説明

静電容量型センサ装置

【課題】外力の位置および大きさを高精度に検出することができる静電容量型センサ装置を提供する。
【解決手段】距離を隔てて対向して設けられた電極対Es(11,12)をマトリックス状に配置し、電極対Es(11,12)の間に弾性変形可能な誘電層13を配置してなる静電容量型センサ10を用いる。静電容量計測部50が、選択された電極対Esを含む複数の電極対Esからなる電極対群Egの間の静電容量の計測を、複数の組み合わせからなる電極対群Egについて行う。このようにして計測された複数の静電容量に基づいて、外力算出部60が、選択された電極対Esの位置に付与された外力Fの大きさを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する電極対の間に弾性変形可能な誘電層を介在して形成された静電容量型センサに外力が付与された場合に、当該誘電層の変形に伴って変化する静電容量を計測することにより、当該外力の位置および大きさを計測することができる静電容量型センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ところで、静電容量を用いたタッチセンサが特許文献1に記載されている。このタッチセンサは、配列された電極とアースとの間の静電容量を検出することが記載されている。例えば、人間の指を接近させることで、接近した電極とアースとの静電容量が変化することを利用して、接近した指の位置を検出することとしている。
【0003】
電極とアースとの間の静電容量を計測する装置ではなく、電極対をマトリックス状に配置し、外力の付与によって誘電層が弾性変形することにより当該電極対の間の距離が変化する静電容量型センサを対象とし、電極対間の静電容量を計測することで付与された外力の分布を計測する装置が、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2009/013965号
【特許文献2】特公平6−52206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されている誘電層が弾性変形することにより電極対の間の距離が変化する装置においては、誘電層は、外力を受けたときに弾性変形することができる程度に厚みを有する必要がある。誘電層の厚みを確保すると、電極対の離間距離が大きくなる。電極対の離間距離が大きくなると、外力が付与されて誘電層が弾性変形した場合に、電極対の離間距離が小さくなることに伴って電極対の間の静電容量が変化するが、その静電容量の変化が小さい。そのため、検出できる外力の大きさの分解能が低くなり、外力の大きさを高精度に検出することができない。
【0006】
そのことを解決するために、それぞれの電極対の面積を大きくすることで、同一の外力が付与された場合に静電容量の変化を大きくすることができる。しかしながら、それぞれの電極対の面積を大きくすると、同一の電極対内において、外力が付与された位置を検出することができない。つまり、センサ全体として見た場合に、外力の位置を高精度に検出することができないという問題を有する。このように、従来は、外力の位置を高精度に検出しつつ、外力の大きさを高精度に検出することは容易ではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外力の位置および大きさを高精度に検出することができる静電容量型センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の静電容量型センサ装置は、距離を隔てて対向して設けられた電極対をマトリックス状に配置し、前記電極対の間に弾性変形可能な誘電層を配置してなる静電容量型センサと、選択された前記電極対を含む複数の前記電極対からなる電極対群の間の静電容量の計測を、複数の組み合わせからなる前記電極対群について行う静電容量計測手段と、計測された複数の前記静電容量に基づいて、前記選択された前記電極対の位置に付与された外力の大きさを算出する外力算出手段とを備える。
【0009】
本発明によれば、外力により誘電層が弾性変形することに伴って電極対の離間距離が変化することで、電極対の間の静電容量が変化する。このことを利用して、外力の位置および大きさを取得している。そして、本発明の静電容量計測手段は、それぞれの電極対ごとの静電容量を計測するのではなく、複数の電極対から構成される電極対群の静電容量を計測している。従って、計測する際の電極対の面積が、1つの電極対の面積ではなく、複数の電極対の面積となる。ここで、静電容量は、電極対の面積が大きいほど、大きな値となる。従って、電極対群の静電容量を計測することで、計測される静電容量は、1つの電極対の静電容量を計測する場合に比べて、大きな値を出力する。従って、計測される静電容量は、高精度となる。
