説明

静脈内イブプロフェンを用いた重篤な病気の患者の治療

重篤な病気の患者に、第1の投薬計画を用いてイブプロフェンを含む静脈内医薬組成物を投与することを含み、ここで、第1の投薬計画によって、重篤な病気の患者において第1の薬物動態プロフィールが作られ、この第1の薬物動態プロフィールは、重篤ではない病気の患者に対してイブプロフェンの第2の投薬計画を用いて静脈内医薬組成物を投与することによって作られる第2の薬物動態プロフィールとほぼ同じであり、これによって、重篤な病気の患者の上述の少なくとも1つの状態が治療される、疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態を治療することが必要な重篤な病気の患者において、これらの状態を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年7月31日に出願された米国仮特許出願第61/230,324号の優先権を主張し、この内容は、本明細書に参照により組み込まれる。
有効量の2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸を含む静脈内医薬組成物を投与することによって重篤な病気の患者を治療する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸は、国際一般名(International Nonproprietary Name)はイブプロフェンであり、分子量が206.28であり、以下の化学構造を有する、よく知られている抗炎症薬である。
【化1】

【0003】
(Merck Index 第12版、n4925、839ページ)。1960年代に最初に特許権が取得され、現在、イブプロフェンは、一般的に、疼痛、炎症、発熱を治療するものとしてMotrin(登録商標)、Advil(登録商標)、Nuprin(登録商標)の商品名で上市されている。米国食品医薬品局は、近年、Caldolor(登録商標)の商品名で上市される予定である、静脈内投与用の新規イブプロフェン製剤を承認した。
【0004】
イブプロフェンは、(R)−イブプロフェンおよび(S)−イブプロフェンという2種類のエナンチオマーのラセミ混合物((RS)−イブプロフェン)として簡単に入手可能である。(S)エナンチオマーは、生体活性な形態であるが、(R)エナンチオマーは生体内で活性な(S)体に変換されるため、ほとんどの調製物は、ラセミ混合物を含んでいる。単純化するために、以下、用語「イブプロフェン」は、(R)エナンチオマー、(S)エナンチオマー、またはラセミ体のいずれかを示すのに用いられる。
【0005】
イブプロフェンは、アスピリンやアセトアミノフェンのような他の鎮痛薬と比べて多くの利点を有しているが、水にはきわめて溶解しにくい。したがって、特定の投薬形態のイブプロフェン、特に、経口または注射可能な液体形態のイブプロフェンは、開発が困難である。何件かの米国特許が、この問題に取り組んでいる。
【0006】
例えば、米国特許第4,309,421号は、非経口投与に適した、イブプロフェンとリン脂質の水溶性複合体について記載しているようである。米国特許第4,859,704号および第4,861,797号は、イブプロフェン液体製剤を調製するためのイブプロフェンアルカリ金属塩の合成について記載しているようである。
【0007】
他の米国特許は、塩基性アミノ酸を活性医薬成分として用いてイブプロフェン塩を調製し、次いで、この塩を可溶化して液体投薬形態を製造することによって、上述の問題に取り組んでいるようである。
【0008】
例えば、米国特許第5,200,558号は、アルギニンを含み、注射可能な溶液を含め、種々の投薬形態である、Lアミノ酸およびDアミノ酸の塩としてのS(+)イブプロフェンの鎮痛効果が高いことについて記載しているようである。米国特許第4,279,926号は、疼痛をやわらげ、炎症状態を治療するためのプロピオン酸塩基性アミノ酸塩の使用について記載しているようである。同様に、米国特許第5,463,117号は、塩基性アミノ酸を用いたイブプロフェン塩の調製について記載しているようである。最後に、米国特許第6,005,005号は、イブプロフェンおよびアルギニンを含む経口用途の液体組成物について記載しているようである。
【0009】
中でも、米国特許第6,727,286 B2号は、アルギニンおよびイブプロフェンの水溶液を含み、アルギニンのイブプロフェンに対するモル比が1:1より小さい医薬組成物、ならびにこれを製造する方法について記載している。この特許は、アルギニンおよびイブプロフェンの水溶液を含み、アルギニンのイブプロフェンに対するモル比が1:1より小さい医薬組成物を投与することを含む、疼痛、炎症、発熱および/またはインブプロフェンによって緩和される他の状態から選ばれる状態を治療する方法も提供している。米国特許第6,727,286 B2号の全内容は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0010】
米国食品医薬品局は、近年、Cumberland Pharmaceuticals,Inc.からCaldolor(登録商標)の商品名で上市される予定である、静脈内投与用の新規イブプロフェン製剤を承認した。Caldolor(登録商標)は、活性成分としてイブプロフェンを含んでいる。Caldolor(登録商標)に関するラベルに示されているように、「米国薬局方の注射用水の溶液には、1mLあたり、100mgのイブプロフェンが含まれている。また、この製品は、アルギニン:イブプロフェンのモル比0.92:1で、78mg/mL アルギニンも含んでいる。この溶液のpHは、約7.4である。」Caldolor(登録商標)は、滅菌されており、静脈内投与のみを対象としている。
