電線用カバー
【課題】防水性能等に優れ耐電圧性能が向上された電線用カバーを提供することを課題とする。
【解決手段】長手方向に沿う一の縁部が回動可能に連結され前記一の縁部と反対側の他の縁部が解除可能に合着する第一の半筒体及び第二の半筒体からなる筒体本体を備える電線用カバーであって、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体が電線を通すための開口を設けられた縮径底部をその両端部に有する、電線用カバーにおいて、前記第一の半筒体の縮径底部と前記第二の半筒体の縮径底部との間に可撓性のヒンジ部を備え、前記ヒンジ部が流体の前記電線用カバー内への浸入を防止することを特徴とする、電線用カバー。
【解決手段】長手方向に沿う一の縁部が回動可能に連結され前記一の縁部と反対側の他の縁部が解除可能に合着する第一の半筒体及び第二の半筒体からなる筒体本体を備える電線用カバーであって、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体が電線を通すための開口を設けられた縮径底部をその両端部に有する、電線用カバーにおいて、前記第一の半筒体の縮径底部と前記第二の半筒体の縮径底部との間に可撓性のヒンジ部を備え、前記ヒンジ部が流体の前記電線用カバー内への浸入を防止することを特徴とする、電線用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線用カバーに関する。より詳細には、バイパス経路を施すために施工された架空配電線等の電線に使用するカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
架空配電線の工事において、作業者の安全を確保するため工事箇所周辺にバイパス経路を施す手法が広く採用されている。バイパス経路を形成するためには、バイパスケーブルで繋がれたバイパス用クランプを本線である電線に接続する必要がある。このような接続をする方式として以下の方式が一般的である。
(1)電線把持部に刃型電極を備えたクランプにより電線を被覆する絶縁部を貫通させる方式(被覆貫通クランプによる方式)
(2)電線の絶縁部を剥ぎとり、露出した芯線部をクランプで掴む方式
何れの方式においても、工事終了後はバイパス用クランプを取り外した接続痕からの短絡を防ぐために、絶縁性樹脂で形成された電線用カバーを電線に装着して電流の漏洩防止や雨水等の浸入抑制を行っている。上記(1)の方式に使用する電線用カバーとして、電線用カバー内部に粘着性のシール材が設けられており、これにより、接続時に付いた刃型電極痕を塞ぐとともに、電線に防護管を装着する際のカバーの移動を防ぐ電線用カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記(2)の方式に使用する電線用カバーとして、電線用カバー内部に突片を設け、この突片が芯線の露出部に圧接支持することで露出部を補修するとともにカバーの移動を防ぐ電線用カバーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、雨水の浸入を防止するために、内部に絶縁パテを充填された電線用カバーが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−320961号公報
【特許文献2】特開2003−264917号公報
【特許文献3】特開平11−136829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明に係る電線用カバーは、要求される耐電圧性能を得るために粘着性のシール材で確実に刃型電極痕を覆う必要があるため、電線用カバーの嵌合部がカバーの陰になりがちである。そのため、電線用カバーの電線に対する位置決めを容易にできない場合がある。また、作業者がカバーの角度や装着の完了を見極めることが困難な場合がある。特許文献2に記載された発明に係る電線用カバーは、突片の大きさを電線の外径に合わせて変更する必要があるため、汎用性が低いという問題がある。特許文献3に記載された発明に係る電線用カバーは、電線に装着する際に絶縁パテがカバーの外に漏れ出したり、パテを無理に押さえつけるためにカバーの嵌合性が悪くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明に係る一の電線用カバーは、長手方向に沿う一の縁部が回動可能に連結され前記一の縁部と反対側の他の縁部が解除可能に合着する第一の半筒体及び第二の半筒体からなる筒体本体を備える電線用カバーであって、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体が電線を通すための開口を設けられた縮径底部をその両端部に有し、前記第一の半筒体の縮径底部と前記第二の半筒体の縮径底部との間に可撓性のヒンジ部を備え、前記ヒンジ部が流体の前記電線用カバー内への浸入を防止することを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記筒体本体の長手方向に直交する前記ヒンジ部の横断面が、前記ヒンジ部の枢軸部を頂点とする略V字形状であり、前記ヒンジ部の枢軸部が、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記筒体本体の長手方向外方へ向かうにしたがい前記筒体本体の内方に傾斜していることを特徴とする。
【0007】
また好ましくは、前記他の縁部に沿って前記筒体本体の端部の近傍にスリットが設けられるとともに、前記他の縁部の近傍であって前記筒体本体の端部の近傍の内面に、前記筒体本体の長手方向外方に向かうにしたがい前記筒体本体の外面の方へ傾斜する傾斜部が設けられたことを特徴とする。
【0008】
また好ましくは、前記第一の半筒体の前記他の縁部に沿って延び、先端が前記筒体本体の内方へ屈曲している第一の遮蔽リブと、前記第二の半筒体の前記他の縁部に沿って延びる第二の遮蔽リブとを備え、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記第一の遮蔽リブが前記第二の遮蔽リブより前記筒体本体の内方に延在するように重畳的に配設されて、電流が前記電線用カバーの外部へ漏洩することを防止することを特徴とする。
【0009】
また好ましくは、前記筒体本体の所定箇所に設けられた把持部材が、前記把持部材の前記筒体本体に対する所定方向の回動を規制する回動規制部を備えることを特徴とする。
また好ましくは、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体の少なくともいずれか一方の半筒体の内面に設けられた可撓性のリング状移動規制部であって、前記リング状移動規制部の環状外面が前記筒体本体の内方へ向けて凸部を形成することを特徴とする。前記リング状移動規制部が、前記少なくともいずれか一方の半筒体と一体成形されたことを特徴とする。
