説明

青果作物の病害虫防除剤並びにハウス類設備における病害虫防除方法及び装置。

【課題】本発明は、植物自身の持つ防虫、抗菌作用をもたらす植物有効成分(植物エキス)を活用した青果作物の病害虫防除剤と、その病害虫防除剤を用いたハウス類設備における病害虫防除方法及び装置を提供する。
【解決手段】唐辛子とにんにくをすりつぶし又は粉砕して焼酎によりカプサイシン及びアリシン成分を抽出した溶液に、山葵由来又は合成して製造したアリルイソチオシアネート成分を添加した溶液である青果作物の病害虫防除剤と、該病害虫防除剤をそのまま又は希釈した溶液を噴霧散布する単数又は複数の装置をハウス施設内の上方空間に設けたものであって、該装置が主としてハウス類施設内の雰囲気の循環流を生起する動力ファンと、該ファン出口気流中に該溶液を噴霧して随伴させる添加ノズルとから構成されるハウス類設備における青果作物の病害虫防除装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果物類の青果作物の栽培において、病害虫の予防、駆除に関し、農業従事者に深刻な害をもたらさない天然物由来の病害虫防除剤と、青果作物を栽培するハウス類設備において病害虫防除方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜、果物類の播種から育成、栽培において、日当たりや気温に左右され難く、病害虫の予防し易い設備としてビニールハウスおよび各種温室等のハウス類設備が用いられてきている。また、野菜、果物類を栽培するに当たって、病害虫の予防、駆除のために農薬の散布は欠かすことができないものである。ところが、ある程度密閉されているハウス類設備内において、農薬の散布を余儀なくされているために、農業従事者が長年にわたり大量の薬剤を浴びることで、健康上の問題が生ずる懸念、また、残留農薬による環境汚染を招く恐れがあるとされてきた。
【0003】
農薬には、病害虫防除のための殺菌剤、殺虫剤がある。殺菌剤、殺虫剤に用いられる成分としては、有機りん剤、有機塩素剤、有機硫黄剤等が主として用いられ、これらは病害虫に対する薬効としては優れているが、その反面、使用に当たっては農業従事者に対する健康の問題、作物や土壌に対する残留農薬の問題がクローズアップされてきた。
【0004】
また、天然の動植物体から抽出される成分を用いた殺虫剤として、ピレトリン(除虫菊から抽出)、ロテノン(デリスの根から抽出)、ニコチン(タバコから抽出)などがある。これらは一般的に速効的で分解が早く、人畜に対する悪影響や作物に対する薬害が少ないとされるが、人畜毒性や薬害がまったく無いものではない。
【0005】
これらに対して、病害虫の予防、駆除等を化学薬剤を使用することなく、自然のもの自生の原料を用いて、しかも、化学合成品或いは化学的な処理を行った資材を一切使用しない有機野菜の葉面散布剤が先行技術として開示されている。〔参考文献1〕
【特許文献1】特開2004−91425公報(〔0010〜18〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術は、ハーブを混合した糖の発酵生成物を主成分としたもので、有機野菜の栽培上有効のものであるのに対し、本発明は、複雑な発酵処理を伴わない、ありふれた天然物からの抽出操作により病害虫防除剤を得るものである。
【0007】
すなわち、本発明は、化学合成農薬のように効率よく病害虫を退治するけれど、人体や環境に対して懸念がある薬剤を用いることなく、植物自身の持つ防虫、抗菌作用をもたらす植物有効成分(植物エキス)を活用した青果作物の病害虫防除剤と、その病害虫防除剤を用いたハウス類設備における病害虫防除方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る青果作物の病害虫防除剤は、唐辛子、にんにく及び山葵をすりつぶし又は粉砕して焼酎によりカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を抽出した溶液であることを特徴とする。また、請求項2に係る青果作物の病害虫防除剤は、唐辛子とにんにくをすりつぶし又は粉砕して焼酎によりカプサイシン及びアリシン成分を抽出した溶液に、山葵由来又は合成して製造したアリルイソチオシアネート成分を添加した溶液であることを特徴とする。また、請求項3に係る青果作物の病害虫防除剤は、請求項1又は2記載の青果作物の病害虫防除剤に木酢酸液又は竹酢酸液を添加、混合したことを特徴とする。
【0009】