【0010】
しかし、単に、複数の電極対から構成される電極対群の静電容量を計測するのでは、従来のように、電極対の面積を大きくしたことに相当する。つまり、このままでは、電極対群の中で、外力が付与された位置を検出することができない。しかし、本発明によれば、以下により、電極対群の中で、外力が付与された位置を検出することができるようにしている。
【0011】
本発明によれば、選択された電極対を含む電極対群の複数の組み合わせについて静電容量を計測する。つまり、選択された電極対は、複数の組合せからなる電極対群に含まれている。従って、これらの電極対群の静電容量は、全て、当該選択された電極対の静電容量の影響を受けた値となる。
【0012】
そして、複数の組合せからなる電極対群の静電容量に基づいて、選択された電極対の位置に付与された外力の大きさを算出している。ここで、選択された電極対の静電容量は、当該選択された電極対に付与された外力の大きさに比例する。そこで、外力算出手段は、複数の電極対群の静電容量を用いて、当該選択された電極対の静電容量に比例する値としての外力を算出している。例えば、電極対群の中で当該選択された電極対の影響度を考慮して、それぞれの電極対群の静電容量の影響度を決定し、当該選択された電極対に付与された外力の大きさを算出する。従って、電極対群を構成するそれぞれの電極対が受ける外力を検出することができる。つまり、マトリックス状の静電容量型センサに付与される外力の大きさおよび位置を高精度で且つ高分解能で得ることができる。
【0013】
また、前記静電容量型センサは、第一方向に延びる第一電極を前記第一方向に直交する第二方向に複数配列した第一電極群と、前記第二方向に延びる第二電極を第一方向に複数配列し、前記第一電極群に対して距離を隔てて対向して配置された第二電極群と、前記第一電極群と前記第二電極群との間に配置された前記誘電層とを備えるようにしてもよい。これにより、電極数および配線数を減らすことができる。
【0014】
また、前記静電容量計測手段において静電容量を計測する前記電極対群は、連続した複数の前記電極対からなるようにしてもよい。これにより、電極対群の中で当該選択された電極対の影響度を、比較的容易に決定できる。つまり、簡易的な計算で高精度に得ることができる。
【0015】
また、前記静電容量計測手段において計測する前記電極対群は、直前に計測した前記電極対群を構成する前記電極対を含まない前記電極対群であるとしてもよい。ここで、静電容量の計測により、電極対群は帯電する。そして、直前に計測した電極対群と今回計測する電極対群とが重なっていると、今回計測する電極対群の静電容量に、前回計測により電極対群に帯電した電荷の影響を受けるおそれがある。これに対して、本発明によれば、直前に計測した電極対群と今回計測する電極対群とは、重なっていない。従って、今回計測する電極対群の静電容量は、前回計測により電極対群に帯電した電荷の影響を小さくできる。その結果、今回計測する電極対群の静電容量を高精度に計測することができる。ひいては、静電容量型センサに付与された外力の位置および大きさを高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一実施形態:静電容量型センサ装置の構成を示す図であり、静電容量型センサの断面図を示す。
【図2】静電容量型センサ装置の構成を示す図であり、静電容量型センサ、入力側切替回路および出力側切替回路の詳細構成を示す図である。特に、静電容量型センサは、絶縁層を取り除いた状態における平面図である。
【図3】静電容量型センサの平面図を示し、ハッチングにて静電容量計測部により計測する際の静電容量型センサの電極対群を示す。(a)〜(d)は、静電容量計測部による計測順序に対応する。
【図4】第二実施形態:静電容量型センサの平面図を示し、ハッチングにて静電容量計測部により計測する際の静電容量型センサの電極対群を示す。(a)〜(f)は、静電容量計測部による計測順序に対応する。
【図5】第三実施形態:静電容量型センサの平面図を示し、ハッチングにて静電容量計測部により計測する際の静電容量型センサの電極対群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
第一実施形態の静電容量型センサ装置について、図1および図2を参照して説明する。静電容量型センサ装置は、シート状に形成された静電容量型センサの表面に付与された外力の分布、すなわち外力の位置および大きさを検出することができる。静電容量型センサ装置について以下に詳細に説明する。
【0018】
