説明

電話装置、電話通信システム及びコンピュータプログラム

【課題】 複数の無線通信の間で電波が干渉するのを防ぐ技術を提供すること。
【解決手段】 アクセスポイント90は、2.4GHzと5.0GHzの周波数帯域を利用して、端末装置130と無線通信する。電話装置本体10は、2.4GHzの周波数帯域を利用して、通話デバイス50と無線通信する。電話装置本体10は、通話デバイス50との音声データ通信210が開始される場合に、2.4GHzの周波数帯域の利用を禁止する第1の指示300をアクセスポイント90に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、端末装置(ホーム端末)と、アクセスポイントと、電話装置と、を備える家庭内ネットワークシステムが開示されている。アクセスポイントは、端末装置と無線通信を行う。アクセスポイントと電話装置とは、一体に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−98560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電話装置(親機)がコードレス式の通話デバイス(子機)と無線通信を行う場合には、以下の事象が発生し得る。即ち、通話デバイスと電話装置との間の無線通信に利用される周波数帯域と、アクセスポイントと端末装置との間の無線通信に利用される周波数帯域と、が重複し得る。上記の2つの周波数帯域が重複する場合、上記の2つの無線通信の間で電波が干渉し、通話デバイスにおいて、ノイズの発生等の不都合が生じる。特に、特許文献1のシステムでは、アクセスポイントと電話装置とが一体に構成されており、アクセスポイントと電話装置との配置位置が近接している。アクセスポイントと電話装置との配置位置が近接する場合、上記の2つの無線通信の間で電波の干渉が起こる可能性が高い。本明細書では、複数の無線通信の間で電波が干渉するのを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される技術は、第1の周波数帯域を含む特定の周波数帯域を利用して端末装置と無線通信可能なアクセスポイントに接続される電話装置として具現化される。電話装置は、第1の周波数帯域を利用して、通話デバイスと無線通信する第1の通信部と、アクセスポイントと通信する第2の通信部と、を備える。第2の通信部は、通話デバイスと第1の通信部との間で特定の無線通信が開始される特定の場合に、アクセスポイントが第1の周波数帯域以外の周波数帯域を利用するように、アクセスポイントに第1の指示を送信する。
【0006】
この構成によると、通話デバイスと第1の通信部との間で特定の無線通信が開始される場合に、アクセスポイントの利用する周波数帯域を制限することができる。このため、通話デバイスと第1の通信部との間で行われる上記の特定の無線通信の周波数帯域と、アクセスポイントと端末装置との間で行われる無線通信の周波数帯域との重複を避けることができる。従って、通話デバイスと第1の通信部との間で行われる上記の特定の無線通信の電波と、アクセスポイントと端末装置との間で行われる無線通信の電波との干渉を抑制することができる。
【0007】
上記の電話装置においては、上記の特定の周波数帯域は、第1の周波数帯域と、第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域と、を含んでもよい。第1の指示は、アクセスポイントが第1の周波数帯域を利用することを禁止する指示であってもよい。
【0008】
上記の電話装置は、通話デバイスで通話開始操作が実行されることを検出する通話開始操作検出部をさらに備えてもよい。第2の通信部は、通話開始操作の実行が検出される上記の特定の場合に、アクセスポイントに第1の指示を送信するようにしてもよい。この構成によると、電話装置は、通話デバイスで通話開始操作が実行された場合に、上記の第1の指示を送信する。通話デバイスと第1の通信部との間で行われる音声データの無線通信の電波と、アクセスポイントと端末装置との間で行われる無線通信の電波との干渉を抑制することができる。
【0009】
上記の電話装置において、第2の通信部は、第1の指示が送信された後に、通話デバイスと第1の通信部との間で上記の特定の無線通信が終了される場合に、アクセスポイントが第1の周波数帯域を再び利用するように、アクセスポイントに第2の指示を送信してもよい。この構成によると、上記の特定の無線通信が終了される場合に、アクセスポイントは再び第1の周波数帯域を含む上記の特定の周波数帯域を利用して端末装置と無線通信可能となる。
【0010】
上記の電話装置は、アクセスポイントと有線で接続されてもよい。この構成によると、電話装置とアクセスポイントとの間で無線通信が行なわれないために、その無線通信の電波が、電話装置と通話デバイスとの間の無線通信の電波、及び/又は、アクセスポイントと端末装置との間の無線通信の電波、に干渉するのを避けることができる。
