説明

電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途

【課題】アルカリマンガン乾電池の正極用活物質として使用される電解二酸化マンガンにおいて、高アルカリ電位を有し、且つ電池の正極として高い反応性と充填性を兼ね備えるミドルレート放電特性に優れた電解二酸化マンガンを提供する。
【解決手段】アルカリ電位が280mV以上310mV未満、FWHMが2.2°以上2.9°以下の電解二酸化マンガンを用いる。電解二酸化マンガンのX線回折ピークにおける(110)/(021)のピーク強度比が0.50以上0.80以下、(110)面の面間隔が4.00Å以上4.06Å以下であることが好ましい。
高アルカリ電位、高充填性の二酸化マンガンは、硫酸−硫酸マンガン浴電解において、電解開始時の硫酸濃度が20〜35g/L、電解終了時の硫酸濃度が35g/Lを超え40g/L以下で電解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばマンガン乾電池、特にアルカリマンガン乾電池において、正極活物質として使用される電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化マンガンは、たとえばマンガン乾電池またはアルカリマンガン乾電池の正極活物質として知られており、保存性に優れ、且つ安価であるという利点を有する。特に、二酸化マンガンを正極活物質として用いるアルカリマンガン乾電池は、重負荷での放電特性に優れていることから電子カメラ、携帯用テープレコーダー、携帯情報機器、さらにはゲーム機や玩具にまで幅広く使用され、近年急速にその需要が伸びてきている。
【0003】
しかし、アルカリマンガン乾電池は、放電電流が大きくなるに従い正極活物質である二酸化マンガンの利用率が低下し、また放電電圧が低下した状態では使用できないため、実質的な放電容量が大きく損なわれるという課題があった。すなわち、大電流を使用(ハイレート放電)する機器にアルカリマンガン乾電池を用いると、充填されている正極活物質である二酸化マンガンが十分に活用されず、使用可能な時間が短いという欠点を有していた。
【0004】
そこで短時間に大電流を取り出すハイレート間欠放電条件においても、高容量、長寿命を発現できる優れた二酸化マンガン、所謂ハイレート放電特性に優れた二酸化マンガンが望まれていた。
【0005】
これまで、ハイレート放電特性改善のため、40重量%KOH水溶液中で水銀/酸化水銀参照電極を基準として測定したときの電位(以下、アルカリ電位)が高い電解二酸化マンガンを製造することが検討されてきた(特許文献1〜3、非特許文献1)。
【0006】
一方、最近ではデジタル機器の省電力化に伴い、これまでのハイレート放電より低い放電電流における特性、いわゆるミドルレート放電特性に優れた電解二酸化マンガンの要求が高まってきている。ミドルレートの放電に対しては従来の電解二酸化マンガンでは性能が不十分であり、ハイレート放電特性に優れる高電位の電解二酸化マンガンでもミドルレート放電特性には十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−141643号公報
【特許文献2】米国特許6,527,941号公報
【特許文献3】特開2009−135067号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】古河電工時報,第43号,P.91〜102(1967年5月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特にミドルレート放電特性に優れるアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される二酸化マンガンであって、特にアルカリ電解液中で適度に高い電位を有し、且つ高い反応性と充填性を兼ね備えた電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特にアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される二酸化マンガンについて鋭意検討を重ねた結果、アルカリ電位が280mV以上310mV未満、CuKα線を光源とするXRD(X線回折)測定において、2θが22±1°付近に現れる(110)面の回折線の半価全幅(以下、FWHMと称す)が2.2°以上2.9°以下である電解二酸化マンガンが、特にハイレート放電特性に優れた正極材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が280mV以上310mV未満、2θが22±1°付近の(110)面の回折線の半価全幅(FWHM)が2.2°以上2.9°以下の二酸化マンガンである。
【0013】
アルカリ電位が280mV以上310mV未満では、アルカリマンガン乾電池の正極材料に用いた場合、電池の開回路電圧が上昇し、使用可能な放電電圧下限までの放電時間を長くすることができる。アルカリ電位は285mV以上310mV未満が好ましく、さらには290mV以上310mV未満であることが特に好ましい。
【0014】
アルカリ電位とミドルレート放電特性の関係は明確ではないが、ミドルレート放電特性の向上にはアルカリ電位はある程度高いことが必要である。一方、アルカリ電位が一定の値を超えると、その原因は明らかでないが、ミドルレート放電特性は再び低下してしまう。また、同じアルカリ電位であっても、その物性によってミドルレート放電特性は異なる。
