100のように、電源102とモータ104とが所定の温度で溶融する溶融金属を用いたヒューズ106を介して電線108で接続されている。
【0003】
このようなモータ駆動回路を備える車両用のパワーウィンドウ装置や、ワイパー駆動装置等では、氷結や異物の挟み込み等により窓ガラスやワイパーを駆動させているモータ104がロックされることが起こりうる。この時、駆動回路を構成する電線108には、モータの定格電流値Irの数倍の電流が流れる。そのため、上記回路遮断手段としてのヒューズ106は、一般的に図8に示すような特性を有する。
【0004】
図8は、ヒューズ106が作動(溶断)するまでの時間の関係を示した曲線Cf、および電線108(モータ駆動回路)に流れる電流の大きさと電線108が焼損(芯線の発熱により被覆材が溶融、発煙する)するまでの時間の関係を示した曲線Ccを、用いられるモータ14の定格電流値Ir、モータ104がロックした際に電線に流れる電流値(モータロック電流値Ifという。以下同じ。)と併せて示した図である。この図8から分かるように、ヒューズ106は、モータロックが発生する度に作動し、ヒューズ106の交換が必要となれば煩わしさに耐えないので、モータロック電流値If以上の電流が通電した場合に限り溶断するように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−130277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このモータ駆動回路では、このようにモータロック電流値If以上で作動するヒューズ106が選定されることにより、モータ駆動回路を構成する電線108の径が大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
すなわち、モータ駆動回路に用いられる電線108は、上記ヒューズ106によって保護される対象物であるため、図8に示すように、電線108の許容電流値Ic(電線が温度上昇により焼損してしまうことがない電流値(日本電線工業会規格(JCS)参照)をいう。)は、少なくともヒューズ106の最小作動電流値Ib(ヒューズ106が溶断する最小の電流値)より大きくしなければならない。つまり、上記のようなパワーウィンドウ装置等、モータロック電流値Ifを考慮した設計にしなければならない装置では、用いられる電線108の径が必要以上に(用いられるモータ104の定格電流Irの大きさの割に)大きくなってしまうことになる。その結果、電線108の材料コストが嵩むといった問題や、電線108の重量の増大により、モータ駆動回路を備える装置全体の重量が増大してしまうという問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、モータ駆動回路に用いられる電線の許容電流値を極力小さく抑えることにより、電線コスト、電線重量の低減が可能な電線保護回路、電線の保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電線保護回路は、電源とモータとが電線によって接続されたモータ駆動回路に回路遮断手段が設けられた電線保護回路であって、前記回路遮断手段は、一旦作動しても復帰させることができる復帰型の回路遮断器を備え、該復帰型の回路遮断器の最小作動電流値は、前記モータの定格電流値より大きくなるように設定され、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値より大きい電流が流れた場合における前記復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間は、前記電線が焼損するまでの時間より短くなるように設定されると共に、前記電線の許容電流値は、前記モータがロックした場合に前記モータ駆動回路に流れるモータロック電流値より小さくなるように設定されていることを要旨とするものである。
【0010】
また、本発明に係る電線の保護方法は、電源とモータとが電線によって接続されたモータ駆動回路に回路遮断手段を設けたモータ駆動回路における電線の保護方法であって、前記回路遮断手段は、一旦作動しても復帰させることができる復帰型の回路遮断器を備え、該復帰型の回路遮断器の最小作動電流値を、前記モータの定格電流値より大きくなるように設定し、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値より大きい電流が流れた場合における前記復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間を、前記電線が焼損するまでの時間より短くなるように設定すると共に、該電線の許容電流値を、前記モータがロックした場合に前記モータ駆動回路に流れるモータロック電流値より小さくなるように設定することを要旨とするものである。
【0011】
なお、上記構成における最小作動電流値とは、回路遮断器が作動する最小の電流値をいい(最小作動電流値未満の電流が通電した場合には回路遮断器が作動することはない。)、電線の許容電流値とは、電線が焼損する(電線の被覆材が溶融、発煙する)ことのない最小の電流値のことをいう。
【0012】
