説明

電荷移動分子およびその調製方法

【課題】電子写真用作像部材の電荷移動層に使用される電荷移動化合物、及びその合成方法を提供する。
【解決手段】下式の化合物


〔式中、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、(i)水素、(ii)アルキル基、(iii)アリール基、(iv)アリールアルキル基、(v)アルキルアリール基、(vi)アルコキシ基、(vii)アリールオキシ基、(viii)アリールアルキルオキシ基、(ix)アルキルアリールオキシ基から選択され;Rは、(i)アルキレン基、(ii)アリーレン基、(iii)アリールアルキレン基、または(iv)アルキルアリーレン基である]である。本化合物は、ヒドロキシ官能基化されたトリアリールアミンと、ジハロゲン化物とを、アルカリ性水溶液中、室温で接触させることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子写真用作像部材は、通常は、基板支持体と、電気導電性層と、場合により、正孔遮蔽層と、接着層と、電荷生成層と、電荷移動層とを、可とう性ベルト形態または剛性ドラム形状のいずれかで備える多層光受容体である。多層光受容体の一種は、光導電性無機化合物または有機化合物の精密に分割した粒子の層が、電気絶縁性有機樹脂バインダーに分散したものを含む。電荷生成層は、正孔を光生成し、光生成した正孔を電荷移動層に注入することができる。また、光受容体は、単一層のデバイスであってもよい。例えば、単一層の有機光受容体は、典型的には、光生成顔料と、熱可塑性バインダーと、正孔と、電子移動材料とを備える。
【0002】
電荷移動層は、任意のいくつかの異なる種類のポリマーバインダーで構成されており、これに分散した電荷移動材料を有していることが知られている。電荷移動層は、膜形成バインダーに溶解するか、分子が分散した、活性な芳香族ジアミン低分子電荷移動化合物を含有していてもよい。このような多層光受容体を用いて、優れたトナー画像を得ることができるが、高濃度の活性な芳香族ジアミン低分子電荷移動化合物を膜形成バインダーに溶解するか、分子を分散させると、この低分子は、機械操作温度がもっと高いか、機械応力がもっと高いか、化学物質の蒸気にさらされるような条件では、時間経過とともに結晶化する傾向があることがわかっている。このような結晶化によって、電気光学的性質(例えば、サイクルアップを引き起こしかねない残留電位の蓄積)に望ましくない変化がもたらされる場合がある。さらに、コーティング操作中の使用に利用可能なバインダーおよびバインダー溶媒の種類の範囲は、電荷移動層のために、高濃度の上述の低分子が求められる場合には制限される。
【0003】
電荷移動ポリマーを用いる別の種類の電荷移動層が記載されている。この種類の電荷移動ポリマーとしては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシリレンなどの材料が挙げられる。
【0004】
電荷移動分子は、有機光受容体の重要な成分である。これらの材料を適用するには、高い電荷移動度が望ましい。一般的に、電荷移動材料は、ジアリールアミンおよびハロゲン化アリールを、不活性雰囲気下、高温でカップリング反応することによって合成されるトリアリールアミンおよびこれらの誘導体を含む。ハロゲンを含有する有機溶媒(例えば、塩化メチレン)は、光受容体を加工するのに一般的に用いられる。ハロ有機溶媒廃棄物の回収は、化学産業において重要な環境問題である。
【0005】
当該技術分野で必要なことは、環境に優しく、簡便な電荷移動材料を調製するプロセス、高価な反応プロトコル、または複雑な反応プロトコルを必要としない、電荷移動材料を調製するプロセス、および、望ましい高い電荷移動度を有する電荷移動材料を製造するプロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本開示のいくつかの実施形態について、場(V/cm)(x軸)に対し、移動度(単位cm−1−1)(y軸)を示すグラフである。
【0007】
下式の化合物を含む電荷移動分子が記載される。


