説明

静電容量型タッチセンサ

【課題】センサ回路の回路規模を抑えながら、複数の指のタッチ位置を検出することを可能にした静電容量型タッチセンサを提供する。
【解決手段】タッチホイール20は、絶縁基板10上に、円周Rに沿って配置された36個のタッチパッド21、駆動線22−0〜22−5、センサ線23−0〜23−5を含んで構成される。タッチパッド21は、中央電極0c〜5cと、この中央電極0c〜5cを囲んで配置された環状電極0s〜5sを有している。センサ回路30は、選択回路31、電荷増幅器32を含んで構成される。電荷増幅器32は、選択回路31により選択された1本のセンサ線23−0が接続されたタッチパッド21の中央電極0cと環状電極0sの電極の間に形成される静電容量の容量値C1の変化量ΔCを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化を利用して人の指先やペン先等のタッチ位置を検出する静電容量型タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチセンサは優れた特長を有していることから、タッチセンサを使った入力装置が広く使われるようになってきた。人が指を円周に沿って回転させて使用するホイール型入力装置もその一つである。
【0003】
特許文献1には、複数のタッチパッドを円周に沿って配置してなるタッチホイールを準備し、指がタッチパッドに触れた際に起こるタッチパッドに付随した静電容量の変化に基づいて、タッチホイール上で指が触れた位置を算出するようにした静電容量型タッチセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−182290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の静電容量型タッチセンサにおいては、1本の指の位置を検出するように構成されているので、複数の指でタッチホイールを触れると、誤った位置情報を出力する恐れがあった。例えば、複数の指でボリュームをつまんで回すような動きをこのタッチセンサで検出することは困難であった。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、円周上に多数のタッチパッドを配置し、タッチパッドとセンサ回路のチャンネルとを1:1で対応させることが考えられる。この場合、1つのチャンネルは、対応する1つのタッチパッドの静電容量の変化を検出する回路要素を含んでいる。しかしながら、この方法では、タッチパッドの数だけ、チャンネルの数が必要であり、タッチパッドの数の増加に伴って、センサ回路の規模が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電容量型タッチセンサは、基板と、前記基板上の閉曲線に沿って配置された複数のタッチパッドと、を備え、各タッチパッドは、中央電極と、この中央電極を囲んで配置された環状電極とを有し、前記複数のタッチパッドは、m個(mは2以上の自然数)のタッチパッドから成るタッチパッド群をn個(nは2以上の自然数)配列して構成され、更に、各タッチパッド群に対応して設けられ、各タッチパッド群のm個の環状電極に接続されたn本の駆動線と、各タッチパッド群のm個の中央電極に対応して設けられ、対応する中央電極に接続されたm本のセンサ線と、前記n本の駆動線にシーケンス的にクロック信号を印加するクロック源と、前記n本の駆動線の中、1本の駆動線にクロック信号が印加されている間に、前記m本のセンサ線をシーケンス的に選択する選択回路と、前記選択回路により選択されたセンサ線が接続された前記中央電極と、前記環状電極との間に形成される静電容量の容量値の変化を検出する検出回路と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の静電容量型タッチセンサによれば、回路規模を抑えながら、複数の指のタッチ位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の静電容量型タッチセンサの構成を示す平面図である。
【図2】静電容量型タッチセンサのセンサ回路の回路図である。