静電容量型センサ装置は、静電容量型センサ10と、交流電源20と、入力側切換回路30と、出力側切換回路40と、静電容量計測部50と、外力算出部60とを備える。静電容量型センサ10は、シート状に形成されており、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。従って、静電容量型センサ10は、平面形状のみならず、曲面形状に形成することもできる。ただし、以下において、図1を参照して、平面形状の静電容量型センサ10について説明する。
【0019】
静電容量型センサ10は、面法線方向(図1の上下方向)に距離を隔てて対向して設けられた電極対Es(第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iにより構成)をマトリックス状に配置し、電極対Esの間に弾性変形可能な誘電層13を配置している。図2においては、電極対Esを、横方向(以下、「X方向」)に9列、縦方向(以下、「Y方向」)に9列のマトリックス状に配置している静電容量型センサ10を示す。図2において、Aで囲む部位は、電極対Esの一つを示している。
【0020】
ただし、静電容量型センサ10は、マトリックス状に電極対Esを点在させると、電極数および配線数が多くなるため、以下のように構成している。すなわち、静電容量型センサ10は、第一電極群11、第二電極群12と、第一,第二電極群11,12間に設けられた誘電層13と、第二電極群12側の表面および第一電極群11側の裏面を被覆するように設けられた絶縁層14,15を備えて構成される。
【0021】
第一電極群11は、X方向に延びる長尺板形状の第一電極11a〜11iをY方向(X軸方向に直交する方向)に平行に複数(例えば、9列)配列する。第二電極群12は、Y方向に延びる長尺板形状の第二電極12a〜12iをX方向に平行に複数(例えば、9列)配列し、第一電極群11に対して面法線方向に距離を隔てて対向して配置される。ここでは、第二電極群12は、第一電極群11に対して静電容量型センサ10の表面側に配置される。ここで、第一電極群11と第二電極群12とが交差する部位のそれぞれが、電極対Esを構成する。
【0022】
そして、静電容量型センサ10の表面に付与される外力Fに応じて第一電極11a〜11iと第二電極12a〜12iとの離間距離が変化し、この変化に伴って第一電極11a〜11iと第二電極12a〜12iの間の静電容量が変化する。なお、静電容量が電極間距離に反比例する関係にあることは周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iは、同一材質により形成されている。具体的には、第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iの材質は、エラストマー中に導電性フィラーを配合させることにより成形している。そして、第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iは、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有するようにしている。
【0024】
第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iを構成するエラストマーは、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。また、第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iに配合される導電性フィラーは、導電性を有する粒子であればよく、例えば、炭素材料や金属等の微粒子を適用できる。
【0025】
誘電層13は、エラストマーまたは樹脂により成形され、第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iと同様に、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。この誘電層13を構成するエラストマーは、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。また、誘電層13を構成する樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン(架橋発泡ポリスチレンを含む)、ポリ塩化ビニル−ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸共重合体などが適用できる。
【0026】
この誘電層13は、設定された厚みを有し、第一,第二電極群11,12の外形状と同程度または大きく形成されている。絶縁層14,15は、第一,第二電極11a〜11i,12a〜12iと同様に、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。この絶縁層14,15を構成するエラストマーまたは樹脂は、例えば、誘電層13を構成するエラストマーまたは樹脂として記載した材料が適用される。
