説明

露光用マスク異物除去装置及び露光装置

【課題】露光用マスクを露光装置から外すことなしにマスクに付着した異物を除去することができる異物除去装置及び露光装置を提供することを課題とした。
【解決手段】異物が付着した露光用マスクを露光装置に搭載した状態で前記異物を除去する露光用マスク異物除去装置であって、静電気を除去するためのイオナイザー17と、露光用マスクを照射するするためのライト13と、異物を除去するためのパージ装置15と、露光用マスクを撮像するためのCCDカメラ16と、が露光用マスク下部を可動することを特徴とする露光用マスク異物除去装置であって、前記ライトとパージ装置とCCDカメラとが一体的に可動することを特徴とする露光用マスク異物除去装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光用マスクに付着した異物を除去する技術に関し、特に露光装置内で異物が除去できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用に用いるガラス基板上には微細なカラーフィルタやスペーサ等がフォトリソ法を使用して形成されている。フォトリソ法では感光性樹脂を露光するためにガラス基板上に金属膜からなる遮光パターンが敷設された露光用マスク(以下、単にマスクと記す)が使用されておリ、該パターンもフォトリソ法を適用して形成されている。
【0003】
マスクは、図1に示すように被露光基板7と平行に露光装置1にセットされてマスク上方からの照射光5を遮光パターン9に応じて透過させるもので、被露光基板7を入れ替えて繰り返して用いられる。
【0004】
したがって、マスク6の被露光基板7に対向する面の透過部分(透明部分)に異物が付着すると、当該部位で入射光が遮断され、取り除かれるまで被露光基板7上の感光性樹脂に繰り返して転写されることになるから、このような付着異物を早期に発見し除去する技術の開発は重要な問題である。通常は、被露光基板に形成されたレジストパターンを外観検査装置を使用して検査し、同じような位置に欠陥が繰り返して検知されるとマスクへの異物付着が示唆される。その場合、マスク7を露光装置1からはずして、露光装置外のマスク洗浄装置へ搬送し所定の手順で洗浄してから露光装置戻して再使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−80156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスク洗浄装置を使用する洗浄では、露光用マスクを外して搬送するので、搬送時間と洗浄時間が必要となって、その間は本来の露光処理が中断され行われないので、生産性が低下するという問題がある。
そこで本発明は、露光用マスクを露光装置から外すことなしにマスクに付着した異物を除去することができる異物除去装置及び露光装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明になる請求項1に記載の発明は、露光用マスクを露光装置のマスク支持台に装着した状態で露光用マスクに付着した異物を除去する露光用マスク異物除去装置であって、静電気を除去するためのイオナイザーと、露光用マスクを照射するためのライトと、異物を除去するためのパージ装置と、露光用マスクを撮像するためのCCDカメラと、が露光用マスク下部を可動することを特徴とする露光用マスク異物除去装置としたものである。
【0008】
本発明になる請求項2に記載の発明は、前記ライトとパージ装置とCCDカメラとが一体的に可動することを特徴とする請求項1に記載の露光用マスク異物除去装置としたものである。
【0009】
本発明になる請求項3に記載の発明は、被露光基板を現像した後自動検査装置にて検出された被露光基板上の欠陥部位に関する情報に基づき、前記露光用マスク異物除去装置を
露光用フォトマスク上の欠陥部位に対応する部位近傍を可動させるための駆動装置と露光用マスク異物除去装置を制御する自動制御機構とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の露光用マスク異物除去装置としたものである。
【0010】
本発明になる請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の露光用マスク異物除去装置と、露光光源と、基板搭載用ステージと、露光用マスク搭載部と、を備えることを特徴とする露光装置としたものである。
【0011】
