説明

露光ヘッド、画像形成装置

【課題】発光素子が発光する光を3枚のレンズで結像する露光ヘッドおよび当該露光ヘッドを用いた画像形成装置において、レンズの大きさを抑えることで、レンズに入射する迷光の量を抑えて、良好な露光を実現可能とする。
【解決手段】第1のレンズと、第1のレンズを透過した光を通過させる開口を有する開口絞りと、開口を通過した光が入射する第2のレンズと、第2のレンズを透過した光が入射する第3のレンズと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子が発光した光により露光を行なう露光ヘッドおよび当該露光ヘッドを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の発光素子を主走査方向に並べて発光素子グループを構成するとともに、この発光素子グループからの光を結像光学系により結像する露光ヘッドが記載されている。また、特許文献1では、2枚のレンズで構成された結像光学系の他、3枚のレンズで構成された結像光学系が記載されている(図32)。このような3枚レンズの結像光学系は、収差の小さい良好な結像性能を、比較的容易に実現できるといった利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−152040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような露光ヘッドでは、結像光学系を構成するレンズを小さくすることが好適である。と言うのも、レンズが大きくなると、迷光がレンズに入射するおそれが高まるからである。そして、迷光がレンズに入射するおそれは、レンズ枚数が多いほど高まる。したがって、上述のような3枚のレンズで構成された結像光学系では、レンズへの迷光の入射といった問題が発生しやすく、その結果、迷光に起因した露光不良が顕著となる場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光素子が発光する光を3枚のレンズで結像する露光ヘッドおよび当該露光ヘッドを用いた画像形成装置において、レンズの大きさを抑えることで、レンズに入射する迷光の量を抑えて、良好な露光を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、光を発光する第1の発光素子、及び第1の発光素子の第1の方向に配設されて光を発光する第2の発光素子を有する発光素子基板と、記第1の発光素子が発光した光および第2の発光素子が発光した光が入射する第1のレンズと、第1の発光素子が発光して第1のレンズを透過した光及び第2の発光素子が発光して第1のレンズを透過した光を通過させる開口を有する開口絞りと、第1の発光素子が発光して開口絞りの開口を通過した光及び第2の発光素子が発光して開口絞りの開口を通過した光が入射する第2のレンズと、第1の発光素子が発光して第2のレンズを透過した光及び第2の発光素子が発光して第2のレンズを透過した光が入射する第3のレンズと、を備え、像面に第1の発光素子から発光された光による潜像及びを第1の発光素子から発光された光による潜像を形成することを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、光を発光する第1の発光素子及び第1の発光素子の第1の方向に配設されて光を発光する第2の発光素子を有する発光素子基板、第1の発光素子が発光した光および第2の発光素子が発光した光が入射する第1のレンズ、第1の発光素子が発光して第1のレンズを透過した光及び第2の発光素子が発光して第1のレンズを透過した光を通過させる開口を有する開口絞り、第1の発光素子が発光して開口絞りの開口を通過した光及び第2の発光素子が発光して開口絞りの開口を通過した光が入射する第2のレンズ、及び第1の発光素子が発光して第2のレンズを透過した光及び第2の発光素子が発光して第2のレンズを透過した光が入射する第3のレンズと、を備え、像面に第1の発光素子から発光された光による潜像及びを第1の発光素子から発光された光による潜像を形成する露光ヘッドと、露光ヘッドにより潜像が形成される潜像担持体と、潜像担持体に形成された潜像を現像する現像部と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(露光ヘッド、画像形成装置)では、発光素子(第1・第2の発光素子)が発光した光は、第1のレンズ、第2のレンズおよび第3のレンズをこの順で透過した後に結像される。そして、この発明では、第1のレンズと第2のレンズとの間に配された開口を有する開口絞りが設けられている。換言すれば、第1のレンズおよび第2のレンズは、開口絞りによって光が絞られる位置の近くに配される。そのため、第1のレンズおよび第2のレンズの有効領域は狭く、第1のレンズおよび第2のレンズを小さく構成することができる。よって、第1のレンズおよび第2のレンズに入射する迷光の量を抑えて、良好な露光が実現可能となっている。
【0009】
ところで、この発明は、第1の発光素子と第2の発光素子が第1の方向に配されている。そして、これら第1・第2の発光素子が発光した光は、開口絞りで一旦絞られた後に、再び広がって第3のレンズに入射する。そのため、第3のレンズは、第1・第2の発光素子の配置に対応して、第1の方向へはある程度の大きさを要する。一方、第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向へは、それほど大きさを要しない。そこで、第3のレンズの像面に潜像を形成する光を透過させる第1領域(有効領域)の第1の方向に直交する第2の方向の曲率半径より、第3のレンズの像面に潜像を形成する光が透過しない第2領域の第2の方向の曲率半径は小さいように、露光ヘッドを構成しても良い。このように、第2の方向において、有効領域外での曲率半径を小さくすることで、有効領域の周縁と第3のレンズの周縁との間の領域(第2の領域)の幅を狭くすることができる。その結果、第2の方向への第3のレンズの大きさを小さくすることができ、第3のレンズに入射する迷光の量を抑えて、良好な露光が実現可能となっている。
【0010】
また、第3のレンズの第1の領域の第2の方向の曲率半径は、第3のレンズの第1の領域の第1の方向の曲率半径よりも小さいように、露光ヘッドを構成しても良い。これによっても、第2の方向への第3のレンズの大きさを小さくすることができ、第3のレンズに入射する迷光の量を抑えて、良好な露光が実現可能となっている。
