説明

電縫鋼管の内面ビード屑処理装置

【課題】トラブルがなく、かつ経済的な内面ビード屑処理装置を実現する。
【解決手段】複数本の電縫鋼管Pを一端を揃えて水平に保持するパイプ受け台13と、内部のビード屑Sを吹き飛ばすブローヘッダ11と、このビード屑Sを中央に集めながら移送する振動コンベヤ17と、ビード屑Sを短く裁断する破砕手段18と、破砕されたチップCを搬出するチップコンベヤ19とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫鋼管の製造工程において、溶接後の内外面のビード部に生じる盛り上がりのうち内面側のものについて、これを切削して除去する際に発生するビード屑の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管の製造工程においては、溶接直後に、スクイーズロールで溶接部分を加圧するため、内外面のビード部に盛り上がり部が発生する。これを切削によって除去するが、そのビード屑はひも状に長いので、これを短く切断するなどしてバッグに回収し、スクラップとして再利用することが行なわれている。
本出願人の出願に係わる特許文献1は現在未公開ではあるが、その[背景技術]の項には、
「電縫鋼管の内面ビードは、電縫鋼管成形時にビードカッタで切削され、ビード屑は管内面に残留したまま鋼管とともに搬送され、中間テーブル上にて管端部からブロワにてブローされて除去される。」
との記載がある。
【0003】
まず、電縫鋼管製造工場のレイアウトの一例を図4により説明する。91は帯鋼Hを巻き戻すアンコイラ、92は巻き戻した帯鋼Hを貯留するルーパ、93は帯鋼Hを管状に曲げる成形ロールと溶接手段、これを押圧押圧するスクイーズロール等からなる成形機(造管機)、94は成形された電縫鋼管を所定長さに切断する切断機、95は中間テーブルで、P1は中間テーブル上の電縫鋼管である。
【0004】
従来はこの段階で製品としていたが、製品寸法の多様化に対応して成形機のロール類を多種準備しなければならなかったり、製品毎に加工条件が異なると作業が煩雑であるなどの理由から、近年では成形段階では極力少ない種類で長いままの中間製品を製造し、これを再加工して多種の製品を製造するようになっている。以下はその再加工ラインで、96は中間製品P1を再加熱する高周波などの加熱装置、97は所定寸法に再加工するレデューサ、98はこれを熱間で切断するホットソー、99は製品を冷却させるクーリングベッドである。
【0005】
切削による内面ビードの除去は、成形機における造管の際、刃物をビードの盛り上がり部に押し当てて削ることにより行なわれるが、発生したひも状のビード屑は鋼管の内部に残留している。これを中間テーブル95において中間製品である電縫鋼管P1から取り出すか、あるいはクーリングベッド99において製品である電縫鋼管P2から取り出すかの二通りがあるが、いずれにしても、鋼管の一端からエア、あるいはエアと水との混合物を吹き込んでビード屑を反対側に吹き飛ばすことが行なわれる。
【0006】
吹き飛ばされて出てきたひも状のビード屑については、従来、先端をピンチロールで引張ってビードカッタまで誘導し、ここでチップ状に短く裁断してバッグ内に回収するか、あるいはそのまま深いピット内に落下させ、油圧プレスで裁断および圧縮を行なって塊状とし、回収するなどの処理が行なわれていた。
しかしピンチロールで引張るやり方はピンチロール前後でビード屑のもつれがあるとビードカッタへの送り込みがうまく行なわれない場合があり、また複数本の鋼管について一度に処理を行なおうとするとピンチロールやビードカッタが幅方向に広くなって装置が大型化するという問題点がある。
【0007】
またピット内落下方式ではたとえば深さ5m程度の深いピットを構築する必要があるので建設費用が高く、またそのピット底部に設置する縦横2方向のラムを有する油圧式のスクラッププレスもきわめて高価なものであり、経済的な問題がある。
【特許文献1】特願2005−191270号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これまでのビード屑処理における上記の問題点を解消し、信頼性が高くかつ経済的な内面ビード屑処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定長さに切断された電縫鋼管を、一端を一定位置として所定高さでほぼ水平に保持するパイプ受け台と、このパイプ受け台で保持された電縫鋼管内にノズルを挿入して内部のビード屑を吹き飛ばすブローヘッダと、吹き飛ばされたビード屑を中央に集めながら移送する振動コンベヤと、移送されたビード屑を短く裁断する破砕手段と、裁断されたチップを搬出するチップコンベヤとからなることを特徴とする電縫鋼管の内面ビード屑処理装置であり、望ましくは前記パイプ受け台の一部ならびに前記振動コンベヤおよび前記破砕手段が電縫鋼管の長さ方向に移動可能である前記の内面ビード屑処理装置であり、さらにまた、前記破砕手段が爪車式の回転カッタとカラーとの間の押し切りカッタで、1対の回転軸に前記回転カッタとカラーが互いに対向するように交互に多数枚ずつ取り付けられている前記の電縫鋼管の内面ビード屑処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピンチロールを使用しないのでビード屑の搬送におけるトラブルがほとんどなく、また特に大型の機器やピットなどの構築も不要であるから経済的にビード屑の処理ができるという、すぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、振動コンベヤと破砕手段という簡易な機器の組み合わせでビード屑の処理を行なうことができ、また振動コンベヤでは前進中に複数本のビード屑を中央に集めるのでビード屑が束になって破砕手段に進入するから小型の破砕機で十分対応できるなどの利点がある。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面により説明する。図1は実施例の電縫鋼管の内面ビード屑処理装置を示す正面図、図2は同じく平面図で、13、14は所定長さに切断された電縫鋼管Pを、一端を一定位置として所定高さでほぼ水平に保持するパイプ受け台、11はこのパイプ受け台13、14で保持された電縫鋼管P内にノズルを挿入し、エアと水との混合流を噴射して内部のビード屑Sを吹き飛ばすブローヘッダ、17は吹き飛ばされたビード屑Sを移送する振動コンベヤ、18は移送されたビード屑Sを短く裁断する破砕手段、19は裁断されたチップCを搬出するチップコンベヤ、20はチップCを受け入れる回収バッグである。
