説明

電解コンデンサ及び電解コンデンサ用巻き止めテープ

【課題】 低温領域から高温領域までの広範囲にわたりコンデンサ素子に対して粘着力を維持でき、電解コンデンサ素子の巻き緩みが原因の静電容量やESRなどの特性劣化が生じない電解コンデンサ及び電解コンデンサ用巻き止めテープを提供することを目的とする。
【解決手段】電極箔をセパレータを介して巻回又は積層したコンデンサ素子を支持基材と粘着剤層を備えた電解コンデンサ用素子巻き止めテープにて固定した電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子を、支持基材の表面に異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数備えた巻き止めテープにて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電解コンデンサに係り、特に、コンデンサ素子を巻き止める巻き止めテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解コンデンサのコンデンサ素子巻き止めには、接着剤や粘着テープが使用されており、機械化等が容易に実施できる粘着テープ方式が主流となっている。この粘着テープには、ポリプロピレンや、ポリフェニレンサルファイド、ポリメチルペンテンフィルムなどを支持基材に用いたゴム系、アクリル系粘着テープが使用されてきた(特許文献1〜2)。
【0003】
ここで、上述した電解コンデンサには、耐熱性が要求される。例えば、高温保証用の電解コンデンサは、150℃の耐熱性が要求される。
【0004】
また、表面実装用のチップ部品の場合には、近年の脱鉛による半田溶融温度の上昇のため、半田リフロー時の温度に耐えうる260℃以上の耐熱性が要求されている。このため、電解コンデンサ素子巻き止め用の粘着テープとして使用される粘着テープについても、電解コンデンサ素子にかかる負荷温度に対する耐熱性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−101985号
【特許文献2】特開2002−249736号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の電解コンデンサ巻き止め用粘着テープでは、耐熱性不足のため、コンデンサ素子の巻き緩みが発生して、静電容量やESRなど諸特性の劣化の問題が生じている。
【0007】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、高温雰囲気下でも、電解コンデンサ素子の巻き緩みが原因の静電容量やESRなどの特性劣化が生じない電解コンデンサ及び電解コンデンサ用巻き止めテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の電解コンデンサは、電極箔をセパレータを介して巻回又は積層したコンデンサ素子を支持基材と粘着剤層を備えた電解コンデンサ用素子巻き止めテープにて固定した電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子を、支持基材の表面に異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数備えた巻き止めテープにて固定したことを特徴としている。
【0009】
また、電極箔をセパレータを介して巻回又は積層したコンデンサ素子を支持基材と粘着剤層を備えた電解コンデンサ用素子巻き止めテープにて固定した電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子を、複数の支持基材の表面にそれぞれ異なる接着可能領域を有する粘着剤層を備えた巻き止めテープにて固定したことを特徴としている。
【0010】
これによると、高温保証用の電解コンデンサは、150℃の耐熱性を要求され、また、半田リフロー時の温度に耐えうる260℃以上の耐熱性を要求されているが、1種類の粘着剤層にて、低温領域から高温領域までの耐熱性を維持することは困難であったが、異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数設け、高温領域において固着性に優れた粘着剤層及び低温領域において固着性に優れた粘着剤層と温度領域に適した粘着剤を個別に設定することで、低温領域から高温領域まで粘着剤の固着性が維持でき、従ってコンデンサ素子の巻き緩みがなく、静電容量やESRなどの特性劣化が生じにくい電解コンデンサを提供できる。
【0011】
また、本発明の電解コンデンサ用巻き止めテープは、支持基材と粘着剤層を備えた電解コンデンサ用素子巻き止めテープであって、前記支持基材の表面に、異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数備えたことを特徴としている。
これによると、異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数設け、高温領域において固着性に優れた粘着剤層及び低温領域において固着性に優れた粘着剤層と温度領域に適した粘着剤を個別に設定した巻き止めテープであるため、この巻き止めテープを用いてコンデンサ素子を固定すると、低温領域から高温領域まで粘着剤の固着性が維持でき、従ってコンデンサ素子の巻き緩みがなく、静電容量やESRなどの特性劣化が生じにくいものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電解コンデンサ用巻き止めテープを用いることで、低温領域から高温領域までの広範囲にわたりコンデンサ素子に対して粘着力を維持でき、電解コンデンサ素子の巻き緩みが原因の静電容量やESRなどの特性劣化が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における接着剤層の接着可能領域を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る素子巻き止めテープを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る素子巻き止めテープを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る素子巻き止めテープを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電解コンデンサ用巻き止めテープは、支持基材及び粘着剤層から構成されている。