説明

静電塗装色替えシステム

【課題】色替えシステムを簡素化することによって製造コストを低減し、しかも、複数塗色の色替え効率を向上させること。
【解決手段】塗色に対応する複数の塗料弁12a〜12dと洗浄液を供給する洗浄弁14とが付設されたCCV18と、間欠滴下された水溶性塗料が充填されると共に、定量吐出ポンプ装置30側に設けられたタンク着脱部34に対して着脱自在に装着される一対の絶縁タンクA、Bと、一対の絶縁タンクA、Bをそれぞれ把持し周方向に沿って独立して回動可能に設けられた第1アーム部54a及び第2アーム部54bを有し、一対の絶縁タンクA、Bを、CCV18側とタンク着脱部34側との間で交互に往復移送する移送装置36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧が印加され塗装ガンから吐出される導電性塗料の色を切り替えることが可能な静電塗装色替えシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係る塗装装置として、塗装ガンが搭載された塗装ロボットが知られている。この塗装ロボットは、アーム部を有し、前記アーム部には、例えば、特許文献1に示されるように、被塗装物に対して塗布される塗料を切り替える色替えバルブユニットと、塗料が充填された塗料カートリッジとが取り付けられている。この場合、使用頻度が多い塗料は、複数の塗料供給装置に接続された色替えバルブユニットを介して塗装ガンに供給され、これに対して、使用頻度が少ない塗料は、塗料カートリッジから塗装ガンに供給されるように切り替えることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−267560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された塗装ロボットでは、色替えバルブユニットと複数の塗料供給装置とが複数の塗料供給チューブを介して接続され、多大なチューブ配管スペースが必要になると共に、チューブ配管作業が煩雑になる。
【0005】
そこで、特許文献1に開示された塗装ロボットにおいて、チューブ配管作業を不要とするために、仮に、使用頻度の多少にかかわらず塗料の供給をすべて塗料カートリッジとした場合、塗装ガン(塗装機)に対して装着される塗料カートリッジと、塗料充填装置に装着される塗料カートリッジとを同一専用色でそれぞれ別個に準備しなければならない。
【0006】
このため、各色専用の塗料カートリッジの個数が(塗色数×2)だけ必要になる(例えば、専用色が10色であれば、10×2=20個の塗料カートリッジが必要になる)と共に、使用済みの塗料カートリッジに対して新たに塗料を充填するための塗料充填装置や塗装機の周辺装置(周辺機器)等を新たに準備する必要があり、製造コストが高騰するという問題がある。
【0007】
さらに、導電性塗料を静電塗装に用いた場合、従来の色替えシステムでは、絶縁対策のために塗料供給経路が複雑となり、色替え時間の短縮や色替え塗料及び色替え洗浄時の廃液量の削減が希求されている。
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、色替えシステムを簡素化することによって製造コストを低減し、しかも、複数塗色の色替え効率を向上させることが可能な静電塗装色替えシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、高電圧が印加され塗装ガンから吐出される導電性塗料の塗色を替える静電塗装色替えシステムにおいて、塗色に対応する複数の塗料弁と洗浄液を供給する洗浄弁とが付設されたカラーチェンジバルブと、前記カラーチェンジバルブから間欠滴下された前記導電性塗料が充填されると共に、定量吐出ポンプ装置側に設けられたタンク着脱部に対して着脱自在に装着される一対の絶縁タンクと、前記一対の絶縁タンクをそれぞれ把持し周方向に沿って独立して回動可能に設けられた第1アーム部及び第2アーム部を有し、前記一対の絶縁タンクを、前記カラーチェンジバルブ側と前記タンク着脱部側との間で交互に往復移送する移送装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一対の絶縁タンクと、カラーチェンジバルブからなる一次側塗料供給系と、定量吐出ポンプ及びタンク