〔 式中、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキルであっても置換されていないアルキルであってもよく、アルキル基の中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が存在していてもよく、1〜約20個、または1〜約18個の炭素原子を有するアルキル基、(iii)置換アリールであっても置換されていないアリールであってもよく、アリール基の中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が存在していてもよく、6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアリール基、(iv)置換アリールアルキルであっても置換されていないアリールアルキルであってもよく、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アリールアルキルのアリール部分またはアルキル部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が存在していてもよく、6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアリールアルキル基、(v)置換アルキルアリールであっても置換されていないアルキルアリールであってもよく、アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキルアリール基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が存在していてもよく、6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアルキルアリール基、(vi)アルコキシ基、(vii)置換アリールオキシであっても置換されていないアリールオキシであってもよく、アリールオキシ基のアリール部分に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が存在していてもよく、6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、(viii)置換アリールアルキルオキシであっても置換されていないアリールアルキルオキシであってもよく、アリールアルキルオキシのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アリールアルキルオキシ基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が存在していてもよく、6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアリールアルキルオキシ基、(ix)置換アルキルアリールオキシであっても置換されていないアルキルアリールオキシであってもよく、アルキルアリールオキシのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキルアリールオキシ基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が存在していてもよく、6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアルキルアリールオキシ基から選択され;
【0008】
ここで、Rは、(i)1〜20個、または1〜18個の炭素原子を有するアルキレン基(アルキレン基は、二価の脂肪族基またはアルキル基と定義され、直鎖であるか、分枝であるか、飽和であるか、不飽和であるか、環状であるか、非環状である、置換アルキレン基および置換されていないアルキレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が、アルキレン基に存在していてもよい);(ii)6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基(アリーレン基は、二価の芳香族基またはアリール基と定義され、置換アリーレン基および置換されていないアリーレン基を含み、アルキレン基について上に記載したようなヘテロ原子が、アリーレン基に存在していてもよい);(iii)6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、二価のアリールアルキル基と定義され、置換アリールアルキレン基および置換されていないアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキレン基について上に記載したようなヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよい);または、(iv)6〜20個、または6〜18個の炭素原子を有するアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、二価のアルキルアリール基と定義され、置換アルキルアリーレン基および置換されていないアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキレン基について上に記載したようなヘテロ原子が、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよい)であり;
【0009】
ここで、R〜Rの置換アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基上の置換基は、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、スルフィド、ホスフィン、ホスホニウム、ホスフェート、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、アシル、酸無水物、アジド、アゾ、チオシアネート、カルボキシレート、ウレタン、尿素、これらの混合物であってもよく、2個以上の置換基が一緒に結合して環を形成していてもよい。〕
【0010】
実施形態では、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)1〜20個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。
【0011】
一実施形態では、RおよびRは、水素であり、RおよびRはメチルである。
【0012】
実施形態では、Rは、1〜20個の炭素原子を有する、アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基またはアリールアルキレン基である。
【0013】
実施形態では、Rは、下式の化合物である。
−CH−、
−CHCHCHCH−、または

【0014】
実施形態では、電荷移動分子は、下式を有する。




または

【0015】
本明細書の 化合物は、任意の望ましい方法または有効な方法、例えば、下式のヒドロキシ官能基化されたトリアリールアミン2モル当量を、

【0016】
下式のジハロゲン化物1モル当量と、

【0017】
〔式中、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキルであっても置換されていないアルキルであってもよく、アルキル基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキル基、(iii)置換アリールであっても置換されていないアリールであってもよく、アリール基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリール基、(iv)置換アリールアルキルであっても置換されていないアリールアルキルであってもよく、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アリールアルキルのアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキル基、(v)置換アルキルアリールであっても置換されていないアルキルアリールであってもよく、アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキルアリール基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリール基、(vi)アルコキシ基、(vii)アリールオキシ基、(viii)アリールアルキルオキシ基、(ix)アルキルアリールオキシ基から選択され;
【0018】
は、(i)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキレンであっても置換されていないアルキレンであってもよく、アルキレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキレン基;(ii)置換アリーレンであっても置換されていないアリーレンであってもよく、アリーレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリーレン基;(iii)置換アリールアルキレンであっても置換されていないアリールアルキレンであってもよく、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキレン基;または、(iv)置換アルキルアリーレン基であっても置換されていないアルキルアリーレン基であってもよく、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキルアリーレン基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリーレン基であり;
【0019】
ここで、Xは、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、特定の実施形態では、Xは、塩素である〕
【0020】
アルカリ性水溶液中、室温、典型的には、20〜26℃で反応させることと(この温度は、これらの範囲の外側であってもよい);場合により、この生成物を処理し、精製された生成物を得ることによって調製することができる。
【0021】
アルカリ性水溶液は、任意のアルカリ性水溶液であってもよく、例えば、水酸化ナトリウム水、水酸化カリウム水、またはこれらの混合物であってもよい。アルカリ性水溶液は、任意の適切な濃度または任意の望ましい濃度、例えば、1〜60%の水溶液、50%の水酸化ナトリウム水溶液、50%の水酸化カリウム水溶液、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0022】
実施形態では、上述のプロセスは、ハロゲン有機溶媒を含有する廃棄物流から上述のジハロゲン化物を得ることをさらに含む。廃棄物流は、例えば、塩化メチレンを含む、回収された溶媒の廃棄物流であってもよく、塩化メチレンまたは他のハロゲン有機物を、本明細書のプロセスで反応剤として用いてもよい。
【0023】
実施形態では、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)1〜20個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。
【0024】
一実施形態では、RおよびRは、水素であり、RおよびRはメチルである。
【0025】
実施形態では、Rは、1〜20個の炭素原子を有する、アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基またはアリールアルキレン基である。
【0026】
実施形態では、Rは、下式の化合物である。
−CH−、
−CHCHCHCH−、または

