説明

電装箱

【課題】水等の液体の侵入を簡単な構成で防止し得る電装箱を提供する。
【解決手段】一方の側面が開口し、内部に電気部品を収納した箱状本体28と、箱状本体28の開口部を閉成する蓋体30と、箱状本体28に蓋体30を開閉可能に連結するヒンジ部31と、箱状本体28に設けられ、各種電気部品に接続する配線50用の配線挿通孔42と、箱状本体28に突出するよう設けられ、配線挿通孔42の上方を覆う防水部32,36とから電装箱26を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装箱に関し、より詳細には、例えば製氷機等の機械室内に配設されて、内部に各種電気部品を収納する電装箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
氷塊を自動的に製造する製氷機は、略箱形の筐体を本体として、断熱構造の貯氷庫が一体的に設けられると共に、該貯氷庫には所要量の氷塊が貯留される貯氷室が内部画成される。そして、筐体の前部には、貯氷室と対応する位置に氷塊の取出口が開設され、この取出口は筐体に配設した開閉扉により開閉自在に閉成されるよう構成される。筐体における貯氷庫の下方には、冷凍装置等が配設される機械室が内部画成され、この機械室に対応する筐体前部に開設した開口部を、筐体に対して着脱自在に取付けられたフロントパネルによって閉成するよう構成されている。また、前記機械室には、冷凍装置等の動作制御を行なうマイコンや電磁リレー、電源トランス等の電気部品が収納された電装箱が配設されており(例えば特許文献1参照)、フロントパネルを取外した状態で、冷凍装置や電装箱等のメンテナンス作業を行ない得るようになっている。
【特許文献1】特開平7−206341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記電装箱には、前記冷凍装置等に接続する配線を挿通する配線挿通孔が形成されており、該配線挿通孔を介して電装箱の内部へ水等の液体が進入すると故障等の不具合の原因となる。そこで、電装箱内への液体侵入を阻止する構成として、特許文献1では電装箱に防水カバーを設ける構成が提案されている。しかしながら、防水カバーにより電装箱内部への液体侵入を阻止し得るものの、該防水カバーを別途設けることでコスト増大に繋がる問題がある。また、電装箱内への液体侵入を阻止する構成としては、前記電装箱の底面に配線挿通孔を形成して配線を挿通するよう構成すれば、防水カバーを設けることなく配線挿通孔から電装箱内部へ液体が侵入するのを防止することが可能となる。しかし、電装箱の底面に配線挿通孔を形成する構成では、電装箱内部の電気部品の配置に対する設計上の制約が大きくなる欠点がある。また、電装箱の底面に配線挿通孔を形成して配線を挿通する構成では、電装箱を機械室から引出し可能に構成することは困難となり、メンテナンス作業等の作業性低下を招来することに繋がる問題も指摘される。
そこで、本発明は、水等の液体の侵入を簡単な構成で防止し得る電装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を克服し、所期の目的を好適に達成するため、本願の請求項1の発明に係る電装箱は、
内部に各種電気部品を収納した電装箱であって、
一方の側面が開口し、内部に前記電気部品を収納した箱状本体と、
前記箱状本体の開口部を閉成する蓋体と、
前記箱状本体に蓋体を開閉可能に連結するヒンジ部と、
前記箱状本体に設けられ、前記各種電気部品に接続する配線用の配線挿通孔と、
前記箱状本体に突出するよう設けられ、前記配線挿通孔の上方を覆う防水部とを備えることを要旨とする。
【0005】
このように、防水部で配線挿通孔の上方を覆うようにしたから、電装箱にかかった水等の液体が配線挿通孔を介して内部に侵入するのを防止できる。防水部と配線挿通孔とを、配線挿通孔の上方を防水部で覆う位置関係で箱状本体に形成するだけで水等の液体の侵入を防止できるから、コストの増大を防止し得ると共に、配線挿通孔の形成位置の自由度が高く、設計上の制約を小さくできる。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記防水部に側方に貫通する排熱空間を形成することを要旨とする。
【0007】