【0010】
また好ましくは、前記環状外面に前記筒体本体の長手方向と略平行に延びるように溝が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電線用カバーの耐電圧性能(特に、散水時)を向上させることができるという有利な効果を奏する。また、本発明は、ヒンジ部の回動が安定するという有利な効果を奏する。また、本発明は、電線用カバー内に浸入した雨水等の流体を効率的に排水することができるという有利な効果を奏する。また、本発明は、前記第一の遮蔽リブが前記第二の遮蔽リブの干渉を有効に防止することができるという有利な効果を奏する。また、本発明には、前記電線用カバーを電線に対して安定して装着することができるとともに、作業性が向上する効果がある。
【0012】
さらに、本発明は、電線が筒体本体(電線用カバー)内でその長手方向に移動することを有効に規制することができるとともに、本発明に係る電線カバーを異なる外径を有する電線に使用することができるという有利な効果を奏する。本発明は、リング状移動規制部が電線を押圧する力を調整して電線を過度に押圧することを防止するという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一の電線用カバーが開いた状態の平面図である。
【図2】図1中の電線用カバーをA方向から見た側面図である。
【図3】図1中の電線用カバーが閉じた状態の平面図である。
【図4】図3中の電線用カバーをB方向から見た側面図である。
【図5】図3中のa−a線に沿う断面図である。
【図6】図2中のヒンジ部の拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る他の電線用カバーが開いた状態の平面図である。
【図8】本発明に係る一の電線用カバーが装着される電線の正面図である。
【図9】本発明に係る一の電線用カバーを電線に装着する方法を説明するための側面図である。
【図10】本発明に係る一の電線用カバーを閉じる方法を説明するための側面図である。
【図11】本発明に係る他の電線用カバーが装着される電線の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施例1]
図1及び図2中、電線用カバー10は、筒体本体20を備える。電線用カバー10は、絶縁性材料(例えば、絶縁性樹脂)から形成される。筒体本体20は、第一の半筒体30及び第二の半筒体40からなる。第一の半筒体30の長手方向に沿う一の縁部31と第二の半筒体40の長手方向に沿う一の縁部41とは回動可能に連結される。図3及び図4に示すように、一の縁部31と反対側の他の縁部32と一の縁部41と反対側の他の縁部42とが解除可能に合着することにより、筒体を形成する。より詳細には、他の縁部32の略中央部32a(図1参照)と他の縁部42の略中央部42a(図1参照)とは隙間なく合着する。他の縁部32の両端部近傍部32b,32c(図1参照)は略中央部32aより低く形成され、他の縁部42の両端部近傍部42b,42c(図1参照)も同様に形成される。これによって、他の縁部32と他の縁部42とが合着したとき、図4等に示すように、他の縁部32,42に沿って筒体本体20の両端部の近傍にスリット23,24が形成される。電線用カバー10内に浸入した雨水等の流体は、スリット23,24を経由して効率的に排出される。なお、このようなスリットは、筒体本体20の一方の端部近傍のみに設けられてもよい。
【0015】
第一の半筒体30及び第二の半筒体40は夫々、内面33,43及び外面34,44を有する。他の縁部32,42の近傍であって筒体本体20の両端部の近傍の内面43,44に、筒体本体20の長手方向外方に向かうにしたがい筒体本体20の外面34,44の方へ傾斜する傾斜部33a,43a,33b,43bが設けられる。傾斜部33a,43a,33b,43bは、電線用カバー10内に浸入した雨水等の流体の排出に寄与する。なお、このような傾斜部は、筒体本体20の一方の端部のみに設けられてもよい。
【0016】
図1中、第一の半筒体30は、第一の半筒体30(筒体本体20)の長手方向外方に向かうに従い縮径するような略円錐形の一部の形態を有する縮径端部35,36を両端部に有する。第二の半筒体40も、第一の半筒体30と同様に、縮径端部45,46を両端部に有する。第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着したとき、縮径端部35及び縮径端部45が截頭された略円錐形を形成する(図3参照)。図4に示すように、その略円錐形の頂面21には電線1を通すための開口21aが設けられている。縮径端部36及び縮径端部46は、上述した縮径端部35及び縮径端部45と同様に、電線1を通すための開口22aが頂面22に設けられている截頭された略円錐形を形成する。第一の半筒体30の両端部近傍の内面33に設けられた一列乃至は複数列のひだ部33c,33dと、第二の半筒体40の両端部近傍の内面43に設けられた一列乃至は複数列のひだ部43c,43dとは協働して、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着したとき、電線用カバー10内を通る電線1を保持するとともに虫害を防止する。
【0017】
図1及び図5に示すように、第一の半筒体30の他の縁部32に沿って延び、先端37aが筒体本体20(電線用カバー10)の内方(或いは、長手方向中心の方)へ屈曲している第一の遮蔽リブ37と、第二の半筒体40の他の縁部42に沿って延びる第二の遮蔽リブ47とが設けられる。第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着したとき、第一の遮蔽リブ37が第二の遮蔽リブ47より筒体本体20(電線用カバー10)の内方に延在するように重畳的に配設されて、電流が電線用カバー10の外部へ漏洩することを防止するとともに、雨水等の流体が他の縁部32,42から電線用カバー10内へ浸入することを防止する。また、第一の遮蔽リブ37の先端37aが屈曲していることにより、上記合着の際に第一の遮蔽リブ37と第二の遮蔽リブ47とが干渉することを未然に防止する。
【0018】