【0011】
上記の特定の無線通信は、音声データの無線通信を含んでいてもよい。第1の通信部は、第1の指示が送信された後に、通話デバイスとの間で音声データの無線通信を開始してもよい。この構成によると、第1の指示が送信された後に、音声データの無線通信が開始される。従って、アクセスポイントと端末装置との間の電波と、音声データの無線通信の電波とが干渉するのを抑制することができる。
【0012】
アクセスポイントと上記の電話装置とを備える電話通信システムも新規で有用である。また、アクセスポイントと電話装置とが一体に構成されていてもよい。なお、上記の電話装置を実現するためのコンピュータプログラムも新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電話通信システムの構成の一例を示す。
【図2】通話要求受信から通話開始までのシーケンス図を示す。
【図3】通話要求送信から通話開始までのシーケンス図を示す。
【図4】通話状態から切断通知送信までのシーケンス図を示す。
【図5】通話状態から切断通知受信までのシーケンス図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)
(システムの構成)
図面を参照して第1実施例を説明する。図1は、本実施例の電話通信システム2の概略図を示す。電話通信システム2は、PSTN4と、電話装置8と、アクセスポイント90と、一般電話120と、端末装置130と、を備える。電話装置8は、電話装置本体10と、通話デバイス50とを備えるデジタルコードレス電話装置である。電話装置本体10と通話デバイス50とは相互に無線通信可能である。電話装置本体10と一般電話120とは、ともにPSTN4に接続されており、PSTN4を介して相互に電話通信可能である。電話装置本体10とアクセスポイント90とは、通信線6に接続されており、通信線6を介して相互に通信可能である。アクセスポイント90と端末装置130とは相互に無線通信可能である。
【0015】
(電話装置本体10の構成)
電話装置本体10の構成について説明する。電話装置本体10は、PSTN4を介して一般電話120と電話通信を行う。電話装置本体10は、制御部12と、記憶部14と、操作部16と、表示部18と、有線通信インターフェイス20と、無線通信インターフェイス22と、PSTNインターフェイス24と、を備える。制御部12は、記憶部14に記憶されているプログラム36に従って処理を実行する。制御部12がプログラム36に従って処理を実行することによって、第1の通信部30、第2の通信部32、通話開始操作検出部34の各機能が実現される。これらの各部が実行する処理については、後で詳しく説明する。
【0016】
操作部16は、複数のキーによって構成される。ユーザは、操作部16を操作することによって、様々な指示を電話装置本体10に入力することができる。表示部18は、様々な情報を表示する。有線通信インターフェイス20は、通信線6と接続されている。無線通信インターフェイス22は、通話デバイス50と無線通信するためのインターフェイスである。PSTNインターフェイス24にはPSTN回線26が接続されている。PSTN回線26は、PSTN4に接続されている。電話装置本体10は、PSTNインターフェイス24とPSTN回線26とを介して、PSTN4を利用して電話通信を行うことができる。なお、図1では、電話装置本体10内にアクセスポイント190が破線で示されているが、このアクセスポイント190は後述の第2実施例で利用される。
【0017】
(通話デバイス50の構成)
通話デバイス50の構成について説明する。通話デバイス50は、電話装置本体10と無線通信を行うことによって、電話装置本体10を介して一般電話120と電話通信を行う。通話デバイス50は、制御部52と、記憶部54と、操作部56と、表示部58と、スピーカ60と、マイク62と、無線通信インターフェイス64と、を備える。制御部52は、記憶部54に記憶されているプログラム66に従って処理を実行する。記憶部54には、さらに、電話帳68が記憶されている。電話帳68には、ユーザによって入力された複数の電話識別情報(電話番号)が記憶されている。
【0018】
操作部56は、複数のキーによって構成される。ユーザは、操作部56を操作することによって、様々な指示を通話デバイス50に入力することができる。操作部56は、例えば、フックキー56a、テンキー56b、短縮ダイヤルキー56c等を含む。表示部58は、様々な情報を表示する。ユーザは、スピーカ60とマイク62を利用して通話を行うことができる。無線通信インターフェイス64は、電話装置本体10と無線通信を行うためのインターフェイスである。本実施例では、電話装置本体10と通話デバイス50との間の無線通信は、2.4GHzの周波数帯域(実際には2.4GHzの前後の所定範囲の周波数帯域)を利用して行われる。