【0027】
実施形態では、Rは、下式の塩化メチレンである。
CHCl
【0028】
上述のプロセスは、場合により、生成物を、濾過、洗浄、結晶化、乾燥、またはこれらの組み合わせのような任意のプロセスによって処理することを含んでいてもよい。
【0029】
3−(N,N−ジトリルアミノ)フェノール[DTAP]とジハロゲン化物とのカップリング反応によって、電荷移動分子を合成してもよい。この反応を、アルカリ性水溶液中、室温で行ってもよい。収率は高く、精製手順は単純である。ジハロゲン化物は、脂肪族であっても芳香族であってもよい。ジハロゲン化物(例えば、塩化メチレン)を含有する、回収された溶媒廃棄物を、(反応剤)出発物質として使用してもよい。
【0030】
本発明の電荷移動分子は、高い電荷移動度を有する。本明細書の電荷移動分子は、高い電荷移動度を有し、m−TBD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)に匹敵する。電荷移動度は、物質に固有の性質であると考えてもよく、試験する場および担持濃度のような多くの因子によって影響を受ける場合がある。m−TBDは、約1.0E−06cm−1−1の電荷移動度を有することができる。
【0031】
本明細書の 電荷移動分子は、約1.0E−05cm−1−1の電荷移動度を有している。実施形態では、本明細書の電荷移動分子は、電荷移動分子とポリカーボネートバインダーとを重量比50:50で含む電荷移動組成物の状態で提供される場合、約1.0E−05cm−1−1の電荷移動度を有している。
【0032】
実施形態では、上述のプロセスによって、廃棄物である有機ハロゲン化物を価値の高い電荷移動材料へと変換することができる。
【0033】
環境に優しく、簡便な、電荷移動分子を調製する方法が提供される。この反応を、アルカリ性水溶液中、室温で行ってもよい。ハロ有機溶媒の廃棄物流を精製したもの、または回収したものを原材料として用いてもよい。生成物の抽出および精製は単純である。新規電荷移動分子群は、3−(N,N−ジトリルアミノ)フェノール[DTAP]とジハロゲン化物とのカップリング反応によって合成することができる。この反応を、アルカリ性水溶液中、室温で行ってもよい。収率は高く、収率が95%まで到達することもあり、精製手順は単純である。
【0034】
ジハロゲン化物は、脂肪族であっても芳香族であってもよい。有益なことに、ジハロゲン化物(例えば、塩化メチレン)を含有する、回収された溶媒廃棄物でさえ、出発物質として使用してもよい。このプロセスは、廃棄物である有機ハロゲン化物を価値の高い電荷移動材料へと変換する能力を与える。このプロセスは、廃棄物質を再生利用することによって調製することができるため、きわめて環境に優しい、代替的で性能が匹敵するすばやい移動材料を提供する。
【0035】
本明細書に開示している作像部材は、基板と;その上にある電荷生成層と;その上にある、本明細書に記載されるような、下式の化合物