【図3】本発明の実施形態の静電容量型タッチセンサの動作タイミング図である。
【図4】電荷増幅器の回路図である。
【図5】電荷増幅器の動作を説明する図である。
【図6】タッチパッド周辺の電界状態を示す模式図である。
【図7】タッチパッドの各種パターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態における静電容量型タッチセンサの構成を図面に基づいて説明する。静電容量型タッチセンサは、タッチホイール20とセンサ回路30で構成される。
【0011】
=タッチホイール20の構成===
先ず、タッチホイール20の構成を図1に基づいて説明する。PCB基板等の絶縁基板10の表面上に、1つの円周Rに沿って36個の同じ構成を有したタッチパッド21が等間隔で配置されている。これらのタッチパッド21は、それぞれ6個のタッチパッド21を含む6個のタッチパッド群GR0〜GR5に分類される。タッチパッド群GR0〜GR5のタッチパッド21は、絶縁基板10に垂直な方向から見て、円形状の中央電極0c〜5cと、この中央電極0c〜5cを囲んで配置された丸輪状の環状電極0s〜5sとを有している。中央電極0c〜5cと環状電極0s〜5sとの間には誘電層が介在されており、両者は電気的に絶縁されている。
【0012】
駆動線22−0〜22−5は、タッチパッド群GR0〜GR5に対応して設けられ、それぞれタッチパッド群GR0〜GR5の6個の環状電極0s〜5sに電気的に接続されている。例えば、駆動線22−0は、タッチパッド群GR0の6個の環状電極0s〜5sに電気的に接続されている。つまり、GR0の環状電極0s〜5sは相互に電気的に接続されており、他のタッチパッド群GR1〜GR5の環状電極0s〜5sからは絶縁されている。
【0013】
センサ線23−0〜23−5は、タッチパッド群GR0〜GR5の中央電極0c〜5cに対応して設けられている。すなわち、センサ線23−0は、タッチパッド群GR0〜GR5の中央電極0cに電気的に接続されている。センサ線23−1は、タッチパッド群G0〜GR5の中央電極1cに電気的に接続されている。つまり、センサ線23−0〜23−5は、タッチパッド群GR0〜GR5の対応する中央電極0c〜5cに共通に接続されている。
【0014】
センサ線23−0〜23−5と環状電極0s〜5sとは電気的に絶縁されている。この場合、中央電極0c〜5c、環状電極0s〜5s及び駆動線22−0〜22−5は上層配線で形成され、センサ線23−0〜23−5は上層配線と絶縁された下層配線で形成される。もしくは、環状電極0s〜5s及び駆動線22−0〜22−5は下層配線で形成され、中央電極0c〜5c及びセンサ線23−0〜23−5は上層配線で形成される。
【0015】
駆動線22−0〜22−5は、センサ回路30の端子P6〜P11(それぞれ、クロック出力端子Cdrv0〜Cdrv5に相当する)に接続される。センサ回路30は、端子P6〜P11にクロック信号CLdrvをシーケンス的に出力する。センサ線23−0〜23−5は、センサ回路30の端子P0〜P5に接続される。端子P0〜P5は対応するタッチパッド11の静電容量の変化を検出する回路要素である、チャンネルch0〜ch5に対応している。
【0016】
タッチパッド21の中央電極0c〜5cと環状電極0s〜5sの間には静電容量が形成され、人の指等がタッチパッド21に近接することにより、静電容量の容量値C1が変化する。後述するように、センサ回路30はこの容量値C1の変化ΔCを電圧に変換する回路を含んでいる。タッチパッド21、駆動線22−0〜22−5、センサ線23−0〜23−5等が形成された絶縁基板10上には接合材を介してアクリル材等の誘電体材料から成る保護板が貼り付けられることが好ましい。
【0017】
===センサ回路30の構成===
次に、センサ回路30の構成を図2に基づいて説明する。センサ回路30は、端子P0〜P11、選択回路31、電荷増幅器32(本発明の「検出回路」の一例)、AD変換器33、制御回路34、クロック源35、ICバスインターフェース回路36及びクロック配線37を含んで構成される。制御回路34は、センサ回路30の全体、即ち、選択回路31、電荷増幅器32、AD変換器33、クロック源35及びICバスインターフェース回路36等の動作を制御する回路である。センサ回路30は、1チップのIC(半導体集積回路)で形成することができる。
