説明

露光装置及びデバイス製造方法

【課題】高露光精度及び高スループットの両立を実現する。
【解決手段】ステップ502においてショットマップデータを読み込み、そして、ステップ504において、ショットマップデータと、デフォルト設定されているアライメントパラメータ及び露光パラメータとに基づいて、露光動作を優先させた場合の、マーク検出時間T1、露光時間T2を算出する。さらに、ステップ506、ステップ508、ステップ512において、マーク検出時間T1及びウエハ交換時間TWの合計時間(T1+TW)と露光時間T2との大小関係を比較して、ステップ510、ステップ514において、全体のスループットが低下しない範囲で、アライメント精度等が向上するように、アライメントパラメータの調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及びデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、エネルギビームにより感光物体を露光してその感光物体上の複数のショット領域に所定のパターンを転写する露光装置及び該露光装置を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスクまたはレチクル(以下「レチクル」と総称する)に形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハまたはガラスプレート等の基板(以下「ウエハ」と総称する)上に転写する投影露光装置、例えばステップ・アンド・リピート方式の縮小投影型露光装置(いわゆるステッパ)や、このステッパに改良を加えたステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ)等の逐次移動型の投影露光装置が比較的多く用いられている。
【0003】
かかる露光装置においては、一定時間内にどれだけの枚数のウエハを露光処理できるかという処理能力、すなわちスループットの向上が重要であり、そのスループットの向上を図るべく、種々の技術が提案されている。近年では、特に、ウエハを保持するウエハステージを複数台備え、一方のウエハステージ側では、保持したウエハに対し露光動作を行うのと並行して、他方のウエハステージ側では、保持したウエハに対しウエハ交換動作及びアライメントマーク検出動作(アライメントマークを計測する動作)を行うツインウエハステージタイプの露光装置も提案されている(特許文献1、2等参照)。
【0004】
しかしながら、上記技術を採用した場合でも、一方のウエハステージ上で行われる動作(例えば露光動作)と、他方のウエハステージ上で行われる動作(例えばウエハ交換及びマーク検出動作)とでは、それらの所要時間が同じになることはほとんどなく、一方のステージ上での動作が終了し、他方のステージ上での動作がまだ終了していない場合、一方のステージに対しては、他方ステージ上での動作が終了するまで、何らの処理も行われず、ただ待ち状態となっていた。
【0005】
一方、露光装置においては、スループットの向上とともに重要なのが、露光精度の向上である。この露光精度(特に重ね合わせ露光の重ね合わせ精度)を向上させるため、露光前に行われるアライメントマークの検出動作では、ウエハ上のアライメントマークの計測点数を増やせば増やすほどそのアライメント精度(このアライメント精度は、ショット領域の重ね合わせ精度に直結する)が向上するようになる。また、スキャニング・ステッパの露光動作においては、いわゆるスキャン速度を下げれば下げるほど、ステージの動特性の影響が低減されるので、その露光精度が向上するようになる。しかしながら、アライメントマークの計測点数を増やしたり、スキャン速度を下げたりすると、アライメント動作や露光動作の所要時間が長くなってスループットが低下するようになる。すなわち、スループットと露光精度とは、いわゆるトレードオフの関係にある。
【特許文献1】特開平10−163098号公報
【特許文献2】特表2000−511704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、高露光精度及び高スループットを両立させることができる露光装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、マイクロデバイスの生産性を向上させることができるデバイス製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、エネルギビームにより感光物体(W1,W2)を露光して前記感光物体上の複数のショット領域に所定のパターンを転写する露光装置(100)であって、感光物体を載置可能で2次元面内で独立に移動可能な2つのステージ(WST1,WST2)と;前記感光物体に形成されたマークを検出する少なくとも1つのマーク検出系(ALG1,ALG2)と;入力されたショットマップに応じて、デフォルトの並行処理シーケンスに従って一方のステージ上の感光物体の露光動作を優先させた場合の、要求される検出精度に応じた前記マーク検出系を用いた他方のステージ上の感光物体のマークの検出動作に要する時間を算出する算出装置(20)と;前記算出装置で算出された前記マーク検出動作に要する時間と前記露光動作に要する時間との大小関係に応じて全体のスループット及び前記感光物体の位置検出精度の少なくとも一方が向上するような所定のパラメータの設定を行うパラメータ設定装置(20)と;前記パラメータ設定装置で設定されたパラメータに基づいて、前記2つのステージを用いて前記露光動作とマーク検出動作とを並行して実行する処理装置(20)と;を備える露光装置である。
【0009】
これによれば、算出装置により、2つのステージのうち、一方のステージ上での露光動作に要する時間と、他方のステージ上でのマーク検出動作に要する時間とを、入力されたショットマップから算出する。そして、パラメータ設定装置により、それらの時間の大小関係に応じて全体のスループット及び感光物体の位置検出精度の少なくとも一方が向上するような所定のパラメータの設定を行う。その上で、処理装置により、設定されたパラメータに基づいて、2つのステージを用いて露光動作とマーク検出動作との並行処理を実行する。このようにすれば、全体のスループットが低下しない範囲内で、2つのステージそれぞれで行われる各動作を、スループット及び位置検出精度の少なくとも一方が向上するように実施することができるようになるため、高露光精度及び高スループットを両立させることができる。
【0010】
この場合、請求項2に記載の露光装置のごとく、前記パラメータ設定装置は、前記算出された前記マーク検出動作に要する時間と一定のマージン時間との合計時間である第1の時間と、前記露光動作に要する第2の時間とのいずれが大きいかを判断し、該判断結果に応じて所定の基準に従って前記所定のパラメータを設定することとすることができる。
【0011】
この場合、請求項3に記載の露光装置のごとく、前記マージン時間は、前記一方のステージ上で前記感光物体のマークの検出動作に先立って行われる感光物体の交換に要する時間であることとすることができる。
【0012】
上記請求項2又は3に記載の露光装置において、請求項4に記載の露光装置のごとく、前記要求される検出精度は、デフォルト設定に対応する精度であり、前記パラメータ設定装置は、前記第1の時間が前記第2の時間より小さい場合には、前記第1の時間が第2の時間を越えない範囲で出来るだけ大きくなるように、かつ前記第1の時間が前記第2の時間より大きい場合には、前記第1の時間が第2の時間を越えない範囲となるように、マーク検出動作に関するパラメータを変更することとすることができる。
【0013】
上記請求項2又は3に記載の露光装置において、請求項5に記載の露光装置のごとく、前記要求される検出精度は、デフォルト設定より厳しい精度であり、前記パラメータ設定装置は、前記第1の時間が前記第2の時間より小さい場合には、前記第1の時間が第2の時間を越えない範囲で出来るだけ大きくなるように前記マーク検出動作に関するパラメータを変更し、かつ前記第1の時間が前記第2の時間より大きい場合には、前記第2の時間が前記第1の時間を越えないように、かつ露光精度が向上するように露光パラメータを変更することとすることができる。
【0014】
この場合、請求項6に記載の露光装置のごとく、前記露光パラメータは、ショットの露光順、走査露光の場合の走査速度、整定時間、ステージ移動シーケンス中の待ち時間の少なくとも1つを含むこととすることができる。
【0015】
上記請求項4又は5に記載の露光装置において、請求項7に記載の露光装置のごとく、前記マーク検出動作に関するパラメータは、計測対象のマーク数、そのマークの計測順、配置、及び前記マーク検出系が画像処理方式である場合の計測画面数の少なくとも1つを含むこととすることができる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置を用いて露光を行うことを特徴とするデバイス製造方法である。かかる場合には、請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光方法を用いて露光を行なうため、高露光精度及び高スループットの両立を実現することができるので、高集積度のデバイスの生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態の露光装置の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置、すなわちいわゆるスキャニング・ステッパである。
【0019】
この露光装置100は、エネルギビームとしての照明光ILによりマスクとしてのレチクルRを照明する照明系10、レチクルRを主として所定の走査方向(ここでは、X軸方向(図1における紙面左右方向))に駆動するレチクルステージRSTを含むレチクル駆動系、レチクルステージRSTの下方に配置された投影光学系PL、該投影光学系PLの下方に配置され、感光物体としてのウエハW1、ウエハW2をそれぞれ保持し、独立して2次元移動可能なウエハステージWST1、ウエハステージWST2を含むステージ装置50等を備えている。
【0020】
前記照明系10は、例えば特開2001−313250号公報(対応する米国特許出願公開第2003/0025890号)などに開示されるように、光源、オプティカルインテグレータを含む照度均一化光学系、リレーレンズ、可変NDフィルタ、可変視野絞り(レチクルブラインド又はマスキングブレードとも呼ばれる)、及びダイクロイックミラー等(いずれも不図示)を含んで構成されている。ここで、オプティカルインテグレータとしてはフライアイレンズ、内面反射型インテグレータ(ロッドインテグレータ等)、あるいは回折光学素子等が用いられる。