を含む電荷移動層とを備える。
【0036】
作像部材を調製する 方法は、電荷生成層を基板上に堆積させることと;本明細書に記載されるような電荷移動化合物を備える電荷移動層を、電荷生成層の上に堆積させることとを含む。
【0037】
電荷移動分子を、ポリマーバインダーに溶解するか、または分散し、次いで、電荷生成層をコーティングしてもよい。本明細書の電荷移動化合物を、ポリマーバインダーまたは任意の適切な材料(例えば、ポリカーボネートまたはポリスチレン)に配置してもよい。
【0038】
電荷移動成分は、電荷生成層から、光受容体の表面へと電荷を移動させる。
【0039】
任意の適切な溶媒または溶媒系を選択してもよい。例えば、溶媒系は、上述の成分の安定な分散物を得るのに役立つように選択される。適切な溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、モノクロロベンゼン、およびこれらの混合物が挙げられる。固形分の合計量と、溶媒の合計量の比率は、限定されないが、15:85重量%〜30:70重量%、または20:80重量%〜25:75重量%であってもよい。
【0040】
所望の場合、さらなる添加剤を加えてもよく、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、またはレベリング剤が、電荷移動層の材料に含まれていてもよい。実施形態では、末端にトリメチルシリルが結合したポリジメチルジフェニルシランを電荷移動層として選択してもよく、例えば、末端にトリメチルシリルが結合したポリジメチルジフェニルシラン、Dow Corningから入手可能なDC510(登録商標)を選択してもよい。理論によって束縛されることを望まないが、この界面活性剤が、電荷移動層のコーティング性能を高め、デバイスの電気特性および機械特性を高めることができると考えられる。界面活性剤を、任意の適切な量で加えてもよく、例えば、コーティング溶液の合計重量を基準として、0.0001重量%〜0.5重量%、または0.0001重量%〜0.1重量%、または0.005重量%の量で加えてもよい。場合により、界面活性剤物質を、電荷生成層に加えてもよい。
【0041】
低分子電荷移動材料およびバインダーの量、成分比は、所望の場合、デバイスで望ましい最終的な移動度に依存して、選択することができる。実施形態では、電荷移動層は、本明細書に記載の低分子電荷移動化合物と選択されたポリマー成分とを、低分子電荷移動化合物 対 ポリマー成分の重量比0:100〜90:10で含有する。
【0042】
電荷移動層は、任意の適切な厚み、例えば、2〜35マイクロメートルで与えられてもよい。
【0043】
静電写真方式の作像部材は、当該技術分野で十分に知られており、種々の適切な技術によって調製されてもよい。典型的には、可とう性基板または剛性基板は、導電性表面を有するように与えられる。この導電性表面に、電荷生成層が適用される。電荷生成層を適用する前に、導電性表面に電荷遮蔽層を適用してもよい。電荷遮蔽層と電荷生成層との間に接着層を用いてもよい。電荷生成層を、電荷生成層の上に形成された、遮蔽層および電荷移動層の上に適用してもよい。実施形態では、電荷移動層を、電荷生成層の前に適用してもよい。
【0044】
支持基板は、導電性金属基板または金属を含有する基板を備えるように選択してもよい。金属基板は、実質的に金属であるか、または完全に金属であるが、金属を含有する基板の基板は、基板の少なくとも片方の表面に、少なくとも1つの金属層が適用され、異なる材料で作られている。この金属を含有する基板の基板材料は、金属層を適用することが可能な任意の材料であってよい。例えば、基板は、ポリマーのような合成材料であってもよい。種々の例示的な実施形態では、導電性基板は、例えば、アルミニウム、アルミニウムまたはチタンを含有するポリエチレンテレフタレートベルトからなる群から選択される少なくとも1つの部材である。
【0045】
任意の金属または金属合金は、金属基板または金属を含有する基板のために選択されてもよく、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、これらの混合物から選択されてもよい。有用な金属合金は、2種類以上の金属、例えば、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、これらの混合物を含有していてもよい。アルミニウム(例えば、鏡面仕上げしたアルミニウム)は、金属基板の実施形態でも、金属を含有する基板中の金属の実施形態でも選択される。研磨した基板、陽極酸化処理した基板、ベーム石でコーティングされた基板および鏡面基板を含め、すべての種類の基板を使用してもよい。
【0046】
本発明の作像部材用に選択される基板層の例としては、不透明な物質または実質的に透明な物質が挙げられ、必要な機械特性を有する任意の適切な材料を含んでいてもよい。したがって、基板は、無機物質または有機ポリマー物質を含む絶縁材料の層(例えば、Mylar(登録商標)、市販のポリマー、チタンを含むMylar(登録商標))、半導体表面層を有する有機材料または無機材料の層(例えば、酸化スズインジウムまたはそのアルミニウム改変版)、またはアルミニウム、クロム、ニッケル、真ちゅうなどの導電性材料を含んでいてもよい。基板は、可とう性であってもよく、つなぎ目のない状態であってもよく、または剛性であってもよく、多くの異なる形状を有していてもよい。基板は、平板、円筒形のドラム状、巻物状、終端のない可とう性ベルト、または他の形状を含んでいてもよい。いくつかの状況で、例えば、基板が、可とう性有機ポリマー材料、例えば、ポリカーボネート材料、例えば、Makrolon(登録商標)の市販材料である場合に、基板の裏側に曲げ防止層を備えることが望ましい場合もある。
【0047】
基板層の厚みは、所望な強度、経済的な考慮事項を含む多くの因子に依存して変わる。したがって、可とう性ベルトのための基板層は、最終的なデバイスに悪影響を及ぼさない限り、かなりの厚みを有していてもよく(例えば、125マイクロメートル)、または、最小限の厚みであってもよい(例えば、50マイクロメートル未満)。基板層の表面は、堆積するコーティングの接着性を高めるために、コーティングの前にクリーニングしておいてもよい。基板層の表面へプラズマ放電やイオン衝撃などを加えることによってクリーニングしてもよい。
【0048】
場合により、基板に正孔遮蔽層が適用される。一般的に、正に帯電した光受容体のための電子遮蔽層によって、光受容体の上部にある電荷生成層に、光によって正孔が生成し、電荷(正孔)移動層に向かって下に移動し、静電写真方式の作像プロセスの間に、底部にある導電層に到達する。したがって、電子遮蔽層は、通常は、正に帯電した光受容体(例えば、電荷(正孔)移動層の上にある、電荷生成層でコーティングされた光受容体)中の正孔を遮断しないものと予想される。負に帯電した光受容体の場合、隣接する光導電性層と、その下にある基板層との間に、正孔に対する電子障壁を形成することが可能な任意の適切な正孔遮蔽層を用いてもよい。正孔遮蔽層は、任意の適切な材料を含んでいてもよい。負に帯電した光受容体に利用される典型的な正孔遮蔽層としては、例えば、ポリアミド、ヒドロキシルアルキルメタクリレート、ナイロン、ゼラチン、ヒドロキシルアルキルセルロース、有機ポリホスファゼン、有機シラン、有機チタネート、有機ジルコネート、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムを挙げることができる。実施形態では、正孔遮蔽層は、窒素含有シロキサンを含む。
