説明

静電型塗油装置

【課題】離型油や食品油などの油系液体を短時間で搬送される被塗油体の表面に向けて噴霧して効率よく塗油する。
【解決手段】静電型塗油装置1は、被塗油体3に向けて油系液体を吐出する吐出流路群7を備えた導電材料からなるシム25と、シムに被塗油体とは逆極性の電圧を印加する電極45と、を備えたノズル5と、吐出流路群に油系液体を供給すべく連通する液体供給口29と、が設けられている。さらに、制御装置51により、液体供給路に供給する油系液体の供給量が制御されると共に、電極45に予め吐出流路群から油系液体を噴射しない一定の初期電圧PVをかけた状態にしておいて、実際に吐出流路群から油系液体を被塗油体に向けて噴射するときは、さらに油系液体を噴射せしめる一定の噴射電圧をかけるべく制御される。その結果、初期電圧から噴射電圧へ上昇するまでの時間が大幅に短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電型塗油装置に関し、特に、油系液体を静電気の作用下で被塗油体の表面に向けて噴霧して瞬時に短時間で塗油するための静電型塗油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4を参照するに、従来、静電型塗油装置101においては、鉄鋼やアルミニウムなどの金属、あるいはその他の材質の製品などの被塗油体103の表面に潤滑油、離型油等、あるいは食品の油などの油系液体(以下、単に「液体」という)が塗油される際に、例えば、上記の被塗油体103はコンベア装置などのワーク搬送装置により搬送され、前記ワーク搬送装置の途中に静電型塗油装置101が設けられ、この静電型塗油装置101のノズル105から液体が静電気の作用下で被塗油体103の表面に向けて噴霧されて瞬時に被塗油体103に塗油される。なお、前記ノズル105はブレード型ノズルである。
【0003】
上記の静電型塗油装置101には、被塗油体103に向けて吐出すべき液体の吐出流路群107が複数個、備えられたノズル105と、前記複数の各吐出流路群107に対応して液体を供給すべく連通する液体供給管路109と、この液体供給管路109を開閉すべく設けた電磁弁111と、から塗油用液圧回路が構成されている。
【0004】
さらに、上記の塗油用液圧回路においては、液体が液体モータ113により回転駆動される液体ポンプ115により液体タンク117から液体供給管路109へ供給されるように構成される。前記電磁弁111と液体タンク117とは管路116で接続されており、この管路116の途中には電磁弁118が設けられている。
【0005】
さらに、従来の静電型塗油装置101においては、一対のノズルブレード119とノズルブレード121との間に形成されたスリット123内に多数枚のシム125が電極として配置されたノズルヘッド127が備えられている。ノズルブレード119,121は電気絶縁材料製であり、全長が被塗油体103の長さより大きい長さで設けられている。シム125は厚さが例えば0.5mm程度のステンレス鋼シートなどからなる導電材料製であり、長さが例えば100〜150mmほどである。したがって、多数枚のシム125が横方向に並べられ、その全長がノズルブレード119,121の全長と同じ長さになるように配列されている。
【0006】
また、シム125の表面とノズルブレード119の隣接表面との間には、被塗油体103に向けて吐出すべき液体の吐出流路群107が形成されている。この吐出流路群107は、例えばシム125の片面に溝深さCでエッチング加工されている。なお、上記の吐出流路群107には液体を供給するための液体供給口129が連通されている。
【0007】
図5(A),(B),(C)を併せて参照するに、例えばシム125としては、図5(B)において左側の表面には油だめ131A,131Bと吐出流路群107A,107Bとが例えば0.25mm程度の深さCでエッチング加工されており、この吐出流路群107A,107Bに連なる油だめ131A,131Bに液体を供給する液体供給口129が連通されている。
【0008】
油だめ131A,131Bは静電型塗油装置101のノズルブレード119における一対の液体供給口129に連通させ、これら液体供給口129は図4に示されているように電磁弁111並びに液体供給管路109を介して液体ポンプ115に接続される。
【0009】
