説明

青色レーザーに反応する光学素子および光を変調する方法

青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように構成された光屈折性組成物を含む光学素子。この光屈折性組成物は、少なくとも本明細書において定められているとおりの式(Ia)、(Ib)および(Ic)からなる群から選択された部分を含む反復単位を含むポリマーを含む。
【化1】


および
【化2】


[式中、式(Ia)、(Ib)および(Ic)の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、(Ia)、(Ib)および(Ic)のRa−Ra、Rb−Rb27およびRc−Rc14は、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され、ここで、前記C−C10アルキルは直鎖状または分枝状であってもよい]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2008年2月5日に出願された「Optical Devices Responsive to Blue Laser and Method of Modulating light」という名称の米国仮特許出願第61,026,412号による優先権を主張するものであり、その内容は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように構成されたポリマーを含む光屈折性組成物に関する。より詳細には、ポリマーは、カルバゾール部分、テトラフェニルジアミノビフェニル部分およびトリフェニルアミン部分からなる群から選択された部分を含む反復単位を含む。付加的に、本組成物は青色レーザー感応性発色団を組み入れることにより、照射で光屈折性を示すように構成することができる。更に、本発明は、青色レーザーにより照射される本光屈折性組成物を用いて光を変調するための方法にも関する。本組成物は、ホログラフィック・データ・ストレージまたは画像記録材料および装置分野で使用することができる。
【背景技術】
【0003】
光屈折性は、レーザービーム照射などによって材料内部の電場を変化させることにより材料の屈折率を変えることができる現象である。屈折率の変化は、典型的には:(1)レーザー照射による電荷発生、(2)正電荷および負電荷の分離をもたらす電荷輸送、(3)1種類の電荷の捕獲(電荷の非局在化)、(4)電荷の非局在化によってもたらされる不均一内部電場(空間電荷場)の形成、および(5)その不均一電場により誘発される屈折率変化;を伴う。良好な光屈折特性は、典型的には、良好な電荷発生、電荷輸送または光伝導性および電気光学活性を兼ね備えた材料で観測される。光屈折性材料は、例えば高密度光学データストレージ、動的ホログラフィー、光学画像処理、位相共役鏡、光コンピューティング、並列光ロジックおよびパターン認識などの多くの有望な用途を有している。特に、長期間持続する格子挙動は、高密度光学データストレージまたはホログラフィックディスプレイの用途で大きく貢献することができる。
【0004】
もともと、光屈折効果はLiNbOなどの様々な無機電気光学(EO)結晶で見出された。これらの材料の場合、内部空間電荷場による屈折率変調のメカニズムは線形電気光学効果に基づいている。
【0005】
1990年および1991年に、最初の有機光屈折性結晶および高分子光屈折性材料が発見され、報告された。そのような材料は、例えば米国特許文献(例えば、特許文献1参照)に開示されており、その内容は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれる。有機光屈折性材料は、大きな光学非線形性、低誘電率、低コスト、軽量、構造的柔軟性および素子製造の容易さなど、もともとの無機光屈折性結晶に優る多くの利点をもたらす。用途次第で望ましい場合があり得る他の重要な特徴は、充分に長い貯蔵寿命、光学的品質および熱的安定性を含む。これらの種の活性有機ポリマーは、先進情報通信技術での主要資材として浮上してきている。
【0006】
近年、有機光屈折性材料、特には高分子光屈折性材料の特性を最適化しようとする努力がなされている。これらの各特徴をもたらす構成成分の選択および組み合わせを調べるべく様々な研究が行われている。光伝導能力は、しばしば、カルバゾール基を含有する材料を組み入れることにより与えられる。その材料の電荷輸送部用にフェニルアミン基も使用することができる。
【0007】
非線形光学能力は、一般的に、光子放射を吸収することができるアゾ型染料などの発色団化合物を含めることにより与えられる。それらの発色団は好適な電荷発生ももたらすことができる。代替的に、光屈折性のための可動電荷の発現をもたらすため、またはそのような可動電荷の発現を増強するため、増感剤として知られている材料を加えることもできる。
【0008】
光屈折性組成物は、ホストポリマーマトリクスに望ましい個々の特性を与える分子構成成分を混ぜ合わせることにより作ることが可能である。しかし、これまでに調製されてきたほとんどの組成物は良好な光屈折性に関する性能(例えば高い回折効率、迅速な応答時間および長期的な安定性)を示すことができなかった。それ故、高い回折効率、迅速な応答時間および長期的な安定性を示す組成物を提供すべく努力がなされている。
【0009】
米国特許公報(特許文献2および3。両特許とも、それらの内容は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれる)では、高い回折効率、迅速な応答時間および長期的な相安定性を示した、(メタ)アクリル系ポリマーおよびコポリマーをベースとした材料を開示している。これらの材料は、少なくとも2〜3カ月間にわたる相分離のない状態と共に、30ミリ/秒未満の迅速な応答時間および50%を超える回折効率を示す。
【0010】
また、米国特許公開公報(特許文献4。この内容は、参照として、その全体が本明細書に組み込まれる)では、電荷輸送特性を有する分子、非線形光学特性を有する分子および立体構造が光照射によって変化する光学機能性分子を含有する記録層、ならびにその記録層を間に挟む1対の透明な抵抗電極を含むデータストレージ媒体を開示している。このデータストレージ媒体の伝導性は光照射により下げられる。しかし、記録直後の回折効率は1.0%であることが判明した。この素子は、実際に適用するには役に立たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,064,264号明細書
【特許文献2】米国特許第6,653,421B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,610,809B1号明細書
【特許文献4】米国出願公開公報第2004/0043301号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
青色レーザーでの照射で光屈折性を示すように構成される、上述のすべての特質を兼ね備えた光屈折性組成物に対する要望が依然として存在する。本発明は、データまたは画像ストレージを目的として、格子信号を書き込みすることができ、且つ、数分後またはもっと長い時間の後にも保持することができる組成物およびそれらの組成物を用いる方法を記載する。本発明者らにより開発された有機ベースの材料およびホログラフィック媒体は、青色レーザーに対して迅速な応答時間および良好な回折効率を示す。その上、最初の露光後に、格子信号を本組成物に書き込み直すこともできる。青色連続波(CW)レーザーシステムに対して感応性を有するそのような材料が入手可能になることは、産業上での利用および画像ストレージの目的にとって非常に有利であり且つ有用であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のいくつかの実施形態は青色レーザーに反応性を有する光屈折性組成物を提供し、その光屈折性組成物は、迅速な応答時間、高い回折効率および良好な相安定性を呈する正孔移動型ポリマーを含む。より詳細には、そのポリマーは、カルバゾール部分、テトラフェニルジアミノビフェニル部分およびトリフェニルアミン部分からなる群から選択される部分を含む少なくとも1つの反復単位を含むことができる。いくつかの実施形態においては、本組成物は、画像記録材料としてホログラフィック・データ・ストレージ用に使用することができ、また、光学素子において使用することもできる。
【0014】
1つの実施形態においては、青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように構成された光屈折性組成物が提供され、この光屈折性組成物はポリマーを含み、そのポリマーは、以下の式:
【化1】

および
【化2】

[式中、式(Ia)、(Ib)および(Ic)の各Qは、独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンを表し、(Ia)、(Ib)および(Ic)のRa−Ra、Rb−Rb27およびRc−Rc14は、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され、ここで、前述のC−C10アルキルは直鎖状または分枝状であってもよい]からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む反復単位を含んでいる。
【0015】
いくつかの実施形態においては、本ポリマーは、更に、以下の式:
【化3】

