説明

静電気除去装置ならびにそれを用いる半導体素子の供給および/または搬送装置、粉体の供給および/または搬送装置

【課題】 半導体素子や粉体などの静電気を除去して、供給装置や搬送装置へ付着したり、塊状にならないようにした静電気除去装置において、静電気を効果的に除去する。
【解決手段】 気体用ノズル3と液体用ノズル4とを2重筒構造とし、それらの軌道の交点の下流側に拡散板6を設ける。気体が供給され、さらに真空ポンプのような吸出し効果によって同心の液体用ノズル4から液体10が吸い出され拡散板6に衝突して微細な混合気体が発生し、筐体2内に充満する。このとき、細かい粒子程、筐体2の上部に漂い、大きく重い粒子程、下部に漂う。これによって重い粒子は下降して再び液体10となり、ティッシュを垂らしても湿めらない程度に小さな粒子は、前記気体の排出によって、上方の排出口7からダクトへ排出され、静電気を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や粉体などの静電気を除去して、それらが供給装置や搬送装置へ付着したり、塊状になってしまうことを防止するようにした静電気除去装置ならびにそれを用いる半導体素子の供給および/または搬送装置、粉体の供給および/または搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような静電気を除去するようにした装置は、以下の特許文献1および2などで提案されている。特許文献1は、パーツフィーダのパーツ面上にイオンを供給して帯電を除去するようにしたパーツフィーダの静電気除去装置において、回転中心となる中央のボルトから、エアとともにイオンを供給することで、静電気を効果的に除去するようにしたものである。
【0003】
一方、特許文献2は、粉体篩い分け機において、篩い分けのスクリーンの周囲の除電器からイオンを吹付けるようにした目詰まり防止装置である。
【特許文献1】特開2003−201010号公報
【特許文献2】特開2004−105908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の各従来技術は、いずれもイオンを吹付けることで、帯電電荷を除去している。したがって、発生した電荷量と同じ電荷量で逆極性のイオンを発生することが困難で、充分な静電気除去効果を得ることが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、充分な静電気除去効果を得ることができる静電気除去装置ならびにそれを用いる半導体素子の供給および/または搬送装置、粉体の供給および/または搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の静電気除去装置は、気体用のノズルと、前記気体用のノズルの軌道に略交わる軌道を有するように配置され、前記気体用のノズルから吐出される気体に吸寄せられて、気化対象液体を吐出する液体用のノズルと、前記気体用のノズルの軌道と液体用のノズルの軌道との交点の下流側に設けられ、前記気化対象液体の混合した気体が衝突し、その混合気体を微細化する拡散板とを含むことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、半導体素子や粉体などの静電気を除去して、それらが供給装置や搬送装置へ付着したり、塊状になってしまうことを防止するようにした静電気除去装置において、気体用のノズルと液体用のノズルとを、それらの軌道が略交わるように配置し、これによって気体用のノズルから吐出される気体に吸寄せられて、液体用のノズルから気化対象液体が吐出され、それらは混合気体となる。その混合気体は、前記気体用のノズルの軌道と液体用のノズルの軌道との交点の下流側に設けられる拡散板に衝突することで微細化され、霧状となる。前記気体用のノズルからの気体の吐出圧で前記混合気体の流量が変化し、前記軌道の交点から拡散板までの距離によって前記混合気体の粒径が変化する。
【0008】
このような極微細な霧状の混合気体を半導体素子のパーツフィーダや粉体を蓄積するホッパなどで発生することで、前記半導体素子や粉体の摩擦によって発生する静電気による電荷を、正負いずれの極性であっても、該霧状の混合気体によって、効果的に除去することができる。また、前記のように混合気体は極微細な霧状であるので、液滴の場合のように半導体素子に錆が発生したり、粉体が塊状になってしまうような不具合もない。
【0009】
