説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置

【課題】初期帯電性及びアドミックス性に優れ、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の変動及びカブリを抑制できる静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含むトナー母粒子に無機粒子が外添されてなり、前記トナー母粒子の表面が、チタン化合物で被覆され、前記無機粒子がシリカ及びチタニアを含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー、並びに、前記静電荷像現像用トナーを使用した静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法において使用する乾式現像剤は、結着樹脂中に着色剤を分散させたトナーそのものを用いる一成分現像剤と、そのトナーにキャリアを混合した二成分現像剤とに大別される。従来のトナーでは、保存性、搬送性、現像性、転写性、帯電性等の特性の特性を改善するために、トナーに添加剤を外添することがしばしば行われている。
添加剤としては、疎水性シリカ微粉末(特許文献1)、シリカ微粒子に酸化アルミニウム又は酸化チタン微粒子を添加したもの(特許文献2)、気相法酸化チタンを疎水化処理したもの(特許文献3)、アナターゼ型酸化チタン(特許文献4)、酸化アルミニウム被覆酸化チタン(特許文献5)等が提案されている。さらに、無機化合物を表面処理した外添剤、例えば、酸化チタン微粒子をカップリング剤で表面処理したもの(特許文献6及び7)、疎水性シリカと疎水性チタニアを添加したもの(特許文献8)等も提案されている。また、添加剤だけでなく、トナー表面近傍にフィラー層を形成し、大き目の無機粒子を添加したもの(特許文献9)、トナー表面に帯電制御剤成分を担持し、シリカ、チタニアを添加したもの(特許文献10)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−128956号公報
【特許文献2】特開昭60−238847号公報
【特許文献3】特開昭59−52255号公報
【特許文献4】特開昭60−112052号公報
【特許文献5】特開昭57−79961号公報
【特許文献6】特開平4−40467号公報
【特許文献7】特開平4−348354号公報
【特許文献8】特開平10−186711号公報
【特許文献9】特開2006−47743号公報
【特許文献10】特開2006−220674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、初期帯電性及びアドミックス性に優れ、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の変動及びカブリを抑制できる静電荷像現像用トナーを提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記静電荷像現像用トナーを用いた静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の<1>又は<5>〜<8>に記載の手段により、上記課題が解決されることを見出した。好ましい実施態様である、<2>〜<4>と共に以下に記載する。
<1>結着樹脂及び着色剤を含むトナー母粒子に無機粒子が外添されてなり、前記トナー母粒子の表面が、チタン化合物で被覆され、前記無機粒子がシリカ及びチタニアを含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー、
<2>前記トナー母粒子がコアシェル構造を有し、シェル層がさらにチタン化合物で被覆されている、上記<1>に記載の静電荷像現像用トナー、
<3>前記チタン化合物がチタネート系カップリング剤に由来するチタン化合物を含む、上記<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー、
<4>前記シリカのトナー母粒子への添加量をa、前記チタニアのトナー母粒子への添加量をbとしたとき、下記式(1)を満たす、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
0.2≦b/a≦0.8 (1)
<5>上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー及びキャリアを含むことを特徴とする静電荷像現像剤、
<6>上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、上記<5>に記載の静電荷像現像剤を収納するとともに、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像用トナー又は前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段よりなる群から選ばれる少なくとも一種と、を備え、画像形成装置に脱着されることを特徴とするプロセスカートリッジ、
<7>少なくとも像保持体を帯電させる帯電工程と、前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記トナー像を定着する定着工程と、を有し、前記静電荷像現像用トナーが上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記静電荷像現像剤が上記<5>に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成方法、
<8>像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体に転写する転写手段と、前記トナー像を定着する定着手段と、と有し、前記静電荷像現像用トナーとして上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記静電荷像現像剤として上記<5>に記載の静電荷像現像剤を使用することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
上記<1>に記載の発明によれば、トナー母粒子の表面が、チタン化合物で被覆されておらず、また、シリカ及びチタニアが無機粒子として外添されていない場合に比べて、初期帯電性及びアドミックス性に優れ、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の及びカブリを抑制できる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<2>に記載の発明によれば、トナー母粒子がコアシェル構造を有していない場合に比べて、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の変動及びカブリを抑制できる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<3>に記載の発明によれば、チタン化合物がチタネート系カップリング剤に由来するチタン化合物を含んでいない場合に比べて、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の及びカブリを抑制できる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<4>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の及びカブリを抑制できる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<5>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、初期帯電性及びアドミックス性に優れ、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の及びカブリを抑制できる静電荷像現像剤を提供することができる。
上記<6>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、初期帯電性及びアドミックス性に優れ、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の及びカブリを抑制できるプロセスカートリッジを提供することができる。
上記<7>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、初期帯電性及びアドミックス性に優れ、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の及びカブリを抑制できる画像形成方法を提供することができる。
上記<8>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、初期帯電性及びアドミックス性に優れ、トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像濃度の及びカブリを抑制できる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、詳述する。
【0008】
(静電荷像現像用トナー)
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、少なくとも結着樹脂、着色剤を含むトナー母粒子に無機粒子が外添されてなり、トナー母粒子の表面が、チタン化合物で被覆され、前記無機粒子がシリカ及びチタニアを含むことを特徴とする。
なお、「トナー母粒子の表面が、チタン化合物で被覆され」とは、トナー母粒子の表面全体がチタン化合物で被覆されている場合に限定されるものではなく、少なくともチタン化合物が連続相を形成してトナー母粒子を被覆していればよい。すなわち、トナー母粒子の表面の一部にチタン化合物で被覆されてない部分が存在してもよい。
ここで、以下の説明において、「トナー芯粒子」とは、トナー母粒子において、チタン化合物による被覆を除いた部分の粒子を意味する。すなわち、トナー母粒子は、トナー芯粒子がチタン化合物で被覆されてなる粒子である。
なお、本実施形態において、「A〜B」との記載は、AからBの間の範囲だけでなく、その両端であるA及びBも含む範囲を表す。例えば、「A〜B」が数値範囲であれば、「A以上B以下」又は「B以上A以下」を表す。
【0009】
トナーには、保存性、搬送性、現像性、転写性、帯電性等の特性を持たせるために添加剤粒子を使用する。トナー母粒子表面に添加剤粒子を機械的方法、又は、化学的方法で付着させるが、トナー母粒子表面の添加剤粒子の付着状態は使用されることによって変化する。例えば、トナーとキャリアとを混合して用いる二成分現像剤で感光体上の静電潜像を現像するには、トナーを帯電させるために現像機内でキャリアと機械的に衝突、現像機内壁と衝突する。低い画像面積の画像の複写、プリントのような現像されるトナーの消費量が低い状態が継続した場合、大部分のトナーは現像器内で長時間撹拌されるが、この結果トナーが大きなストレスを受け、添加剤粒子がトナー母粒子に埋め込まれるという現象が発生する。その結果、添加剤粒子がトナー母粒子表面に埋め込まれたトナーは、初期のストレスを受けていないトナー(新たに現像機内に追加されたトナー)と表面状態が異なっている。この添加剤粒子が埋め込まれたトナーの現像剤にまだ添加剤粒子が埋め込まれていない新しいトナーが追加されると、トナー、キャリア間の電荷交換だけでなく、埋め込まれたトナーと埋め込まれていないトナー間でも電荷交換を生じ、帯電量の大きく異なるトナーが混在するようになり、この結果として、コピー画像にカブリを発生したり、ハイライト画像濃度の変動したりする。ここで、カブリとは、複写用紙等の被記録媒体上の、本来の画像部以外の領域に、低帯電・逆帯電のトナーが現像、転写されて発生するトナーによる汚れを意味する。
