説明

電解技術を用いて、金属ゲルマニウムの薄膜を形成する方法

【課題】装身具、あるいは半導体の表面に、白金族金属、金、銀から選ばれる金属との合金の薄膜をメッキするための方法を提供する。
【解決手段】二酸化ゲルマニウムをアルカリ性溶液に溶解した後、遊離酸を添加して酸性ゲルマニウム溶液を作製し、更に、白金族金属、金、銀から選択される共析金属を溶解し、電解液とする。装身具においてはゲルマニウムの含有率を5〜45重量%、半導体素子においてはゲルマニウムの含有率を80〜90%となるように用途に応じて電解液中のゲルマニウムの濃度を調整して電解メッキを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルマニウムを含有する金属薄膜をメッキで形成するために使用される電解液の作成方法に関し、更に当該電解液を使用したメッキ方法、当該メッキ方法によって作成された半導体としての半金属ゲルマニウム薄膜、および装身具(身辺細貨)などの表層を、同薄膜で被服したメッキ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルマニウムは、ダイオード、トランジスター等、半導体素子として莫大な用途があったが、シリコン素子の登場により、その地位は現在入れ替わっている。
【0003】
この理由は、ゲルマニウム自体が、溶融状態からインゴット鋳造できるが、ゲルマニウム自体は展延性が全くなく圧延加工が不可能であり、薄膜が得られず、ゲルマニウムのインゴットを機械的に微粉砕するか、二酸化ゲルマニウムを化学的に還元して得られる微粉末を、何らかの媒体と混合して、それを塑性加工により必要形状に成型する方法を採らなければならないと言った加工上の制約があった為である。
【0004】
そこで従前において、ゲルマニウムを含有するメッキを製造するメッキ技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2006−45653号公報)では、表面にGeを必須成分として含有する合金のメッキ皮膜が成膜されているメッキ部材が開示されており、このメッキ皮膜は電気メッキ法で成膜されている。そしてこのメッキ方法は、Ge源;Rh源;クエン酸、スルファミン酸、グリコール酸、酢酸、コハク酸、およびリンゴ酸の1種または2種以上から成る有機酸;水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムから成るアルカリ成分;ならびに硫酸、塩酸、リン酸、またはスルファミン酸から成る遊離酸を含む酸性メッキ浴を用いて、pHは5.5以下、浴温が常温から60℃以下、電流密度0.1〜10A/dmの条件で、被メッキ材にGe−Rh2元系合金を電着して電気メッキ皮膜を成膜するメッキ部材の製造方法として提案されている。
【特許文献1】特開2006−45653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体として、シリコン素子の薄片のように、ゲルマニウムの薄片を形成することは、その特性である展延性の全くない事から、純度の高い薄片を得ることは不可能とされている。
【0007】
又、装飾品〈身辺細貨〉などの製品の表面にゲルマニウム膜をメッキで形成するには、他の金属との合金メッキを行い、その合金の成分比を所定の範囲に保持しなければならず、またメッキ浴(電解液)のpHを所定の値に管理しなければならなかった。仮にこれらの要件を逸脱すると、装飾品としての美的概観が失われるとともに、耐摩耗性、耐食性も低下する。以上の様に、表面処理の為のメッキ浴組成の合金成分比及び金属の種類の選択に制約があった。例えば、前記特許文献1では、メッキ浴を作成するために、遊離酸の他、有機酸も使用してメッキ浴を作成しており、その結果液管理が難しくなるとの問題もある。
【0008】
そこで本発明は、メッキ浴の液管理をしやすいようにしたメッキ用の電解液を提供することを第一の課題とする。
【0009】