【0011】
Caldolor(登録商標)は、抗炎症活性、鎮痛活性、解熱活性を有している。このように、Caldolor(登録商標)は、成人では、軽度から中程度の疼痛の管理と対象としており、オピオイド鎮痛薬の添加物としては中程度から重度の疼痛の管理を対象としている。疼痛を治療することが必要な場合、400mg〜800mgのCaldolor(登録商標)を、6時間ごとに静脈投与する。また、Caldolor(登録商標)は、成人の解熱も対象としている。発熱を治療することが必要な場合、400mgのCaldolor(登録商標)を静脈投与した後、400mgを4〜6時間ごと、または100〜200mgを4時間ごとに静脈投与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,309,421号
【特許文献2】米国特許第4,859,704号
【特許文献3】米国特許第4,861,797号
【特許文献4】米国特許第5,200,558号
【特許文献5】米国特許第4,279,926号
【特許文献6】米国特許第5,463,117号
【特許文献7】米国特許第6,005,005号
【特許文献8】米国特許第6,727,286 B2号
【発明の概要】
【0013】
疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態を治療することが必要な重篤な病気の患者において、その少なくとも1つの状態を治療する方法が提供される。この方法は、重篤な病気の患者に、第1の投薬計画を用いてイブプロフェンを含む静脈内医薬組成物を投与することを含み、ここで、第1の投薬計画によって、重篤な病気の患者において第1の薬物動態プロフィールが作られ、この第1の薬物動態プロフィールは、重篤ではない病気の患者に対してイブプロフェンの第2の投薬計画を用いて静脈内医薬組成物を投与することによって作られる第2の薬物動態プロフィールとほぼ同じであり、これによって、重篤な病気の患者の上述の少なくとも1つの状態が治療される。
【0014】
ある実施形態では、第1の投薬計画は、第2の投薬計画で投与されるイブプロフェンの用量よりも多い、少なくとも1つの用量でイブプロフェンを投与することを含む。ある実施形態では、第1の投薬計画は、第2の投薬計画で使用される投薬間隔よりも短い投薬間隔を含む。ある実施形態では、重篤な病気の患者に対して第1の投薬計画でイブプロフェンを投与することによって作られる第1の薬物動態プロフィールは、重篤ではない病気の患者に対して第2の投薬計画でイブプロフェンを投与することによって作られる第2の薬物動態プロフィールのある一定期間にわたる薬物血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)とほぼ同じAUCを含む。
【0015】
ある実施形態では、第1の投薬計画は、重篤ではない病気の患者に対して第2の投薬計画で投与される用量よりも多い用量のイブプロフェンを投与することを含み、第1の投薬計画で投与される用量は、100〜1600mgである。ある実施形態では、第1の投薬計画で投与される用量は、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、800mg、1000mg、1200mg、1400mg、1600mg、2400mg、3200mgから選択される。ある実施形態では、第1の投薬計画で投与される用量は、100mg、200mg、400mg、800mgから選択される。
【0016】
ある実施形態では、第1の投薬計画は、第2の投薬計画で使用される投薬間隔よりも短い投薬間隔を含む。ある実施形態では、少なくとも1つの状態は、疼痛である。ある実施形態では、少なくとも1つの状態は、炎症である。ある実施形態では、少なくとも1つの状態は、発熱である。
【0017】
ある実施形態では、重篤な病気の患者は、昇圧剤および人工呼吸器を用いる治療から選ばれる、少なくとも1つの治療形態を受けている患者である。
【0018】
ある実施形態では、医薬組成物は、アルギニンおよびイブプロフェンの水溶液である。
【0019】
ある実施形態では、アルギニンのイブプロフェンに対するモル比は、1:1以下、0.99:1以下、0.98:1以下、0.97:1以下、0.96:1以下、0.95:1以下、0.94:1以下、0.93:1以下、0.92:1以下、0.91:1以下、0.90:1以下、0.60:1以下から選択される。ある実施形態では、医薬組成物は、Caldolor(登録商標)である。
【0020】
ある実施形態では、重篤な病気の患者に対して第1の投薬計画で投与すると、疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態が、重篤ではない病気の患者に第2の投与計画で投与して達成される疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態の低減とほぼ同程度まで低減する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、重篤な病気の患者と、重篤ではない病気の患者において、100mg IVibを投与した後の平均イブプロフェン血漿濃度を示す(0〜4時間後)。
【図2】図2は、重篤な病気の患者と、重篤ではない病気の患者において、200mg IVibを投与した後の平均イブプロフェン血漿濃度を示す(0〜4時間後)。
【図3】図3は、重篤な病気の患者と、重篤ではない病気の患者において、400mg IVibを投与した後の平均イブプロフェン血漿濃度を示す(0〜4時間後)。