【0011】
なお、第1・第2のレンズの向きは種々の組合せが可能であるが、例えば、第1のレンズは、発光素子基板の側(第1の発光素子および第2の発光素子側)に凸であり、第2のレンズは、像面の側(像側)に凸であっても良い。
【0012】
この際、第1のレンズ、第2のレンズおよび開口絞りを配設するレンズ基板を有するように、露光ヘッドは構成されても良い。
【0013】
この際の具体的な構成としては種々のものを採用可能である。そこで、一方面に第1のレンズが配された第1の基板と、一方面に第2のレンズが配された第2の基板とを備え、開口絞りは、第1の基板の他方面と第2の基板の他方面とに挟まれ、第1の基板の一方面と第2の基板の一方面とは接着されるように構成しても良い。あるいは、一方面に第1のレンズが配された第1の基板と、一方面に第2のレンズが配された第2の基板と、開口絞りが配された第3の基板とを備え、第3の基板は、第1の基板と第2の基板との間に挟まれて、第1の基板と第2の基板とに固定されるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図4】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図5】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図6】レンズLS1、LS2の曲率半径をグラフで示した図。
【図7】レンズLS3の曲率半径をグラフで示した図。
【図8】レンズアレイLA3上のレンズLS3を光軸方向から平明視した図。
【図9】レンズLS3の変形例を示す図。
【図10】開口絞りを支持する構成の変形例を模式的に示した分解図。
【図11】開口絞りを支持する構成の変形例を模式的に示した分解図。
【図12】開口絞りを支持する構成の変形例を模式的に示した分解図。
【図13】開口絞りを支持する構成の変形例を模式的に示した分解図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。
【0016】
この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号を与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、ヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメーター値とに基づき、各色の画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kそれぞれのラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート状の記録媒体RMに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図1では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図1に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造および動作も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0018】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動することとなる。
【0019】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成するラインヘッド29と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像器24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0020】
この実施形態では、帯電器22は2つのコロナ帯電器221、222で構成されており、感光体ドラム21の回転方向D21においてコロナ帯電器221がコロナ帯電器222に対して上流側に配置されており、2つのコロナ帯電器221、222により2段階で帯電されるように構成されている。各コロナ帯電器221、222は同一構成であり、感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、スコロトロン帯電器である。
【0021】
そして、コロナ帯電器221、222により帯電された感光体ドラム21表面に対して、ラインヘッド29がビデオデータVDに基づいて静電潜像を形成する。つまり、ヘッドコントローラーHCがラインヘッド29にビデオデータVDを送信すると、このビデオデータVDに基づいて各発光素子Eが発光する。これにより、感光体ドラム21表面が露光されて、画像信号に対応した静電潜像が形成される。なお、ラインヘッド29の構成および動作の詳細は後述する。
【0022】
こうして形成された静電潜像に対して現像器24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。この画像形成装置1の現像器24は、現像ローラー241を有している。この現像ローラー241は円筒状の部材であり、鉄等金属製の内芯の外周部に、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、NBR、PFAチューブなどの弾性層を設けたものである。この現像ローラー241は現像用モーターに接続され、図1紙面において反時計回りに回転駆動されて感光体ドラム21に対してウィズ回転する。また、この現像ローラー241は図示を省略する現像バイアス発生部(定電圧電源)と電気的に接続されており、適当なタイミングで現像バイアスが印加されるように構成されている。
【0023】
また、この現像ローラー241に対して液体現像剤を供給するためにアニロックスローラーが設けられており、アニロックスローラーを介して現像剤貯留部から現像ローラー241へ液体現像剤が供給される。このようにアニロックスローラーは現像ローラー241に対して液体現像剤を供給する機能を有する。このアニロックスローラーは、液体現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に彫刻された螺旋溝などによる凹部パターンが形成されたローラーである。現像ローラー241と同様に、金属の芯金にウレタン、NBRなどのゴム層を巻き付けたものや、PFAチューブを被せたものなどが用いられる。また、アニロックスローラーは現像用モーターに接続されて回転する。