本発明になる請求項5に記載の発明は、前記基板搭載用ステージが露光用マスク下部から退避した後、露光用マスク異物除去装置が露光用マスク下部を可動することを特徴とする請求項4に記載の露光装置としたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、露光用マスクに付着した異物をマスクの下側から除去するために不可欠な装置を特定したものである。イオナイザーは、アースが効果的に効かないため、静電力でマスク基板に固着している異物に対してイオンを照射して静電気除去する装置である。パージ装置は、静電気除去により剥がれやすくなった異物をパージする装置である。ライトは異物近傍を明るく照射してCCDカメラでの撮像を容易にする装置である。本構成によりマスクを露光装置の外へ移動させずに異物の除去とその確認ができるという効果を奏する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、露光用マスクの異物が付着している位置まで、前記ライトとパージ装置とCCDカメラとを一体的に可動させることで、装置構成上の可動部を簡略合理化して異物除去を効率的に実現できる。各々を単独で使用できるという効果もある。
【0014】
請求項3に記載の発明は、欠陥検査装置によって検知された異物の位置情報を欠陥検査装置から取得して、露光用マスクの対応する部位まで異物除去装置を自動的・機械的に移動させてピンポイントで異物除去が実現できるという効果を奏する。
【0015】
請求項4と請求項5に記載の発明は、異物除去装置を組み込んだ露光装置であって、異物除去装置を駆動させるタイミングを特定したものである。一般にマスクと被露光基板の間の隙間は狭い。そのため被露光基板を搭載するステージが、被露光基板の搬入搬出のためにマスク下部から退避するタイミングに合わせて、マスク上の異物の存在が示唆されておれば異物除去装置がマスク下部に進出して所定の異物除去処理を遂行するというものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】近接露光方式の露光装置構成の概略を説明する断面視の図である。
【図2】マスク支持台と基板ステージの構成を説明する図である。(a)斜視図、(b)断面視図。
【図3】異物除去装置がマスクの下部に進出した様子を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明が適用される近接露光方式の露光装置1の概略構成を説明する断面視の図である。露光光源2から発せられた紫外線は反射ミラー、インテグレータ3を通過して最終的にコリメーションミラー4で平行光にされてから、露光用マスク6の上方から該マスクを透過して基板ステージ8に載置された被露光ガラス基板7(以下、単にガラス基板と記す)上に塗布された感光性レジスト(図示せず)に照射される。マスク6を通過した紫外線がぼけないようにマスク裏面とガラス基板は平行度が保たれ隙間は数百μmしか離れていない。
【0018】
露光用マスク6が搭載される支持台8とガラス基板7を搭載する基板ステージ8部分の構成を説明する斜視図と断面視図を図2に示した。マスク6は中央で沈み込まないように押えバー12で下側に押されており、この他図示しないアライメントマーク読み取りカメラや基板ステージ8の駆動機構等が備えられている。基板ステージ8は、一般にガラス基板を吸着した状態で矢印方向に移動する。一枚のガラス基板を露光するとこれを排出し次の基板に入れ替えるためである。
【0019】
したがって、本発明では、遮光パターン9が形成されているマスク面を掃引して異物を除去するには、異物除去に使用する装置類は基板ステージ8とマスク9の間の空間に持ち込まれて移動する必要があるが、これは離間距離が狭く基板ステージがある状態では難しいので、基板ステージ8がガラス基板7を排出搬入するタイミングでマスク下部に侵入することになる。この状態を図3に模式的に示した。
【0020】
異物の除去に最低限必要な装置は、イオナイザー17、パージ装置15、ライト13、CCDカメラ16及び図示しない駆動装置系である。イオナイザー17は、静電気によりマスクに付着した異物は単にパージしただけでは除去できないため荷電を中和する静電気除去処理を施して異物を除去しやすく装置である。これは点状に配置することもできるが、図のようにライン状に並べて一体で駆動させるのが好ましい。また、エアーでパージする前にイオナイザーでイオン照射されるように配置する必要がある。
【0021】
ライト13は、露光装置内は暗くマスク面を照射するための治具である。特に異物が除去されたかどうかを確認のために使用する装置である。
【0022】
パージ装置15は、エアーをマスク面に吹き付けて異物をマスク面から引き離す装置である。マスク全体を大流量のエアーでパージすると微小な塵埃等の巻き上げられるため、異物が付着している部分だけの局所的なパージに留めることが好ましい。
CCDカメラ16は、異物が除去されたことを確認するための装置でパージ処理前後の画像取得に使用する。
【0023】
