説明

電線分岐構造

【課題】 電磁波の放射を防ぐとともに、シールド電線の一端に取り付けられるコネクタを配置するスペースを低減できる電線分岐構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る電線分岐構造1は、複数の電線10を有するシールド電線30を本線30Aから複数の支線30B,30Cに分岐させており、本線30A及び前記各支線30B,30Cに対応する電線10を被覆する導電性のシールド部材100を備える。シールド部材100は、前記各支線30B,30Cに対応する電線10がそれぞれ個別に挿入される複数の電線挿入開口部111,112を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のケースに収容される機器(例えば、モータやインバータ)間の接続に用いられる電線分岐構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)等において、金属製のケースに収容される機器(例えば、モータやインバータ)間の接続に用いられるシールド構造について、様々な提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシールド構造には、複数本の電線を一括して編組線により被覆したシールド電線が設けられ、シールド電線の両端にそれぞれ接続される端子がコネクタにそれぞれ装着される。
【0004】
そして、各コネクタには、機器が収容されたケースに取り付けられて内部導体(端子など)を覆う導線性の金属シェルがそれぞれ設けられており、この各金属シェルに編組線の端部がそれぞれ接続される。これにより、編組線がケースに対して電気的に接続され、電磁波の放射を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−250995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のシールド構造では、1つの機器から複数(例えば、2つ)の機器を接続する場合、複数本のシールド電線が必要である。つまり、従来のシールド構造では、シールド電線の一端に設けられる一方のコネクタ及びシールド電線の他端に設けられる他方のコネクタをそれぞれ複数用意する必要があり、一方のコネクタ及び他方のコネクタを配置するスペースが増大してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、電磁波の放射を防ぐとともに、シールド電線の一端に取り付けられるコネクタを配置するスペースを低減できる電線分岐構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、複数の電線(電線10)を有するシールド電線(シールド電線30)を本線(本線30A)から複数の支線(支線30B,30C)に分岐させる電線分岐構造(電線分岐構造1)であって、前記本線及び前記各支線に対応する前記電線を被覆する導電性のシールド部材(シールド部材100,200)を備え、前記シールド部材は、前記各支線に対応する前記電線がそれぞれ個別に挿入される複数の電線挿入開口部(電線挿入開口部111,112)を有することを要旨とする。
【0009】
かかる特徴によれば、シールド部材は、本線及び各支線に対応する電線を被覆する。これにより、金属製のケースに収容される機器(例えば、モータやインバータ)間の接続に用いられる場合において、電磁波の放射を防ぐことができる。
【0010】
また、シールド部材は、各支線に対応する電線がそれぞれ個別に挿入される複数の電線挿入開口部を有している。これにより、各電線挿入開口部により本線から各支線に対応するように電線が分岐されるため、本線の端部に取り付けられるコネクタを配置するスペースを低減できる。
【0011】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記シールド部材は、前記本線に対応する前記電線を被覆する本線側シールド部材(本線側シールド部材110)と、前記各支線に対応する前記電線をそれぞれ被覆する複数の支線側シールド部材(支線側シールド部材120,130)とを有し、前記本線側シールド部材は、前記支線側シールド部材と接続されるとともに前記各電線挿入開口部が形成される金属シェルによって構成されることを要旨とする。
【0012】
かかる特徴によれば、シールド部材は本線側シールド部材と複数の支線側シールド部材とを有し、本線側シールド部材は各電線挿入開口部が形成される導電性の金属シェルによって構成される。これにより、本線及び各支線に対応する電線を確実に被覆することは勿論、金属シェルにより本線と各支線との分岐箇所を確実に被覆できるため、電磁波の放射をより確実に防ぐことができる。
【0013】
また、本線から複数の支線に対応するようにシールド部材自体を分岐させる必要がなくなる。このため、シールド部材の分岐の形状や方向等に合わせて様々な種類のシールド部材を製造することがなく、既存の支線側シールド部材(例えば、編組線)を使用できる。従って、支線側シールド部材の製造コストを低減でき、支線側シールド部材の使用用途が増大するとともに支線側シールド部材の汎用性をも増大する。
【0014】
さらに、金属シェルに形成される電線挿入開口部の数を設定することで、様々な支線に対応可能となる。つまり、既存の支線側シールド部材を使用しつつ、金属シェルを変更するのみで様々な電線の分岐に対応でき、電線分岐構造の自由度が増大する。
