説明

静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法

【課題】高温高湿下において、白点の発生が抑制された画像が得られる静電荷像現像剤用キャリアを提供すること。
【解決手段】芯材となる磁性粒子と前記磁性粒子の表面を被覆する被覆樹脂層とを有し、前記磁性粒子が表面に凹凸を有する体積平均粒子径20〜100μmの磁性粒子であり、前記凹凸の平均間隔Smが0.1〜4.0μmであり、前記被覆樹脂層がポリフェニレンエーテルを含むことを特徴とする静電荷現像剤用キャリア。前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5,000〜20,000であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像(静電潜像)を経て画像情報を可視化する電子写真法は、現在さまざまな分野で利用されている。従来、電子写真法においては、潜像保持体(感光体)や静電記録体上に種々の手段を用いて静電荷像を形成し、この静電荷像にトナーと呼ばれる粒子を付着させて静電荷像を現像・可視化する方法が一般的に使用されている。ここで用いる現像剤は、キャリアと呼ばれる粒子とトナーの両者を相互に摩擦帯電させてトナーに適当量の正又は負の電荷を付与する二成分現像剤と、磁性トナーなどのようにトナー単独で用いる一成分現像剤とに大別される。特に二成分現像剤においては、キャリアに撹拌、搬送、帯電付与などの機能を持たせ、現像剤に要求される機能の分離を図れるため、設計が容易であることなどの理由で現在広く用いられている。
【0003】
特許文献1〜3には従来のキャリアが記載されている。
例えば特許文献1は、キャリア芯材の形状係数を規定し、被覆樹脂層に熱可塑性樹脂成分及びグアナミン樹脂を架橋させた樹脂成分を含有させて膜剥がれを防止したキャリアを開示する。
特許文献2は、N−アルコキシアルキル化ポリアミドとシリコーン樹脂の架橋被覆を有することにより、スペント性、被膜の耐摩耗性を向上させたキャリアを開示する。
特許文献3は、高分子量ポリエチレン樹脂を直接磁性粒子上で重合被覆し被覆樹脂剥がれを防止し、その表面に帯電制御樹脂層や帯電制御粒子層を設け、帯電制御されたキャリアを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−251354号公報
【特許文献2】特許第4139285号公報
【特許文献3】特開平9−204075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高温高湿下において、白点の発生が抑制された画像が得られる静電荷像現像用キャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の手段により、上記課題が解決されることを見出した。
<1>芯材となる磁性粒子と前記磁性粒子の表面を被覆する被覆樹脂層とを有し、前記磁性粒子が表面に凹凸を有する体積平均粒子径20〜100μmの磁性粒子であり、前記凹凸の平均間隔Smが0.1〜4.0μmであり、前記被覆樹脂層がポリフェニレンエーテルを含むことを特徴とする静電荷像現像用キャリア、
<2>前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5,000〜20,000である、<1>に記載の静電荷像現像用キャリア、
<3><1>又は<2>に記載の静電荷像現像用キャリアと、静電荷像現像用トナーと、を含有することを特徴とする静電荷像現像剤、
<4><3>に記載の静電荷像現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電荷像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、画像形成装置に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ、
<5>潜像保持体と、前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記静電荷像を<3>に記載の静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、現像された前記トナー像を被記録媒体に転写する転写手段と、前記被記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置、
<6>潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、前記静電荷像を<3>に記載の静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、現像された前記トナー像を被記録媒体に転写する転写工程と、前記被記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0007】
上記<1>に記載の手段によれば、凹凸の平均間隔Smが0.1〜4.0μmでない場合、又は、被覆樹脂層がポリフェニレンエーテルを含まない場合と比べて、高温高湿下において、白点の発生が抑制された画像が得られる、静電荷像現像用キャリアが提供される。
上記<2>に記載の手段によれば、ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5,000〜20,000でない場合と比べて、キャリア表面を均一にすることができ、高温高湿下での印刷初期、及び、長期印字後に長時間放置した後の印刷において、白点の発生が抑制され、細線再現性に優れた画像が得られる、静電荷像現像用キャリアが提供される。
上記<3>に記載の手段によれば、高温高湿下での白点の発生が抑制された画像が得られる、静電荷像現像剤が提供される。
上記<4>に記載の手段によれば、高温高湿下での白点の発生が抑制さた画像が得られる静電荷像現像剤の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性が高い、プロセスカートリッジが提供される。
上記<5>に記載の手段によれば、高温高湿下での白点の発生が抑制された画像が得られる、画像形成装置が提供される。
上記<6>に記載の手段によれば、高温高湿下での白点の発生が抑制された画像が得られる、画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法の実施形態について詳細に説明する。以下、数値範囲を表す「A〜B」等は、「A以上、B以下」と同義であり、数値範囲の両端をその数値範囲に含む。
【0010】
(静電荷像現像用キャリア)
本実施形態の静電荷像現像用キャリア(以下、単に「キャリア」ともいう。)は、芯材となる磁性粒子と前記磁性粒子の表面を被覆する被覆樹脂層とを有し、前記磁性粒子が表面に凹凸を有する体積平均粒子径20〜100μmの磁性粒子であり、前記凹凸の平均間隔Smが0.1〜4.0μmであり、前記被覆樹脂層がポリフェニレンエーテルを含むことを特徴とする。
【0011】
電子写真法による印字速度の高速化及び使用環境の多様化に伴い、長期間の印刷によりキャリアの被覆樹脂層が磨耗して芯材である体積平均粒子径20〜100μmの磁性粒子が露出し、画像の劣化が発生することがある。
特に高画質化に伴い潜像保持体(感光体)へのトナー像の現像、及び、転写の効率を向上させるために、50〜200nm程度の無機粒子等の添加剤粒子を静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)に外添することがある。この場合、無機粒子による被覆樹脂層の磨耗、無機粒子の被覆樹脂層への埋没や、被覆樹脂層の変形などが引き起こされる。その結果、帯電量が安定せず、画質が低下する。
これらの現象は高温時での使用で、顕著に現れる。特に高温高湿での連続使用後の初期の印刷において、現像電圧などが漏えいし、画像が白点状に抜ける画像欠損を発生させてしまうことがある。