【図4】図4は、400mg IVIb 対 プラセボの階層による体温の時間経過を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態を治療することが必要な重篤な病気の患者において、これらの状態を治療する方法が提供される。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」または「治療」は、イブプロフェンを投与することによって低減するか、やわらげることが可能な、すでに病気の兆候があらわれている個体、過去に病気の兆候があった個体、および/またはある疾患または状態の少なくとも1つの症状があらわれるリスクを有する個体にイブプロフェンを投与することを指す。このような疾患および状態の例としては、疼痛、炎症、発熱が挙げられる。
【0024】
ある実施形態では、「重篤な病気」の患者は、昇圧剤のサポートおよび人工呼吸器のうち少なくとも1つの治療形態を受けている患者である。本明細書で使用される場合、「昇圧剤のサポート」を受けている患者とは、十分な血圧を維持することができず、そのため、患者の血圧を上げるために昇圧剤で治療される患者を指す。昇圧剤のサポートをする医薬の例としては、ノルエピネフリン(例えば、Levophed(登録商標)の商品名で上市されている)が挙げられる。
【0025】
本明細書に記載される特定の方法は、重篤な病気の患者に対し、イブプロフェンを含む静脈内医薬組成物を投与することを含む。イブプロフェンの静脈内医薬組成物は、ボーラス法を含め、任意の静脈内法を介して患者に投与するのに適した任意の製剤を含む。ある実施形態では、点滴速度は、用量が約30分間で投与されるような速度である。ある実施形態では、点滴速度は、用量が約30分未満の間投与されるような速度である。ある実施形態では、点滴速度は、用量が約30分間より長い時間をかけて投与されるような速度である。
【0026】
本明細書に記載される治療方法の代替的な実施形態では、イブプロフェンを含む医薬製剤が、注射方法を介して患者に投与される。このような実施形態では、イブプロフェンの医薬製剤は、注射方法を介して患者に投与するのに適した製剤である。適切な注射方法としては、静脈内注射に加え、動脈内注射、筋肉内注射、経皮注射、皮下注射が挙げられる。
【0027】
静脈内投与に適したキャリアとしては、生理食塩水またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのような可溶化剤を含む溶液、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
上述の製剤は、水系賦形剤を含んでいてもよい。水系賦形剤としては、限定されないが、一例として、塩化ナトリウム注射液、Ringers注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロースおよび乳酸を含むRingers注射液が挙げられる。非水系の非経口賦形剤としては、限定されないが、一例として、植物由来の油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ピーナッツ油を混合した油が挙げられる。複数回の用量が容器に封入された非経口調製物には、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p−ヒドロキシ安息香酸のメチルエステルおよびプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムを含む抗菌薬を静菌性または静真菌性を有する濃度で加えなければならない。等張性剤としては、限定されないが、一例として、塩化ナトリウム、デキストロースが挙げられる。緩衝液としては、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液が挙げられる。酸化防止剤としては、硫酸水素ナトリウムが挙げられる。局所麻酔薬としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁剤および分散剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、Polysorbate 80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの捕捉剤またはキレート化剤としては、EDTAが挙げられる。医薬キャリアとしては、限定されないが、一例として、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水混和性の賦形剤、pH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸も挙げられる。
【0029】
典型的には、治療に有効な調剤は、少なくとも約0.1%(w/w)〜約90%(w/w)まで、またはそれ以上、例えば、1%(w/w)より多い濃度のイブプロフェンを含むように配合される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「投薬計画」は、イブプロフェンを含む静脈内医薬製剤を患者に投与するのに用いられるプロトコルを指す。ある実施形態では、投薬計画は、投与量および投薬間隔を含む。ある実施形態では、投薬計画は、投薬期間をさらに含む。本明細書で使用される場合、「投薬期間」は、ある用量が投与される時間を指す。例えば、400mgのイブプロフェンを含む所定容積の医薬組成物が、投薬期間30分で投与され、ある用量の投与が6時間ごとに開始される場合、投薬計画は、400mg、6時間ごと、30分間投与されるというものである。ある実施形態では、投薬期間は、400mg、6時間ごとと簡単に定義される。
【0031】