[式中、式(IIa)のQはアルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、式(IIa)のRは水素、直鎖C−C10アルキル、分岐C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され、式(IIa)のGはπ共役基であり、そして、式(IIa)のEacptは電子受容体基である]により表される部分を含む第2の反復単位を含む。
【0016】
本組成物は、付加的な非線形光学機能性を本光屈折性組成物にもたらす成分を組み入れることにより、青色レーザーの照射で光屈折性を示すように構成することができる。例えば、本組成物は、発色団を組み入れることにより、青色レーザーの照射で光屈折性を示すように構成することができる。発色団は本ポリマーとの混合物として本組成物に加えることができ、および/または本ポリマーに例えば共有結合もしくは他の結合様式により直接的に結合させることもできる。いくつかの実施形態においては、本光屈折性組成物は、更に、付加的な非線形光学機能性をもたらす、式(IIb):D−B−A;により表される成分を含んでおり、ここで、付加的な非線形光学機能性をもたらすその成分は青色レーザーに対して感応性を有している。1つの実施形態においては、式(IIb)のDは電子供与体基であり、式(IIb)のBはπ共役基であり、そして、式(IIb)のAは電子受容体基である。
【0017】
いくつかの実施形態においては、本組成物は、更に、可塑剤および/または増感剤を含む。1つの実施形態においては、可塑剤はN−アルキルカルバゾールおよびトリフェニルアミン誘導体から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態は光を変調する方法も提供し、その方法は、ポリマーを含む光屈折性組成物を供給する工程(ここで、前述のポリマーは、上で述べられているとおりの(Ia)、(Ib)および(Ic)からなる群から選択される部分を含む反復単位を含む);およびその光屈折性組成物を青色レーザーで照射し、これにより、本組成物の光屈折特性を変調する工程;を含む。
【0019】
ここで記載されている本組成物は、ホログラフィックストレージ、光相関、位相共役、非破壊評価およびイメージングを含め、様々な光学的用途において多大な有用性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、光屈折性組成物を伴ったホログラム記録システムを描いた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
これまでに説明されてきた組成物は、それぞれ、波長633nmの赤色レーザーまたは波長532nmの緑色レーザーに対しては好適に応答するが、それらの組成物の化学的および光学的な特性は青色光の透過率とは不適合である。本発明において記載されている組成物が初めて青色レーザーに対して光屈折挙動を呈示する。いくつかの実施形態は、光屈折性組成物を含む光学素子を提供する。ポリマーを含むその光屈折性組成物は、青色レーザーによる照射で光屈折性になる。いくつかの実施形態においては、本光屈折性組成物は、更に、発色団などの、付加的な非線形光学機能性をもたらす成分を含んでいてよく、この場合、付加的な非線形光学機能性をもたらす前述の成分は、電子供与体基、電子受容体基、ならびに電子供与体基および電子受容体基を結合するπ共役基を包含する。1つの実施形態においては、付加的な非線形光学機能性をもたらす成分は青色レーザーに対して感応性を示す。いくつかの実施形態においては、付加的な非線形光学機能性をもたらす成分は、側鎖においてポリマー骨格に付着させることができる。いくつかの実施形態においては、付加的な非線形光学機能性をもたらす成分は、スタンドアロン型化合物として本光屈折性組成物に組み入れることができる。また、いくつかの実施形態においては、本光屈折性組成物は、更に、可塑剤および/または増感剤を含むこともできる。
【0022】
いくつかの実施形態は、青色レーザーによる照射に対して反応する光屈折性組成物を含む光学素子を提供する。いくつかの実施形態においては、その組成物は、青色連続波(CW)レーザーによる照射で光屈折性を示すように成すことができる。ポリマーを含む本組成物は青色レーザーによる照射で光屈折挙動を呈し、ここで、前述のポリマーは、(式Iaにより表される)カルバゾール部分、(式Ibにより表される)テトラフェニルジアミノビフェニル部分、および(式Icにより表される)トリフェニルアミン部分からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む反復単位を含む。これらの部分は、以下の式:
【化4】

および
【化5】

[式中、式(Ia)、(Ib)および(Ic)中における各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(Ia)、(Ib)および(Ic)中におけるRa−Ra、Rb−Rb27およびRc−Rc14は、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され;ここで、前述のアルキルは直鎖状または分枝状であってもよい]により表される。ヘテロアルキレン基は1以上のヘテロ原子を含むことができる。O、N、Sおよびそれらのあらゆる組み合わせを含め、あらゆるヘテロ原子またはヘテロ原子の組み合わせを使用することができる。
【0023】
いくつかの実施形態においては、式(Ia)、(Ib)および(Ic)のうちの少なくとも1つが、光屈折性組成物の電荷輸送構成成分を形成するために重合または共重合されてよい。いくつかの実施形態においては、例えば、光屈折性ポリマーを形成するために各部分が単独で重合されてよい。いくつかの実施形態においては、例えば、光屈折性ポリマーを形成するために前述の2以上の部分が共重合されてもよい。これらの部分により形成されるポリマーまたはコポリマーは電荷輸送能力を有している。
【0024】
これらに限定するものではないが、ポリウレタン、エポキシポリマー、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリシロキサンおよびポリアクリレートを含め、付着された好適な側鎖を伴った多くのポリマー骨格が本光屈折性組成物のポリマーマトリクスを作るために使用することができる。いくつかの実施形態はアクリレートまたはスチレンをベースとした骨格単位を含有し、いくつかの好適な骨格単位はアクリレートベースのモノマーから形成され、また、いくつかの骨格単位はメタクリラートモノマーから形成される。そのポリマー自体に光伝導機能性を盛り込むための最初のポリマー材料はアリゾナ大学で開発されたポリビニルカルバゾール材料であったと確信される。しかし、これらのポリビニルカルバゾールポリマーは、そのポリマーをフィルムや光屈折性装置で使用するための他の形状に成すために典型的に使用される熱処理法にかけられたときに、粘り気のあるベトベトした状態になる傾向がある。
【0025】
本明細書で記載されている実施形態において用いられている(メタ)アクリル系ポリマーは、これまでよりもずっと良好な熱的および機械的特性を有している。言い換えれば、本ポリマーは、特にこれらのポリマーがラジカル重合によって調製されるとき、射出成形または押し出しによる処理の際にこれまでよりも良好な作業性を提供する。いくつかの実施形態は青色レーザーによる照射で活性化される光屈折性ポリマーを含む組成物を提供し、その光屈折性ポリマーは、以下の式:
【化6】

および
【化7】

[式中、式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)中における各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)中におけるRa−Ra、Rb−Rb27およびRc−Rc14は、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され;ここで、前述のアルキルは分岐型であってもよいし、または直鎖状であってもよく、ヘテロアルキレン基はS、NまたはOから選択される1以上のヘテロ原子を有している]からなる群から選択される反復単位を含む。
【0026】
また、いくつかの実施形態においては、式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)のうちの少なくとも1つを、電荷輸送能力をもたらす光屈折性ポリマーを形成するために重合または共重合することもできる。いくつかの実施形態においては、フェニルアミン誘導体を含むモノマーを共重合して、電荷輸送構成成分を形成することもできる。そのようなモノマーの非限定的な例は:カルバゾリルプロピル(メタ)アクリレートモノマー;4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルプロピル(メタ)アクリレート;N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;およびN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−ブトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;である。これらのモノマーは、それら自体で使用されてもよいし、または2以上のモノマーの混合物として使用されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態においては、本光屈折性組成物は、更に、非線形光学機能性を有する別の構成成分を含む。非線形光学機能性を伴った部分または発色団が、本組成物への添加剤として、または共重合するモノマーに付着された側鎖として、本ポリマーマトリクスに組み込まれてよい。それらの部分または発色団は非線形光学機能性をもたらすことが当技術分野において公知のどのような基であってもよいが、青色レーザーに感応性であると本明細書で記載されている発色団を含めることが好適である。
【0028】
いくつかの実施形態においては、本光屈折性組成物は、1以上の非線形光学性部分を有する付加的なポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態においては、前述の非線形光学性部分は、電荷輸送部分を伴ったポリマーとの共重合を許容するポリマー骨格への側鎖として存在していてよい。いくつかの実施形態においては、本光屈折性ポリマーは、更に、以下の式:
【化8】

