説明

電解水生成装置

【課題】電解運転の開始時に電解槽内に過剰な電解電流を発生させることなく同電解槽に供給される希釈塩水の電解電流が短時間に速やかに所定の設定電流値に調整可能な電解水生成装置を提供する。
【解決手段】電解運転の開始時に所定の電圧値、設定電流値、原水の供給流量及び濃塩水の濃度に基づいて原水に混入される濃塩水の供給量を算出する手段S105を設けて、前記算出された濃塩水の供給量を電解運転開始時の初期値としてフィードバック制御による電解運転S106がなされるようにした装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関し、特に、給水源から電解槽に供給される原水に濃塩水を混入した希釈塩水を同電解槽内の電極に所定の電圧を印加して電気分解することにより電解水を生成する電解水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1においては、電解槽の電極間に印加した所定の電圧により給水源から供給される原水に濃塩水を混入した希釈塩水に生じる電解電流が設定電流値になるように、前記原水に混入される濃塩水の供給量をフィードバック制御により調整するようにした電解水生成装置が開示されている。
【0003】
また、下記の特許文献2においては、電解槽の電極間に印加した所定の電圧により給水源から供給される原水に濃塩水を混入した希釈塩水に生じる電解電流が設定電流値になるように、前記原水に混入される濃塩水の供給量をフィードバック制御により調整すると共に調整後の濃塩水の供給量を記憶し、記憶した濃塩水の供給量を次回電解運転開始時の供給量とするようにした電解水生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−232170号公報
【特許文献2】特開平11−128931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電解水生成装置においては、電解運転の開始時は原水のみが電解槽に導入されてから徐々に濃塩水の供給量が増加するので、希釈塩水の電解電流が設定電流値になるまでに長時間を必要とし、その間に生成される電解水は所要の特性が得られないという難点がある。一方、特許文献2に記載の電解水生成装置においては、電解運転の開始時に原水に混入される濃塩水の供給量が前回の運転中に記憶した供給量に調整されるので、希釈塩水の電解電流が短時間で設定電流値に調整され得る利点がある。しかしながら、電解運転中に塩水タンクが塩水切れになった場合にはフィードバック制御によって調整される濃塩水の供給量が最大値になって、この最大値の供給量が記憶された状態で停止する。このため、次回の電解運転に際して塩水タンクに濃塩水を補充した場合、電解運転の開始時に濃塩水の供給量が先に記憶された最大値に調整され、その結果電解槽内の電極に過剰な電解電流が発生して、当該電解水生成装置の構成部品の故障の原因や、塩水の無駄な消費をまねくことになる。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題に対処するため、電解運転の開始時に電解槽内に過剰な電解電流を発生させることなく同電解槽に供給される希釈塩水の電解電流が短時間に速やかに所定の設定電流値に調整されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、給水源から供給される所定流量の原水に所定濃度の濃塩水を混入した希釈塩水が被電解水として導入される電解槽と、該電解槽の電極間に印加した所定の電圧により生じる前記希釈塩水の電解電流を検出する電流検出手段とを備え、該電流検出手段により検出された前記希釈塩水の電解電流が予め設定した設定電流値になるように前記原水に混入される濃塩水の供給量をフィードバック制御により調整するようにした電解水生成装置において、電解運転の開始時に前記所定の電圧値、前記設定電流値、前記原水の供給流量及び前記濃塩水の濃度に基づいて前記原水に混入される濃塩水の供給量を算出する手段を設けて、前記算出された濃塩水の供給量を電解運転開始時の初期値として前記フィードバック制御がなされるようにしたことを特徴とする電解水生成装置を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、濃塩水を収容する塩水タンクと、該塩水タンクの塩水切れを検知する塩水切れ検知手段と、給水源から供給される所定流量の原水に前記塩水タンクから供給される所定濃度の濃塩水を混入した希釈塩水が被電解水として導入される電解槽と、