説明

電解質分析方法および電解質分析装置

【課題】測定終了後、長時間測定が行われなかった場合でも、測定再開の直後から安定した測定結果を得ること。
【解決手段】電解質分析装置100は、試料と希釈液とを混合し、試料溶液を生成するための希釈用容器131と、希釈用容器131に試料を供給する試料供給手段110と、希釈用容器131に希釈液を供給する希釈液供給手段120と、希釈用容器131の試料溶液を取り出して当該試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定する測定手段140と、測定手段140による測定により希釈用容器131から試料溶液が取り出された後の待機時に、希釈用容器131に所定の液体を貯留させる貯留手段160と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン選択性電極を用いた測定部に、希釈した試料を供して試料の電解質濃度を測定する電解質分析方法および電解質分析装置にかかり、特に尿や血清等の電解質(Na:ナトリウム、K:カリウム、Cl:塩素など)濃度を測定する電解質分析方法および電解質分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿や血清等の電解質濃度を測定する装置として、イオン選択性電極を使用した電解質分析装置が知られている。このような装置としては、イオン選択性電極と比較電極とを用いて、試料を希釈液で希釈することによって生成した試料溶液の起電力を計測し、また、比較用の基準液の起電力を計測する。そして、これら試料溶液と基準液とのそれぞれの計測データを基に、試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定するようになっている。
【0003】
すなわち、尿や血清等の試料を希釈用容器にて希釈すると共に、この希釈した試料溶液をイオン選択性電極が用いられた電極部に導き、試料の電解質濃度に対応した起電力を計測する。引き続き、基準液を希釈用容器を介して電極部へ導き、基準液の起電力を計測する。そして、上述した試料の起電力と基準液の起電力との差から試料の電解質濃度を求めるものである(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−62128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電解質分析装置では、試料溶液の測定終了後に長時間、測定が行われず、休止状態等の待機状態が続くと、希釈用容器内面が乾燥し、例えば試料溶液や基準液などが固形化したものや、チリや埃などの汚れが希釈用容器内面に付着してしまうことがある。このように希釈用容器が乾燥すると、試料溶液の測定再開時に、付着物によって測定結果が変動してしまい、希釈用容器内の試料溶液や基準液などが固形化したものや、チリや汚れが取り除かれるまでの間は正確な試料測定ができないという不具合があった。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、長時間、測定が行われなかった場合であっても、測定再開の直後から安定した測定結果を得ることができる電解質分析方法および電解質分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる電解質分析方法は、希釈用容器に試料を供給する試料供給工程と、前記希釈用容器に希釈液を供給する希釈液供給工程と、前記希釈用容器に供給された前記試料と前記希釈液とを混合して試料溶液を生成する希釈工程と、前記希釈用容器の前記試料溶液を取り出しながら当該試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定する測定工程と、前記測定により前記希釈用容器から前記試料溶液が取り出された後の待機時に、前記希釈用容器に所定の液体を貯留させる貯留工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明にかかる電解質分析装置は、試料と希釈液とを混合し、試料溶液を生成するための希釈用容器と、前記希釈用容器に前記試料を供給する試料供給手段と、前記希釈用容器に前記希釈液を供給する希釈液供給手段と、前記希釈用容器の前記試料溶液を取り出しながら当該試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定する測定手段と、前記測定手段による測定により前記希釈用容器から前記試料溶液が取り出された後の待機時に、前記希釈用容器に所定の液体を貯留させる貯留手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この請求項1または2の発明によれば、長時間、測定が行われなかった場合でも希釈用容器の乾燥を防ぐため、測定再開の直後から安定した測定結果を得ることができる。
【0010】