【0024】
現像剤貯留部に貯留される液体現像剤は、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)を液体キャリアとした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0025】
上記のようにして、液体現像剤が供給された現像ローラー241はアニロックスローラーと同時に回転すると共に、感光体ドラム21の表面とは同方向に移動するように回転して現像ローラー241の表面に担持された液体現像剤を現像位置に搬送する。なお、トナー像を形成するため、現像ローラー241の回転方向は、その表面が感光体ドラム21の表面と同方向に移動するようにウィズ回転する必要があるが、アニロックスローラーに対しては、逆方向、或いは、同方向、どちらに移動する構成であってもよい。
【0026】
また、現像器24では、この現像ローラー241の回転方向において現像位置の上流側直前にトナー圧縮コロナ発生器242が現像ローラー241に対向して配置されている。このトナー圧縮コロナ発生器242は現像ローラー241の表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、定電流電源で構成されたトナーチャージ発生部(図示省略)と電気的に接続されている。そして、トナー圧縮コロナ発生器242に対してトナーチャージバイアスが与えられると、現像ローラー241によって搬送される液体現像剤のトナーに対して、このトナー圧縮コロナ発生器242と近接する位置で電界が印加され、帯電、圧縮が施される。なお、このトナー帯電、圧縮には、電解印加によるコロナ放電に代えて、接触して帯電させるコンパクションローラーを用いてもよい。
【0027】
また、このように構成された現像器24は感光体ドラム21上の潜像を現像する現像位置と感光体ドラム21から離れた退避位置との間で往復可能となっている。したがって、現像器24が退避位置に移動して位置決めされると、その間、シアン用の画像形成ステーション2Cでは、感光体ドラム21への新たな液体現像剤の供給は停止される。
【0028】
感光体ドラム21の回転方向D21において現像位置の下流側に、第1スクイーズ部25が配置されるとともに、さらに第1スクイーズ部25の下流側に第2スクイーズ部26が配置されている。これらのスクイーズ部25、26にはスクイーズローラー251、261がそれぞれ設けられている。そして、スクイーズローラー251が第1スクイーズ位置で感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰現像剤を除去する。また、感光体ドラム21の回転方向D21において第1スクイーズ位置の下流側の第2スクイーズ位置でスクイーズローラー261が感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰液体キャリアやカブリトナーを除去する。また、本実施形態ではスクイーズ効率を高めるために、スクイーズローラー251、261に対して図示省略するスクイーズバイアス発生部(定電圧電源)が電気的に接続されており、適当なタイミングでスクイーズバイアスが印加されるように構成されている。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26を設けているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0029】
これらのスクイーズ位置を通過してきたトナー像は転写部3の中間転写体31に1次転写される。この中間転写体31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を一時的に担持可能な像担持体としての無端状ベルトであり、複数のローラー32、33、34、35および36に掛け渡されている。これらのうちローラー32はメインモーターに連結されて、中間転写体31を図1の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。なお、本実施形態では、記録紙RMとの密着性を高めて記録紙RMへのトナー像の転写性を高めるために、中間転写体31の表面に弾性層を設け、当該弾性層の表面にトナー像が担持されるように構成されている。
【0030】
ここで、中間転写体31を掛け渡されたローラー32ないし36のうち、メインモーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33ないし36は駆動源を有しない従動ローラーである。また、ベルト駆動ローラー32は、ベルト移動方向D31において一次転写位置TR1の下流側、かつ後述する二次転写位置TR2の上流側で中間転写体31を巻き掛けている。
【0031】
転写部3は一次転写バックアップローラー37を有しており、一次転写バックアップローラー37は中間転写体31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写体31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21の外周面が中間転写体31と当接して一次転写ニップ部NP1cを形成している。そして、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写体31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写体31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写体31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写体31へのトナー像転写が行われる。
【0032】