【0019】
通話デバイス50は、使用されていない状態ではオンフック状態とされている。通話デバイス50を使用して通話するためには、ユーザは、通話デバイス50をオンフック状態からオフフック状態に移行させる必要がある。例えば、オンフック状態の通話デバイス50は、ユーザがフックキー56aを操作することによってオフフック状態に移行する。なお、通話デバイス50は、電話装置本体10にセット可能に構成されていてもよい。この場合、通話デバイス50は、電話装置本体10にセットされた状態では、オンフック状態であってもよい。通話デバイス50は、ユーザが通話デバイス50を電話装置本体10から取り上げることによって、オフフック状態に移行してもよい。一方、オフフック状態の通話デバイス50は、ユーザがフックキー56aを操作することによって、オンフック状態に移行する。なお、通話デバイス50が電話装置本体10にセット可能に構成されている場合には、通話デバイス50は、ユーザがオフフック状態の通話デバイス50を電話装置本体10にセットすることによって、オンフック状態に移行してもよい。
【0020】
通話デバイス50を用いてユーザが電話をかける場合、ユーザは、オフフック状態の通話デバイス50のテンキー56bを操作することによって(もしくは短縮ダイヤルキー56cを操作することによって)、通話要求の送信先の電話識別情報(PSTN電話番号)を通話デバイス50に入力する。通話デバイス50は、入力された電話識別情報を、電話装置本体10に送信する。電話装置本体10は、電話識別情報に対応する電話装置(例えば、一般電話120)に通話要求を送信する。これにより、ユーザは、電話をかけることができる。なお、ユーザは、電話識別情報を先に入力し、次いでフックキー56aを操作して通話デバイス50をオフフック状態にしても、電話をかけることができる。
【0021】
一方において、例えば、一般電話120が電話装置8に電話をかけた場合には、電話装置本体10は、一般電話120から送信される通話要求を受信する。この場合、電話装置本体10は、通話デバイス50が通話要求通知(例えばリング音の出力、ランプの発光等)を実行するように、通話要求通知指示を通話デバイス50に送信する。この結果、通話デバイス50は、通話要求通知を実行する。ユーザは、通話要求通知を実行中の通話デバイス50をオフフック状態に移行させる。例えば、ユーザはフックキー56aを操作する。これにより、ユーザは、電話に出ることができる。以下では、通話デバイス50において実行される上記の電話をかける操作、及び、電話に出る操作を「通話開始操作」と呼ぶ。
【0022】
一方、通話デバイス50を用いて通話を行っている間にユーザが電話を切る(通話を終了させる)場合、ユーザは、通話デバイス50を用いて通話を行っている間に、フックキー56aを操作することによって、通話デバイス50をオンフック状態に移行させる。これにより、ユーザは電話を切ることができる。以下では、上記の電話を切る操作を「通話終了操作」と呼ぶ。
【0023】
(アクセスポイント90の構成)
アクセスポイント90の構成について説明する。アクセスポイント90は、自身の周囲に存在する端末装置130(例えば、PC等)と無線通信を行う。アクセスポイント90は、制御部92と、記憶部94と、無線通信インターフェイス96と、有線通信インターフェイス98と、を備える。制御部92は、記憶部94に記憶されているプログラム100に従って処理を実行する。無線通信インターフェイス96は、端末装置130と無線通信するためのインターフェイスである。本実施例では、アクセスポイント90と端末装置130との間で行われる無線通信は、IEEE802.11nの規格に従って実行される。アクセスポイント90と端末装置130との間で行われる無線通信では、2.4GHz(実際には2.4GHzの前後の所定範囲の周波数帯域)と、5.0GHz(実際には5.0GHzの前後の所定範囲の周波数帯域)と、の2つの周波数帯域が利用される。なお、アクセスポイント90は、2.4GHzと5.0GHzとのうちの一方のみを利用して端末装置130と無線通信することも可能であるし、2.4GHzと5.0GHzとの両方を同時的に利用して端末装置130と無線通信することも可能である。通話デバイス50において電話通信が行なわれない状態では、アクセスポイント90は、2.4GHzと5.0GHzとの両方を同時的に利用して端末装置130と無線通信する。2つの周波数帯域を同時的に利用する場合は、1つの周波数帯域のみを利用する場合と比べて、アクセスポイント90と端末装置130との間の無線通信の通信速度が速い。有線通信インターフェイス98は、通信線6と接続されている。上記の電話装置本体10の有線通信インターフェイス20とアクセスポイント90の有線通信インターフェイス98とは、通信線6を介して接続されており、相互に有線通信可能である。
