説明

露光装置及び画像形成装置

【課題】発光素子の配列間隔に拘わらず、被露光面に集光点列を形成する際のクロストークを低減することができる露光装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】露光装置は、複数の発光素子が少なくとも1列で配列された発光素子列と、発光素子列の複数の発光素子の各々に対応して発光素子から射出された光を回折して被露光面に集光する複数のホログラム素子が多重記録されたホログラム記録層と、を含む集光部材を複数備えている。複数の集光部材は、複数のホログラム素子により被露光面に形成される集光点が予め定めた第1の方向に並ぶように配列されると共に、複数の発光素子列が第1の方向と交差する第2の方向に複数列で並ぶように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源基板上に配列された複数の発光素子と、透過する光を回折させることにより当該光の光線束を収束させて像を結ぶ複数の回折正レンズを有する第1レンズアレイと、複数のレンズを有し、前記複数の発光素子の各々との間に前記第1レンズアレイを挟む第2レンズアレイとを備え、前記複数の回折正レンズの各々は、前記光源基板に垂直な方向において前記複数の発光素子の各々に重なっていることを特徴とする露光装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、支持部材と、支持部材表面に配列された複数の発光素子と、支持部材表面に一体的に設けられかつ各発光素子に対応するホログラムレンズ部を有するレンズ形成体とを備えている電子写真装置用露光ヘッドが記載されている。
【0004】
特許文献3には、画像を多数の微小な画素に分割し、一つもしくは複数の光源から各画素の濃度に対応した強度の光束を射出し、当該光束による輝点を、閾値以上の光量密度の光が照射されることにより、感光して表面電位変化や化学的変化等の潜像が形成される、又は感光して濃度変化を持つ画像が形成される画像記録媒体の上に走査して、各画素領域を順次感光させることにより画像を書込む光書込み装置において、前記光源と前記画像記録媒体との間であって光源側から順に、光束を集束させる光集束素子部と、光束が集束する位置に設けられた微小な光学的開口部と、該光学的開口部より射出した光束をおおむね平行な光束とするコリメータ部と、光束を複数の方向へ分解して放射すると共に複数の光束をおおむね同一の平面上に集束させるホログラム素子と、を配列された一つのユニットを、主走査方向に画素数と同数のアレイ状に配置したことを特徴とする光書込み装置が記載されている。
【0005】
特許文献4には、レーザ光源からのレーザ光をスポット状のビームに変換するスイッチング素子と、そのビームを収束させるホログラム素子とを、一対一に対応して複数個存在させたことを特徴とする印字装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−237576号公報
【特許文献2】特開2002−046300号公報
【特許文献3】特開2000−330058号公報
【特許文献4】特開平4−201270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、一の集光部材で必要な集光点を形成する場合に比べて、被露光面に集光点列を形成する際のクロストークを低減することができる露光装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために各請求項に記載の発明は、下記構成を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、複数の発光素子が少なくとも1列で配列された発光素子列と、前記発光素子列の複数の発光素子の各々に対応して前記発光素子から射出された光を回折して被露光面に集光する複数のホログラム素子が多重記録されたホログラム記録層と、を含む集光部材を複数備え、前記複数の集光部材は、前記複数のホログラム素子により被露光面に形成される集光点が予め定めた第1の方向に並ぶように配列されると共に、複数の前記発光素子列が前記第1の方向と交差する第2の方向に複数列で並ぶように配列された、露光装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記複数の集光部材は、集光部材を構成する発光素子の光軸方向が前記第2の方向における列毎に異なるように配列された、請求項1に記載の露光装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、特定の集光部材を構成する発光素子から射出された光が、隣接する他の集光部材を構成するホログラム素子に入射しないように遮光された、請求項1又は請求項2に記載の露光装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の露光装置と、前記露光装置と作動距離だけ離間して配置され、画像データに応じて前記露光装置により前記予め定めた第1の方向に主走査されて画像が書き込まれる感光体と、を含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各請求項に記載の発明によれば、以下の効果がある。