【0010】
本実施形態のトナーでは、トナー母粒子表面がチタン化合物で被覆されており、かつ、このチタン元素が電荷交換にも寄与する。本実施形態のトナーにおけるトナー母粒子表面に外添剤粒子としてチタン元素を含むチタニア粒子を添加すると、トナー母粒子は衝突等の外部ストレスがあるとやはりチタニア粒子が埋め込まれ、状況的には同じになる。しかし、本実施形態のトナーは、トナー母粒子表面がチタン化合物で形成されているために、チタニア粒子が埋め込まれても、チタン元素としてみると、埋め込まれたトナーと埋め込まれていないトナーで表面のチタン元素比率が大きな変化とならず、トナー−トナー間の電荷交換も僅かであり、両者のトナー帯電量差も小さく制御することができると推定される。更に外添剤粒子としてシリカがあることで、長期使用によるトナー帯電維持性が良好になる。これは、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤の場合、トナーへの帯電付与はキャリアによってなされるが、キャリアは表面の破壊や磨耗とともにトナー成分による汚染によって、その能力が劣化する。トナー成分としては樹脂成分と添加剤粒子とがある。トナー母粒子表面がチタン化合物で形成され、外添剤粒子としてチタニアのみであると、トナーのチタニアへの束縛力は、成分的に同じようにチタン元素をもつことから静電的な部分の束縛力が十分でなく、キャリア表面への移動、汚染となって長期に渡ってトナー帯電性をできなくなる。ところが、このトナー母粒子とチタニアとの組み合わせに他の成分である別の外添剤粒子を加えると、別の外添剤粒子とチタニア、別の外添剤粒子とトナーの束縛力が発生して、チタニアがトナー母粒子表面で安定して付着される状況となり、キャリア表面への移動、汚染が抑制されて長期に渡ってトナー帯電性を維持できるようになると推定される。
ここで、別の外添剤粒子としてはシリカを少なくとも含む。シリカはチタニアと帯電列的に異なっており、静電的なインタラクションがあってトナー母粒子表面にシリカもチタニアも安定的に存在することができるだけでなく、シリカの高いマイナス帯電性によって、トナー帯電レベルが調整される。なお、前記アドミックス性が優れるとは前述のように添加剤粒子が埋め込まれたトナーの現像材に未だ添加剤粒子が埋め込まれていない新しいトナーが追加されたときに、トナーの帯電量の変化が小さいことをいう。
【0011】
次に、本実施形態に用いられるトナー構成材料やトナーの製造方法等について説明する。
【0012】
<チタン化合物>
本実施形態のトナーにおけるトナー母粒子の表面は、チタン化合物で被覆されている。
チタン化合物としては、チタン原子を有する化合物であれば、特に制限はないが、有機チタネート化合物(チタネートカップリング剤)由来のチタン化合物、すなわち、有機チタネート化合物により形成されたチタン化合物を含むことが好ましい。なお、有機チタネート化合物とは、チタン原子に酸素原子で結合した有機基を1つ以上有する化合物である。
【0013】
前記有機チタネート化合物としては、酸エステル構造を1つ以上有する化合物であることが好ましく、酸エステル構造を3つ有する化合物であることがより好ましい。
前記酸エステル構造としては、カルボン酸エステル構造、スルホン酸エステル構造、リン酸エステル構造、ホスホン酸エステル構造であることが好ましく、カルボン酸エステル構造であることがより好ましく、アルキルカルボニルオキシ基であることが更に好ましい。
また、前記有機チタネート化合物としては、チタン原子に結合したアルコキシ基を1つ以上有することが好ましく、チタン原子に結合した炭素数1〜20のアルコキシ基を1つ以上有することがより好ましく、チタン原子に結合した炭素数1〜8のアルコキシ基を1つ以上有することが更に好ましく、チタン原子に結合したイソプロルピオキシ基を1つ以上有することが特に好ましい。
【0014】
本実施形態に用いられる有機チタン化合物は、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0015】
【化1】

(式(I)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ジアルキルホスフェート基、又は、アリール基を表す。)
【0016】
前記R1〜R4におけるアルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、及び、ジアルキルホスフェート基のアルキル部分は、炭素数1〜30であることが好ましく、炭素数1〜20であることがより好ましい。また、前記アルキル部分は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
前記R1〜R4におけるアリール基は、炭素数6〜20であることが好ましい。
1〜R4はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、又は、ジアルキルホスフェート基であることが好ましく、アルコキシ基、又は、アルキルカルボニルオキシ基であることがより好ましい。
また、前記式(I)で表される化合物は、R1〜R4として、2種以上の基を有することが好ましく、アルキル基とアルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、及び/又は、ジアルキルホスフェート基とを有することがより好ましく、アルキル基とアルキルカルボニルオキシ基とを有することが更に好ましい。
【0017】
前記有機チタネート化合物は、具体的には例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどが好ましく挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが特に好ましく挙げられる。
また、有機チタン化合物は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
この種の有機チタン化合物は、トナーの芯粒子との相容性に優れ、極めて少量の使用で、数ナノメータないし数十ナノメータの膜厚のチタン化合物の薄膜を容易かつ効果的に形成される。このようなチタン化合物は、トナー粒子の芯となる重合性単量体粒子若しくは重合体粒子と重合により結合して薄膜を形成するか、又は、チタン化合物の重合体によりトナー芯粒子が被覆される。
【0019】
本実施形態のトナーにおけるチタン化合物の総含有量は、芯粒子(重合性単量体)に対して5重量%以下であることが好ましい。上記範囲であると、重合時における析出の恐れがなく、また、重合時のトナーの凝集、融着を抑制し、トナーの定着性に優れる。チタン化合物の総含有量の下限は特に規定されないというものの、トナー芯粒子に対して0.1重量%以上であることが好ましい。
【0020】
<外添剤>
本実施形態のトナーは、トナー母粒子に無機粒子が外添されてなり、前記無機粒子がシリカ及びチタニアを含む。
帯電性、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に乾燥後、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、アルミナ(Al23)、炭酸カルシウムなどの無機粒子を外添剤(流動性助剤やクリーニング助剤等も含む。)として、乾燥状態でせん断をかけて本実施形態のトナーの表面へ添加してもよい。また、ビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子も外添剤として添加してもよい。
トナーに添加される無機粒子としては、SiO2,TiO2,Al23,CuO,ZnO,SnO2,CeO2,Fe23,MgO,BaO,CaO,K2O,Na2O,ZrO2,CaO・SiO2,K2O・(TiO2n,Al23・2SiO2,CaCO3,MgCO3,BaSO4,MgSO4等を例示される。
【0021】
これら外添剤のうち、本実施形態のトナーでは、少なくともシリカ粒子、チタニア粒子を併用して用いることが必要である。
本実施形態のトナーに外添剤として用いられる無機粒子の平均粒径(平均一次粒径)は、1〜500nmであることが好ましく、5〜300nmであることがより好ましい。
また、本実施形態のトナーに外添剤として用いられるシリカの平均粒径(平均一次粒径)は、1〜500nmであることが好ましく、5〜300nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが更に好ましい。
また、本実施形態のトナーに外添剤として用いられるチタニアの平均粒径(平均一次粒径)は、1〜500nmであることが好ましく、1〜300nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが更に好ましく、5〜50nmであることが特に好ましく、10〜20nmであることが最も好ましい。
【0022】
本実施形態において、シリカ及びチタニアは、複数種を併用してもよい。
また、シリカは、平均粒径の異なる複数のシリカ粒子を併用することが好ましい。具体的には、平均粒径で20〜50nmであるシリカと平均粒径で70〜140nmであるシリカとを併用することが好ましい。
【0023】
また、シリカ粒子のトナー母粒子への添加量aとチタニア粒子のトナー母粒子への添加量bが0.2≦b/a≦0.8を満たすことが好ましい。b/aが0.2以上であると、シリカの比率が十分であり、トナー、シリカ間の電荷交換が優勢にならず、帯電量レベルの異なるトナーが混在することを抑制し、コピー画像でカブリを抑制する。b/aが0.8以下であると、シリカの存在比率が適度であり、チタニア粒子のトナーへの束縛力が十分であり、チタニア粒子のトナーからの遊離が抑制され、キャリア汚染を抑制し、長期使用において帯電性に優れる。
【0024】
本実施形態のトナーにおけるチタニア粒子の添加量としては、トナーの体積平均径D50vとして2/D50v(μm)重量%以上40/D50v(μm)重量%以下が好ましく、4/D50v(μm)重量%以上20/D50v(μm)重量%以下がより好ましい。前記チタニア粒子の前記トナーにおける添加量が上記範囲であると、流動性の付与を十分行え、また、定着画像におけるチタニア粒子による光散乱によって黒ずみが抑制される。
【0025】
本実施形態のトナーにおけるシリカ粒子の添加量としては、トナー母粒子の全重量に対して、2/D50v(μm)重量%以上40/D50v(μm)重量%以下が好ましく、3/D50v(μm)重量%以上30/D50v(μm)重量%以下がより好ましい。前記シリカ粒子の前記トナーにおける添加量が上記範囲であると、チタニア粒子のトナーからの遊離が抑制され、キャリア汚染を防止し、長期使用において帯電性に優れ、また、感光体の磨耗が小さく、感光体の使用期間が長くなる。
【0026】
前記無機粒子は、表面が予め疎水化処理されていることが好ましい。この疎水化処理によりトナーの粉体流動性改善のほか、帯電の環境依存性、耐キャリア汚染性に対してより効果的である。
前記疎水化処理は、疎水化処理剤に前記無機粒子を浸漬等することにより行ってもよい。前記疎水化処理剤としては特に制限はないが、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シランカップリング剤が好適に挙げられる。
【0027】
前記シランカップリング剤としては、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれかのタイプを使用することも可能である。