なお、吐出流路群107A,107Bは細管抵抗として作用するものであり、その抵抗値は流路の長さに比例し、流量は長さの二乗に反比例する。吐出流路群107A,107Bから吐出される流体の塗油幅は、それぞれWA、WBである。したがって、各吐出流路群107A,107Bの上流側の電磁弁111を開閉することにより、シム125の全体としての塗油幅を、被塗油体103に応じてWA,WB,WA+WBと変化させることが可能である。
【0010】
上記のシム125における油だめ131A,131Bの両側に形成された比較的大きな円形開口部133は、塗油装置全体の支持ブラケット等に対する固定ボルトを通すものである。また、油だめ131A,131Bの隣接領域に配置された比較的小さい円形開口部135は、シム125と隣接するノズルブレード119,121との間の液密性を維持しつつ装置を組立てるための止めねじを通すものである。
【0011】
上記のように形成された吐出流路群107A,107Bの最終的な流路の吐出口137は、図5(C)に示されているように四角形状をなしており、例えば流路幅0.75mm×深さ0.25mmであり、吐出流路群107A,107Bの吐出口137のピッチは例えば3.0mmである。
【0012】
再び図4を参照するに、ノズル105のノズルヘッド127には、シム125には負電位の高電圧を印加するための電極としての電源コネクタ139を構成するコネクタピン141が接続されており、このコネクタピン141はノズルブレード121の外側に突出している。コネクタピン141はノズル105に高電圧の電流を供給するための電圧昇圧器143に接続されており、電圧昇圧器143は液体を噴射する際にシム125の印加電圧が制御されるように、電源145に接続された制御装置147に接続されている。
【0013】
また、被塗油体103は接地されており、正電位を有する。そのため、負電位の直流高電圧(−60〜−70kV前後)がコネクタピン141を介してシム125に印加されると、液体供給口129から供給される液体は吐出流路群107A,107B内を通過する間に瞬時に帯電するので、同一極性の電荷が互いに反発することとなる。この結果、液体が均一粒径の微粒子として霧化され、ノズルヘッド127の先端から被塗油体103に向けて均等に噴霧される。被塗油体103の上における液体の拡散幅Aは液体の噴射量に応じて均等に拡がることとなる。
【0014】
また、上記の液体モータ113、電磁弁111及び電磁弁118はそれぞれ制御装置147により制御されるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0015】
液体タンク117内の液体は液体モータ113により回転駆動される液体ポンプ115により液体タンク117から液体供給管路109へ送られる。まず、制御装置147により電磁弁111を閉じた状態で電磁弁118を開かせ管路116を経て液体タンク117に戻されて循環される。
【0016】
ついで、制御装置147により電磁弁118を閉じた状態で電磁弁111を開かせ液体供給管路109内の液体が液体供給口129を経てノズル105の吐出流路群107の各吐出口137から被塗布体103の表面に向けて噴射される。
【特許文献1】特開2002−79144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、従来の静電型塗油装置101においては、ノズル105から油系液体を噴射せしめるときに、図6に示されているようにシム125の印加電圧が制御装置147により制御されて0(ゼロ)kVから噴射電圧JVとしての例えば−60kVの負電位の直流高電圧へ上昇される。すなわち、前記印加電圧が−60kVに達したときにノズル105から液体が噴射される。ところが、前記印加電圧が−60kVまで上昇するのに例えば200msec(0.2sec)かかっており、tsec間にノズル105から液体を噴射せしめた後に前記印加電圧を停止すると、前記印加電圧が−60kVから0(ゼロ)kVまで降下するのに例えば20secかかることになる。
【0018】
例えば、被塗油体103がコンベア装置により例えば30m/min以上の速度で搬送されると、被塗油体103が前記コンベア装置を1〜2secで通過することになるので、被塗油体103の表面にはノズル105から噴霧される液体が1〜2secという短時間のうちに塗油されることになる。
【0019】