こうして中間転写体31に転写されたトナー像は、ベルト駆動ローラー32への巻き掛け位置を経由して二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写体31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写部4の二次転写ローラー42が中間転写体31を挟んで対向配置されており、中間転写体31表面と転写ローラー42表面とが互いに当接して二次転写ニップ部NP2を形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。バックアップローラー34の回転軸は、例えばバネのような弾性部材である押圧部345によって弾性的に、かつ中間転写体31に対して近接・離間移動自在に支持されている。
【0033】
二次転写位置TR2においては、中間転写体31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録媒体RMに転写される。また、トナー像が二次転写された記録媒体RMは、二次転写ローラー42から搬送経路PT上に設けられた定着ユニット7へ送出される。定着ユニット7では、記録媒体RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録媒体RMへのトナー像の定着が行われる。こうして、記録媒体RMに所望の画像を形成することができる。
【0034】
以上が画像形成装置の概略構成である。続いて、本実施形態にかかる画像形成装置に適用可能なラインヘッド29の詳細について説明する。図3、図4および図5は、本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図である。特に、図3は、ラインヘッド29が備えるヘッド基板を光軸方向Doaから見た平面図であり、図4は、ラインヘッド29の部分斜視図であり、図5は、ラインヘッド29のA−A線(図3の階段状の二点鎖線)における部分階段断面図であって、該断面をラインヘッド29の長手方向LGDから見た場合に相当する。図3では、開口絞り295の開口Apが破線で記載されるとともに、レンズLS1〜LS3が一点鎖線で記載されているが、これらは、ヘッド基板293上にある発光素子Eと、ヘッド基板293上にない開口ApおよびレンズLS1〜LS3との位置関係を示すために記載されたものである。
【0035】
このラインヘッド29は、長手方向LGDに長尺で幅方向LTDに短尺な全体構成を備える。そこで、図3〜図5および以下の図面では必要に応じて、ラインヘッド29の長手方向LGDおよび幅方向LTDを示す。また、レンズが構成する結像光学系の光軸方向Doaについても、図3〜図5および以下の図面で適宜示すとともに、必要に応じて、光軸方向Doaの矢印側を「表」あるいは「上」と表現し、光軸方向Doaの矢印と反対側を「裏」「下」あるいは「底」と表現する。なお、これらの方向LGD、LTD、Doaは互いに直交もしくは略直交している。
【0036】
また、上述のとおり、同ラインヘッド29を画像形成装置に適用するにあたっては、ラインヘッド29は、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動する感光体ドラム21表面に対して露光を行なうものであり、しかも、感光体ドラム21表面の主走査方向MDはラインヘッド29の長手方向LGDに平行もしくは略平行であり、感光体ドラム21表面の副走査方向SDはラインヘッド29の幅方向LTDに平行もしくは略平行である。そこで、必要に応じて、長手方向LGD・幅方向LTDと一緒に、主走査方向MD・副走査方向SDも図示することとする。
【0037】
ラインヘッド29では、複数(図1の例では35個)の発光素子Eを長手方向LGDに2行千鳥で並べて、1個の発光素子グループEGが構成されている。さらに、ラインヘッド29では、複数の発光素子グループEGが3行千鳥で長手方向LGDに並べられている。かかる配列態様は、換言すれば次のようにも説明できる。つまり、長手方向LGDへ距離3×Dg毎に発光素子グループEGを配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数の発光素子グループEGから1行の発光素子グループ行GRa等が構成される。さらに、3行の発光素子グループ行GRa、GRb、GRcは、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。
【0038】
また、各発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有するトップエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。つまり、各発光素子Eを構成する有機EL素子は、長手方向LGDに長く幅方向LTDに短いガラス平板であるヘッド基板293の表面293−hに形成されている。
【0039】
上述のように配置された複数の発光素子グループEGそれぞれに対しては1つの結像光学系OSが対向している。具体的には、この結像光学系OSは、光軸方向Doaに並ぶ3枚のレンズLS1、LS2、LS3で構成されている。平面視において、これらレンズLS1、LS2、LS3は、発光素子グループEGに近い方からこの順番で並んでいる。また、第1レンズLS1は、物体側(発光素子グループEG側)に凸であり、第2レンズLS2は像側(感光体ドラム21側)に凸であり、第3レンズLS3は物体側に凸となっている。なお、図4、図5では、発光素子グループEGとレンズLS1との間には遮光部材297が図示されているが、これについては結像光学系の説明の後に説明する。
【0040】
このラインヘッド29では、3行千鳥で並ぶ複数の発光素子グループEGのそれぞれに対向してレンズLS1、LS2、LS3を配置するために、複数のレンズLS1を3行千鳥で並べたレンズアレイLA1と、複数のレンズLS2を3行千鳥で並べたレンズアレイLA2と、複数のレンズLS3を3行千鳥で並べたレンズアレイLA3とが設けられている。つまり、レンズアレイLA1(LA2、LA3)では、長手方向LGDへ距離3×Dg毎にレンズLS1(LS2、LS3)を配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数のレンズLS1(LS2、LS3)から1行のレンズ行が構成される。さらに、3行のレンズ行は、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。ちなみに、レンズアレイLA1(LA2、LA3)は、平板形状を有して光透過製のガラス基板SBに樹脂製のレンズLS1(LS2、LS3)を形成することで構成することができる。