【0015】
本発明の電解二酸化マンガンは、CuKα線を光源とする通常のXRD測定パターンにおいて、2θが22±1°付近の(110)面の回折線の半価全幅(FWHM)が2.2°以上2.9°以下であるが、2.4°以上2.8°以下が好ましく、さらには2.5°以上2.8°以下であることが特に好ましい。この様なFWHMでは、充填性が向上して放電容量が高まる。
【0016】
一方、FWHMが2.9°より大きいものでは、正極物質として電池を構成した場合に充填密度が低下し、それに伴い放電容量が低下する。FWHMが2.2°より小さいものは、結晶が成長しすぎており、電解二酸化マンガンの反応性が悪くなり、電池用の正極活物質としての放電容量が低下する。
【0017】
FWHMの下限が2.2°と小さい理由は、本発明の電解二酸化マンガンは、例えば後述する低濃度の硫酸を含む電解液での電解と、引き続き高濃度の硫酸を含む電解液を用いて電解によって得られるため、特に低濃度の硫酸を含む電解液での電解時間の比率が大きい場合、FWHMが小さくミドルレート放電特性に優れた二酸化マンガンとなるからである。
【0018】
本発明の電解二酸化マンガンの結晶子径は、FWHM及び(110)ピーク位置からシェラーの式で換算によって得られ、平均結晶子径が29〜37Åに相当する。平均結晶子径が37Åより大きい電解二酸化マンガンでは、前述したとおり反応性が低下し、放電容量が低く、29Åより小さいものでは充填性が悪く、容量エネルギー密度が低いものとなる。
【0019】
本発明の電解二酸化マンガンはX線回折の(110)/(021)ピーク強度比が0.50以上0.80以下であることが好ましく、特に好ましくは0.53以上0.80以下、さらに好ましくは0.6以上0.75以下である。
【0020】
電解二酸化マンガンのX線回折パターンの各回折面の強度比は、電解条件により異なり、結果的には、得られる二酸化マンガンの物性によって異なる。高い硫酸濃度の電解液のみを電解して得られる二酸化マンガンでは(110)/(021)ピーク強度比が0.50未満となり、一方、低電流密度で電解した高アルカリ電位品では0.8を超え、本発明の二酸化マンガンと異なる。
【0021】
電解二酸化マンガンのX線回折における(110)面は前述したとおり22±1°付近に、また(021)面は37±1°付近に現れるが、これらは二酸化マンガン結晶の主要なX線回折ピークである。
【0022】
本発明の電解二酸化マンガンは上述の条件を満足する上でさらにX線回折の(110)面の面間隔が、4.00Å以上4.06Å以下であることが好ましい。
【0023】
ここでいう(110)面間隔とは、斜方晶の結晶に属する二酸化マンガンの(110)結晶面同士の間隔を表す指標である。
【0024】
本発明の電解二酸化マンガンは、BET比表面積を22m/g以上32m/g以下であることが特に好ましい。
【0025】
BET比表面積が22m/gより低いものは、電解二酸化マンガンの反応性が悪くなり、電池用正極活物質としての放電容量が低下し、BET比表面積が32m/gより高いものは、電解二酸化マンガンの充填性が悪く、電池を構成した場合の放電容量が低下し易い。
【0026】
本発明の電解二酸化マンガンは、アルカリ電位、(110)面のFWHM、(110)面の面間隔、(110)/(021)のピーク強度比等に特徴があるため、従来の異なる条件で得られた電解二酸化マンガンを混合することによってアルカリ電位だけを調整したものや、充填性を調整したものとは異なるものであり、容易に区別できる。
【0027】
本発明の電解二酸化マンガンの細孔容積は、従来の電解二酸化マンガンと大きな差異はなく、例えば3〜5nmの細孔容積が0.012cm/g以上、さらに好ましくは0.013cm/g以上を有するものである。細孔構造に大きな差異がないため、従来の電解二酸化マンガンと同様の充填性が得られ、容量エネルギー密度の低下がない。
【0028】
次に本発明の電解二酸化マンガンの製造法について説明する。
【0029】
従来の電解二酸化マンガンの製造法は、電解中に電解液の硫酸濃度を一定に保つように行われているため、電解中の電解液の硫酸濃度の変化がほとんどない中で行われるものであった。それに対して本発明の方法は、電解中の開始時と終了時の硫酸濃度を変化させて電解する方法において、それらの濃度が特定の範囲では特にミドルレート放電特性に優れた電解二酸化マンガンが得られるというものである。
【0030】
本発明の詳細な方法を以下に説明する。
【0031】
電解による二酸化マンガンの製造では、電解液中の硫酸濃度を低くすると陽極上に強固に電解二酸化マンガンが電析して剥離の問題はないが、それだけではアルカリ電位が低い電解二酸化マンガンしか得られない。
【0032】
また、最初から硫酸濃度が高い電解条件では、アルカリ電位が高い二酸化マンガンが得られるが、電着時に剥離し、安定的に高電位の二酸化マンガンが得られず、結晶子が小さくなり高BET表面積で充填性の低いものしか得られない。
【0033】
本発明では、前半で20〜35g/Lの硫酸濃度の電解により結晶子径が大きく、BET表面積が低い充填性が高い二酸化マンガンを得、さらに引き続き35g/Lを越えて40g/L以下の硫酸濃度で電解することで、ミドルレート放電特性に優れた電解二酸化マンガンとなるというものである。さらには、電解開始時の電解液中の硫酸濃度を25〜35g/L、後半、硫酸濃度を高くし、電解終了時に37〜40g/Lとすることが好ましい。
