静電潜像の測定装置、静電潜像の測定方法および画像形成装置
【課題】感光体の表面に生じている電荷分布あるいは電位分布を、ミクロンオーダーの高分解能で計測することが可能な静電潜像の測定装置、測定方法および測定された感光体を用いた画像形成装置を得る。
【解決手段】感光体試料20に電子ビームを照射して帯電させ、露光部6によって静電潜像を形成し、電子ビームの走査によって感光体試料20からの放出電子を検出し、この検出信号により感光体試料面の静電潜像分布を測定する。露光部6は、LD光源61と、光偏向器65と、レーザー光の走査範囲の端部で同期信号を生成する同期信号生成手段と、同期信号に基づきレーザー光が感光体試料面を走査するときの発光タイミング制御信号を生成する書込みタイミング信号生成手段と、を備え、露光部6による露光の終了から所定のタイミングで静電潜像の分布を測定する。
【解決手段】感光体試料20に電子ビームを照射して帯電させ、露光部6によって静電潜像を形成し、電子ビームの走査によって感光体試料20からの放出電子を検出し、この検出信号により感光体試料面の静電潜像分布を測定する。露光部6は、LD光源61と、光偏向器65と、レーザー光の走査範囲の端部で同期信号を生成する同期信号生成手段と、同期信号に基づきレーザー光が感光体試料面を走査するときの発光タイミング制御信号を生成する書込みタイミング信号生成手段と、を備え、露光部6による露光の終了から所定のタイミングで静電潜像の分布を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像の測定装置、静電潜像の測定方法および画像形成装置に関するもので、特に、光源として半導体レーザーを用いたものにおいて、消灯時のバイアス電流による発光の悪影響を回避することにより、高精度・高品質の静電潜像を形成することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置は感光体を備えていて、この感光体に対し、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニングの各プロセスを実行するためのユニットを有してなる。上記感光体には、帯電プロセスと露光プロセスが実行されることにより静電潜像が形成されるが、この静電潜像の精度ないしは品質が、形成される画像の精度ないしは品質を決める。感光体に形成される静電潜像の精度ないしは品質の決め手は、静電潜像が形成されている状態での表面電位であり、この表面電位を計測することによって感光体の性能ないしは品質が評価される。
【0003】
従来、試料の表面電位を計測する方法として、電位分布を有する試料にセンサヘッドを近づけ、そのときの相互作用として起こる静電引力や誘導電流を計測して、電位分布に換算する方式がある。この方式では、分解能が原理的に数ミリ程度と悪く、1ミクロンの分解能を得ることができない。
【0004】
電子ビームによる静電潜像の観察方法として、特許文献1記載の発明などがあるが、試料としては、LSIチップや静電潜像を記憶・保持できる試料に限定されている。すなわち、画像形成装置などに通常使用されている暗減衰を生じる感光体は測定することができない。通常の誘電体は電荷を半永久的に保持することができるので、電荷分布を形成後、時間をかけて測定を行っても、測定結果に影響を与えることはない。しかしながら、画像形成装置に用いられている像担持体としての感光体の場合は、抵抗値が無限大ではないので、電荷を長時間保持できず、暗減衰が生じて時間とともに表面電位が低下する。感光体が電荷を保持できる時間は、暗室であってもせいぜい数十秒である。従って、帯電・露光後に電子顕微鏡(SEM)内で観察しようとしても、その準備段階で静電潜像は消失してしまう。
【0005】
また、特許文献2に記載されている装置においては、本発明が対象とする感光体試料とは使用波長が全く異なる上に、任意のラインパターンや、所望のビーム径およびビームプロファイルの潜像を形成することは不可能であり、本発明の目的を達成することができない。
【0006】
そこで、我々は、暗減衰を有する感光体試料であっても静電潜像を測定することができる方式を考案した(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0007】
感光体試料表面に電荷分布があると、空間に表面電荷分布に応じた電界分布が形成される。このため、入射電子によって発生した2次電子はこの電界によって押し戻され、検出器に到達する量が減少する。従って、電界強度が強い部分は暗く、弱い部分は明るくなってコントラストがつき、表面電荷分布に応じたコントラスト像を検出することができる。従って、感光体を露光した場合には、露光部が黒、非露光部が白となり、これより形成された静電潜像を測定することができる。
【0008】
ところで、静電潜像を形成するための露光光源として、波長が可視光領域から赤外光領域の半導体レーザーを用い、レーザー光の点灯及び消灯で、静電潜像を形成する方法がある。
【0009】
実際の書込みプロセスを再現するために、光束が感光体試料面上を走査しているタイミングで点灯および消灯して所望パターンの静電潜像を形成する。そのためには、走査の開始位置を検知する必要がある。そして、感光体試料の所望の位置に潜像を形成するために、決められた位置で光を点灯する必要がある。また、光源として用いられる半導体レーザーは、基準以上の駆動電流を与えることでレーザー発振をするが、光応答性を高めるため、光の消灯のタイミングでも基準以下の一定の駆動電流(バイアス電流)を常に供給している。バイアス電流があるとLED発光を起こす。すなわち、半導体レーザーを用いる場合は、消灯の状態であっても発光していることを意味する。
【0010】
このときすなわちバイアス電流が流れているときの光量は微弱であるため、照射時間が短い場合には静電潜像に影響はない。しかしながら、光量が微弱でも、長時間照射されると積分光量が増加し、感光体の必要露光量に達すると、静電潜像が形成されてしまう。この結果、所望の静電潜像を形成することができなくなる。
従って、半導体レーザーを用いて、所望の静電潜像を形成するためには、消灯時のバイアス電流による発光が試料に照射される時間を極力抑える必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術ではきわめて困難であった、誘電体からなる感光体の表面に生じている電荷分布あるいは電位分布を、ミクロンオーダーの高分解能で計測することが可能な静電潜像の測定装置および測定方法を提供することを目的とし、特に、走査光学系からなる露光部にて露光された感光体上の静電潜像を測定する装置および測定方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、上記装置を用いて上記測定方法で測定された感光体を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0012】
なお、ここで述べる表面電荷について定義しておく。電荷は、厳密には、試料内に空間的に散らばっていることは周知の通りである。このため、表面電荷とは、電荷分布状態が、厚さ方向に比べて面内方向に大きく分布している状態を指すものとする。また、電荷は、電子だけでなく、イオンも含める。
また、表面に導電部があり、導電部分に電圧が印加されて、それにより、試料表面あるいはその近傍が電位分布を生じている状態であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させる電子ビーム照射装置と、帯電した上記感光体試料面に静電潜像を形成するための露光部と、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出する検出器と、を備え、上記検出器によって得られる検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定装置において、上記露光部は、半導体レーザーからなる光源と、上記感光体試料面を上記光源からのレーザー光で走査させる光偏向器と、上記レーザー光の走査範囲の端部で上記レーザー光を検出して同期信号を生成する同期信号生成手段と、上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成する書込みタイミング信号生成手段と、を備え、上記露光部による露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを最も主要な特徴とする。
【0014】
本発明はまた、前記露光部の光源として複数の発光部を持つ半導体レーザーを用い、同期信号生成手段からの同期信号によって発光する発光部と、書込みタイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部とが異なっている構成としてもよい。
本発明はまた、前記同期タイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部は、複数の発光部である構成としてもよい。
本発明はまた、前記露光部の光源は半導体レーザーであり、基準クロックと同期信号から画素クロックを生成する画素クロック生成手段と、画素情報から画素パターンを生成する画素パターン生成手段とを有する構成としてもよい。
【0015】
本発明はまた、測定時以外は感光体試料面への光の入射を遮蔽するシャッタと、露光タイミングと連動して上記シャッタの開閉を制御するシャッタ制御手段を有する構成としてもよい。
前記シャッタ制御手段は、走査光学系の同期信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にデータ有効期間信号に連動してシャッタを閉じる手段を有する構成としてもよい。
シャッタ手段はメカニカルシャッタであってもよい。
本発明はまた、入射する荷電粒子の試料垂直方向の速度ベクトルが反転する領域が存在する条件下で測定するように構成してもよい。
【0016】
本発明はまた、感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、上記レーザー光の走査範囲の端部で同期信号生成手段により上記レーザー光を検出して同期信号を生成し、上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成し、露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを特徴とする。
【0017】
本発明はまた、感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、静電潜像を形成する時間の前後で、光源からのレーザー光が感光体試料の観察領域に到達しないように遮蔽することで、上記半導体レーザーのバイアス電流によるオフセット発光の影響を抑制することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、感光体の面に電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置であって、上記感光体は、請求項1乃至9のいずれかに記載の静電潜像の測定装置によって測定された感光体であることを特徴とする。
【0019】
上記画像形成装置において、書込み光源から射出されるレーザー光の波長が780nm以下であり、かつ、感光体面での副走査方向のビームスポット径が60μm以下であり、感光体面での副走査方向のビームスポット径をAとし、形成される副走査方向の潜像径をBとすると、
1.0<B/A<2.0
を満足する構成にするとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る静電潜像の測定装置によれば、露光部の光源として半導体レーザーを用い、同期信号生成手段と、光束が試料面を走査するときの発光タイミングを制御する書込みタイミング信号生成手段とを有することにより、同期発光による発熱が書込み発光に与える影響を小さくできるので、光パワーの揃った書込みを行うことができ、精度の高い測定を行うことができる。
【0021】
露光部の光源として複数の発光部を持つ半導体レーザーを用い、同期タイミング信号生成手段で発光させる発光部と、書込みタイミング信号生成手段で発光させる発光部とを、互いに異なる発光部としたものによれば、同期用発光の書込み用発光による影響を低減して、精度の高い測定を行うことができる。
【0022】
複数の発光部を発光させて同期信号を得るものによれば、発光パワーの小さい発光部を持つ光源においても、位置精度の良い静電潜像を形成させることができ、高分解能で測定することが可能となる。
【0023】
露光部の光源として半導体レーザーを用い、基準クロックと同期信号から画素クロックを生成する画素クロック生成手段と、画素情報から画素パターンを生成する画素パターン生成手段とを有するものによれば、鮮明な静電潜像を形成することができ、その結果、静電潜像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0024】
走査光学系の同期検知信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にシャッタを閉じる手段を有するものによれば、シャッタの開放時間を必要最低限に抑えることができるため、ノイズの少ない鮮明な静電潜像を形成することができ、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0025】
前記シャッタ制御手段が走査光学系の同期検知信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にシャッタを閉じる手段を有するものによれば、シャッタの開放時間を必要最低限に抑えることができるため、ノイズの少ない鮮明な静電潜像を形成することができ、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0026】
シャッタ手段として、メカニカルシャッタを用いたものによれば、レーザー光の透過波面を劣化させることなく、高速にオフセット発光を遮光することができ、精度の高い静電潜像を形成することができ、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0027】
入射する荷電粒子の試料垂直方向の速度ベクトルが反転するような領域が存在する条件下で測定する手段を有するものによれば、電位深さを定量的に計測することができ、電位分布を高精度に測定することが可能となる。
【0028】
露光部の光源として半導体レーザーを用い、そのバイアス電流によるオフセット発光等を遮蔽するためのシャッタ手段を有するものによれば、所望の静電潜像を形成することが可能となり、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0029】
本発明に係る画像形成装置によれば、前記測定装置を用いて感光体に形成される静電潜像を評価し、これを設計にフィードバックすることができる。したがって、画像を形成するための各プロセスの質が向上し、高品質の画画像を得ることができるとともに、耐久が高く、安定性が高く、省エネルギー化に優れた潜像担持体及びこれを用いた画像形成装置を提供することができる。
特に、画像濃度むらが生じやすいVCSELなどのマルチビーム走査光学系を搭載した画像形成装置においても、上記の効果を得ることができるため、マルチビーム走査光学系を搭載した画像形成装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る静電潜像の測定装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【図2】上記実施例の真空チャンバおよび露光部の構造を示す断面図である。
【図3】荷電粒子捕獲器と試料との間の空間における電位分布を示すもので、(a)は等高線表示による説明図、(b)は上記等高線中のポテンシャルの穴を示す模式図である。
【図4】本発明に露光部として適用可能な光走査装置の例を示す斜視図である。