具体的には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記疎水化処理剤の量としては、前記無機粒子の種類等により異なり一概に規定することはできないが、無機粒子100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。なお、本実施形態においては、前記疎水性シリカ粒子として、市販品も好適に使用される。
【0028】
<結着樹脂>
本実施形態に使用されるトナー芯粒子は、少なくとも結着樹脂を含有する。
結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン等の単独重合体又は共重合体が例示される。
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィン、ワックス類が挙げられる。この中でも、特にポリエステルを結着樹脂とした場合に有効である。
【0029】
本実施形態に使用されるポリエステル樹脂としては、ポリオール成分とポリカルボン酸成分から重縮合により合成される。なお、本実施形態においては、前記ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、適宜合成したものを使用してもよい。
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸、などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。
三価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、エチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸成分を含有することがより好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸は、エチレン性不飽和二重結合を介して、ラジカル的に架橋結合させ得る点で定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いられる。このようなジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でもコストの点で、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0030】
多価アルコール成分としては、二価の多価アルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1.5〜6)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂(「非結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)では、前記した原料モノマーの中でも、二価以上の第二級アルコール及び/又は二価以上の芳香族カルボン酸化合物が好ましい。二価以上の第二級アルコールとしては、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール等が挙げられる。これらの中では、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
二価以上の芳香族カルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びトリメリット酸が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
また、軟化点90〜150℃、ガラス転移点50〜75℃、数平均分子量2,000〜10,000、重量平均分子量8,000〜150,000、酸価5〜30mgKOH/g、水酸基価5〜40mgKOH/gを示す樹脂が特に好ましく用いられる。
【0031】
また、トナーに低温定着性を付与するために結着樹脂の一部として結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂では、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなることが好ましく、主鎖部分の炭素数が4〜20である直鎖型ジカルボン酸、直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。直鎖型であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、結晶融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性に優れる。また、炭素数が4以上であると、エステル結合濃度が低く、電気抵抗が適度であり、トナー帯電性に優れる。また、20以下であると、実用上の材料の入手が容易である。前記炭素数としては14以下であることがより好ましい。
【0032】
結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、又は、その低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
多価カルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。脂肪族ジカルボン酸の含有量が80モル%以上であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性。及び、低温定着性に優れる。
多価アルコール成分のうち、前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%以上であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性に優れる。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の一価の酸や、シクロヘキサノールベンジルアルコール等の一価のアルコールも用いられる。
【0034】
ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造してもよい。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造される。
【0035】
前記トナー芯粒子中における結着樹脂の含有量としては、特に制限はないが、トナー芯粒子の全重量100重量部に対して、50〜90重量部含有されていることが好ましく、60〜90重量部含有されていることがより好ましく、70〜85重量部含有されていることがさらに好ましい。上記範囲であると、定着性、保管性、粉体特性、帯電特性等に優れる。
【0036】
<着色剤>
本実施形態に使用されるトナー芯粒子は、少なくとも着色剤を含有する。
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーン・オキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などを代表的なものとして例示される。
【0037】
本実施形態のトナーにおいて、着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。前記トナー芯粒子中における着色剤の添加量は、特に制限はないが、トナー芯粒子に含まれる結着樹脂100重量部に対して、4〜20重量部の範囲内が好適である。
【0038】
<離型剤>
本実施形態に使用されるトナー芯粒子は、少なくとも離型剤を含有することが好ましい。
近年普及してきたフルカラー複写機、プリンターにおいて、その定着工程で、トナー成分による汚染、オフセットを防止するために加熱定着ロール或いは定着ベルトに、オフセット防止液を供給するための装置が必要になる等の問題がある。これは、小型化、軽量化と逆の方向であり、また、オフセット防止液が加熱されて蒸発して不快臭を与えることや、機内の汚染を生じることがある。よって、実質的にオフセット防止液がない状態で、良好な定着性を得るために、トナーはワックス等の離型剤を含むことが好ましい。
本実施形態に用いられる離型剤は、特に制限はなく、公知のものが用いられ、次のようなワックスから得られるものが好ましい。パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体等である。誘導体とは酸化物、ビニルモノマーとの重合体、グラフト変性物を含む。この他に、アルコール、脂肪酸、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、エステルワックス、酸アミド等も用いられる。
【0039】
離型剤として用いられるワックスは、70〜140℃のいずれかの温度で溶融しかつ1〜200センチポアズの溶融粘度を示すことが好ましく、1〜100センチポアズの溶融粘度を示すことがより好ましい。溶融するのが70℃以上であると、ワックスの変化温度が十分高く、耐ブロッキング性、及び、複写機内温度が高まった時に現像性に優れる。140℃以下であると、ワックスの変化温度が十分低く、高温での定着を行う必要がなく、省エネルギー性に優れる。また、溶融粘度が200センチポアズ以下であると、トナーからの溶出が適度であり、定着剥離性に優れる。
本実施形態のトナーにおいて、離型剤は、定着性、トナーブロッキング性、トナー強度等の観点から選択される。離型剤の添加量は、特に制限はないが、トナー芯粒子に含まれる結着樹脂100重量部に対して、2〜20重量部の範囲内が好適である。
また、本実施形態のトナーにおける離型剤の添加量は、前記トナー芯粒子の全重量に対し、重量%で1〜15重量%であることが好ましく、3〜10重量%であることがより好ましい。離型剤が1重量%以上であると、十分な定着ラチチュード(トナーのオフセットなしに定着できる定着ロール又は定着ベルト温度範囲)が選られ、また、15重量%以下であると、トナーから脱離して遊離している離型剤量が少なく、現像剤担持体への汚染が抑制される。また、トナーの粉体流動性に優れ、また、静電潜像を形成する感光体表面への遊離離型剤の付着を抑制し、静電潜像形成時の正確性に優れる。また、離型剤は結着樹脂と比較して透明性が劣ることによるOHP等の画像の透明性の低下が抑制され、黒ずんだ投影像となることが防止される。
【0040】
本実施形態のトナーは、結着樹脂と、カーボンブラック等の着色剤、離型剤の他に、内部添加剤として帯電を調整する帯電制御剤を1つ以上含んで構成してもよい。
また、本実施形態のトナーは、トナーの粉砕性や熱保存性を満足するために石油系樹脂を含んでもよい。石油系樹脂とは、石油類のスチームクラッキングによりエチレン、プロピレンなどを製造するエチレンプラントから副生する分解油留分に含まれるジオレフィン及びモノオレフィンを原料として合成されたものである。
【0041】
本実施形態のトナーの体積平均粒径は、2〜9μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。上記範囲であると、帯電性、現像性、及び、画像の解像性に優れる。
また、本実施形態のトナーは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30以下であることが好ましい。体積分布指標GSDvが1.30以下であると、画像の解像性に優れる。