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、一の集光部材で必要な集光点を形成する場合に比べて、被露光面に集光点列を形成する際のクロストークを低減することができる、という効果がある。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、クロストークを低減できると共に、露光装置の設計の自由度が向上する、という効果がある。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、クロストークをより一層低減できる、という効果がある。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、本発明の露光装置を用い、多重記録された複数のホログラムから射出された回折光を収束させて得られた集光点列で感光体表面を主走査して画像を書き込む場合に、一の集光部材で必要な集光点を形成する場合に比べてクロストークを低減することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。
【図3】(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図であり、(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図であり、(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿った断面図である。
【図4】ホログラムが記録される様子を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの部分的構成の一例を示す分解斜視図である。
【図6】ホログラムが再生されて回折光が生成される様子を示す図である。
【図7】図5に示すLEDプリントヘッドの利点を説明するための分解斜視図である。
【図8】隣接する集光部材間でクロストークが発生する様子を示す図である。
【図9】本実施の形態に係るLEDプリントヘッドの集光部材の配置の一例を示す図である。
【図10】本実施の形態に係るLEDプリントヘッドの複数の集光部材の配置の他の一例を示す図である。
【図11】本実施の形態に係るLEDプリントヘッドの複数の集光部材の配置の更に他の一例を示す図である。
【図12】図11に示すLEDプリントヘッドの複数の集光部材から回折光が生成される様子を示す図である。
【図13】図11に示す複数の集光部材の配置の変形例を示す図である。
【図14】複数の集光部材を複数列に配置して高解像度を得る例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0020】
<画像形成装置>
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この装置は、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置であり、発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED方式の露光装置(LEDプリントヘッド、略称「LPH」)を搭載している。LEDプリントヘッドは、機械的な駆動が不要という利点を有する。また、この画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10、画像形成装置の動作を制御する制御部30、及び画像読取装置3と例えばパーソナルコンピュータ(PC)2等の外部装置とに接続され、これらの装置から受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0021】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔で並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの各々は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを、適宜「画像形成ユニット11」と総称する。
【0022】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を所定電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、LPH14によって得られた静電潜像を現像する現像器17、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
【0023】
従来のLPHは、LEDアレイとロッドレンズアレイとで構成されていた。ロッドレンズアレイには、セルフォック(登録商標)など、屈折率分布型のロッドレンズが用いられていた。各LEDから射出された光は、ロッドレンズにより集光されて、感光体ドラム上に正立等倍像が結像される。本実施の形態に係る画像形成装置は、「ロッドレンズ」に代えて「ホログラム素子」を用いたLPHを備えている。