このような構成の本発明によれば、回路遮断手段が作動する度に交換する必要がない復帰型の回路遮断装置を備えているため、従来型のモータ駆動回路のように回路遮断手段であるヒューズの交換の煩わしさを考慮し、回路遮断手段が作動する最小作動電流値をモータロック電流以上に設定する必要はない。つまり、回路遮断手段が備える復帰型の回路遮断器の最小作動電流値を、モータ定格電流値以上に設定すればよく、これにより、電線の許容電流値をモータロック電流値以下に設定することができるため、電線の径を従来よりも小さくすることができ、電線コストおよび電線重量を大幅に低減させることができる。
【0013】
また、前記回路遮断手段は、一旦作動すると復帰させることができない非復帰型の回路遮断器をさらに備え、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値より大きい電流が流れた場合における前記非復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間は、前記復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間より長く、かつ前記電線が焼損するまでの時間より短くなるように設定されていれば好適である。
【0014】
このように、回路遮断手段を、復帰型の回路遮断器に加え、モータ駆動回路に所定の大きさの電流が流れた場合に、復帰型の回路遮断器より作動するまでの時間が長い非復帰型の回路遮断器を設けることで、復帰型の回路遮断器が故障等により作動しなかったとしても、非復帰型の回路遮断器が作動することで回路が遮断されるため、電線が確実に保護される。
【0015】
前記復帰型の回路遮断器は、固定接片および該固定接片に対して熱的影響により当接離反される可動接片とからなり、該可動接片がバイメタルによって形成されたものであればよい。また、前記非復帰型の回路遮断器は、ヒューズであればよい。
【0016】
このように、本発明に係る電線保護回路および電線の保護方法に用いられる復帰型の回路遮断器としては、可動接片がバイメタルにより構成されたものが例示でき、非復帰型の回路遮断器としては、ヒューズが例示できる。このような回路遮断器を採用することで、簡易な構成で、安価にモータ駆動回路を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電線保護回路および電線の保護方法によれば、回路遮断手段が復帰型の回路遮断器を備えるため、回路遮断手段が備える復帰型の回路遮断器の最小作動電流値を、モータ定格電流値以上に設定すればよく、これにより、電線の許容電流値をモータロック電流値以下に設定することができる。よって、電線の径を従来よりも小さくすることが可能となり、電線コストおよび電線重量を従来よりも大きく低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電線保護回路(モータ駆動回路)の回路図である。
【図2】図1に示した本発明の第一実施形態に係る電線保護回路が備えるサーキットブレーカおよび電線の特性を説明するための図である。
【図3】図1に示した本発明の第一実施形態に係る電線保護回路が備えるサーキットブレーカの構成を説明するための概略図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る電線保護回路(モータ駆動回路)の回路図である。
【図5】図4に示した本発明の第二実施形態に係る電線保護回路を構成するサーキットブレーカ、電線、ヒューズの特性を説明するための図である。
【図6】本発明を車両用のパワーウィンドウ装置に適用した回路図の一例である。
【図7】従来の電線保護回路(モータ駆動回路)の回路図である。
【図8】図7に示した従来の電線保護回路が備えるヒューズおよび電線の特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る電線保護回路(モータ駆動回路)10の回路図である。また、図2はこの電線保護回路10を構成する後述のサーキットブレーカ161および電線18の特性を説明するための図である。具体的には、サーキットブレーカ161(モータ駆動回路)に流れる電流の大きさとサーキットブレーカ161が作動するまでの時間の関係を示した曲線C1、および電線18(モータ駆動回路)に流れる電流の大きさと電線18が焼損(芯線の発熱により被覆材が溶融、発煙する)するまでの時間の関係を示した曲線C2を、用いられるモータ14の定格電流値Ir、モータロック電流値Ifと併せて示した図である。
【0020】
本実施形態に係る電線保護回路10は、電源12とモータ14(種類は問わない)とを接続する電線18と、この電線18を保護するため、回路に過電流が通電した場合に回路を遮断する回路遮断手段16とを備える。そして、回路遮断手段16は、回路遮断器であるサーキットブレーカ161を備える。
【0021】