該電解槽の電極間に印加した所定の電圧により生じる前記希釈塩水の電解電流を検出する電流検出手段と、前記検出された希釈塩水の電解電流が所定の設定電流値になるように前記原水に混入される濃塩水の供給量をフィードバック制御により調整する制御手段と、前記フィードバック制御により調整された前記濃塩水の供給量を記憶する記憶手段とを備えて、電解運転が開始されたとき前記原水に混入される濃塩水の供給量を前記記憶手段に記憶された濃塩水の供給量に調整するようにした電解水生成装置において、前記塩水切れ検知手段の検知により前記塩水タンクに所要の濃塩水が補充された直後に電解運転が開始されたとき、前記所定の電圧値、前記設定電流値、前記原水の供給流量及び前記濃塩水の濃度に基づいて前記原水に混入される濃塩水の供給量を算出する手段を設けて、前記算出された濃塩水の供給量を電解運転開始時の初期値として前記フィードバック制御がなされるようにしたことを特徴とする電解水生成装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したいずれの電解水生成装置においても、電解運転の開始時に前記算出手段により算出した濃塩水の供給量を初期値として前記フィードバック制御がなされるようにしたので、前記電解槽に供給される希釈塩水の電解電流が短時間に速やかに所定の設定電流値に制御され、所期の目的を達成することができ、電解運転の開始時に塩水の無駄な消費をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面において:
【図1】本発明の適用対象となる電解水生成装置の第1実施形態を概略的に示す構成図、
【図2】図1に示した制御装置の拡大図、
【図3】図1に示した電解水生成装置における制御装置のコントローラのブロック図、
【図4】図3に示したコントローラにより実行される制御プログラムの第1実施形態を示すフローチャート、
【図5】電解槽内における被処理水の電気伝導度と電解電流値の関係を示すグラフ、
【図6】図3に示したコントローラにより実行される制御プログラムの第2実施形態を示すフローチャート、
【図7】図1に示した電解水生成装置において給水源から供給される原水の電気伝導度を検出する手段を示す図、
【図8】図3に示したコントローラにより実行される制御プログラムの他の実施形態を示すフローチャート、
【図9】図3に示したコントローラにより実行される制御プログラムの更に他の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の適用対象となる電解水生成装置の第1実施形態を示している。この電解水生成装置は、有隔膜電解槽10、希釈塩水調整機構20および制御装置30を備えている。電解槽10はそれ自体公知のもので、その槽本体11は隔膜12にて一対の電解室R1,R2に区画されており、これらの電解室には電極13a,13bがそれぞれ配設されている。電解槽10の電解室R1,R2の上流側部位には希釈塩水を供給する希釈塩水導管14の分岐管路部がそれぞれ接続され、同電解室R1,R2の下流側部位には電解生成水を導出する上流側導出管15a1,15b1がそれぞれ接続されている。これらの上流側導出管15a1,15b1は、流路切換弁16を介して下流側導出管15a2,15b2に接続されている。
【0012】
この電解水生成装置の電解運転においては、制御装置30の制御下にて、電解室R1,R2の各電極13a,13bの極性が定期的に反転されるときそれに同期して流路切換弁16が切換制御されて、上流側導出管15a1,15b1の下流側導出管15a2,15b2に対する接続が切換えられる。この切換により、一方の下流側導出管15a2又は15b2が電解酸性水の導出管路となり、他方の下流側導出管15b2又は15b2が電解アルカリ性水の導出管路となる。
【0013】
上記の電解運転中に、制御装置30の制御下にて電源31から電極13a,13bに印加された所定の電圧により生じる電解電流によって、電解槽10の電解室R1,R2内に供給された希釈塩水が電気分解される。この電解運転において電極13aの極性が正となり電極13bの極性が負となった場合には、電解室R1にて生成される電解酸性水が上流側導出管15a1と下流側導出管15a2を通して導出され、電解室R2にて生成される電解アルカリ性水が上流側導出管15b1と下流側導出管15b2を通して導出される。また、制御装置30の制御下にて電極13a,13bの極性が反転されるとともに流路切換弁16が切替えられたときには、電解室R1にて生成される電解アルカリ性水が上流側導出管15a1と下流側導出管15b2を通して導出され、電解室R2にて生成される電解酸性水が上流側導出管15b1と下流側導出管路15a2を通して導出される。