また、ゲルマニウムを確実にメッキ浴に溶解させて、装飾品としての美的概観を向上させるとともに、耐摩耗性、耐食性も向上させ、更に純度の高いメッキ膜を形成することのできるメッキ浴(即ち、電解液)と、これを用いたメッキ方法、ならびにこのメッキ方法で製造した半導体膜とメッキ製品を提供することを第二の課題とする。
【0010】
さらに、装飾品として使用するメッキ製品の場合には、その表面に現れる色調などを任意に調整できることが望ましい。
【0011】
そこで本発明では、メッキの色調を任意に調整することのできるメッキ方法、ならびにこのメッキ方法で製造した半導体膜とメッキ製品を提供することを第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題の少なくとも何れかを解決するために、本発明では金属表面処理技術を応用し、ゲルマニウムの薄膜形成し、必要に応じて析出膜厚や色調を調整することができる電気メッキ方法を提供する。また、装飾品(身辺細貨)などの製品の表面に、当該メッキ方法(即ち表面処理技術)を用いて、ゲルマニウムを含有した合金メッキを施工して、ゲルマニウムの特徴を備えた装飾品を提供する。更に、また必要に応じて、当該メッキ方法で形成された薄膜を母材(被メッキ製品)から、剥離して半導体膜などとして使用する素材を提供する。
【0013】
即ち、本発明ではゲルマニウムを含有する金属薄膜をメッキによって形成するために使用される電解液を作成する方法であって、ゲルマニウムをアルカリ性溶液に溶解してゲルマニウム溶解液を作成するゲルマニウムの溶解工程と、ゲルマニウム溶解液に、遊離酸を存在させて酸性ゲルマニウム溶解液を作成する遊離酸の添加工程と、酸性ゲルマニウム溶解液に、白金族金属、金、および銀から選択される、少なくとも何れか1種または2種以上の共析金属を溶解させて電解液を作成する共析金属溶解工程とからなるゲルマニウム含有薄膜形成用の電解液作成方法を提供する。
【0014】
かかる電解液は、pHを調整するために遊離酸だけを使用し、有機酸などは使用していないことから液管理が容易になる。しかも、ゲルマニウムは、最初にアルカリ性溶液に溶解させていることから、十分にゲルマニウムが溶解したメッキ浴(電解液)を作成することができる。そしてゲルマニウムを溶解させた後に遊離酸を存在させて、共析金属を添加していることから、電解液中のゲルマニウム:共析金属の配合割合を任意に調整することができる。
【0015】
これにより、例えば当該電解液を使用してメッキを行う際、電解液中のゲルマニウムと共析金属との含有比率を調整するか、及び/又は電解析出時における電解液の温度を調整することにより、メッキの色調およびゲルマニウムの含有比率を調整することが可能になる。
【0016】
前記電解液の作成に使用される共析金属はロジウムである事が望ましい。特にアルカリ性溶液に溶解させるのは、二酸化ゲルマニウムであることが望ましい。他の共析金属では、電解液を強酸にすることができない為である。
【0017】
また前記遊離酸は硫酸およびリン酸の何れか1種以上からなる遊離酸である事が望ましい。遊離酸として塩酸を用いた場合、塩素イオンはゲルマニウムとの結合によりGeCl、GeClの化合物を生じさせ、これがメッキ浴中に存在すると、電解を行った際に陰極析出膜(目的の製品)に、黒色の粗大粒子となって析出してしまい、合金組成を損ねる結果となるためである。
【0018】
更に、当該遊離酸の存在により、電解液のpHは0.1〜2の範囲に調整されていることが望ましい。pH2以下であれば、電解析出により確実にゲルマニウムを析出させることができるためである。この電解液のpHに関しては、特に0.4〜0.8の範囲に調整されていることが望ましい。
【0019】
また、本発明では、前記課題の少なくともいずれかを解決するために、電解液を用いて行うメッキ方法であって、当該電解液として、前述した本発明にかかる方法で作成された電解液を使用してゲルマニウム含有金属薄膜を形成した後、金又はロジウムメッキを形成することを特徴とするメッキ方法を提供する。
【0020】
ゲルマニウム含有メッキ層の上に、更に金属メッキを施すことにより、ゲルマニウムの有する効果を発現させることができながらも、さらに装飾性を高めることが可能になる。