サーキットブレーカ161は、一旦作動したとしても作動前の状態に復帰することが可能な復帰型の回路遮断器である。このサーキットブレーカ161は、図2に示す曲線C1で表される特性を有する。具体的には、サーキットブレーカ161の最小作動電流値Ib(回路遮断器が作動する最小の電流値をいい、この最小作動電流値未満の電流が通電している場合には回路遮断器が作動することはない。以下同じ。)は、モータ14の定格電流値Irより大きくなるように設定されている。また、曲線C1と曲線C2の関係から分かるように、モータ駆動回路に所定の大きさの電流(最小作動電流値Ibより大きい電流)が流れた場合に、サーキットブレーカ161が作動するまでの時間が、電線18が焼損するまでの時間より短くなるように設定されている。つまり、サーキットブレーカ161は、モータ14の定格電流値以下で作動することはなく、また、電線18を保護するため、所定の大きさの電流を所定時間以上通電させることがないように設定されている。
【0022】
そして、本実施形態では、このような復帰型の回路遮断器を用いているため、サーキットブレーカ161の最小作動電流値Ibを、モータロック電流値If以上に設定する必要はない。なぜなら、何らかの理由によりモータ14がロックし、電線保護回路10内にモータロック電流が流れ、サーキットブレーカ161が作動したとしても、交換せずに即座に復帰させることができるからである(回路遮断器としてヒューズのような非復帰型の回路遮断器を用いた場合では、モータ14がロックする度に交換が必要となるため、回路遮断器の最小作動電流値をモータロック電流値以上にする必要がある。)。
【0023】
なお、かかるサーキットブレーカ161としては、例えば、図3に示すようなバイメタル式のサーキットブレーカを適用することができる。すなわち、ケース体161aに収納された固定接片161bと、バイメタルからなる可動接片161cとからなる。可動接片161cを構成するバイメタルの材質としては、例えば、高温膨張側にCu−Ni、低温膨張側にNi−Fe等を用いたものが挙げられるが、特に限定されるものではない。また、適用するバイメタルとしては、直熱型のバイメタルであってもよいし、傍熱型のバイメタルであってもよい。
【0024】
電線18は、サーキットブレーカ161によって保護されるものであるため、前述したように、モータ駆動回路に所定の大きさの電流が流れた場合に焼損してしまうまでの時間が、サーキットブレーカ161が作動するまでの時間よりも長く、かつその許容電流値Ic(電線が温度上昇により焼損してしまうことがない電流値(日本電線工業会規格(JCS)参照)をいう。以下同じ。)が、モータロック電流値Ifより小さくなるものが選定されている。
【0025】
このような電線18を選定することができるのは、回路遮断手段16が有するサーキットブレーカ161が、復帰型の回路遮断器であるからである。つまり、前述したように、復帰型の回路遮断器を用いれば、回路遮断器の交換の必要がないため、サーキットブレーカ161の最小作動電流値Ibを、モータロック電流If以上に設定する必要はない。一方、電線18は、サーキットブレーカ161により焼損が防止されればよいため、サーキットブレーカ161が作動する電流値を小さくすることができれば、それに伴い電線18の許容電流値Icを小さくすることができる。よって、電線18の許容電流値Icをモータロック電流値If以下になるように設定することができる。
【0026】
ゆえに、例えば回路遮断器として非復帰型の回路遮断器であるヒューズのみを用いた従来技術のように、回路遮断器の最小作動電流値をモータロック電流値以上にしなければならない電線保護回路と比較し、電線18の許容電流値Icを小さく、すなわち、電線18の径(芯線の径)を小さくすることができる。したがって、本実施形態に係る電線保護回路10によれば、電線18のコストの低減、電線18の軽量化につながる。
【0027】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る電線保護回路20は、図4にその回路図を示すように、回路遮断手段26が、サーキットブレーカ161に加え、ヒューズ261を備える点で第一実施形態と異なる。よって、第一の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図5は、この電線保護回路20を構成するサーキットブレーカ161および電線18の特性(曲線C1および曲線C2)に加え、ヒューズ261の特性を説明するための図である。具体的には、ヒューズ261(モータ駆動回路)に流れる電流の大きさと、ヒューズ261が作動(溶断)するまでの時間の関係を示した曲線を、サーキットブレーカ161および電線18の特性、用いられるモータ14の定格電流値Irおよびモータロック電流値Ifと併せて示した図である。なお、ヒューズは、使用環境下の気温等によってその特性が大きく変化するため、最も溶断しやすい環境下と最も溶断しにくい環境下における特性の変化を考慮する必要がある。したがって、図5には、最も溶断しやすい環境下における特性を曲線C3minで、最も溶断しにくい環境下における特性を曲線C3maxで示した。
【0028】
回路遮断手段26は、前述した復帰型の回路遮断器であるサーキットブレーカ161の上流側に、一度作動(溶断)すると復帰させることができない非復帰型の回路遮断器であるヒューズ261を備える。このヒューズ261は、サーキットブレーカ161が故障した場合(例えば、固定接片161bと可動接片161cの固着による動作不良など)に、サーキットブレーカ161に代わって回路を遮断する役割を果たす。