着脱部を含む二次側塗料供給系との間で前記一対の絶縁タンクを交互に移送する移送装置とを備える簡素な構造とすることにより、設置スペースを抑制することができると共に、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、本発明は、前記移送装置が、前記絶縁タンクを把持するチャック部を有し、前記チャック部には、前記洗浄弁から供給された洗浄液で前記絶縁タンクの容器内を洗浄した後、前記絶縁タンクの天地を反転させる回転機構が設けられることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、洗浄弁から供給された洗浄液が間欠落下して絶縁タンクの容器内に充填され、所定量の洗浄液が容器内に貯留された後、回転機構(例えば、ロータリアクチュエータ)を介してアーム部のチャック部を180度回転させて、絶縁タンクの天地を反転させる。この結果、絶縁タンクの容器内を洗浄した廃液(使用済みの洗浄液)は、絶縁タンクの開口部から排出されて廃液貯留槽内に回収される。この結果、本発明は、色替え時における洗浄時間を大幅に短縮することができるため、洗浄時における廃液量を削減して、複数の色替え効率を向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明は、前記カラーチェンジバルブ側と前記タンク着脱部側との間が、切り離されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、カラーチェンジバルブ側と定量吐出ポンプ装置側との塗料供給配管が不要となるため、システム構造の簡素化を達成することができる。
【0015】
さらにまた、本発明は、前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、回動中心が鉛直上下方向に沿って同軸状に配置され、前記一対の絶縁タンクをそれぞれ保持したまま周方向に沿って交差可能に設けられることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、第1アーム部と第2アーム部とは、相互にクロスして回動動作するように設けられているため、第1アーム部のチャック部に把持された一方の空の絶縁タンクと、第2アーム部のチャック部に把持され色替え塗料が充填された他方の絶縁タンクとを、同時に又は略同時に回動動作させることができる。この結果、本発明では、色替え時間を短縮して迅速化を達成することができる。
【0017】
またさらに、本発明は、前記タンク着脱部に装着された一方の前記絶縁タンクから導出された前記導電性塗料によって静電塗装がなされているとき、色替えがなされた導電性塗料が前記カラーチェンジバルブから他方の前記絶縁タンクに対して充填されることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、塗装ガンから導電性塗料を塗布する静電塗装と、色替えがなされた塗料の充填とを同時又は略同時に遂行することができるため、色替え時間を短縮して迅速化を達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
色替えシステムを簡素化することによって製造コストを低減し、しかも、複数塗色の色替え効率を向上させることが可能な静電塗装色替えシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る静電塗装色替えシステムが適用された静電塗装システムの概略構成図である。
【図2】CCVを含む一次側塗料供給系と定量吐出ポンプを含む二次側塗料供給系とが切り離された状態を示す概略構成図である。
【図3】(a)は、移送装置の概略正面図、(b)は、前記移送装置を構成する第1アーム部と第2アーム部との回動動作を示す平面図である。