【0021】
この照明系10は、回路パターン等が描かれたレチクルR上で、レチクルブラインドで規定されたスリット状の照明領域IAR(図2参照)部分をエネルギビームとしての照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの遠紫外光、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、あるいはF2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光などが用いられる。
【0022】
前記レチクル駆動系は、レチクルRを保持して図1に示されるレチクルベース盤32に沿ってXY2次元面内で移動可能なレチクルステージRST、このレチクルステージRSTを駆動するレチクル駆動部30、及びレチクルステージRSTの位置を計測するレチクル干渉計システム36等を備えている。
【0023】
前記レチクルステージRSTは、実際には、例えばエアベアリングを介してレチクルベース盤32の上面の上方に浮上支持され、前記レチクル駆動部30を構成する不図示のリニアモータなどによって走査方向であるY軸方向に所定ストローク範囲で駆動されるレチクル粗動ステージと、該レチクル粗動ステージに対してX軸方向、Y軸方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)に前記レチクル駆動部30を構成するボイスコイルモータ等により微少駆動可能なレチクル微動ステージとを有している。このレチクル微動ステージ上に不図示の静電チャック又は真空チャックを介してレチクルRが吸着保持されている。
【0024】
レチクルステージRSTは、レチクル駆動部30によりX軸、Y軸方向の微少駆動、θz方向の微少回転、及びY軸方向の走査駆動がなされるステージである。なお、レチクル駆動部30は、リニアモータ、ボイスコイルモータ等を駆動源とする機構であるが、図1では図示の便宜上から単なるブロックとして示されている。
【0025】
レチクルステージRST上には、図2に示されるように、X軸方向の一側(+X側)の端部に、レチクルステージRSTと同じ素材(例えばセラミック等)から成る平行平板移動鏡34がY軸方向に延設されており、この移動鏡34のX軸方向の一側の面には鏡面加工により反射面が形成されている。この移動鏡34の反射面に向けて図1のレチクル干渉計システム36を構成する測長軸BI6Xで示される干渉計からの干渉計ビームが照射され、その干渉計ではその反射光を受光して基準面に対する相対変位を計測することにより、レチクルステージRSTの位置を計測している。ここで、この測長軸BI6Xを有する干渉計は、実際には独立に計測可能な2つの干渉計光軸を有しており、レチクルステージRSTのX軸方向の位置計測と、ヨーイング(θz回転)量の計測が可能となっている。この測長軸BI6Xを有する干渉計は、後述するウエハステージ側の測長軸BI1X(又はBI2X)を有する干渉計16(又は18)からのウエハステージWST1(又はWST2)のヨーイング情報やX位置情報に基づいてレチクルとウエハの相対回転(回転誤差)をキャンセルする方向にレチクルステージRSTを回転制御したり、X軸方向同期制御(位置合わせ)を行ったりするために用いられる。なお、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡34の反射面に相当)を形成しても良い。
【0026】
一方、レチクルステージRSTの非走査方向(非スキャン方向)であるY軸方向の一側(図1における紙面手前側)には、図2に示されるように、一対のコーナーキューブミラー(レトロリフレクタ)35A,35Bが設置されている。そして、不図示の一対のダブルパス干渉計から、これらのコーナーキューブミラー35A,35Bに対して図2に測長軸BI7Y,BI8Yで示される干渉計ビームが照射される。これらの干渉計ビームは、レチクルベース盤32上に設けられた不図示の反射面にコーナーキューブミラー35A,35Bより戻され、そこで反射したそれぞれの反射光が同一光路を戻り、それぞれのダブルパス干渉計で受光されることによって、それぞれのコーナーキューブミラー35A,35Bの基準位置(レファレンス位置で前記レチクルベース盤32上の反射面)からの相対変位が計測される。そして、これらのダブルパス干渉計の計測値が図1のステージ制御装置19に供給され、該ステージ制御装置19では前記計測値の平均値に基づいてレチクルステージRSTのY軸方向の位置を算出する。
【0027】
本実施形態では、上述した測長軸BI6Xで示される干渉計及び測長軸BI7Y,BI8Yで示される一対のダブルパス干渉計によってレチクル干渉計システム36(図1参照)が構成されている。
【0028】
図1に戻り、前記投影光学系PLは、例えば物体面側(レチクル側)と像面側(ウエハ側)の両方がテレセントリックで所定の投影倍率β(βは例えば1/4又は1/5など)を有する屈折系が用いられている。このため、レチクルRに照明系10から照明光ILが照射されると、レチクルR上に形成された回路パターン領域のうちの照明光ILによって照明された照明領域IAR(図2参照)部分からの結像光束が投影光学系PLに入射し、その回路パターンの部分倒立像が投影光学系PLの像面側の視野の中央の照射領域としての露光領域IA(図2参照)にスリット状(又は矩形状(多角形))に制限されて結像される。これにより、投影された回路パターンの部分倒立像が、投影光学系PLの結像面に配置された例えばウエハW2上の複数のショット領域SM(図4参照)のうちの1つのショット領域の表面のレジスト層に縮小転写されるようになる。
【0029】
図1に示されるように、露光装置100では、不図示の床面上に、ステージ定盤121〜123が、X軸方向に並ぶように配置されている。前記ステージ装置50は、ステージ定盤121〜123上を2次元平面内、すなわちX軸方向(図1における紙面左右方向)及びY軸方向(図1における紙面直交方向)に互いに独立して移動可能なウエハステージWST1,WST2と、ウエハステージWST1,WST2をそれぞれ駆動するステージ駆動系等を備えている。
【0030】
図1では、ウエハステージWST1は、ステージ定盤121上に不図示のエアベアリングを介して浮上支持されているが、ステージ定盤123上にも移動可能であり、その際には、ステージ定盤123上に不図示のエアベアリングを介して浮上支持されるようになる。また、図1においては、ウエハステージWST2は、ステージ定盤123上に不図示のエアベアリングを介して浮上支持されているが、ステージ定盤122上にも移動可能であり、その際には、ステージ定盤122上に不図示のエアベアリングを介して浮上支持されるようになる。
【0031】
すなわち、ウエハステージWST1,WST2の底面には不図示のエアベアリングが複数ヶ所に設けられており、ウエハステージWST1,WST2は、これらのエアベアリングによりステージ定盤121〜123の上面に形成されたガイド面に対して例えば数ミクロンの間隔を保った状態で浮上支持される。
【0032】
また、ステージ定盤121〜123上には、図3の平面図に示されるように、X軸方向に延びる一対のX軸リニアガイド(例えば、X軸方向に沿って所定間隔で配列された複数の永久磁石を内蔵する磁極ユニットから成る)86、87がY軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。なお、X軸リニアガイド86、87は、実際には、ステージ定盤121上の部分と、ステージ定盤122上の部分と、ステージ定盤123上の部分とにそれぞれ分離されており、いずれかの定盤上の部分に発生した振動が、他の定盤上の部分に伝達されないような構造となっている。ただし、それらの隣接する部分の間隔が、振動による各部分の干渉が防止される程度(数ミクロン)であるため、図3では、ステージ定盤121上の部分と、ステージ定盤122上の部分と、ステージ定盤123上の部分とをほぼ一体として、X軸リニアガイド86、87として示している。
【0033】
これらのX軸リニアガイド86,87の上方には、当該各X軸リニアガイド86,87に沿って移動可能な各2つのスライダ821,822及び831,832が不図示のエアベアリングをそれぞれ介して例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持されている。上記合計4つのスライダ821,822,831,832は、X軸リニアガイド86又は87を上方及び側方から囲むような断面逆U字状の形状を有し、その内部には電機子コイルがそれぞれ内蔵されている。すなわち、本実施形態では、電機子コイルがそれぞれ内蔵されているスライダ(電機子ユニット)821,822とX軸リニアガイド86とによって、ムービングコイル型のX軸リニアモータがそれぞれ構成され、同様にスライダ(電機子ユニット)831,832とX軸リニアガイド87とによって、ムービングコイル型のX軸リニアモータがそれぞれ構成されている。以下においては、上記4つのX軸リニアモータのそれぞれを、それぞれの可動子を構成するスライダ821、822、831、832と同一の符号を用いて、適宜、X軸リニアモータ821、X軸リニアモータ822、X軸リニアモータ831,及びX軸リニアモータ832と呼ぶものとする。なお、上述したX軸リニアガイド86,87の分離構造は、スライダ821,822,831,832のスライドに影響を与えないようになっている。
【0034】
上記4つのX軸リニアモータ(スライダ)821〜832の内の2つ、すなわちX軸リニアモータ821,831は、Y軸方向に延びるY軸リニアガイド(例えば、Y軸方向に配列された複数の電機子コイルを内蔵する電機子ユニットから成る)801の長手方向の一端と他端にそれぞれ固定されている。また、残り2つのX軸リニアモータ822、832は、Y軸方向に延びる同様のY軸リニアガイド802の一端と他端に固定されている。従って、Y軸リニアガイド801、802は、各一対のX軸リニアモータ821,831、822,832によって、X軸に沿ってそれぞれ駆動されるようになっている。
【0035】