【0041】
なお、レンズアレイLA1を構成するガラス基板SBの厚みT1と、レンズアレイLA2を構成するガラス基板SBの厚みT2とは互いに等しい(T1=T2)。また、レンズアレイLA3を構成するガラス基板SBの厚みT3は、レンズアレイLA1、LA2を構成するガラス基板SBの厚みT1、T2より薄い(T3<T1、T3<T2)。このように、感光体ドラム21に対向するレンズアレイLA3のガラス基板SBを薄くすることで、当該ガラス基板SBから感光体ドラム21までの距離であるワークディスタンスを大きくとることができる。その結果、レンズアレイLA3と感光体ドラム21の干渉を防止することが容易となり、延いては、画像形成装置の設計の容易化が図られる。
【0042】
また、レンズアレイLA1、LA2の間には、レンズLS1、LS2、LS3の直径よりも小さい直径の円形状の開口Apが貫通形成された、薄板状の開口絞り295が設けられている。この開口絞り295では、3行千鳥で並ぶ複数の発光素子グループEGのそれぞれに対向して複数の開口Apが3行千鳥で並んでいる。また、この開口絞り295は、2枚のレンズアレイLA1、LA2に挟み込まれている。すなわち、レンズアレイLA1、LA2それぞれのガラス基板SBが有する両主面のうち、レンズLS1、LS2が形成された主面を一方面とし、レンズLS1、LS2が形成されていない主面を他方面としたとき、開口絞り295は、レンズアレイLA1のガラス基板SB(第1の基板)の他方面と、レンズアレイLA2のガラス基板SB(第2の基板)の他方面とに挟まれた状態で、これらガラス基板SB(第1・第2の基板)の他方面に接着されている。こうして、2枚のレンズアレイLA1、LA2を開口絞り295を介して貼り合わせて一体的に形成した、板状の光学部材298が構成されている。
【0043】
また、この実施形態では、長手方向LGDに長尺な板状光学部材298およびレンズアレイLA3を一体的な構成で作成することは困難であることに鑑みて、比較的短尺な板状光学部材298およびレンズアレイLA3を作製し、これらを長手方向LGDに並べることで長尺化を図っている。
【0044】
より具体的には、ヘッド基板表面293−hの幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP1が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP1、SP1に架設された状態で、複数の板状光学部材298(レンズアレイLA1、LA2)が長手方向LGDに並べられて、長尺レンズアレイが構成されている。また、これら複数の板状光学部材298表面の幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP2が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP2、SP2に架設された状態で、複数のレンズアレイLA3が長手方向LGDに並べられて、1つの長尺レンズアレイが構成されている。
【0045】
つまり、上述のように構成された板状光学部材298およびレンズアレイLA3をヘッド基板293に対向させることで、発光素子グループEGの3行千鳥配置に対応して、光軸方向Doaに並ぶレンズLS1、開口Ap、レンズLS2、レンズLS3で構成される結像光学系OSが3行千鳥で長手方向LGDに並ぶこととなる。そして、発光素子グループEGの各発光素子Eが射出した光は、結像光学系OSを透過して、感光体ドラム21表面に照射される。なお、図5では、発光素子グループ行GRaに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSaが併記されている。また、同様にして、発光素子グループ行GRb、GRcに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSb、OScが併記されている。すなわち、幅方向LTDに互いに異なる位置に配置された結像光学系OSに対して、異なる符合OSa、OSb、OScが付されている。
【0046】
このように、ラインヘッド29では、複数の発光素子グループEGそれぞれに対して専用の結像光学系OSが配置されている。このようなラインヘッド29では、発光素子グループEGからの光は、当該発光素子グループEGに設けられた結像光学系OSにのみ入射し、それ以外の結像光学系OSに入射しないことが望ましい。そこで、ヘッド基板293の表面293−hとレンズアレイLA1との間には、遮光部材297が設けられている。この遮光部材297は、発光素子グループEGから当該発光素子グループEGに対向する結像光学系OSに向かう光を制限する機能を果たす。具体的には、遮光部材297には、発光素子グループEGからこれに対向する結像光学系OSへと向かう導光孔2971が、光軸方向Doaに貫通形成されている。導光孔2971は、発光素子グループEGの幅より短い直径を有する円柱形状の孔であり、その中心軸は結像光学系OSの光軸OAと概ね一致している。したがって、発光素子グループEGから射出された光のうち、遮光部材297の底面で遮られることなく導光孔2971を通過した光が、結像光学系OSに入射することとなる。そして、結像光学系OSは反転像かつ縮小像を形成する結像倍率で入射光を結像して、感光体ドラム21表面に光のスポットを形成する。
【0047】
ちなみに、遮光部材297が有する導光孔2971の上側はレンズLS1に対向する一方、導光孔2971の下側はトップエミッション型の発光素子Eからなる発光素子グループEGに対向する。このような構成では、導光孔2971の周縁部がレンズLS1や発光素子グループEGと干渉することを防止しておくことが好適となる。
【0048】
そこで、この実施形態では、レンズアレイLA1に並ぶ複数のレンズLS1の間には、主走査方向MDおよび副走査方向SDそれぞれに間隔CLが設けられている。この間隔CLにおいてレンズアレイLA1の裏面は平坦に仕上げられている。そして、レンズLS1より大きい直径で仕上げられた導光孔2971の上側の周縁部がこの間隔CLに当接するように設けられている。こうして、導光孔2971の周縁部とレンズLS1との干渉が防止されている。
【0049】