【0014】
上記の電解運転中に電解槽10内で発生する電解電流値は、電源31と電極13bを接続する配線の途中に介装した分流器32に接続された電流計33により計測される。この場合、電流計33で計測される電解電流値は電解槽10内に供給された希釈塩水の電気伝導度と等価であって同電気伝導度に応じて変化する。
【0015】
電解槽10に供給される希釈塩水の濃度を調整する調整機構20は、飽和塩水等の高濃度の塩水を収容する塩水タンク21と、塩水タンク21内の濃塩水を供給する塩水供給導管22に介装した吐出量可変型(例えば、パルス駆動式)の塩水供給ポンプ23により構成されていて、塩水供給導管22は給水源に接続した給水導管17に接続されている。塩水供給ポンプ23は制御装置30の制御下にて駆動されて塩水タンク21内の濃塩水を給水導管17に供給する。
【0016】
塩水ポンプ23の作動によって給水導管17に供給された濃塩水は給水導管17を通して供給される原水に混合されて所定濃度に希釈された希釈塩水として希釈塩水導管14を通して電解槽10の電解室R1とR2に供給される。電解室R1,R2内にて電気分解される希釈塩水の電気伝導度は、後述する原水の電気伝導度と原水に混合される濃塩水の供給量に応じて変化する。
【0017】
制御装置30はマイクロコンピュータを備えたコントローラであって、電源から電解槽10内の電極13aと13bに所定の電圧を印加し、同電圧の極性を定期的に反転させる機能を果たす。
【0018】
図3に示したように、制御装置30の入力インターフェース30gには設定スイッチ30a、注水スイッチ30f、水量設定スイッチ30d、流量センサ19c及び電流計33が接続されている。一方、制御装置30の出力インターフェース30kには電源31、塩水供給ポンプ23、ウオーターバルブ19a及び流量調整バルブ19bが接続されている。上記のスイッチ類は使用者によって操作されるもので、図1と図2に示したように、装置本体の適所に取付けた操作盤に配置され、同操作盤には設定スイッチ30aとアップダウンスイッチ30b1、30b2の選択的な操作によって設定された電圧値と電流値を表示する表示部30cと、水量設定スイッチ30dの操作によって設定された電解水(アルカリ性イオン水と酸性イオン水)の抽出される水量を表示する水量表示ランプ30e1、30e2, 30e3が設けられている。
【0019】
設定スイッチ30aとアップダウンスイッチ30b1、30b2は電圧値、電流値の設定を変更するためのスイッチであり、設定スイッチ30aを1回押すと表示部30cに現在設定されている電圧値(例えば、12V)が表示される。この表示された状態でアップダウンスイッチ30b1を押すと所定の電圧値(0.1V)が現在設定されている電圧値に加算され、アップダウンスイッチ30b2を押すと所定の電圧値(0.1V)が現在設定されている電圧値から減算され、設定スイッチ30aを再度押すことで変更後の電圧値を設定できる。なお、電圧値は7.0Vから18.0Vの間で0.1V間隔で設定可能になっている。
【0020】
また、設定スイッチ30aを2回押すと表示部30cに現在設定されている電流値(例えば、10A)が表示される。この表示された状態でアップダウンスイッチ30b1を押すと所定の電流値(0.1A)が現在設定されている電流値に加算され、アップダウンスイッチ30b2を押すと所定の電流値(0.1A)が現在設定されている電流値から減算され、設定スイッチ30aを再度押すことで変更後の電流値を設定できる。なお、電流値は5.0Aから18.0Aの間で0.1A間隔で設定可能になっている。
【0021】
注水スイッチ30bは、その押圧操作により給水導管17に介装した給水バルブ19aを開弁する。これにより、給水源から給水導管17に供給される水道水が、同給水導管17に介装した軟水器18aにて軟水化処理され、フィルター18bにより濾過処理されて、原水として希釈塩水導管14に導入される。また、給水導管17には給水バルブ19aの下流側にて流量センサ19cを備えた流量調整バルブ19bが介装されている。この流量調整バルブ19bは、水量設定スイッチ30dの操作によってその開度を適宜に設定されて希釈塩水導管14に供給される原水の流量を調整する。流量センサ19cは流量調整バルブ19bが開かれたとき希釈塩水導管14に供給される原水の流れを検出する。
【0022】