【0024】
(各デバイスが実行する処理)
続いて、図2〜図5を参照して、本電話通信システムの各デバイスが実行する処理について説明する。まず、図2を参照して、一般装置120から電話装置本体10に通話要求が送信される場合の処理について説明する。アクセスポイント90と端末装置130との間では無線通信400が行われている。この無線通信400は、2.4GHzと5.0GHzの両方の周波数帯域を利用して行われている。一般電話120のユーザは、電話装置8に電話をかけるための操作を一般電話120に入力する。この場合、一般電話120は、電話装置本体10に通話要求200を送信する。一般電話120から送信された通話要求200は、PSTN4及びPSTN回線26を介して、PSTNインターフェイス24によって受信される(図1参照)。
【0025】
PSTNインターフェイス24によって通話要求200が受信されると、電話装置本体10の制御部12は、通話要求200を検出する(S2)。通話要求200を検出すると、電話装置本体10の第1の通信部30(図1参照)は、通話要求通知指示202を通話デバイス50に送信する。電話装置本体10から送信された通話要求通知指示202は、通話デバイス50の無線通信インターフェイス64によって受信される(図1参照)。
【0026】
無線通信インターフェイス64によって通話要求通知指示202が受信されると、通話デバイス50の制御部52は、通話要求通知指示202を検出する(S4)。制御部52は、次いで、通話要求通知を実行する(S6)。例えば、リング音をスピーカ60から出力する。通話要求通知が行われると、電話装置8のユーザは、電話がかかってきたことを知ることができる。
【0027】
通話要求通知の実行中に、電話装置8のユーザは、通話開始操作206を実行することができる。例えば、電話装置8のユーザは、通話デバイス50のフックキー56aを操作することによって、通話デバイス50をオフフック状態に移行させる。通話開始操作206が実行されると、通話デバイス50の制御部52は、通話開始操作通知208を電話装置本体10に送信する。通話デバイス50から送信された通話開始操作通知208は、電話装置本体10の無線通信インターフェイス22によって受信される(図1参照)。
【0028】
無線通信インターフェイス22によって通話開始操作通知208が受信されると、電話装置本体10の通話開始操作検出部34(図1参照)は、通話開始操作通知208を検出する(S8)。次いで、電話装置本体10の第2の通信部32(図1参照)は、有線通信を利用して、アクセスポイント90に第1の指示300を送信する。第1の指示300は、アクセスポイント90に対して、2.4GHzの周波数帯域の利用を禁止する指示である。第1の指示300は、通信線6を介して、アクセスポイント90の有線通信インターフェイス98によって受信される。
【0029】
有線通信インターフェイス98によって第1の指示300が受信されると、アクセスポイント90の制御部92は、第1の指示300を検出する(S10)。次いで、制御部92は、2.4GHzの周波数帯域の利用を禁止する処理を実行する(S12)。具体的には、アクセスポイント90の制御部92は、記憶部94内の所定のフラグを第1値(例えば「0」)から第2値(例えば「1」)に変更する。制御部92は、上記の所定のフラグとして第2値が記憶されている状態では、2.4GHzの周波数帯域を利用しない。この結果、2.4GHzの周波数帯域の利用が禁止される。S12の処理以降では、アクセスポイント90は、端末装置130との間で、5.0GHzの周波数帯域のみを利用した無線通信402を行う。
【0030】
上記の第1の指示300がアクセスポイント90に送信された後に、電話装置本体10の第1の通信部30(図1参照)は、通話デバイス50との間で、2.4GHzの周波数帯域を利用して、音声データ通信210を開始する。さらに、電話装置本体10の制御部12は、一般電話120との間で、PSTN4を介した音声データ通信212を開始する。音声データ通信210、212が開始されることで、通話デバイス50と一般電話120との間で通話が開始される。即ち、電話装置本体10の制御部12は、通話デバイス50から送信される音声データを一般電話120に転送すると共に、一般電話120から送信される音声データを通話デバイス50に転送する。
【0031】