なお、本実施形態において、トナーの粒径や、上記した体積平均粒度分布指標GSDvの値は、次のようにして測定し算出した。まず、コールターカウンターTAII(ベックマン・コールター社製)、マルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)等の測定器を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のトナー粒子の体積について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16vと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50vと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84vと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、D84v/D16vとして定義されるこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)を算出される。
【0042】
また、本実施形態のトナーは、形状係数SF1(=((トナー径の絶対最大長)2/トナーの投影面積)×(π/4)×100)が、110〜160の範囲が好ましく、125〜140の範囲がより好ましい。
なお、形状係数SF1の値は、トナーの丸さを示すものであり、真球の場合は100となり、トナーの形状が不定形になるに従って増大するものである。また、形状係数SF1を用いた算出に際して必要となる値、すなわち、トナー径の絶対最大長、トナーの投影面積は光学顕微鏡((株)ニコン製、Microphoto−FXA)を用いて倍率500倍に拡大したトナー粒子像を撮影し、得られた画像情報を、インターフェースを介して、例えば、ニコレ社製画像解析装置(LuzexIII)に導入して画像解析を行って求めた。なお、形状係数SF1の平均値は、無作為にサンプリングした1,000個のトナー粒子を測定して得られたデータを元にして算出した。
形状係数SF1が110以上であると、画像形成の際に転写工程での残存トナーの発生が抑制され、ブレード等によりクリーニングする際のクリーニング性に優れ、結果として画像欠陥が抑制される。一方、形状係数SF1が160以下であると、トナーを現像剤として使用する場合に、現像器内でのキャリアとの衝突によりトナーが破壊されることを防止し、結果として微粉の発生を抑制し、これによってトナー表面に露出した離型剤成分により感光体表面等が汚染されることを防ぎ、帯電特性に優れるばかりでなく、微粉に起因するかぶりの発生等が抑制される。
【0043】
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
本実施形態のトナーの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いられる。
本実施形態のトナーの製造方法は、トナー芯粒子の表面をチタン化合物で被覆しトナー母粒子を得る工程(以下、「被覆工程」ともいう。)、及び、トナー母粒子にシリカ及びチタニアを含む無機粒子を外添する工程(以下、「外添工程」ともいう。)を含む方法であることが好ましい。
トナー芯粒子を作製する方法として、好ましくは、懸濁重合法、乳化凝集法、シード重合法、膨潤重合法など、水系媒体中で重合性単量体粒子及び/又は重合体粒子を形成してトナーを製造する方法が挙げられる。更にはコアシェル構造を有するトナーの作製が容易である点から湿式製法、特に乳化凝集法を利用することが好ましい。
乳化凝集法は乳化重合、又は、乳化によって作製された樹脂粒子分散体に着色剤や電荷調整剤、離型剤などの水分散体等トナーに必要とされる機能を付与するための添加剤の分散体を水系媒体中で混入して、水系媒体中でホモミキサなどの各種の分散機を用いて機械的に剪断をしながら凝集剤等で凝集成長をさせ、更に樹脂粒子を融合させてトナー粒子(芯粒子)を得る。
前記被覆工程としては、例えば、このトナー芯粒子分散液中に少なくとも有機チタン化合物を添加して、系内を均一にするため緩やかに撹拌しながら、使用する重合開始剤にもよるが、40℃〜90℃に加熱して重合させる工程が挙げられる。有機チタン化合物は、始めから水系媒体中に添加されていもよく、凝集後に添加してもよく、あるいは融合中に添加してもよい。
【0044】
乳化凝集法は、第1の結着樹脂からなり、体積平均粒径が1μm以下である第1の樹脂粒子を分散した第1の樹脂粒子分散液と、着色剤を分散した着色剤粒子分散液とを少なくとも混合した混合分散液に、凝集剤を添加し、加熱することによりコア粒子を形成する凝集工程と、コア粒子が形成された混合分散液に、第2の結着樹脂からなり、体積平均粒径が1μm以下である第2の樹脂粒子を分散した第2の樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子の表面に、第2の樹脂粒子を付着させて付着樹脂凝集粒子を形成する付着工程と、付着樹脂凝集粒子を融合する融合工程と、を含むものであることが好ましい。
なお、凝集工程においては、混合分散液中の各種粒子成分を凝集させただけのコア粒子(コア凝集粒子)を形成してもよく、加熱温度を第1の結着樹脂のガラス転移温度よりも高くして凝集と同時に融合させたコア粒子(コア融合粒子)を形成してもよい。また、融合工程は、第1又は第2の結着樹脂のガラス転移温度のいずれか高い方の温度以上に加熱することにより実施してもよいが、付着樹脂凝集粒子がコア融合粒子を用いて形成されている場合には、機械的ストレスを利用して融合してもよい。なお、これらの工程の詳細については後述する。
【0045】
乳化凝集法は、乳化重合、又は、乳化により樹脂分散液を作製し、一方で、溶媒に着色剤を分散させた着色剤粒子分散液、離型剤を分散した離型剤粒子分散液を作製して、これらを混合してトナー粒径に相当する凝集粒子を形成させた後(凝集工程)、加熱することによって融合し(融合工程)、トナー粒子を得る方法である。なお、凝集工程の後、融合工程の前に、凝集粒子にさらに樹脂粒子を付着させる、付着工程を有することが好ましい。
【0046】
次に本実施形態のトナーを製造する際に好適なトナー製造方法について更に詳細に説明する。
【0047】
−トナーの製造方法−
次に、上述した凝集工程、付着工程、及び、融合工程を含む本実施形態に用いられるトナーの製造方法について、各工程毎により詳細に説明する。
【0048】
−凝集工程−
凝集工程においては、まず、第1の結着樹脂分散液、着色剤分散液、さらには必要に応じて用いられる離型剤分散液や、その他の成分を混合して得られた混合分散液に凝集剤を添加し、第1の結着樹脂の融点よりもやや低めの温度にて加熱することにより、各々の成分からなる粒子を凝集させた凝集粒子(コア凝集粒子)を形成する。なお、第1の結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱して、凝集と同時に融合も行い、融合粒子(コア融合粒子)を形成してもよい。
【0049】
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温で凝集剤を添加することにより行う。凝集工程に用いられる凝集剤は、各種分散液の分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、二価以上の金属錯体を好適に用いられる。
特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0050】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が一価より二価、二価より三価、三価より四価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0051】
−付着工程−
付着工程では、上記した凝集工程を経て形成された第1の結着樹脂を含むコア粒子(コア凝集粒子、あるいは、コア融合粒子)の表面に、第2の結着樹脂からなる樹脂粒子を付着させることにより被覆層を形成する(以下、コア粒子表面に被覆層を設けた凝集粒子を「付着樹脂凝集粒子」ともいう。)。ここで、この被覆層は、後述する融合工程を経て形成される本実施形態のトナーのシェル層に相当するものである。
被覆層(シェル層)の形成は、凝集工程においてコア粒子を形成した分散液中に、第2の樹脂粒子分散液を追添加することにより行うことができ、必要に応じて他の成分も同時に追添加してもよい。
【0052】
前記付着樹脂凝集粒子を、前記コア粒子の表面に均一に付着させて被覆層を形成し、前記付着樹脂凝集粒子を後述する融合工程において加熱融合すると、コア粒子の表面の被覆層に含まれる第2の結着樹脂からなる樹脂粒子が溶融してシェル層が形成される。このため、シェル層の内側に位置するコア層に含まれる離型剤等の成分が、トナーの表面へと露出することを効果的に防止される。
付着工程における第2の樹脂粒子分散液の添加混合の方法としては、特に制限はなく、例えば、徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。このようにして、第2の樹脂粒子分散液を添加混合することにより、微小な粒子の発生を抑制し、得られるトナーの粒度分布をシャープになる。
本実施形態において、この付着工程が行われる回数としては、1回であってもよいし、複数回であってもよい。前者の場合、前記コア凝集粒子の表面に第2の結着樹脂を主成分とする層が1層のみ形成される。これに対し、後者の場合、第2の樹脂粒子分散液だけでなく、剥離剤分散液や、その他の成分からなる粒子分散液を複数利用すれば、コア凝集粒子表面に、特定の成分を主成分とする層が積層形成される。
【0053】
後者の場合、複雑かつ精密な階層構造を有するトナーを得ることができ、トナーに所望の機能を付与し得る点で有利である。前記付着工程を複数回行ったり、多段階で実施する場合、得られるトナーの表面から内部にかけての組成や物性を段階的に変化させることができ、トナーの構造を容易に制御される。この場合、コア粒子の表面に段階的に複数の層が積層され、トナーの粒子の内部から外部にかけて構造変化や組成勾配をもたせられ、物性を変化させられる。また、この場合、シェル層は、コア粒子の表面に積層された全ての層に相当し、最も外側の層は、第2の結着樹脂を主成分とする層から構成される。なお、以下の説明においては、付着工程が1回のみである場合を前提として説明する。
【0054】
前記コア粒子に第2の結着樹脂からなる樹脂粒子を付着させる条件は、以下の通りである。即ち、付着工程における加熱温度としては、コア凝集粒子中に含まれる第1の結着樹脂の融点近傍の温度であることが好ましく、具体的には融点±10℃以内の温度範囲であるのが好ましい。
加熱温度が(第1の結着樹脂の融点−10℃)以上の温度であると、コア粒子表面に存在する第1の結着樹脂からなる樹脂粒子と、コア凝集粒子表面に付着した第2の結着樹脂からなる樹脂粒子との付着が良好であり、その結果、形成されるシェル層の厚みが均一になる。
また、加熱温度が(第1の結着樹脂の融点+10℃)以下の温度であると、コア粒子表面に存在する第1の結着樹脂からなる樹脂粒子と、コア粒子表面に付着した第2の結着樹脂からなる樹脂粒子とが付着が抑制され、得られるトナー芯粒子は、粒径/粒度分布に優れる。
付着工程における加熱時間としては、加熱温度に依存するので一概に規定することはできないが、5分〜2時間であることが好ましい。
【0055】
なお、付着工程においては、コア粒子が形成された混合分散液に第2の樹脂粒子分散液を追添加した分散液は、静置されていてもよいし、ミキサー等により穏やかに撹拌されていてもよい。後者の場合の方が、均一な付着樹脂凝集粒子が形成され易い点で有利である。
【0056】
−融合工程−