請求項3の発明にかかる電解質分析装置は、請求項2の発明において、前記試料供給手段は、前記試料を送出する試料送出口を備え、前記貯留手段は、前記待機時に前記希釈用容器に前記試料送出口を介して純水を供給し、前記希釈用容器に前記純水を貯留させることを特徴とする。
【0011】
この請求項3の発明によれば、試料送出口を利用して純水を供給することができるので、貯留手段として新たに部材を付設することなく、簡単な構成で希釈用容器に純水を貯留させることができる。
【0012】
また、請求項4の発明にかかる電解質分析方法および電解質分析装置は、請求項2または3に記載の発明において、前記試料溶液が前記希釈用容器から取り出された後の時間を計測する計測手段を備え、前記貯留手段は、前記計測手段によって計測された時間が所定時間経過したとき、前記希釈用容器に所定の液体を貯留することを特徴とする。
【0013】
この請求項4の発明によれば、希釈用容器の乾燥を防ぐ適切な時期に希釈用容器に所定の液体を貯留させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試料溶液の測定終了後に希釈用容器に所定の液体を貯留させるので、試料溶液の測定が長時間行われなかった場合であっても、測定再開の直後から安定した測定結果を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電解質分析方法および電解質分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態にかかる電解質分析装置の構成図である。電解質分析装置100は、試料供給手段110と、希釈液供給手段120と、試料希釈手段130と、測定手段140と、廃液手段150と、貯留手段160とを備えて構成されている。
【0017】
試料供給手段110は、図中X方向に移動自在な可動式クレーン111と、可動式クレーン111に設けられた試料分注ノズル112とを備える。試料分注ノズル112は配管113、電磁弁114、供給配管115を介してポンプ116に接続されている。
【0018】
可動式クレーン111の移動途中には、試料容器118が設けられている。試料容器118には、例えば尿や血清等の試料119が収容してある。可動式クレーン111を移動させ、ポンプ116により吸入動作することにより、試料分注ノズル112は、試料容器118から一定量だけ試料119を分取する。分取された試料119は、可動式クレーン111を移動させポンプ116の動作により、試料希釈手段130の希釈用容器131に分注される。
【0019】
希釈液供給手段120は、希釈液容器121と、ポンプ122と、電磁弁123と、吸入配管124と、供給配管125と、希釈液注出ノズル126とにより構成されている。希釈液には、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液、モノメタノールアミン水溶液、ジエタノールアミン水溶液、トリエタノールアミン水溶液の、硫酸、リン酸、硼酸緩衝液等などや、MOPS、HEPES等のグッド緩衝液が用いられる。希釈液注出ノズル126は、希釈用容器131に向けて希釈液を注出する。ポンプ122の動作により、吸入配管124を通じて、希釈液容器121から所定量の希釈液を分取し、希釈用容器131に送出する。この希釈液によって、希釈用容器131に分注された試料119を希釈することにより、例えば30倍程度に希釈された試料溶液が生成される。
【0020】
試料希釈手段130の希釈用容器131内部には、撹拌機構132が設けられる。撹拌機構132は、試料供給手段110によって、試料容器118から一定量だけ分注された試料119と、希釈液供給手段120によって希釈液容器121から所定量だけ分取された希釈液とを混合し、均一な試料溶液を生成する。試料溶液または希釈液(これらを測定液と称する)は、希釈用容器131から取り出されて測定手段140に送り出される。
【0021】
測定手段140は、希釈用容器131に接続された供給配管141と、測定液が通過する経路上に設けられる複数の電極部142(142a〜142d)と、電極部142の起電力を計測する起電力計測部143と、電極部142を通過後の測定液が通る排出配管144とを備えて構成されている。
【0022】
電極部142は、イオン選択性電極142a〜142cおよび比較電極142dを備えている。イオン選択性電極142a〜142cは、例えば、Na、K、Cl等の特定のイオンに感応した電位を出力する電極である。これらイオン選択性電極142a〜142cおよび比較電極142dは、希釈用容器131から取り出されて供給配管141から送られた測定液のそれぞれの電位を出力する。より詳細に説明すると、イオン選択性電極142a〜142cおよび比較電極142dは、供給配管141から送られてきた測定液が電極部142を通過する際に、この通過する測定液のそれぞれのイオン選択性電極142a〜142cと比較電極142dとの間に所定の電位差が表れる。
【0023】