ウエハステージWST1の底部には、永久磁石を有する磁極ユニット(図示省略)が設けられており、この磁極ユニットと一方のY軸リニアガイド801とによって、ウエハステージWST1をY軸方向に駆動するムービングマグネット型のY軸リニアモータが構成されている。また、ウエハステージWST2の底部には、永久磁石を有する磁極ユニット(図示省略)が設けられており、この磁極ユニットと他方のY軸リニアガイド802とによって、ウエハステージWST2をY軸方向に駆動するムービングマグネット型のY軸リニアモータが構成されている。以下においては、適宜、これらのY軸リニアモータを、それぞれの固定子を構成するリニアガイド801、802と同一の符号を用いて、Y軸リニアモータ801、Y軸リニアモータ802と呼ぶものとする。
【0036】
本実施形態では、上述したX軸リニアモータ821、831及びY軸リニアモータ801によって、ウエハステージWST1をXY平面内に2次元駆動するステージ駆動系が構成され、X軸リニアモータ822、832及びY軸リニアモータ802によって、ウエハステージWST2をウエハステージWST1とは独立してXY平面内に2次元駆動するステージ駆動系が構成されている。また、前記X軸リニアモータ821〜832及びY軸リニアモータ801,802のそれぞれは、図1に示されるステージ制御装置19によって制御される。
【0037】
なお、一対のX軸リニアモータ821、831がそれぞれ発生する推力を僅かに異ならせることで、ウエハステージWST1のヨーイングの制御が可能である。同様に、一対のX軸リニアモータ822、832がそれぞれ発生する推力を僅かに異ならせることで、ウエハステージWST2のヨーイングの制御が可能である。
【0038】
前記ウエハステージWST1上には、図1、図2等に示されるように、ウエハホルダH1が設けられている。このウエハホルダH1は、不図示のバキュームポンプの真空吸引力によりウエハW1を吸着保持するようになっている。
【0039】
また、ウエハステージWST1の上面には、例えば図2に示されるように、基準マーク板FM1がウエハW1とほぼ同じ高さになるように設置されている。この基準マーク板FM1の表面には、図3に示されるように、所定の位置関係で、一対の第1基準マークMK1,MK3と、第2基準マークMK2とが形成されている。
【0040】
更に、ウエハステージWST1の上面には、X軸方向の一端(−X側端)にX軸に直交する反射面を有するX移動鏡96XがY軸方向に延設され、Y軸方向の一端(+Y側端)にY軸に直交する反射面を有するY移動鏡96YがX軸方向に延設されている。これらの移動鏡96X,96Yの各反射面には、図2に示されるように、後述する干渉計システムを構成する各測長軸の干渉計からの干渉計ビーム(測長ビーム)が投射され、その反射光を各干渉計で受光することにより、各移動鏡反射面の基準位置(一般には投影光学系側面や、アライメント系の側面に固定ミラーを配置し、そこを基準面とする)からの変位が計測され、これにより、ウエハステージWST1のXY平面内の2次元位置が計測されるようになっている。
【0041】
他方のウエハステージWST2の構成は、ウエハステージWST1とほぼ同様となっている。
【0042】
すなわち、ウエハステージWST2上には、図2に示されるように、ウエハホルダH2を介して、ウエハW2が真空吸着されている。
【0043】
ウエハステージWST2の上面には、図2に示されるように、基準マーク板FM2がウエハW2とそれぞれほぼ同じ高さになるように設置されている。この基準マーク板FM2の上面にも基準マーク板FM1と同様の位置関係で第1基準マークMK1,MK3、及び第2基準マークMK2が形成されている。
【0044】
また、ウエハステージWST2の上面には、X軸方向の一端(+X側端)にX軸に直交する反射面を有するX移動鏡97XがY軸方向に延設され、Y軸方向の一端(+Y側端)にY軸に直交する反射面を有するY移動鏡97YがX軸方向に延設されている。これらの移動鏡97X,97Yの各反射面には、後述する干渉計システムを構成する各測長軸の干渉計からの干渉計ビームが投射され、ウエハステージWST2のXY平面内の2次元位置が上記ウエハステージWST1と同様にして計測されるようになっている。
【0045】
図1に戻り、前記投影光学系PLのX軸方向の両側には、同じ機能を持ったオフアクシス(off-axis)方式のマーク検出系としての一対のアライメント系ALG1,ALG2が、投影光学系PLの光軸AX(レチクルパターン像の投影中心とほぼ一致)よりそれぞれ同一距離だけ離れた位置に設置されている。
【0046】
前記アライメント系ALG1、ALG2としては、本実施形態では、画像処理方式の結像式アライメントセンサの一種であるFIA(Filed Image Alignment)系のアライメントセンサが用いられている。これらのアライメント系ALG1、ALG2は、光源(例えばハロゲンランプ)及び結像光学系、検出基準となる指標マークが形成された指標板、及び撮像素子(CCD)等を含んで構成されている。これらのアライメント系ALG1、ALG2では、光源からのブロードバンド(広帯域)光により検出対象であるマークを照明し、このマーク近傍からの反射光を結像光学系及び指標を介してCCDで受光する。このとき、マークの像が指標の像とともにCCDの撮像面に結像される。そして、CCDからの画像信号(撮像信号)に所定の信号処理を施すことにより、検出基準点である指標マークの中心を基準とするマークの位置を計測する。アライメント系ALG1、ALG2のようなFIA系のアライメントセンサは、アルミ層やウエハ表面の非対称マークの検出に特に有効である。
【0047】
本実施形態では、アライメント系ALG1は、ウエハステージWST1上に保持されたウエハW1のアライメントマーク、基準マーク板FM1上に形成された基準マークの位置計測等に用いられ、アライメント系ALG2は、ウエハステージWST2上に保持されたウエハW2のアライメントマーク及び基準マーク板FM2上に形成された基準マークの位置計測等に用いられる。
【0048】
アライメント系ALG1、ALG2からの画像信号は、不図示のアライメント制御装置により、A/D変換によりデジタル波形信号に変換される。そして、アライメント制御装置は、波形信号を演算処理して指標中心を基準とするマークの位置を検出する。このマーク位置の情報が、不図示のアライメント制御装置から主制御装置20に送られるようになっている。
【0049】
なお、このアライメント系ALG1、ALG2においては、検出対象のマークを撮像する場合に、複数回の撮像を行うことが可能である。その撮像回数は、調整可能な装置パラメータとして露光装置100(具体的には、主制御装置20が読み書き可能な不図示の記憶装置)に設定されている。
【0050】
次に、各ウエハステージのXY平面内の2次元位置を計測する前記干渉計システムについて、図1〜図3を参照しつつ説明する。
【0051】
図2に示されるように、ウエハステージWST1上のX移動鏡96Xの反射面には、投影光学系PLの光軸AXとアライメント系ALG1の光軸SXa(前述した指標マークの中心に一致)とを通るX軸に沿って、X軸干渉計16(図1、図3参照)からの測長軸BI1Xで示される干渉計ビームが照射されている。同様に、ウエハステージWST2上のX移動鏡97Xの反射面には、投影光学系PLの光軸AXとアライメント系ALG2の光軸SXb(前述した指標マークの中心に一致)とを通るX軸に沿って、X軸干渉計18(図1、図3参照)からの測長軸BI2Xで示される干渉計ビームが照射されている。そして、X軸干渉計16、18ではX移動鏡96X、97Xからの反射光をそれぞれ受光することにより、各反射面の基準位置からの相対変位を計測し、ウエハステージWST1、WST2のX軸方向位置を計測するようになっている。ここで、X軸干渉計16、18は、図2に示されるように、各3つの光軸を有する3軸干渉計であり、ウエハステージWST1、WST2のX軸方向の計測以外に、ピッチング(Y軸回りの回転(θy回転))及びヨーイング(θz方向の回転)の計測が可能となっている。各光軸の出力値は独立に計測できるようになっている。
【0052】
なお、測長軸BI1X、測長軸BI2Xの各干渉計ビームは、ウエハステージWST1、WST2の移動範囲の全域で常にX移動鏡96X、97Xに当たるようになっている。従って、X軸方向については、投影光学系PLを用いた露光時、アライメント系ALG1、ALG2の使用時等のいずれのときにもウエハステージWST1、WST2の位置は、測長軸BI1X、測長軸BI2Xの計測値に基づいて管理される。
【0053】
また、本実施形態では、図2及び図3に示されるように、投影光学系PLの光軸AXで測長軸BI1X、BI2Xと垂直に交差する測長軸BI2Yを有するY軸干渉計46と、アライメント系ALG1,ALG2の光軸SXa,SXbで測長軸BI1X、BI2Xとそれぞれ垂直に交差する測長軸BI1Y、BI3Yをそれぞれ有するY軸干渉計44,48とが設けられている。
【0054】
本実施形態の場合、投影光学系PLを用いた露光時のウエハステージWST1,WST2のY軸方向に関する位置計測には、投影光学系PLの光軸AXを通過する測長軸BI2Yを有するY軸干渉計46の計測値が用いられ、アライメント系ALG1の使用時等のウエハステージWST1のY軸方向に関する位置計測には、アライメント系ALG1の光軸SXaを通過する測長軸BI1Yを有するY軸干渉計44の計測値が用いられ、アライメント系ALG2使用時等のウエハステージWST2のY軸方向に関する位置計測には、アライメント系ALG2の光軸SXbを通過する測長軸BI3Yを有するY軸干渉計48の計測値が用いられる。
【0055】
このように、本実施形態では、X軸干渉計16、18及びY軸干渉計44,46,48の合計5つの干渉計によって、ウエハステージWST1、WST2のXY2次元座標位置を管理する干渉計システムが構成されている。Y軸干渉計44,46,48は、図2から明らかなように、各2つの光軸を有する2軸干渉計であり、ウエハステージWST1、WST2のY軸方向の計測以外に、ローリング(X軸回りの回転(θx回転))の計測が可能となっている。また、各光軸の出力値は独立に計測できるようになっている。
【0056】
これまでの説明からもわかるように、本実施形態では、状況によっては、Y軸干渉計の測長軸がウエハステージWST1、WST2の反射面より外れることとなる。すなわち、アライメント位置から露光位置への移動、あるいは露光位置からウエハ交換位置への移動などの際に、Y軸方向の干渉計ビームがウエハステージWST1,WST2の移動鏡に当たらなくなる状態が生じ、制御に用いる干渉計の切り替えが必須となる。かかる点を考慮して、ウエハステージWST1,WST2のY軸方向の位置を計測する不図示のリニアエンコーダが設けられている。
