説明

電解質および二次電池

【課題】優れたサイクル特性、保存特性および膨れ特性を得ることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】正極21および負極22と共に電解液を備え、正極21と負極22との間に設けられたセパレータ23に電解液が含浸されている。電解液の溶媒は、ハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる。このハロゲン化環状炭酸エステルは、1つ以上のフッ素基および1つ以上のフッ素化アルキル基を有すると共にカルボニル基を有する環状の化合物である。電解液の化学的安定性が向上するため、充放電時において電解液の分解反応が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化環状炭酸エステルを含む電解質およびそれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、電源として、電池、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
【0003】
中でも、充放電反応にリチウムイオンの吸蔵および放出を利用するリチウムイオン二次電池や、リチウム金属の析出および溶解を利用するリチウム金属二次電池などは、大いに期待されている。鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるからである。
【0004】
二次電池は、正極および負極と共に、電解質を備えている。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有しており、負極は、負極集電体上に負極活物質層を有している。電解質は、溶媒および電解質塩を含んでいる。
【0005】
充放電反応の媒介として機能する電解質は、二次電池の性能に大きな影響を及ぼすことから、その電解質の組成については、さまざまな検討がなされている。具体的には、サイクル特性などを向上させるために、溶媒として、トリフルオロプロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートあるいはジフルオロエチレンカーボネートなどのハロゲン化カーボネートが用いられている(例えば、特許文献1〜4参照。)。また、ハロゲン化アルキル基を有するカーボネートも用いられている(例えば、特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−297790号公報
【特許文献2】特開2005−190978号公報
【特許文献3】特開2007−019027号公報
【特許文献4】特開平07−240232号公報
【特許文献5】特開2006−210161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ポータブル電子機器は益々高性能化および多機能化しており、その消費電力は増大する傾向にあるため、二次電池の充放電は頻繁に繰り返され、そのサイクル特性および保存特性は低下しやすい状況にある。これに伴い、二次電池のサイクル特性および保存特性に関して、より一層の向上が望まれている。この場合には、二次電池を高頻度で安全に使用するために、その使用に伴う電池膨れを抑えることも重要である。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れたサイクル特性、保存特性および膨れ特性を得ることが可能な電解質およびそれを用いた二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電解質は、溶媒および電解質塩を含み、その溶媒が式(1)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルを含むものである。また、本発明の二次電池は、正極および負極と溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、その電解液が上記した組成を有するものである。
【0010】
【化1】

(XおよびYはオキソ基あるいはチオ基である。R1〜R4は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基であると共に少なくとも1つはハロゲン化アルキル基である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の電解質によれば、溶媒が式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる。このため、式(1)に該当しない他のハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる場合よりも、化学的安定性が向上する。したがって、本発明の電解質を用いた二次電池によれば、優れたサイクル特性、保存特性および膨れ特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電解質を備えた第1の二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】図2に示した負極の構成を模式的に表す断面図である。
【図4】図2に示した負極の他の構成を模式的に表す断面図である。
【図5】図2に示した負極の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。
【図6】図2に示した負極の他の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る電解質を備えた第3の二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図8】図7に示した巻回電極体のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】XPSによるSnCoC含有材料の分析結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.電解質
2.電解質を用いた電気化学デバイス(二次電池)
2−1.第1の二次電池(リチウムイオン二次電池:円筒型)
2−2.第2の二次電池(リチウム金属二次電池:円筒型)
2−3.第3の二次電池(リチウムイオン二次電池:ラミネートフィルム型)
【0014】
<1.電解質>
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば二次電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、溶媒に電解質塩が溶解されたものである。ただし、電解質は、溶媒および電解質塩の他に、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0015】
[溶媒]
溶媒は、式(1)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる。式(1)に該当しないハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる場合よりも、電解質の化学的安定性が向上するからである。
【0016】
【化2】

(XおよびYはオキソ基あるいはチオ基である。R1〜R4は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基であると共に少なくとも1つはハロゲン化アルキル基である。)
【0017】
式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステル(以下、単に「ハロゲン化環状炭酸エステル」という。)は、1つ以上のハロゲン基および1つ以上のハロゲン化アルキル基を有すると共にカルボニル基(−C(=O)−)を有する環状の化合物である。このハロゲン化環状炭酸エステルは、1種だけでもよいし、2種以上でもよい。なお、「ハロゲン化アルキル基」とは、アルキル基のうちの少なくとも一部の水素がハロゲンにより置換された基である。
【0018】
式(1)中のXおよびYは、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。また、R1〜R4のうち、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基が2つ以上存在する場合には、それらは同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、ハロゲン基およびハロゲン化アルキル基以外の基が2つ以上存在する場合においても、同様である。
【0019】
中でも、XおよびYは、同じ種類の基であることが好ましく、いずれもオキソ基であることがより好ましい。容易に入手できると共に、電解質の化学的安定性が高くなるからである。
【0020】
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素が好ましい。他のハロゲンよりも、電解質の化学的安定性が高くなるからである。このため、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基としては、それぞれフッ素基あるいはフッ素化アルキル基が好ましい。特に、フッ素化アルキル基としては、パーフルオロアルキル基がより好ましい。
【0021】
ハロゲン化環状炭酸エステルとしては、例えば、式(2)で表されるものが好ましい。容易に入手できると共に、電解質の化学的安定性が高くなるからである。このハロゲン化環状炭酸エステルは、XおよびYとしてオキソ基を有すると共にハロゲン化アルキル基としてトリフルオロメチル基を有する化合物である。
【0022】
【化3】

(R5〜R7は水素基、ハロゲン基あるいはアルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基である。)
【0023】
ハロゲン化環状炭酸エステルの一例としては、式(1−1)〜式(1−26)で表されるものが挙げられる。式(1−1)〜式(1−13)では、XおよびYがいずれもオキソ基であり、一方、式(1−14)〜式(1−26)では、XおよびYがいずれもチオ基である。なお、ここでは具体的に示していないが、XおよびYはオキソ基およびチオ基の組み合わせでもよい。この場合において、XおよびY以外の部分が左右非対称であるハロゲン化環状炭酸エステルでは、XおよびYのうちのどちらがオキソ基(あるいはチオ基)でもよい。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
なお、ハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。詳細には、式(1−1)を例に挙げれば、それには式(1−1A)および式(1−1B)で表されるシス異性体およびトランス異性体が含まれる。
【0027】
【化6】

【0028】
中でも、上記したように、XおよびYがオキソ基である式(1−1)〜式(1−13)に示したものが好ましく、式(1−1)あるいは式(1−2)に示したものがより好ましい。容易に入手できると共に、電解質の化学的安定性が高くなるからである。また、構造が比較的簡素であるため、優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0029】
ただし、ハロゲン化環状炭酸エステルは、式(1)に示した構造を有していれば、必ずしも式(1−1)〜式(1−26)に示したものに限られず、他のものでもよい。
【0030】
溶媒中におけるハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、おおよそ0.01重量%以上50重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。電解質の化学的安定性が十分に高くなるからである。なお、ハロゲン化環状炭酸エステルの含有量の適正範囲は、電解質が他の材料と一緒に電気化学デバイスに用いられた場合に、その他の材料の種類に応じて変化する場合がある。この他の材料の一例としては、電解質が二次電池に用いられた場合における負極活物質などが挙げられる。負極活物質の種類に応じたハロゲン化環状炭酸エステルの含有量の適正範囲については、後述する。
【0031】
なお、溶媒は、上記したハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいれば、他の材料を含んでいてもよい。このような他の材料は、例えば、以下で説明する有機溶媒などの非水溶媒(ハロゲン化環状炭酸エステルに該当するものを除く)のいずれか1種あるいは2種以上である。
【0032】
非水溶媒の一例としては、以下のものが挙げられる。炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタンあるいはテトラヒドロフランである。2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサンあるいは1,4−ジオキサンである。酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルあるいはトリメチル酢酸エチルである。アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノンあるいはN−メチルオキサゾリジノンである。N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルあるいはジメチルスルホキシドである。電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、優れた特性が得られるからである。この特性とは、例えば、電解質が二次電池に用いられた場合には、電池容量、サイクル特性および保存特性などである。
【0033】
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種が好ましい。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0034】
特に、溶媒は、式(3)〜式(5)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。電極反応時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応が抑制されるからである。この「不飽和炭素結合環状炭酸エステル」とは、不飽和結合を有する環状炭酸エステルである。溶媒中における不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましいが、それ以外の範囲でもよい。ただし、不飽和炭素結合環状炭酸エステルの種類は、式(3)〜式(5)に示した構造を有していれば、必ずしも下記で説明するものに限られず、他のものでもよい。
【0035】
【化7】