【図5】上記露光部の光源として適用可能な垂直共振器型面発光半導体レーザーの2次元アレイの例を示す配列図である。
【図6】上記半導体レーザーの2次元アレイをなす各発光点の特定例を示す配列図である。
【図7】光源の発光部が同期ビームを発光させるための発光部と書込み用ビームを発光させるための発光部に分けられている例を示す配列図である。
【図8】上記露光部の光源駆動回路の例を示すブロック図である。
【図9】上記光源駆動回路の制御装置の例を示すブロック図である。
【図10】上記制御装置の各回路部分の動作を示すタイミングチャートである。
【図11】半導体レーザーの駆動電流と光出力の関係を示すグラフである。
【図12】レーザー光の遮蔽手段の有無による露光の違いを比較して示すもので、(a)は遮蔽手段を備えていない場合、(b)は遮蔽手段を備えている場合を示すグラフである。
【図13】前記本発明の実施例における各信号相互のタイミングチャートである。
【図14】上記本発明の実施例における制御系の構成を示すブロック図である。
【図15】上記制御系の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施例に用いられているメカニカルシャッタの機能を示す模式図である。
【図17】潜像画像パターンの各種例を示す模式図である。
【図18】本発明に係る静電潜像の測定装置の別の実施例の要部を模式的に示す正面図である。
【図19】入射電子と感光体試料の関係を示すもので、(a)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより大きい場合、(b)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより小さい場合を示す模式図である。
【図20】潜像の深さ計測結果の一例を示すグラフである。
【図21】ビームスポット径及び潜像径を示す概念図である。
【図22】本発明に係る画像形成装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る静電潜像の測定装置、静電潜像の測定方法および画像形成装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0032】
図1に本発明に係る静電潜像の測定装置の実施例を示す。図1において、静電潜像の測定装置は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子照射部(電子ビーム照射装置)、露光部、試料設置部、1次反転荷電粒子や2次電子などの検出部を有してなる。ここでいう、荷電粒子とは、電子ビームあるいはイオンビームなど電界や磁界の影響を受ける粒子を指す。この実施例では、荷電粒子照射部は電子ビーム照射装置からなっていて電子ビームを照射するようになっている。以下、静電潜像の測定装置の実施例を詳細に説明する。
【0033】
図1において、荷電粒子ビーム照射装置である電子ビーム照射装置4は、各構成部分が真空チャンバ40内に以下のように組み込まれることによって構成されている。真空チャンバ40の上端近くに荷電粒子ビームを照射する電子銃41が取り付けられ、その下方に、サプレッサ電極42、エキストラクタすなわち引き出し電極43、加速電極44、コンデンサレンズ45、ビームブランキング電極46、仕切り弁47、可動絞り48、スティグメータすなわち補正用電極49、偏向電極(走査レンズに相当する)50、静電対物レンズ51、ビーム射出開口部52がこの順に配置されている。
【0034】
上記サプレッサ電極42および引き出し電極43は電子ビームを制御し、加速電極44は電子ビームのエネルギーを制御し、コンデンサレンズ45は電子銃から発生された電子ビームを集束させる。ビームブランキング電極46は電子ビームをON/OFFさせ、仕切り弁47および可動絞り48は電子ビームの照射電流を制御するためのアパーチャとして機能する。偏向電極50はビームブランカを通過した電子ビームを走査させるための走査レンズとして機能し、偏向電極50を通過した電子ビームは対物レンズ51で再び感光体試料20の面に収束させられる。各レンズ等には図示しない駆動用電源が接続されている。
なお、荷電粒子としてイオンビームを用いる場合には、電子銃41の代わりに液体金属イオン銃などを用いる。
【0035】
上記各レンズなどからなる電子ビーム照射部によって、試料載置部15に載置されている感光体試料20に電子ビームが照射される。感光体試料20からは2次電子や1次反転電子などが放出され、この放出電子を検出する検出器8を備えている。検出器8として、シンチレータや光電子増倍管などを用いる。通常、シンチレータには引き込み電圧8〜10kV程度の高電圧を印加することで、荷電粒子を捕獲する構成となっている。検出荷電粒子を検出器8に導くために、荷電粒子衝突時に放出粒子が発生する放出粒子発生部材を配置している。
【0036】
感光体試料20の背面側すなわち試料載置台15は、通常グランド(GND)に接続して0Vで使用するが、必要に応じて適宜の電圧を印加することが可能な構成となっている。
放出粒子としては電子やイオンがあり、電子を検出して計測することが一般的であるが、検出器8にマイナスの引き込み電圧を与えてプラスイオンを検出し、コントラスト像を観察することも可能である。
【0037】
図1において符号6は露光部を示している。露光部6は、いわゆる周知のレーザスキャナであって、感光体試料20に関して感度を持つ波長の光を放射する半導体レーザー(LD)などの光源61、コリメートレンズ62、アパーチャ63、集光レンズ64、ガルバノミラーやポリゴンミラーなどからなる光偏向器65、走査結像レンズ66、ミラー67などを備えている。上記露光部6は、感光体試料20上に所望のビーム径、ビームプロファイルを生成することが可能であり、感光体試料20の表面を上記ビームで走査することができる。光源61は、LD制御手段により制御されて、適切な露光時間、露光エネルギーで感光体試料20に光ビームを照射できるようになっている。
【0038】
露光部6は、ライン状のパターンを形成するために、光学系にガルバノミラーやポリゴンミラーを用いたスキャニング機構を備えている。また、光源61にVCSEL等を用いたマルチビーム走査光学系を構成してもよい。また、光偏向器65による主走査方向のスキャンに加えて、副走査方向にもスキャンさせる機構を設けることにより、2次元の露光パターンを形成可能な方式にしてもよい。
【0039】
露光部6は、ポリゴンモータなどからなる光偏向器65の振動や電磁場の影響が電子ビームの軌道に影響を与えないように、真空チャンバ40の外に配置されている。露光部6を、電子ビーム照射装置による電子ビームの軌道位置から遠ざけることにより、電子ビームが外乱の影響を受けることを抑制することができる。露光部6から出射される光ビームは、光学的に透明な入射窓68から感光体試料20に向かって入射するようになっていて、露光部6は真空チャンバ40の空間から隔離されている。
【0040】
図4は、上記露光部6として代替可能な光走査装置の例を示す。なお、本明細書では、主走査方向をY軸方向、副走査方向をZ軸方向、これらに直交する方向をX軸方向として説明する。図4において、光走査装置は、光源ユニット1011、シリンドリカルレンズ1012、光偏向器であるポリゴンミラー1013、fθレンズ1014、トロイダルレンズ1015、折り返しミラー1016、同期センサ1017、エリアセンサ1018及び上記各部を統括的に制御する制御装置1019を備えている。
【0041】
光源ユニット1011は、複数の発光部を有する光源(以下「光源LA」という)、この光源LAを駆動する光源駆動回路400(図8参照)、及びカップリングレンズ(以下「CL」という)を有している。ここでは、光源LAは、例えば、図5に示されているように、32個の発光部が1つの基板上に形成された垂直共振器型面発光半導体レーザ(VCSEL)の2次元アレイを構成している。この2次元アレイは、主走査方向に対応する方向(以下、便宜上「M方向」ともいう)から副走査方向に対応する方向(ここでは、Z軸方向)に向けて角度θだけ傾斜した方向(以下、便宜上「T方向」という)に沿って8個の発光部が等間隔に配置された発光部列を4列有している。そして、これら4列の発光部列は、Z軸方向に等間隔に配置されている。すなわち、32個の発光部は、T方向とZ軸方向にそれぞれ沿って2次元的に配列されている。ここでは、便宜上、図5における紙面の上から下に向かって、第1発光部列、第2発光部列、第3発光部列、第4発光部列という。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいうものとする。
【0042】
また、便宜上、各発光部を図6に示すように特定する。すなわち、図5における紙面左上から右下に向かって第1発光部列を構成する8個の発光部をv1〜v8、第2発光部列を構成する8個の発光部をv9〜v16、第3発光部列を構成する8個の発光部をv17〜v24、第4発光部列を構成する8個の発光部をv25〜v32とする。
光源駆動回路400は、図8に示されるように、制御装置1019からの各種駆動情報に基づいて、32個の発光部を個別に駆動する。
カップリングレンズCLは、光源LAからの光を略平行光とする。従って、図4に示す光源ユニット1011からは、略平行光が出力される。
【0043】
図4において、シリンドリカルレンズ1012は、光源ユニット1011からの光を副走査方向に関してポリゴンミラー1013の偏向面近傍に集光し、主走査方向に長い線像を形成する。ポリゴンミラー1013は、高さの低い(扁平な)正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向反射面が形成されている。そして、図示されないモータを主体とする回転機構により、図4に示される矢印の方向に一定の角速度で回転駆動される。従って、光源ユニット1011から射出され、シリンドリカルレンズ1012によってポリゴンミラー1013の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー1013の回転により一定の角速度で偏向される。
【0044】
fθレンズ1014は、ポリゴンミラー1013からの光の入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー1013により一定の角速度で偏向される光(以下、この偏向光を「走査光」ともいう)を、被走査面において主走査方向に等速移動させる。fθレンズ1014を透過した光は、トロイダルレンズ1015及び折り返しミラー1016を介して上記被走査面である感光体ドラム1030の表面に結像する。
【0045】
ところで、上記被走査面における走査光の像面は、ポリゴンミラー1013の回転に伴って、走査開始端から走査終端に向かって移動する。なお、有効走査領域は、画像データに応じて書込みが行われる領域である。そして、走査光の像面は、走査終端に達すると、次の走査のために走査開始端に戻る。
【0046】
上記有効走査領域の外側に、上記像面と等価な位置に同期センサ1017が配置されている。同期センサ1017は、折り返しミラー1016で反射された走査開始前の光が入射する位置に配置され、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。したがって、同期センサ1017の出力信号から、感光体ドラム1030における走査開始を検知することができる。
【0047】
図9に示すように、制御装置1019は、基準クロック生成回路402、画素クロック生成回路405、画像処理回路407、光源選択回路414、書込みタイミング信号生成回路415、及び同期タイミング信号発生回路417を備えている。なお、図9において使用している矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0048】
図10は、上記各回路の動作を示すタイミングチャートである。図10において、s19は同期センサ1017からの出力信号(同期信号)、s15は書込みタイミング信号生成回路415の出力信号(LGATE信号)、s14は光源選択回路414の出力信号、s16は画像処理回路407の出力である書込みデータを示している。以下、図10を併せて参照しながら図9に示す制御装置1019の各部の動作を説明する。
【0049】
画像処理回路407は、上位装置からの画像情報に基づいて、発光部毎の書込みデータs16を作成する。この書込みデータs16は、画素クロック信号のタイミングで、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給される。基準クロック生成回路402は制御装置1019全体の基準となる高周波クロック信号を生成する。画素クロック生成回路405は主にPLL回路からなり、同期信号s19及び基準クロック生成回路402からの高周波クロック信号に基づいて画素クロック信号を生成する。画素クロック信号の周波数は高周波クロック信号の周波数と同一で、画素クロック信号の位相は同期信号s19の位相と一致している。したがって、画素クロック信号に画像データを同期させることで、走査ごとの書込み位置をそろえることができる。上記画素クロック信号は、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給されるとともに画像処理回路407に供給され、書込みデータs16のクロック信号として使われる。
【0050】
書込みタイミング信号生成回路415は、同期信号s19の立ち上がり後、光ビームが受光素子1018を通過してからt1時間経過後にLGATE信号(データ有効期間信号)s15をローレベルからハイレベルに変化させる。そして、さらに予め設定されている時間t2が経過すると、LGATE信号s15をハイレベルからローレベルに変化させる。このLGATE信号s15は、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給される。上記時間t1は、画像情報に応じて変調された光による走査(以下、便宜上「書込み」ともいう)開始時間に対応している。また、上記時間t2は、書込み走査時間に対応している。LGATE信号s15を同期信号s19の立ち上がりタイミングに同期させることで、書込み開始タイミングをそろえることができる。
【0051】
光源選択回路414は、走査光の像面が走査終端に達すると、次の走査の開始を検知するのに用いられる発光部を前記32個の発光部から選択し、選択された発光部を指定する信号を出力する。光源がVCSELの場合、1つの発光部では同期センサで検知が難しいので、Z方向の配列から複数の発光部を選択して発光させる。例えば、図7に示すように、発光部は、走査方向において、同期ビームを発光させるための発光部と、書込み用ビームを発光させるための発光部に分けられている。このように発光部を分けることにより、同期発光による発熱が書込み発光に与える影響を小さくできるので、光パワーの揃った書込みを行うことができる。この光源選択回路414の出力信号s14は、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給される。光束が走査される試料の形状は任意で、図1に示す例では平面を想定しており、図4に示す例では曲面を想定している。
【0052】
走査光学系は、ポリゴンミラーなどからなる光偏向器65を駆動するポリゴンモータなどの振動や電磁場の影響が電子ビームの軌道に影響を与えないように、真空チャンバ40の外に配置するとよい。上記振動源や電磁場を電子ビーム軌道位置から遠ざけることにより、外乱の影響を抑制することが可能となる。走査光学系からの光ビームは、光学的に透明な入射窓より真空チャンバ40内に入射させることが望ましい。感光体試料20と光源の間には、半導体レーザーからの光束を時間的に遮光することが可能なシャッタが配置されている。
【0053】