起電力計測部143は、電極部142を通じて供給配管141を通過する試料溶液および希釈液のそれぞれの起電力を計測する。すなわち、起電力計測部143は、供給配管141を介して試料溶液が送られてきたときには、イオン選択性電極142a〜142cが示した電位と、比較電極142dが示した電位との電位差を計測する。また、供給配管141を介して希釈液が送られてきたときには、同様にイオン選択性電極142a〜142cが示した電位と比較電極142dが示した電位との電位差を計測する。
【0024】
廃液手段150は、電磁弁151と、接続配管152と、ポンプ153と、廃液配管154と、廃液容器155とにより構成されている。電磁弁151は、排出配管144の一端に接続されている。接続配管152の一端は、電磁弁151に接続され、他端は、ポンプ153に接続されている。廃液配管154の一端は、電磁弁151に接続されており、他端は開放されている。この廃液配管154の開放された一端の下部には、廃液が滴下するように廃液容器155が設置されている。そして、ポンプ153の動作により希釈用容器131に貯留された測定液は、測定手段140を通過するように取り出され、測定手段140により測定された後に廃液容器155に排出される。
【0025】
すなわち、電極部142を通過した測定液は、排出配管144を通り、電磁弁151を介して一旦ポンプ153に溜め込まれる。その後、電磁弁151を切り替えることによって、ポンプ153から送出される廃液は、電磁弁151を介して、廃液配管154を介して廃液容器155に排出される。
【0026】
貯留手段160は、試料供給手段110に接続して設けられる。貯留手段160は、供給配管161と、所定の液体(例えば、純水)を収容する液体容器162とにより構成されている。供給配管161の一端は、電磁弁114に接続されており、他端は、液体容器162に接続されている。電磁弁114を供給配管161側に切り替えることにより、試料分注ノズル112から液体容器162の所定の液体を供給することができる。この所定の液体は、後述する待機時に希釈用容器131に供給する液体として供給することができる。また、この所定の液体は、可動式クレーン111を退避した洗浄位置に移動させた状態で試料分注ノズル112に供給することによって、試料分注ノズル112を洗浄することもできる(図中Aを参照)。
【0027】
所定の液体には、例えば、純水が用いられる。純水とは、イオン交換水、RO水、蒸留水といった、電解質分析装置の使用環境で得られる水道水より純度の高い水を示し、所定の液体とは、純水または純水に防腐効果や洗浄効果を有する添加物を加えた液体を指す。
【0028】
図2は、本実施の形態に用いられる制御部を示すブロック図である。同図は、後述する待機時処理に関する制御を中心に示している。制御部200は、マイクロコンピュータシステムからなり、駆動制御部201と、測定処理部202と、タイマー203とを備えている。
【0029】
駆動制御部201は、操作部210からの入力情報に基づいて、予め格納されたプログラムによって、可動式クレーン111と、電磁弁114と、ポンプ116と、電磁弁151と、ポンプ153とを駆動制御する。具体的には、駆動制御部201は、可動式クレーン111の位置を決定し、図示しない移動機構に制御信号を送出することにより、移動機構が図1に示すX方向に向かって移動し、試料分注ノズル112を所定の位置に位置させる。また、駆動制御部201は、電磁弁114へ弁の切替信号を送出し、ポンプ116に対して動作の制御信号を送出し、電磁弁151へ弁の切替信号を送出し、ポンプ153に対して動作の制御信号を送出する。
【0030】
測定処理部202には、起電力計測部143で計測した起電力が入力され試料溶液の電解質濃度を測定し、ディスプレイなどの表示部220に測定結果を表示させる。具体的には、測定処理部202は、起電力計測部143で計測した起電力に基づいて、供給配管141から送られてきた試料溶液に含まれる被測定成分(Na、K、Cl)の電解質濃度を測定し、各成分の数値を表示部220に表示させる。
【0031】
タイマー203は、測定終了後の時間を計測する。例えば、測定液の1回の測定毎に計測を開始する。このタイマー203は、測定処理部202から測定液の1回の測定終了の情報が送出されると、時間の計測を始め、所定の時間が経過したとき、タイムアップの計測情報を駆動制御部201に送出する。
【0032】
測定液の1回の測定が終了してから、タイムアップするまでの期間、希釈用容器131は、空の状態である。測定の終了時に希釈用容器131の測定液が取り出されており、タイムアップするまではこの状態が継続している。
【0033】
駆動制御部201は、タイムアップの計測情報が入力されるまでは、測定が行われない待機状態であるため、希釈用容器131に所定の液体を貯留させる待機時制御を行う。駆動制御部201は、待機時制御においても、上述同様に、可動式クレーン111と、電磁弁114と、ポンプ116と、電磁弁151と、ポンプ153とを駆動制御する。なお、タイマー203の設定時間は、少なくとも測定終了後に希釈用容器131の内面が乾燥してしまうのに要する時間より短い時間に設定される。