(R11およびR12は水素基あるいはアルキル基である。)
【0036】
【化8】

(R13〜R16は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
【0037】
【化9】

(R17はアルキレン基である。)
【0038】
式(3)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。この炭酸ビニレン系化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。炭酸ビニレン、炭酸メチルビニレンあるいは炭酸エチルビニレンである。4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オンあるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0039】
式(4)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。この炭酸ビニルエチレン系化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。炭酸ビニルエチレン、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R13〜R16としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
【0040】
式(5)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。この炭酸メチレンエチレン系化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンである。この炭酸メチレンエチレン系化合物としては、1つのメチレン基を有するもの(式(5)に示した化合物)の他、2つのメチレン基を有するものでもよい。
【0041】
なお、不飽和炭素結合環状炭酸エステルとしては、式(3)〜式(5)に示したものの他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などでもよい。
【0042】
また、溶媒は、式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび式(7)で表される他のハロゲン化環状炭酸エステル(以下、単に「他のハロゲン化環状炭酸エステル」という。)のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。電極反応時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応が抑制されるからである。この「ハロゲン化鎖状炭酸エステル」とは、ハロゲンを構成元素として含む鎖状炭酸エステルである。また、「他のハロゲン化環状炭酸エステル」とは、ハロゲンを構成元素として含む環状炭酸エステルであり、式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステルを除いたものである。なお、式(6)中のR21〜R26は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、式(7)中のR27〜R30についても、同様である。溶媒中におけるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび他のハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%以上50重量%以下であることが好ましいが、それ以外の範囲でもよい。ただし、ハロゲン化鎖状炭酸エステルあるいは他のハロゲン化環状炭酸エステルの種類は、式(6)あるいは式(7)に示した構造を有していれば、必ずしも下記で説明するものだけに限られず、他のものでもよい。
【0043】
【化10】

(R21〜R26は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【0044】
【化11】

(R27〜R30は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【0045】
ハロゲン化鎖状炭酸エステルあるいは他のハロゲン化環状炭酸エステルにおいて、ハロゲンの種類は特に限定されないが、中でも、フッ素、塩素あるいは臭素が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応がより抑制されるからである。
【0046】
ハロゲン化鎖状炭酸エステルの一例としては、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。また、他のハロゲン化環状炭酸エステルの一例としては、式(7−1)〜式(7−20)で表されるものが挙げられる。この他のハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、式(7−1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは式(7−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、後者がより好ましい。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンでは、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0047】
【化12】

【0048】
また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。このスルトンの一例としては、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。溶媒中におけるスルトンの含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下であることが好ましいが、それ以外の範囲でもよい。ただし、スルトンの種類は、必ずしも上記したものに限られず、他のものでもよい。
【0049】
さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。この酸無水物の一例としては、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物あるいはカルボン酸スルホン酸無水物などが挙げられる。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸あるいは無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸あるいは無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸の無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸あるいは無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下であることが好ましいが、それ以外の範囲でもよい。ただし、酸無水物の種類は、必ずしも上記したものに限られず、他のものでもよい。
【0050】
[電解質塩]
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類あるいは2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、軽金属塩以外の他の塩を含んでいてもよい。
【0051】
リチウム塩の一例としては、以下のものが挙げられる。六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムあるいは六フッ化ヒ酸リチウムである。テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 5 4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )あるいはテトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )である。六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)である。モノフルオロリン酸リチウム(LiPFO3 )あるいはジフルオロリン酸リチウム(LiPF2 2 )である。電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、優れた特性が得られるからである。ただし、電解質塩の種類は、必ずしも上記したものだけに限られず、他のものでもよい。
【0052】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
【0053】
特に、電解質塩は、式(8)〜式(10)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、式(8)のR31およびR33は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、式(9)中のR41〜R43および式(10)中のR51およびR52についても、同様である。ただし、電解質塩の種類は、式(8)〜式(10)に示した構造を有していれば、必ずしも下記で説明するものに限られず、他のものでもよい。
【0054】
【化13】

(X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウムである。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は−(O=)C−R32−C(=O)−、−(O=)C−C(R33)2 −あるいは−(O=)C−C(=O)−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
【0055】
【化14】

(X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は−(O=)C−(C(R41)2 b4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(R43)2 −、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
【0056】
【化15】

(X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−(O=)C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(R52)2 −、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
【0057】
なお、1族元素とは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。2族元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスである。
【0058】
式(8)に示した化合物の一例としては、式(8−1)〜式(8−6)で表されるものなどが挙げられる。式(9)に示した化合物の一例としては、式(9−1)〜式(9−8)で表されるものなどが挙げられる。式(10)に示した化合物の一例としては、式(10−1)で表されるものなどが挙げられる。
【0059】
【化16】

【0060】
【化17】

【0061】
【化18】

【0062】
また、電解質塩は、式(11)〜式(13)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、式(11)中のmおよびnは、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。このことは、式(13)中のp、qおよびrについても、同様である。ただし、電解質塩の種類は、式(11)〜式(13)に示した構造を有していれば、必ずしも下記で説明するものに限られず、他のものでもよい。
【0063】
LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1 SO2 ) …(11)
(mおよびnは1以上の整数である。)
【0064】
【化19】

(R61は炭素数が2〜4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
【0065】
LiC(Cp 2p+1SO2 )(Cq 2q+1SO2 )(Cr 2r+1SO2 ) …(13)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)
【0066】
式(11)に示した化合物は、鎖状のイミド化合物である。この化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )あるいはビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 5 SO2 2 )である。(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 5 SO2 ))である。(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 7 SO2 ))である。(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 9 SO2 ))である。
【0067】
式(12)に示した化合物は、環状のイミド化合物である。この化合物の一例としては、式(12−1)〜式(12−4)で表されるものなどが挙げられる。
【0068】
【化20】