【0034】
ここでいう硫酸濃度は、硫酸マンガンの二価の陰イオンは除くものである。
【0035】
本発明における電解補給液中のマンガン濃度に限定はないが、例えば40〜60g/Lが例示できる。
【0036】
電解の温度には特に限定はなく、例えば温度は94〜98℃の範囲が適用できる。また、電流密度としては、例えば0.4〜0.6A/dmが適用できる。
【0037】
本発明では、電解開始から電解終了まで電解中の硫酸濃度を徐々に変化させるのではなく、前半の電解、後半の電解とで硫酸濃度を切替えることが好ましい。
【0038】
前期の電解と、後半の電解の比率に制限はないが、例えば低硫酸濃度と高硫酸濃度での電解時間の比が1:9〜9:1、特に3:7〜7:3の範囲が好ましい。
【0039】
本発明の電解二酸化マンガンは、特にアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用することができる。
【0040】
アルカリマンガン電池の正極活物質として使用する方法には特に制限はなく、周知の方法で添加物と混合して用いることができる。
【0041】
例えば、電解二酸化マンガンに導電性を付与するためにカーボン等を加えた混合粉末を調製し、これを円盤状またはリング状に加圧成型した粉末成型体として電池正極とすることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の電解二酸化マンガンはアルカリ電池の正極材料として用いた場合にミドルレート放電特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】放電特性評価用セル
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
(電解二酸化マンガンの電位の測定)
電解二酸化マンガンの電位は、40重量%KOH水溶液中で次のように測定した。
【0046】
電解二酸化マンガン3gに導電剤としてカーボンを0.9g加えて混合粉体とし、この合粉体に40重量%KOH水溶液4mlを加え、電解二酸化マンガンとカーボンとKOH水溶液の混合物スラリーとした。この混合物スラリーの電位を水銀/酸化水銀参照電極を基準として電解二酸化マンガンのアルカリ電位を測定した。
【0047】
(XRD測定における半価全幅(FWHM)の測定)
電解二酸化マンガンの2θが22±1°付近の回折線の半価全幅(FWHM)を、一般的なX線回折装置(マックサイエンス社製MXP−3)を使用して測定した。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件は毎秒0.04°、計測時間は3秒、および測定範囲は2θとして5°から80°の範囲で測定した。
【0048】
(XRD測定による(110)面間隔の算出)
電解二酸化マンガンの2θが22±1°付近の回折線をガウス処理して、ピークトップの2θを求めた。求めた2θ値からブラッグの式(nλ=2dsinθ,n=1)からdを算出して(110)面の面間隔とした。
【0049】
(XRD測定による(110)/(021)強度比の算出)
2θが22±1°付近の回折線を(110)、37±1°付近の回折線を(021)として、(110)のピーク強度を(021)のピーク強度で除することにより(110)/(021)のピーク強度比(以降、(110)/(021)で表わす)を求めた。
【0050】
(電解二酸化マンガンのBET比表面積の測定)
電解二酸化マンガンのBET比表面積は、BET1点法の窒素吸着により測定した。なお、BET比表面積の測定に使用した電解二酸化マンガンは、BET比表面積の測定に先立ち、150℃で40分間加熱して脱気処理を行った。
【0051】
(細孔容積の測定)
電解二酸化マンガンの3〜5nm細孔容積を測定した。電解二酸化マンガンを120℃で1時間乾燥したのち、BJH法(Barrett Jouner and Halenda法)によって、3〜5nmの細孔容積を測定し、単位重量あたりの細孔容積を求めた。
【0052】
(中和処理のスラリーpH)
スラリーpHは、中和処理中の電解二酸化マンガンスラリーにpH標準電極を使用して測定した。
【0053】
(電解二酸化マンガンのJIS−pH)
JIS−pHはJIS K1467(塩化アンモニウム法)によって測定した。すなわち、一定量の塩化アンモニウム緩衝溶液に一定量の二酸化マンガンを入れ、上澄み液のpHを求める方法を用いた。
【0054】
(硫酸根、ナトリウム含有量)
電解二酸化マンガン粉末粒子の硫酸根、ナトリウム含有量は、電解二酸化マンガン粉末を塩酸と過酸化水素水に溶解し、この溶解液を原子吸光法で測定して定量した。
【0055】
(メジアン径)
電解二酸化マンガンを分散懸濁した溶液にレーザー光を照射し、その散乱光により測定する光散乱法(日機装社製、商品名:マイクロトラック)を用いて電解二酸化マンガンの粒子径と個数を測定しメジアン径を測定した。
【0056】
(ミドルレート放電特性評価)