以下詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いられる支持基材としては、特に限定されるものではないが、耐熱性を有するものが好ましい。例えば、溶融温度が175℃以上であり、延伸処理が施されたプラスチックフィルムがより好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム、ポリサルフォン(PSF)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリアリレート(PAR)フィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。また、クラフト紙、マニラ麻紙、合成繊維紙又はこれらの2種以上からなる混抄紙を用いることができる。プラスチックフィルムを用いた場合は高温雰囲気下において縮む場合もあるため、紙を用いることが好ましい。
【0016】
支持基材の厚みは、コンデンサ素子の巻き止め作業性を損なわない範囲で、適宜選択できるが、通常、5〜100μmが好ましく、より好ましくは、9〜50μm程度である。
【0017】
また、支持基材のテープ幅方向の熱収縮率が、コンデンサ素子にかかる負荷温度(−30〜300℃)に対して、5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1.5%以下である。一例としては、二軸延伸ポリエステルフィルム(例えば、商品名:LCPフィルム、住友化学工業製)や、二軸延伸ポリフェニレンサルファイドフィルム(例えば、商品名:トレリナ3030、東レ製)などが挙げられる。前記二軸延伸ポリエステルフィルムでは、150℃までの温度範囲で、テープ幅方向の熱収縮率が、5%以下となる。また、前記二軸延伸ポリフェニレンサルファイドフィルムでは、240℃までの温度範囲でテープ幅方向の熱収縮率が、5%以下となる。なお、熱収縮率の測定方法は、テープ形態にて、粘着テープを20mm角にカットし、BA板に貼り合わせ、所定のピーク温度に設定した半田リフロー炉(ノリタケカンパニーリミテッド製、CPL−104S)を通過させ、その加熱前後のテープのサイズを、投影機(ミツトヨ製:PROFILE PROJECTOR PJ−H300F)を用いてMD方向およびTD方向のいずれもについて測定する。上記BA板とは、JIS「BA仕上げ」に準じ、BA5号に表面仕上げしたSUS304板(日本金属(株)製BA5号仕上げSUS304)をいう。
【0018】
本発明の粘着剤層は、粘着性を有するものであれば、その材質や構成などは特に限定されないが、通常用いられる粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤を用いることができる。これらの粘着剤の中から異なるガラス転移温度の粘着剤を適宜選択して巻き止めテープを構成する支持基材の表面に設ける。粘着剤層の厚さは、通常2〜100μm程度、好ましくは5〜50μm程度である。
【0019】
この粘着剤層としては、異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数設け、高温領域において固着性に優れた粘着剤層及び低温領域において固着性に優れた粘着剤層と温度領域に適した粘着剤を個別に設定することが好ましい。低温領域に適した粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましく、高温領域に適した粘着剤としては、シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0020】
ここで、粘着剤層は、温度によってその影響を大きく受ける、温度と弾性率の関係を取ったものを動的弾性率と呼んでおり、粘着力に大いに関係がある。例えば、図1に示すように、同じ粘着剤でも低温域では弾性率が1010dyne/cm2以上の硬く脆いガラス領域、温度を上げると弾性率が106〜105.5dyne/cm2のゴム状領域、最高温域では105.5dyne/cm2未満の流動域に区別される。本発明で用いた粘着剤層の接着可能領域とは、上記のガラス領域を超えたゴム状領域を示すものである。
【0021】
通常、高温保証用の電解コンデンサは、150℃の耐熱性を要求され、また、半田リフロー時の温度に耐えうる260℃以上の耐熱性を要求されているが、上記のとおり、温度領域に適した粘着剤を個別に設定することで、低温領域から高温領域までの耐熱性を維持し、コンデンサ素子の緩みを防止することができる。
【0022】
高温領域に適した粘着剤は、その高温領域における最高負荷温度に対して10〜100度低いガラス転移温度を備えるとよい。また低温領域に適した粘着剤は、該高温領域に適した粘着剤よりも低いガラス転移温度を備えると良い。従って、半田リフロー時の温度(260℃程度)に耐えうる巻き止めテープを検討する場合は、高温領域に適した粘着剤は、そのガラス転移温度が150〜250度が好ましく、また低温領域に適した粘着剤は、そのガラス転移温度が該高温領域に適した粘着剤よりも低く、特には電解コンデンサの低温側の保証温度以下(例えばマイナス40度)のガラス転移温度を備えるとよい。これにより、低温領域から高温領域までコンデンサ素子の固定を可能とできる。
【0023】