[式中、式(IIa)のQはアルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、そのヘテロアルキレン基はSまたはOから選択される1以上のヘテロ原子を有しており;式(IIa)のRは水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択され;式(IIa)のGはπ共役基であり;そして式(IIa)のEacptは電子受容体基である]により表される第2反復単位を含む。いくつかの実施形態においては、式(IIa)のRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルから選択されるアルキル基である。いくつかの実施形態においては、式(IIa)のQは、(CHにより表されるアルキレン基であり、ここで、pは約2〜約6である。いくつかの実施形態においては、式(IIa)のQは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンおよびヘプチレンからなる群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態においては、本ポリマーは、以下の式:
【化9】

[式中、式(IIa’)のQはアルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、そのヘテロアルキレン基はSまたはOなどの1以上のヘテロ原子を有しており;式(IIa’)のRは水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択され;式(IIa’)のGはπ共役基であり、そして式(IIa’)のEacptは電子受容体基である]により表される反復単位を含む。いくつかの実施形態においては、式(IIa’)のRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルから選択されるアルキル基である。いくつかの実施形態においては、式(IIa’)のQは、(CHにより表されるアルキレン基であり、ここで、pは約2〜約6である。いくつかの実施形態においては、式(IIa’)のQは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンおよびヘプチレンからなる群から選択される。
【0030】
「π共役基」という用語は、π共役結合を含む分子フラグメントを表す。π共役結合は、原子軌道の重なり(σ結合に対するs+p混成原子軌道およびπ結合に対するp原子軌道)により2つの原子間で形成されるσ結合およびπ結合を有する原子間の共有結合を表す。いくつかの実施形態においては、式(IIa)および(IIa’)のGは、独立して、以下のもの:
【化10】

および
【化11】

[式中、(G−1)および(G−2)のRd−Rdは、それぞれ独立して、水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、C−C10アリール、ならびにハロゲンからなる群から選択され、そして(G−1)および(G−2)のRは水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から独立して選択される]から選択される式により表される。
【0031】
「電子受容体基」という用語は、π共役基に結合することができる高い電子親和力を持った一群の基を表す。強度が高くなる順序での例証的な受容体は:C(O)NR<C(O)NHR<C(O)NH<C(O)OR<C(O)OH<C(O)R<C(O)H<CN<S(O)R<NO;であり、ここで、これらの電子受容体の各Rは、独立して、例えば水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、およびC−C10アリールであってよい。米国特許第6,267,913号に示されているように、電子受容体基の例は:
【化12】

[式中、Rは、水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択される]を含む。上述の化学構造式中における記号「‡」は別の化学基への付着原子を特定しており、その構造が、本来なら「‡」の無い状態でのその構造により示唆される水素を欠いていることを示している。
【0032】
いくつかの実施形態においては、式(IIa)および(IIa’)のEacptは、独立して、以下のもの:
【化13】

および
【化14】

[式中、式(E−3)、(E−4)および(E−6)のR、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択される]からなる群から選択される式により表すことができる。
【0033】
コポリマーを含有する非線形光学構成成分を調製するために、非線形光学能力を備えた側鎖基を有するモノマーを使用することができる。そのようなモノマーの非限定的な例は:
【化15】

および
【化16】

[式中、上述のモノマーの各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、そのヘテロアルキレン基はOおよびSなどの1以上のヘテロ原子を有しており;上述のモノマーの各Rは、独立して、水素またはメチルから選択され;そして、上述のモノマーの各Rは、独立して、直鎖状および分岐状のC−C10アルキルから選択される]を含む。いくつかの実施形態においては、上述のモノマーのQは(CHにより表されるアルキレン基であってよく、ここで、pは約2〜約6の範囲である。いくつかの実施形態においては、上述のモノマーの各Rは、独立して、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択されてよい。上述のモノマーの各Rは、独立して、HまたはCHであってよい。
【0034】
いくつかの実施形態においては、ポリマーを含む非線形光学構成成分を調製するために、発色団を含むモノマーを使用することもできる。上述の非線形光学構成成分として発色団基を含むモノマーの非限定的な例は、N−エチル,N−4−ジシアノメチルデニルアクリレートおよびN−エチル,N−4−ジシアノメチリデニル−3,4,5,6,10−ペンタヒドロナフチルペンチルアクリレートを含む。
【0035】
本明細書で記載されているポリマーは様々な仕方で調製することができ、例えば対応するモノマーまたはそれらの前駆体の重合により調製されてよい。重合は、本明細書で与えられている概説により情報提示されているように、当業者にとって公知の方法により実施されてよい。いくつかの実施形態においては、AIBN(アゾイソブチルニトリル)などのアゾ型の開始剤を用いるラジカル重合を実施することができる。このラジカル重合技術は、電荷輸送基と非線形光学性基との両方を含むランダムコポリマーまたはブロックコポリマーの調製を可能にする。更に、ここで記載されている技術に従うことにより、光伝導性、応答時間および回折効率などの例外的に良好な特性を備えたそのような材料を調製することが可能である。ラジカル重合法の1つの実施形態においては、重合触媒作用は、一般的に、すべての重合可能なモノマー1モル当たり0.01〜5モル%の量、または0.1〜1モル%の量で使用される。
【0036】
いくつかの実施形態においては、ラジカル重合は、不活性ガス(例えば窒素、アルゴンまたはヘリウム)の下においておよび/または溶媒(例えば酢酸エチル、テトラヒドロフラン、酢酸ブチル、トルエンまたはキシレン)の存在下において実施することができる。重合は1〜50Kgf/cmの圧力または1〜5Kgf/cmの圧力の下で実行されてよい。いくつかの実施形態においては、溶媒中におけるすべての重合可能なモノマーの濃度は重量で約0.99%〜約50%であってよく、好ましくは、重量で約2%〜約9.1%である。この重合は約50℃〜約100℃の温度で実施されてよく、また、所望の最終的な分子量および重合温度に依存して、更には重合速度を考慮に入れて、約1時間から約100時間続けられてよい。
【0037】
いくつかの実施形態は、本コポリマーを調製するために、非線形光学能力のための官能基を有する前駆体モノマーの使用を含む重合方法を提供する。その前駆体は、以下の式:
【化17】

{式中、(P1)のRは水素またはメチルであり、(P1)のVは、式(V−1)および(V−2):
【化18】

および
【化19】

[式中、(V1)および(V2)の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、そのヘテロアルキレン基はOおよびSなどの1以上のヘテロ原子を有しており;(V1)および(V2)のRd−Rdは、それぞれ独立して、水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、C−C10アリールからなる群から選択され、そして、(V1)および(V2)のRはC−C10アルキル(分岐型または直鎖型)である]から選択される基である}により表すことができる。いくつかの実施形態においては、(V1)および(V2)のQは、独立して、(CHにより表されるアルキレン基であってよく、ここで、pは約2〜約6の範囲である。いくつかの実施形態においては、(V1)および(V2)のRは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルからなる群から選択される。1つの実施形態においては、(V1)および(V2)のRd−Rdは水素である。
【0038】
いくつかの実施形態においては、本重合方法は、上で述べられているのと同じ初期運転条件下で機能し、且つ、手順も本前駆体ポリマーを形成するためのものと同じ手順に従う。前駆体コポリマーが形成された後、その前駆体コポリマーは、縮合反応により、非線形光学性の基および能力を持った対応するコポリマーに変換することができる。いくつかの実施形態においては、その縮合試薬は:
【化20】