図2は、上記実施例の真空チャンバ40および露光部6の構造を示す断面図である。図2に示すように、真空チャンバ40の鉛直軸に対して45°の角度で、真空チャンバ40の内部に外部から光を入射させることができる入射窓68が配置され、この入射窓68から真空チャンバ40内に走査ビーム77を入射させる露光装置6が真空チャンバ40の外側に配置されている。露光部6は前述のとおり走査光学系からなり、光源部、走査レンズ、同期検知手段、ポリゴンミラーからなる光偏向器65、光路を曲げるミラー72等を有してなる。露光部6の主要部は光学ハウジング69の上に配置され、上部はカバー71で覆われて遮光されている。
【0054】
光学ハウジング69は水平方向の平行移動台83の上に取り付けられ、平行移動台83は柱状の複数本の構造体82を介して除振台81の上に取り付けられている。上記ミラー72でほぼ45°の角度で斜め下方に折り曲げられる走査ビーム77の進路の周りは、外部遮光筒73、内部遮光筒75、これら内外の遮光筒の接続部に介在するラビリンス部74によって遮光されている。走査レンズ66はfθ特性を有しており、光偏光器65が一定速度で回転しているときに、光ビームは像面に対して略等速に移動する構成となっている。また、ビームスポット径も略一定に走査可能な構成となっている。
【0055】
走査光学系は、真空チャンバ40から隔離されて配置されているので、ポリゴンスキャナ等の光偏向器65を駆動する際に発生する振動は、真空チャンバ40に直接伝播されることがなく、上記振動の影響は少ない。さらに、図2には図示されていないが、構造体82と除振台83との間にダンパを挿入すれば更に効果の高い防振効果を得ることができる。
【0056】
感光体試料20に静電潜像を形成するための露光光源として、可視光から赤外光領域の光を射出するLDを用い、レーザー光をポリゴンミラーからなる偏向器で走査させ、レーザー光を点滅させて静電潜像を形成するようにした光走査装置は、ポリゴンミラーが、始動後等速回転するまでに数秒程度の時間を要する。また、所望の位置にてレーザー光を点滅させて所望の位置に書き込むために、同期検出器からの検出信号の出力タイミングを基準にして、この検出信号の出力時点から所定時間後に書き込みを開始している。
【0057】
光の点滅で潜像画像パターンを形成する場合、画像パターン信号に対する半導体レーザーからなる光源の光応答性を高くする必要がある。例えば、1μs以下で変調させる場合、パターン光パルス再現性向上やドループ特性改善のための画像データが消灯のタイミングであっても、半導体レーザーにバイアス電流を常に流しておく必要がある。半導体レーザーは、基準以上の駆動電流を与えることでレーザー発振をするが、光応答性を高めるため、バイアス電流を流すとLED発光を起こす。すなわち、光源として半導体レーザー(LD)を用いる場合は、消灯の状態であっても発光している。
【0058】
図11に、LDの駆動電流IFと光出力の関係を示す。図1において、LD駆動電流を示す横軸のaは消灯時の駆動電流、bはレーザー発振をする基準電流IF、そして、cはLD点灯の駆動電流を示している。a<b<cの関係が成立する。PonをLD点灯時の光出力、PoffをLD消灯時の光出力とする。駆動電流IFが小さい場合には、LED発光で光出力は微弱であり、駆動電流IFが基準電流に達するとレーザー発振をする。通常のレーザー発振時の出力は1〜10mW程度であるのに比べて、消灯時のバイアス電流は数十μWと、通常発振時の1/100以下程度であり、消灯時のLED発光は通常問題になることはない。このため光応答性を高めることを重視して、LD消灯時でもバイアス電流を流し続けている。
【0059】
しかしながら、微小な光量でも、長時間照射されると積分光量が増加し、感光体の必要露光量に達すると、静電潜像が形成されてしまう。この結果、所望の静電潜像を形成することができない。
【0060】
そこで本発明では、半導体レーザーを用いて所望の静電潜像を形成するに当たり、消灯時のバイアス電流によるLED発光が試料に照射される時間を極力抑えるように、光束が感光体試料の電子ビーム走査領域外に照射されるように構成を工夫している。例えば、LDバイアス電流によるオフセット発光を遮蔽するようにしている。あるいは、LD光源と感光体試料との間にシャッタを配置し、これを上記オフセット発光遮光手段としてもよい。すなわち、露光前はシャッタを閉じて光束が通過しないような構成とし、露光時はシャッタを開けて光束が通過するように構成にすることで、オフセット発光を遮蔽することができる。
【0061】
図12は、上記遮蔽手段を備えていない場合と備えている場合の露光の様子を比較して示す。図12(a)は遮蔽手段を備えていない場合、図12(b)は遮蔽手段を備えている場合を示す。図12(a)に示すように遮蔽手段を備えていない場合、露光前のオフセット光の照射時間が長く、積分光量が必要露光エネルギーに達することによりオフセット露光で潜像が形成されてしまう。これに対し、遮蔽手段を備えていれば、図12(b)に示すように、露光前はシャッタを閉じてオフセット発光を遮蔽し、露光時はシャッタを開くことにより、露光前のオフセット光による露光を回避して潜像形成を防止することができる。したがって、感光体試料を精度良く測定することができる。露光後は、必要に応じて、露光終了検知信号を与えてシャッタを閉めることができる。
【0062】
次に、感光体試料への静電潜像を形成する手段について説明する。まず、前述の電子ビーム照射装置により感光体試料20に電子ビームを照射させる。加速電圧|Vacc|は、2次電子放出比が1となる加速電圧より高い加速電圧に設定することにより、入射電子量が放出電子量より上回るため、電子が感光体試料20に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、感光体試料20はマイナスの電荷で一様に帯電される。加速電圧と照射時間を適切に設定することにより、所望の帯電電位を形成することができる。
【0063】
次に、露光光学系すなわち前記露光部6により感光体試料20に露光を行う。光学系は、所望のビーム径及びビームプロファイルを形成するように調整されている。必要露光エネルギーは、感光体試料20の特性によって決まるファクタであるが、通常、2〜6mJ/m2程度である。感度が低い感光体試料では、十数mJ/m2必要なこともある。帯電電位や必要露光エネルギーは、感光体試料の特性やプロセス条件に合わせて設定するとよい。
【0064】
そして、上述のシャッタ機構を配置して、LDバイアス電流によるオフセット光をカットする。このようにして、所望のパターンの静電潜像を形成することができる。図17は、潜像画像パターンの各種例を示している。図17(a)は1ドット孤立の例、図17(b)は2by2、図17(c)は1ドットによる格子の各パターンを示している。
【0065】
感光体試料20の表面に電荷分布があると、空間に表面電荷分布に応じた電界分布が形成される。このため、入射電子によって発生した2次電子は上記電界によって押し戻され、検出器8に到達する2次電子量が減少する。従って、電荷リーク箇所は、露光部が黒、非露光部が白となり、表面電荷分布に応じたコントラスト像を測定することができる。
【0066】
図3(a)は、荷電粒子捕獲器と、試料との間の空間における電位分布を、等高線表示で説明図的に示したものである。試料の表面は、光減衰により電位が減衰した部分を除いては負極性に一様に帯電した状態であり、荷電粒子捕獲器には正極性の電位が与えられているから、「実線で示す電位等高線群」においては、試料の表面から荷電粒子捕獲器に近づくに従い「電位が高く」なる。従って、試料における「負極性に均一帯電している部分」である図のQ1点やQ2点で発生した2次電子el1、el2は、荷電粒子捕獲器の正電位に引かれ、矢印G1や矢印G2で示すように変位し、荷電粒子捕獲器に捕獲される。
【0067】
一方、図3(a)において、Q3点は「光照射されて負電位が減衰した部分」であり、Q3点近傍では電位等高線の配列は破線で示すような配列になり、この部分の電位分布では「Q3点に近いほど電位が高く」なっている。換言すると、Q3点の近傍で発生した2次電子el3には、矢印G3で示すように、試料側に拘束する電気力が作用する。このため2次電子el3は、破線の電位等高線の示す「ポテンシャルの穴」に捕獲され、荷電粒子捕獲器に向って移動しない。図3(b)は、上記「ポテンシャルの穴」を模式的に示している。
【0068】
このように、荷電粒子捕獲器により検出される2次電子の強度(2次電子数)は、強度の大きい部分が「静電潜像の地の部分(均一に負帯電している部分、図3(a)の点Q1やQ2に代表される部分)」に対応し、強度の小さい部分が「静電潜像の画像部(光照射された部分、図3(a)の点Q3に代表される部分)」に対応することになる。
【0069】
従って、2次電子検出部で得られる電気信号を、信号処理部で適当なサンプリング時間でサンプリングすれば、前述の如く、サンプリング時刻:Tをパラメータとして、表面電位分布:V(X,Y)を「サンプリングに対応した微小領域」ごとに特定でき、信号処理部により上記表面電位分布(電位コントラスト像):V(X,Y)を2次元的な画像データとして構成し、これをアウトプット装置で出力すれば、静電潜像が可視的な画像信号として得ることができる。
【0070】
例えば、捕獲される2次電子の強度を「明るさの強弱で表現」すれば、静電潜像の画像部分は暗く、地の部分は明るくコントラストがつき、表面電荷分布に応じた明暗像として表現(出力)することができる。もちろん、表面電位分布を知ることができれば、表面電荷分布も知ることができる。
【0071】
このようにすると、帯電部において2次電子検出量が多く、露光部において2次電子検出量が少ない明暗のコントラスト像が生じ、暗の部分を露光による潜像部とみなすことができる。明暗の境界を潜像の径とすることができる。このようにして、感光体の静電潜像をミクロンオーダーの高分解能で計測することが可能となる。
【0072】
上記LDバイアス電流によるオフセット発光の影響を低減させるためには、静電潜像形成のために露光させる時間だけ前記シャッタが開いている状態であり、その前後はシャッタが閉じている状態になっていることが理想的である。これを実現するためには、露光のタイミングとシャッタ開閉のタイミングを連動させることが望ましい。露光のタイミングは、走査光学系の同期信号によって決定される。従って、走査光学系の同期信号に連動して、シャッタを開放することが望ましい。また、データの有効期間信号であるFGATE信号のレベルが低く(ロー)なった時点に連動して、シャッタを閉鎖することが望ましい。これを実現する手段として、走査光学系の同期信号を、シャッタをオープンにするためのトリガ信号とすれば、書き出しのタイミングを揃えることができる。
【0073】
制御系の構成を図14に示す。図14において、電子ビーム制御装置は、前記荷電粒子ビーム照射装置4によって照射される電子ビームの制御装置で、ホストコンピュータによって制御される。ホストコンピュータは制御ボードを介して光学ユニットを制御し、また、上記制御ボードからのトリガ信号によってシャッタ制御コントローラを制御して前記シャッタの動作を制御する。
【0074】
図15は、この制御系の動作を示す。測定のための制御コマンドが実行されたあと(S1)、走査光学系の同期信号を検知し(S2)、その検知信号をシャッタ開放のためのトリガ信号として用いる(S3)。そして、シャッタが露光光学系の有効径にまで開放されたタイミングに合わせてレーザーを点灯させる(S4,S5)。これによって感光体試料に静電潜像が形成されるので、この静電潜像を計測し(S6)、露光の完了後にシャッタを閉じる(S7)。露光後は、シャッタを閉じる他に、LDのバイアス電流を0にして、発光自体を止めても良い。
【0075】
ところで、シャッタは電子シャッタやメカニカルシャッタに限らず、命令を与えてから、実際に開くまでに時間のずれが生じる。トリガ信号を検知してから、シャッタが開き始める時間をTd、シャッタが開き始めてから、レーザー光の有効径相当が開くまでの時間をTrとすれば、トリガ出力となる同期信号を受けてから、Td+Trの時間だけ遅れてシャッタが開く。従って、その分を考慮してLDを点灯させなければならない。すなわち、トリガ出力となる同期信号を受けてから、Td+Trの時間だけ遅れてLDを点灯させることが望ましい。時間を遅らせる方法としては、走査光学系による1回の走査時間をTfとしたとき、トリガ出力となる同期信号から、Td+Tr<n×Tfとなる自然数nのときにLDを点灯させて潜像を形成する方法がある。
【0076】
上記各信号相互のタイミングチャートを図13に示す。図13において、PCからの実行コマンド入力信号がアサートされてからデータ有効期間信号(FGATE)がハイ(アサート)になった後、最初の同期信号の入力により、第1のトリガ信号が出力され、シャッタが開く。画像パターン書込み後、FGATEがロー(ネゲート)になると第二のトリガ信号が出力され、シャッタは閉まる。
【0077】
シャッタとしては、液晶変調素子のように光学的透過率を変化させる素子を用いる方法がある。この場合は、メカ的な可動部を必要としないメリットがある。但し、光応答性や透過波面への影響が出る可能性がある。したがって、シャッタとしては、メカニカルシャッタを用いると良い。なおここで述べるメカニカルシャッタとは、図16に示すような、光路進行方向に対して、物体が有る状態(図16(a))と、無い状態(図16(b))を作り出し、その違いで、光路進行方向を変えることで、測定試料に光線が到達する状態と遮光状態を作り出すことが可能な手段を指す。
【0078】
メカニカルシャッタは、シャッタの開閉動作や速度の制御をガバナーやスプリングなどによって機械的に行うものである。メカニカルシャッタには、ギロチンシャッタや複数のシャッタ羽根を用いて中心から周辺に向かって開き、周辺から中心に向かって閉じる構造のものなどがある。ギロチンシャッタとは、2枚の板のそれぞれに孔が空いていて、先幕に相当する板が走行した後、後幕に相当する板が走行し、孔の重なり状態の変化でシャッタ速度を変化させることができるようにしたものである。また、メカニカルではあるが、電気信号にて開閉を制御する構成のものであってもよい。これにより、同期信号により正確に合わせた適切なタイミングで開閉させることが可能となる。シャッタ手段として、メカニカルシャッタを用いることにより、レーザー光の透過波面を劣化させることなく、高速に、オフセット発光を遮光することができる。
【0079】
シャッタの位置としては、真空チャンバ40の外側に配置するとなお良い。真空チャンバ40内に配置すると、メカニカルシャッタの開閉時及びその前後では、周辺の電磁場が変動し、それが走査電子ビームの軌道を曲げてしまう懸念があるからである。メカニカルシャッタを真空チャンバ40の外に配置することにより、上記のような不具合を抑制することが可能なる。
【0080】
表面電荷分布や表面電位分布のプロファイルを測定することにより、さらに高精度に測定することが可能である。図18は本発明の表面電位分布測定装置の他の実施例を示す図である。図18において、感光体試料20の下側の試料設置部213は、電圧±Vsubを印加できる電圧印加部が接続されている。また、試料20の上方には、入射電子ビームが試料電荷の影響を受けることを抑制するために、グリッド90を配置した構成となっている。試料設置部213は導電材料からなり、その下には絶縁体212が配置され、さらにその下には導電体211が配置され、導電体211は接地され(GNDに落とされて)いる。
【0081】
図19は入射電子と感光体試料の関係を示す。同図(a)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより大きい場合、同図(b)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより小さい場合をそれぞれ示す。試料の垂直方向に入射する荷電粒子の速度ベクトルが、試料に到達前に反転するような状態が存在する領域があり、その1次入射荷電粒子を検出する構成となっている。なお、加速電圧は正で表現することが一般的であるが、加速電圧の印加電圧Vaccは負であり、電位ポテンシャルとして物理的意味を持たせるためには、負で表現する方が説明しやすいため、ここでは加速電圧は負(Vacc<0)と表現する。電子ビームの加速電位ポテンシャルをVacc(<0)、試料の電位ポテンシャルをVp(<0)とする。