【0029】
したがって、図5に示すように、ヒューズ261は、次のような特性を有することが必要である。すなわち、モータ駆動回路に所定の大きさの電流が流れた場合に、ヒューズ261が作動するまでの時間は、サーキットブレーカ161が正常動作可能である場合にはサーキットブレーカ161を優先的に作動させるべく、サーキットブレーカ161が作動するまでの時間(曲線C1)より長くなるように設定されている。これは、最もヒューズ261が溶断しやすい場合の特性(曲線C3min)を考慮して設定すればよい。また、モータ駆動回路に所定の大きさの電流が流れた場合に、ヒューズ261が作動するまでの時間は、サーキットブレーカ161が故障した場合に電線18を保護すべく、電線18が焼損するまでの時間(曲線C2)より短くなるように設定されている。これは、最もヒューズ261が溶断しにくい場合の特性(曲線C3max)を考慮して設定すればよい。
【0030】
このように、第二実施形態では、回路遮断手段26を、復帰型の回路遮断器たるサーキットブレーカ161に加え、サーキットブレーカ161を優先的に作動させる非復帰型の回路遮断器たるヒューズ261が設けられている。そのため、通常時には即座に復帰させることが可能なサーキットブレーカ161が優先的に作動する一方、サーキットブレーカ161が故障等により作動しなかった場合には、ヒューズ261が作動することで回路が遮断されるため、電線18が確実に保護されることとなる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、復帰型の回路遮断器としてバイメタル式のサーキットブレーカ161を用いることを説明したが、一旦作動しても交換が不要である回路遮断器であればその他の回路遮断器を用いてもよい。例えば電磁型のサーキットブレーカもしくは、PTC、あるいは半導体スイッチを回路電流を検知して制御する構成のものでよい。同様に、非復帰型の回路遮断器としてヒューズ261を使用することを説明したが、その他の非復帰型の回路遮断器を用いてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、使用環境の変化による特性の変化が特に大きいヒューズ261のみ使用環境下における特性の変化を考慮して選定されていることを説明したが、その他の構成部材、例えばサーキットブレーカ161等も、使用環境の変化による特性の変化を考慮して選定すれば、電線保護回路10,20の信頼性をさらに高めることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明について説明する。図6は、本発明を車両用のパワーウィンドウ装置30に適用した回路図の一例である。
【0035】
図6に示すように、パワーウィンドウ装置30は、窓ガラスの移動方向(開方向あるいは閉方向)を制御するコントロールユニット32と、回路を構成する電線18を保護するための電線保護ユニット34とを備える。
【0036】
コントロールユニット32は、図示されない窓ガラスを駆動させるモータ14の正転(窓ガラスを開方向に移動させる回転)と逆転(窓ガラスを閉方向に移動させる回転)を切り替えるユニットであり、マイコン321と、正転用リレー32aおよび逆転用リレー32bとを備える。窓ガラスを開放させる方向にスイッチ38を操作すると、マイコン321により正転用リレー32aがオン状態となり、電流は図中の矢印の方向に流れる。これによりモータ14が正転し、窓ガラスは開方向に移動する。一方、窓ガラスを閉鎖させる方向にスイッチ38を操作すると、マイコン321により逆転用リレー32bがオン状態となり、電流は図中の矢印とは反対の方向に流れる。これによりモータ14が逆転し、窓ガラスは閉方向に移動する。
【0037】
電線保護ユニット34は、上記実施形態における回路遮断手段16,26に相当する構成であり、サーキットブレーカ161と、ヒューズ261とを有する。
【0038】
サーキットブレーカ161は、上記第一および第二実施形態で説明したように、その最小作動電流値が、モータ14の定格電流値より大きくなるように設定されている。また、モータ駆動回路に所定の大きさの電流が流れた場合に、サーキットブレーカ161が作動するまでの時間が、電線18が焼損するまでの時間より短くなるように設定されている。
【0039】
ヒューズ261は、上記第二実施形態で説明したように、モータ駆動回路に所定の大きさの電流が流れた場合におけるヒューズ261が作動するまでの時間は、サーキットブレーカ161が作動するまでの時間より長く、かつ電線18が焼損するまでの時間より短くなるように設定されている。
【0040】
このようにパワーウィンドウ装置30を構成すれば、復帰型の回路遮断器であるサーキットブレーカ161を用いているため、電線18の許容電流値をモータ14がロックした際に流れるモータロック電流より小さく、すなわち、電線18の径を小さくすることができ、電線18のコスト削減、軽量化につながる。
【0041】
また、電線18が焼損する可能性のある大きさの電流が通電した場合、通常時は即座に復帰させることが可能なサーキットブレーカ161が優先的に作動するが、サーキットブレーカ161が故障等により作動しなかった場合には、ヒューズ261が作動する。つまり、復帰型の回路遮断器であるサーキットブレーカ161を優先的に作動させることで良好なメンテナンス性を維持しつつ、万が一の場合にはヒューズ261が作動するため、電線18の保護回路として、高い信頼性を有する。