【0057】
すなわち、本実施形態では、ステージ制御装置19が、ウエハステージWST1,WST2の上記のアライメント位置から露光位置への移動、あるいは露光位置からウエハ交換位置への移動などの際に、主制御装置20からの指示に応じ、X軸干渉計により計測されるウエハステージWST1,WST2のX位置情報とリニアエンコーダにより計測されるウエハステージWST1、WST2のY位置情報とに基づいて、ウエハステージWST1,WST2のX位置、Y位置の移動を制御する。
【0058】
勿論、ステージ制御装置19では、主制御装置20からの指示に応じ、Y軸干渉計からの干渉計ビームが再度ウエハステージWST1,WST2の移動鏡に当たったときには、それまで制御に用いられていなかった測長軸のY軸干渉計をリセット(又はプリセット)し、以後、干渉計システムを構成するX軸干渉計,Y軸干渉計の計測値のみに基づいてウエハステージWST1,WST2の移動を制御する。
【0059】
なお、ウエハステージWST1,WST2の端面を鏡面加工して反射面(移動鏡96X,96Y,97X,97Yの反射面に相当)を形成しても良い。
【0060】
上述のようにして構成された干渉計システムを構成する各干渉計の計測値は、図1に示されるステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に送られるようになっている。ステージ制御装置19では、主制御装置20からの指示に応じ、各干渉計の出力値に基づいてウエハステージWST1,WST2を前述した各ステージ駆動系を介して制御する。すなわち、本実施形態では、このようにしてウエハステージWST1,WST2は互いに独立にかつ機械的に干渉しない状態でXY2次元方向に駆動される。
【0061】
更に、本実施形態では、図示は省略されているが、レチクルRの上方に、投影光学系PLを介してレチクルR上のレチクルマークと基準マーク板FM1、FM2上のマークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)方式のレチクルアライメント検出系が設けられている。これらのレチクルアライメント検出系の検出信号は、不図示のアライメント制御装置を介して主制御装置20に供給されるようになっている。なお、レチクルアライメント検出系の構成は、例えば特開平7−176468号公報に詳細に開示されている。
【0062】
また、図示は省略されているが、投影光学系PL、アライメント系ALG1、ALG2のそれぞれには、合焦位置を調べるためのオートフォーカス/オートレベリング計測機構(以下、「AF/AL系」という)がそれぞれ設けられている。このように、投影光学系PL及び一対のアライメント系ALG1、ALG2のそれぞれに、AF/AL系を設けた露光装置の構成は、例えば特開平10−214783号公報に詳細に開示されている。
【0063】
《並行処理シーケンス》
次に、上述のようにして構成された、ウエハステージWST1、WST2を用いて行われる露光装置100の基本的な並行処理シーケンスについて説明する。
【0064】
ここで、投影光学系PLの下方にあるウエハステージWST2上でウエハW2に対してステップ・アンド・スキャン方式で露光動作が行われ、ウエハステージWST1上でウエハ交換、マーク検出動作が行われる場合を考える。このとき、露光動作中のウエハステージWST2の位置制御は、干渉計システムの測長軸BI2X、BI2Yの計測値に基づいて行われ、ウエハ交換とウエハアライメント計測動作が行われるウエハステージWST1の位置制御は、干渉計システムの測長軸BI1X,BI1Yの計測値に基づいて行われる。
【0065】
まず、ウエハ交換動作について説明する。ウエハステージWST2上での露光動作と並行して、所定の左側ウエハ交換位置(ロード位置兼アンロード位置)において、ウエハステージWST1と不図示の搬送システムとの間でウエハの交換が行われる。このウエハ交換動作により、ウエハステージWST1上にウエハW1がアンロードされ、新しいウエハがウエハW1としてロードされる。ここで、新しくロードされたウエハW1の残留回転誤差は殆ど零であるものとする。なお、一例としてアライメント系ALG1で基準マーク板FM1上の基準マークMK2を検出可能な位置が、左側ウエハ交換位置として定められる。
【0066】
この場合、ウエハステージWST1上では、ウエハ交換動作に引き続いて後述するようにしてウエハW1上に形成されたショット領域に付設されたアライメントマークの検出動作が行われる。上記の左側ウエハ交換位置ではアライメント系ALG1の真下にウエハステージWST1の基準マーク板FM1上の基準マークMK2が来るような配置となっている。このため、ステージ制御装置19では、主制御装置20の指示に応じて、アライメント系ALG1により基準マークMK2を検出する以前に、干渉計システムの測長軸BI1Yの干渉計のリセットを実施している。
【0067】
すなわち、上述したウエハ交換動作、干渉計のリセットに引き続いて、ウエハステージWST1上のウエハW1に対し、例えばEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)方式のウエハアライメントが行われ、ウエハW1上の各ショット領域の配列座標が算出される。具体的には、干渉計システム(測長軸BI1X、BI1Y)により、ウエハステージWST1の位置を管理しつつ、設計上のショット配列データ(アライメントマーク位置データ)をもとに、ウエハステージWST1を順次移動させつつ、ウエハW1上の複数のアライメントショット領域(サンプルショット領域)の位置座標を、アライメント系ALG1によるアライメントショット領域に付設されたアライメントマークの検出結果とその検出時の干渉計システム(測長軸BI1X、BI1Y)の計測値とに基づいてそれぞれ算出し、これらの算出結果とショット配列の設計座標データに基づいて最小自乗法による統計演算により、全てのショット配列データを演算する。なお、EGAについては、特開昭61−44429号公報等に詳細に開示されている。
【0068】
上記のEGAの際の各部の動作は主制御装置20により制御され、上記の演算は主制御装置20により行われる。この場合、ウエハステージWST1の位置は、主制御装置20の指示に基づいてステージ制御装置19により制御される。なお、上記の演算結果は、基準マーク板FM1の基準マークMK2の位置を基準とする座標系に変換しておくことが望ましい。また、主制御装置20がマーク検出動作、すなわちアライメント系ALG1によるウエハW1のアライメントマークの検出動作は、後述するアライメントパラメータの設定値に基づいて制御される。
【0069】
ウエハステージWST1側で、上記のウエハ交換動作、マーク検出動作が行われている間に、ウエハステージWST2側では、ウエハW2に対してステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われる。具体的には、前述したウエハW1側と同様にして、事前にEGA方式のウエハアライメントが行われており、この結果得られたウエハW2上のショット配列データ(基準マーク板FM2上の基準マークMK2を基準とする)に基づいて、順次ウエハW2上のショット領域を投影光学系PLの光軸下方に移動させた後、各ショット領域の露光の都度、レチクルステージRSTとウエハステージWST2とを走査方向に同期走査させることにより、スキャン露光が行われる。このウエハW2に対するスキャン露光中の各部の動作も主制御装置20によって制御され、ウエハステージWST2の位置は、主制御装置20の指示に基づいてステージ制御装置19により制御される。また、このスキャン露光中の各部の動作も、装置パラメータとして設定されている後述する露光パラメータの設定値に基づいて制御される。
【0070】
そして、ウエハW2に対するスキャン露光が終了し、ウエハステージWST2が、投影光学系PLの直下から退避した後、ウエハステージWST1は、投影光学系PLの光軸AX(投影中心)の真下に基準マーク板FM1上の基準マークMK1,MK3の中心位置が来るまで移動されるが、この移動の途中で測長軸BI1Yの干渉計ビームが、ウエハステージWST1の移動鏡96Yに入射されなくなる。従って、ステージ制御装置19では、その時点以後、主制御装置20からの指示に基づき、ウエハステージWST1の位置を、測長軸BI1Xを有する干渉計16の計測値と不図示のリニアエンコーダの計測値とに基づいて制御する。
【0071】
そして、主制御装置20は、不図示のレチクルアライメント検出系を用いて、基準マーク板FM1上の基準マークMK1,MK3とこれに対応するレチクルR上のレチクルマークとの相対位置関係を計測するのに先立って測長軸BI2Yを有する干渉計46をリセットする。リセット動作は、次に使用する測長軸の干渉計ビームがウエハステージWST1の移動鏡96Yを照射できるようになった時点で実行することができる。
【0072】
このように、干渉計のリセット動作を行っても高精度なアライメントが可能である理由は、アライメント系ALG1により基準マーク板FM1上の基準マークMK2を検出した後、前述したEGA方式のウエハアライメントを行い、アライメント系ALG1によるアライメントショット領域のアライメントマークの検出結果に基づいて算出された仮想位置(ウエハW1上の各ショット領域の座標位置)を、基準マークMK2を基準とする座標系の位置座標に変換しているためである。この時点で基準マークと露光すべき位置の相対距離が求められていることから、露光前にレチクルアライメント検出系により露光位置と基準マーク位置との対応がとれていれば、その値に前記相対距離を加えることにより、Y軸方向の干渉計の干渉計ビームがウエハステージの移動中に切れて再度リセットを行ったとしても高精度な露光動作を行うことができるのである。従って、前述したリニアエンコーダの計測精度は、それ程高精度である必要がなく、ウエハステージWST1(又はWST2)を、投影光学系PLの光軸AXの中心(投影中心)の真下に基準マーク板FM1上の基準マークMK1,MK3が来る位置まで移動できる程度の精度があれば足りる。
【0073】
そして、その後ウエハステージWST1上のウエハW1に対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が、前述と同様にして行われる。
【0074】