融合工程においては、加熱を行うことにより付着工程で得られた付着樹脂凝集粒子を融合させる。融合工程は、第1の結着樹脂及び第2の結着樹脂のガラス転移温度のうち、いずれか高い方の温度以上で好ましく実施される。融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。すなわち、融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、30分〜10時間であることが好ましい。
【0057】
また、コア粒子がコア融合粒子である場合には、第2の結着樹脂からなる樹脂粒子を付着させてもよい。この場合は、コア融合粒子を含む分散液を、一旦ろ過し、分散液の水分率を30重量%〜50重量%に制御したのち、更に第2の樹脂粒子分散液を加える。これにより、コア融合粒子の表面に第2の結着樹脂からなる粒子を付着させる。
分散液の水分率が30重量%以上であると、第2の結着樹脂からなる粒子の付着性が良好であり、この粒子のコア融合粒子の遊離が抑制される。また、水分率が50重量%以下であると、撹拌が容易であり、コア融合粒子表面に第2の結着樹脂からなる粒子が均一に付着される。
【0058】
なお、コア融合粒子の表面に第2の結着樹脂からなる粒子を付着させて得られた付着樹脂凝集粒子に、後述の洗浄/乾燥工程終了後に、ヘンシェルミキサー等による機械的なストレスを加えることによって、コア融合粒子表面に付着した第2の結着樹脂からなる粒子を融合させられる。このように、液相中での加熱の代わりに機械的ストレスを加えることによって融合工程を行ってもよい。
【0059】
−洗浄/乾燥工程−
融合工程を経て得られた融合粒子は、ろ過などの固液分離や、洗浄、乾燥を実施することが好ましい。これにより外添剤が添加されない状態のトナーが得られる。
前記固液分離は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好ましい。前記洗浄は、帯電性の点から十分にイオン交換水による置換洗浄を施すことが好ましい。乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法など、任意の方法が採用される。トナーの粒子は、乾燥後の含水分率を、1.0重量%以下に調整することが好ましく、0.5質量%以下に調整することがより好ましい。
【0060】
−分散液の調製−
前記結着樹脂分散液を作製するには公知の乳化方法を用いられるが、得られる粒度分布がシャープであり、かつ体積平均粒径が0.08〜0.40nmの範囲に得やすい転相乳化法が有効である。
転相乳化法は、樹脂を溶かす有機溶剤、更に両親媒性の有機溶剤の単独、又は混合溶剤に樹脂を溶かして油相とする。その油相を攪拌しながら塩基性化合物を少量滴下し、更に攪拌しながら水を少しずつ滴下し、油相中に水滴が取り込まれる。次に水の滴下量がある量を超えると油相と水相が逆転して油相が油滴となる。その後、減圧化の脱溶剤工程を経て水分散液が得られる。
ここで両親媒性の有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解性が好ましくは5g/L以上であり、より好ましくは10g/L以上であるものをいう。この溶解性が5g/L以上であると、水性化処理速度の加速効果に優れ、得られる水分散体も貯蔵安定性に優れる。
また、かかる有機溶剤としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が例示される。
これらの溶剤は、1種単独で使用しても、また2種以上を混合しても使用してもよい。
【0061】
次に塩基性化合物に関しては、本実施形態において、結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂は、水媒体に分散させる際に塩基性化合物で中和されることが好ましい。本実施形態においては、ポリエステル樹脂のカルボキシル基との中和反応が水性化の起動力であり、しかも生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、粒子間の凝集が防止される。
塩基性化合物としては、アンモニア、沸点が250℃以下の有機アミン化合物等が挙げられる。
好ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げられる。
【0062】
塩基性化合物は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2〜9.0倍当量を添加することが好ましく、0.6〜2.0倍当量を添加することがより好ましい。0.2倍当量以上であると、塩基性化合物添加の効果が十分得られ、9.0倍当量以下であると、油相の親水性が適度であり、粒径分布が狭い良好な分散液を得られる。
【0063】
前記着色剤分散液は、少なくとも着色剤を分散させてなる。
着色剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。また、着色剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、既述したようなホモジナイザーを用いて水系溶媒中に分散し、着色剤粒子分散液を作製してもよい。着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記着色剤の体積平均粒径(以下、単に平均粒径ということがある。)としては、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01〜0.5μmが特に好ましい。
【0064】
前記離型剤分散液は、少なくとも離型剤を分散させてなる。
離型剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。また、離型剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、既述したようなホモジナイザーを用いて水系溶媒中に分散し、離型剤粒子分散液を作製してもよい。本実施形態において、離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記離型剤粒子の平均粒径としては、1μm以下が好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
【0065】
前記樹脂粒子の樹脂と、前記着色剤と、前記離型剤との組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜自由に選択して用いられる。
本実施形態においては、目的に応じて、前記結着樹脂分散液、前記着色剤分散液及び前記離型剤分散液の少なくともいずれかに、内添剤、帯電制御剤、無機粒体、有機粒体、滑剤、研磨材などのその他の成分(粒子)を分散させてもよい。その場合、前記結着樹脂分散液、着色剤分散液及び離型剤分散液の少なくともいずれかの中に、その他の成分(粒子)を分散させてもよいし、樹脂粒子分散液、記着色剤分散液及び離型剤分散液を混合してなる混合液中に、その他の成分(粒子)を分散させてなる分散液を混合してもよい。
【0066】
前記結着樹脂分散液、前記着色剤分散液、前記離型剤分散液及び前記その他の成分における分散媒としては、例えば、水系媒体などが挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好適な組み合わせとしては、蒸留水、イオン交換水を用いることが好ましい。樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子等、各々の分散粒子の水系媒体中における安定性、ひいては分散液の保存性の点で界面活性剤の添加は有利であるだけでなく、凝集工程における前記凝集粒子の安定性の点からも有利である。
また、着色剤の水系媒体中での分散安定性をより安定化させ、トナー中での着色剤のエネルギーを低くするために添加する分散剤として、ロジン、ロジン誘導体、カップリング剤、高分子分散剤などが挙げられる。
【0067】
本実施形態においては、分散安定性向上のため、水系媒体に界面活性剤を添加混合しておくのが好ましい。
このようにして得られた粒子分散液の体積平均一次粒子径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)で測定することが挙げられる。測定法としては分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、約2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積体積平均一次粒径を、体積体積平均一次粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積体積平均一次粒径とした。
【0068】
−被覆工程−
本実施形態において、前記トナー芯粒子は、チタン化合物で被覆される。
トナー芯粒子をチタン化合物での被覆の方法としては、特に限定されず、公知のチタン化合物による被覆の方法から適宜選択すればよく、有機チタン化合物を用いて被覆することが好ましい。
前記有機チタン化合物は、通常疎水性であり、pH=7の水に対する溶解性が低い。したがって、かかる有機チタン化合物を使用するに当たっては、少量のアルコール、アセトン、トルエンなどの溶媒を添加して有機チタン化合物の溶解性を向上させてもよい。
上記した、又は、それ以外のいずれのトナー芯粒子の作製方法の場合においても、チタン化合物の添加の詳細については任意の変更が可能である。例えば、チタン化合物の添加のタイミングは、トナー芯粒子形成に先がけて添加してもよく、その形成の途中に添加してもよく、あるいは、形成の完了後に添加してもよい。また、チタン化合物の添加の量は、その全量を一度に添加しても、少量ずつ徐々に添加してもよい。
【0069】
−外添工程−
トナー母粒子の表面にシリカ、チタニアなどの無機粒子を外添する方法としては、特に制限はなく、公知の方法が用いられ、例えば、機械的方法、又は、化学的方法で付着させる方法が挙げられる。
【0070】
(静電荷像現像剤)
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像剤として使用される。
本実施形態の静電荷像現像剤は、本実施形態の静電荷像現像用トナーを含有すること以外は、特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成を取りうる。本実施形態の静電荷像現像用トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
一成分系現像剤として、現像スリーブ又は帯電部材と摩擦帯電して、帯電トナーを形成して、静電潜像に応じて現像する方法も適用される。
【0071】
本実施形態において、現像方式は特に規定されるものではないが二成分現像方式が好ましい。また上記条件を満たしていれば、キャリアは特に規定されないがキャリアの芯材としては例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類等との合金、及び、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられるが、芯材表面性、芯材抵抗の観点から、フェライト、特にマンガン、リチウム、ストロンチウム、マグネシウム等との合金が好ましく挙げられる。
【0072】
本実施形態で用いるキャリアは、芯材表面に樹脂を被覆してなることが好ましい。前記樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、等のそれ自体公知の樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本実施形態においては、これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用することが好ましい。前記樹脂として、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用すると、トナーや外添剤によるキャリア汚染(インパクション)の防止効果が高い点で有利である。