これらの青果作物の病害虫防除剤によれば、カプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分は夫々抗菌作用及び駆虫作用を呈するのに加え、これらの成分を混合して製造することで抗菌・駆虫効果を相乗的に発揮することができる。カプサイシンは、唐辛子に含まれる脂溶性の物質であり、種子、果皮および胎座部や茎葉に含まれているから、これらをすりつぶして含水アルコールに溶解、抽出させることができる。アリシンは、にんにくをすると含まれている含硫黄化合物アリインに酵素が働いて遊離型のアリシンが生じ、このアリシンが臭気のある抗菌・駆虫物質である。
【0010】
アリルイソチオシアネートは、山葵の含有する芥子油配糖体がすられることにより、含まれている酵素により分解されて刺激物質であるアリルイソチオシアネートが生じ、このアリルイソチオシアネートが抗菌・駆虫物質である。カプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートは含水アルコールに溶解するので、唐辛子、にんにく及び山葵をすりつぶし又は粉砕してアルコール20〜45vol%含有する焼酎で抽出することによりカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を含有した本発明の青果作物の病害虫防除剤を得ることができる。本病害虫防除剤において、唐辛子、にんにく及び山葵等の植物から抽出したカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分は、その殺虫、殺菌成分も低濃度であり、しかも、その抽出液には、その他の有機酸や糖分、脂肪、植物ホルモンなど溶出している多種多様な物質を含んでいる特徴がある。
【0011】
また、アリルイソチオシアネートは揮発性の高い刺激物質であるから、これを調合後、あまり時間を取らないで使用することが望ましく、カプサイシン及びアリシン成分を含有した溶液に、山葵由来の又は合成して製造したアリルイソチオシアネート成分を添加、調合して本発明の青果作物の病害虫防除剤を製造するのがよい。
【0012】
また、木酢酸や竹酢酸に含まれるグアイコール、クレゾールやクレゾール前駆物質は殺虫、消毒効果を呈するので、木酢酸や竹酢酸をカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を含有する溶液に添加し混合して、青果作物の病害虫防除剤を製造すると、抗菌、駆虫効果を相乗的に高めることができる。また、その病害虫防除剤液には、その他の有機酸や糖分、脂肪、植物ホルモンなど溶出している多種多様な物質が含まれ、害虫、病菌、ウイルス、カビ等を防除すると共に、作物の生育を活性化することができる。
【0013】
また、請求項4に係るハウス類設備における青果作物の病害虫防除方法は、請求項1、2、3のいずれかに記載の青果作物の病害虫防除剤をそのまま又は希釈した溶液をハウス類設備内に噴霧散布することにより、病害虫防除処理を行うことを特徴とする。また、請求項5に係るハウス類設備における青果作物の病害虫防除装置は、請求項1、2、3のいずれかに記載の青果作物の病害虫防除剤をそのまま又は希釈した溶液を噴霧散布する単数又は複数の装置をハウス設備内の上方空間に設けたものであって、該装置が主としてハウス類設備内の雰囲気の循環流を生起する動力ファンと、該ファン出口気流中に該溶液を噴霧して随伴させる添加ノズルとから構成されることを特徴とする。また、請求項6に係るハウス類設備における青果作物の病害虫防除装置は、請求項5記載のハウス類設備における青果作物の病害虫防除装置において、前記噴霧散布された微粒の溶液粒子に電荷又はイオンを付加する装置を設けたことを特徴とする。
【0014】
ハウス類設備で栽培される青果作物として、野菜ではキャベツ、白菜、トマト、ナスビ等が挙げられ、果物では苺、柑橘類、ぶどう等が挙げられる。これらの栽培において問題となる害虫としてはアオムシ、アブラムシ、コナガ、ヨトウムシ等がある。また、病気としては主にモザイク病、疫病、炭そ病、灰色カビ病等があり、これらの病気は害虫が媒介するウイルスが原因となったり、水はけや風通しの悪さ等の環境条件の悪化が原因となっている。
【0015】
前記の害虫が青果作物に近付かないよう忌避し、又は害虫を駆除する目的で、また、前記病原菌を殺菌し、又は抗菌して繁殖を防止する目的で、本発明に係る青果作物の病害虫防除剤を用いる。具体的には、ハウス類設備内にある青果作物に対して前述の病害虫防除剤をそのまま又は希釈した溶液を噴霧散布して付着させることにより、病害虫の防除処理を行うと共に、ハウス類設備内の土壌に対しても病害虫の防除処理を行う。