しかし、実際には上記のtsecが2secのときは、上記の印加電圧がシム125にかかってから終了するまでの時間が合計で22.2sec(=0.2sec+2sec+20sec)かかることになる。つまり、上記のtsecを除く20.2secは、液体が被塗油体103に塗油されるとき以外の時間である。
【0020】
したがって、上記の被塗油体103がコンベア装置により断続的に次々と搬送される場合は、ノズル105の下方を通過する被塗油体103の位置に合わせてノズル105から断続的に液体が噴霧されるが、上記の理由から20.2sec以上の間隔をおいて次の被塗油体103をノズル105の下方へ搬送する必要があるので、被塗油体103の搬送速度を遅くしたり、コンベア装置の上に載置される被塗油体103の間隔を大きくしたりしなければならず、塗油効率が低下するので生産性を上げることが難しいという問題点があった。
【0021】
また、前記印加電圧が−60kVから0(ゼロ)kVまで降下する20secの間は、ノズル105から少しの液体が噴射し、この液体がヒュームとなって周囲の環境を悪化してしまうという問題点があった。
【0022】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この請求項1による発明の静電型塗油装置は、被塗油体に向けて油系液体を吐出する吐出流路群を備えた導電材料からなるシムと、このシムに前記被塗油体とは逆極性の電圧を印加する電極と、を備えたノズルと、前記吐出流路群に前記油系液体を供給すべく連通する液体供給口と、この液体供給口に供給する油系液体の供給量を制御すると共に、前記電極に予め前記吐出流路群から油系液体を噴射しない一定の初期電圧をかけた状態にしておいて、前記吐出流路群から油系液体を噴射するときにさらに前記油系液体を噴射せしめる一定の噴射電圧をかけるべく制御する制御装置と、を設けてなることを特徴とするものである。
【0024】
また、この請求項2による発明の静電型塗油装置は、前記静電型塗油装置において、前記制御装置が、前記吐出流路群から油系液体の噴射を停止せしめるときに前記印加電圧を前記噴射電圧から初期電圧まで降下すべく制御することが好ましい。
【0025】
また、この請求項3による発明の静電型塗油装置は、前記静電型塗油装置において、前記初期電圧が、ほぼ−40kVであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この請求項1による発明によれば、電極には予め吐出流路群から油系液体を噴射しない一定の初期電圧をかけた状態にしておくので、実際に前記吐出流路群から油系液体を被塗油体に向けて噴射するときに、さらに一定の噴射電圧をかけると、前記初期電圧から噴射電圧へ上昇するまでの時間が、従来のように0(ゼロ)電圧から噴射電圧まで上昇させる場合に比べて大幅に短縮することができる。したがって、塗油効率が向上し、生産性を上げることができる。また、塗油量も少なくすることができる。
【0027】
さらに、一定の噴射電圧から前記初期電圧へ降下するまでの時間も、上記の上昇するときとほぼ同様の時間であり、従来に比べて大幅に短縮することができるので、塗油効率が向上し、生産性を上げることができ、塗油量も少なくできる。また、従来のように油系液体がヒュームとなって噴射することをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
図2を参照するに、この実施の形態の静電型塗油装置1においては、鉄鋼やアルミニウムなどの金属、あるいはその他の材質の製品などの被塗油体3の表面に潤滑油、離型油等、あるいは食品の油などの油系液体(以下、単に「液体」という)が塗油される際に、例えば、上記の被塗油体3は図示しないコンベア装置などのワーク搬送装置により搬送され、前記ワーク搬送装置の途中に静電型塗油装置1が設けられ、この静電型塗油装置1のノズル5から液体が静電気の作用下で被塗油体3の表面に向けて噴霧されて瞬時に被塗油体3に塗油される。なお、前記ノズル5はブレード型ノズルである。
【0030】
上記の静電型塗油装置1には、被塗油体3に向けて吐出すべき液体の吐出流路群7が複数個、備えられたノズル5と、前記複数の各吐出流路群7に対応して液体を供給すべく連通する液体供給管路9と、この液体供給管路9を開閉すべく設けた開閉バルブとしての例えば電磁弁11と、から塗油用液圧回路が構成されている。
【0031】