【0027】
そして、静電容量型センサ10が静電容量型センサ10の面法線方向に圧縮する外力Fを受けた場合には、誘電層13が当該面法線方向に圧縮変形することにより、外力Fが付与された部位に位置する第一,第二電極11a〜11i,12a〜12i間の離間距離が短くなる。この場合、当該第一,第二電極11a〜11i,12a〜12i間の静電容量は大きくなる。
【0028】
交流電源20は、交流電圧を発生し、静電容量型センサ10の第一電極群11に対して印加する。
【0029】
入力側切換回路30は、複数のスイッチ30a〜30iにより構成されている。各スイッチ30a〜30iの一端は、交流電源20に接続されており、各スイッチ30a〜30iの他端は、対応する第一電極11a〜11iに接続されている。そして、第一電極11a〜11iの中から選択された複数と交流電源20とを接続し、第一電極11a〜11iの残りは交流電源に対して切断する。なお、図2においては、入力側切換回路30の第一,第二スイッチ30a,30bを短絡(ON)させ、他のスイッチ30c〜30iを切断(OFF)している。
【0030】
出力側切換回路40は、複数のスイッチ40a〜40iにより構成されている。各スイッチ40a〜40iの一端は、対応する第二電極12a〜12iに接続され、各スイッチ40a〜40iの他端は、静電容量計測部50に接続される。そして、第二電極12a〜12iの中から選択された複数と静電容量計測部50とを接続し、第二電極12a〜12iの残りを切断する。なお、図2においては、出力側切換回路40の第一,第二スイッチ40a,40bを短絡(ON)させ、他のスイッチ40c〜40iを切断(OFF)している。
【0031】
静電容量計測部50は、第一電極群11のうち交流電圧が印加されている第一電極11a〜11iと第二電極群12のうち出力側切換回路40により接続されている第二電極12a〜12iとの間の静電容量を計測する。ただし、実際には、静電容量計測部50は、当該静電容量に応じた電圧を計測する。ここで、図2には、静電容量計測部50は、第一電極11a,11bと第二電極12a,12bとの間の静電容量に応じた電圧を計測する状態を示している。
【0032】
ここで、図3(a)〜図3(d)を参照して、静電容量計測部50による静電容量を計測する手順について説明する。ここで、図3(a)〜図3(d)において、電極対Esを破線の正方形にて表している。つまり、当該電極対Esは、図2に示す第一電極11a〜11iと第二電極12a〜12iとが交差する部位に対応している。
【0033】
最初に、静電容量計測部50は、図3(a)のハッチングの範囲(X1〜X2,Y1〜Y2)の電極対群Egの静電容量を計測する。このとき、入力側切換回路30の第一,第二スイッチ30a,30bがONされ、残りのスイッチ30c〜30iはOFFされる。また、出力側切換回路40の第一,第二スイッチ40a,40bがONされ、残りのスイッチ40c〜40iがOFFされる。続いて、図3(b)のハッチングの範囲(X1〜X2,Y2〜Y3)の電極対群Egの静電容量を計測する。このとき、入力側切換回路30の第二,第三スイッチ30b,30cがONされ、残りのスイッチ30a,30d〜30iはOFFされる。また、出力側切換回路40の第一,第二スイッチ40a,40bがONされ、残りのスイッチ40c〜40iがOFFされる。
【0034】
続いて、図3(c)のハッチングの範囲(X2〜X3,Y1〜Y2)の電極対群Egの静電容量を計測する。このとき、入力側切換回路30の第一,第二スイッチ30a,30bがONされ、残りのスイッチ30c〜30iはOFFされる。また、出力側切換回路40の第二,第三スイッチ40b,40cがONされ、残りのスイッチ40a,40d〜40iがOFFされる。続いて、図3(d)のハッチングの範囲(X2〜X3,Y2〜Y3)の電極対群Egの静電容量を計測する。このとき、入力側切換回路30の第二,第三スイッチ30b,30cがONされ、残りのスイッチ30a,30d〜30iはOFFされる。また、出力側切換回路40の第二,第三スイッチ40b,40cがONされ、残りのスイッチ40a,40d〜40iがOFFされる。
【0035】
このように、静電容量計測部50により同時に計測する電極対群Egは、連続した正方形状となる4つの電極対Esとしている。そして、マトリックス状の電極対Esの中から、選択可能な全ての電極対群Egを対象として、静電容量計測部50が静電容量を計測する。例えば、選択された電極対Esを、図3の座標(X2,Y2)の電極対Esであるとする。この場合、図3(a)〜図3(d)に示すように、当該選択された電極対Es(X2,Y2)を含む4種類の電極対群Eg(X1〜X2,Y1〜Y2)、(X1〜X2,Y2〜Y3)、(X2〜X3,Y1〜Y2)、(X2〜X3,Y2〜Y3)についての静電容量を計測する。
