説明

非テクスチャー化シリコンウエハの前面上に電極を形成する方法

ARC層をその前面に有する非テクスチャー化シリコンウエハ上の前面電極の製造のための方法であって、前面電極が銀ペーストから印刷されて焼成され、前記銀ペーストが(i)(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%、(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%および(d)焼成する時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物0〜6重量%を含む無機分と、(ii)有機ビヒクルとを含み、前記電気導電性金属粉末と前記ガラスフリット+固体無機酸化物との重量比が、焼成された状態において>13〜19である、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非テクスチャー化シリコンウエハの前面上に電極を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
p型ベースを有する従来の太陽電池構造は、典型的には電池の前面または照明される面にある負電極と、裏面にある正電極とを有する。半導体本体のpn接合に向かう適切な波長の放射線は、その本体内に電子−正孔対を生成させるための外部エネルギーの供給源として作用する。pn接合に存在するポテンシャルの差のために、正孔および電子は接合を反対方向に横断し、それによって、電力を外部回路に送出することが可能な電流の流れを発生させる。大抵の太陽電池は、金属化されている、すなわち電気導電性である金属接点を設けられている、シリコンウエハの形態である。
【0003】
現在使用されている大抵の発電用太陽電池は、シリコン太陽電池である。その電極は、特に、金属ペーストからのスクリーン印刷などの方法を使用して製造される。
【0004】
p型シリコン太陽電池の製造は典型的に、リン(P)等の熱拡散によって逆導電型のn型拡散層が上に形成されるシリコンウエハの形態のp型シリコン基板から始める。オキシ塩化リン(POCl3)が気体リン拡散源として一般に使用され、他の液体源はリン酸等である。特定の変更が一切ない場合、拡散層は、シリコン基板の全表面の上に形成される。p−n接合が形成され、そこでp型ドーパントの濃度はn型ドーパントの濃度に等しく、照明される面にp−n接合が近い従来の電池は、0.05〜0.5μmの間の接合深さを有する。
【0005】
この拡散層の形成後、過剰な表面ガラスがフッ化水素酸などの酸によるエッチングによって表面の残部から除去される。
【0006】
次に、例えばTiOx、SiOx、TiOx/SiOx、または特にSiNxまたはSi34のARC層(反射防止コーティング層)が、例えば、プラズマCVD(化学蒸着)などの方法によって0.05〜0.1μmの間の厚さまでn型拡散層上に形成される。
【0007】
p型ベースを有する従来の太陽電池構造は、典型的には電池の前面のグリッド負電極と、裏面の正電極とを有する。グリッド電極は典型的に、電池の前面のARC層上に前面銀ペースト(前部電極を形成する銀ペースト)をスクリーン印刷して乾燥させることによって適用される。前面グリッド電極は典型的に、(i)細い平行な指線(フィンガーライン(finger lines))(コレクタライン)と(ii)指線と直角に交わる2つの母線(バスバー(busbars))とを含むいわゆるHパターンとしてスクリーン印刷される。さらに、裏面銀または銀/アルミニウムペーストおよびアルミニウムペーストがスクリーン印刷され(または何か他の適用方法)、基板の裏面上で連続的に乾燥される。通常、裏面銀または銀/アルミニウムペーストは、相互接続線(前もってはんだ付けされた銅リボン)をはんだ付けするために用意された2つの平行な母線としてまたは矩形(タブ)として最初にシリコンウエハの裏面上にスクリーン印刷される。次に、アルミニウムペーストは、裏面銀または銀/アルミニウムの上にわずかに重ならせて無被覆領域に印刷される。いくつかの場合、アルミニウムペーストが印刷された後に銀または銀/アルミニウムペーストが印刷される。次に、焼成は典型的に、1〜5分の間ベルト炉内で行なわれ、ウエハは700〜900℃の範囲のピーク温度に達している。前部グリッドカソードおよび後部アノードを連続的に焼成するかまたは同時に焼成することができる。
【0008】