前記樹脂による被膜は、前記樹脂中に樹脂粒子及び/又は導電性粒子が分散されていると良い。前記樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子等が挙げられる。これらの中でも、比較的硬度を上げることが容易な観点から熱硬化性樹脂が好ましく、トナーに負帯電性を付与する観点からは、N原子を含有する含窒素樹脂による樹脂粒子が好ましい。なお、これらの樹脂粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記樹脂粒子の平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。前記樹脂粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、前記被膜における樹脂粒子の分散性に優れ、一方、2μm以下であると、前記被膜から樹脂粒子の脱落が生じにくい。
【0073】
前記導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属粒子、カーボンブラック粒子、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性、コスト、導電性等の良好な点で、カーボンブラック粒子が好ましい。前記カーボンブラックの種類としては、特に制限はないが、DBP吸油量が50〜250ml/100gであるカーボンブラックが製造安定性に優れて好ましい。芯材表面への、前記樹脂、前記樹脂粒子、前記導電性粒子による被覆量は、0.5〜5.0重量%であることが好ましく、0.7〜3.0重量%であることがより好ましい。
【0074】
前記被膜を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、架橋性樹脂粒子等の前記樹脂粒子及び/又は前記導電性粒子と、マトリックス樹脂としてのスチレンアクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等の前記樹脂とを溶剤中に含む被膜形成用液を用いる方法等が挙げられる。
具体的には前記キャリア芯材を、前記被膜形成用液に浸漬する浸漬法、被膜形成用液を前記キャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、前記キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で前記被膜形成用液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態において、ニーダーコーター法が好ましい。
【0075】
前記被膜形成用液に用いる溶剤としては、マトリックス樹脂としての前記樹脂のみを溶解することが可能なものであれば、特に制限はなく、それ自体公知の溶剤の中から選択され、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。前記被膜に前記樹脂粒子が分散されている場合において、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記樹脂粒子及びマトリックス樹脂としての前記粒子が均一に分散しているため、前記キャリアを長期間使用して前記被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、前記トナーに対し、良好な帯電付与能力を長期間にわたって維持される。また、前記被膜に前記導電性粒子が分散されている場合においては、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記導電性粒子及びマトリックス樹脂としての前記樹脂が均一に分散しているため、前記キャリアを長期間使用して前記被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、キャリア劣化が長期間防止される。なお、前記被膜に前記樹脂粒子と前記導電性粒子とが分散されている場合において、上述の効果を同時に発揮される。
【0076】
以上のように形成された磁性キャリア全体の104V/cmの電界下における磁気ブラシの状態での電気抵抗は108〜1013Ωcmであることが好ましい。磁性キャリアの該電気抵抗が108Ωcm以上であると、像担持体上の画像部にキャリアの付着が抑制され、また、ブラシマークが出にくい。一方、磁性キャリアの該電気抵抗が1013Ωcm以下であると、エッジ効果の発生が抑制され、良好な画質が得られる。
なお、体積固有抵抗は以下のように測定する。
エレクトロメーター(KEITHLEY社製、商品名:KEITHLEY 610C)及び高圧電源(FLUKE社製、商品名:FLUKE 415B)と接続された一対の20cm2の円形の極板(鋼製)である測定治具の下部極板上に、サンプルを厚さ約1mm〜3mmの平坦な層を形成するように載置する。次いで上部極板をサンプルの上にのせた後、サンプル間の空隙をなくすため、上部極板上に4Kgの重しをのせる。この状態でサンプル層の厚さを測定する。次いで、両極板に電圧を印加することにより電流値を測定し、次式に基づいて体積固有抵抗を計算する。
体積固有抵抗=印加電圧×20÷(電流値−初期電流値)÷サンプル厚
上記式中、初期電流は印加電圧0のときの電流値であり、電流値は測定された電流値を示す。
【0077】
二成分系の静電荷像現像剤における本実施形態のトナーとキャリアとの混合割合は、キャリア100重量部に対して、トナー2〜10重量部であることが好ましい。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0078】
(画像形成方法)
また、静電荷像現像剤(静電荷像現像トナー)は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用される。
本実施形態の画像形成方法は、像保持体を帯電させる帯電工程と、前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記トナー像を定着する定着工程と、を有することが好ましい。また、必要に応じて、クリーニング工程等を含んでいてもよい。
前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本実施形態の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施される。
【0079】
前記潜像形成工程は、像保持体表面に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、現像剤保持体上の現像剤層により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する工程である。前記現像剤層としては、前記本実施形態の静電荷像現像トナーを含有する本実施形態の静電荷像現像剤を含んでいれば特に制限はない。
前記転写工程は、前記トナー像を被転写体上に転写する工程である。
前記定着工程は、光定着装置や熱定着装置等により、記録紙などの被記録媒体上に転写したトナー像を定着して複写画像を形成する工程である。
前記クリーニング工程は、像保持体上に残留する静電荷像現像剤を除去する工程である。本実施形態の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施される。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムにも適用される。
このような一連の処理工程を経て、目的とする複製品(印刷物など)を得られる。
【0080】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体に転写する転写手段と、を有することが好ましい。上記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。また、像保持体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段等を有していてもよい。
【0081】
前記像保持体、及び、前記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いられる。
前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用される。また、本実施形態で用いる画像形成装置は、前記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本実施形態で用いる画像形成装置は前記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
【0082】
また、本実施形態における定着は公知の定着装置を用いられ、例えば、表面にフッ素樹脂成分、シリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を有し、かつベルト形状である定着ベルト、同様に表面にフッ素樹脂成分、シリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を有し、かつ円筒状のロール形状である定着ロールが挙げられる。
定着ロール又は定着ベルト表面は、トナーを付着させない目的で、例えばロール表面をトナーに対して離型性の優れた材料、シリコンゴムやフッ素系樹脂などで形成する必要がある。この際、定着ロールに塗布されるシリコーンオイル等の離型性液体は限りなく少ないことが有効である。
本実施形態のトナーの構成では十分な定着ラチチュードを示すので、定着ロール又は定着ベルトに塗布されるシリコーンオイル等の離型性液体はわずかでよい。例えば、A4用紙1枚当たりで1μl以下でよい。上記範囲にあれば、定着される被転写材に転移やベトツキが抑制され、また、テープを貼ったり、マジックで文字を書き加えたりすることが容易であり、また、定着表面がスムーズであり、OHP透明性にも優れる。
【0083】
(トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ)
本実施形態のトナーカートリッジは、本実施形態の静電荷像現像トナーを少なくとも収容しているトナーカートリッジである。本実施形態のトナーカートリッジは、本実施形態の静電荷像現像トナーを静電荷像現像剤として収納していてもよい。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像用トナー又は前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、を備え、本実施形態の静電荷像現像トナー、又は、本実施形態の静電荷像現像剤を少なくとも収容しているプロセスカートリッジである。
【0084】
本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であることが好ましい。すなわち、トナーカートリッジが着脱可能な構成を有する画像形成装置において、本実施形態のトナーを収納した本実施形態のトナーカートリッジが好適に使用される。
また、トナーカートリッジは、トナー及びキャリアを収納するカートリッジであってもよく、トナーを単独で収納するカートリッジとキャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものでもよい。
【0085】