続いて、図3を参照して、通話デバイス50において通話開始操作が実行される場合の処理について説明する。図3に示されるように、アクセスポイント90と端末装置130との間では、2.4GHzと5.0GHzの両方の周波数帯域を利用して無線通信420が行われている。電話装置8のユーザは、通話デバイス50を操作して、一般電話120に電話をかけるための通話開始操作220を実行する。例えば、電話装置8のユーザは、まず、通話デバイス50のフックキー56aを操作して通話デバイス50をオフフック状態にし、次いで、テンキー56bを操作することによって(もしくは短縮ダイヤルキー56cを操作することによって)、一般電話120の電話識別情報を通話デバイス50に入力する。通話開始操作220が実行された通話デバイス50の制御部52は、通話開始操作220によって入力された電話識別情報222を電話装置本体10に送信する。通話デバイス50から送信された電話識別情報222は、電話装置本体10の無線通信インターフェイス22によって受信される。
【0032】
無線通信インターフェイス22によって電話識別情報222が受信されると、電話装置本体10の通話開始操作検出部34(図1参照)は、電話識別情報222を検出する(S20)。次いで、電話装置本体10の第2の通信部32(図1参照)は、有線通信を利用して、アクセスポイント90に第1の指示320を送信する。第1の指示320は、図2の第1の指示300と同様の指示である。アクセスポイント90は、図2のS10、S12と同様に、第1の指示320を検出し(S22)、2.4GHzの周波数帯域の利用を禁止する処理を実行する(S24)。S24の処理以降では、アクセスポイント90は、端末装置130との間で、5.0GHzの周波数帯域のみを利用した無線通信422を行う。
【0033】
上記の第1の指示300がアクセスポイント90に送信された後に、電話装置本体10の制御部12は、PSTN4を介して、一般電話120に通話要求224を送信する。この結果、一般電話120において通話要求通知(リング音の出力等)が実行される。一般電話120において通話開始操作226が実行されると、電話装置本体10の制御部12は、一般電話120との間で、PSTN4を介した音声データ通信228を開始する。さらに、電話装置本体10の第1の通信部30(図1参照)は、通話デバイス50との間で、2.4GHzの周波数帯域を利用して、音声データ通信230を開始する。音声データ通信228、230が開始されることで、通話デバイス50と一般電話120との間で通話が開始される。
【0034】
続いて、図4を参照して、通話デバイス50と一般電話120の間で通話が行われている状態において、通話デバイス50で通話終了操作が実行される場合の処理について説明する。図2及び図3で説明したように、通話デバイス50と電話装置本体10の第1の通信部30との間では、2.4GHzの周波数帯域を利用した音声データ通信240が行われ、電話装置本体10と一般電話120との間では、PSTN4を介した音声データ通信242が行われている。さらに、アクセスポイント90と端末装置130との間では、5.0GHzの周波数帯域のみを利用した無線通信440が行われている。
【0035】
電話装置8のユーザは、通話デバイス50において通話終了操作244を実行する。例えば、電話装置8のユーザは、通話デバイス50の操作部56のフックキーを操作して、通話デバイス50をオンフック状態に移行させる。通話終了操作244が実行された通話デバイス50の制御部52は、通話終了指示246を電話装置本体10に送信する。通話デバイス50から送信された通話終了指示246は、電話装置本体10の無線通信インターフェイス22によって受信される。
【0036】
無線通信インターフェイス22によって通話終了指示246が受信されると、電話装置本体10の制御部12は、通話終了指示246を検出する(S30)。この場合、電話装置本体10の第1の通信部30は、通話デバイス50との間で行われていた音声データ通信240を終了させる。次いで、電話装置本体10の制御部12は、切断通知248を一般電話120に送信する。これにより、電話装置本体10と一般電話120との間で行われていた音声データ通信242が終了し、通話デバイス50と一般電話120との間で行われていた通話が終了する。次いで、電話装置本体10の第2の通信部32(図1参照)は、有線通信を利用して、アクセスポイント90に第2の指示340を送信する。第2の指示340は、アクセスポイント90に対して、2.4GHzの周波数帯域の利用を許可する指示である。第2の指示340は、通信線6を介して、アクセスポイント90の有線通信インターフェイス98によって受信される。
【0037】
アクセスポイント90の制御部92は、第2の指示340を検出する(S32)。この場合、制御部92は、2.4GHzの周波数帯域を再び利用する処理を実行する(S34)。具体的には、アクセスポイント90の制御部92は、記憶部94内の上記の所定のフラグを第2値から第1値に変更する。制御部92は、上記の所定のフラグとして第1値が記憶されている状態では、2.4GHzと5.0GHzの両方の周波数帯域を利用する。この結果、2.4GHzの周波数帯域が再び利用される。S34の処理以降では、アクセスポイント90は、端末装置130との間で、2.4GHzと5.0GHzの両方の周波数帯域を利用した無線通信442を行う。