このように、防水部に排熱空間を形成することで、電装箱内に設けた電気部品が発する熱を効率的に逃がすことができ、熱暴走等を効果的に抑制できる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記防水部の下端を前記配線挿通孔より下方に位置させたことを要旨とする。
【0009】
このように、防水部の下端を前記配線挿通孔より下方に位置させたことにより、電装箱にかかった液体が配線挿通孔側に移動するのをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0010】
すなわち、本発明に係る電装箱によれば、内部への水等の液体の侵入を簡単な構成で防止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係る電装箱につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。実施例では製氷機の本体をなす筐体の機械室に電装箱を引出し可能に設けた場合を例にして説明する。なお、以下の説明において、前・後および左・右とは、特に断りのない限り、図1に示すように製氷機を正面側から見た場合において指称するものとする。
【実施例】
【0012】
図1に示すように、実施例に係る製氷機10は、本体をなす筐体12の内部に、製氷機構(図示せず)で製造された氷塊を貯蔵するための貯氷室14と、圧縮機、凝縮器、凝縮器ファン等を備えた冷凍装置24および各種電気部品を収納した電装箱26が配設された機械室16とが上下の関係で画成されている。前記筐体12には、上側に位置する貯氷室14と対応する位置に上側開口部(図示せず)が前方へ開口するよう開設され、該上側開口部を介して貯氷室14に貯留されている氷塊を取出し得るよう構成されている。そして、上側開口部は、筐体12の前面に回動自在に配設した開閉扉20により開閉し得るようになっている。なお、前記貯氷室14の奥側には、機械室16へ延出して筐体12の背面に接続する排水パイプ15が設けられる。
【0013】
また、下側に位置する機械室16と対応する筐体12の前部には、前方へ開口する下側開口部12aが開設されて、筐体12の前面に着脱自在に配設されたフロントパネル22により下側開口部12aを閉成し得るよう構成されている。なお、前記機械室16では、右側位置に冷凍装置24が配置されると共に左側位置に前記電装箱26が配置されており、前記下側開口部12aを介して冷凍装置24および電装箱26が機械室16の外方に臨むようになっている。そして、前記電装箱26は、前記機械室16内に収納された収納位置(図2参照)と、該収納位置から前方へ引出されて機械室16の外部に位置する引出し位置(図示せず)との間を移動可能に構成されて、メンテナンス時には電装箱26を機械室16から引出して作業し得るようになっている。なお、前記収納位置の電装箱26は、機械室16内における前方にできる限り偏って位置するよう配置されて、前記排水パイプ15と電装箱26とが前後の位置関係になっている。
【0014】
ここで、前記電装箱26は、右側面(一方の側面)が開口する略矩形箱状の箱状本体28と、ヒンジ部31を介して箱状本体28に開閉可能に支持され、当該箱状本体28の開口部を閉成する蓋体30とを備えている。そして、前記箱状本体28内の下部側に、製氷機構や冷凍装置24等の電源生起用の電源部品(図示せず)が配設されると共に、箱状本体28内の上部側に、該電源部品より軽量な製氷機構や冷凍装置24等の制御用の制御部品(図示せず)が配設されている。また、図3または図4に示すように、前記箱状本体28(具体的には後述する上下の防水部32,36)の後端右側部には、上下および左方へ開口する半円筒状の軸受け部34が上下方向へ延在するよう形成されている。前記蓋体30の後端部には、後方へ突出する支持片38,38が前記軸受け部34を挿入し得る間隔だけ上下に離間して突設されると共に、該支持片38,38の後端部が支持軸40で連結されており、該支持軸40を軸受け部34に臨ませることで前記ヒンジ部31が構成される。なお、前記箱状本体28および蓋体30の前側および上下の所要位置はネジ止め固定されて、蓋体30を閉成状態で保持し得るようになっている。
【0015】