【0015】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記金属シェルは、前記各電線挿入開口部が形成される複数の中間シェル(中間シェル140,150)と、前記各中間シェルがそれぞれ取り付けられる本体シェル(本体シェル160)とを有し、前記本体シェルは、前記各中間シェルが取り付けられた状態で前記各電線挿入開口部と連通する単一の開口部(開口部161)を備え、前記開口部には、前記本線に対応する前記電線が前記各支線に対応する前記電線に仕分けされた状態で、前記各中間シェルが取り付けられることを要旨とする。
【0016】
かかる特徴によれば、金属シェルは複数の中間シェルと本体シェルとを有し、本体シェルの開口部に各中間シェルが取り付けられる。これにより、本体シェルを変更することなく各中間シェルのみを設定することで、様々な支線に対応可能となる。つまり、既存の支線側シールド部材を使用しつつ、各中間シェルを変更するのみで様々な電線の分岐に対応でき、電線分岐構造の自由度が増大する。
【0017】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記シールド部材は、前記本線に対応する前記電線を被覆する本線被覆部(本線被覆部210)と、前記本線被覆部と一体に形成され、前記各支線に対応する前記電線を被覆する複数の支線被覆部(支線被覆部220,230)とを有し、前記本線被覆部及び前記各支線被覆部は、編組線及び金属箔の何れかによって形成されており、前記各支線被覆部は、前記電線挿入開口部をそれぞれ有しており、前記本線に対応する前記電線が前記各支線に対応する前記電線に分岐した状態で、前記各支線に対応する前記電線を被覆していることを要旨とする。
【0018】
かかる特徴によれば、シールド部材は本線被覆部と複数の支線被覆部とを有し、支線被覆部は各電線挿入開口部をそれぞれ有しており、本線に対応する電線が各支線に対応する電線に分岐した状態で、各支線に対応する前記電線を被覆している。これにより、電磁波の放射を防ぎつつ、本線から各支線に対応するように電線が分岐されるため、本線の端部に取り付けられるコネクタを配置するスペースを低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の特徴によれば、電磁波の放射を防ぐとともに、シールド電線の一端に取り付けられるコネクタを配置するスペースを低減できる電線分岐構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、第1実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る電線分岐構造1を示す平面図である。
【図3】図3は、第2実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。
【図4】図4は、第2実施形態に係る電線分岐構造1を示す側面図(図3のF矢視図)である。
【図5】図5は、第3実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。
【図6】図6は、第3実施形態に係る電線分岐構造1を示す平面図である。
【図7】図7(a)は、第3実施形態に係る本線側シールド部材110を示す分解斜視図であり、図7(b)は、第3実施形態に係る本線側シールド部材110の一部を拡大斜視図である。
【図8】図8は、第4実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。
【図9】図9は、第4実施形態に係る電線分岐構造1を示す平面図である。
【図10】図10は、第4実施形態に係るシールド部材100(金属箔)を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る電線分岐構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)第3実施形態、(4)第4実施形態、(5)その他の実施形態について説明する。
【0022】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0023】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0024】
(1)第1実施形態
(電線分岐構造の構成)
まず、第1実施形態に係る電線分岐構造1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る電線分岐構造1を示す平面図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、電線分岐構造1は、導電性の金属ケース(不図示)に収容される不図示の機器(例えば、モータやインバータ)間の接続に用いられる。この電線分岐構造1は、複数の電線10を有するシールド電線30を本線30Aから複数(実施形態では、2つ)の支線30B,30Cに分岐させている。
【0026】
また、電線分岐構造1は、本線30A及び支線30B,30Cに対応する電線10を被覆する導電性のシールド部材100を備えている。なお、シールド部材100の詳細については、後述する。
【0027】
本線30Aに対応する電線10の先端には、端子(不図示)が設けられ、この端子がコネクタ40に装着されている。一方、各支線30B,30Cに対応する電線10の先端には、端子11B,11Cがそれぞれ設けられ、各端子11B,11Cがコネクタ(不図示)にそれぞれ装着されている。なお、電線10の先端に設けられる各コネクタ40等は、金属ケース内の機器に接続された相手側コネクタ(不図示)と嵌合するようになっている。
【0028】
(シールド部材の構成)