また、本発明の静電気除去装置では、前記気体用のノズルと液体用のノズルとは、液体用のノズルの中心に気体用のノズルが嵌め込まれた2重筒構造から成り、両ノズルの吐出面は略一致し、前記液体用のノズルはその吐出面にかけて狭窄部となっていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、2重筒構造につき、気体用のノズルと液体用のノズルとの軌道が交わり、さらに液体用のノズルがその吐出面にかけて狭窄部となっていることで、気体用のノズルから吐出される気体による液体用のノズルからの気化対象液体の吸出しを効果的に行うことができる。
【0011】
したがって、気体の圧力が低くても、前記霧状の混合気体を作成することができ、気体をタンクや簡単なポンプで発生させるようにして、該静電気除去装置を携帯可能なレベルに小型化することができる。
【0012】
さらにまた、本発明の静電気除去装置では、前記狭窄部は、ノズルの軸直角方向での断面が楕円形状であり、楕円の短径部分の内周面が前記気体用のノズルの外周面に略密着し、前記拡散板は、前記気体用のノズルの外径より広く、かつ前記狭窄部の長径部分よりも狭い幅に形成されることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、拡散板が、気体用のノズルの外径より広く形成されることで、気体用のノズルから吐出された気体が確実に衝突し、混合気体の微細化が促進され、前記狭窄部の長径部分よりも狭い幅に形成されることで、生成された霧状の混合気体の排出を促進することができる。
【0014】
したがって、混合気体の微細化および同じ気体流量でも、混合気体の発生量を増大することができる。
【0015】
また、本発明の静電気除去装置は、前記気体用のノズル、液体用のノズルおよび拡散板を収容し、生成された霧状の混合気体の排出口を有する筐体を備えて成ることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、生成された混合気体の内、比較的粒径が大きいものは筐体の壁面、特に天面で液滴となり、排出口から排出されるのは、微細な霧状の混合気体のみとすることができる。
【0017】
さらにまた本発明の静電気除去装置では、前記気体用のノズルの内径は0.5〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mm、外径は1.0〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.0mm、前記液体用のノズルの内径は2.0〜3.0mm、前記液体用のノズルの高さは50〜100mm、好ましくは50〜75mm、前記拡散板の幅は2.0〜4.0mm、好ましくは2.0〜3.0mmに形成されることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、微細な霧状の混合気体を生成するのに好適な構造を実現することができる。なお、気化対象液体は液体用のノズルによって吸い上げられ、外部から加圧されないが、気体用のノズルからは、たとえば0.5〜6kgf/cmで気体を供給すればよい。
【0019】
また、本発明の静電気除去装置は、前記排出口に連結され、所望とする噴霧先へ、生成された霧状の混合気体を供給するダクトをさらに備えることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、前記排出口から排出された混合気体の内、比較的粒径が大きいものはダクトの内壁に付着して液滴となり、該ダクトから排出されるのは、微細な霧状の混合気体のみとすることができる。特に前記ダクトを60cm以上にすると、ダクトから液滴が排出されることを略確実に防止することができる。また、気体としてたとえば空気を用い、その圧力が0.5kgf/cmである場合、前記ダクトの長さとしては2m程度迄延長可能で、ダクトの出口から25cm程度迄噴霧を行うことができる。
【0021】
さらにまた、本発明の静電気除去装置は、静電気量を検出する検出手段と、前記検出手段での検出結果に応答し、前記気体用のノズルへの気体の供給を制御する制御手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、検出手段で検出された静電気量に応じて、制御手段が気体用のノズルへの気体の供給を制御するので、所定量以上の静電気が発生すると、自動的に該静電気除去装置を起動することができる。
【0023】
また、本発明の半導体素子の供給および/または搬送装置は、前記の静電気除去装置を用いることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、パーツフィーダやベルトコンベアなどとして実現され、半導体素子の供給および搬送の少なくとも一方を行う装置において、上記の静電気除去装置を用いることで、これまで半導体素子を揮発性の液体に浸漬したり、装置側を拭き掃除して、静電気を除去していたのに比べて、高い静電気除去効果を得ることができるとともに、静電気除去の手間を省くことができる。