水量設定スイッチ30dは原水供給量の設定を変更するためのスイッチであり、水量設定スイッチ30dを押すごとに水量表示ランプ30e1、30e2、30e3の点灯位置が切り替り、原水供給量が多いとき(例えば、酸性水3L/min、アルカリ性水3L/minの全流量6L/min)水量表示ランプ30eが点灯し、原水供給量が標準の供給量であるとき(例えば、酸性水2L/min、アルカリ性水2L/minの全流量4L/min)水量表示ランプ30e2が点灯し、原水供給量が少ないとき(例えば、酸性水1.5L/min、アルカリ性水1.5L/minの全流量3L/min)水量表示ランプ30e3が点灯し、水量設定スイッチ30dを押すことで原水の供給量を適宜に設定する。
【0023】
制御装置30は、上述したスイッチ類の操作によって、電解槽10の電極13a、13b間に印加する電圧値、電解槽10内における希釈塩水の電解電流を規定する電流値および原水の供給流量がそれぞれ所定の値に設定された状態にて、図4のフローチャートにより示した制御プログラムを以下のとおり実行する。
【0024】
いま、電解運転を開始するため電源31を投入して注水スイッチ30fがON操作されると、制御装置30のCPU30hがステップS101にて設定スイッチ30aまたは水量設定スイッチ30dがONされたか否かを判断し、ONされていなければ給水バルブ19aが閉じた状態にあって流量調整バルブ19bの流量センサ19cにて原水の流入が検出されないため、ステップS103にてNOと判断してプログラムをステップS101に戻す。この電解運転の開始に先立って設定スイッチ30aを押した状態でアップダウンスイッチ30b1又は30b2の選択的な操作により電解槽10の電極13aと13bに印加する電圧が所定の電圧値V0(例えば、工場出荷時の設定電圧値は12V)に設定されると共に電解槽10内における電解電流の設定電流値A0(例えば、工場出荷時の設定電圧値は12V)が設定され、さらに水量設定スイッチ30dの操作によって原水の供給流量が所定の流量L0(例えば、工場出荷時の設定流量は酸性水2L/min、アルカリ性水2L/minの全流量4L/min)に設定されると、上記の設定電圧値V0、設定電流値A0及び設定流量L0が制御装置30のRAM30jに記憶される。
【0025】
しかして、制御装置30のCPU30hはステップS103にてYESと判断し、次のステップS104にて設定電圧値V0、設定電流値A0、設定流量L0およびROM30iに格納されている演算用の設定水温C(例えば、30℃)に基づいて設定電導度値Eを求める。この場合、水温Cは通常の水道水温(15℃〜25℃)より高い温度が固定値として設定されている。これは、水温が高いほど電気伝導度が高くなるため、通常より高い固定値の水温Cにすることで電解初期に濃塩水の供給を実際の水温から求められる供給量よりも僅かに少ない供給量から始めることができ、過剰な濃塩水の供給を防ぐことができるためである。また、通常より高い固定値の水温Cにすることで水温を計測する手段も不要となる。なお、一定の条件下においては図5に示すように電流値、電気伝導度および電圧(図では11V、12Vおよび13Vを示す。)には相関関係が成立するため、ステップS104にて設定電導度値Eを求めることが可能となっている。
【0026】
次いで、プログラムがステップS105に進むと、制御装置30のCPU30hはステップS104にて求めた設定電導度値EとROM30iに格納されている演算用の濃塩水濃度Q(例えば、25%)に基づき原水に混入される濃塩水の供給量P(例えば、原水に混入してできた希釈塩水が2000μs/cmになる供給量)を求め、その後にプログラムをステップS106に進める。なお、濃塩水濃度Qは飽和濃度である25%が固定値として設定されている。これは、濃塩水濃度が高いほど電気伝導度が高くなるため、飽和濃度を固定値の濃塩水濃度Qにすることで塩水タンク21内の実際の塩水濃度に関係なく、電解初期に過剰な濃塩水の供給を防ぐためである。また、飽和濃度を固定値の濃塩水濃度Qにすることで塩水タンク21内の塩水濃度を計測する手段も不要となる。
【0027】
プログラムがステップS106に進むと、制御装置30のCPU30hは、電解槽10の電極13a、13b間に先に設定した所定の電圧V0を印加して電解運転を開始する。この電解開始時の濃塩水の供給量はステップS105で求めた濃塩水供給量Pであり、その後は電流計33によって検出される希釈塩水の電解電流値を表す検出信号を入力して同希釈塩水の電解電流が前記設定電流値になるように塩水供給ポンプ23の作動を制御して給水導管17からの原水に混合される濃塩水の供給量のフィードバック制御を行い、ステップS107で原水の流入がなくなるのを検出するまで電解運転を継続させる。ステップS107で原水の流入がなくなるとステップS108で電解槽10の電極13a、13b間の電圧の印加を停止することで電解運転を停止する。停止後ステップS101に戻り、次回の電解運転時にステップS101〜ステップS108にての処理を繰り返す。