【0069】
式(13)に示した化合物は、鎖状のメチド化合物である。この化合物の一例としては、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )などが挙げられる。
【0070】
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。ただし、電解質塩の含有量は、上記した範囲外でもよい。
【0071】
この電解質によれば、溶媒が式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる。このため、式(1)に該当しないハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる場合よりも、化学的安定性が向上する。このような他のハロゲン化環状炭酸エステルとしては、例えば、式(7−1)〜式(7−19)で表されるものなどが挙げられる。したがって、電極反応時において電解質の分解反応が抑制されるため、その電解質を用いた電気化学デバイスの性能向上に寄与することができる。
【0072】
特に、ハロゲン化環状炭酸エステルが式(2)に示したものであれば、より高い効果を得ることができる。また、溶媒が不飽和炭素結合環状炭酸エステル、ハロゲン化鎖状炭酸エステル、他のハロゲン化環状炭酸エステル、スルトンおよび酸無水物のうちの少なくとも1種を含んでいれば、より高い効果を得ることができる。さらに、電解質塩が六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウムおよび式(8)〜式(13)に示した化合物のうちの少なくとも1種を含んでいれば、より高い効果を得ることができる。
【0073】
<2.電解質を用いた電気化学デバイス(二次電池)>
次に、上記した電解質の使用例について説明する。ここで、電気化学デバイスの一例として二次電池を例に挙げると、上記した電解質は、以下のようにして用いられる。
【0074】
<2−1.第1の二次電池>
図1および図2は、第1の二次電池の断面構成を表しており、図2では、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大している。ここで説明する二次電池は、例えば、負極の容量が電極反応物質であるリチウムイオンの吸蔵および放出により表されるリチウムイオン二次電池である。
【0075】
[二次電池の全体構成]
この二次電池は、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回電極体20および一対の絶縁板12,13が収納されたものである。このような電池缶11を用いた電池構造は、円筒型と呼ばれている。
【0076】
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有していると共に、鉄、アルミニウムあるいはそれらの合金などにより構成されている。なお、電池缶11が鉄により構成される場合には、例えば、電池缶の11の表面にニッケルなどの鍍金が施されていてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を上下から挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
【0077】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)16がガスケット17を介してかしめられており、その電池缶11の内部は、密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15および熱感抵抗素子は、電池蓋14の内側に設けられている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大する(電流を制限する)ことにより、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面には、例えば、アスファルトが塗布されている。
【0078】
巻回電極体20は、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層および巻回されたものである。この巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されていてもよい。巻回電極体20では、アルミニウムなどにより構成された正極リード25が正極21に接続されていると共に、ニッケルなどにより構成された負極リード26が負極22に接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接などされて電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、電池缶11に溶接などされて電気的に接続されている。
【0079】
[正極]
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0080】
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
【0081】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、正極結着剤あるいは正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0082】
正極材料としては、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物、あるいはリチウムと遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 あるいはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素を表す。また、xおよびyの値は、充放電状態に応じて異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0083】
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、あるいは式(14)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などが挙げられる。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などが挙げられる。高い電池容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。
【0084】
LiNi1-x x 2 …(14)
(Mはコバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、スズ、マグネシウム、チタン、ストロンチウム、カルシウム、ジルコニウム、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、タンタル、タングステン、レニウム、イッテルビウム、銅、亜鉛、バリウム、ホウ素、クロム、ケイ素、ガリウム、リン、アンチモンおよびニオブのうちの少なくとも1種である。xは0.005<x<0.5である。)
【0085】
この他、正極材料としては、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物あるいは導電性高分子などが挙げられる。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどである。
【0086】
もちろん、正極材料は、上記以外のものでもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0087】
正極結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0088】
正極導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などでもよい。
【0089】
[負極]
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0090】
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。
【0091】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、負極結着剤あるいは負極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、負極結着剤および負極導電剤に関する詳細は、例えば、それぞれ正極結着剤および正極導電剤と同様である。この負極活物質層22Bでは、例えば、充放電時においてリチウム金属が意図せずに析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量が正極21の放電容量よりも大きくなっていることが好ましい。
【0092】
負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。リチウムイオンの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が得られると共に、負極導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0093】
また、負極材料としては、例えば、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料(金属系材料)が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体、合金あるいは化合物でもよいし、それらの2種以上でもよいし、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。なお、本発明における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0094】
上記した金属元素あるいは半金属元素は、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素であり、具体的には、以下の元素のうちの少なくとも1種である。マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズあるいは鉛(Pb)である。ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)である。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも一方が好ましい。リチウムイオンを吸蔵および放出する能力が優れているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0095】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも一方を含む材料は、例えば、ケイ素あるいはスズの単体、合金あるいは化合物でもよいし、それらの2種以上でもよいし、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。
【0096】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の構成元素として、以下の元素のうちの少なくとも1種を含むものなどが挙げられる。スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンあるいはクロムである。ケイ素の化合物としては、例えば、ケイ素以外の構成元素として、酸素あるいは炭素を含むものが挙げられる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金について説明した元素のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。
【0097】
ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、以下のものなどが挙げられる。SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 SiあるいはFeSi2 である。MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)あるいはLiSiOである。
【0098】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の構成元素として、以下の元素のうちの少なくとも1種を含むものなどが挙げられる。ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンあるいはクロムである。スズの化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を含むものなどが挙げられる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金について説明した元素のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。スズの合金あるいは化合物の一例としては、SnSiO3 、LiSnOあるいはMg2 Snなどが挙げられる。
【0099】
特に、ケイ素を含む材料としては、例えば、ケイ素の単体が好ましい。高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。なお、「単体」とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)であり、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
【0100】
また、スズを含む材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を含むものが好ましい。第2の構成元素は、例えば、以下の元素のうちの少なくとも1種である。コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムあるいはジルコニウムである。ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル、タングステン(W)、ビスマスあるいはケイ素である。第3の構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンのうちの少なくとも1種である。第2および第3の構成元素を有することにより、高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
【0101】
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を含む材料(SnCoC含有材料)が好ましい。このSnCoC含有材料の組成としては、例えば、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%以上70質量%以下である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0102】
このSnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質であることが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、その反応相の存在により優れた特性が得られるようになっている。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用いると共に、挿引速度を1°/minとした場合において、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムイオンがより円滑に吸蔵および放出されると共に、電解質などとの反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質の相に加えて、各構成元素の単体あるいは一部を含む相を含んでいる場合もある。
【0103】
X線回折により得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば、容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性あるいは非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。このような反応相は、上記した構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化あるいは非晶質化しているものと考えられる。
【0104】
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態については、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)により確認できる。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線あるいはMg−Kα線などが用いられる。炭素の少なくとも一部が金属元素あるいは半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。なお、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているため、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形が表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られるため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析して、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0105】
なお、SnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。このような他の構成元素としては、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムおよびビスマスのうちの少なくとも1種が挙げられる。
【0106】
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成は、以下の通りである。炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下であり、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下であり、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))は30質量%以上70質量%以下である。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成は、以下の通りである。炭素の含有量は11.9質量%以上29.7質量%以下である。また、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))は26.4質量%以上48.5質量%以下であり、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))は9.9質量%以上79.5質量%以下である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の物性等(半値幅など)は、上記したSnCoC含有材料と同様である。
【0107】
また、他の負極材料としては、例えば、金属酸化物あるいは高分子化合物が挙げられる。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどである。
【0108】
もちろん、負極材料は、上記以外のものでもよい。また、一連の負極活物質は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0109】
負極活物質層22Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法あるいは焼成法(焼結法)、またはそれらの2種以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。気相法の一例としては、物理堆積法あるいは化学堆積法などが挙げられる。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(chemical vapor deposition :CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などである。液相法の一例としては、電解鍍金法あるいは無電解鍍金法などが挙げられる。溶射法とは、負極活物質を溶融状態あるいは半溶融状態で吹き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法と同様の手順で塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法については、公知の手法を用いることができる。一例としては、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法などが挙げられる。
【0110】
負極活物質は、例えば、複数の粒子状である。すなわち、負極活物質層22Bは、複数の粒子状の負極活物質(以下、単に「負極活物質粒子」という。)を含んでおり、その負極活物質粒子は、例えば、気相法などにより形成されている。ただし、負極活物質粒子は、気相法以外の方法により形成されていてもよい。
【0111】
負極活物質粒子が気相法などの堆積法により形成される場合には、その負極活物質粒子は、単一の堆積工程を経て形成された単層構造を有していてもよいし、複数回の堆積工程を経て形成された多層構造を有していてもよい。ただし、堆積時に高熱を伴う蒸着法などを用いる場合には、負極活物質粒子は多層構造を有していることが好ましい。負極材料の堆積工程が複数回に分割して行われる(負極材料が順次薄く形成して堆積される)ため、その堆積工程を1回で行う場合よりも、負極集電体22Aが高熱に晒される時間が短くなるからである。これにより、負極集電体22Aが熱的ダメージを受けにくくなる。
【0112】
この負極活物質粒子は、例えば、負極集電体22Aの表面から負極活物質層22Bの厚さ方向に成長しており、その根元において負極集電体22Aの表面に連結されていることが好ましい。充放電時において負極活物質層22Bの膨張および収縮が抑制されるからである。また、負極活物質粒子は、気相法、液相法あるいは焼成法などにより形成されており、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。この場合には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質粒子に拡散していてもよいし、負極活物質粒子の構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、両者の構成元素が拡散しあっていてもよい。
【0113】
特に、負極活物質層22Bは、必要に応じて、負極活物質粒子の表面(酸化物含有膜を設けないとしたならば電解質と接することとなる領域)を被覆する酸化物含有膜を含んでいることが好ましい。酸化物含有膜が電解質に対する保護膜として機能するため、充放電時において電解質の分解反応が抑制されるからである。これにより、サイクル特性および保存特性などが向上する。なお、酸化物含有膜は、負極活物質粒子の表面の全部を被覆していてもよいし、一部だけを被覆していてもよいが、中でも、全部を被覆していることが好ましい。電解質の分解反応がより抑制されるからである。
【0114】
この酸化物含有膜は、例えば、ケイ素の酸化物、ゲルマニウムの酸化物およびスズの酸化物のうちの少なくとも1種を含んでおり、中でも、ケイ素の酸化物を含んでいることが好ましい。負極活物質粒子の表面を全体に渡って容易に被覆しやすいと共に、優れた保護作用が得られるからである。もちろん、酸化物含有膜は、上記以外の他の酸化物を含んでいてもよい。
【0115】
酸化物含有膜は、例えば、気相法あるいは液相法などにより形成されており、中でも、液相法により形成されていることが好ましい。負極活物質粒子の表面を広い範囲に渡って容易に被覆しやすいからである。液相法としては、液相析出法、ゾルゲル法、塗布法あるいはディップコーティング法などが挙げられ、中でも、液相析出法、ゾルゲル法あるいはディップコーティング法が好ましく、液相析出法がより好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、酸化物含有膜は、上記した一連の形成方法のうち、単独の形成方法により形成されていてもよいし、2種以上の形成方法により形成されていてもよい。
【0116】
また、負極活物質層22Bは、必要に応じて、負極活物質層22Bの内部の隙間に、リチウムと合金化しない金属元素を構成元素として含む金属材料(以下、単に「金属材料」という。)を含んでいることが好ましい。金属材料を介して複数の負極活物質粒子が結着されると共に、負極活物質層22Bの膨張および収縮が抑制されるからである。これにより、サイクル特性および保存特性などが向上する。なお、「負極活物質層22Bの内部の隙間」の詳細については、後述する(図5および図6参照)。
【0117】
上記した金属元素としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛および銅からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられ、中でも、コバルトが好ましい。負極活物質層22B内の隙間に金属材料が容易に入り込みやすいと共に、優れた結着作用が得られるからである。もちろん、金属元素は、上記以外の他の金属元素でもよい。ただし、ここで言う「金属材料」とは、単体に限らず、合金あるいは金属化合物まで含む広い概念である。
【0118】
金属材料は、例えば、気相法あるいは液相法などにより形成されており、中でも、液相法により形成されていることが好ましい。負極活物質層22B内の隙間に金属材料が入り込みやすいからである。液相法としては、例えば、電解鍍金法あるいは無電解鍍金法などが挙げられ、中でも、電解鍍金法が好ましい。上記した隙間に金属材料がより入り込みやすいと共に、その形成時間が短くて済むからである。この金属材料は、上記した一連の形成方法のうち、単独の形成方法により形成されていてもよいし、2種以上の形成方法により形成されていてもよい。
【0119】
なお、負極活物質層22Bは、酸化物含有膜あるいは金属材料のいずれか一方だけを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。ただし、サイクル特性などをより向上させるためには、双方を含んでいることが好ましい。いずれか一方だけを含む場合において、サイクル特性などをより向上させるためには、酸化物含有膜を含んでいることが好ましい。酸化物含有膜および金属材料の双方を含む場合には、どちらを先に形成してもよいが、サイクル特性などをより向上させるためには、酸化物含有膜を先に形成することが好ましい。
【0120】
ここで、図3〜図6を参照して、負極22の詳細な構成について説明する。
【0121】
まず、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に酸化物含有膜を含む場合について説明する。図3および図4は、負極22の断面構造を模式的に表している。ここでは、負極活物質粒子が単層構造を有している場合を示している。
【0122】
図3に示した場合には、例えば、蒸着法などの気相法により負極集電体22A上に負極材料が堆積されると、その負極集電体22A上に複数の負極活物質粒子221が形成される。この場合には、負極集電体22Aの表面が粗面化され、その表面に複数の突起部(例えば電解処理により形成された微粒子)が存在すると、負極活物質粒子221が上記した突起部ごとに厚さ方向に成長する。このため、複数の負極活物質粒子221は、負極集電体22A上において配列されると共に、その根元において負極集電体22Aの表面に連結される。こののち、例えば、液相析出法などの液相法により負極活物質粒子221の表面に酸化物含有膜222が形成されると、その酸化物含有膜222は、負極活物質粒子221の表面をほぼ全体に渡って被覆する。この場合には、負極活物質粒子221の頭頂部から根元に至る広い範囲が被覆される。このような広範囲の被覆状態は、酸化物含有膜222が液相法により形成された場合に得られる特徴である。すなわち、液相法を用いて酸化物含有膜222を形成すると、被覆作用が負極活物質粒子221の頭頂部だけでなく根元まで広く及ぶため、その根元まで酸化物含有膜222により被覆される。