【0018】
端子P0〜P11は、センサ信号が入力される入力端子、又はクロック信号CLdrvが出力される出力端子として用いることができる。クロック信号CLdrvはHレベルとLレベルを繰り返す信号である。本実施形態の静電容量型タッチセンサの場合は、端子P6〜P11はクロック信号CLdrvの出力端子として用いられる。
【0019】
即ち、制御回路34のクロック源35のクロック出力端子は、12本のクロック配線37を介して対応する端子P0〜P11に接続されている。この場合、制御回路34は、クロック信号CLdrvを対応するクロック配線37を介して端子P6〜P11(クロック出力端子Cdrv0〜Cdrv5)にシーケンス的に出力するように制御する。
【0020】
駆動線22−0〜22−5は、前述のように、センサ回路30の端子P6〜P11に接続されているので、クロック信号CLdrvは駆動線22−0〜22−5にシーケンス的に印加されることになる。クロック信号CLdrvは、ある期間は駆動線22−0にのみ印加され、次の期間に駆動線22−1にのみ印加される。(以下、同様にクロック信号CLdrvの印加が行われる。)これにより、クロック信号CLdrvは、タッチパッド群GR0〜GR5の環状電極0s〜5sにシーケンス的に印加されることになる。
【0021】
センサ回路30において、端子P0〜P5は、センサ信号が入力される入力端子として用いられる。すなわち、タッチホイール20のセンサ線23−0〜23−5は、センサ回路30の端子P0〜P5に接続される。
【0022】
選択回路31は、駆動線22−0〜22−5のいずれかにクロック信号CLdrvが印
加されている期間に、センサ線23−0〜23−5をシーケンス的に選択する。即ち、クロック信号CLdrvが印加されている期間の中のある期間にセンサ線23−0が選択され、次の期間にセンサ線23−1が選択される。(以下、同様に選択が行われる。)
電荷増幅器32は、選択回路31により選択された1本のセンサ線23−k(k=0〜5)が接続されたタッチパッド21の中央電極0c〜5cと環状電極0s〜5sの間に形成される静電容量の容量値C1の変化量ΔCを検出し、ΔCに比例した出力電圧Voutを出力するように構成されている。電荷増幅器32は、センサ線23−0〜23−5がシーケンス的に選択されている期間に対応して、出力電圧Voutをシーケンス的に出力することになる。電荷増幅器32の具体的な構成例については後述する。
【0023】
AD変換器33は、電荷増幅器32の出力電圧Voutをデジタル信号に変換する回路であり、例えば16ビットのデルタ・シグマ型のAD変換器で構成されることが好ましい
。AD変換器33から出力されるデジタル信号は、制御回路34により一時的に記憶され、ICバスインターフェース回路36を介して、外部のCPU、例えば、マイクロコンピュータに送信される。
【0024】
この場合、デジタル信号は、シリアルデータ端子SDAから、シリアルクロック端子SCLにマイクロコンピュータ側から印加されるシリアルクロックに同期してシリアル出力される。マイクロコンピュータは、送信されたデジタル信号に基づいてどのタッチパッド21が押されたかを判断する。この場合、マイクロコンピュータは、例えば当該デジタルデータが所定の閾値より大きい時に、タッチパッド21が押されたと判断する。
【0025】
===静電容量型タッチセンサの動作===
次に、静電容量型タッチセンサの動作を図3の動作タイミング図に基づいて説明する。先ず、センサ回路30のクロック出力端子P6クロック出力端子Cdrv0から出力されるクロック信号CLdrvは、駆動線22−0を介して、タッチパッド群GR0の環状電極0s〜5sに一定期間印加される。すると、選択回路31は、この一定の期間にセンサ線23−0〜23−5をシーケンス的に選択する。
【0026】
すなわち、先ず、センサ線23−0(チャンネルCh0)が選択される。これにより、