一方、露光動作が終了したウエハステージWST2は、前述のように、露光終了位置から右側ウエハ交換位置まで移動(退避)されている。この右側ウエハ交換位置は、前述した左側ウエハ交換位置と同様にアライメント系ALG2の下に基準マーク板FM2上の基準マークMK2が来るように設定されており、上記ウエハ交換動作とマーク検出動作と同様に動作が実行され、各動作が完了すると、ウエハステージWST1側でウエハW1に対する露光動作が終了するのを待つこととなる。勿論、干渉計システムの測長軸BI3Yの干渉計のリセット動作は、アライメント系ALG2による基準マーク板FM2上のマーク検出に先立って実行されている。
【0075】
本実施形態では、このようにして、ウエハステージWST1,WST2の並行処理シーケンスが連続的に繰り返し行われることとなる。
【0076】
ここで、並行処理シーケンスにおける露光動作についてさらに具体的に説明する。ここでは、図4に示されるようなウエハW2上の複数(例えば76個)のショット領域に対して、同図に示されるような経路で露光を行う場合について説明する。ここで、図4中のウエハW2のショット領域SM(M=1〜76)上を通過する矢印を含む線は、前述の露光領域IAの中心(この点を点Pとする)が各ショット領域上を通過する軌跡に相当し、ショット領域の露光順に対応するものである。この軌跡中の実線は、各ショットの露光の際の露光領域IA(図2参照)の中心P(以下「点P」とも記述する)の経路を示し、点線は、非走査方向の同一行内の隣接ショット間における点Pの移動軌跡を示し、一点鎖線は、異なる行間における点Pの移動軌跡を示す。なお、実際には、点Pが固定でウエハW2(さらに正確にはウエハステージWST2)が移動するのであるが、図4においては、説明を分かり易くするため、ウエハW2上を点P(露光領域IAの中心P)が移動するかのように図示されている。なお、露光装置100においては、このような「ショット領域の露光順」が調整可能な装置パラメータとして設定されているものとし、後述するスケジューリング処理において、このショット領域の露光順は、適宜調整されるようになる。
【0077】
さらに、露光装置100における1つのショット領域に対する基本的(一般的)な露光動作について説明する。ここでも、ウエハステージWST2上のウエハW2に対して走査露光を行う場合について説明する。
【0078】
ウエハステージWST2は、各ショット領域の走査露光を行なう際には、基本的には、走査方向に対して加速運動→等速運動→減速運動を行う。すなわち、まず、ショット領域のショット端から所定間隔離れた位置に露光領域IAの中心Pが位置付けられ、ウエハステージWST2の加速が開始される。そして、ウエハステージWST2が所定の速度(スキャン速度)に近づいた時点で、レチクルRとウエハWの同期制御が開始される。このウエハステージWST2の加速開始時点から同期制御の開始時点までの時間を、「加速時間」と呼ぶ。同期制御開始後、ウエハとレチクルの変位誤差が所定の関係になるまでレチクルステージRSTによる追従制御が行われ、露光が開始される。この同期制御開始時点から、露光開始時点までの時間を、「整定時間」と呼ぶ。
【0079】
上記の加速開始から露光開始までの時間、すなわち加速時間と整定時間との和を、「プリスキャン時間」と呼ぶ。露光装置100では、加速時間におけるウエハステージWST1(又はWST2)の「平均加速度」と、「スキャン速度」と、「整定時間」とが調整可能な装置パラメータとして設定されている。すなわち、主制御装置20は、装置パラメータとして設定されている「平均加速度」、「スキャン速度」、「整定時間」の各設定値に基づいてウエハステージWST2を駆動する。このことは、逆に言えば、この「平均加速度」と「スキャン速度」の設定値から、「加速時間」を予想することができ、「加速時間」とパラメータ設定された「整定時間」とから、「プリスキャン時間」を算出することができることを示している。なお、加速時間における、ウエハステージWST2の加速は、一定の加速度での加速であっても良いし、時間的に加速度が滑らかに変化するような加速であっても良い。すなわち、結果的に、加速時間におけるウエハステージWST1(又はWST2)の加速度の平均値が、「平均加速度」となっていれば良い。
【0080】
この「プリスキャン時間」が経過した後、走査方向への「スキャン速度」での等速移動により走査露光が行われるが、この走査露光が行われる時間を「露光時間」と呼ぶ。この「露光時間」は、そのショット領域の走査方向のサイズと、パラメータ設定されている「スキャン速度」によって決まる。
【0081】
スループット向上のため、ステップ・アンド・スキャン方式では、通常レチクルRを交互スキャン(往復スキャン)させることで、順次、次のショットに対する露光を行うので、露光装置100においては、上記露光時間経過後、前記プリスキャンでの移動距離と同じ距離だけ、露光終了時点から更にレチクルRを移動して、レチクルRを次のショットの露光のための走査開始位置まで戻す(従って、これに対応してウエハWも走査方向に移動させる)ことが必要である。このための時間が、「オーバースキャン時間」である。この「オーバースキャン時間」は、スキャン速度が維持される「等速オーバースキャン時間」と、速度が減速される「減速オーバースキャン時間」とに分けることができる。この「減速オーバースキャン時間」における「平均減速度」は、上述の加速時間における「平均加速度」と同じ値が設定されるようにしても良い。また、この「等速オーバースキャン時間」も調整可能な装置パラメータとして設定されている。
【0082】
図5(A)には、図4に示されるような同一行に位置する隣接ショット、ファーストショットS1,セカンドショットS2,サードショットS3を順次露光する場合の露光領域IAの中心点Pの経路が示されている。図5(A)に示されるように、点Pは、ショット領域S1を通過した後、位置O(0,0)を通過し、B(Bx,By)を経てショット領域S2を通り、C(Cx,Cy)へ至り、ショット領域S3を通過する。
【0083】
図5(B)には、点Pが、図5(A)の位置B(Bx,By)から位置C(Cx,Cy)に移動し、ショット領域S2に対する走査露光を行う際のX軸方向(走査方向)の移動速度が示されている。図5(B)に示されるように、ショット領域S2の走査露光に関しては、時間t1が「加速時間」であり、時間t2が「整定時間」であり、時間t3が「露光時間」であり、時間t4が「等速オーバースキャン時間」であり、時間t5が「減速オーバースキャン時間」である。すなわち、ここでは「プリスキャン時間」がt1+t2となり、「オーバースキャン時間」がt4+t5となる。図5(C)には、その走査露光を行う際のY軸方向の移動速度が示されている。
【0084】
図5(A)から明らかなように、露光装置100では、走査方向(X軸方向)へのウエハステージWST2のプリスキャン及びオーバースキャンと、非スキャン方向(Y軸方向)へのウエハステージWST2のステッピングを並行して行っている。これによって、ウエハステージWST2のショット間の移動距離を短縮し、スループットの向上を図るためである。
【0085】
ところで、前述の如く、プリスキャン時間にはレチクルRをウエハWに完全に追従させるための整定時間が含まれるため、非スキャン方向に関する加減速制御はできるだけ整定時間の開始時点より早く終了していることが望ましい。これを実現するため、図5(C)に示されるように、本実施形態では、露光終了に続くウエハステージWST2のスキャン方向での等速オーバースキャン時間t4の間に、ウエハステージWST2の非スキャン方向でのステッピングを開始することとしており、その等速オーバースキャン時間t4分だけ早く非スキャン方向に発生する加減速制御を終了するような制御を行う。このようにすれば、整定時間t2の間はスキャン方向の同期制御のみに専念できるので、整定時間t2の短縮が可能となる。
【0086】
本実施形態の露光装置100では、上述したような、プリスキャン→露光→オーバースキャン→プリスキャン→露光→オーバースキャンを繰り返すことにより、ウエハW2上の各ショット領域に対する走査露光を順次行うが、前述したように、プリスキャン時間、露光時間、オーバースキャン時間は、ショット領域のスキャン長、スキャン速度、平均加速度(平均減速度)によって決まるようになる。本実施形態の露光装置100では、後述するように、実際の走査露光を行う前に、ショット領域のスキャン長、スキャン速度、平均加速度等に基づいて、プリスキャン時間、露光時間、オーバースキャン時間を算出し、ウエハ上のショット領域の走査露光に要する時間(第2の時間)を予め算出する。この第2の時間の算出は、装置パラメータとして設定されている「ショット領域の露光順」、「平均加速度(減速度)」、「整定時間」、「スキャン速度」、「等速オーバースキャン時間」の設定値に基づいて行われる。ここで、このような露光動作に関連する装置パラメータを、特に露光パラメータと呼ぶ。
【0087】
次に、アライメントマークの検出動作についてさらに具体的に説明する。図6には、ウエハステージWST1上に保持されるウエハW1上の各ショット領域に付設されたアライメントマークの検出順の一例が示されている。
【0088】
図6においては、検出対象となっているアライメントマークが付設されたサンプルショット領域が斜線で示されており、実線矢印で示される経路で、アライメント系ALG1の検出視野を、この経路順にステップ移動させることにより、サンプルショット領域に付設されたアライメントマークの検出を行う。
【0089】
なお、ウエハアライメントにおいては、サンプルショットの数(この数が検出するアライメントマークの数に対応する)は多ければ多いほど、アライメント精度の観点から望ましいが、それだけ検出に要する時間が長くなってしまうため、スループットの観点からは望ましくない。EGAでは、通常サンプルショット数を3個〜15個としているが、最も一般的なサンプルショット数は8個程度である。そこで、図6においては、サンプルショット数を8としている。
【0090】