【図4】一次側供給系と二次側供給系との間で、移送装置によって絶縁タンクA及び絶縁タンクBが往復移送される状態を示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は、洗浄液によって絶縁タンクが洗浄される状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る静電塗装色替えシステムが適用された静電塗装システムの概略構成図、図2は、CCVを含む一次側塗料供給系と定量吐出ポンプを含む二次側塗料供給系とが切り離された状態を示す概略構成図、図3(a)は、移送装置の概略構成図、図3(b)は、前記移送装置を構成する第1アーム部と第2アーム部との回動動作を示す平面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、静電塗装システム10は、図示しない各色塗料供給源(一次側ペイント)に接続され、塗色数と同数の塗料弁12a〜12d及び洗浄弁14がマニホールドブロック16に対して直列に組み込まれたカラーチェンジバルブ18(以下、CCV18という)と、CCV18の塗料吐出口に接続され前記CCV18から供給される塗料の流量を計測する流量計20と、前記流量計20の下流側に設けられ、前記CCV18から供給された塗料を後記する絶縁タンクA又は絶縁タンクBに滴下して間欠供給する滴下部22と、鉛直上下方向において前記滴下部22から所定の絶縁距離だけ離間した位置に支持され、滴下部22から滴下された塗料を貯留することが可能な一対の絶縁タンクA及び絶縁タンクBとを備えて構成されている。なお、以下の記述において、一対の絶縁タンクA及び絶縁タンクBの両方を総称するときは、単に、「絶縁タンク」と記載する。
【0023】
さらに、静電塗装システム10は、旋回ベース24a上に配設され相互に直交するXYZの3軸に沿って変位可能に設けられたロボットアーム部24bを有し、図示しない被塗装物に対して塗料を吐出する塗装ガン26が設けられた塗装ロボット24と、前記ロボットアーム部24bに付設されピストン28の往復動作によって所定量の塗料を連続して供給する定量吐出ポンプ装置30と、絶縁タンクA及び絶縁タンクBをそれぞれ把持する一対の把持爪が設けられたチャック部32を有し、CCV18の滴下部22と塗装ロボット24のタンク着脱部34との間で、一対の絶縁タンクA及び絶縁タンクBを同時又は略同時に移送する移送装置36とを備える。
【0024】
前記ロボットアーム部24bには、絶縁タンクA又は絶縁タンクBが着脱自在に取り付けられるジョイント受け部を有するタンク着脱部34が設けられる。前記タンク着脱部34は、塗料供給通路37を介して定量吐出ポンプ装置30と接続され(図2参照)、絶縁タンク内に充填された塗料が定量吐出ポンプ装置30内に導入される。前記タンク着脱部34の下部側には、塗料が充填された絶縁タンクA又は絶縁タンクBが装着されたときに、重量バランスを平衡させる図示しないバランサが付設される。
【0025】
なお、滴下部22の下方側には、洗浄弁14から供給された洗浄液によって絶縁タンクA又は絶縁タンクBの容器内を洗浄した後、絶縁タンクA又は絶縁タンクBから排出された洗浄後の廃液を貯留する廃液貯留槽38が設けられている。
【0026】
CCV18は、小型且つ軽量のユニットで構成され、電磁弁からなる塗料弁12a〜12dのオン/オフ動作によって塗料の供給と供給停止とが切換可能に設けられ、設置スペースを削減することができる。また、電磁弁からなる洗浄弁14は、例えば、乾燥用エア、水又は洗浄液の供給を選択的に切換制御可能に設けられる。
【0027】
例えば、水性塗料又はメタリック塗料等の導電性塗料を用いて静電塗装を行った場合、塗装ガン26に対して高電圧が印加されると、導電性塗料を介して塗料供給経路にも高電圧が印加され、塗料供給経路を介してアース側に電流がリークされるおそれがある。そこで、本実施形態では、絶縁タンクA及び絶縁タンクBに対する塗料の充填方法として落下方式を採用し、CCV18から供給された塗料を滴下部22から間欠落下させ、落下中に間欠落下のインターバルによって空間を介在させることにより、電気絶縁状態にして電流のリークを回避している。
【0028】
本実施形態では、このような落下方式を採用することにより、以下の利点がある。
第1に、塗料の安定吐出を確保することができる。絶縁タンクは、塗料導入側に形成された開口部によって大気開放されているため、絶縁タンク内にエア溜まりが発生しない構造となっている。このため、エア抜き機構が不要となり、絶縁タンクに対する塗料の充填後、迅速に定量吐出ポンプ装置30から塗料の安定吐出が可能となる。また、塗料の空送りやエア噛みが防止されるため、被塗装物における塗膜の均一化を確保することができ、美粧仕上げに寄与することができる。
【0029】