【0012】
そのため、被覆樹脂層の耐摩耗性の向上のために架橋反応を利用した硬化系の樹脂の使用が検討されている。架橋反応を必要とする樹脂は、高温高湿環境においては吸水性が高いものが多く、帯電量を保持することができず、画像形成装置内へのトナー飛散などによる画像汚染が発生してしまうことがある。
【0013】
また、被覆樹脂の分子量を高くしたり、ポリアミドなどのエンジニアリングプラスチックなどの導入により耐磨耗性を向上させる検討も実施されている。しかし、被覆樹脂と芯材となる磁性粒子との密着性が不十分であり、被覆樹脂層が芯材から剥がれることがある。また、高温高湿な環境における樹脂の機械的な特性の変動が大きく、高温高湿な環境下における連続使用により被覆樹脂層が変形したり、磨耗により芯材が露出してしまう。その結果、高温高湿な環境下における連続使用後に長時間放置した後の高温高湿下の初期の印刷において、現像電圧などが露出した磁性粒子より漏えいし、画像が白点状に抜ける画像欠損を発生させてしまうことがある。
【0014】
本発明者らは、鋭意研究した結果、芯材となる磁性粒子とこの磁性粒子を被覆する被覆樹脂層を有する静電荷像現像用キャリアにおいて、温度変化による機械的な強度の変動が少なく、また、高温高湿な環境においても吸水性が低く、帯電性の変動が少ないポリフェニレンエーテルを被覆樹脂層に含有させた。
その結果、温度及び湿度の変化によるキャリアの帯電性の変動が抑制された。また、高温高湿な環境下において、長期にわたって安定したトナー帯電量が得られ、かつ、長期使用の際において芯材の露出が起因となる電荷の漏えいが抑制され、白点の発生等の画像欠陥が抑制された。
また、本実施形態のキャリアを使用した場合には、上記の範囲の体積平均粒子径を有する添加剤粒子を使用した場合であっても、キャリアの表面の被覆樹脂層への添加剤粒子の埋没、被覆樹脂層の変形、及び、被覆樹脂層の磨耗が抑制される。
【0015】
また、ポリフェニレンエーテルを被覆樹脂層に含有させた場合でも、キャリアの芯材となる体積平均粒子径20〜100μmの磁性粒子の表面が平滑であると、被覆樹脂層と磁性粒子の表面との接触面積が小さく、芯材と被覆樹脂との界面が平滑であるために、一部の剥離がそのまま界面の剥離に繋がり、被覆樹脂層が剥離しやすいと考えられたため、実験した結果、長時間の印刷において、白点が発生した。そこで、芯材となる磁性粒子の表面に適度な凹凸を設けることにより、磁性粒子とポリフェニレンエーテルを含有する被覆樹脂との接触面積が増え、凹凸部への被覆樹脂の投錨効果が起こり、相乗的に接着力が向上すると推測した。実験の結果、長期の外力の多い状態での印刷においても、白点の発生が抑制された。
以下、本実施形態のキャリアの構成について説明する。
【0016】
本実施形態のキャリアは、芯材となる磁性粒子と前記磁性粒子の表面を被覆する被覆樹脂層とを有する。
本実施形態において、キャリアの芯材となる磁性粒子としては、磁性金属、磁性酸化物、磁性粒子を内部に分散した樹脂粒子がある。しかし、これらは、そのままでは吸水性が高く、高湿な環境下において帯電性が低下する欠点を有することから、環境による帯電性の変動が大きい。また、表面エネルギーが高い材料であるために、トナーに含まれる成分により汚染されやすく、帯電性の維持性が悪い。そこで、芯材表面を疎水性、かつ、表面エネルギーが低い樹脂で被覆することにより前述の帯電に関する諸問題が改善される。
一方、絶縁性の樹脂により、高い被覆率で磁性粒子の表面が被覆されると、キャリアの電気抵抗が上昇し、ベタ画像の再現性が悪化することがある。この場合、必要に応じて電気抵抗の上昇を回避する目的で帯電制御剤や導電材料を被覆樹脂層内に分散させることが好ましい。
【0017】
被覆樹脂層を磁性粒子の表面に形成する方法としては、樹脂を溶解する溶媒に樹脂と導電材料などを投入して被覆樹脂層を形成するための溶液(被覆樹脂層形成用溶液)を調製し、磁性粒子を被覆樹脂層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆樹脂層形成用溶液を磁性粒子の表面に噴霧するスプレー法、磁性粒子を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆樹脂層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中で磁性粒子と被覆樹脂層形成用溶液を混合し、次いで溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられるが、本実施形態においてはニーダーコーター法が好ましい。
【0018】
<磁性粒子>
本実施形態で使用する磁性粒子としては、特に制限されないが、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物の粒子、前記磁性金属や磁性酸化物の磁性粉を結着樹脂中に分散させた樹脂粒子などが挙げられる。結着樹脂としては、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等が用いられる。
【0019】
フェライトの芯材の製造方法の例を挙げる。
まず、原材料となる各酸化物を適量配合し、湿式ボールミル等で8〜35時間粉砕、混合し、スプレードライヤ等で造粒、乾燥させた後、ロータリーキルン等を用い800〜1,000℃で8〜10時間仮焼成をする。仮焼成は、必要に応じて0〜3回行う。その後、仮焼成品を水に分散させ湿式ボールミル等で体積平均粒子径が0.3〜1.2μmになるまで粉砕を行う。このスラリをスプレードライヤ等を用いて造粒、乾燥し、磁気特性と抵抗を調整する目的で、酸素濃度をコントロールしながら800〜1,300℃で6〜10時間本焼成した後、粉砕し、更に所望の粒度分布に分級して、フェライトの芯材が製造される。本実施形態では、磁性粒子の表面形状を均一にするためにロータリ式電気炉を使用することが好ましい。
磁性粒子の表面の凹凸の平均間隔Sm及び算術平均粗さRaを上記範囲とするためには、磁性粒子の仮焼成、本焼成前の湿式粉砕時間及び本焼成条件を調整すればよい。例えば、湿式粉砕時間を長くすることにより、Sm及びRaは小さくなる。本焼成時間が長くなる又は温度が高くなると結晶成長が進み、Sm及びRaは大きくなり、更に進むと表面は平滑になり粗さがなくなっていく。湿式粉砕、本焼成条件は、磁性粒子に用いる材料に応じて決めればよい。
【0020】
磁性粒子の体積平均粒子径は、20〜100μmである。
磁性粒子の体積平均粒子径が、20μm未満であると、一粒子あたりの磁力が低下しトナー粒子と一緒に現像され画質が低下する。
磁性粒子の体積平均粒子径が、100μmを超えると一粒子あたりの表面積が減少しトナーを十分に帯電することができないため画質や印字濃度が低下する。
本実施形態においては、高画質確保の観点から、20〜60μmがより好ましく、25〜45μmが更に好ましい。
【0021】
磁性粒子の表面の凹凸の平均間隔Smは、0.1〜4.0μmの範囲である。
凹凸の平均間隔Smが、0.1μm未満であると被覆樹脂層形成用溶液の染込みが悪くなり、密着性が低下する。
凹凸の平均間隔Smが、4.0μmを超えると、密着性が低下する。
凹凸の平均間隔Smは、0.2〜2.0μmが好ましく、0.3〜1.5μmがより好ましい。本範囲に制御することにより磁性粒子と被覆樹脂層との密着性が向上し、被覆樹脂の剥がれが抑制される。
【0022】
磁性粒子の表面の算術平均粗さRaは、0.1〜1.5μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましく、0.2〜0.7μmが更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、芯材と被覆樹脂層との密着性に優れる。
【0023】