また、ウエハアライメントにおいては、アライメントマークの検出を行うサンプルショット領域の配置も、そのアライメント精度の上で非常な重要なポイントとなる。例えば、アライメント精度を高めるためには、各サンプルショット領域は、できるだけウエハ上に分散して配置されている方が望ましい。そこで、図6のウエハW1においては、サンプルショットとして、ウエハ外週部付近のショット領域が選択されているのである。このようなサンプルショットの配置が決まれば、そのサンプルショットの計測順は、例えばその計測経路を最短とする計測順を採用することができる。また、主制御装置20は、調整可能な装置パラメータとしてのアライメントマーク検出中の「ステッピング速度」により、ウエハステージWST1を移動させ、サンプルショットに付設されたアライメントマークがアライメント系ALG1の検出視野に入るようにウエハステージWST1を位置決めし、ステップ移動に起因して発生するウエハステージWST1の振動の振幅が、ある程度の許容値(以下、これを「ステップ許容値」と呼ぶ)内に収束した状態で、アライメント系ALG1によりアライメントマークの検出を実行する。主制御装置20は、このマーク検出動作を例えば図6に示すような経路で繰り返し、マーク検出動作を行っていく。なお、露光装置100においては、「サンプルショットの数」、「サンプルショットの配置」、「計測経路」、「ステッピング速度」についても、調整可能な装置パラメータとして設定されているものとする。前述のように、サンプルショットの数等は、アライメント精度に直接影響を与えるものであるため、露光装置100では、その要求精度を満たすサンプルショットの数等がパラメータの設定値として、露光装置100にデフォルト設定(上述の例では8が設定されている)されている。主制御装置20は、マーク検出動作を行う際には、これらのパラメータの設定値に基づいて、ウエハステージWST1を制御する。このことは、サンプルショットの数、配置、計測経路と、ステッピング速度等から、マーク検出動作の所要時間を予測することができることを意味している。
【0091】
なお、サンプルショットの数等は、ウエハそれぞれのショットマップによって異なるので、サンプルショットの数や配置のパラメータは、ショットマップ毎に設定可能であるものとしても良い。ここで、ショットマップとは、そのウエハに形成すべきショットの配置、数、大きさ等が規定されているマップをいう。ショットマップは、露光装置100が稼動するリソグラフィシステムの例えばホストコンピュータから主制御装置20に送信されるプロセスプログラム内に含まれており、主制御装置20は、ウエハのアライメントを行う前にそのウエハのショットマップを解析し、ショットの配置、数、大きさ(特に走査方向のスキャン長)などを把握したうえでそのショットマップに応じたアライメント、走査露光を行うように各ステージを制御する。
【0092】
なお、マーク検出動作の所要時間をより正確に予測するためには、ステップ移動後の振動の振幅がステップ許容値に収束するまでの時間も考慮する必要がある。露光装置100では、この「ステップ許容値」も調整可能な装置パラメータとして設定されている。この収束時間については、そのステップ許容値や、ウエハステージWST2の位置を制御する制御系のサーボゲイン(例えば、位置ループゲインや速度ループゲインであり、これも調整可能な装置パラメータである)などから、予測することができる。なお、このような「サンプルショットの数、配置」、「ステップ許容値」、「サーボゲイン」などマーク検出動作に関連するパラメータを特にアライメントパラメータと呼ぶ。
【0093】
なお、実際には、上記マーク検出動作においては、ショット領域毎に、そのショット領域のX位置を示すウエハXマークと、Y位置を示すウエハYマークとを別々に検出する必要があるため、アライメントマークの計測経路は、図6に示されるものより複雑となる。
【0094】
なお、このアライメントマーク検出動作の所要時間と、マージン時間としてのウエハ交換に要する時間とを加算して、それらの合計時間を第1の時間とする。
【0095】
以上、ウエハステージWST2に対する露光動作、ウエハステージWST1に対するマーク検出動作を行う場合の各動作について説明したが、ウエハステージWST1に対する露光動作、ウエハステージWST2に対するマーク検出動作も、上記と同様に行われるのは勿論である。
【0096】
また、図4に示される露光経路や図6に示されるような計測経路で、ウエハステージWST2に対する露光動作及びウエハステージWST1に対するマーク検出動作が行われる場合、露光動作及びマーク検出動作開始直後には、ウエハW1,W2の中心より+X側のショット領域に対して各動作が行われるため、ウエハステージWST1,WST2は、投影光学系PLの中心又はアライメント系ALG1の検出視野に対し、全体的に−X側によるようになる。そして、露光動作及びアライメントマーク検出動作完了直前には、ウエハの中心より−X側のショット領域に対して各動作が行われるようになるため、ウエハステージWST1,WST2は、投影光学系PLの中心又はアライメント系ALG1の検出視野に対し、+X側によるようになる。すなわち、図4、図6に示されるような露光経路及びマーク検出経路を採用すれば、露光動作及びマーク検出動作が進むにつれて、ウエハステージWST1,WST2は−X側から+X側に進むようになる。このようにすれば、露光動作が完了した時点で、ウエハステージWST2は、ウエハの交換位置に近い位置に位置することとなるので、速やかにウエハ交換位置に移動できるようになり、一方では、アライメントマーク検出動作が完了した時点で、ウエハステージWST1が、露光位置に近い位置に位置することになり、速やかに露光動作を開始することができるようになる。また、ウエハステージWST1とウエハステージWST2の間隔をできるだけ短くすることができるようになり、結果的に、スループットに有利となる。
【0097】
なお、ウエハW1に対して露光動作を行い、ウエハW2に対してマーク検出動作を行う場合には、ウエハW1に対する走査露光では、最も−X側に位置するショット領域から露光が開始され、最も+X側に位置するショット領域の露光により、ウエハW2に対する露光動作が完了するようになっており、ウエハW2に対するアライメントマーク検出動作では、最も−X側に位置するショット領域に付設されたアライメントマークからマークの検出が開始され、最も+X側に位置するショット領域に付設されたアライメントマークの計測により、ウエハW2に対するアライメントマークの計測が完了するようになっていることは勿論である。
【0098】
ところで、各動作をそれぞれ行う両ステージWST1,WST2の移動による、両ステージの干渉を防止すべく、一方のステージが他方のステージと干渉しなくなるまで、その一方のステージ上の動作を一時中断して待ち状態とする必要がある。なお、露光装置100では、このような各動作の待ち時間についても、調整可能な装置パラメータとして設定されているものとする。
【0099】
本実施形態では、後述するスケジューリング処理により、上述のようにウエハ交換の所要時間(以下、「ウエハ交換時間」と略述する)と、アライメントマーク検出の所要時間(以下、「マーク検出時間」と略述する)との和である第1の時間(ウエハ交換・マーク検出動作時間とも呼ぶ)と露光動作に要する時間(第2の時間、以下「露光時間」と略述する)とを予測し、予測された第1の時間と、第2の時間とを比較し、その比較結果に基づいて、前述した露光パラメータやアライメントパラメータの調整を行う。
【0100】
上述した2つのウエハステージWST1,WST2上で並行して行われる露光動作とウエハ交換・マーク検出動作とでは、ウエハ交換・マーク検出動作の方が先に終了するのが一般的である。例えば、図7に示されるように、ウエハステージWST2での露光時間をT2とし、ウエハステージWST1でのウエハ交換時間をTWとし、マーク検出時間をT1とすると、T2>(T1+TW)となっている。このまま、後述するスケジューリング処理を行わずに、そのまま、並行処理シーケンスを実行した場合、露光時間T2、マーク検出時間T1の時間は変わらず、ウエハ交換・マーク検出動作終了後、ウエハステージWST1では、ウエハステージWST2側での露光動作が完了するまで待機状態となる。そして、ウエハW2に対する露光動作が終了した時点で、ウエハステージWST1、WST2の移動が開始されるようになる。そこで、本実施形態では、上述した並行処理シーケンスを行う前に、一方のステージが待機状態となる時間ができるだけ小さくなるように並行処理シーケンスのスケジューリングを行う。なお、図7において、時間TEは、並行処理シーケンスにおける全体の所要時間を示す。
【0101】
例えば、ウエハステージWST1に対するウエハ交換時間TWと、マーク検出時間T1との合計時間が、ウエハステージWST2上の露光時間T2よりも短い場合には、例えばサンプルショットの数などを増やし、さらに多くのアライメントマークを検出するようにする。このようにすれば、ウエハアライメントのアライメント精度をさらに高めることができるようになり、ウエハに対する露光(重ね合わせ露光)のさらなる高精度化を実現することができるようになる。
【0102】
本実施形態では、このスケジューリング処理の処理モードとして、2つのモードを用意する。1つのモードは、露光動作をアライメントマーク検出動作よりも優先させる(すなわち、両ステージが干渉する場合には、露光動作を行うステージを優先して動作させ、マーク検出動作を行うステージを待ち状態とする)モードであり、第1の時間(ウエハ交換時間とマーク検出時間との合計の時間)が、第2の時間(露光時間)を上回った場合には、マーク検出時間を短縮化すべく、マーク検出動作の調整を行うモードである。これを第1のモードとする。
【0103】
また、もう1つのモードは、露光動作よりもマーク検出動作を優先させるモードであり、例えば、第1の時間が、第2の時間を上回った場合には、露光動作をマーク検出動作よりも常に優先させるのではなく(マーク検出動作を行うステージを常に待ち状態とするのではなく)、マーク検出動作を優先させると、並行処理シーケンスの全体の所要時間が短くなるようであれば、マーク検出動作を優先し、露光動作に待ち状態を入れるようなシーケンスを採用するモードである。これを第2のモードとする。
【0104】
これら2つのモードの選択基準は、そのウエハのアライメントの要求精度がどのようなレベルであるかによる。すなわち、アライメントに対する要求精度が、通常のレベルである場合には、第1モードが選択され、アライメントに対する要求精度が通常のレベルよりも厳しい場合には、第2モードが選択される。
【0105】
すなわち、アライメントに対する要求精度が、露光装置100に設定してあるアライメントパラメータに基づくマーク検出動作により十分満たされる場合には、第1のモードでスケジューリング処理を実行し、アライメントに対する要求精度が、露光装置100に設定してあるアライメントパラメータに基づくマーク検出動作により達成される精度よりも厳しい場合には、その要求精度が満たされるような条件の下でマーク検出動作を行う。なお、アライメントに対する要求精度に関する情報は、露光装置100が稼動するリソグラフィシステムのホストコンピュータ等から送信されたプロセスプログラムなどに含まれている。
【0106】