さらに、上記の塗油用液圧回路においては、液体が液体モータ13により回転駆動される液体ポンプ15により液体タンク17から液体供給管路9へ供給されるように構成される。前記電磁弁11と液体タンク17とは管路10で接続されており、この管路10の途中には電磁弁12が設けられている。
【0032】
さらに、上記の静電型塗油装置1においては、一対のノズルブレード19とノズルブレード21との間に形成されたスリット23内に多数枚のシム25が電極として配置されたノズルヘッド27が備えられている。ノズルブレード19,21は電気絶縁材料製であり、全長が被塗油体3の長さより大きい長さで設けられている。シム25は厚さが例えば0.7mm程度のステンレス鋼シートなどからなる導電材料製であり、この実施の形態では長さが例えば100〜150mmほどである。したがって、多数枚のシム25が横方向に並べられ、その全長がノズルブレード19,21の全長と同じ長さになるように配列されている。
【0033】
また、シム25の表面とノズルブレード19,21の隣接表面との間には、被塗油体3に向けて吐出すべき液体の吐出流路群7が形成されている。この吐出流路群7は、例えばシム25の片面(この実施の形態ではシム25の図2において左側面)に溝深さCでエッチング加工されている。なお、上記の吐出流路群7には液体を供給するための液体供給口29が連通されている。
【0034】
図3(A),(B),(C)を併せて参照するに、例えばシム25としては、図3(B)において左側の表面には油だめ31A,31Bと吐出流路群7A,7Bとが深さCでエッチング加工されており、この吐出流路群7A,7Bは油だめ31A,31Bから延在するものであり、下流側に向けた流路溝が配置されているものである。最下流の両端に位置する流路溝の間隔は液体の塗油幅WA,WBに対応するものであり、塗油幅WA,WBはそれぞれ、例えば50mm程度とすることができる。
【0035】
油だめ31A,31Bは塗油装置のノズルブレード19における各液体供給口29に連通させ、これら液体供給口29はそれぞれ図2に示されているように電磁弁11並びに液体供給管路9を介して液体ポンプ15に接続されている。
【0036】
なお、吐出流路群7A,7Bは細管抵抗として作用するものであり、その抵抗値は流路の長さに比例し、流量は長さの二乗に反比例する。吐出流路群7A,7Bから吐出される流体の塗油幅は、それぞれWA、WBである。したがって、各吐出流路群7A,7Bの上流側の電磁弁11を開閉することにより、シム25の全体としての塗油幅を、被塗油体3に応じてWA,WB,WA+WBと変化させることが可能である。
【0037】
上記のシム25における油だめ31A,31Bの両側に形成された比較的大きな円形開口部33は、塗油装置全体の支持ブラケット等に対する固定ボルトを通すものである。また、油だめ31A,31Bの隣接領域に配置された比較的小さい円形開口部35は、シム25と隣接するノズルブレード19,21との間の液密性を維持しつつ装置を組立てるための止めねじを通すものである。
【0038】
また、この実施の形態では、塗油幅WA,WBにはそれぞれ1本の流路溝が吐出流路群7A,7Bとして配置されており、上記のように形成された吐出流路群7A,7Bの最終的な流路の吐出口37は、図3(C)に示されているように四角形状をなしており、液体が各吐出流路群7A,7B内を流れる際に吐出流路群7A,7Bの壁面と液体の粘性とから生じる抵抗力を最小限にすべく拡張して構成している。従来の吐出口に比較してはるかに大きく拡張されており、この実施の形態の各吐出口37の一例としては、多数の流路ではなく1つの流路となっており、例えば、流路幅48.0mm×深さ0.5mmであり、吐出流路群7A,7Bの吐出口37のピッチは50.0mmである。
【0039】
また、上記の吐出流路群7A,7Bの間の境界の肉厚部39には各吐出口37より図3(A)において下方へ例えば0.6mmほど突出する突出部41が設けられている。この突出部41は、塗油される被塗油体3の幅に合わせて、例えば吐出流路群7Aを使用し、且つ吐出流路群7Bを使用しない場合に、吐出流路群7Aの吐出口37から噴射される液体の液体ぎれを良くするためのものである。
【0040】
再び図2を参照するに、ノズル5のノズルヘッド27には、シム25に負電位の高電圧を印加するための電極としての例えば電源コネクタ43を構成するコネクタピン45が接続されており、このコネクタピン45はノズルブレード21(又は19)の側面から突出するように設けられている。コネクタピン45はノズル5に高電圧の電流を供給するための電圧昇圧器47に接続されており、電圧昇圧器47は液体を噴射する際にシム25の印加電圧が制御されるように、電源49に接続された制御装置51に接続されている。