【0025】
さらにまた、本発明の粉体の供給および/または搬送装置は、前記の静電気除去装置を用いることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、粉体の袋詰め装置などとして実現され、ホッパなどに蓄積した粉体を撹拌し、搬送する装置において、上記の静電気除去装置を用いることで、粉体が液体で凝固するようなことはなく、これまで静電気対策が施し難かった粉体に対して、静電気を除去することができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の静電気除去装置は、以上のように、半導体素子や粉体などの静電気を除去して、それらが供給装置や搬送装置へ付着したり、塊状になってしまうことを防止するようにした静電気除去装置において、気体用のノズルと液体用のノズルとを、それらの軌道が略交わるように配置し、これによって気体用のノズルから吐出される気体に吸寄せられて液体用のノズルから気化対象液体が吐出され、得られた混合気体を、前記気体用のノズルと液体用のノズルとの軌道の交点の下流側に設けられる拡散板に衝突させて微細化し、霧状にする。
【0028】
それゆえ、このような極微細な霧状の混合気体を半導体素子のパーツフィーダや粉体を蓄積するホッパなどで発生することで、前記半導体素子や粉体の摩擦によって発生する静電気による電荷を、正負いずれの極性であっても、該霧状の混合気体によって効果的に除去することができる。また、前記のように混合気体は極微細な霧状であるので、液滴の場合のように半導体素子に錆が発生したり、粉体が塊状になってしまうような不具合もない。
【0029】
さらにまた、本発明の半導体素子の供給および/または搬送装置は、以上のように、パーツフィーダやベルトコンベアなどとして実現され、半導体素子の供給および搬送の少なくとも一方を行う装置において、上記の静電気除去装置を用いる。
【0030】
それゆえ、これまで半導体素子を揮発性の液体に浸漬したり、装置側を拭き掃除して、静電気を除去していたのに比べて、高い静電気除去効果を得ることができるとともに、静電気除去の手間を省くことができる。
【0031】
また、本発明の粉体の供給および/または搬送装置は、以上のように、粉体の袋詰め装置などとして実現され、ホッパなどに蓄積した粉体を撹拌し、搬送する装置において、上記の静電気除去装置を用いる。
【0032】
それゆえ、粉体が液体で凝固するようなことはなく、これまで静電気対策が施し難かった粉体に対して、静電気を除去することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の第1の形態に係る静電気除去装置1の基本的構成を示す透視斜視図であり、図2および図3はその具体的構造を示す縦断面図である。この静電気除去装置1は、空気などの気体に水などの気化対象の液体10を混合して、極微細な霧状の気体を発生する噴霧器として実現される。
【0034】
この静電気除去装置1は、大略的に、筐体2内に、2重筒構造に形成される気体用ノズル3および液体用ノズル4と、それらと同心に配置され、それらを外囲する筒体5と、前記ノズル3,4の前方に配置される拡散板6とが収容されて構成されており、前記気体用ノズル3から気体を吹出すことで、液体用ノズル4がその基端部4bから、筐体2の底部に貯留した液体10を吸い上げて吐出し、こうして生成された混合気体が拡散板6に衝突することで前記極微細な霧状になり、排出口7から、それに接続される図示しないダクトを介して外部へ排出する。
【0035】
このため、先ず前記気体用ノズル3は、基台11の略中心から立設され、その基台11内には、接栓12から前記気体用ノズル3に連なる管路13が形成されている。前記接栓12には、コンプレッサやタンクなどの高圧の気体源が接続される。前記管路13の途中には、調圧や気体の供給/遮断を行うことができる調圧ねじ14が設けられている。前記気体用ノズル3は、たとえばSUSパイプから成り、高さH1は75mmであり、図4で示すその内径D1は0.8mmであり、外径D2は1.5mmである。
【0036】
また、前記基台11からは、筒体5が立設されており、その先端5aには、該先端5aを閉塞する板状の支持部材15が取付けられている。前記支持部材15の中央には、前記液体用ノズル4を延長したノズルとなる孔15aが形成されており、その孔15aは、図2および図3で示すように、下方側では前記ノズル4の先端4aが嵌め込まれる円形であり、これによって液体用ノズル4は、その基端部4bが基台11から浮き上がって支持されている。前記液体用ノズル4は、たとえばAlパイプから成り、高さH2は72.5mmであり、その内径D3は3.0mmであり、外径D4は4.0mmである。また、前記液体用ノズル4の基端部4bの基台11からの高さH3は、前記高さH2および支持部材15へ嵌り込む量によっても異なるけれども、たとえば0.5〜2.0mmである。さらにまた、前記筒体5の内径D5は18.0mmであり、外径D6は20.0mmである。