【0049】
実施形態では、正孔遮蔽層は、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを含む。
【0050】
遮蔽層は、本明細書のすべての層と同様に、そのままで任意の適切な技術によって適用されてもよい。
【0051】
接着層は、場合により、正孔遮蔽層にそのまま適用されてもよく、任意の適切な材料、例えば、任意の適切な膜形成ポリマーを含んでいてもよい。典型的な接着層の材料としては、コポリエステル樹脂、ポリアリレート、ポリウレタン、樹脂ブレンドが挙げられる。任意の適切な溶媒は、接着層のコーティング溶液を作成するために選択されてもよい。典型的な溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、モノクロロベンゼン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
電荷生成成分は、電子−正孔対への光入力を変換する。電荷生成成分として使用するのに適した化合物の例としては、バナジルフタロシアニン、金属フタロシアニン(例えば、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、アルコキシガリウムフタロシアニン)、金属を含まないフタロシアニン、ベンズイミダゾールペリレン、アモルファスセレン、三方晶セレン、セレン合金(例えば、セレン−テルル、セレン−テルルヒ素、ヒ化セレン)、クロロガリウムフタロシアニン、およびこれらの混合物が挙げられる。実施形態では、光生成層は、金属フタロシアニンおよび/または金属を含まないフタロシアニンを含む。実施形態では、光生成層は、チタニルフタロシアニン、ペリレン、またはヒドロキシガリウムフタロシアニンからなる群から選択される少なくとも1つのフタロシアニンを含む。実施形態では、光生成層は、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを含む。
【0053】
電荷生成層は、無機または有機の組成物などを含む、単層または複数層を含んでいてもよい。電荷生成層および/または電荷生成顔料に適したポリマー膜形成バインダー材料としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ酢酸ビニル、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、アミノ樹脂、フェニレンオキシド樹脂、テレフタル酸樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ポリスチレンおよびアクリロニトリルのコポリマー、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルおよび酢酸ビニルのコポリマー、アクリレートコポリマー、アルキド樹脂、セルロース膜形成剤、ポリ(アミドイミド)、スチレン−ブタジエンコポリマー、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、スチレン−アルキド樹脂、ポリビニルカルバゾール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
また、電荷生成成分は、光生成組成物または光生成顔料を含んでいてもよい。光生成組成物または光生成顔料は、樹脂バインダー組成物に種々の量で存在してもよく、90容積%に対し、5容積%〜90容積%の量で存在してもよい(光生成顔料が、樹脂バインダー95容積%に対し、10容積%で分散している)。あるいは、実施形態では、光生成顔料8容積%が、樹脂バインダー組成物92容積%に分散している。光生成成分が、樹脂バインダー材料に光導電性組成物および/または光導電性顔料を含有している場合、この層の厚みは、典型的に、0.1〜5.0μmの範囲である。光生成層の厚みは、バインダーの含有量に関連することが多く、例えば、バインダーの含有量が多い組成物ほど、典型的には、光を生成するのに厚い層が必要である。これらの範囲の外側にある厚みを選択してもよい。
【0055】
作像デバイスの厚みは、典型的には、2〜100μmの範囲である。それぞれの層の厚みは、その層にどれだけ多くの成分が含まれているか、それぞれの成分がその層でどれほど多いことが望ましいか、また、当業者によく知られている他の因子によって変わるだろう。
【0056】
本明細書に記載の種々の他の層と同様に、光生成層を、任意の望ましい方法または適切な方法によって、その下にある層に適用することができる。任意の適切な技術を用い、光生成層のコーティング混合物を混合し、その後に、典型的な適用技術を用いて適用してもよい。本明細書の他の層と同様に、乾燥は、任意の適切な技術によって行うことができる。
【0057】
光受容体が摩耗するのに対する耐性を高めるために、オーバーコート層を用いてもよい。曲げ防止背面コーティングを、光導電層を有する側とは反対の基板表面に適用し、ウェブ形状の光受容体が望ましいような場所で、平坦度および/または摩耗耐性を付与してもよい。実施形態では、第2のMakrolon(登録商標)/TPD移動層を、厚いオーバーコート層と考えてもよい。
【0058】
本開示に包含されるのは、作像部材で静電潜像を作成することと;この画像を、例えば、少なくとも1つの熱可塑性樹脂、少なくとも1つの着色剤(例えば、顔料)、少なくとも1つの電荷添加剤、少なくとも1つの表面添加剤を含むトナー組成物を用いて現像することと;この画像を必要な部材(例えば、任意の適切な基板、例えば、紙)に転写することとと;この部材に画像を永久的に定着させることとを含む、本明細書に示した光応答性デバイスを用いて作像し、印刷する方法である。印刷モードで使用する実施形態では、種々の方法は、レーザーデバイスまたはイメージバーを用いることによって、作像部材に静電潜像を作成することと;この画像を、少なくとも1つの熱可塑性樹脂、少なくとも1つの着色剤(例えば、顔料)、少なくとも1つの電荷添加剤、少なくとも1つの表面添加剤を含むトナー組成物を用いて現像することと;この画像を必要な部材(例えば、任意の適切な基板、例えば、紙)に転写することと;この部材に画像を永久的に定着させることとを含む。
【0059】
実施形態では、記録媒体で画像を作成するための画像形成装置は、(a)静電潜像を受け入れるための電荷保持表面を備え、金属基板または金属を含有する基板と、電荷生成層と、この中に分散した電荷移動材料を含む電荷移動層とを含む、光受容体部材と;(b)現像材料を、上述の電荷保持表面に適用し、静電潜像を現像し、上述の電荷保持表面に現像した画像を作成するための、現像要素と;(c)上述の現像した画像を、上述の電荷保持表面から別の部材またはコピー基板に転写するための転写要素と;(d)上述の現像した画像を上述のコピー基板に融合する融合部材とを備える。
【0060】
(実施例1)
下式の電荷移動分子