【0034】
図3は、本実施の形態における試料溶液の測定の概略例を示すフローチャートである。図3の処理は図2に記載した制御部200が実行するものであり、試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を1回測定する処理内容を記載してある。以下に詳細を説明するが、測定順序はこの事例に限定されるものではない。
【0035】
まず、はじめに、制御部200は、測定の開始か否かを判断する(ステップS301)。測定は、操作部210による測定開始の操作入力で開始され、それまでの間は待機している(ステップS301:Noのループ)。測定が開始されると(ステップS301:Yes)、駆動制御部201の駆動制御により、希釈液容器121の希釈液を希釈用容器131に注出する(ステップS302)。次に、試料容器118の試料を希釈用容器131に分注する(ステップS303)。そして、希釈用容器131の希釈液および試料を撹拌して試料溶液を生成する(ステップS304)。この試料溶液は、起電力計測部143に導かれて試料溶液の起電力が計測される(ステップS305)。計測終了後に試料溶液は排出される(ステップS306)。
【0036】
次に、希釈液容器121の希釈液を希釈用容器131に注出する(ステップS307)。この希釈液は起電力計測部143に導かれて希釈液の起電力が計測される(ステップS308)。計測終了後に希釈液は排出される(ステップS309)。
【0037】
この計測結果に基づき、制御部200の測定処理部202は、試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定し、表示部220に計測結果を表示させる(ステップS310)。この後、可動式クレーン111を移動させ、洗浄位置にて試料分注ノズル112を洗浄する(ステップS311)。この後、次の試料の測定を行うかを判断し(ステップS312)、次の試料の測定がない場合には(ステップS312:No)、1回の測定を終了する。次の試料を測定する場合には(ステップS312:Yes)、例えば、図1に示す試料容器118の配置箇所に次の試料容器118が配置され、この試料容器118の試料に対する測定を行うために、上述した測定のプロセスが繰り返される(ステップS302に戻る)。
【0038】
上述した図3に示す試料溶液の測定の詳細について、図1を用いて説明する。説明の便宜上、吸入配管124につながる電磁弁123が閉状態になっているものとする。また、初期状態として、希釈液が吸入配管124に送出されてこの吸入配管124内に存在している。
【0039】
この状態から、電磁弁123を開状態にして、ポンプ122の動作により、開通状態になった供給配管125に滞留する希釈液を、希釈液注出ノズル126を通じて希釈用容器131に送出する。
【0040】
一方、試料分注ノズル112は、試料容器118に収容された試料119を一定量だけ分取し、この分取した試料を希釈液が注出されている希釈用容器131に分注する。この後、撹拌機構132によって撹拌され、試料と希釈液とが均一に混合された試料溶液が生成される。
【0041】
次に、希釈用容器131で生成された試料溶液が希釈用容器131から取り出され(ポンプ122が吸引動作して)、供給配管141へ導かれる。この際、試料溶液は、電極部142を通過する。このとき、起電力計測部143がイオン選択性電極142a〜142cおよび比較電極142dを通じて試料溶液の起電力を計測する。その後、試料溶液は、廃液容器155に導かれて廃棄される。
【0042】
次に、上述した計測プロセスと同様の処理で希釈液に対する起電力を測定する。すなわち、電磁弁123を開状態にして、開通状態になった供給配管125を経由して、希釈液注出ノズル126から希釈用容器131に希釈液を送出する。この後、希釈用容器131の希釈液はポンプ153の吸引動作により供給配管141へ導かれる。そして、希釈液は、測定液として電極部142を通過する。このとき、起電力計測部143がイオン選択性電極142a〜142cおよび比較電極142dを通じて希釈液の電位差を計測する。
【0043】
そして、制御部200の測定処理部202は、電極部142および起電力計測部143によって計測された試料溶液の起電力および希釈液の起電力に基づいて、試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定する。その後、希釈液は、廃液容器155に導かれて廃棄される。
【0044】
この後、可動式クレーン111が移動し、試料分注ノズル112を洗浄位置に配置させる。そして、電磁弁114を供給配管161側に切り替え、ポンプ116を動作させ、液体容器162の所定の液体を試料分注ノズル112から送出させることにより、試料分注ノズル112が洗浄される。この後も、測定が行われる場合は、上述した測定のプロセスが繰り返される。このようにして、電解質分析装置100による1回の測定が行われる。