以下では、上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100の主制御装置20内のCPUの処理により行われる上記並行処理シーケンスのスケジューリング処理について、そのアルゴリズムを示す図8又は図9のフローチャートに沿って適宜他の図面を参照しつつ、説明する。
【0107】
図8には、第1のモードが設定されているときに実行されるスケジューリング処理が示されており、図9には、第2のモードが設定されているときに実行されるスケジューリング処理が示されている。ここでも、ウエハステージWST2上のウエハW2に対して露光動作を行い、ウエハステージWST1上のウエハW1に対しウエハ交換・マーク検出動作を並行して行う際のスケジューリング処理を行う場合について説明する。なお、このスケジューリング処理を実行するタイミングは、少なくとも図7に示される時点TSよりも前であるものとする。また、ウエハステージWST2上のウエハW2に対しては、すでに、プロセスプログラムから、ウエハW2に関するショットマップデータの読み込みを終えており、ウエハ交換・マーク検出動作がすでに終了しているものとする。
【0108】
まず、第1モードが設定されていた場合のスケジューリング処理について説明する。図8に示されるように、まず、ステップ502において、ウエハステージWST1上にロードされるウエハW1に形成すべきショット領域に関するショットマップデータを、例えば露光装置100が稼動するリソグラフィシステムのホストコンピュータ等から送信されたプロセスプログラムから読み込む。
【0109】
そして、次のステップ504において、すでに読み込んでいるウエハステージWST2上のウエハW2に関するショットマップデータと、ステップ502において読み込んだウエハW1に関するショットマップデータとに基づいて、上述した手順により、ウエハW2の露光時間T2と、ウエハW1のマーク検出時間T1とを算出する。なお、これらの所要時間を算出する際には、ウエハW2に対する露光動作が、ウエハW1に対するマーク検出動作から影響を受けないように、すなわち、露光動作の方を優先させた状態での所要時間を算出する。なお、これらの所要時間は、前述のように、ショットマップデータに含まれるショット領域の数、ショットサイズ(例えば、スキャン長)と、露光パラメータとしてデフォルト設定されているショットの露光順、平均加速度(平均減速度)、整定時間、スキャン速度、等速オーバースキャン時間、ステージ移動中のシーケンス中の待ち時間と、アライメントパラメータとしてデフォルト設定されている、サンプルショットの数(計測対象のマーク数)、サンプルショットの計測順(そのマークの計測順)、1つのマークの計測回数(計測画面数)、ステッピング速度、ステップ許容値、サーボゲイン等から容易に算出することができる。また、ウエハW1のウエハ交換時間TWは、一定の時間、すなわちマージン時間として設定されているものとする。
【0110】
次のステップ506では、時間T2から時間(T1+TW)を差し引いた時間Tを求め、ステップ508において、時間Tが0より大きいか否かを判断する。この判断が肯定されれば、ステップ510に進み、否定されれば、ステップ512に進む。
【0111】
ステップ510では、Tの絶対値をとり、時間|T|分のマーク計測可能な新たな計測ショット領域をサンプルショットとして追加し、マーク検出動作の調整を行う。具体的には、例えば図10(A)に示されるように、ショット領域S12を新たなサンプルショットに追加するなどして、時間T2が時間(T1+TW)を越えない限度において、新しいサンプルショットを決定する。時間T2がほぼ時間(T1+TW)となり、これ以上サンプルショットの数を増やすと時間T2が時間(T1+TW)を超えてしまう場合に、アライメントマーク検出動作の調整を終了し、ステップ516に進む。
【0112】
一方、ステップ512では、時間Tが0より小さいか否かが判断される。この判断が肯定されれば、ステップ514に進み、否定されれば(T1+TW)≒T2であるとして、スケジューリング処理を終了する。
【0113】
ステップ514では、時間|T|分のサンプルショットの削減により、マーク検出動作の調整を行う。具体的には、図10(B)に示されるように、ショット領域S68を、サンプルショットから削除するなどして、露光時間T2が合計時間(T1+TW)より短くなるか、又は、アライメント精度の下限を示す所定の基準としての最低サンプルショット数を下回るようにならない限度において、サンプルショットの数を削減する。露光時間T2が合計時間(T1+TW)とほぼ等しくなるか、最低サンプルショット数を下回るようになると、アライメントパラメータの調整を打ち切り、ステップ516に進む。
【0114】
ステップ516では、ステップ510又はステップ514で決定されたサンプルショット数を、アライメントパラメータとして設定することにより、アライメントパラメータを更新し、スケジューリング処理を終了する。
【0115】
次に、第2モードが選択されていた場合のスケジューリング処理について説明する。
【0116】
まず、図9のステップ602において、ウエハステージWST1上にロードされるウエハW1に形成すべきショット領域に関するショットマップデータを、例えば露光装置100が稼動するリソグラフィシステムのホストコンピュータ等から送信されたプロセスプログラムから読み込む。
【0117】
そして、次のステップ604において、すでに読み込んでいるウエハステージWST2上のウエハW2に関するショットマップデータと、ステップ602において読み込んだウエハW1に関するショットマップデータとに基づいて、露光動作を優先させた場合のウエハW2の露光シーケンスの所要時間T2と、ウエハW1のマーク検出時間T1とを算出する。ただし、ここでは、装置パラメータとして設定されているアライメントパラメータの設定値ではなく、プロセスプログラムに含まれるウエハW1のアライメントの要求精度に関する情報に指定されているアライメントパラメータ、例えばサンプルショット数や配置に基づいて、ウエハW1のマーク検出時間T1を算出するものとする。
【0118】
次のステップ606では、露光時間T2から、ウエハ交換時間TWとマーク検出時間T1との和を差し引いた時間Tを求める。そして、ステップ608では、時間Tが0より小さいか否かを判断する。この判断が肯定されれば、ステップ610に進み、否定されればステップ612に進む。
【0119】
ステップ610では、マーク検出動作を優先させて、露光動作中に待ち時間を入れることで、全体の時間TE(図7参照)が短くなるか否かを判断する。この判断が肯定されれば、ステップ614に進み、否定されればステップ618に進む。
【0120】
ステップ614では、露光パラメータの調整を行う。具体的には、露光時間T2が合計時間(T1+TW)を超えない限度で、例えば、「スキャン速度」の設定値を低くしたり、「整定時間」の設定値をさらに長くしたりして、T2≒(T1+TW)となる設定値を求める。このようにすれば、スループットを維持しつつ(並行処理シーケンス全体の時間TEが長くならない程度に)、露光精度を向上させることができるようになる。ステップ614終了後は、ステップ616に進む。なお、各動作中にウエハステージWST1,WST2が干渉し、マーク検出動作に待ち時間が発生する場合に、逆に、マーク検出動作を優先させて、露光動作中にウエハステージWST2の待ち状態を挿入した方が、並行処理シーケンス全体の時間TEが短くなるか否かを判断し、短くなると判断された場合には、その待ち時間を装置パラメータとして設定しておくようにしても良い。
【0121】
ステップ616では、ステップ614において調整されたスキャン速度や整定時間などの値を、新規の露光パラメータの設定値として設定し、露光パラメータを更新する。
【0122】
一方、ステップ618では、時間|T|分のサンプルショットの数を削減し、図8のステップ514と同様にして、アライメントパラメータの調整を行う。
【0123】
また、ステップ612では、Tが0より大きいか否かが判断される。その判断が肯定されれば、ステップ620に進み、否定されれば、T2≒(T1+TW)であるものとして、スケジューリング処理を終了する。
【0124】
ステップ620では、時間|T|分のマーク計測可能な新たなサンプルショットを追加し、図8のステップ510と同様にして、アライメントパラメータの調整を行う。ステップ620終了後は、ステップ622に進む。
【0125】
ステップ622では、ステップ618又はステップ620で調整された値にアライメントパラメータの設定値を更新し、ステップ622終了後、スケジューリング処理を終了する。
【0126】
以降、処理装置としての主制御装置20は、時点Tsにおいて、読み込んだショットマップ、調整された露光パラメータ及びアライメントパラメータに基づいて、上述したウエハステージWST2に対する露光動作及びウエハステージWST1に対するウエハ交換動作及びマーク検出動作を行う。
【0127】
なお、本実施形態では、ウエハステージWST1に対する露光動作及びウエハステージWST2に対するウエハ交換動作及びマーク検出動作を行う場合にも、上記と同様なスケジューリング処理が行われることは勿論である。
【0128】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、主制御装置20が、本発明の露光装置の算出装置、パラメータ設定装置、及び処理装置に対応している。すなわち、主制御装置20のCPUが行う、ステップ502〜ステップ506(図8)又はステップ602〜ステップ606の処理によって算出装置の機能が実現され、ステップ508〜ステップ516(図8)又はステップ608〜ステップ622(図9)の処理によってパラメータ設定装置の機能が実現されている。しかしながら、本発明がこれに限定されるものではないことは勿論である。
【0129】
以上詳細に述べたように、本実施形態の露光装置では、ステップ506(図8)又はステップ606(図9)において、2つのウエハステージ(WST1,WST2)のうち、一方のステージ上での露光動作に要する時間T2と、他方のステージ上でのマーク検出動作に要する時間T1とを、入力されたショットマップから算出する。そして、ステップ508〜ステップ514(図8)又はステップ608〜ステップ622(図9)において、それらの時間の大小関係に応じて全体のスループット及びウエハW1,W2のアライメント精度、露光精度の少なくとも一方が向上するように所定のパラメータ(露光パラメータ又はアライメントパラメータ)の調整を行う。その上で、主制御装置20により、設定されたパラメータに基づいて、2つのステージ上での露光動作及びマーク検出動作の並行処理を実行する。このようにすれば、全体のスループットが低下しない範囲内で、両ステージ上で行われる各動作を規定するパラメータを、アライメント精度又は露光精度が向上する方向に調整することができるようになり、調整されたパラメータで各動作を行うことができるようになるため、高露光精度及び高スループットを両立させることができる。