【0021】
更に、本発明では、前記課題の少なくともいずれかを解決するために、メッキが施された身飾品及び装飾具を含むメッキ製品であって、当該メッキ製品は、前述した本発明にかかるメッキ方法によって形成され、当該メッキ部分におけるゲルマニウムの含有率が、5〜45重量%であるメッキ製品を提供する。
【0022】
かかるメッキ製品は、例えばネックレス、ブレスレット、イヤリング、ベルトのバックル、指輪などの身飾品や、その一部として使用することにより、ゲルマニウムに由来する効果を教授することができる。
【0023】
かかるゲルマニウムに由来する効果としては、ゲルマニウムは、例えば肩こりや首のこり、腰痛や膝の痛みなどの解消の他、疲労回復や新陳代謝の活発化などの効果があるとされていることから、当該製品を使用することにより、このような効果を期待することができる。なお、かかるゲルマニウムに由来する効果は、ゲルマニウムが光や温度によって電気特性が大きく変わるものであるから、これを皮膚などに触れさせることによって電子の移動が生じて生体電流のバランスを整えてくれものと考えられる。
【0024】
なお、メッキ浴(電解液)として共析金属を含まないものを使用した場合、ゲルマニウム単体からなるメッキを作成することができ、その上に当該方法により他のメッキ層を形成することにより、ゲルマニウムの含有量を多くし、当該ゲルマニウムに基づく効果をより高めることができる。このようなゲルマニウム単体の析出層を形成するには、ゲルマニウムの硫酸酸性溶液を用い、陰極電流密度を5Amp/dm以上にして電解を行うことにより陰極にゲルマニウム単独の析出物(層)を得ることができる。その際、陰極電流密度を5Amp/dm以上にしていることからメッキ加工品としてクオリティーは低くなってしまうが、この点は、当該ゲルマニウム層の上に更に金属層を形成することで解決することができる。
【0025】
更に、本発明では、前記課題の少なくともいずれかを解決するために、ゲルマニウムを含有する半導体素子であって、当該半導体素子は、前述した本発明にかかるメッキ方法によって形成され、かつゲルマニウムの含有率が、80〜90重量%である半導体素子を提供する。具体的には、前記したメッキ処理に際して、任意の金属母材の上にメッキ(すなわち、表面処理技術)によって薄膜(ゲルマニウム被膜)を形成し、その後、化学的にゲルマニウム被膜を損なう事無く、母材から剥離して、要求される膜厚の薄片を得るものである。特にメッキ浴(電解液)として共析金属を配合しない場合には、ゲルマニウム単独の薄膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記した本発明にかかる電解液をメッキ浴として使用することにより、液管理の困難さを解消することができる。
【0027】
また、本発明にかかる電解液を使用したメッキ方法を実施することにより、ゲルマニウムと共析金属の含有率を任意に調整することができ、色調などを自在に調整することのできるメッキ方法が提供される。
【0028】
更に、このメッキ方法によって作成された身飾品や装飾品などのメッキ製品では、その表層に形成されるゲルマニウム被膜は、使用者の体温により32℃以上に達すると、半導体の特徴である(−)電子を発生させ、身体の血流を順調にし、肩こり等の支障を癒すことが期待できる。
【0029】
そして、かかるメッキ方法によって半導体薄膜片を形成する場合には、その用途に応じた形状・面積・膜厚を得る事により、シリコン素子に対応する半導体素子の薄片をこの分野に提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明にかかる電解浴、これを用いたメッキ方法、およびこのメッキ方法で作成した、電解析出による薄膜の製法について実施例により、具体的に説明をする。
〈実験例1〉
【0031】
純度99.9%以上の、高純度二酸化ゲルマニウムを、之に対応する当量の水酸化ナトリュウムの水溶液に溶解し、更に、此れに1:1硫酸溶液を加え、ゲルマニウムの水和物が完全に溶解した清澄液とする。清澄液のpHは、この時6.0以下に調整する。