なお、アクリル系粘着剤としては、粘着性及び耐熱性を与える低ガラス転移温度(Tg)のアクリル系モノマーを主モノマーとして用いることができる。また、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマーや、架橋性や接着性の改良に用いられる官能基含有モノマーであるモノエチレン性不飽和モノマー等を用いることもできる。また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、シリコーン成分としてポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のアルキル基やフェニル基を含有するポリシロキサンを用い、過酸化ベンゾイル等の過酸化物で加熱硬化させたもの、或いはビニル基含有ポリシロキサンとヒドロシランとの付加反応による硬化物などを使用できる。またゴム系粘着剤としては、主ポリマーに天然ゴム、合成ゴムを用い、必要に応じて、粘着性付与高分子物質、フェノール系老化防止剤、金属酸化物等を配合した粘着剤を使用できる。
【0024】
本発明の粘着剤層の形成方法は、粘着剤組成物を、支持基材上に塗布して、粘着剤組成物層を形成する。当該形成方法としては、各種方法を採用できる。例えば、粘着剤組成物層の形成に連続塗工装置を用いる場合は、例えば、粘着剤組成物(溶液)を連続的に供給して、装置先端に取り付けたダイスなどの吐出手段より連続的にシート基材上に薄層に押出してする方法が挙げられる。また粘着剤組成物層を形成する方法として、バッチ方式を採用する場合には、支持基材上に粘着剤組成物(溶液)を基材上に流延して、アプリケーターや、マイヤーバー、ナイフコーターで成形する方法が挙げられる。このようにして、薄層化した粘着剤組成物を支持基材上に積層した後、加熱して、溶媒を除去する。粘着剤組成物が複数あるため、個別にまたは同時に粘着剤組成物を支持基材上に塗布して形成することができる。
【0025】
本発明の支持基材及び粘着剤層を含めた巻き止めテープの厚さは、折れや裂けの防止や好適なハンドリング性に鑑みると10〜100μmが好ましい。
【0026】
次に、本発明の電解コンデンサについて説明すると、図2に示すとおり、電解コンデンサは、陽極箔2と陰極箔3とをセパレータ4を介して巻回又は積層することにより構成されるコンデンサ素子1と、陽極、陰極箔からそれぞれ引き出された端子5、これらを封止する封口材とケースにより構成されたものである。ここで、コンデンサ素子1の巻き止めテープとして、前記電解コンデンサ用素子巻き止めテープが用いられる。この巻き止めテープを用いることにより、高温雰囲気下であっても、コンデンサ素子の巻き緩みによる静電容量やESRなどの特性劣化を防止できる。
【0027】
巻き止めテープによるコンデンサ素子1の固定形態を例示すると、図2に示すとおり、巻き止めテープは、支持基材6の表面に、高温領域に適した第一の粘着剤層9及び低温領域に適した第二の粘着剤層10がそれぞれ帯状に形成され、陽極箔2と陰極箔3をセパレータ4を介して巻回したコンデンサ素子1の外周端を接着固定するものである。
【0028】
また、他の巻き止めテープによるコンデンサ素子1の固定形態としては、図3に示すとおり、巻き止めテープは、第一の支持基材7の表面に、高温領域に適した帯状の第一の粘着剤層9(又は低温領域に適した第二の粘着剤層10)を形成し、第二の支持基材8の表面に低温領域に適した帯状の第二の粘着剤層10(又は高温領域に適した第二の粘着剤層9)を形成し、これら2つの支持基材を持ってコンデンサ素子1の外周端を接着固定したものである。
【0029】
このように、巻き止めテープには、複数の異なるガラス転移温度の粘着剤層を備えればよく、支持基材は単数又は複数を仕様に合わせて適宜設定できる。また、粘着剤層は、帯状のものを例示したがこれに限らず、ストライプ状に設けてもよく、また支持基材の全面に設けても良い。また図4に示すとおり、粘着剤層はドット状であってもよくまた第一の粘着剤層9と第二の粘着剤層10を支持基材6の表面に千鳥状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 コンデンサ素子
2 陽極箔
3 陰極箔
4 セパレータ
5 端子
6 支持基材
7 第一支持基材
8 第二支持基材
9 第一粘着剤層
10 第二粘着剤層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極箔をセパレータを介して巻回又は積層したコンデンサ素子を支持基材と粘着剤層を備えた電解コンデンサ用素子巻き止めテープにて固定した電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子を、支持基材の表面に異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数備えた巻き止めテープにて固定した電解コンデンサ。
【請求項2】
電極箔をセパレータを介して巻回又は積層したコンデンサ素子を支持基材と粘着剤層を備えた電解コンデンサ用素子巻き止めテープにて固定した電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子を、複数の支持基材の表面にそれぞれ異なる接着可能領域を有する粘着剤層を備えた巻き止めテープにて固定した電解コンデンサ。
【請求項3】
支持基材と粘着剤層を備えた電解コンデンサ用素子巻き止めテープであって、
前記支持基材の表面に、異なる接着可能領域を有する粘着剤層を複数備えた電解コンデンサ用巻き止めテープ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−278183(P2010−278183A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128559(P2009−128559)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【Fターム(参考)】