また、前記電装箱26の後部には、図2〜図4に示すように、上下に離間する位置に後方へ突出する防水部32,36が形成されている。ここで、下側防水部36は、電装箱26の下面26aから所定距離だけ上方に離間した位置に設けられており、電装箱26を機械室16に収納した際に、下側防水部36と機械室16の底面16aとが離間するよう構成されている。すなわち、上下の防水部32,36の間、および下側防水部36と機械室16の底面16aとの間に、左右側方および後方に開放する空間部46が画成される。また、図2〜図4に示すように、上側防水部32の下面には、前記制御部品に接続する配線50を挿通する配線挿通孔42が形成されると共に、下側防水部36の下面には、前記電源部品に接続する配線50を挿通する配線挿通孔42が設けられており、各配線挿通孔42,42の上方を上下の防水部32,36が覆うようになっている。また、前記上下の防水部32,36の後下端部には、下方へ膨出する膨出部48を形成してある。なお、前記上下の防水部32,36の後端面には、配線50を保持する配線フック44が形成されている。
【0016】
なお、前記箱状本体28では、前記防水部32,36、軸受け部34、配線フック44および膨出部48を含む全体が合成樹脂材により一体成形されると共に、前記蓋体30では、前記支持片38,38および支持軸40を含む全体が合成樹脂材により一体成形されている。
【0017】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された電装箱の作用につき説明する。
【0018】
前記製氷機構に接続する配線50は、前記電装箱26における箱状本体28の後端面に形成した配線フック44で一旦保持したもとで、該箱状本体28の上側防水部32の下面に形成した配線挿通孔42に挿通して対応の制御部品に接続される。同様に、前記冷凍装置24に接続する配線50は、前記箱状本体28の配線フック44で一旦保持したもとで、該箱状本体28の下側防水部36の下面に形成した配線挿通孔42に挿通して対応の電源部品に接続される。そして、前記箱状本体28に形成した軸受け部34を、前記蓋体30に形成した一対の支持片38,38の間に挿入すると共に支持軸40を軸受け部34に臨ませることでヒンジ部31を構成し、蓋体30を箱状本体28に開閉可能に枢支する。この状態で、蓋体30を回動して箱状本体28の開口部を閉成し、箱状本体28と蓋体30とをネジ止めする。
【0019】
ここで、前記電装箱26では、配線50を挿通する配線挿通孔42,42が上下の防水部32,36の下面に形成されている。すなわち、配線挿通孔42,42の上方が対応する上下の防水部32,36で覆われるから、メンテナンスや清掃作業等において水等の液体が配線挿通孔42,42に直接侵入するのは抑制される。また、水等の液体が電装箱26にかかったとしても、電装箱26を伝う液体が配線挿通孔42,42側に移動するのは防水部32,36で防止されるから、該配線挿通孔42,42を介して内部に液体が侵入するのを防止できる。このように、液体侵入を防止するカバー等を電装箱26に別途設けることなく、配線挿通孔42,42の上方を覆う位置関係で上下の防水部32,36を形成するだけで液体侵入を防止できるから、電装箱26の製造コストを抑制できる。更に、収納位置では電装箱26と排水パイプ15とが前後の関係となる関係上、排水パイプ15の接続部位で水漏れがあると電装箱26に水等がかかることがある。この場合でも、前記配線挿通孔42,42から電装箱26の内部に侵入するのは防水部32,36により防止できる。
【0020】
また、配線挿通孔42,42は、上下の防水部32,36で覆われる位置に形成すればよいから、該配線挿通孔42,42の形成位置の自由度が高く、設計上の制約を小さくできる。また、下側防水部36を機械室16の底面16aから離間するよう形成したことで、該下側防水部36に設けた配線挿通孔42に挿通した配線50が機械室16の底面16aに干渉するのを防止でき、配線50を気にかけることなく電装箱26を機械室16から簡単に出し入れすることが可能である。
【0021】
更に、前記上下の防水部32,36の後下端部に形成した膨出部48,48により、該電装箱26を伝っていく液体を膨出部48,48に集まるよう流下させることが可能となる。従って、電装箱26を伝う液体が配線挿通孔42,42へ向けて移動するのを防止できるから、電装箱26内への液体侵入をより確実に阻止し得る。また、前記防水部32,36を突設したことで、電装箱26の全体の表面積が増加することから、電装箱26内の電気部品が発する熱の放熱面積が増え、熱暴走の防止に寄与し得る。