【0061】
(生成物I)を以下のように調製した。3−(N,N−ジトリルアミノ)フェノール(DTAP、米国特許第5,976,744号および第6,099,996号に記載されているように調製)(14.5グラム、50ミリモル)、50% NaOH水溶液(15ミリリットル)、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(Sigma−Aldrich,Inc.)(3.4グラム、10ミリモル)および塩化メチレン(Sigma−Aldrich,Inc.)(30ミリリットル)の混合物を室温で15時間撹拌した。その後、溶媒をロータリーエバポレーター(Rotavapor(登録商標)R−210/R−215 Buchi Laboratory Equipment)を用いて除去した。得られた黄色ペーストを、激しく撹拌しながら、脱イオン水150ミリリットルに注いだ。固体を濾過によって集め、メタノールで3回洗浄した(それぞれ50ミリリットルで洗浄)。60℃で減圧乾燥した後、生成物Iを白色結晶として収率94%で得た(14.0グラム)。生成物Iの分子構造を、NMRおよびFT−IRで確認した。酢酸エチルから再結晶させ、さらに精製した。
【0062】
(実施例2)
下式の電荷移動分子

【0063】
(生成物II)を以下のように調製した。3−(N,N−ジトリルアミノ)フェノール(DTAP、米国特許第5,976,744号および第6,099,996号に記載されているように調製)(5.8グラム、20ミリモル)、50% NaOH水溶液(30ミリリットル)、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(Sigma−Aldrich,Inc.)(3.4グラム、10ミリモル)および1.4−ジブロモブタン(Sigma−Aldrich、,Inc.)(2.15グラム、10ミリモル)の混合物を40℃で18時間激しく撹拌した。この粘性黄色溶液を、激しく撹拌しながら、脱イオン水150ミリリットルに注いだ。固体を濾過によって集め、メタノールで3回洗浄し(それぞれ50ミリリットルで洗浄)、次いで、水で3回洗浄した(それぞれ50ミリリットルで洗浄)。60℃の減圧オーブンで乾燥した後、生成物IIを白色結晶として収率78%で得た(4.9グラム)。NMRおよびFT−IRを用い、生成物IIの分子構造を確認した。
【0064】
(実施例3)
下式の電荷移動分子

【0065】
(生成物II)を以下のように調製した。3−(N,N−ジトリルアミノ)フェノール(DTAP、米国特許第5,976,744号および第6,099,996号に記載されているように調製)(5.8グラム、50ミリモル)、50% KOH水溶液(15ミリリットル)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(Sigma−Aldrich,Inc.)(1.9グラム、10ミリモル)、α,α’−ジブロモ−m−キシレン(Sigma−Aldrich,Inc.から入手可能)(純度97%、2.64グラム、10ミリモル)およびトルエン(30ミリリットル)の混合物を室温で15時間撹拌した。その後、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて取り出した。残った黄色ペーストを、激しく撹拌しながら、脱イオン水150ミリリットルに注いだ。固体を濾過によって集め、メタノール50ミリリットルずつで3回洗浄した。60℃の減圧オーブンで乾燥した後、生成物IIIを白色結晶として収率84%で得た(5.7グラム)。生成物IIIの分子構造を、NMRおよびFT−IRを用いて確認した。アセトンから再結晶させ、さらに精製した。
【0066】
(比較例4)
電荷移動分子、下式のN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(DHTBD)