第2に、耐電圧を確保することができる。例えば、絶縁タンクをPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂製材料で形成することにより、耐電圧に優れている。また、絶縁タンクの総容積量を、例えば、1リットルに設定し、通常の塗料供給量を最大500ccとすることにより、滴下部22から絶縁タンク内に充填された塗料液面までの鉛直上下方向における離間距離は、150mm以上からなる放電絶縁距離の2倍以上の離間距離を確保することができる。ちなみに、放電電圧は、10000Vで、放電距離が5mmとなる。
【0030】
第3に、塗装ロボット24を用いることがなく、作業者のハンドガン(図示せず)の操作による静電塗装の場合には、CCV18より供給された塗料を滴下部22から絶縁タンクに対して断続的に落下させることにより、高電圧のリークを防止することができる。これにより、作業者は、所望(任意)のタイミング(被塗装物に対する所望のショットタイミング)で塗装作業を遂行することができる。
【0031】
なお、絶縁タンクA及び絶縁タンク部の下部には、タンク着脱部34(ジョイント受け部)に対する装着又は抜脱を行うと共に、液垂れを防止するために、樹脂製のジョイント39が付設されている。
【0032】
定量吐出ポンプ装置30は、シリンダポンプからなり、例えば、強化ガラスによって構成されたシリンダ本体30aと、サーボモータ40と、前記サーボモータ40の回転運動を直線運動に変換してシリンダ本体30a内を軸方向に沿って往復動作するピストンロッド42と、前記ピストンロッド42の一端部の外径面に装着され、パイロットエア圧力の強弱によって径方向に膨張収縮することにより、シリンダ本体30a内に導入された塗料を塗装ガン26に向かって連続的に吐出するピストン28とを備える。
【0033】
前記ピストン28は、例えば、布糸、バイトン(登録商標)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の3層構造からなる円筒状の中空体で形成され、前記中空体の内部へのパイロットエアの供給によってピストン28が拡径してシリンダ本体30aの内壁に沿って摺動し、パイロットエアの供給を停止することによってピストン28が縮径してシリンダ本体30a内の一方の室と他方の室とを連通させるように設けられる。
【0034】
なお、中空のピストンロッド42には、前記ピストン28の内部にパイロットエアを供給するパイロットエア供給ポート42aが設けられ、前記パイロットエア供給ポート42aには、ピストン28の膨張(拡径)と収縮(縮径)との切り換え速度を制御する急速排気弁44が接続される。また、塗装ガン26に対して高電圧を印加する高電圧発生装置46が電気的に接続される。
【0035】
次に、移送装置36について説明する。図3(a)は、移送装置の概略正面図、図3(b)は、前記移送装置を構成する第1アーム部と第2アーム部との回動動作を示す平面図である。
図3(a)に示されるように、移送装置36は、回動中心が鉛直上下方向(矢印Y方向)の軸線Tに沿って同軸に配置された第1回動軸48a及び第2回動軸48bと、前記第1回動軸48aに固定され、軸線Tを回動中心として前記第1回動軸48aを所定角度(揺動角度)だけ回動動作させる第1ロータリアクチュエータ50aと、前記第2回動軸48bに固定され、軸線Tを回動中心として前記第2回動軸48bを所定角度(揺動角度)だけ回動動作させる第2ロータリアクチュエータ50bとを備える。なお、第1ロータリアクチュエータ50a及び第2ロータリアクチュエータ50bは、それぞれ、側面視して略L字状のブラケット52を介して壁部に固定される。
【0036】
さらに、移送装置36は、第1回動軸48aの先端部に略水平方向(矢印X方向)に沿って延在するように連結され、絶縁タンクA又は絶縁タンクBを把持するチャック部32を略水平方向(矢印X方向)に沿って進退動作させるリニアアクチュエータを有する第1アーム部54aと、第2回動軸48bにブラケット56を介して固定されるシリンダ58と、前記シリンダ58のピストンロッド58aに連結され、絶縁タンクA又は絶縁タンクBを把持するチャック部32を略水平方向(矢印X方向)に沿って進退動作させるリニアアクチュエータを有する第2アーム部54bとを備える。
【0037】