【0032】
ゲルマニウムの半導体薄膜を得るには、その特性を損なう、次の様な元素、すなわち、燐(P)・砒素(As)・アルミニウム(Al)・ガリュウム(Ga)の混入は絶対に避けねばならない。建浴時には、この点に特に留意して高純度の試薬を用いた。
【0033】
同時に、塩素(Cl)イオンの混入も、絶対に回避することが必要条件であった。
【0034】
塩素イオンとゲルマニウムとの反応生成物であるGeCl,GeCl,の化合物がメッキ浴中に生成してしまうと、これを用いて電解を行った場合には陰極析出膜〈目的の製品〉に、黒色の粗大粒子となって析出し、合金組成を損ねる結果となることが判明した。
【0035】
またゲルマニウムの硫酸酸性溶液(共析金属を配合しない電解液)を用いて、電解によって陰極に析出物を得るには、ゲルマニウム単体での析出は、陰極電流密度を、5Amp/dm以上にしなければ析出が得られなかった。
【0036】
高電流密度での析出は、ゲルマニウムの析出粒子が粗大化して不完全な析出となり、僅かな外力で、例えば,毛筆等でこすっても粉末として脱落してしまった。
【0037】
粗大化したゲルマニウムの析出は純粋な金属析出でなく、析出と同時に水素イオンと結合した化合物の状態で陰極に析出するものらしく、析出と同時に、一酸化物(GeO)
の状態で、黒色を呈する脱落しやすい被膜となり、本来の銀白色にはならなかった。
【0038】
そこで本実施例では、低電流密度で、完全な銀白色のゲルマニウム被膜を得るために、半導体効果を阻害する元素を除く金属を添加して、共析被膜を析出させる方法を用いた。
【0039】
添加する金属としては、出来る限りゲルマニウム析出電位に近い電位を呈する金属が望ましい。この点で、白金・ロジュウム・パラジュム・金・銀等の貴金属が好ましい。
【0040】
ゲルマニウムの電解液は、硫酸酸性液であるので、ロジュウムが最も適していると判断し、硫酸ロジュウムの形で添加した。電解液中の、Ge:Rhの比率は、(2:1)から(100:1)までの変化で、析出状態を観察した。
【0041】
ゲルマニウムの半導体素子としての特性を維持するには、添加する共析金属は最小限に抑えるのが理想的であるので、Ge:Rhの比(重量比)を、液組成で10:1〜0.5として、電流密度を0.2〜0.5Amp/dmとした場合に良好な被膜がえられた。
【0042】
この析出した被膜は、ゲルマニウム85〜95%、ロジュウム15〜5%の青味を帯びた灰白色の被膜であり、0.5〜3.0μの膜厚で、半光沢を呈していた。またこの被膜の合金組成は、ゲルマニウム含有率88.98%(重量比率)のゲルマニウム合金の被膜である事が、エネルギー分散型X線分析装置で確認された。結果は図1に示した。
〈実験例2〉
【0043】
電気伝導度の良好な薄膜を得る為に、共析金属としてAu(金)を選択した。前記実施例1の合金メッキ浴はpH2.0以下の強酸性で安定性があり、pH2.0以上になるとGeのラスな析出となる。また金をロジュウムに置き換えるにはpH2.0以下で安定なAu化合物が絶対条件となる。
【0044】
そこで我々は、Au化合物として、青化第二金カリが硫酸浴中でpH2.0以下0.1迄自己還元する事無く安定である事を実験によって確認し、さらに実験を重ねてGe−Au合金の組織の電解液を確立した。
【0045】
ゲルマニウム酸化物をmol比で1:2に調整したアルカリ塩(NaOHあるいは KOH)に溶解した後、この溶液に硫酸をくわえてpHを1.1〜2.0の溶液とした。この液に青化第二金カリを添加し、Ge: Auの金属比を5〜10:1.0〜0.05の範囲として電解を行った。電解条件は、電流密度が0.1〜2.0Amp/dm で、浴温度を30〜50℃に調整した。
【0046】
その結果、黄緑色から茶褐色を呈する硬い合金で、光沢のある、3μmまでの膜厚の皮膜が得られた。この被膜の合金組成は、5.74%(重量比率)の、ゲルマニウムを含有する金合金の被膜である事が、エネルギー分散型X線分析装置で確認された。結果は図2に示した。
〈実験例3〉
【0047】