【0038】
続いて、図5を参照して、通話デバイス50と一般電話120の間で通話が行われている状態において、一般電話120で通話終了操作が実行される場合の処理について説明する。音声データ通信260、262及び無線通信460は、図4の音声データ通信240、242及び無線通信440と同様である。
【0039】
一般電話120のユーザは、一般電話120において通話終了操作264を実行する。この場合、一般電話120は、切断通知266を電話装置本体10に送信する。一般電話120から送信された切断通知266は、PSTN4、PSTN回線26を介して、PSTNインターフェイス24によって受信される。
【0040】
PSTNインターフェイス24によって切断通知266が受信されると、電話装置本体10は、切断通知266を検出する(S40)。この場合、電話装置本体10の第1の通信部30は、通話デバイス50との間で行われていた音声データ通信260を終了させる。次いで、電話装置本体10の第2の通信部32(図1参照)は、有線通信を利用して、アクセスポイント90に第2の指示360を送信する。第2の指示360は、図4の第2の指示340と同様の指示である。アクセスポイント90の制御部92は、図4のS32、S34と同様に、第2の指示360を検出し(S42)、2.4GHzの周波数帯域を再び利用する処理を実行する(S44)。S44の処理以降では、アクセスポイント90は、端末装置130との間で、2.4GHzと5.0GHzの両方の周波数帯域を利用した無線通信462を行う。
【0041】
第1実施例について詳しく説明した。図2、図3に示されるように、電話装置本体10の通話開始操作検出部34が、通話開始操作通知208又は電話識別情報222を検出する場合に、電話装置本体10の第2の通信部32は、アクセスポイント90に対して、2.4GHzの周波数帯域の利用を禁止する第1の指示300(320)を送信する。この結果、通話デバイス50と電話装置本体10の間の音声データ通信210(230)の周波数帯域(2.4GHz)と、アクセスポイント90と端末装置130との間で行われる無線通信402(422)の周波数帯域(5.0GHz)と、が重複するのを避けることができる。音声データ通信210(230)と無線通信402(422)との間で、電波の干渉を防ぐことができる。通話デバイス50において通話中にノイズが発生するのを抑制することができる。
【0042】
また、図4、図5に示すように、電話装置本体10の第2の通信部32は、通話デバイス50と電話装置本体10の第1の通信部30との間で行われている音声データ通信240(260)が終了される場合に、アクセスポイント90が2.4GHz帯域を再び利用するように、アクセスポイント90に第2の指示340(360)を送信する。この結果、アクセスポイント90は、2.4GHzと5.0GHzの両方の周波数帯域を同時に利用して、無線通信442(462)を実行することができる。音声データ通信240(260)が終了しているため、電波干渉は起こらない。また、アクセスポイント90は、5.0GHzの周波数帯域のみを利用する場合と比べて、端末装置130との無線通信を高速で行うことができる。
【0043】
また、電話装置本体10は、アクセスポイント90と有線接続されている。このため、電話装置本体10とアクセスポイント90との間の通信が、電話装置本体10と通話デバイス50との間の無線通信の電波と、アクセスポイント90と端末装置130との間の無線通信の電波と、に干渉しない。
【0044】
また、本実施例では、第1の指示300(320)がアクセスポイント90に送信された後に、第1の通信部30は、通話デバイス50との間で、音声データ通信210(213)を開始する。これにより、アクセスポイント90の利用周波数帯域が5.0GHzのみに制限された後に、音声データ通信210(213)が開始される。音声データ通信210(230)と無線通信402(422)との間の電波の干渉を防ぐことができる。また、アクセスポイント90は、第1の指示300(320)を受信する前までは、2.4GHzと5.0GHzの周波数帯域を利用して、端末装置130との無線通信を高速で行うことができる。すなわち、アクセスポイント90の利用周波数帯域を適切なタイミングで制限することで、音声データ通信210(230)と無線通信402(422)との間の電波の干渉を防ぐとともに、アクセスポイント90と端末装置130との無線通信速度を最適に維持することができる。電波干渉の防止、及び、最適な無線通信速度の維持、の両者を実現することで良好な無線通信環境を維持することができる。