アルミニウムペーストは一般にシリコンウエハの裏面上にスクリーン印刷され、乾燥される。ウエハは、アルミニウムの融点を超える温度で焼成されてアルミニウム−シリコン溶融体を形成し、引き続いて、冷却段階の間、アルミニウムをドープされているシリコンのエピタキシャル成長層が形成される。この層は一般に裏面電界(BSF)層と呼ばれる。アルミニウムペーストは、乾燥された状態から焼成することによってアルミニウム後部アノードに変化させられる。裏面銀または銀/アルミニウムペーストは同時に焼成され、銀または銀/アルミニウム後部アノードになる。焼成の間、裏面アルミニウムと裏面銀または銀/アルミニウムとの間の境界は合金状態となり、同様に電気接続される。一つには、p+層を形成する必要のために、アルミニウム電極は後部電極の大部分の領域を占める。銀または銀/アルミニウム後部電極が裏面の一部の上に(しばしば幅2〜6mmの母線として)電極として形成され、前もってはんだ付けされた銅リボン等によって太陽電池を相互接続する。さらに、前面グリッド電極として印刷された前面銀ペーストが焼結し、焼成の間にARC層にわたって浸透し、それによってn型層と電気的に接触することができる。このタイプの方法は一般に「ファイアリングスルー(firing through)」と呼ばれる。
【0009】
いくつかのシリコン太陽電池の製造元は、非テクスチャー化シリコンウエハを取り扱っている。後者は、ウエハを溶融シリコンから直接に形成することによって製造することができる。例えば、シリコンの薄膜を所望の厚さにおいてシリコン溶融体から圧伸することによって、特に、タングステン線を溶融シリコンの坩堝を通して制御された速度において引き出して単一の長いシートを製造するかまたは八角形ダイを通して引き出して、後にウエハに分離されるシリコンの中空管を製造することによってこれを行なうことができる。これらの方法で製造されたシリコンウエハは、非常に平滑な前面および裏面を有する。
【0010】
説明および請求の範囲において、用語「非テクスチャー化シリコンウエハ」が使用される。それは、0.01〜0.15μmの範囲の平均表面粗さRaを示すシリコンウエハを意味するものとする。従来のシリコンウエハ(シリコンインゴットから切断することによって製造された切り出されたシリコンウエハ(sawn silicon wafers)は通常、NaOHまたはKOHのどちらかと湿潤剤とを使用するアルカリプロセスまたはHNO3とHFとの組み合わせを使用する酸プロセスのどちらかを用いてテクスチャー化されており、それらは、典型的に0.5〜1.7μmの範囲である高めの平均表面粗さRaによって区別される。非テクスチャー化シリコンウエハと従来のシリコンウエハとが平均表面粗さRaにおいて異なるのに対して、それらは、ウエハのサイズおよびウエハの厚さに関しては異ならない。シリコンウエハは、典型的に150〜220μmの範囲の厚さおよび典型的に100〜250cm2のサイズを有する。
【0011】
説明および請求の範囲において用語「平均表面粗さRa」が使用される。それは、ISO標準4288:1996に従って(0.0025mmに設定された下側カットオフフィルターおよび0.8mmの上側カットオフ、300:1のバンド幅によって)プロフィロメーターで定量される平均表面粗さRaを意味する。プロフィロメーターによる測定は、従来のプロフィロメーター、例えば、4mmのサンプリング長さにおいて2μmのダイアモンド針を備えたTaylor Hobson Talysurf Ultra II プロフィロメーターを用いてGaussianフィルターを適用して実施することができる。
【0012】
非テクスチャー化シリコンウエハを含むシリコン太陽電池の電気効率を改善することができることが見出されたが、そこにおいて、電池の前面電極の製造のために使用された銀ペーストは、銀粉末と、ガラスフリットと、任意選択により、固体無機酸化物および焼成の間に固体無機酸化物を形成することができる化合物からなる群から選択された化合物との特定の比を示す。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、シリコン太陽電池の前面電極の製造のための方法に関する。したがって、それはまた、前記前面電極を含むシリコン太陽電池の製造のための方法に関する。方法は、
1.ARC層を前面に有する非テクスチャー化シリコンウエハを提供する工程と、
2.銀ペーストを非テクスチャー化シリコンウエハの前面上のARC層上に前面電極パターンで印刷して乾燥させる工程と、
3.印刷されて乾燥された銀ペーストを焼成する工程とを含み、
銀ペーストが(i)(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%(weight−%)、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%、(c)0〜6重量%、好ましくは少なくとも1つの固体無機酸化物1〜6重量%および(d)工程(3)において焼成した時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物0〜6重量%を含む無機分と、(ii)有機ビヒクルとを含み、そこにおいて電気導電性金属粉末とガラスフリット+固体無機酸化物との重量比が、焼成された状態において>13〜19である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法の工程(1)において、ARC層をその前面に有する非テクスチャー化シリコンウエハが提供される。