前記第1アーム部54a及び前記第2アーム部54bのチャック部32には、それぞれ、絶縁タンクA又は絶縁タンクBを把持したまま前記チャック部32を180度回転させ、前記絶縁タンクA又は絶縁タンクBの天地を反転させる図示しない回転機構が設けられている。この回転機構としては、例えば、ロータリアクチュエータ等が用いられるとよい。
【0038】
この場合、同軸に配置された第1回動軸48aと第2回動軸48bとの間には、ベアリング60が設けられ、このベアリング60によって第1回動軸48aの回動動作と第2回動軸48bの回動動作とが互いに干渉(追従)されることがなく、それぞれ独立して回動動作するように設けられている。換言すると、第1回動軸48aに固定されたベアリング60が、第2回動軸48bを回動自在に軸支するように設けられることで、同軸状に配置された第1回動軸48aと第2回動軸48bとが、互いに独立して回動する。
【0039】
また、先端にチャック部32が設けられた第1アーム部54a及び第2アーム部54bは、それぞれ水平方向に沿って同一の高さ位置に描出されているが、第2アーム部54bがシリンダ58の駆動作用によって鉛直上下方向(矢印Y方向)に沿って昇降可能に設けられている。このため、第1アーム部54aと第2アーム部54bとは、軸線を回転中心として相互に周方向に交差(クロス)可能に設けられている。
【0040】
なお、第1ロータリアクチュエータ50a及び第2ロータリアクチュエータ50bは、それぞれ同一構成からなり、例えば、エア圧、油圧等の流体圧によって作動可能に設けられる。第1ロータリアクチュエータ50a及び第2ロータリアクチュエータ50bのアクチュエータボディ内には、例えば、図示しない(シングル又はダブル)ベーンと、前記ベーンと一体的に形成された回転軸と、前記ベーンが当接して回動動作が阻止される(シングル又はダブル)ストッパ等が設けられる。
【0041】
第1回動軸48a及び第2回動軸48bをそれぞれ回動動作させる回動手段としては、ベーンタイプのロータリアクチュエータに代替して、図示しない、ラックアンドピニオンタイプのロータリアクチュエータや、ステッピングモータ等のサーボモータを用いてもよい。
【0042】
本実施形態に係る静電塗装色替えシステムが適用された静電塗装システム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0043】
被塗装物に対して静電塗装作業がなされているとき、例えば、図示しないコントローラからの色替え指令によって塗装ガン26から吐出される塗料の色を替える色替え工程について、以下、図4に基づいて詳細に説明する。図4は、一次側供給系と二次側供給系との間で、移送装置によって絶縁タンクA及び絶縁タンクBが往復移送される状態を示す説明図である。
【0044】
図示しないコントローラから出力された塗料充填指令によって選択されたCCV18の塗料弁12aがオン状態となり、CCV18から流量計20を介して絶縁タンクAに選択された所定の塗色の塗料が充填される。図示しないコントローラは、流量計20の積算値を監視し所定の閾値に到達することによって塗料弁12aをオフ状態に切り換えて、絶縁タンクAに対する塗料の充填を停止させる。
【0045】
絶縁タンクAに対する充填量は、被塗装物に対するペイントスプレー必要量によって設定され、無駄吹きをなくすと共に、残量塗料による塗料廃液を削減することができる。なお、図示しないタイマによるカウント値をコントローラに出力し、コントローラは、カウント値が所定値に到達することにより塗料弁12aをオフ状態に切り換えて、絶縁タンクAに対する塗料の充填を停止させるようにするとよい。
【0046】
その際、塗料充填済みの絶縁タンクAは、移送装置36の第1アーム部54aのチャック部32に把持された状態にあり、一方、塗料未充填で空の絶縁タンクBは、移送装置36の第2アーム部54bのチャック部32に把持された状態にあるものとする。なお、絶縁タンクAを把持した第1アーム部54aと、絶縁タンクBを把持した第2アーム部54bとは、周方向に沿って所定角度だけ離間した初期状態にあるものとする。また、図4中では、移送装置36の第1アーム部54a及び第2アーム部54bを省略している。
【0047】