タッチパッド群GR0の1番目のタッチパッド21(中央電極0c)が選択される。そして、電荷増幅器32は、センサ線23−0が接続されたタッチパッド21の中央電極0cと環状電極0sの電極の間に形成される静電容量の容量値C1の変化量ΔCを検出し、ΔCに比例した出力電圧Voutを出力する。出力電圧VoutはAD変換器33によりデジタル信号に変換された後、制御回路34により一時的に記憶される。
【0027】
その後、センサ線23−1(チャンネルCh1)が選択される。これにより、タッチパッド群GR0の2番目のタッチパッド21(中央電極1c)が選択される。そして、電荷増幅器32は、センサ線23−1が接続された、2番目のタッチパッド21の中央電極1cと環状電極1sの間に形成される静電容量の容量値C1の変化量ΔCを検出し、ΔCに比例した出力電圧Voutを出力する。出力電圧VoutはAD変換器33によりデジタル信号に変換された後、制御回路34により一時的に記憶される。
【0028】
このように、タッチパッド群GR0の6個のタッチパッド21が順番に選択され、かつ容量変化が検出される。タッチパッド群GR0の6個のタッチパッド21の検出が全て終了すると、制御回路34により一時的に記憶されたデジタル信号は、ICバスインターフェース回路36とシリアルデータ端子SDAを介して、外部のマイクロコンピュータに送信される。
【0029】
次に、クロック出力端子P7クロック出力端子Cdrv1から出力されるクロック信号CLdrvは、駆動線22−1を介して、次のタッチパッド群GR1の環状電極0s〜5sに一定期間印加される。すると、選択回路31は、この一定の期間にセンサ線23−0〜23−5をシーケンス的に選択する。そして、同様に、タッチパッド群GR1の6個のタッチパッド21が順番に選択され、かつ容量変化が検出される。
【0030】
次に、クロック出力端子P8クロック出力端子Cdrv2から出力されるクロック信号CLdrvは、駆動線22−2を介して、次のタッチパッド群GR2の環状電極0s〜5sに一定期間印加される。すると、選択回路31は、この一定の期間にセンサ線23−0〜23−5をシーケンス的に選択する。そして、同様に、タッチパッド群GR2の6個のタッチパッド21が順番に選択され、かつ容量変化が検出される。
【0031】
以下、同様に、タッチパッド群GR3〜GR5のタッチパッド21が順番に選択され、かつ容量変化が検出される。このように、この静電容量型タッチセンサによれば、36個のタッチパッド21の容量変化をシーケンス的に検出するようにしたので、センサ回路30の回路規模を抑えながら、複数の指のタッチ位置を検出することが可能になる。
【0032】
なお、タッチホイール10上のタッチパッド21の個数は自由に適宜変更することができ、それに対応してセンサ回路30の構成も変更することができる。ただし、タッチパッド21の個数は4個以上とし、タッチパッド群の個数nは2以上の自然数であり、各タッチパッド群を構成するタッチパッド21の個数mは2以上の自然数とする。また、タッチパッド21は、円周Rに沿って配置されているが、それに限らず、楕円等の任意の閉曲線に沿って配置されていても良い。
【0033】
また、中央電極0c〜5cの形状は円形であり、環状電極0s〜5sの形状は丸輪状であることがパターンレイアウト上好ましいが、図7に示すように、(a)丸輪状の他に、(b)楕円状、(c)四角状、(d)ひし型状、(e)三角状、などの形状であっても良い。図7においては、(a)〜(d)の各パターン上を人の指等100が通過する場合の電荷増幅器32の出力電圧Voutの波形が示されている。
【0034】
(a)丸輪状のパターンにおいては、電荷増幅器32の出力電圧Voutのピークは、円形の中央電極0c〜5cの中央部にある。つまり、静電容量型タッチセンサのセンサ感度は中央電極0c〜5cの中央部で最大になる。したがって、タッチ位置検出の分解能を上げたい場合に有効である。
【0035】
(b)楕円状のパターンにおいては、電荷増幅器32の出力電圧Voutは(a)の丸輪状のパターンよりも広い範囲に広がる。このため、センサ感度も広い範囲で高くなるので、タッチパッド21の個数が少ない場合に有効である。
【0036】