【0045】
以上の説明から明らかなように、実施例の電話装置本体10が本発明の電話装置の一例である。2.4GHz、5.0GHzが、それぞれ、本発明の第1の周波数帯域、第2の周波数帯域の一例である。また、2.4GHzと5.0GHzとの2つの周波数帯域が、本発明の特定の周波数帯域の一例である。音声データ通信210、230が、本発明の特定の無線通信の一例である。なお、実施例の通話開始操作検出部34が通話開始操作通知208を検出する場合(図2のS8参照)、及び、通話開始操作検出部34が電話識別情報222を検出する場合(図3のS20参照)、のいずれも、本発明の「前記通話開始操作の実行が検出される前記特定の場合」の一例である。
【0046】
(第2実施例)
第2実施例について説明する。本実施例では、図1に示されるように、アクセスポイント190(破線部参照)と電話装置本体10とが、一体に構成されている。即ち、電話装置本体10が備える図示省略の筐体内に、アクセスポイント190が配置されている。アクセスポイント190は、第1実施例のアクセスポイント90と同様の構成及び機能を有する。アクセスポイント190と電話装置本体10の第2の通信部32とは、電話装置本体10の内部に設けられたハブ(図示省略)によって、相互に通信可能に接続されている。本実施例によると、アクセスポイント190の電源と電話装置本体10の電源を統合することができる。本実施例でも、電話装置本体10は、アクセスポイント190に第1の指示及び第2の指示を送信する。アクセスポイント190は、第1の指示及び第2の指示に従って、端末装置130と無線通信するための周波数帯域を変更する。
【0047】
上記の各実施例の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の各実施例と異なるタイミングで、第2の通信部32が第1の指示を送信してもよい。例えば、電話装置本体10の制御部12が通話要求200を検出した後であって、電話装置本体10の第1の通信部30が通話要求通知指示202を送信する前に、第2の通信部32は、第1の指示300をアクセスポイント90に送信してもよい。また、第1の通信部30が通話要求通知指示202を送信した後であって、電話装置本体10の制御部12が通話要求開始操作通知208を検出する前に、第2の通信部32は、第1の指示300をアクセスポイント90に送信してもよい。本変形例も、本発明の「前記第2の通信部は、前記通話デバイスと前記第1の通信部との間で特定の無線通信が開始される特定の場合に、・・・前記アクセスポイントに第1の指示を送信する」という構成に含まれる。
【0048】
(2)電話装置本体10と一般電話120とが通信不可能な状態が所定時間継続した場合(タイムアウト)に、第1の通信部30は、通話デバイス50との間で行っている音声データ通信を終了させてもよい。
【0049】
(3)電話装置本体10に有線の通話デバイスがさらに接続されてもよい。有線の通話デバイスにおいて通話開始操作が行なわれた場合には、第2の通信部32は、第1の指示をアクセスポイント90に送信しなくてもよい。
【0050】
(4)電話装置本体10とアクセスポイント90とは、相互に無線通信を行う構成であってもよい。
【0051】
(5)上記の各実施例では、アクセスポイント90と端末装置130との間で行われる無線通信は、IEEE802.11nの規格に従って、2.4GHzと5.0GHzの2つの周波数帯域を利用する。しかしながら、アクセスポイント90と端末装置130との間で行われる無線通信に利用される周波数帯域は、上記のものには限られない。例えば、アクセスポイント90と端末装置130との間の無線通信は、2.0〜5.0GHzのいずれの帯域も利用可能である無線通信であってもよい。この場合も、通話デバイス50と第1の通信部30とが無線通信を行う場合には、第2の通信部32がアクセスポイント90に対して2.4GHz帯域の利用を禁止する第1の指示を送信する。本変形例のアクセスポイント90も、本発明の「第1の周波数帯域を含む特定の周波数帯域を利用して端末装置と無線通信可能なアクセスポイント」という構成に含まれる。
【0052】
(6)電話装置本体10は、PSTN4を利用するPSTN電話装置であるが、IP網を利用するIP電話装置であってもよい。
【0053】
(7)「通話開始操作」として「電話をかける操作」は、オフフック状態にするための操作を行うだけであってもよい。
【0054】