【0123】
これに対して、図4に示した場合には、例えば、気相法により複数の負極活物質粒子221が形成されたのち、同様に気相法により酸化物含有膜223が形成されると、その酸化物含有膜223は、負極活物質粒子221の頭頂部だけを被覆する。このような狭範囲の被覆状態は、酸化物含有膜223が気相法により形成された場合に得られる特徴である。すなわち、気相法を用いて酸化物含有膜223を形成すると、被覆作用が負極活物質粒子221の頭頂部に及ぶものの根元まで及ばないため、その根元までは酸化物含有膜223により被覆されない。
【0124】
なお、図3では、気相法により負極活物質層22Bが形成される場合について説明したが、塗布法あるいは焼結法などの他の形成方法により負極活物質層22Bが形成される場合においても、同様である。これらの場合においても、複数の負極活物質粒子の表面をほぼ全体に渡って被覆するように酸化物含有膜222が形成される。
【0125】
次に、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に金属材料を含む場合について説明する。図5および図6は、負極22の断面構造を拡大して表している。図5および図6において、(A)は走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)写真(二次電子像)、(B)は(A)に示したSEM像の模式絵である。ここでは、複数の負極活物質粒子221が多層構造を有している場合を示している。
【0126】
図5に示したように、負極活物質粒子221が多層構造を有する場合には、その配列構造、多層構造および表面構造に起因して、負極活物質層22Bの内部に複数の隙間224が生じている。この隙間224は、主に、発生原因に応じて分類された2種類の隙間224A,224Bを含んでいる。隙間224Aは、隣り合う負極活物質粒子221間に生じたものであり、隙間224Bは、負極活物質粒子221の各階層間に生じたものである。
【0127】
なお、負極活物質粒子221の露出面(最表面)には、空隙225が生じる場合がある。この空隙225は、負極活物質粒子221の表面にひげ状の微細な突起部(図示せず)が形成されるため、その突起部間に生じるものである。この空隙225は、負極活物質粒子221の露出面において、全体に渡って生じる場合もあれば、一部だけに生じる場合もある。ただし、上記したひげ状の突起部は、負極活物質粒子221の形成時ごとにその表面に生じるため、空隙225は、負極活物質粒子221の露出面だけでなく、各階層間にも生じる場合がある。
【0128】
図6に示したように、負極活物質層22Bは、隙間224A,224Bに、金属材料226を有している。この場合には、隙間224A,224Bのうちのいずれか一方だけに金属材料226を有していてもよいが、双方に金属材料226を有していることが好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0129】
この金属材料226は、隣り合う負極活物質粒子221間の隙間224Aに入り込んでいる。詳細には、気相法などにより負極活物質粒子221が形成される場合には、上記したように、負極集電体22Aの表面に存在する突起部ごとに負極活物質粒子221が成長するため、隣り合う負極活物質粒子221間に隙間224Aが生じる。この隙間224Aは、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、隙間224Aに金属材料226が埋め込まれている。この場合には、隙間224Aの一部でも埋められていればよいが、その充填量は多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。金属材料226の充填量は、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0130】
また、金属材料226は、負極活物質粒子221内の隙間224Bに入り込んでいる。詳細には、負極活物質粒子221が多層構造を有する場合には、各階層間に隙間224Bが生じる。この隙間224Bは、隙間224Aと同様に、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、隙間224Bに金属材料226が埋め込まれている。この場合には、隙間224Bの一部でも充填されていればよいが、その充填量が多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。
【0131】
なお、負極活物質層22Bは、最上層の負極活物質粒子221の露出面に生じるひげ状の微細な突起部(図示せず)が二次電池の性能に悪影響を及ぼすことを抑えるために、空隙225に金属材料226を有していてもよい。詳細には、気相法などにより負極活物質粒子221が形成される場合には、その表面にひげ状の微細な突起部が生じるため、その突起部間に空隙225が生じる。この空隙225は、負極活物質粒子221の表面積の増加を招き、その表面に形成される不可逆性の被膜の量も増加させるため、充放電反応の進行度を低下させる原因となる可能性がある。そこで、充放電反応の進行度の低下を抑えるために、空隙225に金属材料226が埋め込まれている。この場合には、空隙225の一部でも埋め込まれていればよいが、その埋め込み量が多いほど好ましい。充放電反応の進行度の低下がより抑えられるからである。図6において、最上層の負極活物質粒子221の表面に金属材料226が点在していることは、その点在箇所に上記した微細な突起部が存在していること表している。もちろん、金属材料226は、必ずしも負極活物質粒子221の表面に点在していなければならないわけではなく、その表面全体を被覆していてもよい。
【0132】
特に、隙間224Bに入り込んだ金属材料226は、各階層における空隙225を埋め込む機能も果たしている。詳細には、負極材料が複数回に渡って堆積される場合には、その堆積時ごとに負極活物質粒子221の表面に微細な突起部が生じる。このため、金属材料226は、各階層における隙間224Bに埋め込まれているだけでなく、各階層における空隙225にも埋め込まれている。
【0133】
なお、図5および図6では、負極活物質粒子221が多層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間224A,224Bの双方が存在している場合について説明した。このため、負極活物質層22Bは、隙間224A,224Bに金属材料226を有している。これに対して、負極活物質粒子221が単層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間224Aだけが存在する場合には、負極活物質層22Bが隙間224Aだけに金属材料226を有することとなる。もちろん、空隙225は両者の場合において生じるため、いずれの場合においても空隙225に金属材料226を有することとなる。
【0134】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23には、液状の電解質(電解液)として、上記した電解質が含浸されている。セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などにより構成されており、それらの2種以上の多孔質膜が積層されたものでもよい。
【0135】
[電解液]
電解液の組成は、上記した電解質について既に説明した通りであり、その溶媒は、ハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる。なお、溶媒中におけるハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されず、負極活物質の種類などの条件に応じて任意に設定可能である。一例を挙げると、負極22が負極活物質として炭素材料を含む場合には、溶媒中におけるハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましい。また、負極22が負極活物質としてケイ素およびスズのうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料を含む場合には、溶媒中におけるハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は0.01重量%以上50重量%以下であることが好ましい。充放電時において電解液の分解反応が十分に抑制されるからである。
【0136】
[二次電池の動作]
この二次電池では、充電時において、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0137】
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0138】
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成する。最後に、必要に応じて加熱しながら、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、複数回に渡って圧縮成型を繰り返してもよい。
【0139】
次に、上記した正極21と同様の手順により、負極22を作製する。この場合には、負極活物質と、必要に応じて負極結着剤および負極導電剤などとを混合した負極合剤を有機溶剤に分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。こののち、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して負極活物質層22Bを形成したのち、その負極活物質層22Bを圧縮成型する。
【0140】
なお、正極21とは異なる手順により、負極22を作製してもよい。この場合には、最初に、蒸着法などの気相法を用いて負極集電体22Aの両面に負極材料を堆積させて、複数の負極活物質粒子を形成する。こののち、必要に応じて、液相析出法などの液相法を用いて酸化物含有膜を形成し、あるいは電解鍍金法などの液相法を用いて金属材料を形成し、または双方を形成して、負極活物質層22Bを形成する。
【0141】
最後に、正極21および負極22を用いて二次電池を組み立てる。最初に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などして取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などして取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層および巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、一対の絶縁板12,13で挟みながら、巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接などして取り付けると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接などして取り付ける。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入して、セパレータ23に含浸させる。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0142】
この第1の二次電池によれば、負極22の容量がリチウムイオンの吸蔵および放出により表される場合において、上記した電解質(電解液)を備えているので、充放電時において電解液の分解反応が抑制される。したがって、優れたサイクル特性、保存特性および膨れ特性を得ることができる。
【0143】
特に、負極22の負極活物質として高容量化に有利な金属系材料(ケイ素の単体あるいはSnCoC含有材料など)を用いた場合においてサイクル特性が向上するため、炭素材料などの他の負極材料を用いた場合よりも高い効果を得ることができる。
【0144】
この第2の二次電池に関する他の効果は、上記した電解質と同様である。
【0145】
<2−2.第2の二次電池>
第2の二次電池は、負極の容量がリチウム金属の析出および溶解により表されるリチウム金属二次電池である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により構成されていることを除き、第1の二次電池と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
【0146】
この二次電池は、負極活物質としてリチウム金属を用いており、それにより高いエネルギー密度を得ることができるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に存在するようにしてもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用して、負極集電体22Aを省略してもよい。
【0147】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。一方、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0148】
この第2の二次電池によれば、負極22の容量がリチウム金属の析出および溶解により表される場合において、上記した電解質(電解液)を備えている。このため、第1の二次電池と同様の作用により、優れたサイクル特性、保存特性および膨れ特性を得ることができる。この二次電池に関する他の効果は、第1の二次電池と同様である。
【0149】
<2−3.第3の二次電池>
図7は、第3の二次電池の分解斜視構成を表しており、図8は、図7に示した巻回電極体30のVIII−VIII線に沿った断面を拡大して示している。
【0150】
この二次電池は、第1の二次電池と同様にリチウムイオン二次電池であり、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このような外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
【0151】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。ただし、巻回電極体30に対する正極リード31および負極リード32の設置位置や、それらの導出方向などは、特に限定されない。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどにより構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。これらの材料は、例えば、薄板状あるいは網目状になっている。
【0152】
外装部材40は、例えば、融着層、金属層および表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。この場合には、例えば、融着層が巻回電極体30と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外縁部同士が融着、あるいは接着剤などにより貼り合わされている。融着層は、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどの高分子フィルムである。金属層は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔である。表面保護層は、例えば、ナイロンあるいはポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムである。
【0153】
中でも、外装部材40としては、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔およびナイロンフィルムがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムが好ましい。ただし、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムでもよい。
【0154】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0155】
巻回電極体30は、セパレータ35および電解質層36を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37により保護されている。正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。正極集電体33Aおよび正極活物質層33Bの構成は、それぞれ第1の二次電池における正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bと同様である。負極34は、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、それぞれ第1の二次電池における負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様である。
【0156】
なお、セパレータ35の構成は、第1の二次電池におけるセパレータ23の構成と同様である。
【0157】
電解質層36は、電解液が高分子化合物により保持されたものであり、必要に応じて、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。この電解質層36は、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に電解液の漏液が防止されるので好ましい。
【0158】
高分子化合物としては、例えば、以下の高分子材料うちの少なくとも1種が挙げられる。ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサンあるいはポリフッ化ビニルである。ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートである。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体である。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、あるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0159】
電解液の組成は、第1の二次電池における電解液の組成と同様である。ただし、ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
【0160】
なお、電解液が高分子化合物により保持されたゲル状の電解質層36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
【0161】
この二次電池では、充電時において、例えば、正極33からリチウムイオンが放出され、電解質層36を介して負極34に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極34からリチウムイオンが放出され、電解質層36を介して正極53に吸蔵される。
【0162】
このゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
【0163】
第1の製造方法では、最初に、第1の二次電池における正極21および負極22と同様の手順により、正極33および負極34を作製する。具体的には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、電解液、高分子化合物および溶剤を含む前駆溶液を調製して正極33および負極34に塗布したのち、その溶剤を揮発させてゲル状の電解質層36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を溶接などして取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を溶接などして取り付ける。続いて、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層および巻回したのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30を作製する。最後に、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させて、巻回電極体30を封入する。この際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図7および図8に示した二次電池が完成する。
【0164】
第2の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とし、ゲル状の電解質層36を形成する。これにより、二次電池が完成する。
【0165】
第3の製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体、あるいは多元共重合体など)が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質層36が形成されるため、二次電池が完成する。
【0166】
この第3の製造方法では、第1の製造方法よりも電池膨れが抑制される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法よりも高分子化合物の原料であるモノマーあるいは溶媒などが電解質層36中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質層36との間において十分な密着性が得られる。
【0167】
この第3の二次電池によれば、負極34の容量がリチウムイオンの吸蔵および放出により表される場合において、電解質層36が上記した電解質(電解液)を含んでいる。したがって、第1の二次電池と同様の作用により、優れたサイクル特性、保存特性および膨れ特性を得ることができる。この二次電池に関する他の効果は、第1の二次電池と同様である。なお、第3の二次電池は、第1の二次電池と同様の構成を有している場合に限られず、第2の二次電池と同様の構成を有していてもよい。
【実施例】
【0168】
本発明の具体的な実施例について、詳細に説明する。
【0169】
(実験例1−1〜1−14)
以下の手順により、図7および図8に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0170】
まず、正極33を作製した。最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中で900℃×5時間焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物91質量部と、正極導電剤としてグラファイト6質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して、正極合剤とした。続いて、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体33Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、正極活物質層33Bを形成した。この正極集電体33Aとしては、帯状のアルミニウム箔(厚さ=20μm)を用いた。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層33Bを圧縮成型した。
【0171】
次に、負極34を作製した。最初に、負極活物質として人造黒鉛90質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体34Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、負極活物質層34Bを形成した。この負極集電体34Aとしては、帯状の電解銅箔(厚さ=15μm)を用いた。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層34Bを圧縮成型した。
【0172】
次に、液状の電解質である電解液を調製した。最初に、溶媒として炭酸エチレン(EC)および炭酸ジエチル(DEC)と、他の溶媒としてハロゲン化環状炭酸エステルとを混合した。ECおよびDECの組成(EC:DEC)は、重量比で50:50とした。また、ハロゲン化環状炭酸エステルの種類および含有量は、表1に示した通りである。こののち、溶媒に電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を溶解させた。電解質塩の含有量は、溶媒に対して1mol/kgとした。
【0173】
最後に、正極33および負極34と共に電解液を用いて二次電池を組み立てた。最初に、正極集電体33Aの一端にアルミニウム製の正極リード31を溶接すると共に、負極集電体34Aの一端にニッケル製の負極リード32を溶接した。続いて、正極33と、セパレータ35と、負極34と、セパレータ35とをこの順に積層してから長手方向に巻回させたのち、粘着テープからなる保護テープ37で巻き終わり部分を固定して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成した。このセパレータ35としては、多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムにより多孔性ポリエチレンを主成分とするフィルムが挟まれた3層構造体(厚さ=23μm)を用いた。続いて、外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺を除く外縁部同士を熱融着して、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納した。この外装部材40としては、外側から、ナイロンフィルム(厚さ=30μm)と、アルミニウム箔(厚さ=40μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ=30μm)とが積層された3層構造のラミネートフィルム(総厚=100μm)を用いた。続いて、外装部材40の開口部から電解液を注入してセパレータ35に含浸させて、巻回電極体30を作製した。最後に、真空雰囲気中で外装部材40の開口部を熱融着して封止することにより、ラミネートフィルム型の二次電池が完成した。この二次電池を作製する場合には、正極活物質層33Bの厚さを調節して、満充電時において負極34にリチウム金属が析出しないようにした。
【0174】
(実験例1−15〜1−18)
表1に示したように、他の溶媒の有無および種類を変更したことを除き、実験例1−4と同様の手順を経た。この場合には、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いず、あるいはハロゲン化環状炭酸エステルの代わりに下記の他のハロゲン化環状炭酸エステルを用いた。4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)あるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(FMEC)である。なお、FEC、DFECあるいはFMECは、それぞれ式(7−1)、式(7−3)あるいは式(7−9)で表されるものである。
【0175】
これらの実験例1−1〜1−18の二次電池についてサイクル特性および保存特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
【0176】
サイクル特性を調べる際には、最初に、23℃の雰囲気中で2サイクル充放電させて、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、同雰囲気中でサイクル数の合計が300サイクルとなるまで繰り返し充放電させて、300サイクル目の放電容量を測定した。最後に、サイクル放電容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充電時には、0.2Cの電流で上限電圧4.2Vまで定電流定電圧充電した。放電時には、0.2Cの電流で終止電圧2.7Vまで定電流放電した。この「0.2C」とは、理論容量を5時間で放電しきる電流値である。
【0177】
保存特性を調べる際には、最初に、23℃の雰囲気中で2サイクル充放電させて、保存前の放電容量を測定した。続いて、再度充電させた状態で80℃の恒温槽中に10日間保保存したのち、23℃の雰囲気中で放電させて、保存後の放電容量を測定した。最後に、保存放電容量維持率(%)=(保存後の放電容量/保存前の放電容量)×100を算出した。充放電の条件は、サイクル特性を調べた場合と同様である。
【0178】
なお、上記したサイクル特性および保存特性を調べる際の手順および条件は、以降においても、同様である。
【0179】
【表1】