【0028】
上述した制御によって、電解運転開始から短時間で速やかに電解電流を設定電流値にすることができる。
【0029】
この第1実施形態では設定電圧値V0、設定流量L0が設定可能として説明したが、これに限定するものではなく、演算用の固定値として電圧値V、流量LをROM30iに格納しステップS104で使用してもよい。また、この第1実施形態ではステップS103の後に濃塩水供給量Pを求めるステップS104およびステップS105の処理を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、ステップS104およびステップS105の処理をステップS103の直前に行うようにしてもよい。
【0030】
図6は本発明の第2実施形態において上記の制御装置30により実行される制御プログラムのフローチャートであって、ステップS201,S202及びS203においては図4に示した第1実施形態のプログラムにおけるステップS101、S102及び103にての処理と同様な処理を実行して、ステップS204にて後述するステップS211又はS212にて記録されるフラグNに基づき塩水タンク内の塩水切れの有無を判別するようにしたことに特徴がある。
【0031】
しかして、ステップS204にて塩水切れでないと判断したときにはステップS207にて前回記憶した濃塩水の供給量Pから電解運転を開始し、電流計33により検出される希釈塩水の電解電流が上記のアップダウンスイッチ30b1又は3012の操作により加算又は減算して設定した設定電流値AOになるように給水導管17から供給される原水に混入される濃塩水の供給量Pをフィードバック制御により調整する処理を実行する。
【0032】
一方、ステップS204にて塩水切れと判断した場合には、プログラムをステップS206とステップS207に進めて第1実施形態のプログラムにおけるステップS104とS105にての処理と同様な処理を実行してからプログラムをステップS207に戻して濃塩水の供給量のフィードバック制御を行う。
【0033】
その後にステップS208にて流量センサ19bから検出信号が付与されず希釈塩水導管14への原水の流入がないと判断すると、ステップS209にて電解運転中にフィードバック制御により規定された濃塩水の供給量PをRAM30jに記憶させてプログラムをステップS210に進め、塩水供給タンク23内の塩水切れの有無を判断する。この場合、塩水供給ポンプ23として容量可変式ポンプ(例えば、可変容量範囲が0〜360回転/分であって通常の使用範囲が60〜120回転/分)を採用した電解水生成装置においては、フィードバック制御による濃塩水の供給量Pが最大値(例えば、360回転/分)であれば塩水切れと判断する。
【0034】
このとき、先のステップS209にて記憶された濃塩水の供給量Pが最大値であればステップS210にて塩水切れと判断してプログラムをステップS211に進めて塩水切れを表すフラグNを“1”とセットし、同濃塩水の供給量Pが最大値でなければステップS212にてフラグNを“0”にセットし、その後にステップS213にて電解槽10の電極13a、13b間の電圧の印加を停止することで電解運転を停止する。
【0035】
しかして、この第2実施形態においては、上述した電解運転の後に電解運転を再開した場合には、ステップS201〜S203にての処理を実行してステップS204にて判断結果が“No”であれば先にステップS209にてRAM30jに記憶された濃塩水の供給量Pによって電解運転が開始され電解槽10内に供給された希釈塩水の電解電流が設定電流値AOに制御される。
【0036】
また、先の電解運転中にステップS210にて塩水切れと判断された場合には、フラグNが“1”にセットされているのでステップS204にて“Yes”と判断しステップS205にてRAM30jに記憶されている設定電圧値VO,設定電流値AO及び設定流量LO、それに加えて演算用の設定水温C(例えば、30℃)に基づいて設定電導値Eを求め、次のステップS206にてROM30iに格納されている演算用の濃塩水の濃度Q(例えば、25%)を考慮して濃塩水の供給量Pが算出される。
これにより、塩水タンク21内に濃塩水を補充した直後に電解運転が開始されたとき電解槽10内に供給される希釈塩水の電解電流が短時間に速やかに設定電流値AOに制御されて電解槽内にての過剰な電解電流の発生をなくすことができる。