【0041】
また、被塗油体3は例えばコンベア装置を介して接地されており、正電位を有する。そのため、負電位の直流高電圧(−60〜−100kVkV前後)がコネクタピン45を介してシム25に印加されると、液体供給口29から供給される液体は吐出流路群7A,7B内を通過する間に瞬時に帯電するので、同一極性の電荷が互いに反発することとなる。この結果、液体が均一粒径の微粒子として霧化され、ノズルヘッド27の先端から被塗油体3に向けて均等に噴霧される。被塗油体3の上における液体の拡散幅Aは液体の噴射量に応じて均等に拡がることとなる。
【0042】
また、上記の制御装置51は、コネクタピン45に予め上記の吐出流路群7A,7Bから液体を噴射しない一定の初期電圧PVをかけた状態にしておいて、前記吐出流路群7A,7Bから液体を噴射するときにさらに前記液体を噴射せしめる一定の噴射電圧JVをかけるべく制御するように構成されている。
【0043】
例えば、図1に示されているように、シム25には制御装置51により制御されて負電位の直流高電圧が予め0(ゼロ)kVから一定の初期電圧PVとしての例えば−40kVまで上昇せしめて、常時−40kVがかかっている状態にされる。なお、この−40kVの電圧ではノズル5から液体が噴射されない。
【0044】
さらに、ノズル5から液体を噴射せしめるときに、制御装置51により制御されてシム25の印加電圧が−40kVから一定の噴射電圧JVとしての例えば−60kVへ上昇する。この−60kVに達したときに液体がノズル5から噴射される。
【0045】
このとき、前記印加電圧が−40kVから−60kVまで上昇するのにかかる時間は僅か10msec(0.01sec)だけであり、ノズル5からtsec間に液体を噴射せしめた後に前記印加電圧を停止せしめると、前記印加電圧が−60kVから−40kVまで降下するのにかかる時間は僅か10msec(0.01sec)だけである。
【0046】
また、液体ポンプ15と液体供給口29との間の液体供給管路9には、この液体供給管路9と液体ポンプ15の流体圧力を一定に保つためのリリーフ弁53が介設されている。
【0047】
また、上記の液体モータ13、電磁弁11及び電磁弁12はそれぞれ制御装置51により制御されるように構成されている。
【0048】
次に、上記構成における作用を説明する。
【0049】
図2を参照するに、塗油すべき液体タンク17内の液体は液体モータ13により回転駆動される液体ポンプ15により液体タンク17から液体供給管路9へ送られる。まず、制御装置51により電磁弁11を閉じた状態で電磁弁12を開かせ管路10を経て液体タンク17に戻されて循環される。
【0050】
ついで、制御装置51により電磁弁12を閉じた状態で電磁弁11を開かせると、液体供給管路9内の液体が液体供給口29へ供給される。この液体供給口29から、液体がノズル5の複数個の各吐出流路群7A,7Bの最終的な流路の各吐出口37から被塗油体3の表面に向けて噴霧される。
【0051】
さらに、図2を参照して、ノズル5から液体が噴霧されるときの作用を詳しく説明すると、被塗油体3は接地されており、正電位を有する。そのため、負電位の直流高電圧(−60〜−100kV前後)がコネクタピン45を介してシム25に印加されると、制御装置51により電磁弁11をONせしめ、液体が液体供給管路9を経て液体供給口29へ供給され、この液体供給口29から供給される液体はシム25の吐出流路群7A,7B内を通過する間に瞬時に帯電するので、同一極性の電荷が互いに反発することとなる。この結果、液体が均一粒径の微粒子として霧化され、ノズルヘッド27の先端から被塗油体3に向けて均等に噴霧される。被塗油体3の上における液体の拡散幅Aは液体の噴射量に応じて均等に拡がることとなる。
【0052】
一方、制御装置51により電磁弁11をOFFせしめると、ノズル5の各吐出口37からの液体噴霧が停止して、液体供給管路9内の液体がリリーフ弁53を経て液体タンク17に戻っていく。
【0053】
このとき、例えば、被塗油体3がコンベア装置により例えば30m/min以上の速度で搬送されると、被塗油体3が前記コンベア装置を1〜2secで通過することになるので、被塗油体3の表面にはノズル5から噴霧される液体が1〜2secという短時間のうちに塗油されることになる。