【0024】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。LPH14には、長さ方向に沿って複数のLEDがアレイ状(列状)に配列されている。LPH14は、その長さ方向が感光体ドラム12の軸線方向を向くように、感光体ドラム12の周囲に配置されている。ロッドレンズを用いたLPHでは、レンズアレイ端面から結像点までの光路長(作動距離)は数mm程度と短く、感光体ドラムの周囲における露光装置の占有割合が大きくなる。これに対して、本実施の形態のLPH14は、作動距離は数cm程度と長く、感光体ドラム12の表面から数cm離間して配置されている。このため、感光体ドラム12の周方向における占有幅が小さく、感光体ドラム12の周囲の混雑が緩和されている。
【0025】
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0026】
次に上記画像形成装置の動作について説明する。
まず、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、画像読取装置3やPC2から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0027】
例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により所定電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。即ち、LPH14の各LEDが画像データに基づいて発光することで、感光体ドラム12の表面が主走査されると共に、感光体ドラム12が回転することで副走査されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器17により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいて、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0028】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回動する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引されて転写される(一次転写)。中間転写ベルト21上には、重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0029】
そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される(二次転写)。重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙トレー(不図示)に排出される。
【0030】
<LEDプリントヘッド(LPH)>
図2は本実施の形態に係る露光装置としてのLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。図2に示すように、LEDプリントヘッド(LPH14)は、複数のLED50を備えたLEDアレイ52と、複数のLED50の各々に対応して設けられた複数のホログラム素子54を備えたホログラム素子アレイ56と、を備えている。図2に示す例では、LEDアレイ52は6個のLED50〜50を備え、ホログラム素子アレイ56は6個のホログラム素子54〜54を備えている。なお、各々を区別する必要がない場合には、LED50〜50を「LED50」と総称し、ホログラム素子54〜54を「ホログラム素子54」と総称する。
【0031】
複数のLED50の各々は、LEDチップ53上に配列されている。複数のLED50が配列されたLEDチップ53は、LED50の各々を駆動する駆動回路(図示せず)と共に、長尺状のLED基板58上に実装されている。LEDチップ53は、複数のLED50が主走査方向に並ぶように位置合せをして、LED基板58上に配置されている。これにより、LED50の各々は、感光体ドラム12の軸線方向と平行な方向に沿って配列される。
【0032】
LED50の配列方向が「主走査方向」である。また、LED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50(発光点)の主走査方向の間隔(発光点ピッチ)が一定間隔となるように配列されている。なお、感光体ドラム12の回転により副走査が行われるが、「主走査方向」と直交する方向を「副走査方向」として図示している。また、以下では、LED50の配置される位置を、適宜「発光点」と称する。
【0033】