【0036】
図1および図2に示す外力算出部60は、静電容量計測部50により計測された複数の電極対群Egの静電容量に基づいて、それぞれの電極対Esに対して付与されている外力の大きさを算出する。図3における座標(X2,Y2)の電極対Esにおける外力を算出する場合について説明する。
【0037】
静電容量計測部50により計測された電極対群Eg(X1〜X2,Y1〜Y2)、(X1〜X2,Y2〜Y3)、(X2〜X3,Y1〜Y2)、(X2〜X3,Y2〜Y3)の静電容量をそれぞれ、C12,12+C12,23+C23,12+C23,23とする。ここで、電極対群Egは、連続した4つの正方形状となる4つの電極対Esとしている。従って、計測対象の座標(X2,Y2)の電極対Esによるそれぞれの電極対群Egに対する影響度は、均等とする。そこで、式(1)に示すようにして、座標(X2,Y2)の電極対Esの静電容量C22を計測する。
【0038】
【数1】

【0039】
算出した座標(X2,Y2)の電極対Esの静電容量C22は、座標(X2,Y2)の電極対Esに付与される外力の大きさに応じた値となる。そこで、予め静電容量の大きさと外力の大きさの関係を設定しておくことで、座標(X2,Y2)の電極対Esに付与される外力の大きさを算出できる。
【0040】
ここで、上記式(1)は、座標(X2,Y2)の電極対Esの静電容量C22について示した。他の座標の電極対Esの静電容量Ckmについては、式(2)のように表される。
【0041】
【数2】

【0042】
以上説明したように、外力Fにより誘電層13が弾性変形することに伴って電極対Esの離間距離が変化することで、電極対Esの間の静電容量が変化する。このことを利用して、外力Fの位置および大きさを取得している。そして、静電容量計測部50は、それぞれの電極対Esごとの静電容量を計測するのではなく、複数の電極対Esから構成される電極対群Egの静電容量を計測している。従って、計測する際の電極対の面積が、1つの電極対Esの面積ではなく、複数の電極対Esの面積となる。ここで、静電容量は、電極対の面積が大きいほど、大きな値となる。従って、電極対群Egの静電容量を計測することで、計測される静電容量は、1つの電極対Esの静電容量を計測する場合に比べて、大きな値を出力する。従って、計測される静電容量は、高精度となる。
【0043】
しかし、単に、複数の電極対Esから構成される電極対群Egの静電容量を計測するのでは、従来のように、電極対Esの面積を大きくしたことに相当する。つまり、このままでは、電極対群Egの中で、外力Fが付与された位置を検出することができない。これに対して、静電容量計測部50は、選択された電極対Esを含む電極対群Egの複数の組み合わせについて静電容量を計測する。つまり、選択された電極対Esは、複数の組合せからなる電極対群Egに含まれている。従って、これらの電極対群Egの静電容量は、全て、当該選択された電極対Esの静電容量の影響を受けた値となる。
【0044】
そして、複数の組合せからなる電極対群Egの静電容量に基づいて、選択された電極対Esの位置に付与された外力Fの大きさを算出している。ここで、選択された電極対Esの静電容量は、当該選択された電極対Esに付与された外力Fの大きさに比例する。そこで、外力算出部60は、複数の電極対群Egの静電容量を用いて、当該選択された電極対Esの静電容量に比例する値としての外力Fを算出している。例えば、電極対群Egの中で当該選択された電極対Esの影響度を考慮して、それぞれの電極対群Egの静電容量の影響度を決定し、当該選択された電極対Esに付与された外力Fの大きさを算出する。従って、電極対群Egを構成するそれぞれの電極対Esが受ける外力Fを検出することができる。つまり、マトリックス状の静電容量型センサに付与される外力Fの大きさおよび位置を高精度で且つ高分解能で得ることができる。
【0045】
また、静電容量計測部50において静電容量を計測する電極対群Egは、連続した複数の電極対Esからなるようにしている。これにより、上述したように、電極対群Egの中で当該選択された電極対Esの影響度を、比較的容易に決定できる。上記においては、均等割とした。つまり、簡易的な計算で高精度に得ることができる。
【0046】
<第二実施形態>
第一実施形態において、静電容量計測部50により計測する電極対群Egは、(X1〜X2,Y1〜Y2)→(X1〜X2,Y2〜Y3)→(X2〜X3,Y1〜Y2)→(X2〜X3,Y2〜Y3)の順として説明した。この他に、図4(a)〜図4(f)に示す順序で静電容量の計測を行っても良い。