実施例2と同様にGe−Agの合金薄膜を得るべく電解液を作成して電解を試みた。二酸化ゲルマニウムの粉末を、対応する当量の青化カリ溶液に溶解し、此れに、Ge:Ag=10:1〜5の割合で青化銀カリを加えて電解液とした。
電流密度は0.1〜1.0Amp/dmの範囲で、且つ室温で電解をおこなった。
【0048】
その結果、Ag(銀)の析出電位が低く、Ge:Agの比(重量比)が2:1では、殆ど、銀のみの析出のようになり、ラフな析出であった。このGe:Agの比(重量比)が5:1でようやく半光沢の被膜がえられた。
【0049】
析出被膜の合金成分比は、電解液中の金属の配合比に比例したものが得られるが、同時に電解の際の電流密度を制御することで、皮膜におけるロジウムの含有比率や色を調整する事ができた。
〈実験例4〉
【0050】
ゲルマニウムの特性である(−)電子の発生を以って肩こり等を癒すことができるメッキ製品を得ることを目的として、直接、肌に触れる装身具(身辺細貨)、例えばネックレス、ブレスレット、指輪等の表層に、ゲルマニウム含有の合金メッキを施工した。
【0051】
メッキ液(電解液)は、実験例1と同様に硫酸酸性浴を用いた。但し、液中の金属の組成比は、Ge:Rh=5:1に設定し、析出被膜の合金組成をGe=15〜50%(重量比率)とし、残部をRhになる様に電解条件で調整した。
【0052】
析出されたメッキ被膜は、青味を帯びた灰白色の美麗な表層となった。被膜の合金組成は、43.83%(重量比率)のゲルマニウムを含有するロジュウム等の合金の被膜である事が、X線強度測定で確認された。結果を図3に示す。
【0053】
メッキ製品が特に装飾品である場合には、その用途を考慮して、仕上がりは、Ge−Rh合金の色調の他に、其の上に更に金メッキ、又は、ロジュウムメッキを重ねることも、施工上は問題無く出来る事も確認された。
〈実験例5〉
【0054】
この実験例では、本発明に係る電解浴、メッキ方法、およびメッキ製品の構成を検証するべく、他の化合物を用いて電解浴、メッキ方法、およびメッキ製品の作成を行ない、その結果を確認した。
【0055】
(1)硫酸およびリン酸の何れか1種以上からなる遊離酸に代えて、有機酸であるクエン酸を用いて二酸化ゲルマニウムを溶解した場合、二酸化ゲルマニウムの溶けが悪いことを確認した。また、この電解液では、1日放置すると二酸化ゲルマニウムが一部沈殿し、分離してしまう事も確認されて。その結果、遊離酸に変えて有機酸を用いた場合は、二酸化ゲルマニウムは十分に溶解しないばかりか、液管理が困難な事を確認した。
なお、有機酸(クエン酸)を用いる場合には、共析金属としてAu(金)を選択し、実施例1で作成したゲルマニウムのアルカリ溶液にクエン酸を徐々にくわえ、pH4.0〜5.8として得られた清澄溶液に、Au(金)を、青化金カリ・KAu(CN)として添加し、混合比(重量比)をGe:Au=5〜10:1.0とした電解液とする。この電解液を用いて、電解条件を電流密度0.5〜1.5Amp/dm、浴温度を30〜40℃として電解を行うことにより、鏡面光沢で、黄緑色の硬い合金被膜(析出被膜は3μまで)を得ることができる。
【0056】
(2)硫酸およびリン酸の何れか1種以上からなる遊離酸に代えて、有機酸であるスルファミン酸を用いて二酸化ゲルマニウムを溶解した場合、二酸化ゲルマニウムは溶けないことを確認した。更に、この場合には、常温でも50℃でも二酸化ゲルマニウムを溶解させることができなかった。
【0057】
(3)硫酸およびリン酸の何れか1種以上からなる遊離酸に代えて、有機酸であるグリコール酸を用いて二酸化ゲルマニウムを溶解した場合も、二酸化ゲルマニウムは溶けないことを確認した。この場合も、常温でも50℃でも二酸化ゲルマニウムを溶解させることができなかった。
【0058】
(4)電解液のpHを確認する為に、実験例1で作成した電解液に対して水酸化ナトリウムを添加し、pHを調整した。その結果、
pH5の電解液で電気メッキを行った場合、ゲルマニウムの析出はなかった。
pH4の電解液で電気メッキを行った場合、ゲルマニウムの析出はなかった。
pH3の電解液で電気メッキを行った場合、ゲルマニウムの析出はなかった。