および
【化21】

[式中、上述の縮合試薬のR、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択される]からなる群から選択することができる。このアルキル基は分岐型であってもよいし、または直鎖型であってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態においては、この縮合反応はピリジン誘導体触媒の存在下において室温で約1〜約100時間実施されてよい。いくつかの実施形態においては、酢酸ブチル、クロロホルム、ジクロロメチレン、トルエンまたはキシレンなどの溶媒も使用することができる。いくつかの実施形態においては、この反応は、触媒を用いることなく、30℃以上の溶媒還流温度で約1〜約100時間実施されてよい。
【0040】
ポリマーマトリクスにおいて非線形光学特性を持った他の発色団が米国特許第5,064,264号(参照として本明細書に組み込まれる)に記載されており、これらの発色団もいくつかの実施形態において使用することができる。当技術分野において公知の更なる好適な材料も使用することができ、そのような材料については、D.S.Chemla & J.Zyssによる「Nonlinear Optical Properties of Organic Molecules and Crystals」(Academic Press、1987年)などの文献で充分に説明されている。米国特許第6,090,332号は、熱的に安定した光屈折性組成物を形成することができる縮合環ブリッジおよび環固定発色団を記載しており、これらの発色団も有用であり得る。これらの選択された1つまたは複数の化合物は、時として、重量で約1%から約50%までの濃度で本コポリマー中に混合される。
【0041】
いくつかの実施形態においては、本組成物は、更に、付加的な非線形光学機能性をもたらす成分を含み、その成分は、式(IIb):
D−B−A (IIb)
[式中、Dは電子供与体基であり;Bはπ共役基であり;そしてAは電子受容体基である]により表される。1つの実施形態においては、付加的な非線形光学機能性をもたらすその成分は青色レーザーに感応性であり、これにより、本組成物を青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように成している。
【0042】
「電子供与体」という用語は、Aの電子親和力と比較してそれよりも低い電子親和力を有する基として定義される。電子供与体の非限定的な例はアミノ(NRzRz)、メチル(CH)、オキシ(ORz)、ホスフィノ(PRzRz)、シリカート(SiRz)およびチオ(SRz)を含み、ここで、RzおよびRzはアルケニル、アルキル、アルキニル、アリール、シクロアルケニル、シクロアルキルおよびヘテロアリールから独立して選択される有機置換基である。1つの実施形態においては、ヘテロアリールはOおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有している。
【0043】
「π共役基」という用語は上で定義されているとおりである。いくつかの実施形態においては、好適なπ共役基は以下の基のうちの少なくとも1つを含む:芳香族基および縮合芳香族基、ポリエン、ポリイン、キノメチド、ならびにそれらの対応するヘテロ原子置換基(例えばフラン、ピリジン、ピロールおよびチオフェン)。いくつかの実施形態においては、好適なπ共役基は、置換を伴った場合または置換を伴わない場合のC=CまたはC≡C結合およびそれらの組み合わせにおける炭素の少なくとも1つのヘテロ原子による置換を含む。いくつかの実施形態においては、好適なπ共役基は、このパラグラフで記載されている先行する基のうちの2つ以下の基を含む。更に、上述の1つまたは複数の基は、そのπ共役基に縮合または付加された、炭素環式またはヘテロ環式の環で置換されていてよい。π共役基の非限定的な例は:
【化22】

および
【化23】

[式中、mおよびnは、それぞれ独立して、2またはそれ未満の整数である]を含む。
【0044】
「電子受容体」という用語は上で定義されており、Aは、更に、Dの電子親和力と比べたときにそれよりも高い電子親和力を有する電子受容体基として定義される。いくつかの実施形態においては、Aは、これらに限定するものではないが、以下のもの:アミド;シアノ;エステル;ホルミル;ケトン;ニトロ;ニトロソ;スルホン;スルホキシド;スルホナートエステル;スルホンアミド;ホスフィンオキシド;ホスホナート;N−ピリジニウム;Bにおけるヘテロ置換;それらの変異形;および他のプラスに帯電した第4級塩;から選択される。いくつかの実施形態においては、Aは:NO、CN、C=C(CN)、CF、F、Cl、Br、I、S(=O)2n+1、S(C2n+1)=NSOCF;からなる群から選択され、前述の式中のnは1〜10の整数である。
【0045】
いくつかの実施形態においては、付加的な非線形光学機能性をもたらす式(IIb)を有する少なくとも1つの成分は発色団を含む。好ましくは、その発色団は青色レーザーに感応性である。1つの実施形態においては、前述の発色団は、以下の化合物:
【化24】

および
【化25】

[式中、上述の化合物の各R−R11は、独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され、ここで、前述のアルキルは分岐型もしくは直鎖型であってよく、また、各Rf−Rf14は、独立して、H、FおよびCFから選択される]のうちの1以上の化合物から選択される。ポリマーを含有する本光屈折性組成物は、付加的な非線形光学機能性をもたらす式(IIb)を有する1以上の成分を組み入れることにより、青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように構成することができる。1つの実施形態においては、ポリマーを含む本光屈折性組成物は、本明細書で記載されている1以上の発色団を組み入れることにより、青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように構成されている。1つの実施形態においては、その発色団は、以下の構造式:
【化26】

により表される1−ヘキサメチレンイミン−4−ニトロベンゼンである。
【0046】
いくつかの実施形態においては、本光屈折性組成物は、更に、可塑剤を含む。フタラート誘導体または低分子量正孔移動化合物(例えば、N−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体またはアセチルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体)などのあらゆる市販の可塑剤が本ポリマーマトリクスに組み入れられてよい。電子受容体基を含むN−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体は、その可塑剤が1つの化合物にN−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン部分と非線形光学性部分との両方を含有しているため、本光屈折性組成物が一層安定になるのを助長することができる好適な可塑剤である。
【0047】
可塑剤の他の非限定的な例は:エチルカルバゾール;4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルプロピルアセタート;4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルメチルオキシアセタート;N−(アセトキシプロピルフェニル)−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N−(アセトキシプロピルフェニル)−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;およびN−(アセトキシプロピルフェニル)−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−ブトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;を含む。そのような化合物は単独で使用してもよいし、または2以上のモノマーの混合物として使用してもよい。また、重合されていないモノマーは低分子量正孔移動化合物であってもよく、例えば4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルプロピル(メタ)アクリレート;N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;およびN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−ブトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;などであってよい。そのようなモノマーは単独で使用することができ、または2以上の混合物として使用することもできる。
【0048】
いくつかの実施形態においては、可塑剤はN−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体:
【化27】

および
【化28】

{式中、Ra、Rb−RbおよびRc−Rcは、それぞれ独立して、水素、分岐型および直鎖型のC−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択され;pは0または1であり;Eacptは電子受容体基であって、以下の構造式:
【化29】