なお、後述する通り、LPH14をLEDチップ53単位に分けて考える場合には、各単位を「集光部材15」と称する。図2においては、数個のLED50が1列に配列された1個の集光部材で構成されたLPH14を、概略的に図示しているに過ぎない。実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて、数百個の集光部材を配列することで、数千個のLED50が配列されている。本実施の形態では、複数のLED50からなるLEDアレイ52が実装されたLEDチップ53と、LEDチップ53に対応したホログラム素子アレイ56とで、集光部材15が構成されている。
【0034】
また、後述するように、本実施の形態では、LED基板58上に、複数の集光部材15を複数列に分けて2次元状に配列することでLPH14が構成されている。例えば、複数の集光部材15は千鳥状に配置してもよい(図5参照)。この場合には、複数の集光部材15は、主走査方向に並ぶように一列に配置されると共に、副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置されている。複数のLEDチップ53に分けられていても、複数のLED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔が、一定間隔となるように配列されている。
【0035】
LEDチップ53としては、複数の自己走査型LED(SLED:Self-scanning LED)が配列されたSLEDチップを用いてもよい。SLEDチップは、スイッチのオン・オフを二本の信号線によって行い、各SLEDを選択的に発光させて、データ線を共通化する。このSLEDチップを用いることで、基板上での配線数が少なくて済む。
【0036】
上記のLEDアレイ52を覆うように、LEDチップ53上にはホログラム記録層60が形成されている。ホログラム素子アレイ56は、LEDチップ53上に形成されたホログラム記録層60内に形成されている。後述する通り、LEDチップ53とホログラム記録層60とは密着している必要はなく、空気層や透明樹脂層などを介して所定距離だけ離間されていてもよい。例えば、ホログラム記録層60は、LEDチップ53から所定高さだけ離間された位置に、図示しない保持部材によって保持されていてもよい。
【0037】
ホログラム記録層60には、複数のLED50〜50の各々に対応して、主走査方向に沿って複数のホログラム素子54〜54が形成されている。ホログラム素子54の各々は、互いに隣接する2つのホログラム素子54の主走査方向の間隔が、上記のLED50の主走査方向の間隔と、ほぼ同じ間隔となるように配列されている。即ち、互いに隣接する2つのホログラム素子54が互いに重なり合うように、径の大きいホログラム素子54が多重記録されている。また、互いに隣接する2つのホログラム素子54が異なる形状を有していてもよい。
【0038】
ホログラム記録層60は、ホログラムを永続的に記録保持することが可能な高分子材料から構成されている。このような高分子材料としては、いわゆるフォトポリマーを用いてもよい。フォトポリマーは、光重合性モノマーのポリマー化による屈折率変化を利用してホログラムを記録する。
【0039】
LED50を発光させると、LED50から射出された光(インコヒーレント光)は、発光点からホログラム径まで拡がる拡散光の光路を通る。LED50の発光により、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。図2に示すように、LEDアレイ52とホログラム素子アレイ56とを備えた集光部材15(LPH14)では、6個のLED50〜50の各々から射出された各光は、対応するホログラム素子54〜54のいずれかに入射する。ホログラム素子54〜54は、入射された光を回折して回折光を生成する。ホログラム素子54〜54の各々で生成された各回折光は、拡散光の光路を避けて、その光軸が発光光軸と角度θを成す方向に射出され、感光体ドラム12の方向に集光される。
【0040】
射出された各回折光は、感光体ドラム12の方向に収束して、数cm先の焦点面に配置された感光体ドラム12の表面で結像される。即ち、複数のホログラム素子54の各々は、対応するLED50から射出された光を回折して集光し、感光体ドラム12表面に結像させる光学部材として機能する。感光体ドラム12の表面には、各回折光による微小なスポット62〜62が、主走査方向に一列に配列されるように形成される。換言すれば、LPH14により、感光体ドラム12が主走査される。なお、各々を区別する必要がない場合には、スポット62〜62を「スポット62」と総称する。
【0041】
一般に、インコヒーレント光(非干渉性の光)を射出するLEDを用いるLPHでは、コヒーレンス性が低下してスポットぼけ(いわゆる色収差)が生じ、微小スポットを形成することは容易ではない。これに対して、本実施の形態のLPH14は、ホログラム素子の入射角選択性及び波長選択性が高く、高い回折効率が得られる。このためバックグラウンドノイズ(背景雑音)が低減され、信号光が精度よく再生されて、輪郭の鮮明な微小スポット62(集光点)が形成される。
【0042】
<ホログラム素子の形状>