一方、ヘッド基板293の表面293−hにおいて、発光素子Eが形成されている領域の副走査方向SDの両外側には、スペーサー299が設けられている。そして、遮光部材297は副走査方向SDからこれらスペーサー299に架設されており、その結果、導光孔2971の下側の周縁部とヘッド基板表面293−hとの間には隙間が設けられている。その結果、発光素子グループEGはこの隙間に位置することができ、導光孔2971の下側の周縁部と発光素子グループEGとの干渉が防止されている。
【0050】
上述のとおり、このラインヘッド29では、発光素子グループEGに対して、レンズLS1、開口Ap、レンズLS2、レンズLS3がこの順番で光軸方向Doaに並ぶ。したがって、発光素子グループEG(の各発光素子E)が射出した光は、レンズLS1、開口Ap、レンズLS2、LS3をこの順番で透過して、感光体ドラム21の表面に結像される。ここで、発光素子グループEGから射出されて感光体ドラム21表面に結像される光がレンズLS1〜LS3それぞれを透過する領域を、レンズLS1〜LS3それぞれの「有効領域」と称することとする。なお、レンズLS2、LS3は、開口Apよりも像側(感光体ドラム21側)に設けられているため、レンズLS2、LS3それぞれの有効領域は、開口Apを通過した光が当該レンズを通過する領域となる。そして、この実施形態では、レンズLS1〜LS3の曲率半径が、各レンズの有効領域に対して次のように設定されている。
【0051】
図6は、レンズLS1、LS2の曲率半径をグラフで示した図である。同図では、横軸に像高がとられるとともに、縦軸にレンズの曲率半径が取られている。また、同図において、主走査有効領域とは主走査方向MD(長手方向LGD)における有効領域を示し、副走査有効領域とは副走査方向SD(幅方向LTD)における有効領域を示し、「主」という文字が付された破線は主走査方向MD(長手方向LGD)におけるレンズの曲率半径を示し、「副」という文字が付された実線は副走査方向SD(幅方向LTD)におけるレンズの曲率半径を示している。
【0052】
図6に示すように、レンズLS1、LS2は、いずれの像高においても、主走査方向MDの曲率半径の方が副走査方向SDの曲率半径よりも大きくなっている。また、レンズLS1、LS2は、主走査方向MDおよび副走査方向SDのいずれの方向においても、像高の増大に応じて曲率半径が増加しており、有効領域の範囲内よりも有効領域の外側で曲率半径が大きくなっている。
【0053】
なお、上述のような構成では、レンズLS1、LS2は開口Apの近傍に配設されるため、レンズLS1、LS2の有効領域は比較的狭い。したがって、レンズLS1、LS2については、有効領域を損なうこと無く、幅(幅方向LTDへの長さ)を容易に狭くすることができ、図3や図5に示すとおりレンズLS3と比較して狭い幅を有している(なお、レンズLS1、LS2は、幅方向LTDのみならず長手方向LGDにもレンズLS3よりも小さい長さを有している)。一方、レンズLS3と開口Apとの間にはレンズLS2が配置されており、レンズLS3は開口Apとの距離が長いため、レンズLS3の有効領域は比較的広い。そこで、このレンズLS3の有効領域を損なうこと無くレンズLS3の幅(幅方向LTDへの長さ)を抑えて、レンズLS3が並べられたレンズアレイLA3の幅(幅方向LTDへの長さ)を抑えるために、レンズLS3は次のような構成を備える(図7、図8)。
【0054】
図7は、レンズLS3の曲率半径をグラフで示した図である。図7での表記は上述の図6の表記と同様である。図7に示すように、レンズLS3は、いずれの像高においても、主走査方向MDの曲率半径の方が副走査方向SDの曲率半径よりも大きくなっている。また、レンズLS3の主走査方向MDの曲率半径は、レンズLS1、LS2と同様に、像高の増大に応じて増加しており、有効領域の範囲内よりも有効領域の外側で曲率半径が大きい値を示す。一方、レンズLS3の副走査方向SDの曲率半径は、像高の増大に応じて減少しており、有効領域の範囲内よりも有効領域の外側で曲率半径が小さい値を示す。そして、このように曲率半径が設定された各レンズLS3が、レンズアレイLA3において相互に接続されている(図8)。
【0055】
図8は、レンズアレイLA3上のレンズLS3を光軸方向から平明視した図である。図8および上述の図3等に示すように、3枚のレンズLS3が副走査方向SDに並ぶとともに、隣接する2つのレンズLS3は、それぞれの有効領域ERの間で相互に接続されている。つまり、隣接するレンズLS3の接続部分CPは、各レンズLS3の有効領域ERの間にある。
【0056】
以上に説明したように、この実施形態では、発光素子グループEG(の発光素子E)が発光した光は、レンズLS1、LS2、LS3をこの順で透過した後に結像される。そして、この実施形態では、レンズLS1とレンズLS2との間に開口Apを有する開口絞り295が配されている。換言すれば、レンズLS1およびレンズLS2は、開口絞り295によって光が絞られる位置の近くに配される。そのため、レンズLS1、LS2の有効領域は狭く、レンズLS1、LS2を小さく構成することができる。よって、レンズLS1、LS2に入射する迷光の量を抑えて、良好な露光が実現可能となっている。
【0057】
また、レンズLS1、LS2を小さくすることで、次のような効果も併せて期待できる。つまり、レンズLS1、LS2を小さくすることで、レンズアレイLA1、LA2上で隣接するレンズLS1、LS2間の干渉を抑えて、レンズ設計を容易にすることができる。さらに、レンズLS1、LS2を小さくすることで、レンズ製造金型の設計・製造を容易にすることができる。また、レンズLS1、LS2が小さいことから、ガラス基板SB上に形成される樹脂(レンズを構成する樹脂)の体積が小さくなるため、温度変動によるレンズアレイLA1、LA2の熱膨張や熱収縮を抑えることができ、温度変化に依らずレンズアレイLA1、LA2の光学特性を維持することが容易となる。
【0058】
ところで、この実施形態では、複数の発光素子が主走査方向MDに並べられて発光素子グループEGが構成されている。そして、発光素子グループEGが発光した光は、開口絞り295で一旦絞られた後に、再び広がってレンズLS3に入射する。そのため、レンズLS3は、発光素子グループEGでの複数の発光素子Eの配置に対応して、主走査方向MDへはある程度の大きさを要する。一方、副走査方向SDへは、それほど大きさを要しない。そこで、この実施形態では、レンズLS3の有効領域(第1領域)の副走査方向SDの曲率半径より、レンズLS3の有効領域の外の領域(第2領域)の副走査方向SDの曲率半径は小さいように、ラインヘッド29を構成している。このように、副走査方向SDにおいて、有効領域外での曲率半径を小さくすることで、有効領域の周縁とレンズLS3の周縁との間の領域(第2領域)の幅Δ(図8)を狭くすることができる。その結果、副走査方向SDへのレンズLS3の大きさを小さくすることができ、レンズLS3に入射する迷光の量を抑えて、良好な露光が実現可能となっている。