【0022】
〔変更例〕
本発明は前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
【0023】
実施例では、防水部32,36の下面に配線挿通孔42,42を形成するようにしたが、これに限られるものではない。すなわち、図5に示すように、防水部32,36を突設することにより形成される空間部46,46を画成する箱状本体28の後面に配線挿通孔42,42を形成し、該防水部32,36で配線挿通孔42,42を覆うようにすることも可能である。更に図5に示すように、前記防水部32,36に側方へ貫通する通孔52を形成して、排熱空間54を画成するようにしてもよい。このように防水部32,36に排熱空間54を画成することで、該防水部32,36により配線挿通孔42,42からの液体侵入を防止すると共に、電装箱26内に設けた電気部品が発する熱を効率的に逃がすことができ、熱暴走等を効果的に抑制できる。なお、この構成では、図5に示すように蓋体30において防水部32,36の通孔52に対応する箇所に開口を形成することで、より効果的な放熱を図ることができる。
【0024】
実施例では、電装箱26の後部に略矩形状に突出するよう防水部32,36を形成したが、この形状に限られるものではなく、配線挿通孔42,42を覆い得る形状および大きさで防水部32,36を形成するようにすればよい。
【0025】
また、実施例では、防水部32,36に膨出部48,48を形成して配線挿通孔42,42へ向けて液体が伝うのを防止したが、この構成に限らず、該防水部32,36の下端を配線挿通孔42,42より下方に位置するよう構成すれば、配線挿通孔42,42への液体の侵入を好適に防止できる。
【0026】
実施例では、ヒンジ部31を箱状本体28の軸受け部34と蓋体30の支持片38,38および支持軸40とで構成するようにしたが、これに限られるものではなく、合成樹脂材により一体的に形成するようにしてもよい。
【0027】
また、実施例では製氷機10の機械室16に配設される電装箱26を例にして説明したが、これに限られるものではなく、冷蔵庫や冷凍庫に配設される電装箱に対しても本発明に係る電装箱を採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る電装箱を備える製氷機を示す正面図である。
【図2】実施例に係る製氷機の機械室を示す縦断側面図である。
【図3】実施例に係る電装箱を示す側面図である。
【図4】実施例に係る電装箱の後端部を示す斜視図である。
【図5】変更例に係る電装箱を示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
28 箱状本体,30蓋体,31 ヒンジ部,32 防水部,36 防水部
42 配線挿通孔,50, 配線,54 排熱空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に各種電気部品を収納した電装箱であって、
一方の側面が開口し、内部に前記各種電気部品を収納した箱状本体(28)と、
前記箱状本体(28)の開口部を閉成する蓋体(30)と、
前記箱状本体(28)に蓋体(30)を開閉可能に連結するヒンジ部(31)と、
前記箱状本体(28)に設けられ、前記各種電気部品に接続する配線(50)用の配線挿通孔(42)と、
前記箱状本体(28)に突出するよう設けられ、前記配線挿通孔(42)の上方を覆う防水部(32,36)とを備える
ことを特徴とする電装箱。
【請求項2】
前記防水部(32,36)には、側方に貫通する排熱空間(54)が形成される請求項1記載の電装箱。
【請求項3】
前記防水部(32,36)の下端が前記配線挿通孔(42)より下方に位置するよう構成した請求項1または2記載の電装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−180466(P2008−180466A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15506(P2007−15506)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】