図1に示すように、第一の半筒体30の内面33に所定距離(外端間の距離l)離間した2つの突片状移動規制部38が設けられる。突片状移動規制部38の上面38aは、電線1を保持し易いように凹状の曲面を形成する。第二の半筒体40の内面42に所定距離(例えば、外端間の距離l)離間した2つの可撓性のリング状移動規制部48が第二の半筒体40と一体成形されて設けられる。リング状移動規制部48は、このように一体成形されなくてもよい。リング状移動規制部48は、図1に示すように、他の縁部32と他の縁部42とが合着したときに突片状移動規制部38の位置と対応するよう配設されることが好ましい。なお、2つの突片状移動規制部38の外端間の距離と2つの可撓性のリング状移動規制部48の外端間の距離とは等しいことが好ましいが、等しくなくてもよい。リング状移動規制部48の環状外面48aは、筒体本体20(電線用カバー10)の内方(長手方向中心の方)へ向けて凸部を形成するとともに、筒体本体20(電線用カバー10)の長手方向と略平行に延びるように1つ又は複数の溝48bが形成される。可撓性のリング状移動規制部48は、バネの如く撓んで変形することができるため、突片状移動規制部38と協働して異なる外径を有する電線1を保持し、電線1が筒体本体20(電線用カバー10)内でその長手方向に移動することを規制することができる。また、同規制部48の環状外面48aに所望数の溝48bを形成することにより、同規制部48をたわみ変形しやすくできる。これによって、同規制部48が電線1を押圧する力を調整することができる。なお、可撓性のリング状移動規制部48は、バネ作用を奏するその他の部材により置き換えることができる。突片状移動規制部38及びリング状移動規制部48は、一つでもよいし、三つ以上設けられてもよい。突片状移動規制部38は設けられなくてもよい。溝48bは形成されなくてもよい。
【0019】
第一の半筒体30の他の縁部32近傍に、(例えば、3つの)係合突起39が設けられる。第二の半筒体40の他の縁部42近傍に、係合突起39と係着自在の係合孔49が設けられる。これによって、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とは、解除可能に合着することができる。図1に示すように、把持部材70は、基端側の連結部71を介して第一の半筒体30の他の縁部32近傍の外面34に所定箇所に設けられる。把持部材70の基端面のうち連結部71より第一の半筒体30側にある面は、把持部材70が連結部71を支点として筒体本体20に対して相対的に図4中のC方向(時計回り)に所定角度回動すると、第一の半筒体30の外面34に当接して当該回動を規制する回動規制部72として機能する。図1及び図4に示すように、把持部材70の上下面73は、間接活線工具により把持する際、滑らないように粗化される(例えば、表面に複数の歯などのぎざぎざが形成される)。なお、連結部71は、図4に示すように、所定の外力が加えられると破断するように薄肉に形成されてもよい。
【0020】
図6中、可撓性のヒンジ部50は、枢軸部51を介して各一端部52a,53aが連結する板部52及び板部53を備える。ヒンジ部50は、板部52及び板部53よりも薄肉に形成され、より撓みやすくされてもよい。板部52及び板部53の各他端部52b,53bは夫々、縮径端部35及び縮径端部45の一の縁部31,41側の端部35a,45aと連結する。当該連結する部分は、板部52及び板部53や縮径端部35及び縮径端部45よりも薄肉に形成され、より撓みやすくされてもよい。ヒンジ部50は、筒体本体20と一体成形されてもよい。図2に示すように、縮径端部35及び縮径端部45とが180度離間した状態において、板部52と板部53とが鋭角αを形成し、筒体本体20の長手方向に直交するヒンジ部50の横断面は、枢軸部51を頂点とする略V字形状である。なお、この状態において、ヒンジ部50の横断面は、板部52と板部53とが約180度を形成するような略直線状であってもよい。第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着するために第一の半筒体30と第二の半筒体40とが互いに近接するように回動すると、ヒンジ部50の先端51aが下方(図2中、D方向)へ移動し、ヒンジ部50の回動を容易にする。図4に示すように、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着した状態において、板部52と板部53とが鋭角βを形成し、筒体本体20の長手方向に直交するヒンジ部50の横断面は、枢軸部51を頂点とする略V字形状である。他方のヒンジ部60も、上述したヒンジ部50と同様の構成を有する。
【0021】
[実施例2]
図7に示す電線用カバー10’は、電線用カバー10の突片状移動規制部38及びリング状移動規制部48に対応する構成を備えていない点を除き、電線用カバー10と同様の構成を備える。したがって、電線用カバー10の構成に対応する電線用カバー10’の構成には電線用カバー10の構成に付された参照番号に「’」を加えて付し、その説明を省略する。
【0022】
電線用カバー10’の第一の半筒体30’の内面33’に、収縮自在な保持部材80’の裏面81’(図示せず)が固着される。保持部材80’の表面82’(図示せず)には、粘着層83’が形成される。第二の半筒体40’は、上述した第一の半筒体30’と同様に表面92’に粘着層93’が形成された保持部材90’が固着される。粘着層93’は第一に、電線用カバー10’を電線1に装着した際、粘着層93’が電線1に粘着することにより電線1に対する電線用カバー10’の移動防止を目的とする。また、第二に、粘着層83’が電線1の電極痕部1e(図9参照)近傍に固着することにより電極痕部1eからの漏電等防止を目的とする。保持部材80’、90’が収縮自在であることにより、電線用カバー10’は、異なる外径を有する電線1を保持することができる。保持部材80’、90’は、発泡材料から形成されてもよい。保持部材80’、90’は、収縮状態から復帰可能であることが好ましい。粘着層83’,93’は、粘着テープ等を介して各表面82’、92’に形成されてもよい。
【0023】
電線用カバー10’が備えるヒンジ部50’,60’、傾斜部33a’,33b’,43a’,43b’、及びスリット23’,24’の作用により、従来技術のようにシール材によって刃型電極痕を確実に塞がなくても要求される耐電圧性能を満たすという有利な効果を奏する。
【0024】
[実施例1の使用方法]
導体である芯線部1aと芯線部1aを絶縁被覆する絶縁部1bとを備える電線1(図8参照)に対して実施例1に係る電線用カバー10を装着する方法を説明する。電線1は、所定箇所の絶縁部1bが剥がされた露出部1cを有する。
【0025】