【0016】
また、ハウス類設備内の防除処理を効率良く行うために、ハウス類設備内と外気との往来を遮断して、略密閉することができる状況の下で、ハウス類設備内に循環気流を生起して、その気流中に該溶液を噴霧して随伴させて、ハウス類設備内に微細溶液粒子を充満させることにより、病害虫の防除処理を容易に行うことができる。このために、主として動力ファンと噴霧・添加ノズルから構成される装置をハウス類設備の上方空間に単数又は複数台設けて、設備内を隈なく気流を循環させると共に、該気流に防除剤の微細粒子を随伴させて隈なく均一に散布させるものである。この方法及び装置により、過剰に防除剤薬液を散布する必要も無く、青果作物の育成や農作業の環境を良好にすることができる。
【0017】
さらに、噴霧散布された微粒の溶液粒子に電荷又はイオンを付加することにより、青果作物及び施設内の土壌は、概ねマイナスに帯電しているので、防除剤の噴霧散布された微粒子にプラスの電荷又はイオンを付加することにより、防除剤の微粒子が電気的に引き寄せられて、密着するから、病害虫の防除を効果的に、かつ、長時間継続させることができる。また、本装置を用いた病害虫防除方法は、防除効果が効率的に発揮できるので、量的にも防除剤を過剰に使わなくてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1から3記載の青果作物の病害虫防除剤によれば、害虫、病菌、ウイルス、カビ等を防除すると共に、作物の生育を活性化するので、互いの相乗効果で作物の生育を促進し、収穫量を上げ、品質を向上することができる。また、病害虫防除剤は、防除剤として使用しても、残存による毒性の蓄積性も無く、耐性菌などの出現も無いので、人畜及び青果物に対して安心して使用できる。また、含有する植物エキスの抗菌作用により病害に対する抵抗力が得られ、高い抗菌効果と安全性が長時間持続するので、青果作物を生産する農業形態を安全にして、効率的に生産を上げられるなど農業生産上有益な効果を奏上することができる。
【0019】
また、本発明に係る請求項4及び5記載のハウス類設備における青果作物の病害虫防除方法及び装置によれば、ハウス等施設内の隅々まで病害虫防除剤を行き渡らせることができる。また、防除剤の噴霧量を調節することにより施設内雰囲気の薬剤濃度や湿度を容易にコントロールできる。また、施設内の換気も強制的に実施することもできるので、農業作業者の作業環境をも整え易い。また、噴霧散布された微粒の溶液粒子に電荷又はイオンを付加することにより、微粒子が青果作物や土壌と電気的に引き合い密着するので、防除効果が増大し、長時間継続させることができる。このように病害虫防除対象物の荷電状況により、防除剤の荷電付加を変えて対応させる噴霧散布ができるので、防除効果を効率的に発揮でき、しかも、量的に防除剤を過剰に使わなくてすむ特長がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係わる青果作物の病害虫防除剤(以下、防除剤と称す)の最良の形態について説明すると、防除剤はカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を含有し、夫々の成分が殺菌、駆虫作用を呈するものであって、さらに、これらの成分が混合されているので殺菌、駆虫効果が相乗的に発揮されるものである。この防除剤は、含有させるカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの成分が含水アルコールに溶解し易いので、唐辛子、にんにく及び山葵をすりつぶし又は粉砕して、前記成分を抽出し易い形態にして、アルコール20〜45vol%含有する焼酎に1〜3週間浸漬させることよりカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を効率よく抽出させて防除剤を製造することができる。また、焼酎には甲類焼酎及び乙類焼酎(泡盛を含む)があるが、アルコール濃度の高さとエステルなどの有機物を含む点から乙類焼酎の方が望ましい。
【0021】
本防除剤において、唐辛子、にんにく及び山葵等の植物から抽出したカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分は、低濃度であっても、殺菌、駆虫効果があり、しかも、その防除剤液には、その他の有機酸や糖分、脂肪、植物ホルモンなどが溶出した多種多様な物質を含んでいるので、青果作物の生育を活性化することができる。
【0022】