非テクスチャー化シリコンウエハは、シリコン太陽電池の製造のために通常に使用される単結晶または多結晶シリコンウエハである。それは、p型領域、n型領域およびp−n接合を有する。非テクスチャー化シリコンウエハは、例えばTiOx、SiOx、TiOx/SiOx、または特にSiNxまたはSi34のARC層をその前面上に有する。このようなシリコンウエハは当業者に公知である。簡単にするために、[背景技術]の欄を参照する。非テクスチャー化シリコンウエハはすでに、[背景技術]の欄において上に記載されたように従来の裏面金属化部分、すなわち、裏面アルミニウムペーストおよび裏面銀または裏面銀/アルミニウムペーストを提供されてもよい。裏面金属ペーストの適用は、前面カソードが完成される前または後に行なわれてもよい。裏面ペーストは、別々に焼成されるかまたは同時焼成されるか、もしくはさらに、本発明の方法の工程(2)においてARC層上に印刷された前面銀ペーストと同時焼成されてもよい。
【0015】
本発明の方法の工程(2)において、銀ペーストは非テクスチャー化シリコンウエハの前面上のARC層上に印刷される。銀ペーストは、有機ビヒクルと、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%、(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%、好ましくは1〜6重量%および(d)本発明の方法の工程(3)において、焼成した時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物0〜6重量%を含む無機分とを含む厚膜導電性組成物である。
【0016】
銀ペーストの無機分の組成は、電気導電性金属粉末とガラスフリット+固体無機酸化物との重量比が、焼成された状態において(本発明の方法の工程(3)において焼成後)>13〜19であるような組成であることが重要である。驚くべきことに、前記重量比が満たされる場合に電気効率において最適条件がある。銀ペーストの無機分が一切の成分(d)を含まない場合、焼成された状態においての電気導電性金属粉末とガラスフリット+固体無機酸化物との重量比は一般に、プロセス工程(2)において印刷のために使用された銀ペーストの重量比に等しい。
【0017】
銀ペーストは有機ビヒクルを含む。多種多様な不活性粘稠材料を有機ビヒクルとして使用することができる。有機ビヒクルは、粒状成分(電気導電性金属粉末、ガラスフリット、任意選択により存在する他の粒状無機成分)が十分な安定度によって分散性である有機ビヒクルであってもよい。有機ビヒクルの性質、特に、流動学的性質は、それらが銀ペーストに十分な塗布性を与えるような性質、例えば不溶性固形分の安定な分散、印刷、特に、スクリーン印刷のための適切な粘度およびチキソトロピー、非テクスチャー化シリコンウエハの前面上のARC層およびペースト固形分の適切な湿潤性、十分な乾燥速度、および良い焼成性質などであってもよい。銀ペーストにおいて使用された有機ビヒクルは、非水性不活性液体であってもよい。有機ビヒクルは有機溶剤または有機溶剤の混合物であってもよい。一実施形態において、有機ビヒクルは、有機溶剤中の有機ポリマーの溶液であってもよい。様々な有機ビヒクルのどれでも使用でき、増粘剤、安定剤および/または他の一般的な添加剤を含有するかまたは含有しなくてもよい。一実施形態において、有機ビヒクルの成分として使用されたポリマーはエチルセルロースであってもよい。単独で使用されても組み合わせて使用されてもよいポリマーの他の例には、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、フェノール樹脂および低級アルコールのポリ(メタ)アクリレートなどがある。適した有機溶剤の例は、エステルアルコールおよび例えばアルファ-またはベータ-テルピネオールなどのテルペンまたは例えばケロシン、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコールなどの他の溶剤とのそれらの混合物を含む。さらに、銀ペーストの印刷適用後の急速な硬化を促進するための揮発性有機溶剤を有機ビヒクル中に含有することができる。これらと他の溶剤との様々な組み合わせを調合して所望の粘度および揮発度の要求条件を得てもよい。
【0018】
銀ペースト中の有機ビヒクルの、無機分(無機成分、電気導電性金属粉末+ガラスフリット+任意選択により存在する固体無機酸化物+固体無機酸化物を形成することができる、任意選択により存在する化合物+任意選択により存在する他の無機添加剤)に対する比は、銀ペーストを印刷する方法および使用された有機ビヒクルの種類に依存し、それは変化することができる。通常、銀ペーストは、無機成分58〜95重量%および有機ビヒクル5〜42重量%を含有する。
【0019】