【0045】
図4は、本実施の形態における測定後の待機時処理を示すフローチャートである。図3に示した1回の測定処理の終了後、次の試料の測定が継続しない場合には、希釈用容器131に所定の液体を貯留する待機時処理が行われる。
【0046】
図3に示した1回の測定のプロセスが終了する毎に、制御部200のタイマー203が作動し(ステップS401)、所定時間経過したか否かが判断される(ステップS402)。所定時間経過していない場合には(ステップS402:No)、ステップS401に戻り、タイマー203による計測が保持される。一方、所定時間経過した場合には(ステップS402:Yes)、可動式クレーン111が移動し、試料分注ノズル112を希釈用容器131の上部に配置させる(ステップS403)。そして、電磁弁114が供給配管161側に接続された状態でポンプ116を吸引動作させ、試料分注ノズル112を介して希釈用容器131に液体容器162の所定の液体を所定量送出する(ステップS404)。このとき、ポンプ153は停止しており、希釈用容器131に所定の液体が貯留される(ステップS405)。
【0047】
このように、電解質分析装置100が待機状態にある場合は、希釈用容器131に所定の液体を貯留した状態が維持される。この希釈用容器131に所定の液体を貯留した状態の後には、試料の測定の再開を待つ(ステップS406:Noのループ)。例えば、数時間経過後に、試料の測定が再開されると(ステップS406:Yes)、希釈用容器131に貯留された所定の液体を排出する廃液処理を行う(ステップS407)。この廃液処理は、電磁弁151により排出配管144と接続配管152とを接続させ、ポンプ153を動作させる。これによって、希釈用容器131に貯留されていた所定の液体は、廃液配管154から廃液容器155に排出される。
【0048】
ここで、本実施の形態に用いられる電解質分析装置100を用い、連続して測定が行われる通常測定と、測定終了後に希釈用容器131に純水を貯留して待機時間として4時間待機させた場合と、測定終了後に純水を貯留せずに待機時間として4時間待機させた場合と、について比較した測定結果について、図5のグラフを基に説明する。
【0049】
図5は、Naの電解質濃度を測定した比較結果を示すグラフである。横軸は測定番号であり、時間的要素を含むものである。縦軸は測定値を示す。図5に示すように、連続して測定が行われる通常測定については、測定番号に関わらず測定値が安定している。また、希釈用容器131に純水を貯留して4時間待機させた場合についても、同様に、測定番号に関わらず測定値が安定している。これに対して、希釈用容器131に純水を貯留せずに4時間待機させた場合は、測定開始後に数値が高くなり、測定値が安定するまでに数回の測定を要した。なお、ここではNaの電解質濃度の測定結果についてのみ示したが、Kの電解質濃度の測定結果やClの電解質濃度の測定結果についても、同様の傾向が見られた。また、待機時間を2時間とした場合についても、同様の結果が得られた。更に、詳細のプロセスについては後述するが、希釈用容器131に貯留する液体として、純水の代わりに希釈液を貯留した場合についても、同様に良好な結果が得られた。
【0050】
このように、本実施の形態は、電解質分析装置100による測定が行われない待機状態にある場合に、希釈用容器131に純水を貯留するようにした。これにより、希釈用容器131の内面が乾燥して付着物が生じてしまうという事態を防止できるようになる。したがって、試料溶液の測定が長時間行われなかった場合でも、測定再開の直後から安定した測定結果を得ることができる。
【0051】
更に、本実施の形態では、試料および希釈液を希釈用容器131に注出して試料溶液を生成し、この試料溶液の起電力を計測する前後に、希釈液を希釈用容器131に供給して、この希釈液の起電力を計測する構成とした。この構成によれば、希釈液の供給と、試料溶液の供給とが交互に行われるので、希釈液が希釈用容器131、供給配管141および電極部142の洗浄を兼ねることになる。そのため、希釈用容器131、供給配管141および電極部142を洗浄する手段や洗浄する工程を新たに設ける必要がなく、測定終了後に次の測定プロセスに移行することが可能になり、連続して測定する際の測定時間を短縮させることができる。
【0052】
なお、本実施の形態において、制御部200に内蔵されるタイマー203の設定時間は上述したように、測定終了後に希釈用容器131の内面が乾燥してしまうのに要する時間より短い時間に設定したが、環境条件等に応じて適宜変更することもできる。また、夜間等、電解質分析装置100の使用を終えてタイマー203の設定時間が経過する前に、電解質分析装置100の電源をオフにする場合も想定される。これに対応して、夜間等は、ある時刻以降はタイマー203の設定時間をゼロにすればよい。
【0053】