【0054】
図1において、被塗油体3に液体を塗油する時間であるtsecが2secのときは、印加電圧がシム25にかかってから終了するまでの時間が、−40kVから−60kVまで上昇するのにかかる10msec(0.01sec)と、−60kVから−40kVまで降下するのにかかる10msec(0.01sec)と、を合わせて合計で2.02secかかることになる。
【0055】
したがって、上記の被塗油体3がコンベア装置により断続的に次々と搬送される場合は、ノズル5の下方を通過する被塗油体3の位置に合わせてノズル5から断続的に液体が噴霧される。このとき、液体が被塗油体3に噴霧されるtsecを除く時間は、僅かに0.02secであるので、従来のように被塗油体3の搬送速度を遅くしたり、コンベア装置の上に載置される被塗油体3の間隔を大きくしたりする必要がなく、コンベア装置の上に載置される被塗油体3の間隔を小さくして、且つ被塗油体3の搬送速度を上げても十分に追従して、ノズル5から断続的に液体を被塗油体3の位置に合わせて噴霧できる。
【0056】
その結果、塗油効率が向上し、生産性を上げることができる。また、塗油量も少なくすることができる。
【0057】
また、上記のように印加電圧が降下する時間は僅かに10msecであるので、従来のように液体がヒュームとなって噴出することがなくなり、周囲の環境を悪化することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施の形態の静電型塗油装置における時経的な印加電圧の状態を説明する時間−印加電圧のグラフである。
【図2】この発明の実施の形態の静電型塗油装置の概略的な断面図である。
【図3】(A)はこの発明の実施の形態のシムの一方の表面に吐出流路群が形成された正面図で、(B)はシムを油だめ並びに吐出流路群に沿った断面を拡大した状態の縦断面図で、(C)は(A)の矢視III−III線の部分的な断面図である。
【図4】従来の静電型塗油装置の概略的な断面図である。
【図5】(A)は従来のシムの一方の表面に吐出流路群が形成された正面図で、(B)はシムを油だめ並びに吐出流路群に沿った断面を拡大した状態の縦断面図で、(C)は(A)の矢視V−V線の部分的な断面図である。
【図6】従来の静電型塗油装置における時経的な印加電圧の状態を説明する時間−印加電圧のグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 静電型塗油装置
3 被塗油体
5 ノズル(ブレード型ノズル)
7、7A、7B 吐出流路群
9 液体供給管路
11 電磁弁
13 液体モータ
15 液体ポンプ
17 液体タンク
19、21 ノズルヘッド
23 スリット
25 シム
27 ノズルヘッド
29 液体供給口
31A、31B 油だめ
33、35 円形開口部
37 吐出口
39 肉厚部
41 突出部
43 電源コネクタ
45 コネクタピン(電極)
47 電圧昇圧装置
49 電源
51 制御装置
53 リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗油体に向けて油系液体を吐出する吐出流路群を備えた導電材料からなるシムと、このシムに前記被塗油体とは逆極性の電圧を印加する電極と、を備えたノズルと、前記吐出流路群に前記油系液体を供給すべく連通する液体供給口と、この液体供給口に供給する油系液体の供給量を制御すると共に、前記電極に予め前記吐出流路群から油系液体を噴射しない一定の初期電圧をかけた状態にしておいて、前記吐出流路群から油系液体を噴射するときにさらに前記油系液体を噴射せしめる一定の噴射電圧をかけるべく制御する制御装置と、を設けてなることを特徴とする静電型塗油装置。
【請求項2】
前記制御装置が、前記吐出流路群から油系液体の噴射を停止せしめるときに前記印加電圧を前記噴射電圧から初期電圧まで降下すべく制御することを特徴とする請求項1記載の静電型塗油装置。
【請求項3】
前記初期電圧が、ほぼ−40kVであることを特徴とする請求項1記載の静電型塗油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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