【0180】
負極活物質として炭素材料(人造黒鉛)を用いた二次電池では、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いると、他のハロゲン化環状炭酸エステルを用いた場合と比較して、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率が同等以上になった。この場合には、ハロゲン化環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%以上10重量%以下であれば、より良好な結果が得られた。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質として人造黒鉛を用いた場合において、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステルを含むことにより、優れたサイクル特性および保存特性が得られる。
【0181】
(実験例2−1〜2−13)
表2に示したように、電解液の組成を変更したことを除き、実験例1−4,1−15と同様の手順を経た。この場合には、溶媒として、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)あるいは炭酸プロピレン(PC)を用いた。炭酸ビニレン(VC)、炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)、FECあるいはDFECを用いた。プロペンスルトン(PRS)、無水スルホ安息香酸(SBAH)あるいは無水スルホプロピオン酸(SPAH)を用いた。また、電解質塩として、ジフルオロリン酸リチウム(LiPF2 2 )を用いた。この場合には、EC、PCおよびDECの組成(EC:PC:DEC)を重量比で10:20:70とした。溶媒中におけるVC等の含有量を2重量%とした。溶媒中におけるLiPF2 2 の含有量を0.01重量%とした。これらの実験例2−1〜2−13の二次電池についてサイクル特性および保存特性を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
【0182】
【表2】