【0059】
また、この実施形態では、レンズLS3の副走査方向SDの曲率半径は、レンズLS3の主走査方向MDの曲率半径よりも小さいように、ラインヘッド29を構成している。これによっても、副走査方向SDへのレンズLS3の大きさを小さくすることができ、レンズLS3に入射する迷光の量を抑えて、良好な露光が実現可能となっている。
【0060】
また、この実施形態では、レンズLS1、レンズLS2および開口絞り295が一体的に構成されている。このような構成は、レンズLS1、レンズLS2および開口絞り295の相対位置精度を向上させることができ、発光素子グループからの光を適切に結像して、良好な露光動作に資するものである。
【0061】
また、この実施形態では、レンズLS1は発光素子グループEG側に凸であり、レンズLS2は像側に凸である。したがって、レンズアレイLA1、LA2が開口絞り295と対向する面が平面となり、レンズLS1、LS2と開口絞り295とを組み立てるにあたって、これらを簡便かつ正確に位置決めすることができる。
【0062】
また、この実施形態では、レンズアレイLA1、LA2の他方面(背面)を貼り合わせるとともに、この張り合せた部分に開口絞り295を設けている。これによって、2枚のレンズLS1、LS2の組立精度を確保しつつ、良好な収差補正が可能となっている。
【0063】
その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、主走査方向MDあるいは長手方向LGDが本発明の「第1の方向」に相当し、副走査方向SDあるいは幅方向LTDが本発明の「第2の方向」に相当し、発光素子Eが本発明の「第1の発光素子」、「第2の発光素子」に相当し、ヘッド基板293が本発明の「発光素子基板」に相当し、レンズLS1が本発明の「第1のレンズ」に相当し、レンズLS2が本発明の「第2のレンズ」に相当し、レンズLS3が本発明の「第3のレンズ」に相当し、レンズアレイLA1のガラス基板SBが本発明の「第1の基板」に相当し、レンズアレイLA2のガラス基板SBが本発明の「第2の基板」に相当する。レンズの有効領域が本発明の「第1領域」に相当し、有効領域の周縁からレンズの周縁までの領域が本発明の「第2領域」に相当している。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、レンズLS1〜LS3の曲率半径の設定態様は、上述のものに限られず、種々の変更が可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、レンズLS3の有効領域ERと当該レンズLS3の有効領域ERの外との境界で、レンズLS3の曲率半径は連続的に変化していた(図7)。しかしながら、レンズLS3の有効領域ERと当該レンズLS3の有効領域ERの外との境界で、レンズLS3の曲率半径を不連続に変化させても良い(図9)。ここで、図9は、レンズLS3の変形例を示す図であり、同図での表記は、図6および図7での標記と同様である。図9に示す変形例においても、レンズLS3の副走査方向SDの曲率半径は、像高の増大に応じて減少しており、有効領域の範囲内よりも有効領域の外側で曲率半径が小さい値を示す。したがって、上述の実施形態と同様に、ラインヘッド29の幅を抑えつつ、レンズLS3への入射光量を確保することが可能となる。
【0066】
また、上記実施形態のラインヘッド29は、レンズアレイLA1、LA2のガラス基板SBで開口絞り295を直接挟み込むことで、レンズLS1、LS2の間に開口絞り295を支持していた。しかしながら、開口絞り295を支持する構成はこれに限られない(図10〜図13)。ここで、図10、図11、図12および図13は、開口絞りを支持する構成の変形例を模式的に示した分解図である。これらの図は分解図であるので、図中の構成部材は左右方向にばらばらに示されているが、実際には、これらは左右方向に互いに接して構成されている。なお、これらの図では、上述の実施形態と異なり、レンズLS1、LS2、LS3や開口Apが2行千鳥で主走査方向MDに並べた場合が示されている。
【0067】
図10では、金属の蒸着あるいはスパッタリング等の手法によりガラス基板SBa(第3の基板)に形成された遮光性の薄膜が開口絞り295として機能する。そして、レンズアレイLA1、LA2のガラス基板SBで、開口絞り295が形成されたガラス基板SBaを挟み込むことで、レンズLS1、LS2の間に開口絞り295が支持される。図11では、平板状の薄板に開口Apを設けた開口絞り295が、ガラス基板SBa(第3の基板)に取り付けられている。そして、レンズアレイLA1、LA2のガラス基板SBで、開口絞り295が取り付けられたガラス基板SBaを挟み込むことで、レンズLS1、LS2の間に開口絞り295が支持される。
【0068】
図12では、金属の蒸着あるいはスパッタリング等の手法によりガラス基板SBa(第3の基板)に形成された遮光性の薄膜が開口絞り295として機能する。そして、ガラス基板SBaと開口絞り295を挟み込みようにして、ガラス基板SBbが開口絞り295に接着される。こうして、ガラス基板SBa、SBbで開口絞り295を挟み込んだものが、レンズアレイLA1、LA2のガラス基板SBでさらに挟み込まれて、レンズLS1、LS2の間に開口絞り295が支持される。図13では、平板状の薄板に開口Apを設けた開口絞り295が、ガラス基板SBa(第3の基板)に取り付けられている。そして、ガラス基板SBaと開口絞り295を挟み込みようにして、ガラス基板SBbが開口絞り295に接着される。こうして、ガラス基板SBa、SBbで開口絞り295を挟み込んだものが、レンズアレイLA1、LA2のガラス基板SBでさらに挟み込まれて、レンズLS1、LS2の間に開口絞り295が支持される。
【0069】