【0082】
電位とは、単位電荷が持つ電気的な位置エネルギーである。したがって、入射電子は、電位0(V)では加速電圧Vaccに相当する速度で移動する。すなわち、電子の電荷量をeとし電子の質量をmとすると、電子の初速度v0は、
mv02/2=e×|Vacc|
で表される。真空中ではエネルギー保存の法則により、加速電圧の働かない領域では等速で運動し、試料面に接近するに従い電位が高くなり、試料電荷のクーロン反発の影響を受けて速度が遅くなる。したがって、一般的に以下のような現象が起こる。
【0083】
図19(a)に示す状態の場合、|Vacc|≧|Vp|なので、電子は、その速度は減速されるものの、試料に到達する。
図19(b)に示すように、|Vacc|<|Vp|の場合には、入射電子の速度は試料の電位ポテンシャルの影響を受けて徐々に減速し、試料に到達する前に速度が0となって、反対方向に進む。
【0084】
空気抵抗の無い真空中では、エネルギー保存則がほぼ完全に成立する。したがって、入射電子のエネルギーを変えたときの、試料面上でのエネルギーすなわちランディングエネルギーがほぼ0となる条件を計測することで、感光体試料表面の電位を計測することができる。ここでは1次反転荷電粒子、特に電子の場合を1次反転電子と呼ぶことにする。試料に到達したとき発生する2次電子と1次反転荷電粒子とでは、検出器に到達する量が大きく異なるので、明暗のコントラストの境界より、識別することができる。
【0085】
なお、走査電子顕微鏡などは、反射電子検出器を備えているが、この場合の反射電子とは、一般的に試料の物質との相互作用により、入射電子が後方背面に反射(散乱)され、試料の表面から飛び出す電子のことを指す。反射電子のエネルギーは入射電子のエネルギーに匹敵する。反射電子の強度は試料の原子番号が大きいほど大きいといわれ、試料の組成の違いや、凹凸を観察するのに有効な検出方法である。これに対して、1次反転電子は、試料表面の電位分布の影響を受けて、試料表面に到達する前に反転する電子のことであり、反射電子とは全く異なる現象である。
【0086】
図20は潜像の深さ計測結果の一例を示す図である。各走査位置(x,y)で、加速電圧Vaccと、試料下部の印加電圧Vsubとの差を
Vth(=Vacc−Vsub)
とすれば、ランディングエネルギーがほぼ0となるときのVth(x,y)を測定することで電位分布V(x,y)を測定することができる。Vth(x,y)は、電位分布V(x,y)と一意的な対応関係があり、Vth(x,y)がなだらかな電荷分布などであれば、近似的に電位分布V(x,y)と等価となる。
【0087】
図20の上段に示す曲線は、試料表面の電荷分布によって生じた表面電位分布の一例を示している。2次元的に走査する電子銃の加速電圧は−1800Vとした。中心(横軸座標=0)の電位が約−600Vであり、中心から外側に向かうに従って、電位がマイナス方向に大きくなり、中心から半径が75μmを超える周辺領域の電位は約−850V程度になっている。同図中段の楕円形は試料の裏面をVsub=−1150Vに設定したときの検出器出力を画像化したものである。このとき、Vth=Vacc−Vsub=−650Vとなっている。同図下段の楕円形はVsub=−1100Vとしたほかは上記条件と同じ条件で得られた検出器出力を画像化したものである。このときのVthは−700Vになっている。
【0088】
図20に示す結果から分かるように、加速電圧Vaccまたは印加電圧Vsubを変えながら、試料表面を電子で走査させ、Vth分布を計測することにより、試料の表面電位情報を計測することが可能となる。この方法を用いることにより、従来困難であった、潜像プロファイルをミクロンオーダーで可視化することが可能となる。
【0089】
1次反転電子で潜像プロファイルを計測する方式では、入射電子のエネルギーが極端に変わるため、入射電子の軌道がずれてくることが生じ、その結果として、走査倍率が変わったり、歪曲収差を生じたりすることになる。その場合には、静電場環境や電子軌道をあらかじめ計算しておき、それをもとに補正することにより、さらに高精度に計測することが可能となる。
【0090】
感光体には、感光体に与えられる総露光エネルギー密度は同じでも、光量と露光時間の関係が異なると潜像形成状態が異なる相反則不軌の現象がある。一般的に露光エネルギーが一定の場合、光量が強いほど、感度(潜像深さ)が低下し、トナー付着量に変化をもたらし、その結果として画像濃度の違いとして現れる。光量が強いとキャリアの再結合量が増大し、表面に到達するキャリア量が減少することが原因と考えられている。これがVCSELなどのマルチビーム走査光学系の場合、画像濃度むらが顕著にあらわれてくる。
【0091】
本実施例に係る静電潜像測定装置で感光体試料の表面の静電潜像を評価することにより、1ミクロンオーダーの分解能で計測することが可能であるため、潜像形成の過程が1ドットレベルで定量的に詳細に解析できる。よって、露光量を最適化することができ、感光体試料に負担のかからない帯電及び露光条件が分かり、省エネルギー、高耐久性を備えた感光体を得ることができる。
【0092】
出力画像の高画質化のために、光学系の最適化及び光源波長を780nm以下に短波長化し、副走査方向のビームスポット径を60μm以下に小径化する試みが行われている。しかし、現在の感光体は短波長の光に対して感度が低いことや、小径化されたビームでは感光体内での光の散乱及び電荷の拡散の影響を強く受け、潜像径が広がり、潜像の深さも浅くなり、最終出力画像では、階調性、鮮鋭性を高いレベルで安定に得ることができないという不具合が生じている。
【0093】
図21にビームスポット径及び潜像径の概念図を示す。ここでは、ビームスポット径を、ビームスポット光量分布が最大光量のe−2以上である範囲の径で定義している。潜像径は、コントラスト像の明暗の境界で描かれる円または楕円の径とする。電荷輸送層の組成及び膜厚が光の散乱及び電荷の拡散度合いに影響を与え、電荷発生層の組成が感度に影響を与えることは知られているが、明確な相関関係が分かっていない。
【0094】
そこで、電荷輸送層の組成及び膜厚、電荷発生層の組成を変えて感光体を作り、本実施例の静電潜像測定装置を用いて行われる静電潜像測定方法において、画像形成装置で使用する条件と同じ、例えば帯電電位800V、露光エネルギー4mJ/m2として、光源波長が780nm以下、副走査方向のビームスポット径が60μm以下の条件で露光して潜像測定を行う。図21(a)及び(b)に示すように、感光体面での副走査方向のビームスポット径をAとし、形成される副走査方向の潜像径をBとしたときに、
1.0<B/A<2.0
を満足する感光体を選定すれば、最終出力画像で階調性、鮮鋭性が高いレベルで安定する感光体を得ることができる。上記条件式において、下限の1.0は、光の散乱及び電荷の拡散はどんな感光体でも必ず起こるのでこれ以下にはならないという原理的な限界であり、上限の2.0は、最終出力画像で階調性、鮮鋭性の安定性を確保するために必要な限界である。
【0095】
次に、以上説明した本発明に係る静電潜像の測定装置を用いて測定した感光体を用いた本発明に係る画像形成装置の実施例について説明する。図22は上記画像形成装置の1形態であるレーザプリンタ1000の概略構成を示す。図22において、レーザプリンタは、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングブレード1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、及び排紙トレイ1043などを備えている。
【0096】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングブレード1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に関して、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングブレード1035の順に配置されている。
【0097】
感光体ドラム1030の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム1030は、図22の紙面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム1030の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム1030の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、このトナーが現像ローラ1032に供給される。現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。トナーが付着された潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0098】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。レジストローラ対1039は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0099】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面上のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。この定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0100】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。クリーニングブレード1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031の位置に戻る。
【0101】
本発明に係る静電潜像の測定装置を用いて測定することにより、非常に望ましい感光体(潜像担持体)を得ることができ、この感光体を用いて画像形成装置を構成することにより、解像力に優れた精彩度の高い画像、さらに、耐久に優れた画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る静電潜像の測定装置を用いることによって、電子写真プロセスを用いる複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に用いられる感光体の品質や性能を評価することができる。そして、評価された感光体の品質や性能に応じた画像形成装置の設計を行うことにより、感光体に高品質の静電潜像を形成することができ、この静電潜像を現像することにより高品質の画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0103】
4 電子ビーム照射装置
6 露光部
8 検出器
15 試料載置部
20 感光体試料
40 真空チャンバ
61 光源
65 光偏向器
1017 同期センサ(同期信号生成手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開平03−049143号公報
【特許文献2】特開平3−200100号公報
【特許文献3】特開2003−295696号公報
【特許文献4】特開2004−251800号公報
【特許文献5】特開2008−233376号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像の測定装置、静電潜像の測定方法および画像形成装置に関するもので、特に、光源として半導体レーザーを用いたものにおいて、消灯時のバイアス電流による発光の悪影響を回避することにより、高精度・高品質の静電潜像を形成することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置は感光体を備えていて、この感光体に対し、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニングの各プロセスを実行するためのユニットを有してなる。上記感光体には、帯電プロセスと露光プロセスが実行されることにより静電潜像が形成されるが、この静電潜像の精度ないしは品質が、形成される画像の精度ないしは品質を決める。感光体に形成される静電潜像の精度ないしは品質の決め手は、静電潜像が形成されている状態での表面電位であり、この表面電位を計測することによって感光体の性能ないしは品質が評価される。
【0003】
従来、試料の表面電位を計測する方法として、電位分布を有する試料にセンサヘッドを近づけ、そのときの相互作用として起こる静電引力や誘導電流を計測して、電位分布に換算する方式がある。この方式では、分解能が原理的に数ミリ程度と悪く、1ミクロンの分解能を得ることができない。
【0004】
電子ビームによる静電潜像の観察方法として、特許文献1記載の発明などがあるが、試料としては、LSIチップや静電潜像を記憶・保持できる試料に限定されている。すなわち、画像形成装置などに通常使用されている暗減衰を生じる感光体は測定することができない。通常の誘電体は電荷を半永久的に保持することができるので、電荷分布を形成後、時間をかけて測定を行っても、測定結果に影響を与えることはない。しかしながら、画像形成装置に用いられている像担持体としての感光体の場合は、抵抗値が無限大ではないので、電荷を長時間保持できず、暗減衰が生じて時間とともに表面電位が低下する。感光体が電荷を保持できる時間は、暗室であってもせいぜい数十秒である。従って、帯電・露光後に電子顕微鏡(SEM)内で観察しようとしても、その準備段階で静電潜像は消失してしまう。
【0005】
また、特許文献2に記載されている装置においては、本発明が対象とする感光体試料とは使用波長が全く異なる上に、任意のラインパターンや、所望のビーム径およびビームプロファイルの潜像を形成することは不可能であり、本発明の目的を達成することができない。
【0006】
そこで、我々は、暗減衰を有する感光体試料であっても静電潜像を測定することができる方式を考案した(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0007】
感光体試料表面に電荷分布があると、空間に表面電荷分布に応じた電界分布が形成される。このため、入射電子によって発生した2次電子はこの電界によって押し戻され、検出器に到達する量が減少する。従って、電界強度が強い部分は暗く、弱い部分は明るくなってコントラストがつき、表面電荷分布に応じたコントラスト像を検出することができる。従って、感光体を露光した場合には、露光部が黒、非露光部が白となり、これより形成された静電潜像を測定することができる。
【0008】
ところで、静電潜像を形成するための露光光源として、波長が可視光領域から赤外光領域の半導体レーザーを用い、レーザー光の点灯及び消灯で、静電潜像を形成する方法がある。
【0009】
実際の書込みプロセスを再現するために、光束が感光体試料面上を走査しているタイミングで点灯および消灯して所望パターンの静電潜像を形成する。そのためには、走査の開始位置を検知する必要がある。そして、感光体試料の所望の位置に潜像を形成するために、決められた位置で光を点灯する必要がある。また、光源として用いられる半導体レーザーは、基準以上の駆動電流を与えることでレーザー発振をするが、光応答性を高めるため、光の消灯のタイミングでも基準以下の一定の駆動電流(バイアス電流)を常に供給している。バイアス電流があるとLED発光を起こす。すなわち、半導体レーザーを用いる場合は、消灯の状態であっても発光していることを意味する。
【0010】
このときすなわちバイアス電流が流れているときの光量は微弱であるため、照射時間が短い場合には静電潜像に影響はない。しかしながら、光量が微弱でも、長時間照射されると積分光量が増加し、感光体の必要露光量に達すると、静電潜像が形成されてしまう。この結果、所望の静電潜像を形成することができなくなる。