磁性粒子の表面の凹凸の平均間隔Sm及び算術平均粗さRaは、JIS B0601に準拠して超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500、(株)キーエンス製)により測定される。
測定サンプルとして、静電荷像現像剤からトナーを脱離させ、キャリアから溶剤等により被覆樹脂層を除去したものが用いられる。
【0024】
<被覆樹脂>
本実施形態で使用される被覆樹脂層に含まれる樹脂(被覆樹脂)として、ポリフェニレンエーテルを使用することが必須である。ポリフェニレンエーテルとしては式(1)で示される繰り返し単位を有するホモポリマー又は共重合ポリマーが好ましい。
【0025】
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R1とR2とが共に水素原子になることはない。)
【0026】
ホモポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル等の2,6−ジアルキレンエーテルの重合体が挙げられる。
コポリマーとしては、各種2,6−ジアルキルフェノール/2,3,6−トリアルキルフェノール共重合体が挙げられる。
中でも、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルのホモポリマーやポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合ポリマーが好ましい。
【0027】
本実施形態に使用するポリフェニレンエーテルの数平均分子量は5,000〜20,000であることが好ましく、8,000〜20,000であることがより好ましく、12,000〜20,000であることが更に好ましい。
数平均分子量が5,000以上であると被覆樹脂層中における分子末端に位置する水酸基の量が適当であり、高湿な環境下での帯電の変動が抑制される。
また、数平均分子量が20,000以下の場合は、被覆樹脂層形成用溶液の粘度が適当であり、磁性粒子との密着性に優れた被覆樹脂層が形成される。また、この数平均分子量にすることで吸水性が低く環境による帯電性の変動が小さく、被覆樹脂層の磁性粒子への密着性に優れ、被覆性が良好なキャリアが調製される。
【0028】
本実施形態のキャリアの被覆樹脂層中のポリフェニレンエーテルの数平均分子量の測定方法を説明する。まず、キャリア5gとクロロホルム50gとをビーカーに入れ、超音波分散機で充分に被覆樹脂を溶解させる。磁性粒子、導電粉などの不溶分を濾過分離し、被覆樹脂の抽出液を乾燥して被覆樹脂を回収する。回収した被覆樹脂20mgをクロロホルム10mlに溶解し、濾過後、FTIR検出機を備えたGPCシステム(東ソー(株)製)を用いて、TSK−GEL MultiporeHXL−Mカラム2本を使用し測定する。測定したクロマトグラムよりポリフェニレンエーテルの吸収ピークを用いて分子量を算出し、数平均分子量Mnとする。
【0029】
本実施形態に使用するポリフェニレンエーテルの製造方法や数平均分子量の制御方法は特に限定されない。数平均分子量の調整方法の一つの実施形態としては、重合の際に、2,6−ジメチルフェノールに2,4,6−トリメチルフェノールを加えることで、その添加量に応じ、ポリフェニレンエーテルの数平均分子量を変化させる製法が例示される。
また、他の実施形態として、溶媒としてポリフェニレンエーテルの良溶媒(例えばトルエン、キシレン)とポリフェニレンエーテルの貧溶媒(例えばエーテル、アルコール)との混合溶媒を用い、良溶媒/貧溶媒の比を変えることにより分子量を変化させる方法が例示される。
【0030】
被覆樹脂としてはポリフェニレンエーテルを単独で使用することが好ましいが、他の樹脂と混合して使用してもよい。
混合する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリアクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
<帯電制御剤>
任意成分として必要に応じて被覆樹脂層に含有させる帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、ベンゾイミダゾール系化合物、四級アンモニウム塩化合物、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、トリフェニルメタン系化合物、サリチル酸金属塩錯体、アゾ系クロム錯体、銅フタロシアニンなどが挙げられる。特に好ましくは四級アンモニウム塩化合物、アルコキシ化アミン、アルキルアミドが挙げられる。
【0032】
本実施形態に使用される帯電制御剤の添加量は、磁性粒子100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.01〜0.5重量部がより好ましい。
帯電制御剤の添加量が0.001重量部以上であると帯電制御剤の機能が発揮される。帯電制御剤の添加量が5重量部以下であると、被覆樹脂層の強度を保持し、使用時の外力による変形が抑制される。
【0033】
また帯電性の低下を抑制する目的で、窒素原子を含有する樹脂を粒子状にしたもの(窒素含有樹脂粒子)が使用される。
窒素原子を含有する樹脂としては、特にウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アミド樹脂は正帯電性が高く、また樹脂硬度が高いため被覆樹脂層の剥がれなどによる帯電量の低下が抑制されるため好ましい。
【0034】
本実施形態において使用される窒素含有樹脂粒子の添加量は磁性粒子100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜0.5重量部がより好ましい。窒素含有樹脂粒子の添加量が5重量部以下であると被覆樹脂層の強度を保持し、使用時の外力による被覆樹脂層の変形が抑制される。窒素含有樹脂粒子の添加量が0.01重量部以上であると帯電量低下の抑制機能が発揮される。
【0035】
<導電性粒子>
本実施形態において、前記被覆樹脂層が導電性粒子を含むことが好ましい。
本実施形態において、導電性粒子となる導電材料としては、金、銀、銅といった金属や、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、アンチモンをドープされた酸化錫、錫をドープされた酸化インジウム、アルミニウムをドープされた酸化亜鉛、金属で被覆した樹脂粒子、カーボンブラック等が例示される。中でも、抵抗調整に優れ安価であることから、カーボンブラックが好ましい。
【0036】
前記導電性粒子の含有量は、キャリアの体積固有抵抗を所望の特性にするため被覆樹脂層の樹脂100重量部(以下単に「部」という。)に対し、0.01〜30部が好ましく、0.05〜20部がより好ましい。含有量が0.01部以上であるとキャリアの体積固有抵抗値が適切に調整できる。また、含有量が30部以下であると被覆樹脂の強度を損なうことなく抵抗調整ができる。
【0037】
<溶剤>
被覆樹脂層形成用溶液の調製に使用する溶剤は、前記被覆樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化物などが使用され、安全性などの観点から、トルエンを使用することが好ましい。
【0038】
<特性>
前記被覆樹脂層の平均層厚は、0.1〜10μmが好ましく、経時にわたり安定したキャリアの体積固有抵抗を発現させるため、0.5〜3μmがより好ましい。
被覆樹脂層の厚みは、キャリアをダイヤモンドナイフで切削し、透過型電子顕微鏡等で断面画像を取り込み、画像解析により測定される。具体的には、任意に20箇所の厚みを測定し、その平均値を平均膜厚とする。
【0039】
本実施形態のキャリアの体積固有抵抗値は、高画質を達成するために、通常の現像コントラスト電位の上下限に相当する1,000V時において、106〜1014Ω・cmが好ましく、108〜1013Ω・cmがより好ましい。