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に脱着されることが好ましい。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、その他必要に応じて、除電手段等、その他の部材を含んでもよい。
トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジとしては、公知の構成を採用してもよく、例えば、特開2008−209489号公報、及び、特開2008−233736号公報等が参照される。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を交えて詳細に本実施形態を説明するが、何ら本実施形態を限定するものではない。
本実施形態のトナー芯粒子は、以下の如き方法にて得た。
すなわち、下記の樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液をそれぞれ調製した。次いでこれらを所定量混合撹拌しながら、これに無機金属塩の重合体を添加し、イオン的に中和させ上記各粒子の凝集体を形成した。所望のトナー粒径到達前に樹脂粒子分散液を追添加し、トナー粒径を得た。次いで、無機水酸化物で系内のpHを弱酸性から中性の範囲に調整後、当該樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱し、合一融合させた。反応終了後、十分な洗浄・固液分離・乾燥の工程を経て所望のトナー芯粒子を得た。
以下にそれぞれの材料の調製方法、凝集粒子の作製方法の作製例を記載する。
【0087】
<トナー作製>
−結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した三口フラスコに、デカンジカルボン酸100mol%、ノナンジオール100mol%と、これらモノマーの総重量に対して触媒としてジブチル錫オキサイド0.25重量%とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間撹拌・還流を行った。
その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間撹拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は23,000であり、数平均分子量(Mn)は7,400であった。また、酸価は10.4mgKOH/gであった。
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確な吸熱ピークを示し、吸熱ピーク温度は72.5℃であった。
【0088】
−非晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:10mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:90mol%
・テレフタル酸:50mol%
・フマル酸:30mol%
・ドデセニルコハク酸:20mol%
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、これらモノマーの総重量に対してジステアリン酸スズの0.8重量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が61℃、酸価が13.0mgKOH/g、重量平均分子量が16,000、数平均分子量5,500の非晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0089】
−非晶性ポリエステル樹脂(2)の合成−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:50mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:50mol%
・無水トリメリット酸:7mol%
・テレフタル酸:65mol%
・ドデセニルコハク酸:28mol%
無水トリメリット酸以外のモノマーを用いて前記非晶性ポリエステル樹脂(1)の合成と全く同様にして、軟化点が110℃になるまで、反応をさせた。次いで、温度を190℃まで下げ無水トリメリット酸の7mol%を徐々に投入し、同温度で1時間反応を継続し、ガラス転移点が55.5℃、酸価が11.3mgKOH/g、重量平均分子量59,000、数平均分子量7,700の非晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0090】
−樹脂粒子分散液(1)の調製−
・結晶性ポリエステル樹脂(1):100重量部
・メチルエチルケトン:60重量部
・イソプロピルアルコール:15重量部
セパラブルフラスコにメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを投入し、その後上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで撹拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。この油相の入ったセパラブルフラスコにはウォーターバスにより65℃に設定し、更に撹拌されている油相に10%アンモニア水溶液を合計で5重量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230重量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、結晶性ポリエステル樹脂(1)からなる樹脂粒子分散液(1)を得た。この樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は、150nmであった。樹脂粒子分散液(1)の固形分量は、イオン交換水で調整して20%とした。
【0091】
−樹脂粒子分散液(2)の調製−
・非晶性ポリエステル樹脂(1):100重量部
・メチルエチルケトン:60重量部
・イソプロピルアルコール:15重量部
セパラブルフラスコにメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを投入し、その後上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで撹拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。この油相の入ったセパラブルフラスコにはウォーターバスにより40℃に設定し、更に撹拌されている油相に10%アンモニア水溶液を合計で3.5重量部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230重量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、非晶性ポリエステル樹脂(1)からなる樹脂粒子分散液(2)を得た。この樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は、180nmであった。樹脂粒子分散液(2)の固形分量は、イオン交換水で調整して20%とした。
【0092】
−樹脂粒子分散液(3)の調製−
樹脂粒子分散液(1)の調製において、結晶性ポリエステル樹脂(1)を非晶性ポリエステル樹脂(2)に代えた以外は同様に実施し、樹脂粒子分散液(3)を得た。この樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は、168nmであった。樹脂粒子分散液(3)の固形分量は、イオン交換水で調整して20%とした。
【0093】
−着色剤粒子分散液1の調製−
・シアン顔料(大日精化工業(株)製:ECB−301):50重量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製):5重量部
・イオン交換水:195重量部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:(株)スギノマシン製)を用い圧力250MPaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が130nmで、固形分量が20%の着色剤粒子分散液1を得た。
【0094】
−着色剤粒子分散液2の調製−
着色剤粒子分散液1の調製において、着色剤をマゼンタR122顔料(大日精化工業(株)製:ECR−186Y)に変更した以外は同様に実施し、着色剤粒子の体積平均粒径が120nmで、固形分量が20.0%の着色剤粒子分散液2を得た。
【0095】
−離型剤粒子分散液1の調製−
・オレフィンワックス(融点:88℃):60重量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製):1.8重量部
・イオン交換水:238重量部
以上を100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径180nm、固形分量20%の離型剤粒子分散液1を得た。
【0096】
−カラートナー芯粒子1の作製−
・樹脂粒子分散液(1):150重量部
・樹脂粒子分散液(2):300重量部
・樹脂粒子分散液(3):250重量部
・着色剤粒子分散液1:50重量部
・離型剤粒子分散液1:50重量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてイオン性界面活性剤ネオゲンRKを2.0重量部加えた後に撹拌して十分に混合・分散した。次いで、1Nの硝酸水溶液を滴下してpH3.5にした後、これにポリ硫酸アルミニウム0.40重量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら48℃まで加熱した。48℃で40分保持した後、ここに樹脂粒子分散液(2)100重量部と樹脂粒子分散液(3)100重量部の混合液を緩やかに追加した。
その後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加して系内のpHを7.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら徐々に90℃まで加熱し、90℃で3時間保持した。
反応終了後、冷却し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水5,000重量部に再分散し、15分間撹拌翼(300rpm)で攪拌しヌッチェ式吸引濾過により固液分離を実施した。
この再分散と固液分離の洗浄を繰り返し、電気伝導度7.0μS/cm以下となったところで、洗浄を終了した。次いで真空乾燥を12時間継続してカラートナー芯粒子1を得た。
カラートナー芯粒子1の粒子径をコールターカウンターにて測定したところ体積平均粒径D50vは5.8μm、粒度分布係数GSDvは1.24であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めた粒子の形状係数SF1は136でポテト状であった。
【0097】
−カラートナー芯粒子2の作製−
カラートナー芯粒子1の作製において樹脂粒子分散液(1)の150重量部を50重量部に、樹脂粒子分散液(2)の300重量部を370重量部に、着色剤粒子分散液1の50重量部を着色剤粒子分散液2の80重量部に代えた以外は同様に実施し、カラートナー芯粒子2を得た。
このカラートナー芯粒子2の体積平均粒径D50vは4.9μm、粒度分布係数GSDvは1.26であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めた粒子の形状係数SF1は131でポテト状であった。