従って、半導体レーザーを用いて、所望の静電潜像を形成するためには、消灯時のバイアス電流による発光が試料に照射される時間を極力抑える必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術ではきわめて困難であった、誘電体からなる感光体の表面に生じている電荷分布あるいは電位分布を、ミクロンオーダーの高分解能で計測することが可能な静電潜像の測定装置および測定方法を提供することを目的とし、特に、走査光学系からなる露光部にて露光された感光体上の静電潜像を測定する装置および測定方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、上記装置を用いて上記測定方法で測定された感光体を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0012】
なお、ここで述べる表面電荷について定義しておく。電荷は、厳密には、試料内に空間的に散らばっていることは周知の通りである。このため、表面電荷とは、電荷分布状態が、厚さ方向に比べて面内方向に大きく分布している状態を指すものとする。また、電荷は、電子だけでなく、イオンも含める。
また、表面に導電部があり、導電部分に電圧が印加されて、それにより、試料表面あるいはその近傍が電位分布を生じている状態であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させる電子ビーム照射装置と、帯電した上記感光体試料面に静電潜像を形成するための露光部と、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出する検出器と、を備え、上記検出器によって得られる検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定装置において、上記露光部は、半導体レーザーからなる光源と、上記感光体試料面を上記光源からのレーザー光で走査させる光偏向器と、上記レーザー光の走査範囲の端部で上記レーザー光を検出して同期信号を生成する同期信号生成手段と、上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成する書込みタイミング信号生成手段と、を備え、上記露光部による露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを最も主要な特徴とする。
【0014】
本発明はまた、前記露光部の光源として複数の発光部を持つ半導体レーザーを用い、同期信号生成手段からの同期信号によって発光する発光部と、書込みタイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部とが異なっている構成としてもよい。
本発明はまた、前記同期タイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部は、複数の発光部である構成としてもよい。
本発明はまた、前記露光部の光源は半導体レーザーであり、基準クロックと同期信号から画素クロックを生成する画素クロック生成手段と、画素情報から画素パターンを生成する画素パターン生成手段とを有する構成としてもよい。
【0015】
本発明はまた、測定時以外は感光体試料面への光の入射を遮蔽するシャッタと、露光タイミングと連動して上記シャッタの開閉を制御するシャッタ制御手段を有する構成としてもよい。
前記シャッタ制御手段は、走査光学系の同期信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にデータ有効期間信号に連動してシャッタを閉じる手段を有する構成としてもよい。
シャッタ手段はメカニカルシャッタであってもよい。
本発明はまた、入射する荷電粒子の試料垂直方向の速度ベクトルが反転する領域が存在する条件下で測定するように構成してもよい。
【0016】
本発明はまた、感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、上記レーザー光の走査範囲の端部で同期信号生成手段により上記レーザー光を検出して同期信号を生成し、上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成し、露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを特徴とする。
【0017】
本発明はまた、感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、静電潜像を形成する時間の前後で、光源からのレーザー光が感光体試料の観察領域に到達しないように遮蔽することで、上記半導体レーザーのバイアス電流によるオフセット発光の影響を抑制することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、感光体の面に電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置であって、上記感光体は、請求項1乃至9のいずれかに記載の静電潜像の測定装置によって測定された感光体であることを特徴とする。
【0019】
上記画像形成装置において、書込み光源から射出されるレーザー光の波長が780nm以下であり、かつ、感光体面での副走査方向のビームスポット径が60μm以下であり、感光体面での副走査方向のビームスポット径をAとし、形成される副走査方向の潜像径をBとすると、
1.0<B/A<2.0
を満足する構成にするとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る静電潜像の測定装置によれば、露光部の光源として半導体レーザーを用い、同期信号生成手段と、光束が試料面を走査するときの発光タイミングを制御する書込みタイミング信号生成手段とを有することにより、同期発光による発熱が書込み発光に与える影響を小さくできるので、光パワーの揃った書込みを行うことができ、精度の高い測定を行うことができる。
【0021】
露光部の光源として複数の発光部を持つ半導体レーザーを用い、同期タイミング信号生成手段で発光させる発光部と、書込みタイミング信号生成手段で発光させる発光部とを、互いに異なる発光部としたものによれば、同期用発光の書込み用発光による影響を低減して、精度の高い測定を行うことができる。
【0022】
複数の発光部を発光させて同期信号を得るものによれば、発光パワーの小さい発光部を持つ光源においても、位置精度の良い静電潜像を形成させることができ、高分解能で測定することが可能となる。
【0023】
露光部の光源として半導体レーザーを用い、基準クロックと同期信号から画素クロックを生成する画素クロック生成手段と、画素情報から画素パターンを生成する画素パターン生成手段とを有するものによれば、鮮明な静電潜像を形成することができ、その結果、静電潜像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0024】
走査光学系の同期検知信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にシャッタを閉じる手段を有するものによれば、シャッタの開放時間を必要最低限に抑えることができるため、ノイズの少ない鮮明な静電潜像を形成することができ、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0025】
前記シャッタ制御手段が走査光学系の同期検知信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にシャッタを閉じる手段を有するものによれば、シャッタの開放時間を必要最低限に抑えることができるため、ノイズの少ない鮮明な静電潜像を形成することができ、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0026】
シャッタ手段として、メカニカルシャッタを用いたものによれば、レーザー光の透過波面を劣化させることなく、高速にオフセット発光を遮光することができ、精度の高い静電潜像を形成することができ、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0027】
入射する荷電粒子の試料垂直方向の速度ベクトルが反転するような領域が存在する条件下で測定する手段を有するものによれば、電位深さを定量的に計測することができ、電位分布を高精度に測定することが可能となる。
【0028】
露光部の光源として半導体レーザーを用い、そのバイアス電流によるオフセット発光等を遮蔽するためのシャッタ手段を有するものによれば、所望の静電潜像を形成することが可能となり、その結果、静電線像をミクロンオーダーの高分解能で測定することが可能となる。
【0029】
本発明に係る画像形成装置によれば、前記測定装置を用いて感光体に形成される静電潜像を評価し、これを設計にフィードバックすることができる。したがって、画像を形成するための各プロセスの質が向上し、高品質の画画像を得ることができるとともに、耐久が高く、安定性が高く、省エネルギー化に優れた潜像担持体及びこれを用いた画像形成装置を提供することができる。
特に、画像濃度むらが生じやすいVCSELなどのマルチビーム走査光学系を搭載した画像形成装置においても、上記の効果を得ることができるため、マルチビーム走査光学系を搭載した画像形成装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る静電潜像の測定装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【図2】上記実施例の真空チャンバおよび露光部の構造を示す断面図である。
【図3】荷電粒子捕獲器と試料との間の空間における電位分布を示すもので、(a)は等高線表示による説明図、(b)は上記等高線中のポテンシャルの穴を示す模式図である。
【図4】本発明に露光部として適用可能な光走査装置の例を示す斜視図である。
【図5】上記露光部の光源として適用可能な垂直共振器型面発光半導体レーザーの2次元アレイの例を示す配列図である。
【図6】上記半導体レーザーの2次元アレイをなす各発光点の特定例を示す配列図である。
【図7】光源の発光部が同期ビームを発光させるための発光部と書込み用ビームを発光させるための発光部に分けられている例を示す配列図である。
【図8】上記露光部の光源駆動回路の例を示すブロック図である。
【図9】上記光源駆動回路の制御装置の例を示すブロック図である。
【図10】上記制御装置の各回路部分の動作を示すタイミングチャートである。
【図11】半導体レーザーの駆動電流と光出力の関係を示すグラフである。
【図12】レーザー光の遮蔽手段の有無による露光の違いを比較して示すもので、(a)は遮蔽手段を備えていない場合、(b)は遮蔽手段を備えている場合を示すグラフである。
【図13】前記本発明の実施例における各信号相互のタイミングチャートである。
【図14】上記本発明の実施例における制御系の構成を示すブロック図である。
【図15】上記制御系の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施例に用いられているメカニカルシャッタの機能を示す模式図である。
【図17】潜像画像パターンの各種例を示す模式図である。
【図18】本発明に係る静電潜像の測定装置の別の実施例の要部を模式的に示す正面図である。
【図19】入射電子と感光体試料の関係を示すもので、(a)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより大きい場合、(b)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより小さい場合を示す模式図である。
【図20】潜像の深さ計測結果の一例を示すグラフである。
【図21】ビームスポット径及び潜像径を示す概念図である。
【図22】本発明に係る画像形成装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る静電潜像の測定装置、静電潜像の測定方法および画像形成装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0032】
図1に本発明に係る静電潜像の測定装置の実施例を示す。図1において、静電潜像の測定装置は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子照射部(電子ビーム照射装置)、露光部、試料設置部、1次反転荷電粒子や2次電子などの検出部を有してなる。ここでいう、荷電粒子とは、電子ビームあるいはイオンビームなど電界や磁界の影響を受ける粒子を指す。この実施例では、荷電粒子照射部は電子ビーム照射装置からなっていて電子ビームを照射するようになっている。以下、静電潜像の測定装置の実施例を詳細に説明する。
【0033】
図1において、荷電粒子ビーム照射装置である電子ビーム照射装置4は、各構成部分が真空チャンバ40内に以下のように組み込まれることによって構成されている。真空チャンバ40の上端近くに荷電粒子ビームを照射する電子銃41が取り付けられ、その下方に、サプレッサ電極42、エキストラクタすなわち引き出し電極43、加速電極44、コンデンサレンズ45、ビームブランキング電極46、仕切り弁47、可動絞り48、スティグメータすなわち補正用電極49、偏向電極(走査レンズに相当する)50、静電対物レンズ51、ビーム射出開口部52がこの順に配置されている。
【0034】
上記サプレッサ電極42および引き出し電極43は電子ビームを制御し、加速電極44は電子ビームのエネルギーを制御し、コンデンサレンズ45は電子銃から発生された電子ビームを集束させる。ビームブランキング電極46は電子ビームをON/OFFさせ、仕切り弁47および可動絞り48は電子ビームの照射電流を制御するためのアパーチャとして機能する。偏向電極50はビームブランカを通過した電子ビームを走査させるための走査レンズとして機能し、偏向電極50を通過した電子ビームは対物レンズ51で再び感光体試料20の面に収束させられる。各レンズ等には図示しない駆動用電源が接続されている。
なお、荷電粒子としてイオンビームを用いる場合には、電子銃41の代わりに液体金属イオン銃などを用いる。
【0035】
上記各レンズなどからなる電子ビーム照射部によって、試料載置部15に載置されている感光体試料20に電子ビームが照射される。感光体試料20からは2次電子や1次反転電子などが放出され、この放出電子を検出する検出器8を備えている。検出器8として、シンチレータや光電子増倍管などを用いる。通常、シンチレータには引き込み電圧8〜10kV程度の高電圧を印加することで、荷電粒子を捕獲する構成となっている。検出荷電粒子を検出器8に導くために、荷電粒子衝突時に放出粒子が発生する放出粒子発生部材を配置している。
【0036】
感光体試料20の背面側すなわち試料載置台15は、通常グランド(GND)に接続して0Vで使用するが、必要に応じて適宜の電圧を印加することが可能な構成となっている。
放出粒子としては電子やイオンがあり、電子を検出して計測することが一般的であるが、検出器8にマイナスの引き込み電圧を与えてプラスイオンを検出し、コントラスト像を観察することも可能である。
【0037】
図1において符号6は露光部を示している。露光部6は、いわゆる周知のレーザスキャナであって、感光体試料20に関して感度を持つ波長の光を放射する半導体レーザー(LD)などの光源61、コリメートレンズ62、アパーチャ63、集光レンズ64、ガルバノミラーやポリゴンミラーなどからなる光偏向器65、走査結像レンズ66、ミラー67などを備えている。上記露光部6は、感光体試料20上に所望のビーム径、ビームプロファイルを生成することが可能であり、感光体試料20の表面を上記ビームで走査することができる。光源61は、LD制御手段により制御されて、適切な露光時間、露光エネルギーで感光体試料20に光ビームを照射できるようになっている。