(c)四角状のパターンにおいても、センサ感度も広い範囲で高くなるが、(b)楕円状のパターンよりも高いセンサ感度が得られる。このため、人の指等100の高い近接感度が求められる場合に有効である。
【0037】
(d)ひし型状のパターンにおいては、電荷増幅器32の出力電圧Voutは、その周辺から中央電極0c〜5cに向かって緩やかに上昇する。つまり、センサ感度に適当な勾配があるので、これを利用して、タッチパッド21をON/OFFスイッチとして利用する以外に、タッチ位置座標の検出に利用する場合に有効である。
【0038】
(e)三角状のパターンにおいても、ひし型状のパターンと同様に、センサ感度に適当な勾配があるので、これを利用して、タッチパッド21をON/OFFスイッチとして利用する以外に、タッチ位置座標の検出に利用する場合に有効である。
【0039】
また、絶縁基板10は、PCB基板に限定されることはなく、ガラス基板、湾曲可能なフィルムであっても良い。絶縁基板10としてガラス基板を採用する場合、ガラス基板上にタッチパッド21や、駆動線22−0〜22−5、センサ線23−0〜23−5等を透明電極材料であるITOで形成し、タッチパッド21をLCDや表示デバイスの上部に配置することで、映像と直結した入力インターフェイスを実現できる。またLEDにより照らされた文字上部に、タッチパッド21を配置し、操作スイッチとして機能するタッチパッド21をより使い易いものにすることも可能である。
【0040】
絶縁基板10として湾曲可能なフィルムを採用する場合、タッチパッド21が形成されたフィルムを湾曲した筐体に貼り付けることにより、平面以外の丸みや突起のあるデザイン性に優れた静電容量型タッチセンサを実現することができる。
【0041】
===電荷増幅器32の構成例と動作===
先ず、電荷増幅器32の構成例を図4に基づいて説明する。電荷増幅器32は、基準静電容量51、差動増幅器52、第1のフィードバック容量53、第2のフィードバック容量54、基準電圧源55、第1のスイッチSW1及び第2のスイッチSW2を含んで構成される。
【0042】
いま、タッチパッド群GR0の1番目のタッチパッド21の中央電極0cに対応するセンサ線23−0が選択回路31により選択されているとする。また、そのタッチパッド21に対応する環状電極0sにクロック信号CLdrvが印加されているとする。タッチパッド21の中央電極0cと環状電極0sとの間には容量値C1を有する静電容量が形成される。
【0043】
基準静電容量51は、第1及び第2の端子を有し、第1の端子が選択回路31により選択されたセンサ線23−0に接続され、第2の端子にクロック信号Cdrvの反転信号*Cdrvが印加される。基準静電容量51の容量値をCrefとする。
【0044】
選択回路31により選択されたセンサ線23−0は、差動増幅器52の非反転入力端子(+)に接続される。基準電圧源55は、クロック信号CLdrvのHレベルとLレベルの差、つまり振幅Vdrvの1/2の電圧である、基準電圧1/2Vdrvを発生する。
【0045】
この基準電圧1/2Vdrvは、差動増幅器52の反転入力端(−)に印加される。
第1のスイッチSW1及び第1のフィードバック容量53は、差動増幅器52の非反転入力端(+)と反転出力端子(−)の間に並列に接続されている。第2のスイッチSW2及び第2のフィードバック容量54は、差動増幅器52の反転入力端子(−)と非反転出力端子(+)の間に並列に接続されている。第1及び第2のフィードバック容量53,54の容量値をCfとする。
【0046】
次に、電荷増幅器32の動作を図5に基づいて説明する。電荷増幅器32はクロック信号CdrvのHレベル、Lレベルに応じて、電荷蓄積モード、電荷転送モードという2つの動作モードを有しており、これらの2つの動作モードが交互に繰り返される。HレベルをVdrv、Lレベルを接地電圧0Vとする。
【0047】
差動増幅器52の反転出力端子(−)からの出力電圧をVomとし、差動増幅器14の非反転出力端子(+)からの出力電圧をVopとすると、両者の差電圧が出力電圧Vout(=Vop−Vom)である。
【0048】