キャリアの体積固有抵抗値が106Ω・cm以上であると、細線の再現性に優れ、また感光体(潜像保持体)へ移行するキャリアの量が抑制され、感光体を傷つけることがない。一方、キャリアの体積固有抵抗が1014Ω・cm以下であると、ベタ画像や、ハーフトーン画像の再現性に優れる。
【0040】
キャリアの表面の磁性粒子の露出率は、10%以下であることが好ましい。本実施形態のように表面に凹凸を有する磁性粒子を用いる場合、キャリアの表面の露出部は磁性粒子の凸部であることが多い。現像機内における外力により被覆樹脂層が脱離する場合、キャリア表面の露出部を中心に被覆樹脂層が脱離しやすい。磁性粒子の露出率が10%以下である場合には、被覆樹脂層が脱離する箇所が少ないため、長時間の使用によっても被覆樹脂層が脱離しにくく、キャリアの帯電性が低下しない。
【0041】
キャリア表面の磁性粒子の露出率は、日本分光(株)製X線光電子分光装置(JPS−9000MX)により、X線源MgKα、出力10kV、分析領域10×10mmで測定される。測定された各元素のピーク強度より表面原子濃度が算出される。なお、表面原子濃度の計算は日本分光(株)提供の相対感光因子を用いる。測定された各元素のピーク強度は分析領域内の存在量に原子毎に比例する。キャリアの表面の鉄原子由来のピーク強度と磁性粒子の表面の鉄原子由来のピーク強度比率をとることにより、キャリア表面の磁性粒子の露出率が概算される。
また、現像剤中のキャリアの表面の磁性粒子の露出率を測定するには、現像剤をビーカー等の容器に入れ、界面活性剤水溶液(例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.2重量%水溶液)を適量加え、容器下部から磁石によりキャリアを保持し、トナーのみを洗い流す。この作業を上澄みが無色透明になるまで行う。さらに、適量のエタノールを加えキャリア表面に付着している界面活性剤を除去する。トナー除去を行ったキャリアを乾燥機により乾燥させ、その後、上記方法にてキャリア表面の磁性粒子の露出量が測定される。
【0042】
(静電荷像現像剤)
本実施形態の静電荷像現像剤(以下、単に「現像剤」と称することがある。)は、本実施形態のキャリアと静電荷像現像用トナーとを含有する。静電荷像現像用トナーは、体積平均粒子径50〜200nmの添加剤粒子(外添剤)を有する静電荷像現像用トナーであることが好ましい。
【0043】
本実施形態の現像剤は、本実施形態のキャリア及び静電荷像現像用トナーを適当な配合割合で混合することにより調製される。キャリアの含有量((キャリア)/(キャリア+トナー)×100)としては、85〜99重量%が好ましく、87〜98重量%がより好ましく、89〜97重量%が更に好ましい。
【0044】
<静電荷像現像用トナー>
以下、本実施形態の静電荷像現像剤に用いられる静電荷像現像用トナー(トナー)について説明する。
本実施形態に用いられるトナーは、好ましくは結着樹脂及び着色剤を含有し、より好ましくは離型剤及びその他の成分を含有する。また、本実施形態に用いられるトナーには、上記構成からなるいわゆるトナー粒子の他、種々の目的で添加剤粒子(外添剤)が添加されていることが好ましい。
【0045】
本実施形態のトナーに用いられる結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂の他に、ポリオレフィン樹脂、スチレンとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等などを単独で用いてもよいし又は併用してもよい。
【0046】
本実施形態に用いられるトナーにおける着色剤としては、シアンの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同23、同60、同65、同73、同83、同180、C.I.バットシアン1、同3、同20等や、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーの部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCのシアン顔料、C.I.ソルベントシアン79、162等のシアン染料などが使用される。
【0047】
また、マゼンタの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同48、同49、同50、同51、同52、同53、同54、同55、同57、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同163、同184、同202、同206、同207、同209等、ピグメントバイオレット19のマゼンタ顔料や、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40等のマゼンタ染料等、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ロータミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが使用される。
【0048】
また、イエローの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントイエロー2、同3、同15、同16、同17、同97、同180、同185、同139等のイエロー顔料などが使用される。
【0049】
さらに、ブラックトナーの場合には、その着色剤として、例えば、カーボンブラック、活性炭、チタンブラック、磁性粉、Mn含有の非磁性粉などが使用される。
【0050】
また、本実施形態に用いられるトナーは、帯電制御剤を含有してもよく、ニグロシン、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、キレート錯体等が使用される。
【0051】
さらにまた、本実施形態に用いられるトナーは、離型剤を含有することが好ましい。該離型剤としては、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンとポリプロピレンの共重合物、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0052】
更に本実施形態においては、トナーの表面に、表面改質を目的に種々の樹脂粉や無機粒子を添加剤粒子(外添剤)として添加してもよい。
樹脂粉としてポリメチルメタクリレート(PMMA)、ナイロン、メラミン、ベンゾグアナミン、フッ素系樹脂等の球状粒子等が使用される。
無機粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、Al23、MgO、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe23、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、CaCO3、K2O(TiO2n、MgCO3、Al23・2SiO2、BaSO4、MgSO4等が例示され、好ましくはSiO2、TiO2、Al23が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用しても構わない。
外添剤の添加量は、トナーの総重量中、0.1〜20重量%の範囲が好ましい。
【0053】
特に本実施形態においては、添加剤粒子は、長期に安定した画質を得るために添加されることが好ましい。
従来のキャリア表面の被覆樹脂層への添加剤粒子の埋没、被覆樹脂層の変形や、磨耗を引き起こすことがあった。特に体積平均粒子径が50〜200nmの添加剤粒子であるときに作用が大きい。
本実施形態のキャリアを使用した場合には、上記の範囲の体積平均粒子径を有する添加剤粒子を使用した場合であっても、キャリアの表面への添加剤粒子の埋没、被覆樹脂層の変形、及び、被覆樹脂層の磨耗を抑制する効果が大きい。