【0013】
パイプ受け台13、14のうち、この図ではブローヘッダ11に近い2基は固定であるが、ブローヘッダ11から遠い2基については、振動コンベヤ17、破砕手段18とともに台車15上に取り付けられており、レール16により鋼管の長さ方向に移動できる。すなわち、電縫鋼管Pは、パイプ受け台13、14上に、ブローヘッダ11側の端部を一定位置に揃えて所定高さでほぼ水平に保持される。電縫鋼管Pの長さは製品毎に異なるから、長さに合わせて台車15を移動させる。パイプ受け台13、14は鋼管の径に合わせて、高さ方向にも調整可能である。
【0014】
ビード屑処理は鋼管1本毎に行なってもよいが、複数本まとめて行なうのが効率的である。複数本を対象とする場合は、ブローヘッダ11も複数本のノズルをそれぞれの電縫鋼管内に挿入できるものとする。
振動コンベヤ17は周知のものであるが、本発明においては上面の搬送路について、複数本の鋼管を同時に処理する場合に対応して上流側の幅を広くし、また、搬送中に複数本のビード屑が中央に集められるように、下流側の幅をせまくしている。例えば、搬送長さ10,000mmに対して、上流側の幅を1,500mm、下流側を400mmとした。これにより、破砕手段18についてはとくに幅広のものを使用する必要がない。
【0015】
破砕手段18も各種のものが知られているが、この実施例では上下1対の回転軸に、図3に示すような爪車式の回転カッタ181とカラー182とが互いに対向するように交互に多数枚ずつ取り付けられたものを使用する。ビード屑Sは回転カッタ181の先端とカラー182と間で押し切られてチップ状となる。回転カッタ181の先端刃先は、回転軸に対してねじれている。一例を示すと、回転軸の間隔250mm、それぞれの回転軸に外径300mmのカッタとカラーが6枚ずつ取り付けられている。
【0016】
図1における12は鋼管を上から押さえつけるパイプクランプ、図2における25、26はパイプ受け台13、14の両脇にあって鋼管を搬入、搬出するチェーンコンベヤである。
ブローヘッダ11においてエアのみを噴射する場合は必要ないが、水との混合流を噴射する場合はビード屑Sとともに大量の水が排出されるので、下方にピット23を設け、水中ポンプ24で水を汲み上げるようにする。その他振動コンベヤ17にはカバー21などを設ける。
【0017】
本発明のビード屑処理装置を設置する場所については特に限定しない。前記の図4における中間テーブル95、あるいはクーリングベッド99のいずれでも、またその他の場所でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施例の電縫鋼管の内面ビード屑処理装置を示す正面図である。
【図2】本発明実施例の電縫鋼管の内面ビード屑処理装置を示す平面図である。
【図3】本発明実施例の破砕手段の要部を示す正面図である。
【図4】本発明に係わる電縫鋼管製造工場のレイアウト図である。
【符号の説明】
【0019】
11 ブローヘッダ
12 パイプクランプ
13 パイプ受け台(固定式)
14 パイプ受け台(可動式)
15 台車
16 レール
17 振動コンベヤ
18 破砕機
19 チップコンベヤ
20 回収バッグ
21 カバー
23 ピット
24 水中ポンプ
25、26 チェーンコンベヤ
91 アンコイラ
92 ルーパ
93 成形機
94 切断機
95中間テーブル
96 加熱装置
97 レデューサ
98 ホットソー
99 クーリングベッド
181 回転カッタ
182 カラー
C チップ
H 帯鋼
P 電縫鋼管
P1 電縫鋼管(中間製品)
P2 電縫鋼管(製品)
S ビード屑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さに切断された電縫鋼管(P)を、一端を一定位置として所定高さでほぼ水平に保持するパイプ受け台(13,14)と、このパイプ受け台(13,14)で保持された電縫鋼管内にノズルを挿入して内部のビード屑を吹き飛ばすブローヘッダ(11)と、吹き飛ばされたビード屑(S)を中央に集めながら移送する振動コンベヤ(17)と、移送されたビード屑を短く裁断する破砕手段(18)と、裁断されたチップを搬出するチップコンベヤ(19)とからなることを特徴とする電縫鋼管の内面ビード屑処理装置。
【請求項2】
前記パイプ受け台の一部(14)ならびに前記振動コンベヤ(17)および前記破砕手段(18)が電縫鋼管(P)の長さ方向に移動可能である請求項1に記載の電縫鋼管の内面ビード屑処理装置。
【請求項3】
前記破砕手段(18)が爪車式の回転カッタ(181)とカラー(182)との間の押し切りカッタで、1対の回転軸に前記回転カッタ(181)とカラー(182)が互いに対向するように交互に多数枚ずつ取り付けられている請求項1または2に記載の電縫鋼管の内面ビード屑処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−222898(P2007−222898A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45686(P2006−45686)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】