次に、上述したシールド部材100の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0029】
図1及び図2に示すように、シールド部材100は、本線30Aに対応する電線10を被覆する本線側シールド部材110と、各支線30B,30Cに対応する電線10を被覆する複数の支線側シールド部材120,130とを有している。
【0030】
本線側シールド部材110は、コネクタ40と相手側コネクタ(不図示)の嵌合方向に沿った箱状を有しており、支線側シールド部材120,130と接続される。また、本線側シールド部材110は、各支線30B,30Cに対応する電線10がそれぞれ個別に挿入される複数の電線挿入開口部111,112を有している。この各電線挿入開口部111,112は、開口長手方向に沿って隣接した状態で、それぞれ異なる方向(約90度)に向かって開口される。
【0031】
ここで、第1実施形態では、本線側シールド部材110は、導電性の金属シェルによって構成されている。この金属シェルは、金属ケース内の機器に接続された相手側コネクタ(不図示)と嵌合するコネクタ40に一体形成されている。なお、コネクタ40には、該コネクタ40を金属ケースに固定するためのボルト等の固定部材が挿通可能な挿入孔113が複数形成されている。
【0032】
なお、本線側シールド部材110(金属シェル)は、必ずしもコネクタ40に一体形成されている必要はなく、コネクタ40と別体に形成されて該コネクタ40のハウジングに装着されるものであってもよい。
【0033】
各支線側シールド部材120,130は、外部からのノイズを遮断する編組線によって形成されている。各支線側シールド部材120,130の一端は、本線側シールド部材110の各電線挿入開口部111,112を覆った状態で加締部材114,115により加締られることによって、本線側シールド部材110にそれぞれ取り付けられる。一方、各支線側シールド部材120,130の他端は、不図示のコネクタに設けられた金属シェル51,61の一部を覆った状態で加締部材52,62により加締られることによって、金属シェル51,61にそれぞれ固定される。
【0034】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態では、シールド部材100は、本線30A及び各支線30B,30Cに対応する電線10を被覆する。これにより、金属製のケースに収容される機器(例えば、モータやインバータ)間の接続に用いられる場合において、電磁波の放射を防ぐことができる。
【0035】
また、シールド部材100は、各支線30B,30Cに対応する電線10がそれぞれ個別に挿入される複数の電線挿入開口部111,112を有している。これにより、各電線挿入開口部111,112により本線30Aから各支線30B,30Cに対応するように電線10が分岐されるため、本線30Aの端部に取り付けられるコネクタ40を配置するスペースを低減できる。
【0036】
第1実施形態では、シールド部材100は本線側シールド部材110と複数の支線側シールド部材120,130とを有し、本線側シールド部材110は各電線挿入開口部111,112が形成される導電性の金属シェルによって構成される。これにより、本線30A及び各支線30B,30Cに対応する電線10を確実に被覆することは勿論、金属シェルにより本線30Aと各支線30B,30Cとの分岐箇所を確実に被覆できるため、電磁波の放射をより確実に防ぐことができる。
【0037】
また、本線30Aから複数の支線30B,30Cに対応するようにシールド部材100自体を分岐させる必要がなくなる。このため、シールド部材100の分岐の形状や方向等に合わせて様々な種類のシールド部材100を製造することがなく、既存の支線側シールド部材120,130(例えば、編組線)を使用できる。従って、支線側シールド部材120,130の製造コストを低減でき、支線側シールド部材120,130の使用用途が増大するとともに支線側シールド部材120,130の汎用性をも増大する。
【0038】
さらに、金属シェルに形成される電線挿入開口部111,112の数を設定することで、様々な支線30B,30Cに対応可能となる。つまり、既存の支線側シールド部材120,130を使用しつつ、金属シェルを変更するのみで様々な電線10の分岐に対応でき、電線分岐構造1の自由度が増大する。
【0039】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る電線分岐構造1について、図面を参照しながら説明する。図3は、第2実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。図4は、第2実施形態に係る電線分岐構造1を示す側面図(図3のF矢視図)である。なお、上述した第1実施形態に係る電線分岐構造1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0040】
上述した第1実施形態では、各電線挿入開口部111,112は、それぞれ異なる方向(約90度)に向かって開口している。
【0041】
これに対して、第2実施形態では、図3及び図4に示すように、本線側シールド部材110に形成される各電線挿入開口部111,112は、開口長手方向に沿って隣接した状態で同一方向に向かって開口している。この各電線挿入開口部111,112は、コネクタ40と相手側コネクタ(不図示)の嵌合方向に直交する方向に沿うように設けられている。
【0042】
このような第2実施形態では、第1実施形態の作用・効果と同様に、既存の支線側シールド部材120,130を使用しつつ、金属シェルの電線挿入開口部111,112を変更するのみで様々な電線10の分岐に対応でき、電線分岐構造1の自由度が増大する。