【0054】
本実施形態において、トナーの製造方法は特に限定されないが、高画質を得るために、湿式製法で作製されることが好ましい。湿式製法としては、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された結着樹脂の樹脂粒子を含む分散液(樹脂粒子分散液)と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法;等が挙げられる。また、上記方法で得られた粒子を芯にして、更に樹脂粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。また、一般の粉砕分級法により得られたトナーでもよい。
【0055】
(画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジ)
本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記静電荷像を本実施形態の静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、現像された前記トナー像を被記録媒体に転写する転写手段と、前記被記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を備えることを特徴とする。
本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて潜像保持体表面を清掃する潜像保持体清掃手段等を含むものであってもよい。
【0056】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。該プロセスカートリッジとしては、本実施形態の静電荷像現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電荷像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、画像形成装置に着脱される、本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0057】
本実施形態の画像形成装置により、潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、前記静電荷像を<3>に記載の静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、現像された前記トナー像を被記録媒体に転写する転写工程と、前記被記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着工程と、を含む本実施形態の画像形成方法が実施される。
【0058】
<潜像保持体>
潜像保持体は、少なくとも静電荷像が形成される機能を有する。潜像保持体としては、電子写真感光体が好適に挙げられる。電子写真感光体は、円筒状の導電性の基体外周面に有機感光体等を含む塗膜を有する。塗膜は、基体上に、必要に応じて下引き層、及び、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを含む感光層がこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質と電荷輸送物質との双方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、有機感光体に限らずアモルファスシリコン感光膜等他の種類の感光層を使用してもよい。
【0059】
<帯電手段>
帯電手段としては、例えば、コロトロンなどの帯電機が用いられるが、導電性又は半導電性の帯電ロールを用いてもよい。導電性又は半導電性の帯電ロールを用いた接触型帯電機は、電子写真感光体に対し、直流電流を印加するか、交流電流を重畳させて印加してもよい。例えばこのような帯電機により、電子写真感光体との接触部近傍の微小空間で放電を発生させることにより電子写真感光体表面を帯電させる。なお、通常は、−300V以上−1,000V以下に帯電される。また前記の導電性又は半導電性の帯電ロールは単層構造あるいは多重構造でもよい。また、帯電ロールの表面をクリーニングする機構を設けてもよい。
【0060】
<静電荷像形成手段>
静電荷像形成手段(露光手段)としては、特に制限はなく、例えば、潜像保持体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。
【0061】
<現像手段>
現像手段は、潜像保持体上に形成された静電荷像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有する。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択すればよいが、例えば、静電荷像現像用トナーをブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体に付着させる機能を有する公知の現像機等が挙げられる。電子写真感光体には、通常直流電圧が使用されるが、更に交流電圧を重畳させて使用してもよい。
【0062】
<転写手段>
転写手段としては、例えば、被記録媒体の裏側からトナーとは逆極性の電荷を被記録媒体に与え、静電気力によりトナー像を被記録媒体に転写するもの、あるいは被記録媒体に直接接触して転写する導電性又は半導電性のロール等を用いた転写ロール及び転写ロール押圧装置を用いればよい。転写ロールには、潜像保持体に付与する転写電流として、直流電流を印加してもよいし、交流電流を重畳させて印加してもよい。転写ロールは、帯電すべき画像領域幅、転写帯電機の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により、任意に設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ロールとして単層の発泡ロール等が好適に用いられる。転写方式としては、紙等の被記録媒体に直接転写する方式でも、中間転写体を介して被記録媒体に転写する方式でもよい。
【0063】
中間転写体としては、公知の中間転写体を用いればよい。中間転写体に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンテレフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料等が挙げられるが、機械的強度の観点から熱硬化ポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトが好ましい。
【0064】
<潜像保持体清掃手段>
潜像保持体清掃手段(クリーニング手段)については、潜像保持体上の残留トナー等の異物を清掃するものであれば、ブレードクリーニング方式、ブラシクリーニング方式、ロールクリーニング方式を採用したもの等、選定して差し支えない。
【0065】
<定着手段>
定着手段(画像定着装置)としては、被記録媒体に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧により定着するものであり、定着部材を具備する。
【0066】
<被記録媒体>
トナー像を転写する被記録媒体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性を更に向上させるには、記録媒体の表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を使用してもよい。
【0067】
また特公平2−21591号公報で提案されているトリクル現像と組み合わせることにより、更に長期に安定した画像形成がなされる。
【0068】