図9に示すように、電線用カバー10は、第一の半筒体30と第二の半筒体40とがなす角度γが所定の鈍角になるように第一の半筒体30及び第二の半筒体40が互いに近接させられた状態(筒体本体20を多少閉じた状態)にてくせづけされた後、ヤットコ等の間接活線工具2により把持部材70が把持され、内面33,43が作業者の方を向き把持部材70が下方へ向いた状態で電線1に対して引っ掛けられる。筒体本体20は多少閉じた状態にあるので、電線1に引っ掛けやすい。ここで、間接活線工具2により把持部材70が把持された状態で電線用カバー10が電線1に対して近づけられるとき、回動規制部72は、第一の半筒体30の外面34に当接することにより、筒体本体20が作業者から逃げる方向(図9中、E方向)へ回動することを規制する。換言すれば、筒体本体20は、回動規制部72により当接支持される。これによって、筒体本体20が作業者の方へ倒れ込むことを防止できるため電線用カバー10を電線1に対して安定して装着することができ、また、半筒体30,40の各他の縁部32,42が作業者から視認できる状態での電線用カバー10の装着が可能になるため、作業性が向上する効果がある。
【0026】
電線用カバー10が電線1に引っ掛けられる際、2つの突片状移動規制部38の外端間の距離l(図1参照)及び2つのリング状移動規制部48の外端間の距離lは、露出部1cの長さmと略同一であり、突片状移動規制部38の各外端及びリング状移動規制部48の各外端が露出部1cの両側にある絶縁部1bの切断面1dに当接するように位置決めされる。これによって、電線用カバー10の電線1に対する長手方向の移動は、突片状移動規制部38及びリング状移動規制部48により規制されることになる。なお、距離lは、長さmより短くてもよい。
【0027】
次に、図10に示すように、筒体本体20は、間接活線工具2により第一の半筒体30及び第二の半筒体40の各所定箇所を挟持される。筒体本体20は、間接活線工具2の操作により完全に閉じられ、係合突起39と係合孔49(図示せず)とが係着することにより、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とは、解除可能に合着される。続いて、把持部材70が間接活線工具2により捻られてその基端側の連結部71が破断され、把持部材70は、電線用カバー10から取り外される。露出部1cを覆うように電線用カバー10が電線1に装着されることにより、電線1は、乾燥状態はもとより散水された状態であっても所定の耐電圧基準(例えば、JIS C0920に定められた基準)を満たすことができる。
【0028】
[実施例2の使用方法]
導体である芯線部1aと芯線部1aを絶縁被覆する絶縁部1bとを備える電線1(図11参照)に対して実施例2に係る電線用カバー10’を装着する方法を説明する。電線1は、所定箇所のクランプの刃型電極(図示せず)により絶縁部1bが貫通された電極痕部1dを有する。
【0029】
電線用カバー10’の装着方法は、上述した電線用カバー10の装着方法と大略同様であるので、相違点について説明する。電線用カバー10’を電線1に装着する際、保持部材80’,90’が電極痕部1eを覆うように位置決めされる。その他の装着工程は、電線用カバー10の装着方法の工程と同様である。電線用カバー10’が電線1に対して完全に装着されると、保持部材80’,90’の粘着層83’,93’が電極痕部1eを覆った状態で絶縁部1bに対して粘着される。電線用カバー10’が電線1に装着されることにより、電線1は、乾燥状態はもとより散水された状態であっても所定の耐電圧基準(例えば、JIS C0920に定められた基準)を満たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、バイパス経路を施すために施工された架空配電線等の電線に使用する電線用カバーに適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 電線用カバー
20 筒体本体
30 第一の半筒体
40 第二の半筒体
50 ヒンジ部
60 ヒンジ部
70 把持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線用カバーに関する。より詳細には、バイパス経路を施すために施工された架空配電線等の電線に使用するカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
架空配電線の工事において、作業者の安全を確保するため工事箇所周辺にバイパス経路を施す手法が広く採用されている。バイパス経路を形成するためには、バイパスケーブルで繋がれたバイパス用クランプを本線である電線に接続する必要がある。このような接続をする方式として以下の方式が一般的である。
(1)電線把持部に刃型電極を備えたクランプにより電線を被覆する絶縁部を貫通させる方式(被覆貫通クランプによる方式)
(2)電線の絶縁部を剥ぎとり、露出した芯線部をクランプで掴む方式
何れの方式においても、工事終了後はバイパス用クランプを取り外した接続痕からの短絡を防ぐために、絶縁性樹脂で形成された電線用カバーを電線に装着して電流の漏洩防止や雨水等の浸入抑制を行っている。上記(1)の方式に使用する電線用カバーとして、電線用カバー内部に粘着性のシール材が設けられており、これにより、接続時に付いた刃型電極痕を塞ぐとともに、電線に防護管を装着する際のカバーの移動を防ぐ電線用カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記(2)の方式に使用する電線用カバーとして、電線用カバー内部に突片を設け、この突片が芯線の露出部に圧接支持することで露出部を補修するとともにカバーの移動を防ぐ電線用カバーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、雨水の浸入を防止するために、内部に絶縁パテを充填された電線用カバーが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−320961号公報
【特許文献2】特開2003−264917号公報