【0098】
−カラートナー母粒子1の作製−
・カラートナー芯粒子1:100重量部
・イオン交換水:400重量部
以上を撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに丸型ガラス製フラスコ中において撹拌して25℃で十分に混合・分散した。次いで、メタノール20重量部にイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(チタネートカップリング剤)5重量部の混合液を5ml/minの速度で滴下し、滴下終了後、機械撹拌しながら2時間混合した。次いで、機械攪拌を継続しながら60℃に緩やかに昇温した後、更に60℃を2時間保持した後に冷却し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。次いで真空乾燥を12時間継続してチタネートカップリング剤によって表面が被覆されたカラートナー母粒子1を得た。
このカラートナー母粒子1の体積平均粒径D50vは6.0μm、粒度分布係数GSDvは1.25であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めた粒子の形状係数SF1は136でポテト状であった。
【0099】
−カラートナー母粒子2の作製−
・カラートナー芯粒子2:100重量部
・イオン交換水:400重量部
以上を撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに丸型ガラス製フラスコ中において撹拌して25℃で十分に混合・分散した。次いで、メタノール20重量部にイソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート(チタネートカップリング剤)3重量部の混合液を5ml/minの速度で滴下し、滴下終了後、機械攪拌しながら2時間混合した。機械撹拌を継続しながら60℃に緩やかに昇温した後、更に60℃を2時間保持した後に冷却し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。次いで真空乾燥を12時間継続してチタネートカップリング剤によって表面が被覆されたカラートナー母粒子2を得た。
このカラートナー母粒子2の体積平均粒径D50vは4.8μm、粒度分布係数GSDvは1.27であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めた粒子の形状係数SF1は131でポテト状であった。
【0100】
<外添剤の添加>
カラートナー母粒子1に対して、体積平均粒径15nmのデシルシラン処理の疎水性チタニア0.8重量%、体積平均粒径30nmの疎水性シリカ(NY50、日本アエロジル(株)製)1.1重量%、体積平均粒径100nmの疎水性シリカ(X−24、信越化学工業(株)製)1.0重量%となるようにヘンシェルミキサーを用い周速32m/sで10分間ブレンドを行った後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、外添カラートナー1を得た。
また、各カラートナー母粒子1若しくは2、又は、カラートナー芯粒子1に対して同様に作製して外添カラートナー2〜11を得た。その構成を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
表1において使用した無機粒子は、以下の通りである。
・NY50:日本アエロジル(株)製、シリカ粒子(平均粒径:30nm、表面処理:シリコーンオイル処理)
・X−24:信越化学工業(株)製、シリカ粒子(平均粒径:100nm、表面処理:シランカップリング処理)
・RX50:日本アエロジル(株)製、シリカ粒子(平均粒径:40nm、表面処理:ヘキサメチルジシラザン処理)
・R812:日本アエロジル(株)製、シリカ粒子(平均粒径:7nm、表面処理:ヘキサメチルジシラザン処理)
・疎水性チタニア:チタニア粒子(平均粒径:15nm、表面処理:デシルシラン処理)
・シリコーンオイル処理チタニア(疎水性、平均粒径:15nm、表面処理:シリコーンオイル処理)
【0103】
<キャリアの作製>
・フェライト(商品名:EFC−35B、パウダーテック(株)製、重量平均粒子径:35μm):100重量部
・トルエン:13.5重量部
・メチルメタアクリレート/パーフルオロオクチルメタクリレート共重合体(重合比(モル比)90:10、重量平均分子量49,000):2.3重量部
・カーボンブラック(商品名:VXC72、キャボット社製):0.3重量部
・エポスターS(メラミン樹脂粒子、(株)日本触媒製):0.3重量部
フェライトを除く上記成分をサンドミルにて1時間分散して樹脂被覆層形成用溶液を作製した。次にこの樹脂被覆層形成用溶液とフェライトを真空脱気型ニーダーに入れて、温度60℃で減圧しながら20分撹拌してフェライト上に樹脂被覆層を形成し、キャリアを得た。体積抵抗は2×1011Ωcmであった。
【0104】
<現像剤の作製>
外添カラートナー1の7部に対してキャリア100部添加し、ボールミルで5分間混合してカラー現像剤1を得た。外添カラートナー2〜11についても同様に作製してカラー現像剤2〜9を得た。
【0105】
<評価>
〔帯電性〕
帯電量、電荷分布及び逆極性トナー量を測定した。なお、測定は、CSG(チャージ・スペクトログラフ法)の画像解析による値であり、帯電量は電荷分布の累積積算の50%帯電量Q(50)(μC/g)、電荷分布は、電荷分布の累積積算の20%帯電量Q(20)と80%帯電量Q(80)の差を50%帯電量Q(50)で割った値、すなわち、〔Q(80)−Q(20)〕/Q(50)で定義される。逆極性トナー量は帯電極性が逆極性であるトナーの全体量に対する累積積算重量%である。
【0106】
〔初期帯電〕
28℃、85%RH環境にて外添トナー7部、キャリア100部をボールミルで5分間混合して帯電量、電荷分布及び逆極性トナー量を測定した。
【0107】
〔アドミックス性(外添トナーを更に添加した場合の帯電性)〕
28℃、85%RH環境にて外添トナー7部、キャリア100部をボールミルで100分間混合し、更に外添トナーを2部添加して5分間混合して帯電量、電荷分布及び逆極性トナー量を測定した。
【0108】
〔実機評価(トナー消費量が少ない状態での長期使用時における画像評価)〕
作製したカラー現像剤1〜11についてはDocucolor500(富士ゼロックス(株)製)を用いて、長期プリントテストを実施した。
カラー現像剤はシアン現像機位置にセットし、28℃、85%RH環境にてプリント当たりのトナー消費量が10mgとなるようなプリント画像を連続プリントして画質を評価した。
【0109】
−画質の評価−
[画質評価基準]
○:地カブリなく、画像密度(Cin)10%ハーフトーン画像の濃度の変動に問題なし。
△:画像密度(Cin)10%ハーフトーン画像の濃度変動がある。
×:地カブリがあり、実用上使用不可である。
【0110】
〔判定〕
判定の項目では、前記実機評価において、10枚目、1,000枚目及び10,000枚目の画像をそれぞれ前記画質評価基準により評価し、以下の基準で判定した。
10枚目、1,000枚目及び10,000枚目の画質評価が全て○である場合は○、10枚目、1,000枚目及び10,000枚目の画質評価に少なくとも1つ△が含まれており、かつ×が含まれていなければ△、10枚目、1,000枚目及び10,000枚目の画質評価に少なくとも1つ×が含まれていれば×と判定した。
【0111】
実施例1〜8、及び、比較例1〜3の評価結果を表2に示す。
【0112】
【表2】

【0113】
実施例1〜8では、実施例7の実機評価でハーフトーン画像の濃度変動があった以外は、初期帯電性、アドミックス性において電荷分布が狭く、逆極性トナーもなく、実機評価においてカブリもなく良好な結果であった。
一方、比較例1はアドミックス性で電荷分布が広く逆極性トナーが確認され、実機評価においてプリント1,000枚目でCin10%のハーフトーン画像部の濃度が初期に比べて濃くなり、10,000枚目ではハッキリとカブリが確認された。比較例2及び3はアドミックス性で電荷分布が広く逆極性トナーが確認され、実機評価においてプリント1,000枚目でカブリが確認されたため、10,000枚目までは画像形成を行わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含むトナー母粒子に無機粒子が外添されてなり、
前記トナー母粒子の表面が、チタン化合物で被覆され、
前記無機粒子がシリカ及びチタニアを含むことを特徴とする
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記トナー母粒子がコアシェル構造を有し、シェル層がさらにチタン化合物で被覆されている、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記チタン化合物が有機チタネート化合物に由来するチタン化合物を含む、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記シリカのトナー母粒子への添加量をa、前記チタニアのトナー母粒子への添加量をbとしたとき、下記式(1)を満たす、請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
0.2≦b/a≦0.8 (1)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー及びキャリアを含むことを特徴とする静電荷像現像剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、請求項5に記載の静電荷像現像剤を収納するとともに、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像用トナー又は前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、を備え、
画像形成装置に脱着されることを特徴とする
プロセスカートリッジ。
【請求項7】
少なくとも像保持体を帯電させる帯電工程と、
前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、
前記トナー像を定着する定着工程と、を有し、
前記静電荷像現像用トナーが請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記静電荷像現像剤が請求項5に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする
画像形成方法。
【請求項8】
像保持体と、
前記像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、
静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記像保持体から被転写体に転写する転写手段と、
前記トナー像を定着する定着手段と、と有し、
前記静電荷像現像用トナーとして請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記静電荷像現像剤として請求項5に記載の静電荷像現像剤を使用することを特徴とする
画像形成装置。

【公開番号】特開2011−102892(P2011−102892A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257641(P2009−257641)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】