図1は、本実施形態の画像形成装置を示す概略構成図であり、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1〜第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある。)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離だけ離して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0069】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0070】
上述した第1〜第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2〜第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0071】
第1のユニット10Yは、潜像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
なお、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。さらに、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0072】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V〜−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0073】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(トナー像、現像像)化される。
【0074】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された静電荷像にイエロートナーが静電的に付着し、静電荷像がイエロートナーによって現像される。
現像効率、画像粒状性、階調再現性等の観点から、直流成分に交流成分を重畳させたバイアス電位(現像バイアス)を現像剤保持体に付与してもよい。具体的には、現像剤保持体直流印加電圧Vdcを−300〜−700Vとしたとき、現像剤保持体交流電圧ピーク幅Vp−pを0.5〜2.0kVの範囲としてもよい。
イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0075】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0076】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2〜第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0077】
第1〜第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被記録媒体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。なお、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0078】
この後、記録紙Pは定着装置(ロール状定着手段)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。
【0079】
トナー像を転写する被記録媒体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【0080】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0081】
図2は、本実施形態の静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例の実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、現像装置111とともに、感光体107、帯電ローラ108、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は記録媒体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0082】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、感光体107、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、現像装置111の他には、感光体107、帯電ローラ108、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
【0083】
次に、トナーカートリッジについて説明する。トナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容するものである。なお、トナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0084】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
【0086】
(キャリアの調製)
<被覆樹脂1の合成>
・2,6−ジメチルフェノール 200部
・塩化第二銅2水和物 0.23部
・35%塩酸 0.96部
・ジ−n−ブチルアミン 0.94部
・N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン 5.7部
・キシレン/ブタノール/メタノール混合液(比率75/10/15) 292部
上記原材料を撹拌翼、温度計、還流冷却機を備えた反応槽に、窒素ガスを吹き込みながら入れ撹拌により液を混合させた。酸素を導入しながら150分反応温度40℃を保持した。エチレンジアミン四酢酸3カリウム塩の45%水溶液を0.5部添加し重合を終了させ、10分後の反応溶液を抜き出し、メタノールを反応溶液の5倍量加えて濾過した後、120℃で5時間真空乾燥して乾燥ポリフェニレンエーテルの被覆樹脂1を得た。得られたポリフェニレンエーテルの数平均分子量は4,200であった。
【0087】
<被覆樹脂2の合成>
・2,6−ジメチルフェノール 175部
・塩化第二銅2水和物 0.2部
・35%塩酸 0.84部
・ジ−n−ブチルアミン 0.83部
・N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン 4.98部
・キシレン/ブタノール/メタノール混合液(比率75/10/15) 318部
原材料の比率を上記に変更する以外は被覆樹脂1の合成方法と同様の操作を実施し被覆樹脂2を得た。得られたポリフェニレンエーテルの数平均分子量は6,250であった。
【0088】
<被覆樹脂3>
・ポリフェニレンパウダ−(旭化成ケミカルズ(株)製PPEパウダー低粘度グレード)
数平均分子量16,000
【0089】
<被覆樹脂4の合成>
・2,6−ジメチルフェノール 125部
・塩化第二銅2水和物 0.18部
・35%塩酸 0.75部
・ジ−n−ブチルアミン 0.67部
・N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン 4.0部
・キシレン/ブタノール/メタノール混合液(比率75/10/15) 370部
原材料の比率を上記に変更する以外は被覆樹脂1の合成方法と同様の操作を実施し被覆樹脂4を得た。数平均分子量は18,900であった。
【0090】
<被覆樹脂5>
・ポリフェニレンパウダ−(旭化成ケミカルズ(株)製PPEパウダー標準グレード)
数平均分子量19,000
【0091】
<被覆樹脂6の合成>
・2,6−ジメチルフェノール 75部
・塩化第二銅2水和物 0.08部
・35%塩酸 0.36部