および
【化30】

[式中、式(E−3)、(E−4)および(E−6)のR、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、直鎖状および分岐状のC−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択される]からなる群から選択される構造式により表される}から選択されてよい。
【0049】
いくつかの実施形態においては、本光屈折性組成物は、光伝導(電荷輸送)能力および非線形光学能力をもたらすコポリマーを含む。また、本光屈折性組成物は、望ましい場合には他の構成成分、例えば増感剤構成成分および/または可塑剤構成成分なども含んでいてよい。いくつかの実施形態は、コポリマーを含む光屈折性組成物を提供する。そのコポリマーは、電荷輸送能力を伴った第1部分を含有する第1反復単位、非線形光学能力を伴った第2部分を含有する第2反復単位、および可塑化能力を伴った第3部分を含有する第3反復単位を含んでいてよい。
【0050】
更に、本コポリマーの形成において使用される異なるタイプのモノマーの比率も広範囲にわたって様々に変えることができる。いくつかの実施形態は、重量比が約100:1〜約0.5:1まで、好ましくは約10:1〜約1:1までの第1反復単位(例えば、電荷輸送能力を伴った反復単位)と第2反復単位(例えば、非線形光学能力を伴った反復単位)を有する光屈折性組成物を提供することができる。第1反復単位と第2反復単位との比率が0.5:1よりも小さいときには、得られるコポリマーの電荷輸送能力が比較的弱くなり、良好な光屈折性を得るには好ましくない程に応答時間が遅速化する可能性がある。しかし、このケースにおいてさえ、非線形光学能力を有する既述の低分子量構成成分を加えることにより、光屈折性を高めることができる。一方、上述の重量比が100:1よりも大きい場合には、得られるコポリマー自体の非線形光学能力が弱く、良好な光屈折性を得るには低すぎる程に回折効率が低下する傾向がある。しかし、このケースにおいてさえ、電荷輸送能力を有する既述の低分子量構成成分を加えることにより、光屈折性を高めることができる。
【0051】
いくつかの実施形態においては、本コポリマーの分子量およびガラス転移温度Tgは所望の物理的特性をもたらすべく選択される。いくつかの実施形態においては、標準的なポリマー加工技術(例えば、溶媒被覆、射出成形または押し出しなど)により、本ポリマーをフィルム、塗膜および様々な種類の成形物体に形成できることは、必須ではないが、価値があり、且つ、望ましい。
【0052】
いくつかの実施形態においては、本ポリマーは、約3,000〜約500,000、好ましくは約5,000〜約100,000の重量平均分子量Mwを有している。本明細書で使用する場合、「重量平均分子量」という用語は、当技術分野において周知の如く、ポリスチレン標準物質でのGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により決定された値を意味する。いくつかの実施形態においては、可塑剤への依存性を低下させることにより、付加的なメリットがもたらされ得る。本質的に中等度のTgを有するコポリマーを選択し、且つ、その平均Tgを抑制する傾向を有する方法を使用することにより、本組成物に必要な可塑剤の量を約30%または25%以下の量にまで制限することが可能であり、いくつかの実施形態においては、約20%以下の量にまで制限することができる。いくつかの実施形態においては、青色レーザーにより活性化され得る本光屈折性組成物は、約100μmの厚みおよび約30%を超える透過率を有することができる。
【0053】
1つの実施形態は、青色レーザーによる照射で光屈折性になる光屈折性組成物を提供し、その光屈折性組成物は、上で定められているとおりの式(Ia)、(Ib)および(Ic)からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む第1反復単位を含むポリマーを含む。いくつかの実施形態においては、本ポリマーは、更に、式(IIa)および発色団から選択される少なくとも1つの部分を含む第2反復単位を含んでいてよい。いくつかの実施形態においては、本ポリマーは、更に、式(IIb)から選択される成分を含んでいてよい。いくつかの実施形態においては、本ポリマーは、更に、式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)から選択される少なくとも1つの部分を含む第3反復単位を含んでいてよい。1つの実施形態においては、本光学素子は、光屈折性の本明細書で記載されているいずれか1つの組成物を含む。
【0054】
別の実施形態は光を変調する方法を提供し、その方法は、光屈折性組成物を青色レーザーで照射して光屈折性組成物を活性化し、これにより、その光屈折性組成物を通過する光を変調することを含む。この光屈折性組成物はここで検討されているすべての実施形態を含む。
【0055】
多くの現在入手可能な光屈折性ポリマーは相安定性が乏しく、日数が経つとかすんだ状態になり得る。光屈折性ポリマーを含むフィルム組成物がかすみを示すと、乏しい光屈折特性が呈示される。このフィルム組成物のかすみは、通常、数種類の光屈折性構成成分間における不適合性に由来する。例えば、電荷輸送能力構成成分と非線形光学能力構成成分との両方を含む光屈折性組成物は、電荷輸送能力を有する構成成分が、通常、疎水性で且つ無極性であるのに対し、一方の非線形光学能力を有する構成成分が、通常、親水性で且つ極性であるため、かすみを呈する。結果として、その組成物は自然に相分離が生じる傾向を有し、これによりかすみが生じる。
【0056】
しかし、本明細書で提示されている種々の実施形態は非常に良好な相安定性を示し、数ヵ月後においてさえ、かすみをもたらさなかった。本明細書で記載されている組成物は、それらの組成物が非常に安定していて相分離をほとんどもしくは全く呈さないため、良好な光屈折特性を持ち続ける。何ら理論によって拘束されるものではないが、この安定性は発色団の構造および/または種々の発色団の混合物に起因しているように思われる。これに加え、本マトリクス・ポリマー・システムは、電荷輸送能力を有する構成成分と非線形光学能力を有する構成成分とのコポリマーである。即ち、電荷輸送能力を有する構成成分および非線形光学能力を有する構成成分が1つのポリマー鎖内で共存しており、それ故、相分離が起こりにくくなっている。
【0057】
更に、熱は、通常、相分離の速度を増大させるが、本明細書で記載されている組成物は、加熱後においてさえ、良好な相安定性を呈する。熱加速試験では、サンプルを典型的には約40℃〜約120℃の温度に加熱し、好ましくは約60℃〜約80℃の温度に加熱した。これらの加熱されたサンプルは、数日後、数週間後、時には6ヶ月後においてさえ安定していることが判明した。この良好な相安定性は、本コポリマーを更なる処理にかけ、より多くの商品に向けた光学素子用途に組み入れることを可能にする。
【0058】
図1は、光屈折性組成物を伴うホログラム記録システムの非限定的な実施形態を描いた概略図である。情報をホログラム媒体に記録することができ、同時に、その記録された情報を読み取ることもできる。記録媒体12に情報を書き込むときに、レーザー光源11を使用することができる。記録媒体12は本明細書で記載されている光屈折性ポリマーを含んでおり、支持材料13上に位置付けされている。
【0059】
記録媒体12内へのオブジェクトビーム14および参照ビーム16のレーザービーム照射が干渉格子をもたらし、これにより、内部電場および屈折率変化が発生する。オブジェクトビーム14および参照ビーム16は、図1に描かれているもの以外に、その装置の様々な側面から投射することができる。例えば、記録媒体12の同じ側から投射する代わりに、オブジェクトビーム14および参照ビーム16は記録媒体12の対向する側から投射することもできよう。また、オブジェクトビーム14と参照ビーム16との間におけるどのようなタイプの角度も使用することができる。入射ビームの角度を変えることにより、記録媒体12の光屈折性組成物内における多重記録も可能である。オブジェクトビーム14は、そのビームの透過部分15およびそのビームの屈折部分17を有している。
【0060】
画像ディスプレイ装置19は記録媒体12のX−Y平面に平行にセットされている。様々なタイプの画像ディスプレイ装置を使用することができる。画像ディスプレイ装置のいくつかの非限定的な例は、液晶装置、Pockels Readout Optical Modulator、Multichannel Spatial Modulator、CCD液晶装置、AOもしくはEO変調装置、または光磁気装置を含む。記録媒体12のもう一方の側には読み取り装置18がこれも記録媒体12のX−Y平面に平行にセットされている。好適な読み取り装置はあらゆる種類の光電変換装置、例えばCCD、フォトダイオード、光受信器または光電子増倍管などを含む。
【0061】
記録された情報を読み取るため、オブジェクトビーム14が遮断され、記録用に使用された参照ビーム16のみが照射される。再構成された画像を復元することができ、読み取り装置18が、参照ビーム16から離れた位置で、オブジェクトビームの透過部分15と同じ方向に据え付けられる。しかし、読み取り装置18の位置は図1に示されているポジショニングに限定されるものではない。光屈折性組成物内に記録された情報は、全面光照射により完全に消去することができ、またはレーザービーム照射により部分的に消去することもできる。
【0062】
本方法は記録媒体に回折格子を構築することができる。このホログラム装置は、光記憶装置だけでなく、他の用途にも使用することができ、例えばホログラム干渉計、3Dホログラフィックディスプレイ、コヒーレント画像増幅用途、ノベルティーフィルタリング、自己位相共役、ビーム・ファンニング・リミッター、信号処理および画像相関などにも使用することができる。
【0063】
本発明による光屈折性装置の場合、通常、光屈折層の厚みは約10μmから約200μmまでである。好ましくは、その厚みは約30μmから約150μmまでの範囲である。サンプル厚みが10μm未満の場合には、回折信号が、望ましいBragg Refraction領域ではなく、好適な格子挙動を示すことができないRaman−Nathan Regionである。一方、サンプル厚みが200μmよりも大きい場合、格子挙動を示すためには高すぎるバイアス電圧が必要になるであろう。また、青色レーザービームに対する組成透過率が有意に低減され、結果として格子信号が得られない可能性もある。
【0064】
いくつかの実施形態においては、本組成物は、波長が488nmのレーザービームを透過させるように構成されている。この組成透過率は光屈折層の厚みに依存しており、従って、光屈折性組成物を含む光屈折層の厚みをコントロールすることにより、光変調特性を望み通りに調節することができる。この透過率が低いときには、青色レーザービームはその相を通過して格子像および格子信号を形成することができないであろう。一方、吸光度が完全に0%の場合には、レーザーエネルギーを全く吸収することができず、格子信号を発生させることができない。いくつかの実施形態においては、透過率の好適な範囲は、約10%から約99.99%までの間、約30%から約99.9%までの間、および約40%から約90%までの間である。本光屈折性素子の吸収係数を決定するため、線形透過率の測定が行われた。測定に際しては、光屈折層が、その層表面に垂直な入射光路を持って、488nmのレーザービームに露光された。この光屈折層を通過する前と通過した後のビーム強度がモニタリングされ、そのサンプルの線形透過率が:
T=I透過/I入射
により与えられる。
【0065】
青色レーザーの波長は実際には制限されていないが、通常、青色レーザーは400nmから500nmまでの間の波長の光を発するレーザーとして定められている。典型的には、青色レーザー光源として、広く利用可能な488nmのレーザーを使用することができる。
【0066】
本明細書で記載されている光屈折性組成物が有する多くの利点のうちの1つは迅速な応答時間である。応答時間が速ければ速いほど格子の構築が速くなることを意味し、これにより、本光屈折性組成物は、リアルタイムホログラム用途などのこれまで以上に広い用途での使用が可能になる。応答時間は、レーザー書き込みビームに露光されたときに光屈折性材料内に回折格子を構築するのに要する時間である。サンプル材料の応答時間は、以降の実施例のセクションで詳述されているように、過渡4光波混合(TFWM)実験により測定することができる。この後、得られたデータは、a+a=1を条件として、以下の2次指数関数:
η(t)=sin{η(1−a−t/J1−a−t/J2)}
を用いてフィッティングすることができ;ここで、η(t)は時間tにおける回折効率であり、ηは定常状態での回折効率であり、そして、JおよびJは格子構築時間である。JおよびJのうちの小さい方の数字が応答時間として定義される。
【0067】
その上、この迅速な応答時間は、約100V/μm(バイアス電圧として表現)を上回る場などの非常に高い電場を用いることなく達成することができる。本発明の種々の実施形態のサンプルでは、迅速な応答時間は、一般的に、約95〜約50V/μm、および約90〜約60V/μmを含め、約100V/μm以下のバイアス電圧において達成することができる。本明細書で記載されている光屈折性組成物は、488nmにおいて0.24秒という非常に速い応答時間を示した。
【0068】
数ある中での別の1つの利点は、高い回折効率ηである。回折効率は、回折ビームの強度と入射プローブビームの強度との比率として定義され、それぞれのビームの強度を測定することにより決定される。比率が100%に近くなればなるほど、その装置が一層効率的であることを意味する。一般的に、ある与えられた光屈折性組成物に対して、印加されるバイアス電圧を高めることにより、一層高い回折効率を達成することができる。本明細書で記載されている種々の実施形態のサンプルは少なくとも約70%の回折効率をもたらすことができ、時には約80%もの高い回折効率をもたらすことができた。
【実施例】
【0069】
次に、種々の実施形態を以下の実施例により更に説明するが、それらの実施例は本発明を例証することを意図したものであり、決して、本発明の範囲または本発明の基礎を成す原理を限定することを意図したものではない。
【0070】
(実施例1)
(a)電荷輸送基を含むモノマー
N−[アクロイルオキシプロポキシフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPDアクリレート)モノマーがFuji Chemical(Japan)から購入され、そのモノマーは、以下の構造:
【化31】