図3(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図であり、図3(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図であり、図3(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿った断面図である。
【0043】
図3(A)に示すように、ホログラム素子54の各々は、一般に厚いホログラム素子と称される体積ホログラムである。また、図3(A)及び図3(B)に示すように、ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60の表面側を底面とし、LED50側に向かって収束する円錐台状に形成されている。この例では円錐台状のホログラム素子について説明するが、ホログラム素子の形状はこれには限定されない。例えば、円錐、楕円錐、楕円錐台等の形状としてもよい。円錐台状のホログラム素子54の直径は、底面で最も大きくなる。この円形の底面の直径を「ホログラム径r」とする。
【0044】
ホログラム素子54の各々は、LED50の主走査方向の間隔よりも大きな「ホログラム径r」を有している。例えば、LED50の主走査方向の間隔は30μmであり、ホログラム径rは2mm、ホログラム厚さhは250μmである。従って、図2及び図3(C)に示すように、互いに隣接する2つのホログラム素子54は、互いに大幅に重なり合うように形成されている。複数のホログラム素子54は、例えば、球面波シフト多重により多重記録されている。なお、複数のホログラム素子54の各々は、同一波長で記録してもよく、複数の波長を組み合わせて(波長多重)記録してもよい。
【0045】
複数のLED50の各々は、対応するホログラム素子54側に光を射出するように、発光面をホログラム記録層60の表面側に向けて、LEDチップ53毎にLED基板58上に配置されている。LED50の「発光光軸」は、対応するホログラム素子54と交差し、LEDチップ53及びLED基板58と直交する方向を向いている。図示した通り、発光光軸は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。
【0046】
LED50は拡散光源であり、LED50から射出された光は、図3(C)に示すように、対応するホログラム素子54に隣接するホログラム素子54にも照射される。本実施の形態では、LEDアレイ52とホログラム素子アレイ56とを備えた集光部材15の単位でLPH14を構成したことで、クロストークの発生が低減されている。
【0047】
また、図示は省略するが、LPH14は、ホログラム素子54で生成された回折光が感光体ドラム12の方向に射出されるように、ハウジングやホルダー等の保持部材により保持されて、図1に示す画像形成ユニット11内の所定位置に取り付けられている。なお、LPH14は、調整ネジ(図示せず)等の調整手段により、回折光の光軸方向に移動するように構成されていてもよい。ホログラム素子54による結像位置(焦点面)が、感光体ドラム12表面上に位置するように、上記の調整手段により調整する。また、ホログラム記録層60上に、カバーガラスや透明樹脂等で保護層が形成されていてもよい。保護層によりゴミの付着を防止する。
【0048】
なお、ホログラム記録層60は、例えば、セルと当該セル内に封入されたホログラム記録材料とで構成してもよい。セル内にホログラム記録材料を封入して作製されたホログラム記録層60は、取り扱いが容易である。例えば、ホログラム記録層60をLED基板58に取り付ける場合でも、ホログラム記録層60の裏面側のセルに支持部材を設け、支持部材によりホログラム記録層60がLED基板58上の所望の位置に支持されるように、ホログラム記録層60をLED基板58上に設置する。これにより、ホログラム記録層60を、LEDチップ53から離間させて配置することができる。このセルは保護層としても機能する。
【0049】
<ホログラムの記録方法>
次に、ホログラムの記録方法について説明する。図4は、ホログラム記録層にホログラム素子54が形成される様子、即ち、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。感光体ドラム12の図示は省略し、結像面である表面12Aだけを図示する。また、ホログラム記録層60Aは、ホログラム素子54が形成される前の記録層であり、符号Aを付して、ホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60と区別する。
【0050】
図4に示すように、表面12Aに結像される回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、ホログラム記録層60Aを通過する際に、発光点から所望のホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0051】