【0043】
(3)第3実施形態
次に、第3実施形態に係る電線分岐構造1について、図面を参照しながら説明する。図5は、第3実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。図6は、第3実施形態に係る電線分岐構造1を示す平面図である。図7(a)は、第3実施形態に係る本線側シールド部材110を示す分解斜視図であり、図7(b)は、第3実施形態に係る本線側シールド部材110の一部を拡大斜視図である。なお、上述した第1,第2実施形態に係る電線分岐構造1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0044】
上述した第1,第2実施形態では、各電線挿入開口部111,112は、開口長手方向に沿って隣接した状態で設けられている。
【0045】
これに対して、第3実施形態では、図5及び図6に示すように、各電線挿入開口部111,112は、開口短手方向に沿って隣接した状態で設けられている。具体的には、図7に示すように、本線側シールド部材110(金属シェル)は、各電線挿入開口部111,112が形成される複数の中間シェル140,150と、中間シェル140,150が取り付けられる本体シェル160とを有している。
【0046】
各中間シェル140,150は、導通性を有しており、本体シェル160に取り付けられる。この中間シェル140,150は、各電線挿入開口部111,112がそれぞれ形成される筒状の本体部141,151と、本体部141,151の一端側に連なるフランジ部142,152とによって構成される。
【0047】
この本体部141,151には、各支線側シールド部材120,130の一端がそれぞれ取り付けられる。そして、各支線側シールド部材120,130の一端は、本体部141,151を覆った状態で加締部材(不図示)により加締められることによって、本体部141,151にそれぞれ固定される。また、フランジ部142,152には、ボルトBが挿通可能なボルト孔142A,152Aが形成されている。
【0048】
本体シェル160は、各中間シェル140,150と同様に導通性を有しており、各中間シェル140,150がそれぞれ取り付けられる。本体シェル160は、コネクタ40に一体形成されている。なお、本体シェル160は、必ずしもコネクタ40に一体形成されている必要はなく、コネクタ40と別体に形成されて該コネクタ40のハウジングに装着されるものであってもよい。
【0049】
また、本体シェル160は、各中間シェル140,150が取り付けられた状態で各電線挿入開口部111,112と連通する単一の開口部161を備えている。この開口部161には、本線30Aに対応する電線10が各支線30B,30Cに対応する電線10に仕分けされた状態で、各中間シェル140,150が取り付けられる。第3実施形態では、図7(b)に示すように、ボルトBが本体シェル160に形成されるボルト孔162及びボルト孔142A,152Aを挿通して、本体シェル160に各中間シェル140,150が共締めされる。
【0050】
以上説明した第3実施形態では、本線側シールド部材110(金属シェル)は複数の中間シェル140,150と本体シェル160とを有し、本体シェル160の開口部161に各中間シェル140,150が取り付けられる。これにより、本体シェル160を変更することなく各中間シェル140,150のみを設定することで、様々な支線30B,30Cに対応可能となる。つまり、既存の支線側シールド部材120,130を使用しつつ、各中間シェル140,150を変更するのみで様々な電線10の分岐に対応でき、電線分岐構造1の自由度が増大する。
【0051】
第3実施形態では、本体シェル160に各中間シェル140,150が共締めされる。これにより、部品点数の削減を実現でき、電線分岐構造1の製造コストを低減できる。
【0052】
(4)第4実施形態
次に、第4実施形態に係る電線分岐構造1について、図面を参照しながら説明する。図8は、第4実施形態に係る電線分岐構造1を示す斜視図である。図9は、第4実施形態に係る電線分岐構造1を示す平面図である。図10は、第4実施形態に係るシールド部材100(金属箔)を示す展開図である。なお、上述した第1〜第3実施形態に係る電線分岐構造1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0053】
上述した第1〜第3実施形態では、シールド部材100における支線側シールド部材120,130は、外部からのノイズを遮断する編組線によって形成されている。
【0054】
これに対して、第4実施形態では、シールド部材200における支線側シールド部材120,130は、外部からのノイズを遮断する金属箔によって形成されている。
【0055】
具体的には、図8〜図10に示すように、シールド部材200は、本線30Aに対応する電線10を被覆する金属箔からなる本線被覆部210と、各支線30B,30Cに対応する電線10を被覆する金属箔からなる複数の支線被覆部220,230とを有している。
【0056】
本線被覆部210には、複数の支線被覆部220,230が一体に形成されている。また、各支線被覆部220,230は、電線挿入開口部111,112をそれぞれ有しており、本線30Aに対応する電線10が各支線30B,30Cに対応する電線10に分岐した状態で、各支線30B,30Cに対応する電線10を被覆している。
【0057】