上記の治具類は、マスクの下部でXY方向に図3で示すようなガイド14上を制御信号の下、駆動モータによってトロッコ移動するようにすればよい。ガイドを含めて治具類はステージ18上に設置するのが好ましい。その際、各々の装置に単独に駆動モータを取り付けてトロッコを動かすよりも、同期してまとまった動作をする装置は一つの駆動モータで共通のトロッコ上で一体的にX方向あるいはY方向に動くようするのが好ましい。
【0024】
本発明は、パージ装置15とライト13とCCDカメラ16を一体的にして同じ駆動モータで移動できるようにした。イオナイザー17は単独で掃引に使用する場合もあるので、パージが必要な場合だけ、パージに先立ってイオン照射が行えるようにして別のトロッコ駆動系で動作するようにした。パージが不要な異物除去の場合もありえるのでこの態様が好ましいが、全部を一体化して動作制御を別々しても構わない。
【0025】
マスク面の異物を除去する手順については、マスクの一方の端から対向線上の他方の端に向かってイオナイザー17とパージ装置他で全面を定期的・周期的に掃引する手順と、異物が付着した箇所をピンポイントでパージするだけの手順の採用があり得る。
【0026】
後者については、異物検査装置とリンクした異物除去装置11の駆動制御が不可欠である。異物除去装置11を備えた露光装置で露光処理を施した被露光基板は欠陥検査装置に回流される。レジストパターンを欠陥検査装置で検査した結果、例えば同一箇所に似たような形状の欠陥が継続して検知された場合、マスク上に異物の存在が疑われる。
【0027】
これら欠陥情報は欠陥修復システムの一部としてコンピュータを用いた情報処理装置により管理されており、欠陥修正システムはこの情報に基づいて基板上の欠陥位置を特定して欠陥修正をピンポイントで動作させて修正・回復するようになっている。
本発明になる異物除去装置もその全体システムの一部としてマスク上の異物を除去することになる。
【0028】
すなわち、上記のシステムとリンクする制御システムにより、イオナイザー17、パージ装置13他のXY方向の位置と除去処理のピンポイント制御が電子的機械的になされる。異物の存在が疑われた場所の除去処理前後のCCDカメラ16による撮像画像による確認処理もシステム内で行われる。異物が除去されるまで必要があればパージがなされることになる。
【符号の説明】
【0029】
1、露光装置
2、紫外光源
3、インテグレータレンズ
4、コリメーションミラー(反射鏡)
5、露光光
6、露光用マスク
7、被露光基板
8、基板搭載用ステージ
9、遮光部
10、支持台
11、異物除去装置
12、押えバー
13、ライト
14、ガイド
15、パージ装置
16、CCDカメラ
17、イオナイザー
18、異物除去治具用ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用マスクを露光装置のマスク支持台に装着した状態で露光用マスクに付着した異物を除去する露光用マスク異物除去装置であって、静電気を除去するためのイオナイザーと、露光用マスクを照射するためのライトと、異物を除去するためのパージ装置と、露光用マスクを撮像するためのCCDカメラと、が露光用マスク下部を可動することを特徴とする露光用マスク異物除去装置。
【請求項2】
前記ライトとパージ装置とCCDカメラとが一体的に可動することを特徴とする請求項1に記載の露光用マスク異物除去装置。
【請求項3】
被露光基板を現像した後自動検査装置にて検出された被露光基板上の欠陥部位に関する情報に基づき、前記露光用マスク異物除去装置を露光用フォトマスク上の欠陥部位に対応する部位近傍を可動させるための駆動装置と露光用マスク異物除去装置とを制御する自動制御機構を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の露光用マスク異物除去装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の露光用マスク異物除去装置と、露光光源と、基板搭載用ステージと、露光用マスク搭載部と、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項5】
前記基板搭載用ステージが露光用マスク下部から退避した後、露光用マスク異物除去装置が露光用マスク下部を可動することを特徴とする請求項4に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−253124(P2012−253124A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123273(P2011−123273)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】