【0067】
を、米国特許第4,806,443号の実施例IおよびIIに記載されているように調製した。DHTBDは、約2.88E−09cm−1−1の移動度を有する。
【0068】
(実施例5)
厚み3.5mil(89マイクロメートル)の二軸配向したポリエチレンナフタレート基板(KADALEX(商標))にコーティングした、厚みが0.02マイクロメートルのチタン層を提供し、グラビアコーティング技術またはダイ押出コーティング技術を用いて、これに、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン10グラム、蒸留水10.1グラム、酢酸3グラム、200プルーフの変性アルコール684.8グラム、ヘプタン200グラムを含有する溶液を適用することによって、静電写真方式の作像部材のウェブストックを調製した。次いで、この層を、強制換気式オーブンで、135℃で5分間乾燥させた。得られた遮蔽層は、エリプソメータを用いて測定すると、乾燥時の平均厚みが、0.05マイクロメートルであった。
【0069】
次いで、テトラヒドロフラン:シクロヘキサノンの容積比70:30の混合物中、遮蔽層に、ポリエステル接着剤(Ardel(登録商標))の溶液の合計重量を基準として、5重量%を含有するウェットコーティングを押出成形するプロセスを適用し、接着界面層を調製した。接着界面層を、強制換気式オーブンで、135℃で5分間乾燥させた。得られた接着界面層は、乾燥時の厚みが0.065マイクロメートルであった。
【0070】
その後、接着界面層を電荷生成層でコーティングした。LUPILON(登録商標)200(PC−Z 200)0.45グラム、テトラヒドロフラン50mlを、4オンスのガラス瓶に入れることによって、電荷生成層の分散物を調製した。この溶液に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(OHGaPc)2.4グラム、直径が1/8インチ(3.2ミリメートル)のステンレス鋼ショット300グラムを加えた。次いで、この混合物をボールミルに6〜8時間入れた。次いで、PC−Z 200 2.25グラムを、テトラヒドロフラン46.1グラムに溶解し、次いで、これに、OHGaPcスラリーを加えた。次いで、このスラリーをシェーカーに10分間入れた。その後、得られたスラリーを、押出適用プロセスによって、接着界面にコーティングし、湿潤時の厚み0.25milの層を得た。遮蔽層および接着層を有する基板ウェブの片方の縁にそって、幅約10mm分を、意図的に、いかなる電荷生成層材料によってもコーティングされないままにしておき、後で適用される粉砕片の層と十分に電気的に接触するようにしておく。この電荷生成層を、強制換気オーブンで、135℃で5分間乾燥させ、層の厚みが0.4マイクロメートルの乾燥電荷生成層を作成した。
【0071】
(実施例6)
次いで、電荷移動層のコーティング溶液を、実施例1〜比較例4のために調製した。それぞれの電荷移動層溶液を作成するために、60ミリリットルの褐色瓶で、実施例1〜比較例4のそれぞれの電荷移動材料約3.6グラムを、重量平均分子量が40,000のポリ(4,4’−ジフェニル−1,1’−シクロヘキサンカーボネート)−400 3.6グラム、テトラヒドロフラン約22.5グラムおよびトルエン約7.5グラムと混合した。ロールミルで約20〜約20℃で約15時間混合すると、実施例1〜比較例4の4種類の電荷移動溶液を、実施例5の光受容体構造をコーティングする準備ができた。このデバイスは、合計厚みが約30マイクロメートルであった。光受容体デバイスの加工の詳細については、米国特許第6,677,090号を参照。
【0072】
移動度は、任意の適切な方法または望ましい方法によって決定することができる。本明細書の例示的な電荷移動材料に対する電荷移動度は、以下のように決定した。1/2インチの円状の半透明金電極で、デバイスの上部表面を仕上げ処理し、飛行時間(TOF)の測定を行った。電荷生成層から、種々の設定の負電位にバイアスされた金電極へとフラッシュ露光することによって、電荷を注入した。得られた過渡電流から、電荷の立ち上がり端の通過時間を測定した。異なるバイアス電位でのこれらの通過時間から、電場の関数として移動度を算出した。
【0073】
図1は、実施例1〜3の電荷移動材料に対する電荷移動度の測定値を与えており、移動度は、x軸に示されている場(V/cm)に対してcm/Vsとしてy軸に示されている。
【0074】
図1は、本発明の電荷移動分子が、きわめて高い電荷移動度を有することを示す。実施形態では、本明細書の電荷移動分子は、電荷移動分子とポリカーボネートバインダーとの重量比が約50/50の場合に、約1.0E−05cm−1−1の電荷移動度を有する。
【0075】
図1からわかるように、本明細書の生成物Iの電荷移動分子の移動度は、典型的には、移動度が1.0E−06cm−1−1であるm−TBD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)よりも移動度が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を有する化合物。