【0037】
前記孔15aの出口は前記気体用ノズル3の吐出面と略一致する。したがって、前記気体用ノズル3と液体用ノズル4との軌道が交わり、気体用ノズル3から吐出される気体に吸寄せられて、液体用ノズル4が気化対象の液体10を吸い上げ、吐出することができる。
【0038】
また、前記孔15aは、上方側では、軸直角断面が楕円形状に形成されており、したがって狭窄部15bを形成する。前記孔15aの楕円の短径方向の長さW1は、前記気体用ノズル3の外径D2に略等しく形成され、該孔15a内を前記気体用ノズル3の先端3aが挿通する。こうして、支持部材15は、前記ノズル3,4の先端3a,4aを、これらの軸線とは交差する方向への変位を阻止して支持する(揺れ止めを行う)。前記長さW1は、たとえば2.0mmであり、狭窄部15bの高さH4は1.5mmであり、孔15aの先端側の気体用ノズル3に平行な部分の長さH5は1.5mmである。この狭窄部15bは、気体の圧力が比較的低圧でも液体の吸出しを可能にするものであり、気体の圧力が高いときには特に設けなくてもよく、前記のように形成することで、0.5kgf/cm程度の低圧での液体の吸出しが可能になる。
【0039】
前記支持部材15上において、前記楕円形状の孔15aの短径方向には、板に切り欠き部6aを形成して成る前記拡散板6が配置される。その拡散板6の幅W2は、前記気体用ノズル3の外径D2より広く、かつ前記狭窄部15bの長径部分の幅W3よりも狭い幅に形成され、たとえば前記幅W2は3.0mmであり、前記幅W3は4.0mmである。また、前記切り欠き部6aの幅W4は10.0mmであり、高さH6は1.0mmである。この高さH6によって、混合気体における水分の粒径が変化し、狭い程小さくなる。したがって、支持部材15から拡散板6を交換可能にすることで、または拡散板6の支持部材15からの高さ調整を可能にすることで、前記水分の粒径を調整することができる。一方、混合気体の量は、気体の圧力によって変化する。
【0040】
前記筒体5の基端部5bの一部分は、切り欠かれて、該筒体5の内外を連通する開口5cが形成されており、その開口5cを通して、前記液体用ノズル4に液体10が供給される。
【0041】
前記筐体2は、たとえばその幅W5が50mm角で、高さH7は、前記ノズル3,4の吐出面である支持部材15の上面からの高H8さが50mm以上であると、後述するように排出口7から排出される混合気体から液滴成分を略無くすことができるので、たとえば150mmに形成される。前記排出口7は、たとえばその径W6が20mmで、高さH9は30mmに形成される。
【0042】
図5は上述のように構成される静電気除去装置1において、微細な霧状の混合気体を発生するメカニズムを詳しく説明するための縦断面図である。この図5は、前記図3に基づいている。図5(a)は気体用ノズル3から吹出される気体の流れを示し、図5(b)は液体用ノズル4から吹出される液体の流れを示し、図5(c)はそれらが混合した混合気体の流れを示す図である。
【0043】
外部の気体源から接栓12を介して気体用ノズル3に気体が供給されると、該気体は図5(a)で示すように筐体2内に充満し、排出口7から図示しないダクトを通って排出されるとともに、液体10の液面を僅かに押圧する。
【0044】
これによって、液体用ノズル4が液体10を取込み易くなり、さらに前記気体用ノズル3から吹出す気体による真空ポンプのような吸出し効果によって、図5(b)で示すように、同心の液体用ノズル4から液体10が吸い出され、さらに拡散板6に衝突して微細な混合気体が発生し、筐体2内に充満する。このとき、細かい粒子程、筐体2の上部に漂い、大きく重い粒子程、下部に漂う。
【0045】
これによって、図5(c)で示すように、重い粒子は下降して再び液体10となり、また比較的軽い粒子でも、天面2bや壁面2cに付着して再結晶化すると、落下して再び液体10となる。一方、前記天面2bや壁面2cに付着しなかった小さな粒子は、前記気体の排出に伴って、上方の排出口7からダクトへ排出される。
【0046】