・ジ−n−ブチルアミン 0.53部
・N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン 3.2部
・キシレン/ブタノール/メタノール混合液(比率75/10/15) 420部
原材料の比率を上記に変更する以外は被覆樹脂1の合成方法と同様の操作を実施し被覆樹脂6を得た。数平均分子量は24,500であった。
【0092】
<被覆樹脂層形成用溶液1の作製>
・トルエン 85部
・被覆樹脂1(数平均分子量Mn4,200) 15部
・カーボンブラック(VXC−72、キャボット社製) 2部
・架橋メラミン樹脂粒子(エポスタS:日本触媒(株)製) 1部
撹拌機つきの容器にトルエンに樹脂粒子1を投入し、90℃にて2時間撹拌して得た溶液とカーボンブラック、架橋メラミン樹脂粒子をサンドミルで30分撹拌分散し被覆樹脂層形成用溶液1を得た。
【0093】
<被覆樹脂層形成用溶液2〜6の作製>
被覆樹脂1を被覆樹脂2〜6に変更する以外は被覆樹脂層形成用溶液1の作製の方法と同様にして被覆樹脂層形成用溶液2〜6を得た。
【0094】
<被覆樹脂層形成用溶液7の作製>
・トルエン 85部
・スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(ガラス転移温度70℃) 15部
・カーボンブラック 2部
・架橋メラミン樹脂粒子(エポスタS:(株)日本触媒製) 1部
スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(被覆樹脂)、カーボンブラック、架橋メラミン樹脂粒子をトルエンに投入してサンドミルで撹拌分散し被覆樹脂層形成用溶液7を得た。
【0095】
(磁性粒子1の作製)
Fe23 74部、MnO2 20部、Mg(OH)2 5部、ZnO 1部を混合し、湿式ボールミルで25時間混合、粉砕してスプレードライヤにより造粒、乾燥した後、ロータリーキルンを用いて800℃、7時間の仮焼成1を行った。こうして得られた仮焼成1物を、湿式ボールミルで2時間粉砕し、体積平均粒子径を2.0μmとした後、更にスプレードライヤにより造粒、乾燥した後ロータリーキルンを用いて900℃、6時間の仮焼成2を行った。こうして得られた仮焼成2物を、湿式ボールミルで5時間粉砕し、体積平均粒子径を5.6μmとした後、更にスプレードライヤにより造粒、乾燥した後、電気炉で温度900℃用いて12時間の本焼成を行った。解砕工程、分級工程を経て体積平均粒子径36.0μmの磁性粒子(Mn−Mgフェライト粒子)1を調製した。Sm=2.0μm、Ra=0.5μmであった。
【0096】
なお、磁性粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LS Particle Size Analyzer:LS13 320、ベックマン・コールター(株)製)により得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒子径側から体積累積分布を引いて、累積50%となる粒子径を体積平均粒子径とした。磁性粒子の表面の凹凸の平均間隔Sm及び算術平均粗さRaは、JIS B0601に準拠して超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500、(株)キーエンス製)により測定した。
【0097】
(磁性粒子2〜5の作製)
混合粉砕の時間、仮焼成1の温度及び時間、湿式粉砕1の時間、仮焼成2の温度及び時間、湿式粉砕2の時間、本焼成の温度及び時間を表1に記載の条件とした以外は、磁性粒子1と同様にして、磁性粒子2〜5を調製した。体積平均粒子径、Sm、及び、Raの値を表1に示した。
【0098】
【表1】

【0099】
(磁性粒子6の作製)
次に、四つ口フラスコに、フェノール57部、40%ホルマリン70部、親油化処理された球状マグネタイト粒子(体積平均粒子径0.1μm)500部、30%アンモニア水14部、及び水70部を撹拌混合した。次に、撹拌しながら60分間で85℃に上昇させ、同温度で120分間反応させた。その後、25℃まで冷却し、500部の水を添加した後、上澄み液を除去、沈殿物を水洗した。これを減圧下、160℃で乾燥して粒径36μm、Sm0.1μm、Ra0.1μmの磁性粒子6を得た。
【0100】
(実施例1)
<キャリア1の調製>
・磁性粒子 100部
・被覆樹脂層形成用溶液1 12部
磁性粒子1と被覆樹脂層形成用溶液1をニーダーに投入し60℃に加熱後、温度を60℃に保ち10分間撹拌した後、減圧してトルエンを留去した。更に70℃に加熱、減圧してトルエンを留去した。被覆樹脂層形成キャリアを目開き75μmの網で篩分してキャリア1を得た。
【0101】
(着色剤分散液1の作製)
・シアン顔料(銅フタロシアニン、C.I.PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)製) 50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 5部
・イオン交換水 200部
上記を混合し、IKA社製ウルトラタラックスにより5分間、更に超音波バスにより10分間分散し、固形分21%の着色剤分散液1を得た。(株)堀場製作所製粒度測定機LA−700にて体積平均粒子径を測定したところ160nmであった。
【0102】
(離型剤分散液1の作製)
・パラフィンワックス(HNP−9、日本精鑞(株)製) 19部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC,第一工業製薬(株)製) 1部
・イオン交換水 80部
上記を耐熱容器中で混合し、90℃に昇温して30分、撹拌を行った。次いで、容器底部より溶融液をゴーリンホモジナイザーへと流通し、5MPaの圧力条件のもと、3パス相当の循環運転を行った後、圧力を35MPaに昇圧し、更に3パス相当の循環運転を行った。こうして出来た乳化液を前記耐熱溶液中で40℃以下になるまで冷却し、離型剤分散液1を得た。(株)堀場製作所製粒度測定機LA−700にて体積平均粒子径を測定したところ240nmであった。
【0103】
(樹脂粒子分散液1の作製)
(油層)
・スチレン(和光純薬工業(株)製) 30部
・アクリル酸n−ブチル(和光純薬工業(株)製) 10部
・β−カルボキシエチルアクリレート(ローディア日華(株)製) 1.3部
・ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) 0.4部
(水層1)
・イオン交換水 17部
・アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル製) 0.4部
(水層2)
・イオン交換水 40部
・アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル製) 0.05部
・ペルオキソ二硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製) 0.4部
上記の油層成分と水層1の成分をフラスコに入れて撹拌混合し単量体の乳化分散液とした。反応容器に上記水層2の成分を投入し、容器内を窒素で十分に置換し、撹拌をしながらオイルバスで反応系内が75℃になるまで加熱した。反応容器内に上記の単量体乳化分散液を3時間かけて徐々に滴下し、乳化重合を行った。滴下終了後更に75℃で重合を継続し、3時間後に重合を終了させ、樹脂粒子分散液1を得た。
【0104】
得られた樹脂粒子は、レーザー回析式粒度分布測定装置LA−700((株)堀場製作所製)で樹脂粒子の体積平均粒子径D50vを測定したところ250nmであり、示差走査熱量計(DSC−50、(株)島津製作所製)を用いて昇温速度10℃/分で樹脂のガラス転移点を測定したところ53℃であり、分子量測定器(HLC−8020、東ソー(株)製)を用い、THFを溶媒として数平均分子量Mn(ポリスチレン換算)を測定したところ13,000であった。これにより体積平均粒子径250nm、固形分42重量%、ガラス転移点52℃、数平均分子量Mnが13,000の樹脂粒子分散液1を得た。