そこで、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて移送装置36は、第1アーム部54aをCCV18側から定量吐出ポンプ装置30側に向かって所定角度だけ回動動作させ、前記第1アーム部54aに把持された塗料充填済みの絶縁タンクAをタンク着脱部34に装着すると共に、第2アーム部54bをCCV18側に向かって所定角度だけ回動動作させ、前記第2アーム部54bに把持された空の絶縁タンクBを滴下部22の下方側の位置で待機させる。第1アーム部54aは、絶縁タンクAをタンク着脱部34に装着した後、タンク着脱部34に装着された絶縁タンクAを残してチャック部32が空き状態のまま初期状態に復帰する。
【0048】
このように、本実施形態では、一次側塗料供給系(CCV18側)と二次側塗料供給系(定量吐出ポンプ装置30側)との間に塗料供給通路37が何ら設けられておらず、一次側塗料供給系(CCV18側)と二次側塗料供給系(定量吐出ポンプ装置30側)とが完全に切り離されて、電気的に絶縁された状態に設定される。この場合、本実施形態では、CCV18と定量吐出ポンプ装置30との間の塗料供給配管が不要となるため、システム構造の簡素化を達成することができる。
【0049】
続いて、定量吐出ポンプ装置30を駆動させ、塗装ガン26に対して絶縁タンクAに充填された塗料を吸引移送することにより、塗装ガン26から被塗装物に対して導電性塗料を塗布する静電塗装が遂行される。
【0050】
絶縁タンクAに充填された塗料が塗装ガン26から被塗装物に塗布されて静電塗装が遂行されているとき、図示しないコントローラからの洗浄信号によってCCV18の洗浄弁14がオン状態となり、滴下部22から洗浄液が間欠落下して絶縁タンクBの容器内に充填される(図5(a)、(b)参照)。
【0051】
所定量の洗浄液が絶縁タンクB内に貯留された後、図示しない回転機構(例えば、ロータリアクチュエータ)を介して第2アーム部54bのチャック部32を180度回転させて、絶縁タンクBの天地を反転させる(図5(c)参照)。この結果、絶縁タンクBの容器内を洗浄した廃液(使用済みの洗浄液)は、絶縁タンクBの開口部から滴下部22の下方側に配置された廃液貯留槽38内に回収される。廃液の回収後、絶縁タンクBは、図示しない回転機構を介して第2アーム部54bのチャック部32を前記とは反対方向に180度回転させることにより、絶縁タンクBの開口部が上側となる元の位置に復帰する。
【0052】
絶縁タンクBの自動洗浄が終了した後、図示しないコントローラからの色替え信号によって選択されたCCV18の他の塗料弁12bがオン状態となり、CCV18から流量計20を介して絶縁タンクBに対して色替えが行われた塗料が充填される。図示しないコントローラは、流量計20の積算値を監視し所定の閾値に到達することによって他の塗料弁12bをオフ状態に切り換えて、絶縁タンクBに対する塗料の充填を停止させる。第2アーム部54bに把持された空の絶縁タンクBに対して、CCV18及び滴下部22を介して色替えが行われた塗料を前記した落下方式によって充填する。なお、空の絶縁タンクBに対して充填される塗料の色が、絶縁タンクAから塗装ガン26に対して供給される塗料の色と同一色の場合(色替えが行われない場合)には、自動洗浄は不要となり省略される。
【0053】
絶縁タンクAに充填された塗料が全て塗装ガン26から吐出され、絶縁タンクA内の塗料が空の状態になったとき、第1アーム部54aは、初期状態からタンク着脱部34に向かって所定角度だけ回動動作し、チャック部32で空の絶縁タンクAを把持すると共に、タンク着脱部34から絶縁タンクAを抜脱させる。さらに、第1アーム部54aを所定角度だけ回動動作させて前記抜脱した空の絶縁タンクAを滴下部22の下方側の位置で待機させる。
【0054】
同時に、第2アーム部54bは、滴下部22の下方側の位置における待機状態から、色替えの塗料充填済みの絶縁タンクBを把持しながら周方向に沿って所定角度だけ回動動作し、前記塗料充填済みの絶縁タンクBをタンク着脱部34に装着する。なお、絶縁タンクAがタンク着脱部34から抜脱された後、タンク着脱部34、定量吐出ポンプ装置30、塗装ガン26及びこれらを接続する塗料供給通路37等は、例えば、シリンダ本体30aに設けられた図示しない他の洗浄弁から供給される洗浄液によって洗浄される。
【0055】
この場合、第1アーム部54aと第2アーム部54bとは、相互にクロスして回動動作するように設けられる。この結果、第1アーム部54aのチャック部32に把持された一方の空の絶縁タンクAと、第2アーム部54bのチャック部32に把持され色替え塗料が充填された他方の絶縁タンクBとを、同時に又は略同時に回動動作させることができる。