【符号の説明】
【0042】
10 電線保護回路(第一実施形態)
12 電源
14 モータ
16 回路遮断手段
161 サーキットブレーカ
161b 固定接片
161c 可動接片
18 電線
20 電線保護回路(第二実施形態)
26 回路遮断手段
261 ヒューズ
Ir モータの定格電流値
If モータロック電流値
Ic 電線の許容電流値
Ib サーキットブレーカの最小作動電流値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源とモータとが電線によって接続されたモータ駆動回路に回路遮断手段が設けられた電線保護回路において、前記回路遮断手段は、一旦作動しても復帰させることができる復帰型の回路遮断器を備え、該復帰型の回路遮断器の最小作動電流値は、前記モータの定格電流値より大きくなるように設定され、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値より大きい電流が流れた場合における前記復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間は、前記電線が焼損するまでの時間より短くなるように設定されると共に、前記電線の許容電流値は、前記モータがロックした場合に前記モータ駆動回路に流れるモータロック電流値より小さくなるように設定されていることを特徴とする電線保護回路。
【請求項2】
前記回路遮断手段は、一旦作動すると復帰させることができない非復帰型の回路遮断器をさらに備え、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値より大きい電流が流れた場合における前記非復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間は、前記復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間より長く、かつ前記電線が焼損するまでの時間より短くなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電線保護回路。
【請求項3】
前記復帰型の回路遮断器は、固定接片および該固定接片に対して熱的影響により当接離反される可動接片とからなり、該可動接片がバイメタルによって形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電線保護回路。
【請求項4】
前記非復帰型の回路遮断器は、ヒューズであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電線保護回路。
【請求項5】
電源とモータとが電線によって接続されたモータ駆動回路に回路遮断手段を設けたモータ駆動回路における電線の保護方法であって、前記回路遮断手段は、一旦作動しても復帰させることができる復帰型の回路遮断器を備え、該復帰型の回路遮断器の最小作動電流値を、前記モータの定格電流値より大きくなるように設定し、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値より大きい電流が流れた場合における前記復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間を、前記電線が焼損するまでの時間より短くなるように設定すると共に、該電線の許容電流値を、前記モータがロックした場合に前記モータ駆動回路に流れるモータロック電流値より小さくなるように設定することを特徴とする電線の保護方法。
【請求項6】
前記回路遮断手段は、一旦作動すると復帰させることができない非復帰型の回路遮断器をさらに備え、前記モータ駆動回路に前記最小作動電流値より大きい電流が流れた場合における前記非復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間を、前記復帰型の回路遮断器が作動するまでの時間より長く、かつ前記電線が焼損するまでの時間より短くなるように設定することを特徴とする請求項5に記載の電線の保護方法。
【請求項7】
前記復帰型の回路遮断器は、固定接片および該固定接片に対して熱的影響により当接離反される可動接片とからなり、該可動接片がバイメタルによって形成されたものであることを特徴とする請求項6または7に記載の電線の保護方法。
【請求項8】
前記非復帰型の回路遮断器は、ヒューズであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の電線の保護方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−172049(P2010−172049A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9486(P2009−9486)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】