(8)電話装置8は、これに限らず、例えば、電話機能およびファクシミリ機能を備えたファクシミリ装置であってもよい。この場合、ファクシミリ機能により例えばファクシミリ装置本体で受信したファクシミリデータを子機である通話デバイスに転送するための操作や、送信すべきファクシミリデータを通話デバイスからファクシミリ装置本体へ送信するための操作、を行った場合も、通話開始操作が行われた場合と同様に、アクセスポイントで利用できる周波数帯域の制限を行ってもよい。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0056】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
2:電話通信システム、4:PSTN、6:通信線、8:電話装置、10:電話装置本体、12:制御部、14:記憶部、16:操作部、18:表示部、20:有線通信インターフェイス、22:無線通信インターフェイス、24:PSTNインターフェイス、26:PSTN回線、30:第1の通信部、32:第2の通信部、34:通話開始操作検出部、36:プログラム、50:通話デバイス、52:制御部、54:記憶部、56:操作部、56a:フックキー、56b:テンキー、56c:短縮ダイヤルキー、58:表示部、60:スピーカ、62:マイク、64:無線通信インターフェイス、90:アクセスポイント、92:制御部、94:記憶部、96:無線通信インターフェイス、98:有線通信インターフェイス、100:プログラム、120:一般電話、130:端末装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域を含む特定の周波数帯域を利用して端末装置と無線通信可能なアクセスポイントに接続される電話装置であって、
前記第1の周波数帯域を利用して、通話デバイスと無線通信する第1の通信部と、
前記アクセスポイントと通信する第2の通信部と、を備え、
前記第2の通信部は、前記通話デバイスと前記第1の通信部との間で特定の無線通信が開始される特定の場合に、前記アクセスポイントが前記第1の周波数帯域以外の周波数帯域を利用するように、前記アクセスポイントに第1の指示を送信する、電話装置。
【請求項2】
前記特定の周波数帯域は、前記第1の周波数帯域と、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域と、を含み、
前記第1の指示は、前記アクセスポイントが前記第1の周波数帯域を利用することを禁止する指示である、請求項1記載の電話装置。
【請求項3】
前記通話デバイスで通話開始操作が実行されることを検出する通話開始操作検出部をさらに備え、
前記第2の通信部は、前記通話開始操作の実行が検出される前記特定の場合に、前記アクセスポイントに前記第1の指示を送信する、請求項1又は2に記載の電話装置。
【請求項4】
前記第2の通信部は、前記第1の指示が送信された後に、前記通話デバイスと前記第1の通信部との間で前記特定の無線通信が終了される場合に、前記アクセスポイントが前記第1の周波数帯域を再び利用するように、前記アクセスポイントに第2の指示を送信する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電話装置。
【請求項5】
前記アクセスポイントと有線で接続される、請求項1から4のいずれか1項に記載の電話装置。
【請求項6】
前記特定の無線通信は、音声データの無線通信を含み、
前記第1の通信部は、前記第1の指示が送信された後に、前記通話デバイスとの間で前記音声データの前記無線通信を開始する、請求項1から5のいずれか1項に記載の電話装置。
【請求項7】
前記アクセスポイントと、請求項1から6のいずれか1項に記載の電話装置と、を備える電話通信システム。
【請求項8】
前記アクセスポイントと前記電話装置とが一体に構成されている、請求項7記載の電話通信システム。
【請求項9】
第1の周波数帯域を含む特定の周波数帯域を利用して周辺機器と無線通信可能なアクセスポイントに接続される電話装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記電話装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
前記第1の周波数帯域を利用して、通話デバイスと無線通信する第1の通信処理と、
前記アクセスポイントと通信する第2の通信処理と、を実行させ、
前記第2の通信処理では、前記通話デバイスと前記第1の通信部との間で特定の無線通信が開始される特定の場合に、前記アクセスポイントが前記第1の周波数帯域以外の周波数帯域を利用するように、前記アクセスポイントに第1の指示を送信する、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−49949(P2011−49949A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198043(P2009−198043)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】