を有している。
【0071】
(b)非線形光学性基を含むモノマー
非線形光学性前駆体モノマー5−[N−エチル−N−4−ホルミルフェニル]アミノ−ペンチルアクリレートを、以下の合成図式:
【化32】

に従って合成した。
【0072】
工程I:ブロモペンチルアセタート(5mL、30mmol)およびトルエン(25mL)中に室温でトリエチルアミン(4.2mL、30mmol)およびN−エチルアニリン(4mL、30mmol)を加えた。この混合物を120℃で一晩加熱した。冷却後、その反応混合物を回転蒸発させ、残分を形成した。得られた残分をシリカ・ゲル・クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=9/1)により精製した。オイル状のアミン化合物が得られた(収量:6.0g(80%))。
【0073】
工程II:無水DMF(6mL、77.5mmol)を氷浴中で冷却した。次いで、その冷却された無水DMF中にPOCl(2.3mL、24.5mmol)を滴下させながら加え、得られた混合物を室温にした。前述のアミン化合物(5.8g、23.3mmol)をジクロロエタンと共に注射器によりラバーセプタムを通じて加えた。30分間撹拌した後、この反応混合物を90℃に加熱し、その反応をアルゴン雰囲気下において一晩進行させた。
【0074】
一晩の反応後、得られた反応混合物を冷却し、塩水中に注ぎ、エーテルで抽出した。そのエーテル層を炭酸カリウム水溶液で洗い、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。硫酸マグネシウムを取り除いた後、溶媒を除去し、得られた残分をシリカ・ゲル・クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製した。アルデヒド化合物が得られた(収量:4.2g(65%))。
【0075】
工程III:上述のアルデヒド化合物(3.92g、14.1mmol)をメタノール(20mL)中に溶解した。この溶液に室温で炭酸カリウム(400mg)および水(1mL)を加え、得られた溶液を一晩撹拌した。次に、その溶液を塩水中に注ぎ、エーテルで抽出した。そのエーテル層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。硫酸マグネシウムを取り除いた後、溶媒を除去し、得られた残分をシリカ・ゲル・クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=1/1)で精製した。アルデヒドアルコール化合物が得られた(収量:3.2g(96%))。
【0076】
工程IV:上述のアルデヒドアルコール(5.8g、24.7mmol)を無水THF(60mL)中に溶解した。この溶液中にトリエチルアミン(3.8mL、27.1mmol)を加え、得られた溶液を氷浴で冷却した。塩化アクロリル(2.1mL、26.5mmol)を加え、その溶液を20分間0℃に維持した。その後、この溶液を室温にまで温め、室温で1時間撹拌し、この時点で、TLCは上述のアルコール化合物がすべて消失していることを指示した。その溶液を塩水中に注ぎ、エーテルで抽出した。そのエーテル層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。硫酸マグネシウムを取り除いた後、溶媒を除去し、得られた残分、アクリレート化合物をシリカ・ゲル・クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=1/1)で精製した。この化合物の収量は5.38g(76%)であり、また、この化合物の純度は99%(GCによる)であった。
【0077】
c)非線形光学発色団7−FDCSTの合成
非線形光学性前駆体7−FDCST(7員環ジシアノスチレン、4−ホモピペリジノ−2−フルオロベンジリデンマロノニトリル)が、以下の2段階型合成反応図式:
【化33】

に従って合成された。
【0078】
2,4−ジフルオロベンズアルデヒド(25g、176mmol)、ホモピペリジン(17.4g、176mmol)、炭酸リチウム(65g、880mmol)およびDMSO(625mL)の混合物を50℃で16時間撹拌した。その反応混合物に水(50mL)を加えた。得られた生成物をエーテル(100mL)で抽出した。エーテルの除去後、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル(9:1)を用いるシリカ・ゲル・クロマトグラフィーによりその粗生成物を精製することにより、粗製中間体が得られた(22.6g)。4−(ジメチルアミノ)ピリジン(230mg)をメタノール(323mL)中における4−ホモピペリジノ−2−フルオロベンズアルデヒド(22.6g、102mmol)およびマロノニトリル(10.1g、153mmol)の溶液に加えた。この反応混合物を室温に維持し、生じた生成物を濾過により収集し、エタノールからの再結晶化により精製した。この化合物の収量は18.1g(38%)であった。
【0079】
d)非線形光学発色団1−ヘキサメチレンイミン−4−ニトロベンゼンの合成
この非線形光学性で青色レーザーに感応性の発色団1−ヘキサメチレンイミン−4−ニトロベンゼンは、以下の合成反応図式:
【化34】