銀ペーストの無機分は、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%、(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%、好ましくは1〜6重量%および(d)本発明の方法の工程(3)において、焼成した時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物0〜6重量%を含み、そこにおいて電気導電性金属粉末とガラスフリット+固体無機酸化物との重量比が、焼成された状態において>13〜19である。
【0020】
一実施形態において、銀ペーストの無機分は、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%、(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%、好ましくは1〜6重量%および(d)本発明の方法の工程(3)において、焼成した時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物0〜6重量%からなり、そこにおいて電気導電性金属粉末とガラスフリット+固体無機酸化物との重量比は焼成された状態において>13〜19であり、ここで成分(a)〜(d)の重量%の合計が100重量%になる。
【0021】
さらなる実施形態において、銀ペーストの無機分は、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%および(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%、好ましくは1〜6重量%からなり、ここで成分(a)〜(c)の重量%の合計が100重量%になる。
【0022】
さらに別の実施形態において、銀ペーストの無機分は、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%および(b)少なくとも1つのガラスフリット5〜7重量%からなり、ここで成分(a)および(b)の重量%の合計が100重量%になる。
【0023】
銀ペーストは、銀粉末90〜100重量%、好ましくは98〜100重量%、特に100重量%を含む電気導電性金属粉末を含む。電気導電性金属粉末が銀粉末以外に1つまたは複数の金属粉末を含む場合、これまたはこれらは典型的に、銅粉末、ニッケル粉末および/または亜鉛粉末のなかから選択される。好ましくは、電気導電性金属粉末は銀粉末からなる。電気導電性金属粉末または特に銀粉末は、コートされないかまたは界面活性剤で少なくとも部分的にコートされてもよい。界面活性剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、カプリン酸、ミリスチン酸およびリノール酸およびそれらの塩、例えば、アンモニウム、ナトリウムまたはカリウム塩から選択されてもよいが、それらに限定されない。
【0024】
電気導電性金属粉末または特に銀粉末の平均粒度は、例えば、0.5〜5μmの範囲である。銀ペースト中の電気導電性金属粉末または特に銀粉末の全含有量は、例えば55〜90重量%、もしくは、一実施形態において65〜85重量%である。
【0025】
説明および請求の範囲において用語「平均粒度」が使用される。それは、レーザー散乱によって定量された平均粒径(d50)を意味する。平均粒度に関連して本説明および請求の範囲においてなされた全ての記載は、銀ペースト中に存在する関連材料の平均粒度に関する。
【0026】
既に言及されたように、銀ペーストは、無機バインダーとして少なくとも1つのガラスフリットを含む。ガラスフリットの平均粒度は、例えば0.5〜4μmの範囲である。
【0027】
ガラスフリットの調製は公知であり、例えば、ガラスの成分を、主に成分の酸化物の形態で一緒に溶融する工程と、このような溶融組成物を水中に流し込んでフリットを形成する工程とに存する。本技術分野に公知であるように、加熱は、例えば1050〜1250℃の範囲のピーク温度まで溶融体が完全に液体になり均質になるような時間にわたり、典型的に、0.5〜1.5時間にわたり行なわれてもよい。
【0028】
ガラスをボールミルで水または不活性低粘度、低沸点の有機液体を用いて粉砕してフリットの粒度を低減させ、実質的に均一なサイズのフリットを得てもよい。次に、それを水または前記有機液体中に沈降させて細粒を分離してもよく、細粒を含有する上澄み液を除去してもよい。分級の他の方法を同様に用いてもよい。ガラスフリットを製造する当業者は、水急冷、ゾル−ゲル、噴霧熱分解、またはガラスの形態の粉末を製造するために適切な他の技術が挙げられるがそれらに限定されない代替合成技術を使用してもよい。
【0029】