【0183】
電解液の組成を変更した場合においても、表1と同様の結果が得られた。特に、VC等を加えると共にLiPF2 2 を加えた場合には、それらを加えなかった場合と比較して、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率が同等以上になった。これらのことから、負極活物質として人造黒鉛を用いた本発明の二次電池では、電解液の組成を変更しても、優れたサイクル特性および保存特性が得られる。特に、溶媒として不飽和炭素結合環状炭酸エステル、ハロゲン化鎖状炭酸エステル、他のハロゲン化環状炭酸エステル、スルトンあるいは酸無水物を用いれば、両特性がより向上する。
【0184】
(実験例3−1〜3−3)
表3に示したように、電解質塩の種類を変更したことを除き、実験例1−4と同様の手順を経た。この場合には、電解質塩として、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、式(8−6)に示した化合物、あるいはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )(LiTFSI)を用いた。また、LiPF6 の含有量を溶媒に対して0.9mol/kgとし、LiBF4 等の含有量を溶媒に対して0.1mol/kgとした。これらの実験例3−1〜3−3の二次電池についてサイクル特性および保存特性を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
【0185】
【表3】

【0186】
電解質塩の種類を変更した場合においても、表1と同様の結果が得られた。これらのことから、負極活物質として人造黒鉛を用いた本発明の二次電池では、電解質塩の種類を変更しても、優れたサイクル特性および保存特性が得られる。
【0187】
(実験例4−1〜4−12)
表4に示したように、電解液の組成を変更したことを除き、実験例1−5,2−1,2−3,2−4,2−9〜2−11,1−15〜1−18と同様の手順を経た。この場合には、溶媒中における他の溶媒の含有量を5重量%に変更した。また、酸無水物として新たに無水プロパンジスルホン酸(PSAH)を用いた。さらに、電解質塩としてLiBF4 を用いると共に、LiPF6 の含有量を溶媒に対して0.9mol/kg、LiBF4 の含有量を溶媒に対して0.1mol/kgとした。これらの実験例4−1〜4−12の二次電池について膨れ特性を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
【0188】
膨れ特性を調べる際には、保存特性を調べる際に、恒温槽中における保存の前後で二次電池の厚さを測定して、その厚さの差を膨れ(mm)とした。なお、上記した膨れ特性を調べる際の手順および条件は、以降においても、同様である。
【0189】
【表4】