また、山葵由来のアリルイソチオシアネートは揮発性の高い刺激物質であるから、これを調合後、使用するまでに長時間にわたり保存又は貯蔵すると、その薬効が落ちる恐れがあるので、カプサイシン及びアリシン成分を含有した溶液に、使用直前に、山葵から抽出した又は合成して製造したアリルイソチオシアネート成分を添加、調合して防除剤を製造するのが薬効の点でよい。
【0023】
また、前記の防除剤溶液に木酢液又は竹酢酸液を容量比で5〜30%の範囲で混合した防除剤溶液は、木酢酸や竹酢酸に含まれるグアイコール、クレゾールやクレゾール前駆物質は殺虫、消毒作用があるので、カプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分が発揮する抗菌、駆虫効果をさらに相乗的に高めることができる。また、その防除剤液には、その他の有機酸や糖分、脂肪、植物ホルモンなど溶出している多種多様な物質が含まれ、害虫、病菌、ウイルス、カビ等を防除すると共に、作物の生育を活性化することができる。
【0024】
いずれにしても、カプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を含有した溶液だけ、或いはカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を含有した溶液に、木酢液又は竹酢酸液を容量比で5〜30%の範囲で混合した防除剤溶液は、そのまま又は数倍〜数十倍に希釈して使用することで、青果作物の病害虫の殺菌、駆虫を行うと共に、作物土壌に対しても殺菌、駆虫効果があり、また、作物の育成を活性化することができる。また、青果作物の害虫の種別により、前記防除剤である天然物農薬にフェロモンを導入して、害虫害を防除することも可能である。
【0025】
本発明に係る防除剤を用いたハウス類設備における病害虫防除方法及び装置について以下に説明する。前記の防除剤溶液をそのまま又は希釈したものを用いて、ハウス類設備内の青果作物及び土壌等の病害虫の防除処理を効率良く行うためには、ハウス類設備内の雰囲気を外気と遮断し、かつ、略密閉することもできる状態にした後、ハウス類設備内に循環気流を生起して、その気流中に該防除剤溶液を噴霧して微細粒の防除剤を随伴させることにより、ハウス類設備内に微細溶液粒子を容易に充満させることができ、これにより青果作物等に防除剤を付着させて病害虫の防除処理を行うことができる。
【0026】
このためには、循環気流を生起させる動力ファンと動力ファンの前方(気流方向に対して)に設置して、気流中に防除剤溶液を噴霧して添加する添加ノズルから構成される装置を用いる。前記動力ファンは大量の、かつ、風速がそれ程高くなく、指向性を持った気流を生じる、すなわち、施設内に風速0.5〜3m/sのほどよく、隈なく循環気流を生じさせる形式がよく、プロペラ又はターボ式の翼を有する低速ファンがよい。また、添加ノズルは、添加する気流の速度がそれ程高くないので、液圧式又は気液二流体式の噴霧ノズルが噴霧量及び噴霧粒子径の点でよく、噴霧液滴の粒子大きさは数ミクロンから数十ミクロンの範囲であって、より小さい方が気流中に浮遊し易い。また、防除剤の気流中への噴霧添加ノズルは、循環気流の断面の形状及び大きさにより通常複数の添加ノズルを配置するのがよい。
【0027】
また、本装置をハウス類設備の上方空間に単数或いは複数台を直列又は並列に設置することにより、ハウス類設備内を隈なく、ほどよい流速で気流を循環させると共に、気流中に防除剤の微細粒子を随伴させて隈なく均一に散布させるものである。そして、前記ファン及び添加ノズルの仕様は、ハウス類設備の大きさ、本装置の台数や配置によって決めるのがよい。この方法及び装置により、青果作物及び土壌に過剰に防除剤の薬液を散布する必要が無く、青果作物の育成や農作業の環境を良好にすることができる。
【0028】
さらに、噴霧散布された微粒の溶液粒子に電荷又はイオンを付加することにより、青果作物及び施設内の土壌は、概ねマイナスに帯電しているので、防除剤の噴霧散布された微粒子にプラスの電荷又はイオンを付加することにより、防除剤の微粒子が電気的に青果作物及び土壌に引き寄せられて密着するから、病害虫の防除を効果的に、かつ、長時間継続させることができる。上記の電荷又はイオンを付加した防除剤溶液の噴霧微粒子は、液圧式又は気液二流体式の噴霧ノズルの周り又は直後に電荷又はイオンを付加する電極筒を設け、プラスの直流高電圧を印加することにより作ることができる。
【実施例】
【0029】