【0037】
なお、上記の制御プログラムにおいては、ステップS210にて濃塩水の供給量Pが最大値になったとき塩水タンク21内の塩水切れと判断したが、塩水タンク21内にフロートスイッチを配設して塩水切れを検知し、その検知信号の有無により塩水切れが判断されるように実施してもよい。
【0038】
上述した本発明の第1実施形態と第2実施形態においては、図4のステップS104或いは図6のステップS205にて設定電圧値V0、設定電流値A0、設定流量L0およびROM30iに格納されている演算用の設定水温C(例えば、30℃)から設定電導度値Eを求めるようにしたが、通常原水として使用される水道水の電気伝導度EO(例えば、500μs/cm以上)が高ければ図5に示すように電解槽10内にて電気分解される希釈塩水の電気伝導度が過剰となり、電解運転の初期に過剰な電解電流が生じて電解水生成装置の構成部品に支障をきたしたり、濃塩水を無駄に消費することになる。
【0039】
この問題に対処するため、本発明のその他の実施形態においては、その適用対象となる電解水生成装置において、図7に示したように、フィルター18bの下流側に追加した検水コック40から検水容器41に原水を取り出してその電気伝導度を電導度計42により計測する。この場合、図1に示した電解水生成装置においては、制御装置30の設定スイッチ30aを1回押すと電圧値V0が設定され、2回押すと電流値A0が設定されるようにしたが、この実施形態における制御装置30では、設定スイッチ30aを1回押すと電圧値V0が設定され、2回押すと電流値A0が設定され、3回押すと現在設定されている原水の電導度値(例えば、200μs/cm)が表示部30cに表示されるようにする。
【0040】
このような電導度値の表示状態にてアップダウンスイッチ30b1を押すと所定の電導度値(100μs/cm)が現在設定されている原水の電導度値に加算され、アップダウンスイッチ30b2を押すと所定の電導度値(100μs/cm)が現在設定されている原水の電導度値から減算され、原水の所望の電導度値が設定スイッチ30aを押すことで設定できるようにする。なお、原水の電導度値は100μs/cmから1000μs/cmの間で100μs/cm間隔で設定可能にするのが望ましい。
【0041】
なお、図7に示した電解水生成装置においては、検水コック40から取水した原水の電導度値を電導度計42により計測するようにしたが、これに代えて、給水導管17から供給される原水の電気伝導度を検出するため、電解運転の開始時に塩水供給ポンプ23を停止させて濃塩水の供給を遮断した状態にて給水導管17から供給される原水のみを電解槽10に導入して同原水の電解電流を電流計33により検出し、その電流値に基づいて同原水の電気伝導度を検出してもよい。
【0042】
しかして、この実施形態においては図4に示した第1実施形態の制御プログラムを図8に示したように変更することにより上記の問題(電解運転の初期における過剰な電解電流の発生)に対処することができる。すなわち、図8に示した制御プログラムにおいては、ステップS102Aにて設定電圧V0、設定電流A0および設定流量L0に加え、原水の電導度値E0(例えば、工場出荷時の原水電導度値は100μs/cm)を設定し、ステップS104の次に加えたステップS104Aにて先のステップS102Aにて設定した電導度値E0をステップ104にて求めた設定電導度値Eから減算して初期供給電導度値E1を求める。この初期供給電導度値E1と設定塩水濃度Qから濃塩水の供給量PをステップS105で求め、この濃塩水供給量Pを使用してステップS106にてフィードバック制御による電解運転を開始する。
【0043】
上記の制御によって、電解運転開始時から短時間で電解電流を設定電流値にすることができるとともに、電導度値が高い原水を使用したとしても電解運転の開始時に濃塩水が原水に過剰に混入されることがなくなり電解運転開始時の過剰な電解電流の発生を防止することができる。
【0044】
また、上記の問題に対処するため、図6に示した第2実施形態の制御プログラムを図9に示したように変更して上記の問題に対処してもよい。この場合、図9に示した制御プログラムにおいては、ステップS202Aにて設定電圧V0、設定電流A0および設定流量L0に加え、原水の電導度値E0を設定し、ステップS205の次に加えたステップS205Aにて先のステップS202Aにて設定した電導度値E0をステップ205にて求めた設定電導度値Eから減算して初期供給電導度値E1を求める。この初期供給電導度値E1と設定塩水濃度Qに基づいて濃塩水の供給量PをステップS206にて求め、この濃塩水供給量Pを使用してステップS207にてフィードバック制御による電解運転を開始する。