前記排出口7から排出された混合気体の内、比較的粒径が大きいものはダクトの内壁に付着して液滴となり、該ダクトから排出されるのは、微細な霧状の混合気体のみとなる。特に前記ダクトを60cm以上にすると、ダクトから液滴が排出されることを略確実に防止することができる。また、気体としてたとえば空気を用い、その圧力が0.5kgf/cmである場合、前記ダクトの長さとしては2m程度迄延長可能で、ダクトの出口から25cm程度迄噴霧を行うことができる。
【0047】
図6は、前記静電気除去装置1の具体的な一構成例を示す斜視図である。この例では、該静電気除去装置1は、基台21に搭載され、その基台21にはまた、該静電気除去装置1の側方に、前記液体10のリザーバタンク22が搭載されている。このリザーバタンク22と筐体2とは、その下端側で相互に連通しており、両者を合わせて、たとえば350ccの液体10を貯留することができる。リザーバタンク22の上面には、溶液カートリッジのノズルを受け入れる注入口23が形成されている。
【0048】
図7は、前記静電気除去装置1の一使用例を示す図である。この例では、電子部品を供給するパーツフィーダ31に本静電気除去装置1が使用されている。該静電気除去装置1の排出口7にはダクト32が連結され、その先端32aが前記パーツフィーダ32のパーツ面上に臨み、霧状の混合気体を排出する。前記パーツ面上には、静電気量を検出する検出手段33が設けられており、その検出結果に応答して、制御回路34は、コンプレッサ35から前記接栓12への管路36に介在した電磁弁37を、静電気量が予め定めるレベルを超えるとONして気体を供給させ、前記予め定めるレベル以下ではOFFして気体の供給を遮断させる。このようにフィードバック制御によって、自動的に混合気体の発生をON/OFF制御する。
【0049】
なお、前記検出手段33および制御回路34を用いることなく、タイマ連動などで、静電気が蓄積されそうな周期毎に、予め定める時間だけ電磁弁37をONさせるようにしてもよい。
【0050】
また、図8は、前記静電気除去装置1の他の使用例を示す図である。この例では、電子部品を搬送するベルトコンベア38に本静電気除去装置1が使用されている。該静電気除去装置1の排出口7には前記ダクト32が連結され、そのダクト32は、前記ベルトコンベア38の搬送方向とは交差する方向に設けられ、前記ベルトコンベア38の略全長に亘って吹出し口39を有する棒状のノズル部材40に接続される。棒状のノズル部材40において、前記吹出し口39は、好ましくはベルトコンベア38の搬送方向下流側に向けて形成される。本使用例でも、前記検出手段33を用いたフィードバック制御が行われてもよい。
【0051】
表1および表2は、本件発明者の実験結果を示すものである。共に、各気体の圧力での前記パーツフィーダ31への混合気体の供給による静電気電圧の減少の様子を示すものであり、表1はダクト32の長さが60cmの場合であり、表2は2mの場合である。また、気体は空気とし、コンプレッサから表記の各圧力で供給し、液体10は水道水としている。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1および表2から明らかなように、ダクト32が長くなると、該ダクト32内での再結晶化が多くなり、エア圧が同じならばエア量は変わらないけれども、水道水の含有量(霧の量)が少なくなり、除電効果が多少悪くなっている。しかしながら、5分もすれば、かなりの除電効果が得られていることが理解される。0.5kV以下であれば、パーツがパーツフィーダ31のパーツ面の中心に塊まらなくなり、円滑な供給を行うことができる。また、発生された霧は、いずれのエア圧でも、ダクト32の出口にティシュペーパを垂らせてみても、湿りすら感じない程度であり、水道水であっても、パーツに錆などの不具合が発生する虞も少ない。
【0055】
必要に応じて、本発明の静電気除去装置1では、前記液体10として、純水、アルカリ還元水および前記水道水などの水に限らず、それらに溶剤を溶かした物や、アルコールなど、静電気を除去すべき対象物に応じた液体を使用することができる。ただし、油脂類などで、粘性の高いものは気化させにくく、不適な物もある。同様に気体も、コンプレッサーで圧縮した空気や、ボンベに詰めた不活性ガスなどから、任意に選択することができる。
【0056】
また、表3には、各エア圧に対する液体10の消費量を示す。液体10を予め定める各量だけ筐体2(および前記リザーバタンク22)に投入したときに、霧の発生を持続することができた時間を示す。この表3から、多少のばらつきはあるものの、表4で示すように、各エア圧での液体10の消費率(単位時間当りの消費量)は、液体10の残量に拘わらず、略一定であることが理解される。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