このように、図10〜図13に示す構成では、ガラス基板SBaやガラス基板SBbが、レンズアレイLA1、LA2の間隔を規定するスペーサーとして機能する。その結果、レンズLS1、LS2の面間隔を正確に規定して、良好な結像性能を実現することが可能になる。なお、図10〜図13に示す構成では、開口Apには、光透過性の接着剤を充填して、空気を排除しておくと良い。これにより、開口Apにおいて光が空気により散乱されることを抑制することができる。
【0070】
また、副走査方向SDに異なる位置に配置される結像光学系OSの個数(換言すれば、レンズ行の行数)は3個に限られず、2個あるいは4個以上であっても良い。
【0071】
また、結像光学系OSを構成するレンズLS1〜LS3や開口Apの形状は上述のものに限られない。
【0072】
また、上記実施形態では、結像光学系OSの光学倍率についても種々のものを採用することができる。
【0073】
また、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数や、配置態様も種々の変更が可能である。
【0074】
また、上述の有機EL素子以外に、LED(Light Emitting Diode)等の光源を、発光素子Eとして用いることもできる。
【0075】
遮光部材297の構成も上述のものに限られず、例えば、特開2008−307885号公報のように、複数枚の遮光板を間隔を設けながら重ねた遮光部材を用いることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1…画像形成装置、 21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 293…ヘッド基板、 295…開口絞り、 Ap…開口、 297…遮光部材、 2971…導光孔、 298…板状光学部材、 E…発光素子、 EG…発光素子グループ、 LA1、LA2、LA3…レンズアレイ、 LS1、LS2、LS3…レンズ、 ER…有効領域、 LGD…長手方向、 LTD…幅方向、 MD…主走査方向、 SD…副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発光する第1の発光素子、及び前記第1の発光素子の第1の方向に配設されて光を発光する第2の発光素子を有する発光素子基板と、
前記第1の発光素子が発光した光および前記第2の発光素子が発光した光が入射する第1のレンズと、
前記第1の発光素子が発光して前記第1のレンズを透過した光及び前記第2の発光素子が発光して前記第1のレンズを透過した光を通過させる開口を有する開口絞りと、
前記第1の発光素子が発光して前記開口絞りの前記開口を通過した光及び前記第2の発光素子が発光して前記開口絞りの前記開口を通過した光が入射する第2のレンズと、
前記第1の発光素子が発光して前記第2のレンズを透過した光及び前記第2の発光素子が発光して前記第2のレンズを透過した光が入射する第3のレンズと、
を備え、
像面に前記第1の発光素子から発光された光による潜像及びを前記第1の発光素子から発光された光による潜像を形成することを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記第3のレンズの前記像面に潜像を形成する光を透過させる第1領域の前記第1の方向に直交する第2の方向の曲率半径より、前記第3のレンズの前記像面に潜像を形成する光が透過しない第2領域の前記第2の方向の曲率半径は小さい請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記第3のレンズの前記第1領域の前記第2の方向の曲率半径は、前記第3のレンズの前記第1領域の前記第1の方向の曲率半径よりも小さい請求項1または2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記第1のレンズは、前記発光素子基板の側に凸であり、前記第2のレンズは、前記像面の側に凸である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記第1のレンズ、前記第2のレンズおよび前記開口絞りを配設するレンズ基板を有する請求項4に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
一方面に前記第1のレンズが配された第1の基板と、一方面に前記第2のレンズが配された第2の基板とを備え、
前記開口絞りは、前記第1の基板の他方面と前記第2の基板の他方面とに挟まれ、
前記第1の基板の一方面と前記第2の基板の一方面とは接着される請求項4に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
一方面に前記第1のレンズが配された第1の基板と、一方面に前記第2のレンズが配された第2の基板と、前記開口絞りが配された第3の基板と、を備え、
前記第3の基板は、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれて、前記第1の基板と前記第2の基板とに固定される請求項4に記載の露光ヘッド。
【請求項8】
光を発光する第1の発光素子及び前記第1の発光素子の第1の方向に配設されて光を発光する第2の発光素子を有する発光素子基板、前記第1の発光素子が発光した光および前記第2の発光素子が発光した光が入射する第1のレンズ、前記第1の発光素子が発光して前記第1のレンズを透過した光及び前記第2の発光素子が発光して前記第1のレンズを透過した光を通過させる開口を有する開口絞り、前記第1の発光素子が発光して前記開口絞りの前記開口を通過した光及び前記第2の発光素子が発光して前記開口絞りの前記開口を通過した光が入射する第2のレンズ、及び前記第1の発光素子が発光して前記第2のレンズを透過した光及び前記第2の発光素子が発光して前記第2のレンズを透過した光が入射する第3のレンズと、を備え、像面に前記第1の発光素子から発光された光による潜像及びを前記第1の発光素子から発光された光による潜像を形成する露光ヘッドと、
前記露光ヘッドにより前記潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−240392(P2012−240392A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115482(P2011−115482)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】