【0105】
(外添トナー1の作製)
・樹脂粒子分散液1 150部
・着色剤分散液1 30部
・離型剤分散液1 40部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4部
上記の成分をステンレス製のフラスコ中でIKA社製のウルトラタラックスを用い十分に混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら48℃まで加熱した。48℃で80分保持した後、ここに上記と同じ樹脂粒子分散液1を緩やかに70部追加した。
【0106】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを6.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、撹拌軸のシールを磁力シールして撹拌を継続しながら97℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、降温速度を1℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これを更に40℃のイオン交換水3,000部を用いて再分散し、15分間300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を更に5回繰り返し、濾液のpHが6.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー母粒子を得た。
【0107】
トナー母粒子の体積平均粒子径D50vをコールターカウンターで測定したところ5.5μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.20であった。ルーゼックス社製のルーゼックス画像解析装置で形状観察を行ったところ、粒子の形状係数SF1は135でポテト形状であることが観察された。またトナーのガラス転移点は52℃であった。
【0108】
さらに、このトナー100部に、体積平均粒子径20nmの表面処理(デシルシラン)二酸化チタン粒子を1.5部と、体積平均粒子径100nmの表面処理(シリコンオイル)シリカSiO2粒子を1.5部とを添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、外添トナー1を作製した。
【0109】
(現像剤の調製)
乳化凝集法にて作製した外添トナー1(体積平均粒子径5.5μm)10部とキャリア1の100部をVブレンダーを用いて40rpmで20分間撹拌し、125μm網目のシーブを用いて篩分を行い、現像剤1を得た。
【0110】
(細線再現性、及び、白点の評価)
上記現像剤1を用いて富士ゼロックス(株)製複写機Docu Centre Color 500改造機により35℃85%RH環境下で5%印字チャートを100,000枚印字し、初期(10枚目)、10,000枚、50,000枚、80,000枚、及び100,000枚印字後及び100,000枚印字後72時間放置後での画質(細線再現性)及び白点の評価を行った。
細線再現性劣化が目視で明確に解る場合を×、目視で若干気になる場合を△、まったく解らない場合を○とした。
また、白点が5個以上を×、2個以上4個以下を△、1個以下のものを○として評価した。得られた結果を表2に示した。
【0111】
(実施例2〜6、及び、比較例1)
実施例1の被覆樹脂層形成用溶液1を被覆樹脂層形成用溶液2〜7に変更する以外は実施例1と同じようにキャリア及び現像剤を作製し、評価を行った。得られた結果を表2に示した。
【0112】
【表2】

【0113】
実施例1〜6の結果が示すように、被覆樹脂としてポリフェニレンエーテルを使用することにより、高温高湿環境において細線再現性が良好で、白点の発生が生じにくい現像剤が得られることがわかる。
【0114】
(実施例7〜9、並びに、比較例2及び3)
実施例3の磁性粒子1を磁性粒子2〜6に変更した以外は実施例3と同じようにキャリア及び現像剤を作製し、評価を行った。得られた結果を表3に示した。
【0115】
【表3】

【符号の説明】
【0116】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3、110 露光装置(静電荷像形成手段)
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K、318 1次転写ローラ(1次転写手段)
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(2次転写手段)
28、115 定着装置(ロール状定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ、
P、300 記録紙(被記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材となる磁性粒子と前記磁性粒子の表面を被覆する被覆樹脂層とを有し、
前記磁性粒子が表面に凹凸を有する体積平均粒子径20〜100μmの磁性粒子であり、
前記凹凸の平均間隔Smが0.1〜4.0μmであり、
前記被覆樹脂層がポリフェニレンエーテルを含むことを特徴とする
静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5,000〜20,000である、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の静電荷像現像用キャリアと、静電荷像現像用トナーと、を含有することを特徴とする
静電荷像現像剤。
【請求項4】
請求項3に記載の静電荷像現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電荷像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、画像形成装置に着脱可能であることを特徴とする
プロセスカートリッジ。
【請求項5】
潜像保持体と、
前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
前記静電荷像を請求項3に記載の静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
現像された前記トナー像を被記録媒体に転写する転写手段と、
前記被記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を備えることを特徴とする
画像形成装置。
【請求項6】
潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、
前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
前記静電荷像を請求項3に記載の静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
現像された前記トナー像を被記録媒体に転写する転写工程と、
前記被記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着工程と、を含むことを特徴とする
画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−68404(P2012−68404A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212638(P2010−212638)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】