【0190】
負極活物質として人造黒鉛を用いた二次電池では、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いると、他のハロゲン化環状炭酸エステルを用いた場合と比較して、膨れが同等以下になった。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質として人造黒鉛を用いた場合において、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステルを含むことにより、優れた膨れ特性が得られる。
【0191】
ここで、表1〜表4の結果から、以下の傾向が導き出される。
【0192】
まず、サイクル特性および保存特性に着目すると、式(1−1B)等あるいはFEC,DFECを用いた場合には、それらを全く用いなかった場合と比較して、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率が高くなる。この場合には、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率は、FEC、式(1−1B)等およびDFECの順に高くなる。この結果は、サイクル特性および保存特性を向上させるためには、FECよりも式(1−1B)が有利であり、さらに式(1−1B)等よりもDFECが有利であることを表している。
【0193】
一方、膨れ特性に着目すると、式(1−1B)等あるいはFEC,DFECを用いた場合には、それらを全く用いなかった場合と比較して、膨れが大きくなる。この場合には、膨れは、FEC、式(1−1B)等およびDFECの順に大きくなる。この結果は、膨れ特性を向上させるためには、DFECよりも式(1−1B)が有利であり、さらに式(1−1B)等よりもFECが有利であることを表している。
【0194】
なお、FMECを用いると、式(1−1B)等あるいはFEC,DFECを全く用いなかった場合と比較して、保存放電容量維持率および膨れは同等に維持されるが、サイクル放電容量維持率は低くなる。この結果は、FMECは保存特性および膨れ特性を維持させるという点では有利であるが、二次電池の最重要特性であるサイクル特性を向上させるという点では根本的に不利であることを表している。
【0195】
これらのことから、式(1−1B)等を用いると、FECあるいはDFECを用いた場合と比較して、サイクル特性および保存特性の双方が良好になる。すなわち、FECあるいはDFECを用いると、いずれか一方の特性が著しく良好になると他方の特性が著しく低下してしまうが、式(1−1B)等を用いると、両特性が良好となるように両立される。しかも、式(1−1B)等を用いると、FMECを用いた場合と比較して、FECあるいはDFECを用いた場合と同程度まで保存特性および膨れ特性が大幅に低下することを抑制しつつ、サイクル特性が向上する。したがって、本発明では、負極活物質として炭素材料(人造黒鉛)を用いた場合において、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステル(式(1−1B)等)を含むことにより、サイクル特性、保存特性および膨れ特性の全てが良好になる。
【0196】
(実験例5−1〜5−19)
負極活物質としてケイ素を用いて負極34を作製すると共に、表5に示したようにハロゲン化環状炭酸エステルの含有量を変更したことを除き、実験例1−1〜1−18と同様の手順を経た。負極34を作製する場合には、蒸着法(電子ビーム蒸着法)を用いて負極集電体34Aの表面にケイ素を堆積させて、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層34Bを形成した。この場合には、10回の堆積工程を繰り返して、負極活物質層22Bの総厚を6μmとした。これらの実験例5−1〜5−19の二次電池についてサイクル特性および保存特性を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
【0197】
【表5】

【0198】
負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いた二次電池では、表1と同等の結果が得られた。すなわち、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いると、他のハロゲン化環状炭酸エステルを用いた場合と比較して、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率が同等以上になった。この場合には、ハロゲン化環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%以上50重量%以下であれば、より良好な結果が得られた。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質としてケイ素を用いた場合において、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステルを含むことにより、優れたサイクル特性および保存特性が得られる。
【0199】
(実験例6−1〜6−13)
表6に示したように、実験例5−1〜5−19と同様に負極活物質としてケイ素を用いたことを除き、実験例2−1〜2−13と同様の手順を経た。これらの実験例6−1〜6−13の二次電池についてサイクル特性および保存特性を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
【0200】
【表6】

【0201】
電解液の組成を変更した場合においても、表5と同様の結果が得られた。これらのことから、負極活物質としてケイ素を用いた本発明の二次電池では、溶媒の組成を変更しても、優れたサイクル特性および保存特性が得られる。
【0202】
(実験例7−1〜7−3)
表7に示したように、実験例5−1〜5−19と同様に負極活物質としてケイ素を用いたことを除き、実験例3−1〜3−3と同様の手順を経た。これらの実験例7−1〜7−3の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表7に示した結果が得られた。
【0203】
【表7】

【0204】
電解質塩の種類を変更した場合においても、表3と同様の結果が得られた。これらのことから、負極活物質としてケイ素を用いた本発明の二次電池では、電解質塩の種類を変更しても、優れたサイクル特性および保存特性が得られる。
【0205】
(実験例8−1〜8−12)
表8に示したように、実験例5−1〜5−19と同様に負極活物質としてケイ素を用いたことを除き、実験例4−1〜4−12と同様の手順を経た。これらの実験例8−1〜8−12の二次電池について膨れ特性を調べたところ、表8に示した結果が得られた。
【0206】
【表8】

【0207】
負極活物質としてケイ素を用いた場合においても、表4と同様の結果が得られた。すなわち、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いると、他のハロゲン化環状炭酸エステルを用いた場合と比較して、膨れが同等以下になった。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質としてケイ素を用いた場合において、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステルを含むことにより、優れた膨れ特性が得られる。
【0208】
ここで、表5〜表8の結果から、表1〜表4と同様の傾向が導き出される。すなわち、式(1−1B)等を用いると、FECあるいはDFECを用いた場合と比較して、サイクル特性および保存特性の双方が良好になる。また、式(1−1B)等を用いると、FMECを用いた場合と比較して、保存特性および膨れ特性が大幅に低下することを抑制しつつ、サイクル特性が向上する。したがって、本発明では、負極活物質としてケイ素を構成元素として含む材料を用いた場合において、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステル(式(1−1B)等)を含むことにより、サイクル特性、保存特性および膨れ特性の全てが良好になる。
【0209】
(実験例9−1〜9−4)
負極活物質としてSnCoC含有材料を用いて負極34を作製したことを除き、実験例5−4,5−16〜5−18と同様の手順を経た。
【0210】
負極34を作製する場合には、最初に、コバルト粉末およびスズ粉末を合金化してコバルト・スズ合金粉末としたのち、炭素粉末を加えて乾式混合した。続いて、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中に、上記した混合物10gを直径9mmの鋼玉約400gと一緒にセットした。続いて、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換したのち、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と10分間の休止とを運転時間の合計が20時間になるまで繰り返した。続いて、反応容器を室温まで冷却してSnCoC含有材料を取り出したのち、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0211】
得られたSnCoC含有材料の組成を分析したところ、スズの含有量は49.5質量%、コバルトの含有量は29.7質量%、炭素の含有量は19.8質量%、スズおよびコバルトの割合(Co/(Sn+Co))は37.5質量%であった。この際、スズおよびコバルトの含有量については誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分析で測定し、炭素の含有量については炭素・硫黄分析装置で測定した。また、X線回折法によりSnCoC含有材料を分析したところ、2θ=20°〜50°の範囲に半値幅を有する回折ピークが観察された。さらに、XPSによりSnCoC含有材料を分析したところ、図9に示したように、ピークP1が得られた。このピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、それよりも低エネルギー側(284.5eVよりも低い領域)にSnCoC含有材料中におけるC1sのピークP3とが得られた。この結果から、SnCoC含有材料中の炭素は他の元素と結合していることが確認された。
【0212】
SnCoC含有材料を得たのち、負極活物質としてSnCoC含有材料80質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部と、負極導電剤としてグラファイト11質量部およびアセチレンブラック1質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。最後に、コーティング装置を用いて負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて負極活物質層34Bを形成したのち、ロールプレス機を用いて塗膜を圧縮成型した。
【0213】
これらの実験例9−1〜9−4の二次電池についてサイクル特性および保存特性を調べたところ、表9に示した結果が得られた。
【0214】
【表9】

【0215】
負極活物質として金属系材料(SnCoC含有材料)を用いた二次電池では、表5と同等の結果が得られた。すなわち、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いると、他のハロゲン化環状炭酸エステルを用いた場合と比較して、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率が同等以上になった。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた場合において、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステルを含むことにより、優れたサイクル特性および保存特性が得られる。
【0216】
(実験例10−1〜10−13,11−1〜11−12)
表10および表11に示したように、実験例9−1〜9−4と同様に負極活物質としてSnCoC含有材料を用いたことを除き、実験例6−1〜6−13,8−1〜8−12と同様の手順を経た。これらの実験例10−1〜10−13,11−1〜11−12の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表10および表11に示した結果が得られた。
【0217】
【表10】