【0056】
絶縁タンクAと同様にして、色替えの塗料充填済みの絶縁タンクBから吸引移送された塗料が定量吐出ポンプ装置30及び塗装ガン26を介して被塗装物に対して吐出されて静電塗装が開始される。滴下部22の下方側の位置で待機状態にある空の絶縁タンクAに対して、前記した自動洗浄を行った後、落下方式によってCCV18及び滴下部22を介してさらに色替えがなされた塗料が充填される。なお、空の絶縁タンクAに対して充填される塗料の色が、絶縁タンクBから塗装ガン26に対して供給される塗料の色と同一色の場合(色替えが行われない場合)には、自動洗浄は不要となり省略される。
【0057】
上記の工程を連続して繰り返すことによって、一方で安定した静電塗装作業を遂行することができると共に、他方で色替え洗浄作業を同時に又は略同時に効率的に遂行することができる。
【0058】
本実施形態では、例えば、一方の固定点であるCCV18及び滴下部22と、他方の固定点である定量吐出ポンプ装置30、塗装ガン26及びタンク着脱部34との間で、移送装置36の第1アーム部54a及び第2アーム部54bにそれぞれ把持された一対の絶縁タンクA及び絶縁タンクBを連続して往復移送する、所謂シャトル方式を採用することにより、従来から用いられている多数の塗料カートリッジや塗料充填装置等が不要となって色替えシステムの構成を簡素化し、製造コストを低減することができる。この場合、本実施形態では、従来技術における塗装機の周辺機器も簡素化されるため、メンテナンスフリーとなってより一層コスト削減に寄与することができる。
【0059】
また、本実施形態では、色替え時における洗浄時間を大幅に短縮することができるため、洗浄時における廃液量を削減して、複数の色替え効率を向上させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、落下方式によってCCV18及び滴下部22から塗料が充填される絶縁タンク(一次側塗料供給系)が、高電圧が印加される塗装ガン26や前記塗装ガン26へ塗料を供給する塗料供給通路37(二次側塗料供給系)から切断されて電気的に絶縁されているため、例えば、水溶性塗料等の導電性塗料を好適に用いることができると共に、一次側塗料供給系に対して特別な絶縁対策を施すことが不要となる。
【0061】
さらにまた、本実施形態では、大幅な設備投資を行うことがなく、既存の設備を簡便に有効利用することでき、汎用性を向上させることが可能な静電塗装システム10を構築することができる。
【0062】
ところで、塗料廃液を放出しない塗装方式としては、塗料カートリッジを用いたカートリッジ方式が知られているが、このカートリッジ方式には、下記のような種々の問題点があり、本実施形態の所謂シャトル方式と対比して説明する。
【0063】
第1に、カートリッジ方式では、各色専用の塗料カートリッジを(塗色数×2)の個数だけ必要になると共に、使用済みの塗料カートリッジに対して新たに塗料を充填するための塗料充填装置や、塗料カートリッジを移送する移送ロボット等を設置しなければならず、大きな設置スペースが必要になると共に、付帯設備に伴うイニシャルコストが増加する。また、カートリッジ方式では、塗料カートリッジを移送する移送ロボットと、塗装ガンから塗料を塗布する塗装ロボットとの間における塗料カートリッジの着脱位置の位置決め作業及び着脱位置の微調整作業や、周辺機器のメンテナンス作業等が必要となり、これらのメンテナンスコストが付加されることによって製造コストが高騰する。
【0064】
これに対して、本実施形態のシャトル方式では、一対の絶縁タンクA及び絶縁タンクBと、一次側塗料供給系と二次側塗料供給系との間で前記一対の絶縁タンクA及び絶縁タンクBを交互に移送する移送装置36とを備えるだけであるため、設置スペースを抑制することができると共に、カートリッジ方式と比較して製造コストを低減することができる。
【0065】
第2に、カートリッジ方式では、新色対応等によって塗色追加が必要となった場合、システム全体及び制御プログラム等の大幅な変更が余儀なくされ、多大な時間とコストがかかる。これに対して、本実施形態のシャトル方式では、新色対応等の塗色追加が必要となった場合、その必要な塗色に対応する塗料弁をCCV18のマニホールドブロック16に付設し、又は、新色対応の塗料弁を含む新たなCCVを従前のCCV18と交換することによって、簡便に対処することができる。