【0038】
露光部6は、ライン状のパターンを形成するために、光学系にガルバノミラーやポリゴンミラーを用いたスキャニング機構を備えている。また、光源61にVCSEL等を用いたマルチビーム走査光学系を構成してもよい。また、光偏向器65による主走査方向のスキャンに加えて、副走査方向にもスキャンさせる機構を設けることにより、2次元の露光パターンを形成可能な方式にしてもよい。
【0039】
露光部6は、ポリゴンモータなどからなる光偏向器65の振動や電磁場の影響が電子ビームの軌道に影響を与えないように、真空チャンバ40の外に配置されている。露光部6を、電子ビーム照射装置による電子ビームの軌道位置から遠ざけることにより、電子ビームが外乱の影響を受けることを抑制することができる。露光部6から出射される光ビームは、光学的に透明な入射窓68から感光体試料20に向かって入射するようになっていて、露光部6は真空チャンバ40の空間から隔離されている。
【0040】
図4は、上記露光部6として代替可能な光走査装置の例を示す。なお、本明細書では、主走査方向をY軸方向、副走査方向をZ軸方向、これらに直交する方向をX軸方向として説明する。図4において、光走査装置は、光源ユニット1011、シリンドリカルレンズ1012、光偏向器であるポリゴンミラー1013、fθレンズ1014、トロイダルレンズ1015、折り返しミラー1016、同期センサ1017、エリアセンサ1018及び上記各部を統括的に制御する制御装置1019を備えている。
【0041】
光源ユニット1011は、複数の発光部を有する光源(以下「光源LA」という)、この光源LAを駆動する光源駆動回路400(図8参照)、及びカップリングレンズ(以下「CL」という)を有している。ここでは、光源LAは、例えば、図5に示されているように、32個の発光部が1つの基板上に形成された垂直共振器型面発光半導体レーザ(VCSEL)の2次元アレイを構成している。この2次元アレイは、主走査方向に対応する方向(以下、便宜上「M方向」ともいう)から副走査方向に対応する方向(ここでは、Z軸方向)に向けて角度θだけ傾斜した方向(以下、便宜上「T方向」という)に沿って8個の発光部が等間隔に配置された発光部列を4列有している。そして、これら4列の発光部列は、Z軸方向に等間隔に配置されている。すなわち、32個の発光部は、T方向とZ軸方向にそれぞれ沿って2次元的に配列されている。ここでは、便宜上、図5における紙面の上から下に向かって、第1発光部列、第2発光部列、第3発光部列、第4発光部列という。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいうものとする。
【0042】
また、便宜上、各発光部を図6に示すように特定する。すなわち、図5における紙面左上から右下に向かって第1発光部列を構成する8個の発光部をv1〜v8、第2発光部列を構成する8個の発光部をv9〜v16、第3発光部列を構成する8個の発光部をv17〜v24、第4発光部列を構成する8個の発光部をv25〜v32とする。
光源駆動回路400は、図8に示されるように、制御装置1019からの各種駆動情報に基づいて、32個の発光部を個別に駆動する。
カップリングレンズCLは、光源LAからの光を略平行光とする。従って、図4に示す光源ユニット1011からは、略平行光が出力される。
【0043】
図4において、シリンドリカルレンズ1012は、光源ユニット1011からの光を副走査方向に関してポリゴンミラー1013の偏向面近傍に集光し、主走査方向に長い線像を形成する。ポリゴンミラー1013は、高さの低い(扁平な)正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向反射面が形成されている。そして、図示されないモータを主体とする回転機構により、図4に示される矢印の方向に一定の角速度で回転駆動される。従って、光源ユニット1011から射出され、シリンドリカルレンズ1012によってポリゴンミラー1013の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー1013の回転により一定の角速度で偏向される。
【0044】
fθレンズ1014は、ポリゴンミラー1013からの光の入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー1013により一定の角速度で偏向される光(以下、この偏向光を「走査光」ともいう)を、被走査面において主走査方向に等速移動させる。fθレンズ1014を透過した光は、トロイダルレンズ1015及び折り返しミラー1016を介して上記被走査面である感光体ドラム1030の表面に結像する。
【0045】
ところで、上記被走査面における走査光の像面は、ポリゴンミラー1013の回転に伴って、走査開始端から走査終端に向かって移動する。なお、有効走査領域は、画像データに応じて書込みが行われる領域である。そして、走査光の像面は、走査終端に達すると、次の走査のために走査開始端に戻る。
【0046】
上記有効走査領域の外側に、上記像面と等価な位置に同期センサ1017が配置されている。同期センサ1017は、折り返しミラー1016で反射された走査開始前の光が入射する位置に配置され、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。したがって、同期センサ1017の出力信号から、感光体ドラム1030における走査開始を検知することができる。
【0047】
図9に示すように、制御装置1019は、基準クロック生成回路402、画素クロック生成回路405、画像処理回路407、光源選択回路414、書込みタイミング信号生成回路415、及び同期タイミング信号発生回路417を備えている。なお、図9において使用している矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0048】
図10は、上記各回路の動作を示すタイミングチャートである。図10において、s19は同期センサ1017からの出力信号(同期信号)、s15は書込みタイミング信号生成回路415の出力信号(LGATE信号)、s14は光源選択回路414の出力信号、s16は画像処理回路407の出力である書込みデータを示している。以下、図10を併せて参照しながら図9に示す制御装置1019の各部の動作を説明する。
【0049】
画像処理回路407は、上位装置からの画像情報に基づいて、発光部毎の書込みデータs16を作成する。この書込みデータs16は、画素クロック信号のタイミングで、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給される。基準クロック生成回路402は制御装置1019全体の基準となる高周波クロック信号を生成する。画素クロック生成回路405は主にPLL回路からなり、同期信号s19及び基準クロック生成回路402からの高周波クロック信号に基づいて画素クロック信号を生成する。画素クロック信号の周波数は高周波クロック信号の周波数と同一で、画素クロック信号の位相は同期信号s19の位相と一致している。したがって、画素クロック信号に画像データを同期させることで、走査ごとの書込み位置をそろえることができる。上記画素クロック信号は、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給されるとともに画像処理回路407に供給され、書込みデータs16のクロック信号として使われる。
【0050】
書込みタイミング信号生成回路415は、同期信号s19の立ち上がり後、光ビームが受光素子1018を通過してからt1時間経過後にLGATE信号(データ有効期間信号)s15をローレベルからハイレベルに変化させる。そして、さらに予め設定されている時間t2が経過すると、LGATE信号s15をハイレベルからローレベルに変化させる。このLGATE信号s15は、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給される。上記時間t1は、画像情報に応じて変調された光による走査(以下、便宜上「書込み」ともいう)開始時間に対応している。また、上記時間t2は、書込み走査時間に対応している。LGATE信号s15を同期信号s19の立ち上がりタイミングに同期させることで、書込み開始タイミングをそろえることができる。
【0051】
光源選択回路414は、走査光の像面が走査終端に達すると、次の走査の開始を検知するのに用いられる発光部を前記32個の発光部から選択し、選択された発光部を指定する信号を出力する。光源がVCSELの場合、1つの発光部では同期センサで検知が難しいので、Z方向の配列から複数の発光部を選択して発光させる。例えば、図7に示すように、発光部は、走査方向において、同期ビームを発光させるための発光部と、書込み用ビームを発光させるための発光部に分けられている。このように発光部を分けることにより、同期発光による発熱が書込み発光に与える影響を小さくできるので、光パワーの揃った書込みを行うことができる。この光源選択回路414の出力信号s14は、前記駆動情報の1つとして光源駆動回路400に供給される。光束が走査される試料の形状は任意で、図1に示す例では平面を想定しており、図4に示す例では曲面を想定している。
【0052】
走査光学系は、ポリゴンミラーなどからなる光偏向器65を駆動するポリゴンモータなどの振動や電磁場の影響が電子ビームの軌道に影響を与えないように、真空チャンバ40の外に配置するとよい。上記振動源や電磁場を電子ビーム軌道位置から遠ざけることにより、外乱の影響を抑制することが可能となる。走査光学系からの光ビームは、光学的に透明な入射窓より真空チャンバ40内に入射させることが望ましい。感光体試料20と光源の間には、半導体レーザーからの光束を時間的に遮光することが可能なシャッタが配置されている。
【0053】
図2は、上記実施例の真空チャンバ40および露光部6の構造を示す断面図である。図2に示すように、真空チャンバ40の鉛直軸に対して45°の角度で、真空チャンバ40の内部に外部から光を入射させることができる入射窓68が配置され、この入射窓68から真空チャンバ40内に走査ビーム77を入射させる露光装置6が真空チャンバ40の外側に配置されている。露光部6は前述のとおり走査光学系からなり、光源部、走査レンズ、同期検知手段、ポリゴンミラーからなる光偏向器65、光路を曲げるミラー72等を有してなる。露光部6の主要部は光学ハウジング69の上に配置され、上部はカバー71で覆われて遮光されている。
【0054】
光学ハウジング69は水平方向の平行移動台83の上に取り付けられ、平行移動台83は柱状の複数本の構造体82を介して除振台81の上に取り付けられている。上記ミラー72でほぼ45°の角度で斜め下方に折り曲げられる走査ビーム77の進路の周りは、外部遮光筒73、内部遮光筒75、これら内外の遮光筒の接続部に介在するラビリンス部74によって遮光されている。走査レンズ66はfθ特性を有しており、光偏光器65が一定速度で回転しているときに、光ビームは像面に対して略等速に移動する構成となっている。また、ビームスポット径も略一定に走査可能な構成となっている。
【0055】
走査光学系は、真空チャンバ40から隔離されて配置されているので、ポリゴンスキャナ等の光偏向器65を駆動する際に発生する振動は、真空チャンバ40に直接伝播されることがなく、上記振動の影響は少ない。さらに、図2には図示されていないが、構造体82と除振台83との間にダンパを挿入すれば更に効果の高い防振効果を得ることができる。
【0056】
感光体試料20に静電潜像を形成するための露光光源として、可視光から赤外光領域の光を射出するLDを用い、レーザー光をポリゴンミラーからなる偏向器で走査させ、レーザー光を点滅させて静電潜像を形成するようにした光走査装置は、ポリゴンミラーが、始動後等速回転するまでに数秒程度の時間を要する。また、所望の位置にてレーザー光を点滅させて所望の位置に書き込むために、同期検出器からの検出信号の出力タイミングを基準にして、この検出信号の出力時点から所定時間後に書き込みを開始している。
【0057】
光の点滅で潜像画像パターンを形成する場合、画像パターン信号に対する半導体レーザーからなる光源の光応答性を高くする必要がある。例えば、1μs以下で変調させる場合、パターン光パルス再現性向上やドループ特性改善のための画像データが消灯のタイミングであっても、半導体レーザーにバイアス電流を常に流しておく必要がある。半導体レーザーは、基準以上の駆動電流を与えることでレーザー発振をするが、光応答性を高めるため、バイアス電流を流すとLED発光を起こす。すなわち、光源として半導体レーザー(LD)を用いる場合は、消灯の状態であっても発光している。
【0058】
図11に、LDの駆動電流IFと光出力の関係を示す。図1において、LD駆動電流を示す横軸のaは消灯時の駆動電流、bはレーザー発振をする基準電流IF、そして、cはLD点灯の駆動電流を示している。a<b<cの関係が成立する。PonをLD点灯時の光出力、PoffをLD消灯時の光出力とする。駆動電流IFが小さい場合には、LED発光で光出力は微弱であり、駆動電流IFが基準電流に達するとレーザー発振をする。通常のレーザー発振時の出力は1〜10mW程度であるのに比べて、消灯時のバイアス電流は数十μWと、通常発振時の1/100以下程度であり、消灯時のLED発光は通常問題になることはない。このため光応答性を高めることを重視して、LD消灯時でもバイアス電流を流し続けている。
【0059】
しかしながら、微小な光量でも、長時間照射されると積分光量が増加し、感光体の必要露光量に達すると、静電潜像が形成されてしまう。この結果、所望の静電潜像を形成することができない。
【0060】
そこで本発明では、半導体レーザーを用いて所望の静電潜像を形成するに当たり、消灯時のバイアス電流によるLED発光が試料に照射される時間を極力抑えるように、光束が感光体試料の電子ビーム走査領域外に照射されるように構成を工夫している。例えば、LDバイアス電流によるオフセット発光を遮蔽するようにしている。あるいは、LD光源と感光体試料との間にシャッタを配置し、これを上記オフセット発光遮光手段としてもよい。すなわち、露光前はシャッタを閉じて光束が通過しないような構成とし、露光時はシャッタを開けて光束が通過するように構成にすることで、オフセット発光を遮蔽することができる。
【0061】
図12は、上記遮蔽手段を備えていない場合と備えている場合の露光の様子を比較して示す。図12(a)は遮蔽手段を備えていない場合、図12(b)は遮蔽手段を備えている場合を示す。図12(a)に示すように遮蔽手段を備えていない場合、露光前のオフセット光の照射時間が長く、積分光量が必要露光エネルギーに達することによりオフセット露光で潜像が形成されてしまう。これに対し、遮蔽手段を備えていれば、図12(b)に示すように、露光前はシャッタを閉じてオフセット発光を遮蔽し、露光時はシャッタを開くことにより、露光前のオフセット光による露光を回避して潜像形成を防止することができる。したがって、感光体試料を精度良く測定することができる。露光後は、必要に応じて、露光終了検知信号を与えてシャッタを閉めることができる。
【0062】
次に、感光体試料への静電潜像を形成する手段について説明する。まず、前述の電子ビーム照射装置により感光体試料20に電子ビームを照射させる。加速電圧|Vacc|は、2次電子放出比が1となる加速電圧より高い加速電圧に設定することにより、入射電子量が放出電子量より上回るため、電子が感光体試料20に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、感光体試料20はマイナスの電荷で一様に帯電される。加速電圧と照射時間を適切に設定することにより、所望の帯電電位を形成することができる。
【0063】
次に、露光光学系すなわち前記露光部6により感光体試料20に露光を行う。光学系は、所望のビーム径及びビームプロファイルを形成するように調整されている。必要露光エネルギーは、感光体試料20の特性によって決まるファクタであるが、通常、2〜6mJ/m2程度である。感度が低い感光体試料では、十数mJ/m2必要なこともある。帯電電位や必要露光エネルギーは、感光体試料の特性やプロセス条件に合わせて設定するとよい。