信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側(表面側又は裏面側)から照射される。信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)が、ホログラム記録層60Aの厚さ方向にわたって記録される。これにより、透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。ホログラム素子54は、面方向及び厚さ方向に干渉縞の強度分布が記録された体積ホログラムである。このホログラム記録層60をLED基板58に取り付け、LEDアレイ52が実装されたLEDチップ53上に配置し、LEDアレイ52に対応するホログラム素子アレイ56を形成することで、個々の集光部材15が作製される。
【0052】
<LPHの具体的な構成>
次に、LPHのより具体的な構成について説明する。図2においては、概略的に1個の集光部材15で構成されたLPH14を図示したが、実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて、数百個の集光部材15を配列することで、数千個のLED50が配列されることになる。例えば、128個のSLEDが1200spi(spots per inch)間隔で配列されたSLEDチップが、SLEDが主走査方向に一列に並ぶように58個配列されていると仮定すると、1200dpiの解像度の画像形成装置では、7424個のSLEDが21μmの間隔で配列されることになる。これら7424個のSLEDに対応して、感光体ドラム12上には7424個のスポット62が主走査方向に一列に並ぶように形成される。
【0053】
図5は、本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの部分的構成の一例を示す分解斜視図である。また、図6は、図5に示すLEDプリントヘッドの利点を説明するための分解斜視図である。図5の分解斜視図は、図2に概略的に図示したLPHの構成をより具体的に図示したものであり、実際の画像形成装置に使用される構成に近い。なお、「LED」に代えて「SLED」を用いる場合には、LED50と同じ符号を付して「SLED50」と称する。また、SLEDチップにも同じ符号を付して「SLEDチップ53」と称する。
【0054】
上述した通り、実際の画像形成装置のLPH14には、主走査方向の解像度に応じて数千個のSLEDが配列されている。複数の集光部材15を、基板58上に、複数列に分けて2次元状に配列することでLPH14が構成されている。図5に示すLPH14では、複数の集光部材15は、主走査方向に沿って配置されると共に、副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置されて、基板58上に千鳥状に配列されている。なお、基板58は平板には限定されない。
【0055】
図5に示す分解斜視図では、実際の構成に近いLPH14の一部として、4個の集光部材15A、15A、15B、及び15Bが、A列及びB列の2列で千鳥状に配置されている様子を示す。4個の集光部材15A、15A、15B、及び15Bの各々には、9個のSLED50が所定間隔(LEDピッチ「P」)で一次元状に配列されている。そして、4個の集光部材15A、15A、15B、及び15Bの各々は、対応するSLEDチップ53A、53A、53B、及び53Bの各々について、SLED50の配列方向が主走査方向を向くように配置されている。
【0056】
主走査方向に沿ったA列の集光部材15A及び15Aと、B列の集光部材15B及び15Bとは、A列上のSLED50AとB列上のSLED50Bとが、副走査方向に一定間隔で離間されるように配置されている。SLED50AとSLED50Bとが副走査方向に離間される間隔は、SLED50の主走査方向の間隔と略同じ間隔又は数倍(1倍〜9倍)程度の間隔とされている。
【0057】
A列には、集光部材15Aと集光部材15Aとが互いに隣接するように配置されており、B列には、集光部材15Bと集光部材15Bとが互いに隣接するように配置されている。また、A列の集光部材15AとB列の集光部材15Bとは、主走査方向にLEDピッチ「P/2」だけずらして配置されている。同様に、A列の集光部材15AとB列の集光部材15Bとは、主走査方向にLEDピッチ「P/2」だけずらして配置されている。
【0058】
4個の集光部材15A、15A、15B、及び15Bの各々に対応して、SLEDチップ53A、53A、53B、及び53Bの各々が配列されている。図5に示す例では、2列に配列された合計36個のSLED50が図示されている。また、4個のSLEDチップ53A、53A、53B、及び53Bの各々には、各SLEDチップ53に対応して、ホログラム記録層60A、60A、60B、及び60Bの各々が設けられている。
【0059】
集光部材15の各々では、図2に示したように、SLEDチップ53に搭載された複数のLED50の各々に対応して、ホログラム記録層60に複数のホログラム素子54が形成されている。例えば、集光部材15Aには、SLEDチップ53Aの9個のSLED50A11〜50A19に対応して、ホログラム記録層60Aには9個のホログラム素子54A11〜54A19が配列されるように形成されている。これにより、感光体ドラム12の表面12Aには、36個のSLED50の各々に対応して、36個のスポット62〜6236が主走査方向に沿って所定間隔(スポットピッチ「P」)で一列に形成される。実際の画像形成装置では、数千個のSLED50に対応して、数千個のスポット62が形成される。