【0066】
第3に、カートリッジ方式では、カートリッジ本体内に充填された水溶性塗料を、外部のポンプ装置から供給される押出溶剤(有機溶剤)で押し出す押出方式が採用されている。また、カートリッジ方式では、水溶性塗料への高電圧印加に対し塗装機とその駆動部を遮断し絶縁するための遮蔽板を作動させる駆動力として、電気抵抗値及び沸点の高い有機溶剤が使用される。さらに、カートリッジ方式では、内部に水溶性塗料が充填されたパウチバッグ(パウチ容器)を収縮させる駆動力として、電気抵抗値及び沸点の高い有機溶剤が使用される。
【0067】
このように、カートリッジ方式では、絶縁材や駆動材として有機溶剤(押出溶剤)が必要となるのに対し、本実施形態のシャトル方式では、有機溶剤を全く使用することがないため、完全「水」化を達成することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 静電塗装システム
12a〜12d 塗料弁
14 洗浄弁
18 カラーチェンジバルブ
26 塗装ガン
30 定量吐出ポンプ装置
32 チャック部
36 移送装置
38 廃液貯留槽
48a、48b 回動軸
54a 第1アーム部
54b 第2アーム部
A、B 絶縁タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧が印加され塗装ガンから吐出される導電性塗料の塗色を替える静電塗装色替えシステムにおいて、
塗色に対応する複数の塗料弁と洗浄液を供給する洗浄弁とが付設されたカラーチェンジバルブと、
前記カラーチェンジバルブから間欠滴下された前記導電性塗料が充填されると共に、定量吐出ポンプ装置側に設けられたタンク着脱部に対して着脱自在に装着される一対の絶縁タンクと、
前記一対の絶縁タンクをそれぞれ把持し周方向に沿って独立して回動可能に設けられた第1アーム部及び第2アーム部を有し、前記一対の絶縁タンクを、前記カラーチェンジバルブ側と前記タンク着脱部側との間で交互に往復移送する移送装置と、
を備えることを特徴とする静電塗装色替えシステム。
【請求項2】
請求項1記載の静電塗装色替えシステムにおいて、
前記移送装置は、前記絶縁タンクを把持するチャック部を有し、前記チャック部には、前記洗浄弁から供給された洗浄液で前記絶縁タンクの容器内を洗浄した後、前記絶縁タンクの天地を反転させる回転機構が設けられることを特徴とする静電塗装色替えシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の静電塗装色替えシステムにおいて、
前記カラーチェンジバルブ側と前記タンク着脱部側との間は、切り離されていることを特徴とする静電塗装色替えシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の静電塗装色替えシステムにおいて、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、回動中心が鉛直上下方向に沿って同軸状に配置され、前記一対の絶縁タンクをそれぞれ保持したまま周方向に沿って交差可能に設けられることを特徴とする静電塗装色替えシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の静電塗装色替えシステムにおいて、
前記タンク着脱部に装着された一方の前記絶縁タンクから導出された前記導電性塗料によって静電塗装がなされているとき、色替えがなされた導電性塗料が前記カラーチェンジバルブから他方の前記絶縁タンクに対して充填されることを特徴とする静電塗装色替えシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152680(P2012−152680A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12618(P2011−12618)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(592007575)東メンシステム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】