更に、本実施の形態において、希釈用容器131に所定の液体を貯留した状態で所定時間経過した場合、すなわち、待機状態が一定時間経過した場合は、希釈用容器131の内面を清潔に保つために、所定の液体を入れ替える処理を行う構成も考えられる。これに対応して、タイマー203は待機時間を計測し、待機時間が所定時間に達したら所定の液体を入れ替える機能を有してもよい。
【0054】
更に、本実施の形態において、上述したように、所定の液体として希釈液を貯留した場合についても、同様の結果が得られる。以下に、希釈液を貯留する場合の待機時処理について説明する。
【0055】
今、1回の測定プロセスが終了したとすると、制御部200のタイマー203により、所定時間経過したか否かが判断され、所定時間経過した場合には、電磁弁123を適宜切り替えると共にポンプ122を動作させ、希釈液注出ノズル126から希釈用容器131に希釈液容器121の希釈液を所定量送出する。このとき、ポンプ153はオフになっており、希釈用容器131に希釈液が貯留される。
【0056】
この後、操作部210からの測定入力が行われず、すなわち待機状態にある場合は、希釈用容器131に希釈液を貯留した状態を維持する。この希釈用容器131に希釈液を貯留した状態から、例えば数時間経過後に、試料の計測が再開されると、当該希釈液を排出する廃液処理が行われる。この廃液処理は、上述したとおりである。なお、このような態様の場合、液体容器162の所定の液体は試料分注ノズル112の洗浄用としてのみ用いられる。このような態様であっても、同様の効果を奏する。ただし、希釈液を用いた場合は、希釈液に溶解している溶質が析出しない範囲においてのみ効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる電解質分析方法および電解質分析装置は、例えば尿や血清等の試料の電解質濃度の測定に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電解質分析装置の構成図である。
【図2】本実施の形態に用いられる制御部を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における試料溶液の測定の概略例を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態における測定後の待機時処理を示すフローチャートである。
【図5】Naの電解質濃度を測定した比較結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
100 電解質分析装置
110 試料供給手段
112 試料分注ノズル
120 希釈液供給手段
126 希釈液注出ノズル
130 試料希釈手段
131 希釈用容器
140 測定手段
142 電極部
143 起電力計測部
150 廃液手段
160 貯留手段
161 供給配管
162 液体容器
200 制御部
201 駆動制御部
202 測定処理部
203 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈用容器に試料を供給する試料供給工程と、
前記希釈用容器に希釈液を供給する希釈液供給工程と、
前記希釈用容器に供給された前記試料と前記希釈液とを混合して試料溶液を生成する希釈工程と、
前記希釈用容器の前記試料溶液を取り出しながら当該試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定する測定工程と、
前記測定により前記希釈用容器から前記試料溶液が取り出された後の待機時に、前記希釈用容器に所定の液体を貯留させる貯留工程と、
を含むことを特徴とする電解質分析方法。
【請求項2】
試料と希釈液とを混合し、試料溶液を生成するための希釈用容器と、
前記希釈用容器に前記試料を供給する試料供給手段と、
前記希釈用容器に前記希釈液を供給する希釈液供給手段と、
前記希釈用容器の前記試料溶液を取り出しながら当該試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定する測定手段と、
前記測定手段による測定により前記希釈用容器から前記試料溶液が取り出された後の待機時に、前記希釈用容器に所定の液体を貯留させる貯留手段と、
を備えたことを特徴とする電解質分析装置。
【請求項3】
前記試料供給手段は、前記試料を送出する試料送出口を備え、
前記貯留手段は、前記待機時に前記希釈用容器に前記試料送出口を介して純水を供給し、前記希釈用容器に前記純水を貯留させることを特徴とする請求項2に記載の電解質分析装置。
【請求項4】
前記試料溶液が前記希釈用容器から取り出された後の時間を計測する計測手段を備え、
前記貯留手段は、前記計測手段によって計測された時間が所定時間経過したとき、前記希釈用容器に所定の液体を貯留することを特徴とする請求項2または3に記載の電解質分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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