【0045】
このような制御によっても、電解運転開始時から短時間で電解電流を設定電流値にすることができるとともに、原水電導度値が高い原水を使用したとしても電解運転の開始時に濃塩水が原水に過剰に混入されることがなくなり電解運転開始時の過剰な電解電流の発生を防止することができる。
【0046】
なお、上述した図8の制御プログラムと図9の制御プログラムにおいては、原水の電気伝導度値EOとして図7に示した電導度計により測定した電導度値を読み取るようにしたが、電解運転の開始時に塩水供給ポンプ23を停止させて濃塩水の供給を遮断した状態にて給水導管17から供給される原水のみを電解槽10に導入して同原水の電解電流を電流計33により検出して、その電流値を図8又は図9の制御プログラムの適宜なステップにて原水の電気伝導度値として読み取って原水の初期供給電導値E1を求めてもよい。この場合、図8の制御プログラムにおいては、ステップS103の次に追加したステップにて上記原水の電気伝導度値を読み取ってステップS104Aにて初期供給電導値E1を求めたり、或いは図9の制御プログラムにおいてステップS203の次に追加したステップにて上記原水の電気伝導度値を読み取ってステップS205Aにて初期供給電導値E1を求めてもよい。或いは、図9の制御プログラムにおいてステップS211の次に追加したステップにて上記原水の電気伝導度値を読み取ってステップS205Aにて初期供給電導値E1を求めてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10・・電解槽、33・・電流検出手段、S102・・設定電圧、設定電流、設定流量の入力、S105・・濃塩水の供給量を算出する手段、S106・・フィードバックによる電解運転。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から供給される所定流量の原水に所定濃度の濃塩水を混入した希釈塩水が被電解水として導入される電解槽と、該電解槽の電極間に印加した所定の電圧により生じる前記希釈塩水の電解電流を検出する電流検出手段とを備え、該電流検出手段により検出された前記希釈塩水の電解電流が予め設定した設定電流値になるように前記原水に混入される濃塩水の供給量をフィードバック制御により調整するようにした電解水生成装置において、電解運転の開始時に前記所定の電圧値、前記設定電流値、前記原水の供給流量及び前記濃塩水の濃度に基づいて前記原水に混入される濃塩水の供給量を算出する手段を設けて、前記算出された濃塩水の供給量を電解運転開始時の初期値として前記フィードバック制御がなされるようにしたことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
濃塩水を収容する塩水タンクと、該塩水タンクの塩水切れを検知する塩水切れ検知手段と、給水源から供給される所定流量の原水に前記塩水タンクから供給される所定濃度の濃塩水を混入した希釈塩水が被電解水として導入される電解槽と、該電解槽の電極間に印加した所定の電圧により生じる前記希釈塩水の電解電流を検出する電流検出手段と、前記検出された希釈塩水の電解電流が所定の設定電流値になるように前記原水に混入される濃塩水の供給量をフィードバック制御により調整する制御手段と、前記フィードバック制御により調整された前記濃塩水の供給量を記憶する記憶手段とを備えて、電解運転が開始されたとき前記原水に混入される濃塩水の供給量を前記記憶手段に記憶された濃塩水の供給量に調整するようにした電解水生成装置において、前記塩水切れ検知手段の検知により前記塩水タンクに所要の濃塩水が補充された直後に電解運転が開始されたとき、前記所定の電圧値、前記設定電流値、前記原水の供給流量及び前記濃塩水の濃度に基づいて前記原水に混入される濃塩水の供給量を算出する手段を設けて、前記算出された濃塩水の供給量を電解運転開始時の初期値として前記フィードバック制御がなされるようにしたことを特徴とする電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−207668(P2010−207668A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54184(P2009−54184)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】