本明細書に記載される実施形態では、重篤な病気の患者のための投薬計画は、重篤な病気の患者において第1の薬物動態プロフィールが作られ、この第1の薬物動態プロフィールが、重篤ではない病気の患者に対してイブプロフェンの第2の投薬計画を用いて投与することによって作られる第2の薬物動態プロフィールとほぼ同じであるような投薬計画であると定義される。本明細書で使用される場合、2種類の薬物動態プロフィールは、少なくとも1つのパラメーターがこの2種類のプロフィールでほぼ同じであると定義される場合に、「ほぼ同じ」である。このようなパラメーターの非限定的な例としては、薬物血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)、ある用量を投与した後に到達する最大血漿濃度(Cmax)が挙げられる。
【0032】
ある実施形態では、2種類の薬物動態パラメーターは、低い方の値が、高い方の値の70%より大きい場合、75%より大きい場合、80%より大きい場合、85%より大きい場合、90%より大きい場合、95%より大きい場合、96%より大きい場合、97%より大きい場合、98%より大きい場合、または99%より大きい場合、ほぼ同じである。
【0033】
第1の投薬計画を受けている患者群において平均薬物動態プロフィールを決定し、第2の投薬計画を受けている患者群において平均薬物動態プロフィールを決定し、次いで、これらの2種類の投薬計画群を比較することによって、2種類の投薬計画の薬物動態プロフィールを比較する。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲で使用される成分、反応条件などの量をあらわすすべての数は、すべての場合に用語「約」で修正されているものと理解されるべきである。したがって、矛盾することが示されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で記載されている数値パラメーターは、本発明によって得られると考えられる望ましい性質によってさまざまに変わるであろう概算値である。最低限でも、特許請求の範囲に対して均等論の原則を適用することを限定するつもりはなく、それぞれの数値パラメーターは、有効桁数および通常の丸め方の観点で解釈すべきである。
【0035】
以下の実施例は、上の発見に関する特定の実施形態をあらわし、本発明の範囲全体を代表するものではない。
【実施例】
【0036】
病気の重篤度について分類しておいた入院患者に、本試験を行った(重篤な病気 対 重篤ではない病気)。重篤な病気の患者は、昇圧剤のサポートおよび/または人工呼吸器を施されていると定義した。患者には、所定の用量で静脈内イブプロフェン(Caldolor(登録商標))を投与した。
【0037】
重篤ではない病気の入院患者および重篤な病気の入院患者における発熱の治療に対する静脈内イブプロフェン(IVIb)の効能を評価するデータ群の分析から、薬物動態、解熱に関する治療効果の差がわかった。IVIbのすべての用量について、CmaxおよびAUCは、重篤ではない病気の患者と比較すると、重篤な病気の患者で有意に低下しており、一方、薬物動態は、両患者群において最初の状態を維持していた。表1は、この試験を行った患者から、IVIbの投薬濃度と各階層によって決定された薬物動態パラメーターのまとめを示している。
【0038】
表1 IVIbの投薬濃度と各階層による、薬物動態パラメーターのまとめ
【表1】

【0039】
図1、図2、図3は、各階層による治療群について、Cmaxをグラフによってあらわしたものである。
【0040】
この試験で示される薬物動態の差の臨床的関連性をよりよく理解するために、重篤ではない病気の患者および重篤な病気の患者において、発熱の治療に関するIVIbの効能を調べた。図4は、重篤ではない病気の入院患者および重篤な病気の入院患者において、体温に対するプラセボの効果と、用量400mgのIVIbの効果を比較する。これらのデータは、病気が重篤なものだと、治療効果を制限してしまうようなIVIbのCmaxおよびAUCの低下がみられることを示唆している。
【0041】
400mgは、解熱効果を示すような有効な用量として提案されているが、この低い用量で熱を十分に下げられない場合、発熱の治療のために用量を800mgまで上げるように調節することが妥当であろう。表2は、重篤な病気の各階層と、重篤ではない病気の各階層について、AUC0−4およびCmax0−4の薬物動態パラメーターの差の割合(%)をあらわす。
【0042】
表2 用量400mg IVIbにおける薬物動態パラメーターの差
【表2】

【0043】
重篤な病気の患者の薬物動態パラメーターAUCおよびCmaxの値は、重篤ではない病気の患者の薬物動態パラメーターと比較して、約50%であった。この差は、治療する患者の病気の重篤度によっては、発熱を治療するために用量を400mgから800mgまで上げる必要があることを示唆している。
【0044】
以前の試験では、薬物動態サンプルが得られず、Caldolor(登録商標)の用量を、6時間ごと、イブプロフェン800mg IVまで上げた。その投薬計画では、48時間の投薬期間の間ずっと、顕著で持続的に解熱されていた。この試験において、患者の大部分は、この実施例で報告した試験の定義によれば重篤な病気であると考えられるため、以前の試験の結果は、必要な場合に800mgまで用量を上げることを支持している。
【0045】