pH2以下の電解液で電気メッキを行った場合、ゲルマニウムの析出が確認された。
【0059】
以上の結果から、本発明に係る電解液は、pH0.4〜0.8であることが好ましいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電解方式により得られたゲルマニウム合金薄膜は、膜厚・平面形状を、任意に作成できることから、現在まで、ゲルマニウムの粉末を、何らかの媒材を加えて成型加工した半導体に代わって、多種多様の半導体素子として提供できる。
【0061】
更に身飾品に対して本発明により、メッキを施す事により、ゲルマニウム自体が有する効果を発揮できる身飾品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実験例1の走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置のチャート。
【図2】実験例2の走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置のチャート。
【図3】実験例4の走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置のチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウムを含有する金属薄膜をメッキによって形成するために使用される電解液を作成する方法であって、
二酸化ゲルマニウムをアルカリ性溶液に溶解してゲルマニウム溶解液を作成するゲルマニウムの溶解工程と、
ゲルマニウム溶解液に、遊離酸を存在させて酸性ゲルマニウム溶解液を作成する遊離酸の添加工程と、
酸性ゲルマニウム溶解液に、白金族金属、金、および銀から選択される、少なくとも何れか1種または2種以上の共析金属を溶解させて電解液を作成する共析金属溶解工程と、
からなることを特徴とする、ゲルマニウム含有薄膜形成用の電解液作成方法。
【請求項2】
前記共析金属はロジウムであり、
前記遊離酸は硫酸およびリン酸の何れか1種以上からなる遊離酸であり、
当該遊離酸の存在により、電解液のpHは0.1〜2の範囲に調整されている、請求項1に記載の電解液作成方法。
【請求項3】
電解液を用いて行うメッキ方法であって、
当該電解液として、請求項1又は2に記載の方法で作成された電解液が使用され、
メッキの色調およびゲルマニウムの含有比率を調整する為に、電解液中のゲルマニウムと共析金属との含有比率を調整するか、及び/又は電解析出時における電解液の温度を調整することを特徴とするメッキ方法。
【請求項4】
電解液を用いて行うメッキ方法であって、
当該電解液として、請求項1又は2に記載の方法で作成された電解液を使用してゲルマニウム含有金属薄膜を形成した後、金、ロジウム又はその他の金属メッキを形成することを特徴とするメッキ方法。
【請求項5】
メッキが施された身飾品及び装飾具を含むメッキ製品であって、
当該メッキ製品は、請求項3又は4に記載のメッキ方法によって形成されて、
当該メッキ部分におけるゲルマニウムの含有率が、5〜45重量%であることを特徴とする、メッキ製品。
【請求項6】
ゲルマニウムを含有する半導体素子であって、
当該半導体素子は、請求項3又は4に記載のメッキ方法によって形成され、かつ
ゲルマニウムの含有率が、80〜90重量%であることを特徴とする、半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−52130(P2009−52130A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339719(P2007−339719)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【特許番号】特許第4188408号(P4188408)
【特許公報発行日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(507033129)株式会社プライマリー (1)
【Fターム(参考)】