本発明に係る青果作物の病害虫防除剤並びにハウス類設備における病害虫防除方法及び装置の実施例について説明する。唐辛子から抽出するカプサイシンは、唐辛子500grを4lの水で約20分間煮て、次に煮た唐辛子を擂鉢でよくすりつぶして、水30lとアルコール35vol%濃度の焼酎0.9lの混合液に投入して、時々よく撹拌して1週間置く。また、にんにくから抽出するアリシンは、にんにく1kgをよくすりつぶして、アルコール35vol%濃度の焼酎1.8lと0.5lの竹酢酸液と水10lの混合液を加えて撹拌した後、時々撹拌して1週間置く。最終製品である青果作物の病害虫防除剤は、200lの水に、前記カプサイシン含有のろ過溶液10lと、前記アリシン含有のろ過溶液10lと、山葵からのアリルイソチオシアネート含有の抽出液10mlと、展着剤として黒蜜糖溶液200mlとを混合してよく撹拌することで製造される。
【0030】
この防除剤溶液を用いて、幅6m、長さ6.5m、全高3mの三角屋根の温室において、青果作物キャベツを対象として散布実験及び薬効の確認を行った。温室を閉め切り、高さ2m位の場所で、温室中央端部付近に人体冷却用ファンを設置して、最終端末の風速を1m/s位として、そのファン前方に圧力3.43MPaで粒子径44μmの薬液ミストを噴霧する添加ノズル3個を取り付けた。噴霧吐出能力は合計で7l/minである。本装置は10分間稼動して薬液噴霧を行い、15秒間休止した後、稼動するサイクルで2時間運転した結果、温室内湿度を略55%に維持できると共に、青果作物の葉面にはミストが適当に付着していた状況であった。1日置きにこの状況を続けてから、1週間、2週間後に、青果作物を観察したが、病害虫にやられた形跡は見当たらなかった。
【0031】
その結果より判断すれば、温室内の湿度を55〜70%の範囲に保てる流量にて、薬液を上部に設置した装置より噴霧散布することで、温室内に薬液がミスト状に浮遊している状態を保つことができ、青果作物の病害虫の殺菌、駆虫及び忌避効果が得られ、また、青果作物にも適切な湿分の補給にもなって、作物育成の促進効果が得られる。また、温室を密閉する季節においては、毎日若しくは数日置きに、温度、湿度状況に応じて、頻度を日に1〜2度のペースで防除剤薬液を噴霧散布し、また、解放する季節においては、防除剤薬液を連続的に又は断続的にミスト状で散布することを繰り返す方法により、年中にわたり病害虫の防除に対応できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
青果作物のみならず果樹も含めて病害虫防除に適用でき、また、ハウス類設備における病害虫の防除、防疫管理にも適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唐辛子、にんにく及び山葵をすりつぶし又は粉砕して焼酎によりカプサイシン、アリシン及びアリルイソチオシアネートの各成分を抽出した溶液であることを特徴とする青果作物の病害虫防除剤。
【請求項2】
唐辛子とにんにくをすりつぶし又は粉砕して焼酎によりカプサイシン及びアリシン成分を抽出した溶液に、山葵由来又は合成して製造したアリルイソチオシアネート成分を添加した溶液であることを特徴とする青果作物の病害虫防除剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の青果作物の病害虫防除剤に木酢酸液又は竹酢酸液を添加、混合したことを特徴とする青果作物の病害虫防除剤。
【請求項4】
請求項1、2、3のいずれかに記載の青果作物の病害虫防除剤をそのまま又は希釈した溶液をハウス施設内に噴霧散布することにより、病害虫防除処理を行うことを特徴とするハウス類設備における青果作物の病害虫防除方法。
【請求項5】
請求項1、2、3のいずれかに記載の青果作物の病害虫防除剤をそのまま又は希釈した溶液を噴霧散布する単数又は複数の装置をハウス施設内の上方空間に設けたものであって、該装置が主としてハウス類施設内の雰囲気の循環流を生起する動力ファンと、該ファン出口気流中に該溶液を噴霧して随伴させる添加ノズルとから構成されることを特徴とするハウス類設備における青果作物の病害虫防除装置。
【請求項6】
前記噴霧散布された微粒の溶液粒子に電荷又はイオンを付加する装置を設けたことを特徴とする請求項5記載のハウス類設備における青果作物の病害虫防除装置。

【公開番号】特開2009−46433(P2009−46433A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214415(P2007−214415)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(500136810)株式会社 大通 (26)
【Fターム(参考)】