本明細書に記載される方法および適用に対し、他の適切な修正および応用は、適切であり、本発明の範囲またはその任意の実施形態の範囲から逸脱することなくなされるであろうことは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。本発明を特定の実施形態と組み合わせて記載してきたが、記載された特定の形態に本発明を限定することを意図しておらず、むしろこれとは対照的に、以下の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲の中に含まれる、このような代替例、修正、均等物を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態を治療することが必要な重篤な病気の患者においてその少なくとも1つの状態を治療する方法であって、重篤な病気の患者に、第1の投薬計画を用いてイブプロフェンを含む静脈内医薬組成物を投与することを含み、ここで、第1の投薬計画によって、重篤な病気の患者において第1の薬物動態プロフィールが作られ、この第1の薬物動態プロフィールは、重篤ではない病気の患者に対してイブプロフェンの第2の投薬計画を用いて静脈内医薬組成物を投与することによって作られる第2の薬物動態プロフィールとほぼ同じであり、これによって、重篤な病気の患者の上述の少なくとも1つの状態が治療される方法。
【請求項2】
前記第1の投薬計画が、前記第2の投薬計画で投与されるイブプロフェンの用量よりも多い、少なくとも1つの用量でイブプロフェンを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の投薬計画が、前記第2の投薬計画で使用される投薬間隔よりも短い投薬間隔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
重篤な病気の患者に対して第1の投薬計画でイブプロフェンを投与することによって作られる第1の薬物動態プロフィールは、重篤ではない病気の患者に対して第2の投薬計画でイブプロフェンを投与することによって作られる第2の薬物動態プロフィールのある一定期間にわたる薬物血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)とほぼ同じAUCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の投薬計画が、重篤ではない病気の患者に対して前記第2の投薬計画で投与される用量よりも多い用量のイブプロフェンを投与することを含み、前記第1の投薬計画で投与される用量が100〜1600mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の投薬計画で投与されるイブプロフェンの用量が、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、800mg、1000mg、1200mg、1400mg、1600mg、2400mg、3200mgから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の投薬計画で投与されるイブプロフェンの用量が、100mg、200mg、400mg、800mgから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の投薬計画が、前記第2の投薬計画で使用される投薬間隔よりも短い投薬間隔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の投薬計画の投薬間隔が、4時間よりも長い投薬間隔、6時間よりも長い投薬間隔から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの状態が疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの状態が炎症である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの状態が発熱である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記重篤な病気の患者が、昇圧剤のサポートおよび人工呼吸器のうち少なくとも1つを受けている患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬組成物が、アルギニンおよびイブプロフェンの水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アルギニンのイブプロフェンに対するモル比が、1:1以下、0.99:1以下、0.98:1以下、0.97:1以下、0.96:1以下、0.95:1以下、0.94:1以下、0.93:1以下、0.92:1以下、0.91:1以下、0.90:1以下、0.60:1以下から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
重篤な病気の患者に対して前記第1の投薬計画で投与すると、疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態が、重篤ではない病気の患者に前記第2の投与計画で投与して達成される疼痛、炎症、発熱から選ばれる少なくとも1つの状態の低減とほぼ同程度まで低減する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500964(P2013−500964A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522793(P2012−522793)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059023
【国際公開番号】WO2011/014208
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(504154171)カンバーランド ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】