電解二酸化マンガンが80重量%、導電材が5重量%及び40重量%KOH水溶液が15重量%となるよう秤量し、混合して正極合剤を作製した。当該正極合剤を二酸化マンガン換算で0.09gとなるように秤量し、成形し、負極に亜鉛ワイヤーを使用して、図1に示した評価用セルにより放電特性を評価した。評価用セルは室温で1時間静置後、放電試験を行った。放電条件は10mA/gの電流で、終止電圧0.9Vとしたときの相対放電容量を評価したものをミドルレート放電特性とした。なお、放電容量は比較例1の測定結果を100%とし、それに対する相対値で求めた。
【0057】
実施例1
電流密度を0.55A/dm、電解温度を96℃、電解補給液をマンガン濃度40.0g/lの硫酸マンガン液とし、電解初期と電解後半の硫酸濃度を25.0g/l、40g/lとなるように17日間電解した。前半の濃度で12日、後半の濃度で5日電解を行った。電解後の電解二酸化マンガンは、粉砕、洗浄後、スラリーのpHが5.3〜5.7となるように中和した。
【0058】
得られた電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が295mV、FWHMが2.6°であり、(110)/(021)が0.65、且つBET比表面積が31.4m/gであった。また、この電解二酸化マンガンのミドルレート放電特性は、比較例1のミドルレート放電特性に対して104%であった。製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0059】
また、得られた電解二酸化マンガンの3〜5nmの細孔容積を測定した結果、0.013cm/gであった。
【0060】
実施例2
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、電解補給液をマンガン濃度40.0g/lの硫酸マンガン液とし、電解初期と電解後半の硫酸濃度を31.5g/l、40g/lとなるように15日間電解した。前半の濃度で13日、後半の濃度で2日電解を行った。製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0061】
得られた電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が292mV、FWHMが2.4°であり、(110)/(021)が0.72、且つBET比表面積が30.3m/gであった。
【0062】
実施例3
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、電解補給液をマンガン濃度40.0g/lの硫酸マンガン液とし、電解初期と電解後半の硫酸濃度を31.5g/l、38.5g/lとなるように17日間電解した。前半の濃度で12日、後半の濃度で5日電解を行った。製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0063】
得られた電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が307mV、FWHMが2.3°であり、(110)/(021)が0.66、且つBET比表面積が30.3m/gであった。
【0064】
実施例4
電流密度を0.5A/dm、電解初期の硫酸濃度を35.0g/l、電解後半の硫酸濃度を37.0g/lとなるようにした以外は実施例1と同様な方法で電解二酸化マンガンを得た。
【0065】
製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0066】
実施例5
電流密度を0.5A/dm、電解初期の硫酸濃度を34.6g/l、電解後半の硫酸濃度を37.0g/lとなるようにした以外は実施例1と同様な方法で電解二酸化マンガンを得た。
【0067】
製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0068】
実施例6
電解初期の硫酸濃度を24.8g/lとなるようにした以外は実施例1と同様な方法で電解二酸化マンガンを得た。
【0069】
製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0070】
実施例7
電解後半の硫酸濃度を39.5g/lとなるようにした以外は実施例1と同様な方法で電解二酸化マンガンを得た。
【0071】
製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0072】
実施例8
電解初期の硫酸濃度を24.8g/l、電解後半の硫酸濃度を39.7g/lとなるようにした以外は実施例1と同様な方法で電解二酸化マンガンを得た。
【0073】
製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0074】
実施例9
電解初期の硫酸濃度を25.4g/lとなるようにした以外は実施例1と同様な方法で電解二酸化マンガンを得た。
【0075】
製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0076】
実施例10
電解初期の硫酸濃度を24.7g/lとなるようにした以外は実施例1と同様な方法で電解二酸化マンガンを得た。
【0077】
製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0078】
比較例1