〔式中、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキルであっても置換されていないアルキルであってもよく、場合により、アルキル基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキル基、(iii)置換アリールであっても置換されていないアリールであってもよく、場合により、アリール基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリール基、(iv)置換アリールアルキルであっても置換されていないアリールアルキルであってもよく、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アリールアルキルのアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキル基、(v)置換アルキルアリールであっても置換されていないアルキルアリールであってもよく、アルキルアリール基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アルキルアリールのアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリール基、(vi)アルコキシ基、(vii)アリールオキシ基、(viii)アリールアルキルオキシ基、(ix)アルキルアリールオキシ基から選択され;
は、(i)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキレンであっても置換されていないアルキレンであってもよく、場合により、アルキレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキレン基;(ii)置換アリーレンであっても置換されていないアリーレンであってもよく、場合により、アリーレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリーレン基;(iii)置換アリールアルキレンであっても置換されていないアリールアルキレンであってもよく、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキレン基;または、(iv)置換アルキルアリーレン基であっても置換されていないアルキルアリーレン基であってもよく、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アルキルアリーレン基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリーレン基である〕
【請求項2】
下式




または


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、電荷移動分子とポリカーボネートバインダーとを重量比50:50で含む電荷移動組成物の状態で提供される場合、約1.0E−05cm−1−1の電荷移動度を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
ヒドロキシ官能基化された下式のトリアリールアミン


と、下式のジハロゲン化物


〔式中、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキルであっても置換されていないアルキルであってもよく、場合により、アルキル基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキル基、(iii)置換アリールであっても置換されていないアリールであってもよく、場合により、アリール基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリール基、(iv)置換アリールアルキルであっても置換されていないアリールアルキルであってもよく、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アリールアルキルのアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキル基、(v)置換アルキルアリールであっても置換されていないアルキルアリールであってもよく、アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アルキルアリール基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリール基、(vi)アルコキシ基、(vii)アリールオキシ基、(viii)アリールアルキルオキシ基、(ix)アルキルアリールオキシ基から選択され;
は、(i)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキレンであっても置換されていないアルキレンであってもよく、場合により、アルキレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキレン基;(ii)置換アリーレンであっても置換されていないアリーレンであってもよく、場合により、アリーレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリーレン基;(iii)置換アリールアルキレンであっても置換されていないアリールアルキレンであってもよく、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキレン基;または、(iv)置換アルキルアリーレン基であっても置換されていないアルキルアリーレン基であってもよく、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アルキルアリーレン基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリーレン基であり;
Xはハロゲンである〕
とを、アルカリ性水溶液中、室温で接触させることと;
場合により、この生成物を処理し、精製された生成物を得ることとを含む、電荷移動化合物を調製するプロセス。
【請求項5】
ハロゲン有機溶媒を含有する廃棄物流から前記ジハロゲン化物を得ることをさらに含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
基板と;
その上にある電荷生成層と;
その上にある、下式の化合物を含む電荷移動層


〔式中、R、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキルであっても置換されていないアルキルであってもよく、場合により、アルキル基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキル基、(iii)置換アリールであっても置換されていないアリールであってもよく、場合により、アリール基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリール基、(iv)置換アリールアルキルであっても置換されていないアリールアルキルであってもよく、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アリールアルキルのアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキル基、(v)置換アルキルアリールであっても置換されていないアルキルアリールであってもよく、アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アルキルアリール基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリール基、(vi)アルコキシ基、(vii)アリールオキシ基、(viii)アリールアルキルオキシ基、(ix)アルキルアリールオキシ基から選択され;
は、(i)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキレンであっても置換されていないアルキレンであってもよく、場合により、アルキレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキレン基;(ii)置換アリーレンであっても置換されていないアリーレンであってもよく、場合により、アリーレン基の中にヘテロ原子が存在していてもよい、アリーレン基;(iii)置換アリールアルキレンであっても置換されていないアリールアルキレンであってもよく、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキレン基;または、(iv)置換アルキルアリーレン基であっても置換されていないアルキルアリーレン基であってもよく、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、場合により、アルキルアリーレン基のアルキル部分またはアリール部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリーレン基である〕
とを備える、作像部材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−213720(P2011−213720A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66572(P2011−66572)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】