【0064】
そして、上述のシャッタ機構を配置して、LDバイアス電流によるオフセット光をカットする。このようにして、所望のパターンの静電潜像を形成することができる。図17は、潜像画像パターンの各種例を示している。図17(a)は1ドット孤立の例、図17(b)は2by2、図17(c)は1ドットによる格子の各パターンを示している。
【0065】
感光体試料20の表面に電荷分布があると、空間に表面電荷分布に応じた電界分布が形成される。このため、入射電子によって発生した2次電子は上記電界によって押し戻され、検出器8に到達する2次電子量が減少する。従って、電荷リーク箇所は、露光部が黒、非露光部が白となり、表面電荷分布に応じたコントラスト像を測定することができる。
【0066】
図3(a)は、荷電粒子捕獲器と、試料との間の空間における電位分布を、等高線表示で説明図的に示したものである。試料の表面は、光減衰により電位が減衰した部分を除いては負極性に一様に帯電した状態であり、荷電粒子捕獲器には正極性の電位が与えられているから、「実線で示す電位等高線群」においては、試料の表面から荷電粒子捕獲器に近づくに従い「電位が高く」なる。従って、試料における「負極性に均一帯電している部分」である図のQ1点やQ2点で発生した2次電子el1、el2は、荷電粒子捕獲器の正電位に引かれ、矢印G1や矢印G2で示すように変位し、荷電粒子捕獲器に捕獲される。
【0067】
一方、図3(a)において、Q3点は「光照射されて負電位が減衰した部分」であり、Q3点近傍では電位等高線の配列は破線で示すような配列になり、この部分の電位分布では「Q3点に近いほど電位が高く」なっている。換言すると、Q3点の近傍で発生した2次電子el3には、矢印G3で示すように、試料側に拘束する電気力が作用する。このため2次電子el3は、破線の電位等高線の示す「ポテンシャルの穴」に捕獲され、荷電粒子捕獲器に向って移動しない。図3(b)は、上記「ポテンシャルの穴」を模式的に示している。
【0068】
このように、荷電粒子捕獲器により検出される2次電子の強度(2次電子数)は、強度の大きい部分が「静電潜像の地の部分(均一に負帯電している部分、図3(a)の点Q1やQ2に代表される部分)」に対応し、強度の小さい部分が「静電潜像の画像部(光照射された部分、図3(a)の点Q3に代表される部分)」に対応することになる。
【0069】
従って、2次電子検出部で得られる電気信号を、信号処理部で適当なサンプリング時間でサンプリングすれば、前述の如く、サンプリング時刻:Tをパラメータとして、表面電位分布:V(X,Y)を「サンプリングに対応した微小領域」ごとに特定でき、信号処理部により上記表面電位分布(電位コントラスト像):V(X,Y)を2次元的な画像データとして構成し、これをアウトプット装置で出力すれば、静電潜像が可視的な画像信号として得ることができる。
【0070】
例えば、捕獲される2次電子の強度を「明るさの強弱で表現」すれば、静電潜像の画像部分は暗く、地の部分は明るくコントラストがつき、表面電荷分布に応じた明暗像として表現(出力)することができる。もちろん、表面電位分布を知ることができれば、表面電荷分布も知ることができる。
【0071】
このようにすると、帯電部において2次電子検出量が多く、露光部において2次電子検出量が少ない明暗のコントラスト像が生じ、暗の部分を露光による潜像部とみなすことができる。明暗の境界を潜像の径とすることができる。このようにして、感光体の静電潜像をミクロンオーダーの高分解能で計測することが可能となる。
【0072】
上記LDバイアス電流によるオフセット発光の影響を低減させるためには、静電潜像形成のために露光させる時間だけ前記シャッタが開いている状態であり、その前後はシャッタが閉じている状態になっていることが理想的である。これを実現するためには、露光のタイミングとシャッタ開閉のタイミングを連動させることが望ましい。露光のタイミングは、走査光学系の同期信号によって決定される。従って、走査光学系の同期信号に連動して、シャッタを開放することが望ましい。また、データの有効期間信号であるFGATE信号のレベルが低く(ロー)なった時点に連動して、シャッタを閉鎖することが望ましい。これを実現する手段として、走査光学系の同期信号を、シャッタをオープンにするためのトリガ信号とすれば、書き出しのタイミングを揃えることができる。
【0073】
制御系の構成を図14に示す。図14において、電子ビーム制御装置は、前記荷電粒子ビーム照射装置4によって照射される電子ビームの制御装置で、ホストコンピュータによって制御される。ホストコンピュータは制御ボードを介して光学ユニットを制御し、また、上記制御ボードからのトリガ信号によってシャッタ制御コントローラを制御して前記シャッタの動作を制御する。
【0074】
図15は、この制御系の動作を示す。測定のための制御コマンドが実行されたあと(S1)、走査光学系の同期信号を検知し(S2)、その検知信号をシャッタ開放のためのトリガ信号として用いる(S3)。そして、シャッタが露光光学系の有効径にまで開放されたタイミングに合わせてレーザーを点灯させる(S4,S5)。これによって感光体試料に静電潜像が形成されるので、この静電潜像を計測し(S6)、露光の完了後にシャッタを閉じる(S7)。露光後は、シャッタを閉じる他に、LDのバイアス電流を0にして、発光自体を止めても良い。
【0075】
ところで、シャッタは電子シャッタやメカニカルシャッタに限らず、命令を与えてから、実際に開くまでに時間のずれが生じる。トリガ信号を検知してから、シャッタが開き始める時間をTd、シャッタが開き始めてから、レーザー光の有効径相当が開くまでの時間をTrとすれば、トリガ出力となる同期信号を受けてから、Td+Trの時間だけ遅れてシャッタが開く。従って、その分を考慮してLDを点灯させなければならない。すなわち、トリガ出力となる同期信号を受けてから、Td+Trの時間だけ遅れてLDを点灯させることが望ましい。時間を遅らせる方法としては、走査光学系による1回の走査時間をTfとしたとき、トリガ出力となる同期信号から、Td+Tr<n×Tfとなる自然数nのときにLDを点灯させて潜像を形成する方法がある。
【0076】
上記各信号相互のタイミングチャートを図13に示す。図13において、PCからの実行コマンド入力信号がアサートされてからデータ有効期間信号(FGATE)がハイ(アサート)になった後、最初の同期信号の入力により、第1のトリガ信号が出力され、シャッタが開く。画像パターン書込み後、FGATEがロー(ネゲート)になると第二のトリガ信号が出力され、シャッタは閉まる。
【0077】
シャッタとしては、液晶変調素子のように光学的透過率を変化させる素子を用いる方法がある。この場合は、メカ的な可動部を必要としないメリットがある。但し、光応答性や透過波面への影響が出る可能性がある。したがって、シャッタとしては、メカニカルシャッタを用いると良い。なおここで述べるメカニカルシャッタとは、図16に示すような、光路進行方向に対して、物体が有る状態(図16(a))と、無い状態(図16(b))を作り出し、その違いで、光路進行方向を変えることで、測定試料に光線が到達する状態と遮光状態を作り出すことが可能な手段を指す。
【0078】
メカニカルシャッタは、シャッタの開閉動作や速度の制御をガバナーやスプリングなどによって機械的に行うものである。メカニカルシャッタには、ギロチンシャッタや複数のシャッタ羽根を用いて中心から周辺に向かって開き、周辺から中心に向かって閉じる構造のものなどがある。ギロチンシャッタとは、2枚の板のそれぞれに孔が空いていて、先幕に相当する板が走行した後、後幕に相当する板が走行し、孔の重なり状態の変化でシャッタ速度を変化させることができるようにしたものである。また、メカニカルではあるが、電気信号にて開閉を制御する構成のものであってもよい。これにより、同期信号により正確に合わせた適切なタイミングで開閉させることが可能となる。シャッタ手段として、メカニカルシャッタを用いることにより、レーザー光の透過波面を劣化させることなく、高速に、オフセット発光を遮光することができる。
【0079】
シャッタの位置としては、真空チャンバ40の外側に配置するとなお良い。真空チャンバ40内に配置すると、メカニカルシャッタの開閉時及びその前後では、周辺の電磁場が変動し、それが走査電子ビームの軌道を曲げてしまう懸念があるからである。メカニカルシャッタを真空チャンバ40の外に配置することにより、上記のような不具合を抑制することが可能なる。
【0080】
表面電荷分布や表面電位分布のプロファイルを測定することにより、さらに高精度に測定することが可能である。図18は本発明の表面電位分布測定装置の他の実施例を示す図である。図18において、感光体試料20の下側の試料設置部213は、電圧±Vsubを印加できる電圧印加部が接続されている。また、試料20の上方には、入射電子ビームが試料電荷の影響を受けることを抑制するために、グリッド90を配置した構成となっている。試料設置部213は導電材料からなり、その下には絶縁体212が配置され、さらにその下には導電体211が配置され、導電体211は接地され(GNDに落とされて)いる。
【0081】
図19は入射電子と感光体試料の関係を示す。同図(a)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより大きい場合、同図(b)は加速電圧が表面電位ポテンシャルより小さい場合をそれぞれ示す。試料の垂直方向に入射する荷電粒子の速度ベクトルが、試料に到達前に反転するような状態が存在する領域があり、その1次入射荷電粒子を検出する構成となっている。なお、加速電圧は正で表現することが一般的であるが、加速電圧の印加電圧Vaccは負であり、電位ポテンシャルとして物理的意味を持たせるためには、負で表現する方が説明しやすいため、ここでは加速電圧は負(Vacc<0)と表現する。電子ビームの加速電位ポテンシャルをVacc(<0)、試料の電位ポテンシャルをVp(<0)とする。
【0082】
電位とは、単位電荷が持つ電気的な位置エネルギーである。したがって、入射電子は、電位0(V)では加速電圧Vaccに相当する速度で移動する。すなわち、電子の電荷量をeとし電子の質量をmとすると、電子の初速度v0は、
mv02/2=e×|Vacc|
で表される。真空中ではエネルギー保存の法則により、加速電圧の働かない領域では等速で運動し、試料面に接近するに従い電位が高くなり、試料電荷のクーロン反発の影響を受けて速度が遅くなる。したがって、一般的に以下のような現象が起こる。
【0083】
図19(a)に示す状態の場合、|Vacc|≧|Vp|なので、電子は、その速度は減速されるものの、試料に到達する。
図19(b)に示すように、|Vacc|<|Vp|の場合には、入射電子の速度は試料の電位ポテンシャルの影響を受けて徐々に減速し、試料に到達する前に速度が0となって、反対方向に進む。
【0084】
空気抵抗の無い真空中では、エネルギー保存則がほぼ完全に成立する。したがって、入射電子のエネルギーを変えたときの、試料面上でのエネルギーすなわちランディングエネルギーがほぼ0となる条件を計測することで、感光体試料表面の電位を計測することができる。ここでは1次反転荷電粒子、特に電子の場合を1次反転電子と呼ぶことにする。試料に到達したとき発生する2次電子と1次反転荷電粒子とでは、検出器に到達する量が大きく異なるので、明暗のコントラストの境界より、識別することができる。
【0085】
なお、走査電子顕微鏡などは、反射電子検出器を備えているが、この場合の反射電子とは、一般的に試料の物質との相互作用により、入射電子が後方背面に反射(散乱)され、試料の表面から飛び出す電子のことを指す。反射電子のエネルギーは入射電子のエネルギーに匹敵する。反射電子の強度は試料の原子番号が大きいほど大きいといわれ、試料の組成の違いや、凹凸を観察するのに有効な検出方法である。これに対して、1次反転電子は、試料表面の電位分布の影響を受けて、試料表面に到達する前に反転する電子のことであり、反射電子とは全く異なる現象である。
【0086】
図20は潜像の深さ計測結果の一例を示す図である。各走査位置(x,y)で、加速電圧Vaccと、試料下部の印加電圧Vsubとの差を
Vth(=Vacc−Vsub)
とすれば、ランディングエネルギーがほぼ0となるときのVth(x,y)を測定することで電位分布V(x,y)を測定することができる。Vth(x,y)は、電位分布V(x,y)と一意的な対応関係があり、Vth(x,y)がなだらかな電荷分布などであれば、近似的に電位分布V(x,y)と等価となる。
【0087】
図20の上段に示す曲線は、試料表面の電荷分布によって生じた表面電位分布の一例を示している。2次元的に走査する電子銃の加速電圧は−1800Vとした。中心(横軸座標=0)の電位が約−600Vであり、中心から外側に向かうに従って、電位がマイナス方向に大きくなり、中心から半径が75μmを超える周辺領域の電位は約−850V程度になっている。同図中段の楕円形は試料の裏面をVsub=−1150Vに設定したときの検出器出力を画像化したものである。このとき、Vth=Vacc−Vsub=−650Vとなっている。同図下段の楕円形はVsub=−1100Vとしたほかは上記条件と同じ条件で得られた検出器出力を画像化したものである。このときのVthは−700Vになっている。
【0088】
図20に示す結果から分かるように、加速電圧Vaccまたは印加電圧Vsubを変えながら、試料表面を電子で走査させ、Vth分布を計測することにより、試料の表面電位情報を計測することが可能となる。この方法を用いることにより、従来困難であった、潜像プロファイルをミクロンオーダーで可視化することが可能となる。
【0089】
1次反転電子で潜像プロファイルを計測する方式では、入射電子のエネルギーが極端に変わるため、入射電子の軌道がずれてくることが生じ、その結果として、走査倍率が変わったり、歪曲収差を生じたりすることになる。その場合には、静電場環境や電子軌道をあらかじめ計算しておき、それをもとに補正することにより、さらに高精度に計測することが可能となる。
【0090】
感光体には、感光体に与えられる総露光エネルギー密度は同じでも、光量と露光時間の関係が異なると潜像形成状態が異なる相反則不軌の現象がある。一般的に露光エネルギーが一定の場合、光量が強いほど、感度(潜像深さ)が低下し、トナー付着量に変化をもたらし、その結果として画像濃度の違いとして現れる。光量が強いとキャリアの再結合量が増大し、表面に到達するキャリア量が減少することが原因と考えられている。これがVCSELなどのマルチビーム走査光学系の場合、画像濃度むらが顕著にあらわれてくる。
【0091】
本実施例に係る静電潜像測定装置で感光体試料の表面の静電潜像を評価することにより、1ミクロンオーダーの分解能で計測することが可能であるため、潜像形成の過程が1ドットレベルで定量的に詳細に解析できる。よって、露光量を最適化することができ、感光体試料に負担のかからない帯電及び露光条件が分かり、省エネルギー、高耐久性を備えた感光体を得ることができる。
【0092】
出力画像の高画質化のために、光学系の最適化及び光源波長を780nm以下に短波長化し、副走査方向のビームスポット径を60μm以下に小径化する試みが行われている。しかし、現在の感光体は短波長の光に対して感度が低いことや、小径化されたビームでは感光体内での光の散乱及び電荷の拡散の影響を強く受け、潜像径が広がり、潜像の深さも浅くなり、最終出力画像では、階調性、鮮鋭性を高いレベルで安定に得ることができないという不具合が生じている。
【0093】
図21にビームスポット径及び潜像径の概念図を示す。ここでは、ビームスポット径を、ビームスポット光量分布が最大光量のe−2以上である範囲の径で定義している。潜像径は、コントラスト像の明暗の境界で描かれる円または楕円の径とする。電荷輸送層の組成及び膜厚が光の散乱及び電荷の拡散度合いに影響を与え、電荷発生層の組成が感度に影響を与えることは知られているが、明確な相関関係が分かっていない。
【0094】