【0060】
図5に示すLPH14では、図5及び図6に示すように、A列のSLED50AとB列のSLED50Bとを、36個のスポット62〜6236に交互に対応付けている。例えば、集光部材15AはSLEDチップ53Aとホログラム記録層60Aとで構成される。SLEDチップ53Aの第1のSLED50A11から射出された光は、対応するホログラム記録層60Aのホログラム素子54A11で回折されてスポット62に集光される。また、集光部材15BはSLEDチップ53Bとホログラム記録層60Bとで構成される。SLEDチップ53Bの第1のSLED50B11から射出された光は、対応するホログラム記録層60Bのホログラム素子54B11で回折されてスポット62に集光される。
【0061】
従って、SLEDチップ53のLEDピッチが「P」でも、A列及びB列の2列を交互に用いれば、主走査方向のLEDピッチ「P」は「P/2」となる。LEDピッチと同じ間隔でスポット62が形成されると仮定すると、スポットピッチ「P」も「P/2」となる。例えば、1200dpiの解像度を得たい場合であっても、600dpiのSLEDチップ53を用いれば十分である。
【0062】
上述した通り、LED50は拡散光源であるが、本実施の形態では、集光部材15の単位でLPH14を構成したことで、クロストークの発生が低減されている。図7に示すように、基板58上に実装された複数のLEDチップ53に対して1つのホログラム記録層60を設け、複数のLEDチップ53の各LED50の各々に対応してホログラム素子54を形成したLPH14と比較すると、図6に示す本実施の形態の構成では、クロストークの発生が低減される。
【0063】
図8に示すように、インコヒーレント光源であるLED50から射出される発光光72は、発散して拡がることが知られている。この現象は「ランバーシアン配光」と称される。同じくインコヒーレント光源である電界発光素子(EL)においても、同様の現象が観測される。発光光72のうち、発光点からホログラム径rまで拡がる拡散光の光路(実線で示す)を通る光だけが、ホログラム素子54に参照光として照射され、回折光が再生される。他の発光光72は「迷光」として拡散する。
【0064】
従って、図7に示すように、1つのホログラム記録層60にホログラム素子アレイ56が形成されている場合には、図8に示すように、複数のLEDチップ53がA列とB列とに配列されていても、A列のSLEDチップ53AのSLED50Aから拡散した発光光72(迷光)は、副走査方向に隣接するB列のSLEDチップ53BのSLED50Bに対応するホログラム素子54Bに照射される。本実施の形態では、集光部材15の単位でLPH14を構成したことで、隣接するホログラム素子54を分離するのが容易になり、迷光によるクロストークの発生が低減される。
【0065】
例えば、図9に示すように、A列の集光部材15AとB列の集光部材15Bとを、発光光72(迷光)によるクロストークが発生しない距離Dだけ離間して配置してもよい。また、図10に示すように、A列の集光部材15AとB列の集光部材15Bとを遮光部材74で分離して、発光光72(迷光)によるクロストークの発生を防止してもよい。
【0066】
また、例えば、図11に示すように、A列の集光部材15AとB列の集光部材15Bとを、発光光72(迷光)によるクロストークが発生しないように、互いの発光光軸が異なる方向を向くように配置してもよい。図11に示す例では、基板58は、副走査方向の断面が二等辺三角形で主走査方向に延びる棒状であり、二等辺三角形の等辺に対応した傾斜面58Aと傾斜面58Bとを備えている。傾斜面58A上にA列の集光部材15Aが配置され、傾斜面58B上にB列の集光部材15Bが配置される。図12に示すように、A列の集光部材15Aからの回折光と、B列の集光部材15Bによる回折光とは、感光体ドラム12の表面12A上において、主走査方向に一列に並ぶスポット62(スポット62A、62B)を形成するように、ホログラム素子54A、54Bの各々を設計する。
【0067】
複数の集光部材15は、A列及びB列の2列に配列する場合には限定されない。3列以上に分けて配列してもよい。例えば、図13に示すように、C列の集光部材15C、D列の集光部材15D、及びE列の集光部材15Eを、発光光72(迷光)によるクロストークが発生しないように、互いの発光光軸が異なる方向を向くように配置してもよい。図13に示す例では、基板58は、副走査方向の断面が台形で主走査方向に延びる棒状であり、斜辺及び上底に対応した傾斜面58C、平面58D及び傾斜面58Eを備えている。傾斜面58C上にC列の集光部材15Cが配置され、平面58D上にD列の集光部材15Dが配置され、傾斜面58E上にE列の集光部材15Eが配置される。図11に示す例と同様に、C列の集光部材15Cからの回折光、D列の集光部材15Dによる回折光、及びE列の集光部材15Eによる回折光は、感光体ドラム12の表面12A上において、主走査方向に一列に並ぶスポット62を形成する。