このようなシールド部材200(本線被覆部210及び各支線被覆部220,230)は、図10に示すように、電線10の一側に位置する第1の面201と、第1の面201に連結部203を介して連結される第2の面202とによって大略構成されている。この第1の面201には、複数の折返部201A〜201Cが設けられており、第2の面202にも、複数の折返部202A〜202Dが設けられている。これらの第1の面201や第2の面202、折返部201A〜201C,202A〜202Dは、本線30A及び各支線30B,30Cに対応する電線10全てを被覆した状態で、ホチキスやテープ、溶接、接着材などによって取り付けられる。
【0058】
以上説明した第4実施形態では、シールド部材200は本線被覆部210と複数の支線被覆部220,230とを有し、支線被覆部220,230は各電線挿入開口部111,112をそれぞれ有しており、本線30Aに対応する電線10が各支線30B,30Cに対応する電線10に分岐した状態で、各支線30B,30Cに対応する前記電線10を被覆している。これにより、電磁波の放射を防ぎつつ、本線30Aから各支線30B,30Cに対応するように電線10が分岐されるため、本線30Aの端部に取り付けられるコネクタ40を配置するスペースを低減できる。
【0059】
また、第4実施形態では、支線側シールド部材120,130は、金属箔によって形成されている。これにより、既存の金属箔を使用して本線30Aに対応する電線10が各支線30B,30Cに対応する電線10に分岐できる。このため、支線側シールド部材120,130が編組線により形成される場合と比較して、支線側シールド部材120,130をより簡素化かつ安価に形成できるため、電線分岐構造1の製造コストをさらに低減できる。
【0060】
ここで、第4実施形態では、図8及び図9に示すコネクタ40は、第3実施形態と同様の形状・構成であるが、必ずしも第3実施形態と同様の形状・構成である必要はなく、第1,2実施形態と同様の形状・構成であってもよい。
【0061】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0062】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、シールド電線30は、本線30Aから2つの支線30B,30Cに分岐するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、本線30Aから2つ以上の支線に分岐していてもよい。
【0063】
なお、シールド電線30が取り付けられる各コネクタ40等は、実施形態で説明したものに限らず、他構成の公知のコネクタであってもよいことは勿論である。
【0064】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0065】
1…電線分岐構造
10…電線
30…シールド電線
30A…本線
30B,30C…支線
100…シールド部材
110…本線側シールド部材
111,112…電線挿入開口部
120,130…支線側シールド部材
140,150…中間シェル
160…本体シェル
161…開口部
162…ボルト孔
200…シールド部材
210…本線被覆部
220,230…支線被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を有するシールド電線を本線から複数の支線に分岐させる電線分岐構造であって、
前記本線及び前記各支線に対応する前記電線を被覆する導電性のシールド部材を備え、
前記シールド部材は、前記各支線に対応する前記電線がそれぞれ個別に挿入される複数の電線挿入開口部を有することを特徴とする電線分岐構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電線分岐構造であって、
前記シールド部材は、
前記本線に対応する前記電線を被覆する本線側シールド部材と、
前記各支線に対応する前記電線をそれぞれ被覆する複数の支線側シールド部材と
を有し、
前記本線側シールド部材は、前記支線側シールド部材と接続されるとともに前記各電線挿入開口部が形成される金属シェルによって構成されることを特徴とする電線分岐構造。
【請求項3】
請求項2に記載の電線分岐構造であって、
前記金属シェルは、
前記各電線挿入開口部が形成される複数の中間シェルと、
前記各中間シェルがそれぞれ取り付けられる本体シェルと
を有し、
前記本体シェルは、前記各中間シェルが取り付けられた状態で前記各電線挿入開口部と連通する単一の開口部を備え、
前記開口部には、前記本線に対応する前記電線が前記各支線に対応する前記電線に仕分けされた状態で、前記各中間シェルが取り付けられることを特徴とする電線分岐構造。
【請求項4】
請求項1に記載の電線分岐構造であって、
前記シールド部材は、
前記本線に対応する前記電線を被覆する本線被覆部と、
前記本線被覆部と一体に形成され、前記各支線に対応する前記電線を被覆する複数の支線被覆部と
を有し、
前記本線被覆部及び前記各支線被覆部は、編組線及び金属箔の何れかによって形成されており、
前記各支線被覆部は、前記電線挿入開口部をそれぞれ有しており、前記本線に対応する前記電線が前記各支線に対応する前記電線に分岐した状態で、前記各支線に対応する前記電線を被覆していることを特徴とする電線分岐構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99151(P2013−99151A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241030(P2011−241030)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】