【0218】
【表11】

【0219】
負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた場合においても、表6および表8と同様の結果が得られた。すなわち、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いると、他のハロゲン化環状炭酸エステルを用いた場合と比較して、膨れが同等以下になった。これらのことから、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた本発明の二次電池では、溶媒の組成を変更しても、優れたサイクル特性および保存特性が得られると共に、その溶媒がハロゲン化環状炭酸エステルを含むことにより、優れた膨れ特性が得られる。
【0220】
(実験例12−1〜12−12)
表12に示したように、酸化物含有膜および金属材料の双方あるいはいずれか一方を形成したことを除き、実験例5−4,5−16〜5−18と同様の手順を経た。
【0221】
酸化物含有膜を形成する場合には、最初に、5−1〜5−19と同様の手順により、複数の負極活物質粒子を形成した。こののち、液相析出法を用いて負極活物質粒子の表面にケイ素の酸化物(SiO2 )を析出させた。この場合には、ケイフッ化水素酸にアニオン補足剤としてホウ素を溶解させた溶液中に、負極活物質粒子が形成された負極集電体34Aを3時間浸積し、その負極活物質粒子の表面にケイ素の酸化物を析出させたのち、水洗してから減圧乾燥した。
【0222】
金属材料を形成する場合には、電解鍍金法を用いて、鍍金浴にエアーを供給しながら通電して、負極活物質粒子間の隙間等にコバルト(Co)の鍍金膜を成長させた。この場合には、鍍金液として日本高純度化学株式会社製のコバルト鍍金液を用いると共に、電流密度を2A/dm2 〜5A/dm2 、鍍金速度を10nm/秒とした。
【0223】
これらの実施例12−1〜12−12の二次電池についてサイクル特性および保存特性を調べたところ、表12に示した結果が得られた。
【0224】
【表12】

【0225】
酸化物含有膜および金属材料を形成した場合においても、表5と同様の結果が得られた。特に、酸化物含有膜および金属材料の双方を形成した場合には、いずれか一方だけを形成した場合と比較して、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率が同等以上になった。これらのことから、本発明の二次電池では、酸化物含有膜および金属材料を形成すれば、サイクル特性がより向上する。
【0226】
上記した表1〜表12の結果から、本発明の二次電池では、電解液の溶媒がハロゲン化環状炭酸エステルを含んでいる。このため、負極活物質の種類、電解液の組成、あるいは酸化物含有膜および金属材料の有無などに依存せずに、優れたサイクル特性、保存特性および膨れ特性を得ることができる。
【0227】
この場合には、負極活物質として炭素材料(人造黒鉛)を用いた場合よりも金属系材料(ケイ素あるいはSnCoC含有材料)を用いた場合において、サイクル放電容量維持率および保存放電容量維持率の増加率が大きくなった。このことから、前者の場合よりも後者の場合において、より高い効果を得ることができる。この結果は、負極活物質として高容量化に有利な金属系材料を用いると、炭素材料を用いる場合よりも電解液が分解しやすくなるため、電解液の分解抑制効果が際立って発揮されたものと考えられる。
【0228】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の電解質の使用用途は、必ずしも二次電池に限らず、他の電気化学デバイスでよい。他の用途としては、例えば、キャパシタなどが挙げられる。
【0229】
また、上記した実施の形態および実施例では、二次電池の種類としてリチウムイオン二次電池あるはリチウム金属二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の二次電池は、負極の容量がリチウムイオンの吸蔵および放出による容量とリチウム金属の析出および溶解に伴う容量とを含み、かつ、それらの容量の和により表される二次電池についても、同様に適用可能である。この場合には、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な負極材料が用いられると共に、負極材料の充電可能な容量は、正極の放電容量よりも小さくなるように設定される。
【0230】
また、上記した実施の形態および実施例では、電池構造が円筒型あるいはラミネートフィルム型である場合、ならびに電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこれに限られない。本発明の二次電池は、角型、コイン型あるいはボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても、同様に適用可能である。
【0231】
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質の元素としてリチウムを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。電極反応物質の元素は、例えば、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムあるいはカルシウムなどの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。本発明の効果は、電極反応物質の元素の種類に依存せずに得られるはずであるため、その種類を変更しても、同様の効果を得ることができる。
【0232】
また、上記した実施の形態および実施例では、ハロゲン化環状炭酸エステルの含有量について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明しているが、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であるため、本発明の効果が得られるのであれば、上記した範囲から含有量が多少外れてもよい。
【符号の説明】
【0233】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A,33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム、221…負極活物質粒子、222…酸化物含有膜、224(224A,224B)…隙間、225…空隙、226…金属材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、前記溶媒は、式(1)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルを含む二次電池。
【化1】

(XおよびYはオキソ基(−O−)あるいはチオ基(−S−)である。R1〜R4は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基であると共に少なくとも1つはハロゲン化アルキル基である。)
【請求項2】
前記式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステルは、式(2)で表されるものである請求項1記載の二次電池。
【化2】

(R5〜R7は、水素基、ハロゲン基あるいはアルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基である。)
【請求項3】
前記式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステルは、式(1−1)〜式(1−13)で表されるものである請求項1記載の二次電池。
【化3】

【請求項4】
前記式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステルは、前記式(1−1)あるいは式(1−2)に示したものである請求項3記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極は、負極活物質として、炭素材料、リチウム金属(Li)、あるいは電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料、を含む請求項1記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極は、負極活物質として、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料を含む請求項1記載の二次電池。
【請求項7】
前記ケイ素およびスズのうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料は、ケイ素の単体、あるいはスズとコバルト(Co)と炭素(C)とを構成元素として含むSnCoC含有材料であり、
前記SnCoC含有材料において、炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下、スズおよびコバルトの割合(Co/(Sn+Co))は20質量%以上70質量%以下であると共に、X線回折により得られる回折ピークの半値幅は1.0°以上である
請求項6記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極は、負極活物質として炭素材料を含み、前記溶媒中における前記ハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%以上10重量%以下である請求項1記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極は、負極活物質としてケイ素およびスズのうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料を含み、前記溶媒中における前記ハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%以上50重量%以下である請求項1記載の二次電池。
【請求項10】
前記溶媒は、式(3)〜式(5)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル、式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル、式(7)で表されるハロゲン化環状炭酸エステル(前記式(1)に示したハロゲン化環状炭酸エステルに該当するものを除く)、スルトン、および酸無水物のうちの少なくとも1種を含む請求項1載の二次電池。
【化4】

(R11およびR12は水素基あるいはアルキル基である。)
【化5】

(R13〜R16は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
【化6】

(R17はアルキレン基である。)
【化7】

(R21〜R26は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【化8】

(R27〜R30は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【請求項11】
前記不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンあるいは炭酸メチレンエチレンであり、前記ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルであり、前記ハロゲン化環状炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである請求項10記載の二次電池。
【請求項12】
前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、および式(8)〜式(13)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。
【化9】

(X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウム(Al)である。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は−(O=)C−R32−C(=O)−、−(O=)C−C(R33)2 −あるいは−(O=)C−C(=O)−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
【化10】

(X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は−(O=)C−(C(R41)2 b4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(R43)2 −、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
【化11】

(X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−(O=)C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(R52)2 −、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1 SO2 ) …(11)
(mおよびnは1以上の整数である。)
【化12】

(R61は炭素数が2〜4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
LiC(Cp 2p+1SO2 )(Cq 2q+1 SO2 )(Cr 2r+1 SO2 ) …(13)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)
【請求項13】
前記負極は、負極集電体上に負極活物質層を有し、前記負極活物質層は、気相法、液相法および焼成法のうち少なくとも1種により形成されている請求項1記載の二次電池。
【請求項14】
前記負極は、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層を有し、前記負極活物質層は、前記負極活物質粒子の表面を被覆する酸化物含有膜を含む請求項1記載の二次電池。
【請求項15】
前記酸化物含有膜は、ケイ素の酸化物、ゲルマニウム(Ge)の酸化物、およびスズの酸化物のうちの少なくとも1種を含む請求項14記載の二次電池。
【請求項16】
前記負極は、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層を有し、前記負極活物質層は、その内部の隙間に、電極反応物質と合金化しない金属元素を構成元素として含む金属材料を含む請求項1記載の二次電池。
【請求項17】
前記金属元素は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)および銅(Cu)のうちの少なくとも1種である請求項16記載の二次電池。
【請求項18】
前記正極および前記負極は、電極反応物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能である請求項1記載の二次電池。
【請求項19】
溶媒および電解質塩を含み、前記溶媒は、式(1)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルを含む電解質。
【化13】

(XおよびYはオキソ基あるいはチオ基である。R1〜R4は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基であると共に少なくとも1つはハロゲン化アルキル基である。)
【請求項20】
二次電池に用いられる請求項19記載の電解質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−182482(P2010−182482A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23566(P2009−23566)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】