【0068】
なお、複数の集光部材15の副走査方向の配列数が増加するほど、高解像度を得るのが容易になる。図5に示す例では、600dpiのSLEDチップ53を用いて1200dpiの解像度を得る例について説明したが、図14に示すように、SLEDチップ53のLEDピッチが「P」でも、C列、D列及びE列の3列を交互に用いれば、主走査方向のLEDピッチ「P」は「P/3」となる。LEDピッチと同じ間隔でスポット62が形成されると仮定すると、スポットピッチ「P」も「P/3」となる。例えば、1200dpiの解像度を得たい場合であっても、400dpiのSLEDチップ53を用いれば十分である。
【0069】
<その他の変形例>
なお、上記では、複数のLEDを備えたLEDプリントヘッドを備える例について説明したが、LEDに代えて電界発光素子(EL)、レーザダイオード(LD)等、他の発光素子を用いてもよい。発光素子の特性に応じてホログラム素子を設計すると共に、インコヒーレント光による不要露光を防止することで、インコヒーレント光を射出するLEDやELを発光素子として用いた場合でも、コヒーレント光を射出するLDを発光素子として用いた場合と同様に、輪郭が鮮明な微小スポットが形成される。
【0070】
また、上記では、球面波シフト多重により複数のホログラム素子を多重記録する例について説明したが、所望の回折光が得られる多重方式であれば、他の多重方式で複数のホログラム素子を多重記録してもよい。また、複数種類の多重方式を併用しても良い。他の多重方式としては、参照光の入射角度を変えながら記録する角度多重記録、参照光の波長を変えながら記録する波長多重記録、参照光の位相を変えながら記録する位相多重記録等が挙げられる。
【0071】
また、上記では、画像形成装置がタンデム型のデジタルカラープリンタであり、その各画像形成ユニットの感光体ドラムを露光する露光装置としてのLEDプリントヘッドについて説明したが、露光装置により感光性の画像記録媒体を像様露光することで画像が形成される画像形成装置であればよく、上記の応用例には限定されない。例えば、画像形成装置は、電子写真方式のデジタルカラープリンタには限定されない。銀塩方式の画像形成装置や光書込み型電子ペーパー等の書き込み装置等にも本発明の露光装置を搭載してもよい。また、感光性の画像記録媒体は、感光体ドラムには限定されない。シート状の感光体や写真感光材料、フォトレジスト、フォトポリマー等の露光にも、上記応用例に係る露光装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
2 PC
3 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
12A 表面
13 帯電器
14 LEDプリントヘッド
15 現像器
16 クリーナ
21 中間転写ベルト
22 一次転写ロール
23 二次転写ロール
24 搬送ベルト
25 定着器
30 制御部
40 画像処理部
50 LED
52 LEDアレイ
53 LEDチップ
54 ホログラム素子
56 ホログラム素子アレイ
58 LED基板
60 ホログラム記録層
60A ホログラム記録層
62 スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が少なくとも1列で配列された発光素子列と、前記発光素子列の複数の発光素子の各々に対応して前記発光素子から射出された光を回折して被露光面に集光する複数のホログラム素子が多重記録されたホログラム記録層と、を含む集光部材を複数備え、
前記複数の集光部材は、前記複数のホログラム素子により被露光面に形成される集光点が予め定めた第1の方向に並ぶように配列されると共に、複数の前記発光素子列が前記第1の方向と交差する第2の方向に複数列で並ぶように配列された、
露光装置。
【請求項2】
前記複数の集光部材は、集光部材を構成する発光素子の光軸方向が前記第2の方向における列毎に異なるように配列された、請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
特定の集光部材を構成する発光素子から射出された光が、隣接する他の集光部材を構成するホログラム素子に入射しないように遮光された、請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置と作動距離だけ離間して配置され、画像データに応じて前記露光装置により前記予め定めた第1の方向に主走査されて画像が書き込まれる感光体と、
を含む画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−201044(P2011−201044A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68154(P2010−68154)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】