さらにまた、ダクト32の出口を先細状に絞ったり、ホーン状に拡大したりすることで、混合気体の拡散幅を調整することができる。エア圧および照射位置までの距離の調整も合わせて、たとえば、0.5kgf/cmで対象ワークとしては1cm以下の小型のトランジスタやチップ抵抗、チップコンデンサなどを供給する小型のパーツフィーダ、1.0〜2.0kgf/cmでφ=25〜60cmの中小型のパーツフィーダ、2.0〜4.0kgf/cmで前記中小型のパーツフィーダや生産ライン或いは粉体のホッパ、4.0kgf/cm以上で大型のパーツフィーダや生産ライン或いは粉体のホッパに使用することができる。
【0060】
このように構成することで、前記半導体素子や粉体の摩擦によって発生する静電気による電荷を、正負いずれの極性であっても、霧状の混合気体によって効果的に除去することができる。また、前記のように混合気体は極微細な霧状であるので、液滴の場合のように半導体素子に錆が発生したり、粉体が塊状になってしまうような不具合もない。これによって、本発明の静電気除去装置31を、パーツフィーダやベルトコンベアなどとして実現され、半導体素子の供給および搬送の少なくとも一方を行う装置に適用した場合、格段に高い静電気除去効果を得ることができるとともに、静電気除去の手間を省くことができる。また、粉体の袋詰め装置などとして実現され、ホッパなどに蓄積した粉体を撹拌し、搬送する装置に適用した場合、粉体が液体で凝固するようなことはなく、これまで静電気対策が施し難かった粉体に対して、静電気を除去することができるようになる。また、上記のような電子部品や粉体に限らず、樹脂製品、科学繊維、金属薄板などにも適用することができる。
【0061】
さらにまた、前記特許文献1や特許文献2のように、発生した静電気とは逆極性で、略等しい電圧のイオンを発生する場合には、極性や電圧の検知から対応したイオンの発生までに複雑な制御が必要となるのに対して、本発明の静電気除去装置1では、制御回路34は、検出手段33の検出結果が予め定めるレベル以上であるか否かから電磁弁37をON/OFF制御するだけであり、簡単な構成で効果的にフィードバック制御を行うことができる。
【0062】
また、制御回路34によるフィードバック制御を行わなければ、電源を確保する必要はなく、気体源の確保と、前記のような時々の液体10の補給を行えばよく、設置が容易で、かつ移動も容易である。しかも、専門的な知識がなくても、設置や維持が可能であるとともに、構造が簡単であるので、故障の可能性も少ない。
【0063】
さらにまた、液体用ノズル4の中心に気体用ノズル3が嵌め込まれた2重筒構造とすることで上述のように両ノズル3,4の軌道を交差させ、さらに液体用ノズル4がその吐出面にかけて狭窄部15bとなっていることで、気体用ノズル3から吐出される気体による液体用ノズル4からの液体10の吸出しを効果的に行うことができる。したがって、気体の圧力が、前記0.5kgf/cm程度に低くても、前記霧状の混合気体を作成することができ、気体をタンクや簡単なポンプで発生させるようにして、該静電気除去装置1を携帯可能なレベルに小型化することができる。これによって、上述のような工業用途に限らず、衣類の静電気除去やドアノブの静電気除去、或いは消臭用途などの一般家庭を含むような用途にも使用することができる。
【0064】
また、前記狭窄部15bをノズル3,4の軸直角方向での断面が楕円形状とし、前記拡散板6を、気体用ノズル3の外径より広く形成することで、該気体用ノズル3から吐出された気体が確実に衝突して混合気体の微細化が促進されるようになり、前記狭窄部15bの長径部分よりも狭い幅に形成することで、生成された霧状の混合気体の排出を促進することができる。したがって、混合気体の微細化および同じ気体流量でも、混合気体の発生量を増大することができる。
【0065】
上述の例では、気体用ノズル3の内径D1は0.8mmであり、外径D2は1.5mmであったけれども、これに限らず、D1=0.5〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mm、D2=1.0〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.0mmであればよく、前記液体用ノズル4の内径D3は3.0mmであり、高さH2は72.5mmであったけれども、D3=2.0〜3.0mm、H2=50〜100mm、好ましくは50〜75mmであればよく、前記拡散板6の幅W2は3.0mmであったけれども、W2=2.0〜4.0mm、好ましくは2.0〜3.0mmであればよい。ユーザの望む液体10の貯留量が大きくなる程、すなわち補充サイクルが長くなる程、液面高さが高くなるので、前記高さH2が高くなり、ユーザの望む気体の圧力が低くなる程、気体用ノズル3の内径D1および外径D2ならびに液体用ノズル4の内径D3および外径D4は小さくなる。