【特許文献3】特開平11−136829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明に係る電線用カバーは、要求される耐電圧性能を得るために粘着性のシール材で確実に刃型電極痕を覆う必要があるため、電線用カバーの嵌合部がカバーの陰になりがちである。そのため、電線用カバーの電線に対する位置決めを容易にできない場合がある。また、作業者がカバーの角度や装着の完了を見極めることが困難な場合がある。特許文献2に記載された発明に係る電線用カバーは、突片の大きさを電線の外径に合わせて変更する必要があるため、汎用性が低いという問題がある。特許文献3に記載された発明に係る電線用カバーは、電線に装着する際に絶縁パテがカバーの外に漏れ出したり、パテを無理に押さえつけるためにカバーの嵌合性が悪くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明に係る一の電線用カバーは、長手方向に沿う一の縁部が回動可能に連結され前記一の縁部と反対側の他の縁部が解除可能に合着する第一の半筒体及び第二の半筒体からなる筒体本体を備える電線用カバーであって、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体が電線を通すための開口を設けられた縮径底部をその両端部に有し、前記第一の半筒体の縮径底部と前記第二の半筒体の縮径底部との間に可撓性のヒンジ部を備え、前記ヒンジ部が流体の前記電線用カバー内への浸入を防止することを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記筒体本体の長手方向に直交する前記ヒンジ部の横断面が、前記ヒンジ部の枢軸部を頂点とする略V字形状であり、前記ヒンジ部の枢軸部が、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記筒体本体の長手方向外方へ向かうにしたがい前記筒体本体の内方に傾斜していることを特徴とする。
【0007】
また好ましくは、前記他の縁部に沿って前記筒体本体の端部の近傍にスリットが設けられるとともに、前記他の縁部の近傍であって前記筒体本体の端部の近傍の内面に、前記筒体本体の長手方向外方に向かうにしたがい前記筒体本体の外面の方へ傾斜する傾斜部が設けられたことを特徴とする。
【0008】
また好ましくは、前記第一の半筒体の前記他の縁部に沿って延び、先端が前記筒体本体の内方へ屈曲している第一の遮蔽リブと、前記第二の半筒体の前記他の縁部に沿って延びる第二の遮蔽リブとを備え、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記第一の遮蔽リブが前記第二の遮蔽リブより前記筒体本体の内方に延在するように重畳的に配設されて、電流が前記電線用カバーの外部へ漏洩することを防止することを特徴とする。
【0009】
また好ましくは、前記筒体本体の所定箇所に設けられた把持部材が、前記把持部材の前記筒体本体に対する所定方向の回動を規制する回動規制部を備えることを特徴とする。
また好ましくは、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体の少なくともいずれか一方の半筒体の内面に設けられた可撓性のリング状移動規制部であって、前記リング状移動規制部の環状外面が前記筒体本体の内方へ向けて凸部を形成することを特徴とする。前記リング状移動規制部が、前記少なくともいずれか一方の半筒体と一体成形されたことを特徴とする。
【0010】
また好ましくは、前記環状外面に前記筒体本体の長手方向と略平行に延びるように溝が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電線用カバーの耐電圧性能(特に、散水時)を向上させることができるという有利な効果を奏する。また、本発明は、ヒンジ部の回動が安定するという有利な効果を奏する。また、本発明は、電線用カバー内に浸入した雨水等の流体を効率的に排水することができるという有利な効果を奏する。また、本発明は、前記第一の遮蔽リブが前記第二の遮蔽リブの干渉を有効に防止することができるという有利な効果を奏する。また、本発明には、前記電線用カバーを電線に対して安定して装着することができるとともに、作業性が向上する効果がある。
【0012】
さらに、本発明は、電線が筒体本体(電線用カバー)内でその長手方向に移動することを有効に規制することができるとともに、本発明に係る電線カバーを異なる外径を有する電線に使用することができるという有利な効果を奏する。本発明は、リング状移動規制部が電線を押圧する力を調整して電線を過度に押圧することを防止するという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一の電線用カバーが開いた状態の平面図である。
【図2】図1中の電線用カバーをA方向から見た側面図である。
【図3】図1中の電線用カバーが閉じた状態の平面図である。
【図4】図3中の電線用カバーをB方向から見た側面図である。
【図5】図3中のa−a線に沿う断面図である。
【図6】図2中のヒンジ部の拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る他の電線用カバーが開いた状態の平面図である。
【図8】本発明に係る一の電線用カバーが装着される電線の正面図である。
【図9】本発明に係る一の電線用カバーを電線に装着する方法を説明するための側面図である。
【図10】本発明に係る一の電線用カバーを閉じる方法を説明するための側面図である。
【図11】本発明に係る他の電線用カバーが装着される電線の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施例1]
図1及び図2中、電線用カバー10は、筒体本体20を備える。電線用カバー10は、絶縁性材料(例えば、絶縁性樹脂)から形成される。筒体本体20は、第一の半筒体30及び第二の半筒体40からなる。第一の半筒体30の長手方向に沿う一の縁部31と第二の半筒体40の長手方向に沿う一の縁部41とは回動可能に連結される。図3及び図4に示すように、一の縁部31と反対側の他の縁部32と一の縁部41と反対側の他の縁部42とが解除可能に合着することにより、筒体を形成する。より詳細には、他の縁部32の略中央部32a(図1参照)と他の縁部42の略中央部42a(図1参照)とは隙間なく合着する。他の縁部32の両端部近傍部32b,32c(図1参照)は略中央部32aより低く形成され、他の縁部42の両端部近傍部42b,42c(図1参照)も同様に形成される。これによって、他の縁部32と他の縁部42とが合着したとき、図4等に示すように、他の縁部32,42に沿って筒体本体20の両端部の近傍にスリット23,24が形成される。電線用カバー10内に浸入した雨水等の流体は、スリット23,24を経由して効率的に排出される。なお、このようなスリットは、筒体本体20の一方の端部近傍のみに設けられてもよい。
【0015】
第一の半筒体30及び第二の半筒体40は夫々、内面33,43及び外面34,44を有する。他の縁部32,42の近傍であって筒体本体20の両端部の近傍の内面43,44に、筒体本体20の長手方向外方に向かうにしたがい筒体本体20の外面34,44の方へ傾斜する傾斜部33a,43a,33b,43bが設けられる。傾斜部33a,43a,33b,43bは、電線用カバー10内に浸入した雨水等の流体の排出に寄与する。なお、このような傾斜部は、筒体本体20の一方の端部のみに設けられてもよい。
【0016】