先ず、図5(a)の電荷蓄積モードの時は、クロック信号CLdrvは、Hレベル(=Vdrv)である。すると、タッチパッド21の静電容量の環状電極0sにHレベル(=Vdrv)が印加される。また、基準静電容量51の第2の端子にLレベル(=0V)が印加される。また、このモードではスイッチSW1及びSW2はオンする。これにより、差動増幅器52の反転出力端子(−)と非反転入力端子(+)とが短絡され、非反転出力端子(+)と反転入力端子(−)とがそれぞれ短絡される。この結果、ノードN1(反転入力端子(−)に接続された配線上のノード)、ノードN2(非反転入力端子(+)に接続された配線上のノード)、反転出力端子(−)、非反転出力端子(+)の電圧はそれぞれ1/2Vdrvに設定される。
【0049】
次に、図5(b)の電荷転送モードの時、クロック信号CLdrvは、Lレベル(=0V)である。すると、タッチパッド21の静電容量の環状電極0sには、電荷蓄積モードの時とは逆にLレベル(0V)が印加される。また、基準静電容量51の第2の端子にはHレベル(=Vdrv)が印加される。このモードではスイッチSW1及びSW2はオフする。
【0050】
人の指等がタッチパッド21から遠く離れて、タッチパッド21に影響を及ばさない初期状態において、C1=Cref=Cに設定されているとする。そして、人の指等のタッチにより、静電容量の容量値C1がΔCだけ変化したとする。つまり、C1=C+ΔC、Cref=Cである。
【0051】
図5(a)の電荷蓄積モードの時、ノードN2の電荷量は次式で与えられる。
【0052】
ノードN2の電荷量=(C+ΔC)・(−1/2Vdrv)+C・(1/2Vdrv)+Cf・0 ・・・(1)
図5(b)の電荷転送モードの時、ノードN2の電荷量は次式で与えられる。
【0053】
ノードN2の電荷量=(C+ΔC)・(1/2Vdrv)+C・(−1/2Vdrv)+Cf・(Vcom−1/2Vdrv) ・・・(2)
電荷保存則により、電荷蓄積モードの時と電荷転送モードの時のノードN2の電荷量は互いに等しいから、数式(1)=数式(2)である。この方程式をVomについて解くと次式が得られる。
【0054】
Vcom=(1/2−ΔC/Cf)・Vdrv ・・・(3)
同様にして、ノードN1について、電荷蓄積モードと電荷転送モードの時の電荷量を求め、電荷保存則を適用し、その方程式をVopについて解くと、次式が得られる。
【0055】
Vop=1/2Vdrv ・・・(4)
数式(3)、数式(4)から、Voutを求める。
【0056】
Vout=Vop−Vom=ΔC/Cf・Vdrv ・・・(5)
これにより、電荷増幅器32の出力電圧Voutは、タッチパッド21の静電容量の変化量ΔCに比例して変化することがわかる。上述の計算は、初期状態において、C1=Cref=Cであることを前提としているが、初期状態において、C1とCrefに差がある場合には、キャリブレーション回路を用いて、出力電圧Voutのオフセットが所定
又は最少値になるようにCrefを調整することができる。
【0057】
なお、上述のセンサ回路30においては、電荷増幅器32は、基準静電容量51を備え、選択回路31により選択された1本のセンサ線23−0が接続されたタッチパッド21の中央電極0cと環状電極0sの電極の間に形成される静電容量の容量値C1の変化量ΔCを検出し、ΔCに比例した出力電圧Voutを出力するように構成されている。つまり、シングル検出方式である。
【0058】
これに対して、差動検出方式を用いることもできる。この場合、選択回路31は、2本のセンサ線、例えば、隣接するセンサ線23−0、23−1を選択し、それぞれのセンサ線23−0、23−1に接続されたタッチパッド21の静電容量の容量値の差を検出するように構成する。
【0059】
なお、タッチパッド21の静電容量の変化量ΔCの符号は、電気的モデルにより異なる。電気的モデルについて、図6を参照して説明する。図6は、タッチパッド21の断面図である。図6(a)の初期状態において、ΔC=0である。図6(b)は、人の指等100を誘電体とする誘電体モデルであり、人の指等100がタッチパッド21に近接すると、中央電極0cと環状電極0sの間に生じる電気力線は人の指等100の中を通過することから、その本数は増加する。その結果、タッチパッド21の中央電極0cと環状電極0sの間に形成される静電容量の容量値は増加することなる。つまり、この誘電体モデルによれば、ΔC>0である。