に従って合成された。
【0080】
4−フルオロベンズアルデヒド(3g、21.26mmol)、ホモピペリジン(2.11g、21.26mmol)、炭酸リチウム(3.53g、25.512mmol)およびDMSO(40mL)の混合物を50℃で16時間撹拌した。この反応混合物に水(50mL)を加えた。得られた生成物をエーテル(100mL)で抽出した。エーテルの除去後、その粗生成物を再結晶化させることにより、黄色い結晶が得られた。この化合物の収量は4.45g(95%)であった。
【0081】
(実施例2)
AIBNラジカル開始重合によるTPDアクリレートポリマーの調製
電荷輸送モノマーN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPDアクリレート)(61.50g)を三つ口フラスコに入れた。トルエン(400mL)を加え、アルゴンガスで1時間パージした後、この溶液にアゾイソブチルニトリル(138mg)を加えた。次いで、得られた溶液を、アルゴンガスでパージし続けながら、65℃に加熱した。
【0082】
18時間の重合後、そのポリマー溶液をトルエンで希釈した。ポリマーをその溶液から沈殿させ、メタノールに加え、その後、結果として生じたポリマー沈殿物を収集し、ジエチルエーテルおよびメタノール中で洗った。白色のポリマー粉末を収集し、乾燥させた。このポリマーの収率は78%であった。
【0083】
ポリスチレン標準物質を用い、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、重量平均分子量および数平均分子量を測定した。結果は、2.10の多分散性を与え、Mn=20,400、Mw=42,900であった。
【0084】
(実施例3)
AIBNラジカル開始重合によるTPDアクリレート/発色団タイプ10:1コポリマーの調製
電荷輸送モノマーN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPDアクリレート)(43.34g)および実施例1で説明されているようにして調製された非線形光学性前駆体モノマー5−[N−エチル−N−4−ホルミルフェニル]アミノ−ペンチルアクリレート(4.35g)を三つ口フラスコに入れた。トルエン(400mL)を加え、アルゴンガスで1時間パージした後、この溶液にアゾイソブチルニトリル(118mg)を加えた。次いで、得られた溶液を、アルゴンガスでパージし続けながら、65℃に加熱した。
【0085】
18時間の重合後、そのポリマー溶液をトルエンで希釈した。ポリマーをその溶液から沈殿させ、メタノールに加え、その後、結果として生じたポリマー沈殿物を収集し、ジエチルエーテルおよびメタノール中で洗った。白色のポリマー粉末を収集し、乾燥させた。このポリマーの収率は66%であった。
【0086】
ポリスチレン標準物質を用い、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、重量平均分子量および数平均分子量を測定した。結果は、1.61の多分散性を与え、Mn=10,600、Mw=17,100であった。
【0087】
(実施例4)
AIBNラジカル開始重合によるTPDアクリレート/CbZアクリレート/発色団タイプ5:5:1コポリマーの調製
電荷輸送モノマーN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPDアクリレート)(5.0g)、N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’−ジフェニルアミン(CBzアクリレート)(5.0g)および実施例1で説明されているようにして調製された非線形光学性前駆体モノマー5−[N−エチル−N−4−ホルミルフェニル]アミノ−ペンチルアクリレート(1.0g)を三つ口フラスコに入れた。トルエン(85mL)を加え、アルゴンガスで1時間パージした後、この溶液にアゾイソブチルニトリル(47mg)を加えた。次いで、得られた溶液を、アルゴンガスでパージし続けながら、65℃に加熱した。
【0088】
18時間の重合後、そのポリマー溶液をトルエンで希釈した。ポリマーをその溶液から沈殿させ、メタノールに加え、その後、結果として生じたポリマー沈殿物を収集し、ジエチルエーテルおよびメタノール中で洗った。白色のポリマー粉末を収集し、乾燥させた。このポリマーの収率は約84%であった。
【0089】
ポリスチレン標準物質を用い、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、重量平均分子量および数平均分子量を測定した。結果は、2.25の多分散性を与え、Mn=12,300、Mw=27,700であった。
【0090】
(実施例5)
光屈折性組成物の調製
光屈折性組成物の試験用サンプルを調製した。この組成物の構成成分は以下のとおりであった:
(i)TPD電荷輸送(生成実施例1で説明):50.0wt%
(ii)1−ヘキサメチレンイミン−4−ニトロベンゼンの調製された発色団:30.0wt%
(iii)9−エチルカルバゾール可塑剤:20.0wt%
【0091】
本組成物を調製するため、上でリストアップされている構成成分をトルエン中に溶解し、室温で一晩撹拌した。回転蒸発器および真空ポンプにより溶媒を除去した後、得られた残分を掻き集めた。
【0092】
試験用サンプルを作成するため、この粉末状の残分混合物をガラス製のスライドに載せて125℃で溶かし、厚みが200−300μmのフィルムまたはプレケーキを作成した。このプレケーキのごく一部を採取し、50μmのスペーサーによって分離されたインジウムスズ酸化物(ITO)被覆ガラスプレートの間に挟み、個々のサンプルを形成した。
【0093】
測定1:回折効率
回折効率は4波混合実験により488nmで測定された。定常状態および過渡4波混合実験は、(サンプル法線に対して60度の角度を成す書き込みビームの二等分線を伴って)空気中において20.5度の角度を成す2つの書き込みビーム用いて行われた。
【0094】
4波混合実験では、サンプル内において0.2W/cmの等しい強度を有する2つのs偏光書き込みビームが使用された;そのスポット径は600μmであった。その表面法線に最も近い書き込みビームに関して反対方向に伝播する1.7mW/cmのp偏光ビームを用いて回折格子を探査した;サンプル内におけるこのプローブビームのスポット径は500μmであった。回折効率を決定するために、回折されたプローブビームの強度および透過したプローブビームの強度がモニタリングされた。この後、我々は、この回折効率をηと定めた。
【0095】
測定2:立ち上がり時間(応答時間)
回折効率は、s偏光書き込みビームおよびp偏光プローブビームを使用する488nmでの4波混合実験により、「測定1」で説明されているのと同様な手順を用いて、印加場の関数として測定された。2つの書き込みビームの二等分線とサンプル法線との間の角度は60度であり、2つの書き込みビーム間の角度はその材料内で間隔をあける2.5μmの格子を与えるように調整された(〜20度)。これらの書き込みビームは0.45mW/cmの等しい光パワーを有しており、これは、反射損の補正後、本ポリマーに1.5mWのトータル光パワーをもたらした。これらのビームは約500μmのスポットサイズにコリメートされた。プローブの光パワーは100μWであった。格子構築時間の測定は以下のようにして行われた:特定の電場(V/μm)をサンプルに印加し、そのサンプルを、100ミリ秒間、2つの書き込みビームおよびプローブビームで照射した。この後、回折ビームの展開を記録した。応答時間(立ち上がり時間)は定常状態回折効率のe−1に達するのに要した時間として評価された。
【0096】
測定3:消去時間
回折効率は、s偏光書き込みビームおよびp偏光プローブビームを使用する488nmでの4波混合実験により、「測定1」で説明されているのと同様な手順を用いて、印加場の関数として測定された。2つの書き込みビームの二等分線とサンプル法線との間の角度は60度であり、2つの書き込みビーム間の角度はその材料内で間隔をあける2.5μmの格子を与えるように調整された(〜20度)。これらの書き込みビームは0.45mW/cmの等しい光パワーを有しており、これは、反射損の補正後、本ポリマーに1.5mWのトータル光パワーをもたらした。これらのビームは約500μmのスポットサイズにコリメートされた。プローブの光パワーは100μWであった。格子消去時間の測定は以下のようにして行われた:特定の電場(V/μm)をサンプルに印加し、そのサンプルを、回折効率が定常状態に達するまで、これら2つの書き込みビームの両方で露光した。この後、書き込みビームのうちの一方を遮断し、回折ビームの展開を記録した。消去時間は定常状態回折効率のe−1を消去するのに要した時間として評価された。
【0097】
得られた性能:
初期回折効率(%):80V/μmにおいて80%
応答時間:80V/μmにおいて0.25(s)
消去時間:80V/μmにおいて0.67(s)
488nmにおける透過率:39%
【0098】
(実施例6)
光屈折性組成物試験用サンプルを調製した。本組成物の構成成分は以下の通りであった:
(i)TPD/DCST電荷輸送(生成実施例2で説明):50.0wt%
(ii)1−ヘキサメチレンイミン−4−ニトロベンゼンの調製された発色団:30.0wt%
(iii)9−エチルカルバゾール:20.0wt%
【0099】
得られた性能:
初期回折効率(%):65V/μmにおいて80%
応答時間:65V/μmにおいて0.24(s)
消去時間:65V/μmにおいて0.65(s)
488nmにおける透過率:40%
【0100】
(実施例7)
光屈折性組成物試験用サンプルを調製した。本組成物の構成成分は以下の通りであった:
(i)TPD/Cbz/DCST電荷輸送(生成実施例3で説明):50.0wt%
(ii)1−ヘキサメチレンイミン−4−ニトロベンゼンの調製された発色団:30.0wt%
(iii)9−エチルカルバゾール:20.0wt%
【0101】
得られた性能:
初期回折効率(%):70V/μmにおいて80%
応答時間:70V/μmにおいて0.98(s)
消去時間:70V/μmにおいて3.05(s)
488nmにおける透過率:33%
【0102】
(比較例)
組成物の構成成分に関する点を除き、実施例1と同じ仕方で光屈折性組成物を得た。その組成物の構成成分は以下の通りであった:
(i)TPD電荷輸送(生成実施例1で説明):50.0wt%
(ii)7−FDCSTの調製された発色団:30.0wt%
(iii)9−エチルカルバゾール:20.0wt%
【0103】
得られた性能:
初期回折効率(%):信号なし
応答時間:信号なし
消去時間:信号なし
488nmにおける透過率:1%未満
【0104】
先行技術において説明されているこの比較データで示されているように、488nmのレーザービームにとってこの組成物は暗すぎるため、格子形成能力は何ら観測されなかった。良好な回折効率は633nmの赤色レーザービームで照射したときにのみ観測された。
【0105】
ここで言及されているすべての参考文献および特許は、その内容全体が本明細書に組み込まれる。ここまで、本発明を特定の好適な実施形態の観点において説明してきたが、本明細書での開示内容を考慮すれば、当業者にとっては、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の他の実施形態が明らかになるであろう。従って、すべてのそのような修飾および変更は、添付の特許請求項により定められる本発明の範囲内に収まるべく意図されている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように構成されている組成物であって、前記組成物が、以下の式:
【化1】