図1中、第一の半筒体30は、第一の半筒体30(筒体本体20)の長手方向外方に向かうに従い縮径するような略円錐形の一部の形態を有する縮径端部35,36を両端部に有する。第二の半筒体40も、第一の半筒体30と同様に、縮径端部45,46を両端部に有する。第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着したとき、縮径端部35及び縮径端部45が截頭された略円錐形を形成する(図3参照)。図4に示すように、その略円錐形の頂面21には電線1を通すための開口21aが設けられている。縮径端部36及び縮径端部46は、上述した縮径端部35及び縮径端部45と同様に、電線1を通すための開口22aが頂面22に設けられている截頭された略円錐形を形成する。第一の半筒体30の両端部近傍の内面33に設けられた一列乃至は複数列のひだ部33c,33dと、第二の半筒体40の両端部近傍の内面43に設けられた一列乃至は複数列のひだ部43c,43dとは協働して、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着したとき、電線用カバー10内を通る電線1を保持するとともに虫害を防止する。
【0017】
図1及び図5に示すように、第一の半筒体30の他の縁部32に沿って延び、先端37aが筒体本体20(電線用カバー10)の内方(或いは、長手方向中心の方)へ屈曲している第一の遮蔽リブ37と、第二の半筒体40の他の縁部42に沿って延びる第二の遮蔽リブ47とが設けられる。第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着したとき、第一の遮蔽リブ37が第二の遮蔽リブ47より筒体本体20(電線用カバー10)の内方に延在するように重畳的に配設されて、電流が電線用カバー10の外部へ漏洩することを防止するとともに、雨水等の流体が他の縁部32,42から電線用カバー10内へ浸入することを防止する。また、第一の遮蔽リブ37の先端37aが屈曲していることにより、上記合着の際に第一の遮蔽リブ37と第二の遮蔽リブ47とが干渉することを未然に防止する。
【0018】
図1に示すように、第一の半筒体30の内面33に所定距離(外端間の距離l)離間した2つの突片状移動規制部38が設けられる。突片状移動規制部38の上面38aは、電線1を保持し易いように凹状の曲面を形成する。第二の半筒体40の内面42に所定距離(例えば、外端間の距離l)離間した2つの可撓性のリング状移動規制部48が第二の半筒体40と一体成形されて設けられる。リング状移動規制部48は、このように一体成形されなくてもよい。リング状移動規制部48は、図1に示すように、他の縁部32と他の縁部42とが合着したときに突片状移動規制部38の位置と対応するよう配設されることが好ましい。なお、2つの突片状移動規制部38の外端間の距離と2つの可撓性のリング状移動規制部48の外端間の距離とは等しいことが好ましいが、等しくなくてもよい。リング状移動規制部48の環状外面48aは、筒体本体20(電線用カバー10)の内方(長手方向中心の方)へ向けて凸部を形成するとともに、筒体本体20(電線用カバー10)の長手方向と略平行に延びるように1つ又は複数の溝48bが形成される。可撓性のリング状移動規制部48は、バネの如く撓んで変形することができるため、突片状移動規制部38と協働して異なる外径を有する電線1を保持し、電線1が筒体本体20(電線用カバー10)内でその長手方向に移動することを規制することができる。また、同規制部48の環状外面48aに所望数の溝48bを形成することにより、同規制部48をたわみ変形しやすくできる。これによって、同規制部48が電線1を押圧する力を調整することができる。なお、可撓性のリング状移動規制部48は、バネ作用を奏するその他の部材により置き換えることができる。突片状移動規制部38及びリング状移動規制部48は、一つでもよいし、三つ以上設けられてもよい。突片状移動規制部38は設けられなくてもよい。溝48bは形成されなくてもよい。
【0019】
第一の半筒体30の他の縁部32近傍に、(例えば、3つの)係合突起39が設けられる。第二の半筒体40の他の縁部42近傍に、係合突起39と係着自在の係合孔49が設けられる。これによって、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とは、解除可能に合着することができる。図1に示すように、把持部材70は、基端側の連結部71を介して第一の半筒体30の他の縁部32近傍の外面34に所定箇所に設けられる。把持部材70の基端面のうち連結部71より第一の半筒体30側にある面は、把持部材70が連結部71を支点として筒体本体20に対して相対的に図4中のC方向(時計回り)に所定角度回動すると、第一の半筒体30の外面34に当接して当該回動を規制する回動規制部72として機能する。図1及び図4に示すように、把持部材70の上下面73は、間接活線工具により把持する際、滑らないように粗化される(例えば、表面に複数の歯などのぎざぎざが形成される)。なお、連結部71は、図4に示すように、所定の外力が加えられると破断するように薄肉に形成されてもよい。
【0020】
図6中、可撓性のヒンジ部50は、枢軸部51を介して各一端部52a,53aが連結する板部52及び板部53を備える。ヒンジ部50は、板部52及び板部53よりも薄肉に形成され、より撓みやすくされてもよい。板部52及び板部53の各他端部52b,53bは夫々、縮径端部35及び縮径端部45の一の縁部31,41側の端部35a,45aと連結する。当該連結する部分は、板部52及び板部53や縮径端部35及び縮径端部45よりも薄肉に形成され、より撓みやすくされてもよい。ヒンジ部50は、筒体本体20と一体成形されてもよい。図2に示すように、縮径端部35及び縮径端部45とが180度離間した状態において、板部52と板部53とが鋭角αを形成し、筒体本体20の長手方向に直交するヒンジ部50の横断面は、枢軸部51を頂点とする略V字形状である。なお、この状態において、ヒンジ部50の横断面は、板部52と板部53とが約180度を形成するような略直線状であってもよい。第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着するために第一の半筒体30と第二の半筒体40とが互いに近接するように回動すると、ヒンジ部50の先端51aが下方(図2中、D方向)へ移動し、ヒンジ部50の回動を容易にする。図4に示すように、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とが合着した状態において、板部52と板部53とが鋭角βを形成し、筒体本体20の長手方向に直交するヒンジ部50の横断面は、枢軸部51を頂点とする略V字形状である。他方のヒンジ部60も、上述したヒンジ部50と同様の構成を有する。
【0021】
[実施例2]