【0066】
[実施の形態2]
図9は本発明の実施の第2の形態に係る静電気除去装置41の構造を示す縦断面図である。この図9は、前述の図2に対応しており、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、この静電気除去装置41では、前記筒体5の基端部5bが基台11に固定されておらず、代りに基台11に固定され、筒体5が内挿する案内筒42が設けられており、筒体5が浮上可能となっていることである。
【0067】
これに対応して、前記案内筒42の基端部42bには前記開口5cに連通する開口42cが形成されている。また、筐体2の上部側には、浮力および気体用ノズル3からの気体の吐出圧による前記筒体5の必要以上の浮上を阻止するストッパ43が取付けられている。さらにまた、支持部材45の板厚が前記支持部材15よりも厚く形成されており、狭窄部45bに続く孔45aが前記孔15aに比べて延長形成され、筒体5の浮上がりによっても、気体用ノズル3が該孔45aから外れないようになっている。
【0068】
したがって、前記液体10が多く投入された場合は、筒体5および支持部材45内に抱え込んだ気体の浮力によって筒体5が浮上がり、これによって液体10が支持部材45の孔45a側から侵入し、混合気体の発生ができなくなってしまうことを未然に防止することができる。ただし、気体が液体10と混合した後に、長い孔45aを通過することになるので、使用可能な気体の最低圧力は若干上昇する。
【0069】
前記ストッパ43に代えて、筒体5の基端部5bにフランジを形成し、案内筒42の先端に内向きのフランジを形成することで、筒体5の浮き上がりを防止するようにしてもよい。
【0070】
[実施の形態3]
図10および図11は本発明の実施の第3の形態に係る静電気除去装置51の構造を示す図であり、図10は縦断面図であり、図11はノズル3,54の軸直角断面図である。上述の静電気除去装置1,41では、気体用ノズル3と液体用ノズル4とは2重筒構造となっており、それらの軌道は一致するけれども、本発明の最小限の構成は、図10および図11で示すように、気体用ノズル3の軌道と液体用ノズル54の軌道とが略交わるように配置し、その軌道の交点の下流側に拡散板6を設けるだけでよい。
【0071】
しかしながら、前述の2重筒構造に比べて、気体用ノズル3から吐出される気体による液体用ノズル54からの液体10の吸出効率が悪く、この場合も、使用可能な気体の最低圧力は上昇する。
【0072】
そこで、図12や図13で示すように、液体用ノズル54の径を小さくして、気体用ノズル3の外周面に複数配置することで、前記図10および図11で示す1本の構成に比べて、使用可能な気体の最低圧力を低下させることができる。たとえば2.0kgf/cm程度まで使用可能となる。
【0073】
[実施の形態4]
図14および図15は本発明の実施の第4の形態に係る静電気除去装置61の構造を示す図であり、図14は縦断面図であり、図15はノズル3,64の平面図である。この静電気除去装置61も、気体用ノズル3の周囲から複数の液体用ノズル64が近接して、その軌道を略一致させるけれども、各液体用ノズル64は、その基端部64b側が相互に違反している。このため、各液体用ノズル64および気体用ノズル3は、脚部材65によって纏められている。各液体用ノズル64が挿通する脚部材65の基端部65bには、液体10の貯留部66がそれぞれ設けられている。
【0074】
したがって、複数種類の液体10の混合気体を作成することができる。混合割合は、各液体用ノズル64の径や、気体用ノズル3との合流位置を異ならせることで、調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係る静電気除去装置の基本的構成を示す透視斜視図である。
【図2】図1の具体的構造を示す縦断面図である。
【図3】図1の具体的構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の第1の形態に係る静電気除去装置におけるノズルの正面図である。
【図5】前記静電気除去装置における微細な霧状の混合気体を発生するメカニズムを詳しく説明するための縦断面図である。
【図6】前記静電気除去装置の具体的な一構成例を示す斜視図である。
【図7】前記静電気除去装置の一使用例を示す図である。
【図8】前記静電気除去装置の他の使用例を示す図である。
【図9】本発明の実施の第2の形態に係る静電気除去装置の構造を示す縦断面図である。
【図10】本発明の実施の第3の形態に係る静電気除去装置の構造を示す縦断面図である。
【図11】本発明の実施の第3の形態に係る静電気除去装置におけるノズルの軸直角断面図である。