【0130】
なお、上記実施形態では、調整するアライメントパラメータをサンプルショット数のみとしたが、調整可能なアライメントパラメータは、このサンプルショット数だけには限られない。例えばサンプルショット(すなわち計測するアライメントマーク)の計測順や、サンプルショットの配置、ステップ許容値、サーボゲインなどを調整しても良いし、アライメント系ALG1,ALG2が画像処理方式を採用している場合には、1つのマーク当たりの計測画面数を調整するようにしても良い。
【0131】
また、上記実施形態では、調整する露光パラメータを、スキャン速度や、整定時間、ステージ移動シーケンス中の待ち時間としたが、調整可能な露光パラメータは、これらだけには限られない。例えば、ショットの露光順を調整するようにしても良い。
【0132】
また、上記実施形態では、スケジューリング処理の処理モードとして、2つのモードを用意したが、モードはいずれか一方のみであっても良く、他の処理モードがあっても良い。
【0133】
また、上記実施形態では、露光動作中のウエハステージの走査方向に関するオーバースキャン及びプリスキャンと同時に非走査方向に関するステッピングを行うようにしたが、本発明はこれに限らず、オーバースキャン及びプリスキャンとは非同時にステッピングを行うようにしても良いし、オーバースキャン中にステッピングを行うようにしても良い。
【0134】
また、上記実施形態では、ステージ装置30の構成として、2つのウエハステージWST1,WST2を備える構成を採用することとしたが、本発明がこれに限られるものではない。すなわち、複数のウエハステージを備えていれば良く、3つ以上のウエハステージを備えていても勿論良い。
【0135】
なお、上記実施形態では、照明光ILとしてKrFエキシマレーザ光などの遠紫外光、F2レーザ、ArFエキシマレーザ等の真空紫外域光、あるいは超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(g線、i線等)などを用いるものとしたが、これに限らずAr2レーザ光(波長126nm)などの他の真空紫外光を用いても良い。また、例えば、真空紫外光として上記各光源から出力されるレーザ光に限らず、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)の両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0136】
更に、照明光ILとしてEUV光、X線、あるいは電子線やイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置、投影光学系を用いない、例えばプロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナー、及び例えば国際公開WO99/49504号などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などにも本発明を適用しても良い。
【0137】
なお、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されないことは勿論である。すなわちステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置にも本発明は好適に適用できる。
【0138】
なお、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系を露光装置本体に組み込み、光学調整をするとともに、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより、上記実施形態の露光装置を製造することができる。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0139】
なお、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
【0140】
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置を用いて前述の方法によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上説明したように、本発明の露光装置は、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の一実施形態の露光装置の構成を示す正面図である。
【図2】露光装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】ステージ装置の構成を示す正面図である。
【図4】走査露光中の露光領域の中心点の経路を示す図である。
【図5】図5(A)は、1つのショット領域での露光領域の中心点の経路を示す図であり、図5(B)は、走査方向に関するウエハステージの速度を示すグラフであり、図5(C)は、非走査方向に関するウエハステージの速度を示すグラフである。
【図6】アライメントマーク検出の検出経路を示す図である。
【図7】並行処理シーケンスの一例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態の露光装置における第1のモードが設定されていたときのスケジューリング処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態の露光装置における第2のモードが設定されていたときのスケジューリング処理を示すフローチャートである。
【図10】図10(A)は、サンプルショットを追加したときの検出経路を示す図であり、図10(B)は、サンプルショットを削減したときの検出経路を示す図である。
【符号の説明】
【0143】
20…主制御装置(算出装置、パラメータ設定装置、処理装置)、100…露光装置、ALG1,ALG2…アライメント系、W1,W2…ウエハ、WST1,WST2…ウエハステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギビームにより感光物体を露光して前記感光物体上の複数のショット領域に所定のパターンを転写する露光装置であって、
感光物体を載置可能で2次元面内で独立に移動可能な2つのステージと;
前記感光物体に形成されたマークを検出する少なくとも1つのマーク検出系と;
入力されたショットマップに応じて、デフォルトの並行処理シーケンスに従って一方のステージ上の感光物体の露光動作を優先させた場合の、要求される検出精度に応じた前記マーク検出系を用いた他方のステージ上の感光物体のマークの検出動作に要する時間を算出する算出装置と;
前記算出装置で算出された前記マーク検出動作に要する時間と前記露光動作に要する時間との大小関係に応じて全体のスループット及び前記感光物体の位置検出精度の少なくとも一方が向上するような所定のパラメータの設定を行うパラメータ設定装置と;
前記パラメータ設定装置で設定されたパラメータに基づいて、前記2つのステージを用いて前記露光動作とマーク検出動作とを並行して実行する処理装置と;を備える露光装置。
【請求項2】
前記パラメータ設定装置は、前記算出された前記マーク検出動作に要する時間と一定のマージン時間との合計時間である第1の時間と、前記露光動作に要する第2の時間とのいずれが大きいかを判断し、該判断結果に応じて所定の基準に従って前記所定のパラメータを設定することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記マージン時間は、前記一方のステージ上で前記感光物体のマークの検出動作に先立って行われる感光物体の交換に要する時間であることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記要求される検出精度は、デフォルト設定に対応する精度であり、
前記パラメータ設定装置は、前記第1の時間が前記第2の時間より小さい場合には、前記第1の時間が第2の時間を越えない範囲で出来るだけ大きくなるように、かつ前記第1の時間が前記第2の時間より大きい場合には、前記第1の時間が第2の時間を越えない範囲となるように、マーク検出動作に関するパラメータを変更することを特徴とする請求項2又は3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記要求される検出精度は、デフォルト設定より厳しい精度であり、
前記パラメータ設定装置は、前記第1の時間が前記第2の時間より小さい場合には、前記第1の時間が第2の時間を越えない範囲で出来るだけ大きくなるように前記マーク検出動作に関するパラメータを変更し、
かつ前記第1の時間が前記第2の時間より大きい場合には、前記第2の時間が前記第1の時間を越えないように、かつ露光精度が向上するように露光パラメータを変更することを特徴とする請求項2又は3に記載の露光装置。
【請求項6】
前記露光パラメータは、ショットの露光順、走査露光の場合の走査速度、整定時間、ステージ移動シーケンス中の待ち時間の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記マーク検出動作に関するパラメータは、計測対象のマーク数、そのマークの計測順、配置、及び前記マーク検出系が画像処理方式である場合の計測画面数の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の露光装置。
【請求項8】
リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置を用いて露光を行うことを特徴とするデバイス製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−13090(P2006−13090A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187202(P2004−187202)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】