そこで、電荷輸送層の組成及び膜厚、電荷発生層の組成を変えて感光体を作り、本実施例の静電潜像測定装置を用いて行われる静電潜像測定方法において、画像形成装置で使用する条件と同じ、例えば帯電電位800V、露光エネルギー4mJ/m2として、光源波長が780nm以下、副走査方向のビームスポット径が60μm以下の条件で露光して潜像測定を行う。図21(a)及び(b)に示すように、感光体面での副走査方向のビームスポット径をAとし、形成される副走査方向の潜像径をBとしたときに、
1.0<B/A<2.0
を満足する感光体を選定すれば、最終出力画像で階調性、鮮鋭性が高いレベルで安定する感光体を得ることができる。上記条件式において、下限の1.0は、光の散乱及び電荷の拡散はどんな感光体でも必ず起こるのでこれ以下にはならないという原理的な限界であり、上限の2.0は、最終出力画像で階調性、鮮鋭性の安定性を確保するために必要な限界である。
【0095】
次に、以上説明した本発明に係る静電潜像の測定装置を用いて測定した感光体を用いた本発明に係る画像形成装置の実施例について説明する。図22は上記画像形成装置の1形態であるレーザプリンタ1000の概略構成を示す。図22において、レーザプリンタは、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングブレード1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、及び排紙トレイ1043などを備えている。
【0096】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングブレード1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に関して、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングブレード1035の順に配置されている。
【0097】
感光体ドラム1030の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム1030は、図22の紙面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム1030の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム1030の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、このトナーが現像ローラ1032に供給される。現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。トナーが付着された潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0098】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。レジストローラ対1039は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0099】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面上のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。この定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0100】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。クリーニングブレード1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031の位置に戻る。
【0101】
本発明に係る静電潜像の測定装置を用いて測定することにより、非常に望ましい感光体(潜像担持体)を得ることができ、この感光体を用いて画像形成装置を構成することにより、解像力に優れた精彩度の高い画像、さらに、耐久に優れた画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る静電潜像の測定装置を用いることによって、電子写真プロセスを用いる複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に用いられる感光体の品質や性能を評価することができる。そして、評価された感光体の品質や性能に応じた画像形成装置の設計を行うことにより、感光体に高品質の静電潜像を形成することができ、この静電潜像を現像することにより高品質の画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0103】
4 電子ビーム照射装置
6 露光部
8 検出器
15 試料載置部
20 感光体試料
40 真空チャンバ
61 光源
65 光偏向器
1017 同期センサ(同期信号生成手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開平03−049143号公報
【特許文献2】特開平3−200100号公報
【特許文献3】特開2003−295696号公報
【特許文献4】特開2004−251800号公報
【特許文献5】特開2008−233376号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させる電子ビーム照射装置と、帯電した上記感光体試料面に静電潜像を形成するための露光部と、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出する検出器と、を備え、上記検出器によって得られる検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定装置において、
上記露光部は、半導体レーザーからなる光源と、上記感光体試料面を上記光源からのレーザー光で走査させる光偏向器と、上記レーザー光の走査範囲の端部で上記レーザー光を検出して同期信号を生成する同期信号生成手段と、上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成する書込みタイミング信号生成手段と、を備え、
上記露光部による露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを特徴とする静電潜像の測定装置。
【請求項2】
前記露光部の光源として複数の発光部を持つ半導体レーザーを用い、同期信号生成手段からの同期信号によって発光する発光部と、書込みタイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部とが異なっていることを特徴とする請求項1記載の静電潜像の測定装置。
【請求項3】
前記同期タイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部は、複数の発光部であることを特徴とする請求項1または2記載の静電潜像の測定装置。
【請求項4】
前記露光部の光源は半導体レーザーであり、基準クロックと同期信号から画素クロックを生成する画素クロック生成手段と、画素情報から画素パターンを生成する画素パターン生成手段とを有することを特徴とする請求項1、2または3記載の静電潜像の測定装置。
【請求項5】
測定時以外は感光体試料面への光の入射を遮蔽するシャッタと、露光タイミングと連動して上記シャッタの開閉を制御するシャッタ制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至項4のいずれかに記載の静電潜像の測定装置。
【請求項6】
前記シャッタ制御手段は、走査光学系の同期信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にデータ有効期間信号に連動してシャッタを閉じる手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電潜像の測定装置。
【請求項7】
シャッタ手段はメカニカルシャッタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電潜像の測定装置。
【請求項8】
入射する荷電粒子の試料垂直方向の速度ベクトルが反転する領域が存在する条件下で測定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の感光体静電潜像の測定装置。
【請求項9】
感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、
上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、
上記レーザー光の走査範囲の端部で同期信号生成手段により上記レーザー光を検出して同期信号を生成し、
上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成し、
露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを特徴とする静電潜像の測定方法。
【請求項10】
感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、
上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、
静電潜像を形成する時間の前後で、光源からのレーザー光が感光体試料の観察領域に到達しないように遮蔽することで、上記半導体レーザーのバイアス電流によるオフセット発光の影響を抑制することを特徴とする静電潜像の測定方法。
【請求項11】
感光体の面に電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置であって、上記感光体は、請求項1乃至9のいずれかに記載の静電潜像の測定装置によって測定された感光体である画像形成装置。
【請求項12】
書込み光源から射出されるレーザー光の波長が780nm以下であり、かつ、感光体面での副走査方向のビームスポット径が60μm以下であり、感光体面での副走査方向のビームスポット径をAとし、形成される副走査方向の潜像径をBとすると、
1.0<B/A<2.0
を満足することを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【請求項1】
感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させる電子ビーム照射装置と、帯電した上記感光体試料面に静電潜像を形成するための露光部と、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出する検出器と、を備え、上記検出器によって得られる検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定装置において、
上記露光部は、半導体レーザーからなる光源と、上記感光体試料面を上記光源からのレーザー光で走査させる光偏向器と、上記レーザー光の走査範囲の端部で上記レーザー光を検出して同期信号を生成する同期信号生成手段と、上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成する書込みタイミング信号生成手段と、を備え、
上記露光部による露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを特徴とする静電潜像の測定装置。
【請求項2】
前記露光部の光源として複数の発光部を持つ半導体レーザーを用い、同期信号生成手段からの同期信号によって発光する発光部と、書込みタイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部とが異なっていることを特徴とする請求項1記載の静電潜像の測定装置。
【請求項3】
前記同期タイミング信号生成手段からの書込みタイミング信号で発光する発光部は、複数の発光部であることを特徴とする請求項1または2記載の静電潜像の測定装置。
【請求項4】
前記露光部の光源は半導体レーザーであり、基準クロックと同期信号から画素クロックを生成する画素クロック生成手段と、画素情報から画素パターンを生成する画素パターン生成手段とを有することを特徴とする請求項1、2または3記載の静電潜像の測定装置。
【請求項5】
測定時以外は感光体試料面への光の入射を遮蔽するシャッタと、露光タイミングと連動して上記シャッタの開閉を制御するシャッタ制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至項4のいずれかに記載の静電潜像の測定装置。
【請求項6】
前記シャッタ制御手段は、走査光学系の同期信号をトリガ信号としてシャッタを開放し、静電潜像形成後にデータ有効期間信号に連動してシャッタを閉じる手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電潜像の測定装置。
【請求項7】
シャッタ手段はメカニカルシャッタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電潜像の測定装置。
【請求項8】
入射する荷電粒子の試料垂直方向の速度ベクトルが反転する領域が存在する条件下で測定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の感光体静電潜像の測定装置。
【請求項9】
感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、
上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、
上記レーザー光の走査範囲の端部で同期信号生成手段により上記レーザー光を検出して同期信号を生成し、
上記同期信号に基づき上記レーザー光が上記感光体試料面を走査するときの発光タイミングを制御するための書込みタイミング信号を生成し、
露光の終了から所定のタイミングで上記静電潜像の分布を測定することを特徴とする静電潜像の測定方法。
【請求項10】
感光体試料に電子ビームを照射して感光体試料に帯電電荷を生成させ、帯電した上記感光体試料面を露光することにより静電潜像を形成し、上記感光体試料面を電子ビームで走査することによって上記感光体試料から放出される電子を検出し、この検出信号により上記感光体試料面の静電潜像分布を測定する静電潜像の測定方法において、
上記露光は、露光部において半導体レーザーからなる光源のレーザー光を上記感光体試料面で走査させることによって行い、
静電潜像を形成する時間の前後で、光源からのレーザー光が感光体試料の観察領域に到達しないように遮蔽することで、上記半導体レーザーのバイアス電流によるオフセット発光の影響を抑制することを特徴とする静電潜像の測定方法。
【請求項11】
感光体の面に電子写真プロセスを実行することにより画像を形成する画像形成装置であって、上記感光体は、請求項1乃至9のいずれかに記載の静電潜像の測定装置によって測定された感光体である画像形成装置。
【請求項12】
書込み光源から射出されるレーザー光の波長が780nm以下であり、かつ、感光体面での副走査方向のビームスポット径が60μm以下であり、感光体面での副走査方向のビームスポット径をAとし、形成される副走査方向の潜像径をBとすると、
1.0<B/A<2.0
を満足することを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−53192(P2011−53192A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205073(P2009−205073)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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