および
【化2】

[式中、式(Ia)、(Ib)および(Ic)の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、(Ia)、(Ib)および(Ic)のRa−Ra、Rb−Rb27およびRc−Rc14は、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され、ここで、前記C−C10アルキルは直鎖状または分枝状であってもよい]からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む反復単位を含むポリマーを含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、更に、以下の式:
【化3】

[式中、式(IIa)のQはアルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(IIa)のRは水素、直鎖C−C10アルキル、分岐C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され;式(IIa)のGはπ共役基であり;そして、式(IIa)のEacptは電子受容体基である]により表される部分を含む第2反復単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2反復単位が、以下の式:
【化4】

[式中、式(IIa’)のQはアルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(IIa’)のRは水素、直鎖C−C10アルキル、分岐C−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択され;式(IIa’)のGはπ共役基であり;そして、式(IIa’)のEacptは電子受容体基である]により表される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式(IIa)および(IIa’)のQが、以下の式:
【化5】

および
【化6】

[式中、(G−1)および(G−2)のRd−Rdは、それぞれ独立して、水素、直鎖C−C10アルキル、分岐C−C10アルキル、C−C10アリール、およびハロゲンからなる群から選択され;そして、(G−1)および(G−2)のRは、独立して、水素、直鎖C−C10アルキル、分岐C−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択される]からなる群から選択される構造式により表される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
式(IIa)および(IIa’)のEacptが、以下の式:
【化7】

および
【化8】

[式中、式(E−3)、(E−4)および(E−6)のR、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、直鎖C−C10アルキル、分岐C−C10アルキル、およびC−C10アリールからなる群から選択される]からなる群から選択される構造式により表される、請求項2〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、更に、以下の式:
D−B−A (IIb)
により表される、付加的な非線形光学機能性をもたらす成分を含んでおり;
付加的な非線形光学機能性をもたらす上記成分は青色レーザーに感応性を示し;そして
式(IIb)のDが電子供与体基であり、式(IIb)のBがπ共役基であり、式(IIb)のAが電子受容体基である;
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
Dの電子供与体基がNRzRz、CH、ORz、PRzRz、SiRzおよびSRzから選択され;ここで、RzおよびRzは、独立して、アルケニル、アルキル、アルキニル、アリール、シクロアルケニル、シクロアルキルおよびヘテロアリールから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Bが、芳香環基、ポリエン基、ポリイン基、キノメチド基、前記基の組み合わせ、ならびにヘテロ原子を含むそのような基の変異形であって、そこでは少なくとも1つの炭素および/または少なくとも1つのC=CもしくはC≡C結合がヘテロ原子によって置換されている変異形からなる群のうちの2つ以下の基から選択される、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
Bが、以下の部分:
【化9】

および
【化10】

のうちの1以上から選択される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記Aの電子受容体基が、NO、CN、C=C(CN)、CF、F、Cl、Br、I、S(=O)2n+1、S(C2n+1)=NSOCFから選択され;ここで、式中のnは1〜10の整数である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
付加的な非線形光学機能性をもたらす前記成分が発色団を含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記発色団が、以下の式:
【化11】

および
【化12】

[式中、上記化合物のR−R11が、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され;ここで、C−C10アルキルは分岐型であってもよいし、直鎖型であってもよく;そして、上記化合物のRf−Rf14は、独立して、H、FおよびCFから選択される]のうちの1つから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が更に可塑剤および/または増感剤を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記可塑剤がN−アルキルカルバゾールおよびトリフェニルアミン誘導体から選択される、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記可塑剤が、以下の式:
【化13】

および
【化14】

[式中、式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)のRa、Rb−RbおよびRc−Rcは、それぞれ独立して、水素、直鎖C−C10アルキル、分岐C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され;pは0または1であり;式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)のEacptは電子受容体基である]から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、以下の式:
【化15】

および
【化16】

[式中、式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)のRa−Ra、Rb−Rb27およびRc−Rc14は、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され、ここで、前記アルキルは分岐型であってもよいし、または直鎖型であってもよい]からなる群から選択される反復単位を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、青色レーザーで照射されたときに、100μmの厚みにおいて約30%を超える透過率を有している、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、488nmの波長における青色レーザーによる照射で光屈折性を示すように構成されている、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物を含む光学素子。
【請求項20】
光を変調するための方法であって、前記方法が:
ポリマーを含む光屈折性組成物を提供する工程であって、ここで、該ポリマーが、以下の構造式:
【化17】

および
【化18】

[式中、式(Ia)、(Ib)および(Ic)の各Qは、独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンを表し、(Ia)、(Ib)および(Ic)のRa−Ra、Rb−Rb27およびRc−Rc14は、それぞれ独立して、水素、C−C10アルキルおよびC−C10アリールからなる群から選択され、ここで、前記C−C10アルキルは直鎖状または分枝状であってもよい]からなる群から選択される部分を含む反復単位を含む、光屈折性組成物を提供する工程;および
青色レーザーで上記光屈折性組成物を照射し、これにより、組成物の光屈折特性を変調する工程;
を含む、光の変調方法。
【請求項21】
光を変調するための方法であって、前記方法が:
請求項1〜18のいずれか1項に記載の光屈折性組成物を提供する工程;および
青色レーザーで上記光屈折性組成物を照射し、これにより、該組成物の光屈折特性を変調する工程;
を含む、光の変調方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−514914(P2011−514914A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545935(P2010−545935)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/032479
【国際公開番号】WO2009/099898
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】