【0060】
一方、図6(c)は、人の指等100を接地された導体とする電界遮蔽モデルであり、人の指等100がタッチパッド21に近接すると、中央電極0cと環状電極0sの間に生じる電気力線は、接地された人の指等100による電界遮蔽効果により減少する。その結果、タッチパッド21の中央電極0cと環状電極0sの間に形成される静電容量の容量値は減少することになる。つまり、この誘電体モデルによれば、ΔC<0である。
【符号の説明】
【0061】
10 絶縁基板
20 タッチホイール
21 タッチパッド
22−0〜22−5 駆動線
23−0〜23−5 センサ線
30 センサ回路
31 選択回路
32 電荷増幅器
33 AD変換器
34 制御回路
35 クロック源
36 ICバスインターフェース回路
37 クロック配線
51 基準静電容量
52 差動増幅器
53 第1のフィードバック容量
54 第2のフィードバック容量
55 基準電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の閉曲線に沿って配置された複数のタッチパッドと、を備え、
各タッチパッドは、中央電極と、この中央電極を囲んで配置された環状電極とを有し、前記複数のタッチパッドは、m個(mは2以上の自然数)のタッチパッドから成るタッチパッド群をn個(nは2以上の自然数)配列して構成され、
更に、各タッチパッド群に対応して設けられ、各タッチパッド群のm個の環状電極に接続されたn本の駆動線と、
各タッチパッド群のm個の中央電極に対応して設けられ、対応する中央電極に接続されたm本のセンサ線と、
前記n本の駆動線にシーケンス的にクロック信号を印加するクロック源と、
前記n本の駆動線の中、1本の駆動線にクロック信号が印加されている間に、前記m本のセンサ線をシーケンス的に選択する選択回路と、
前記選択回路により選択されたセンサ線が接続された前記中央電極と、前記環状電極との間に形成される静電容量の容量値の変化を検出する検出回路と、を備えることを特徴とする静電容量型タッチセンサ。
【請求項2】
前記中央電極は円形状であり、前記環状電極は丸輪状であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型タッチセンサ。
【請求項3】
前記検出回路は、第1及び第2の端子を有し、前記第1の端子が前記選択回路により選択されたセンサ線に接続され、前記第2の端子に前記クロック信号の反転信号が印加された基準静電容量と、
前記選択回路により選択された前記センサ線が非反転入力端子に接続され、反転入力端子に前記クロック信号の第1のレベルと第2のレベルの差の1/2の電圧が印加された差動増幅器と、
前記差動増幅器の非反転入力端子と反転出力端子の間に並列に接続された、第1のスイッチ及び第1のフィードバック容量と、
前記差動増幅器の非反転入力端子と反転出力端子の間に並列に接続された、第2のスイッチ及び第2のフィードバック容量と、
前記クロック信号が第1のレベルの期間に、前記第1及び第2のスイッチをオンし、前記クロック信号が第2のレベルの期間に、前記第1及び第2のスイッチをオフするように制御する制御回路と、を備え、前記非反転出力端子及び前記反転出力端子から前記静電容量の変化に比例する出力電圧を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量型タッチセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−164082(P2012−164082A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23182(P2011−23182)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(300057230)セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (119)
【Fターム(参考)】