【図12】本発明の実施の第3の形態に係る静電気除去装置におけるノズルの軸直角断面図である。
【図13】本発明の実施の第3の形態に係る静電気除去装置におけるノズルの軸直角断面図である。
【図14】本発明の実施の第4の形態に係る静電気除去装置の構造を示す縦断面図である。
【図15】本発明の実施の第4の形態に係る静電気除去装置におけるノズルの平面図である。
【符号の説明】
【0076】
1,41,51,61 静電気除去装置
2 筐体
3 気体用ノズル
4,54,64 液体用ノズル
5 筒体
6 拡散板
10 気化対象の液体
11 基台
12 接栓
13 管路
14 調圧ねじ
15,45 支持部材
15a,45a 孔
15b 狭窄部
2b 天面
2c 壁面
21 基台
22 リザーバタンク
31 パーツフィーダ
32 ダクト
33 検出手段
34 制御回路
35 コンプレッサ
36 管路
37 電磁弁
38 ベルトコンベア
39 吹出し口
40 ノズル部材
42 案内筒
43 ストッパ
65 脚部材
66 貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体用のノズルと、
前記気体用のノズルの軌道に略交わる軌道を有するように配置され、前記気体用のノズルから吐出される気体に吸寄せられて、気化対象液体を吐出する液体用のノズルと、
前記気体用のノズルの軌道と液体用のノズルの軌道との交点の下流側に設けられ、前記気化対象液体の混合した気体が衝突し、その混合気体を微細化する拡散板とを含むことを特徴とする静電気除去装置。
【請求項2】
前記気体用のノズルと液体用のノズルとは、液体用のノズルの中心に気体用のノズルが嵌め込まれた2重筒構造から成り、両ノズルの吐出面は略一致し、前記液体用のノズルはその吐出面にかけて狭窄部となっていることを特徴とする請求項1記載の静電気除去装置。
【請求項3】
前記狭窄部は、ノズルの軸直角方向での断面が楕円形状であり、楕円の短径部分の内周面が前記気体用のノズルの外周面に略密着し、前記拡散板は、前記気体用のノズルの外径より広く、かつ前記狭窄部の長径部分よりも狭い幅に形成されることを特徴とする請求項2記載の静電気除去装置。
【請求項4】
前記気体用のノズル、液体用のノズルおよび拡散板を収容し、生成された霧状の混合気体の排出口を有する筐体を備えて成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電気除去装置。
【請求項5】
前記気体用のノズルの内径は0.5〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mm、外径は1.0〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.0mm、前記液体用のノズルの内径は2.0〜3.0mm、前記液体用のノズルの高さは50〜100mm、好ましくは50〜75mm、前記拡散板の幅は2.0〜4.0mm、好ましくは2.0〜3.0mmに形成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の静電気除去装置。
【請求項6】
前記排出口に連結され、所望とする噴霧先へ、生成された霧状の混合気体を供給するダクトをさらに備えることを特徴とする請求項4または5記載の静電気除去装置。
【請求項7】
静電気量を検出する検出手段と、
前記検出手段での検出結果に応答し、前記気体用のノズルへの気体の供給を制御する制御手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電気除去装置。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電気除去装置を用いることを特徴とする半導体素子の供給および/または搬送装置。
【請求項9】
前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電気除去装置を用いることを特徴とする粉体の供給および/または搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−26871(P2007−26871A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207017(P2005−207017)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(505270197)
【出願人】(505270201)
【出願人】(505270599)
【出願人】(505270762)
【Fターム(参考)】