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、電解補給液のマンガン濃度を40.0g/lとし、電解中全期間を通して電解液中の硫酸濃度を32.9g/lの一定の条件とする従来の一般的な電解法で電解二酸化マンガンを得た。製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0079】
得られた電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が274mVであり、FWHMが2.3°であり、FWHMから換算される結晶子径は37.3Å、(110)/(021)が0.66、BET比表面積が28.5m/gであった。
【0080】
低硫酸濃度一定での電解によって得られた二酸化マンガンは、結晶子径が大きく、アルカリ電位が低いものであった。
【0081】
つぎに、この電解二酸化マンガンを実施例1と同様の方法で、前述した放電試験を行い、その放電容量を100%とした。
【0082】
また、得られた電解二酸化マンガンの3〜5nmの細孔容積を測定した結果、0.015cm/gであった。
【0083】
比較例2
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、電解補給液をマンガン濃度40.0g/lの硫酸マンガン液とし、電解初期と電解後半の硫酸濃度を30g/l、50g/lとなるように15日間電解した。前半の濃度で10日、後半の濃度で5日電解を行った。製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0084】
得られた電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が323mV、FWHMが2.5°であり、(110)/(021)が0.61、且つBET比表面積が29.9m/gであった。
【0085】
比較例3
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、電解補給液をマンガン濃度40.0g/lの硫酸マンガン液とし、電解初期と電解後半の硫酸濃度を33g/l、65g/lとなるように17日間電解した。前半の濃度で12日、後半の濃度で5日電解を行った。
【0086】
得られた電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が317mV、FWHMが2.9°であり、(110)/(021)が0.53、且つBET比表面積が29.0m/gであった。
【0087】
つぎに、この電解二酸化マンガンのミドルレート放電特性を測定した結果、比較例1に対して102%であった。製造条件を表1に、結果を表2に示した。
【0088】
また、得られた電解二酸化マンガンの3〜5nmの細孔容積を測定した結果、0.015cm/gであった。
【0089】
得られた電解二酸化マンガンはアルカリ電位が高いが、実施例の電解二酸化マンガンに比べてミドルレート放電特性が低かった。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の電解二酸化マンガンは高い電位と高い充填性を合せもつため、放電特性、特にミドルレート放電特性に優れたアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40重量%KOH水溶液中で水銀/酸化水銀参照電極を基準として測定したときの電位が280mV以上310mV未満であり、CuKα線を光源とするXRD測定における(110)面の半価全幅(FWHM)が2.2°以上2.9°以下であることを特徴とする電解二酸化マンガン。
【請求項2】
X線回折ピークにおける(110)/(021)のピーク強度比が0.50以上0.80以下であることを特徴とする請求項1に記載の電解二酸化マンガン。
【請求項3】
X線回折ピークにおける(110)面の面間隔が4.00Å以上4.06Å以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解二酸化マンガン。
【請求項4】
BET比表面積が22m/g以上32m/g以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電解二酸化マンガン。
【請求項5】
硫酸−硫酸マンガン混合水溶液中の電解により二酸化マンガンを製造する方法において、電解終了時の電解液中の硫酸濃度が、電解開始時の電解液中の硫酸濃度より高く、かつ、電解開始時の硫酸濃度が20〜35g/L、電解終了時の硫酸濃度が35g/Lを超え40g/L以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電解二酸化マンガンの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電解二酸化マンガンを含んで成ることを特徴とする電池用正極活物質。
【請求項7】
請求項6に記載の電池用活物質を含んでなることを特徴とする電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−68552(P2011−68552A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185871(P2010−185871)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】