図7に示す電線用カバー10’は、電線用カバー10の突片状移動規制部38及びリング状移動規制部48に対応する構成を備えていない点を除き、電線用カバー10と同様の構成を備える。したがって、電線用カバー10の構成に対応する電線用カバー10’の構成には電線用カバー10の構成に付された参照番号に「’」を加えて付し、その説明を省略する。
【0022】
電線用カバー10’の第一の半筒体30’の内面33’に、収縮自在な保持部材80’の裏面81’(図示せず)が固着される。保持部材80’の表面82’(図示せず)には、粘着層83’が形成される。第二の半筒体40’は、上述した第一の半筒体30’と同様に表面92’に粘着層93’が形成された保持部材90’が固着される。粘着層93’は第一に、電線用カバー10’を電線1に装着した際、粘着層93’が電線1に粘着することにより電線1に対する電線用カバー10’の移動防止を目的とする。また、第二に、粘着層83’が電線1の電極痕部1e(図9参照)近傍に固着することにより電極痕部1eからの漏電等防止を目的とする。保持部材80’、90’が収縮自在であることにより、電線用カバー10’は、異なる外径を有する電線1を保持することができる。保持部材80’、90’は、発泡材料から形成されてもよい。保持部材80’、90’は、収縮状態から復帰可能であることが好ましい。粘着層83’,93’は、粘着テープ等を介して各表面82’、92’に形成されてもよい。
【0023】
電線用カバー10’が備えるヒンジ部50’,60’、傾斜部33a’,33b’,43a’,43b’、及びスリット23’,24’の作用により、従来技術のようにシール材によって刃型電極痕を確実に塞がなくても要求される耐電圧性能を満たすという有利な効果を奏する。
【0024】
[実施例1の使用方法]
導体である芯線部1aと芯線部1aを絶縁被覆する絶縁部1bとを備える電線1(図8参照)に対して実施例1に係る電線用カバー10を装着する方法を説明する。電線1は、所定箇所の絶縁部1bが剥がされた露出部1cを有する。
【0025】
図9に示すように、電線用カバー10は、第一の半筒体30と第二の半筒体40とがなす角度γが所定の鈍角になるように第一の半筒体30及び第二の半筒体40が互いに近接させられた状態(筒体本体20を多少閉じた状態)にてくせづけされた後、ヤットコ等の間接活線工具2により把持部材70が把持され、内面33,43が作業者の方を向き把持部材70が下方へ向いた状態で電線1に対して引っ掛けられる。筒体本体20は多少閉じた状態にあるので、電線1に引っ掛けやすい。ここで、間接活線工具2により把持部材70が把持された状態で電線用カバー10が電線1に対して近づけられるとき、回動規制部72は、第一の半筒体30の外面34に当接することにより、筒体本体20が作業者から逃げる方向(図9中、E方向)へ回動することを規制する。換言すれば、筒体本体20は、回動規制部72により当接支持される。これによって、筒体本体20が作業者の方へ倒れ込むことを防止できるため電線用カバー10を電線1に対して安定して装着することができ、また、半筒体30,40の各他の縁部32,42が作業者から視認できる状態での電線用カバー10の装着が可能になるため、作業性が向上する効果がある。
【0026】
電線用カバー10が電線1に引っ掛けられる際、2つの突片状移動規制部38の外端間の距離l(図1参照)及び2つのリング状移動規制部48の外端間の距離lは、露出部1cの長さmと略同一であり、突片状移動規制部38の各外端及びリング状移動規制部48の各外端が露出部1cの両側にある絶縁部1bの切断面1dに当接するように位置決めされる。これによって、電線用カバー10の電線1に対する長手方向の移動は、突片状移動規制部38及びリング状移動規制部48により規制されることになる。なお、距離lは、長さmより短くてもよい。
【0027】
次に、図10に示すように、筒体本体20は、間接活線工具2により第一の半筒体30及び第二の半筒体40の各所定箇所を挟持される。筒体本体20は、間接活線工具2の操作により完全に閉じられ、係合突起39と係合孔49(図示せず)とが係着することにより、第一の半筒体30の他の縁部32と第二の半筒体40の他の縁部42とは、解除可能に合着される。続いて、把持部材70が間接活線工具2により捻られてその基端側の連結部71が破断され、把持部材70は、電線用カバー10から取り外される。露出部1cを覆うように電線用カバー10が電線1に装着されることにより、電線1は、乾燥状態はもとより散水された状態であっても所定の耐電圧基準(例えば、JIS C0920に定められた基準)を満たすことができる。
【0028】
[実施例2の使用方法]
導体である芯線部1aと芯線部1aを絶縁被覆する絶縁部1bとを備える電線1(図11参照)に対して実施例2に係る電線用カバー10’を装着する方法を説明する。電線1は、所定箇所のクランプの刃型電極(図示せず)により絶縁部1bが貫通された電極痕部1dを有する。
【0029】
電線用カバー10’の装着方法は、上述した電線用カバー10の装着方法と大略同様であるので、相違点について説明する。電線用カバー10’を電線1に装着する際、保持部材80’,90’が電極痕部1eを覆うように位置決めされる。その他の装着工程は、電線用カバー10の装着方法の工程と同様である。電線用カバー10’が電線1に対して完全に装着されると、保持部材80’,90’の粘着層83’,93’が電極痕部1eを覆った状態で絶縁部1bに対して粘着される。電線用カバー10’が電線1に装着されることにより、電線1は、乾燥状態はもとより散水された状態であっても所定の耐電圧基準(例えば、JIS C0920に定められた基準)を満たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、バイパス経路を施すために施工された架空配電線等の電線に使用する電線用カバーに適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 電線用カバー
20 筒体本体
30 第一の半筒体
40 第二の半筒体
50 ヒンジ部
60 ヒンジ部
70 把持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿う一の縁部が回動可能に連結され前記一の縁部と反対側の他の縁部が解除可能に合着する第一の半筒体及び第二の半筒体からなる筒体本体を備える電線用カバーであって、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体が電線を通すための開口を設けられた縮径底部をその両端部に有する、電線用カバーにおいて、
前記第一の半筒体の縮径底部と前記第二の半筒体の縮径底部との間に可撓性のヒンジ部を備え、
前記ヒンジ部が流体の前記電線用カバー内への浸入を防止することを特徴とする、電線用カバー。