【0047】
つまり、静電容量計測部50(図1,2に示す)は、電極対群Egの座標(X1〜X2,Y1〜Y2)→(X1〜X2,Y3〜Y4)→(X1〜X2,Y5〜Y6)→(X1〜X2,Y7〜Y8)→(X1〜X2,Y2〜Y3)→(X1〜X2,Y4〜Y5)の順に静電容量を計測する。この後は、例えば、(X1〜X2,Y6〜Y7)→(X1〜X2,Y8〜Y9)の順に静電容量を計測し、続いて、上記の電極対群のX座標を(X2〜X3)とした電極対群について静電容量を計測する。
【0048】
このように、静電容量計測部50において計測する電極対群Egは、直前に計測した電極対群Egを構成する電極対Esを含まない電極対群Egとしている。ここで、静電容量の計測により、電極対群Egは帯電する。そして、直前に計測した電極対群Egと今回計測する電極対群Egとが重なっていると、今回計測する電極対群Egの静電容量に、前回計測により電極対群Egに帯電した電荷の影響を受けるおそれがある。そこで、上述したように、直前に計測した電極対群Egと今回計測する電極対群Egとが重ならないようにする従って、今回計測する電極対群Egの静電容量は、前回計測により電極対群Egに帯電した電荷の影響を小さくできる。その結果、今回計測する電極対群Egの静電容量を高精度に計測することができる。ひいては、静電容量型センサ10に付与された外力Fの位置および大きさを高精度に算出することができる。
【0049】
<第三実施形態>
また、上記第一,第二実施形態においては、電極対群Egを4つの正方形状の電極対Esとして説明した。電極対群Egは、例えば、図5に示すように、9つの正方形状の電極対Esとしてもよく、その他に、任意の複数の電極対Esにより構成することもできる。
【0050】
図5に示すような9つの正方形状の電極対Esにより電極対群Egを構成する場合には、外力算出部60(図1,2に示す)は、それぞれの電極対群Egに対する係数を、算出したい電極対Esの影響度に応じた係数に設定する。例えば、式(3)に従って、算出した電極対Esの静電容量を算出する。式(3)の右辺第一項は、9つの電極対の中心座標が算出したい電極対Esに一致する場合の静電容量であり、右辺第二項は、9つの電極対の中心座標が算出したい電極対Esの左右または上下に1つずれた位置における静電容量であり、右辺第三項は、9つの電極対の角部が算出したい電極対Esに一致する場合の静電容量である。なお、係数a,b,cは、以下に限られず、適宜調整することができる。
【0051】
【数3】

【符号の説明】
【0052】
10:静電容量型センサ、 11:第一電極群、 11a〜11i:第一電極
12:第二電極群、 12a〜12i:第二電極
13:誘電層、 14,15:絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を隔てて対向して設けられた電極対をマトリックス状に配置し、前記電極対の間に弾性変形可能な誘電層を配置してなる静電容量型センサと、
選択された前記電極対を含む複数の前記電極対からなる電極対群の間の静電容量の計測を、複数の組み合わせからなる前記電極対群について行う静電容量計測手段と、
計測された複数の前記静電容量に基づいて、前記選択された前記電極対の位置に付与された外力の大きさを算出する外力算出手段と、
を備える静電容量型センサ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記静電容量型センサは、
第一方向に延びる第一電極を前記第一方向に直交する第二方向に複数配列した第一電極群と、
前記第二方向に延びる第二電極を第一方向に複数配列し、前記第一電極群に対して距離を隔てて対向して配置された第二電極群と、
前記第一電極群と前記第二電極群との間に配置された前記誘電層と、
を備える静電容量型センサ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記静電容量計測手段において静電容量を計測する前記電極対群は、連続した複数の前記電極対からなる静電容量型センサ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記静電容量計測手段において計測する前記電極対群は、直前に計測した前記電極対群を構成する前記電極対を含まない前記電極対群である静電容量型センサ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−225727(P2012−225727A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92712(P2011−92712)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】