【請求項2】
前記筒体本体の長手方向に直交する前記ヒンジ部の横断面が、前記ヒンジ部の枢軸部を頂点とする略V字形状であり、
前記ヒンジ部の枢軸部が、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記筒体本体の長手方向外方へ向かうにしたがい前記筒体本体の内方に傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の電線用カバー。
【請求項3】
前記他の縁部に沿って前記筒体本体の端部の近傍にスリットが設けられるとともに、前記他の縁部の近傍であって前記筒体本体の端部の近傍の内面に、前記筒体本体の長手方向外方に向かうにしたがい前記筒体本体の外面の方へ傾斜する傾斜部が設けられたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電線用カバー。
【請求項4】
前記第一の半筒体の前記他の縁部に沿って延び、先端が前記筒体本体の内方へ屈曲している第一の遮蔽リブと、前記第二の半筒体の前記他の縁部に沿って延びる第二の遮蔽リブとを備え、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記第一の遮蔽リブが前記第二の遮蔽リブより前記筒体本体の内方に延在するように重畳的に配設されて、電流が前記電線用カバーの外部へ漏洩することを防止することを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電線用カバー。
【請求項5】
前記筒体本体の所定箇所に設けられた把持部材が、前記把持部材の前記筒体本体に対する所定方向の回動を規制する回動規制部を備えることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の電線用カバー。
【請求項6】
前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体の少なくともいずれか一方の半筒体の内面に設けられた可撓性のリング状移動規制部であって、前記リング状移動規制部の環状外面が前記筒体本体の内方へ向けて凸部を形成することを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の電線用カバー。
【請求項7】
前記リング状移動規制部が、前記少なくともいずれか一方の半筒体と一体成形されたことを特徴とする、請求項6に記載の電線用カバー。
【請求項8】
前記環状外面に前記筒体本体の長手方向と略平行に延びるように溝が形成されたことを特徴とする、請求項6又は7に記載の電線用カバー。
【請求項1】
長手方向に沿う一の縁部が回動可能に連結され前記一の縁部と反対側の他の縁部が解除可能に合着する第一の半筒体及び第二の半筒体からなる筒体本体を備える電線用カバーであって、前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体が電線を通すための開口を設けられた縮径底部をその両端部に有する、電線用カバーにおいて、
前記第一の半筒体の縮径底部と前記第二の半筒体の縮径底部との間に可撓性のヒンジ部を備え、
前記ヒンジ部が流体の前記電線用カバー内への浸入を防止することを特徴とする、電線用カバー。
【請求項2】
前記筒体本体の長手方向に直交する前記ヒンジ部の横断面が、前記ヒンジ部の枢軸部を頂点とする略V字形状であり、
前記ヒンジ部の枢軸部が、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記筒体本体の長手方向外方へ向かうにしたがい前記筒体本体の内方に傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の電線用カバー。
【請求項3】
前記他の縁部に沿って前記筒体本体の端部の近傍にスリットが設けられるとともに、前記他の縁部の近傍であって前記筒体本体の端部の近傍の内面に、前記筒体本体の長手方向外方に向かうにしたがい前記筒体本体の外面の方へ傾斜する傾斜部が設けられたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電線用カバー。
【請求項4】
前記第一の半筒体の前記他の縁部に沿って延び、先端が前記筒体本体の内方へ屈曲している第一の遮蔽リブと、前記第二の半筒体の前記他の縁部に沿って延びる第二の遮蔽リブとを備え、前記第一の半筒体の前記他の縁部と前記第二の半筒体の前記他の縁部とが合着したとき、前記第一の遮蔽リブが前記第二の遮蔽リブより前記筒体本体の内方に延在するように重畳的に配設されて、電流が前記電線用カバーの外部へ漏洩することを防止することを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電線用カバー。
【請求項5】
前記筒体本体の所定箇所に設けられた把持部材が、前記把持部材の前記筒体本体に対する所定方向の回動を規制する回動規制部を備えることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の電線用カバー。
【請求項6】
前記第一の半筒体及び前記第二の半筒体の少なくともいずれか一方の半筒体の内面に設けられた可撓性のリング状移動規制部であって、前記リング状移動規制部の環状外面が前記筒体本体の内方へ向けて凸部を形成することを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の電線用カバー。
【請求項7】
前記リング状移動規制部が、前記少なくともいずれか一方の半筒体と一体成形されたことを特徴とする、請求項6に記載の電線用カバー。
【請求項8】
前記環状外面に前記筒体本体の長手方向と略平行に延びるように溝が形成されたことを特徴とする、請求項6又は7に記載の電線用カバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−250599(P2011−250599A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121685(P2010−121685)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【出願人】(000207311)大東電材株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【出願人】(000207311)大東電材株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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