実施形態において、少なくとも1つのガラスフリットが、40〜60重量%のPbO、5〜15重量%のPbF2、10〜30重量%のSiO2、0.1〜5重量%のAl23、2〜8重量%のTiO2、0.3〜10重量%のBi23および4〜10重量%のB23を含有するガラスフリットからなる群から選択される。PbO、PbF2、SiO2、Al23、TiO2、Bi23およびB23の重量パーセントから計算され得るように、これは必ずしも合計100重量%にならない。しかしながら、実施形態において、PbO、PbF2、SiO2、Al23、TiO2、Bi23およびB23の重量パーセントの合計は100重量%である。PbO、PbF2、SiO2、Al23、TiO2、Bi23およびB23の重量パーセントの合計が100重量%にならない場合、足りない重量%は、特に、1種または複数種の他の固体無機酸化物によって与えられてもよい。
【0030】
別の実施形態において、少なくとも1つのガラスフリットが、44〜65重量%のPbO、0.5〜2.5重量%のF、10〜30重量%のSiO2、0.1〜5重量%のAl23、2〜8重量%のTiO2、0.3〜10重量%のBi23および4〜10重量%のB23を含有するガラスフリットからなる群から選択される。ここでフッ素含有量はその化合物供給源とは別に表わされる。フッ素供給源として役立つ化合物の例には、PbF2、BiF3およびAlF3などがある。PbO、フッ素供給源、SiO2、Al23、TiO2、Bi23およびB23の重量パーセントは必ずしも合計100重量%にならない。しかしながら、実施形態において、PbO、フッ素供給源、SiO2、Al23、TiO2、Bi23およびB23の重量パーセントの合計は100重量%である。PbO、フッ素供給源、SiO2、Al23、TiO2、Bi23およびB23の重量パーセントが合計100重量%にならない場合、足りない重量%は特に、1種または複数種の他の固体無機酸化物によって与えられてもよい。
【0031】
銀ペーストは、少なくとも1つの固体無機酸化物を含んでもよい。銀ペーストの無機分の成分(c)として使用され得る固体無機酸化物の例には、二酸化シリコン、酸化マグネシウム、酸化リチウムおよび特に酸化亜鉛などがある。
【0032】
銀ペーストは、本発明の方法の工程(3)において、印刷されて乾燥された銀ペーストを焼成した時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物を含んでもよい。銀ペーストの無機分の成分(d)として使用され得る化合物の例は、特定の熱分解性無機化合物、すなわち、熱の作用で固体無機酸化物および気体分解生成物に分解する無機化合物を含む。このような熱分解性無機化合物の例には、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属硝酸塩、例えば、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩などがある。銀ペーストの無機分の成分(d)として使用され得る化合物のさらなる例は、有機金属化合物を含み、すなわち有機金属化合物はここでは無機化合物とみなされ、したがって銀ペーストの無機分に属するとみなされる。用語「有機金属化合物」は少なくとも1つの有機部分を分子中に含む金属化合物を意味する。有機金属化合物は、銀ペーストの調製、貯蔵および適用の間に一般に存在する条件下で、例えば、空中酸素または空気湿度の存在において安定しているかまたは本質的に安定している。同じことが、適用条件下、特に、銀ペーストを非テクスチャー化シリコンウエハの前面上のARC層上に印刷する間に一般に存在するそれらの条件下で当てはまる。しかしながら、銀ペーストの焼成の間、有機金属化合物の有機部分は、除去されるかまたは本質的に除去され、例えば、燃焼および/または炭化される。有機金属化合物は共有結合有機金属化合物を含んでもよく、特にそれらは、有機金属塩化合物を含む。適した有機金属塩化合物の例には、特に金属樹脂酸塩(酸性樹脂、特に、カルボキシル基を有する樹脂の金属塩)および金属カルボキシレート(金属カルボン酸塩)、例えば、金属酢酸塩、金属オクタン酸塩、金属ネオデカン酸塩、金属オレイン酸塩および金属ステアリン酸塩などがある。
【0033】
一実施形態において、銀ペーストの無機分は、(a)銀粉末98〜100重量%、好ましくは100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)40〜60重量%のPbO、5〜15重量%のPbF2、10〜30重量%のSiO2、0.1〜5重量%のAl23、2〜8重量%のTiO2、0.3〜10重量%のBi23および4〜10重量%のB23を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1つのガラスフリット1〜6重量%、および(c)酸化亜鉛1〜6重量%からなる無機分であり、ここで成分(a)〜(c)の重量%の合計が100重量%になる。
【0034】
別の実施形態において、銀ペーストの無機分は、(a)銀粉末98〜100重量%、好ましくは100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)44〜65重量%のPbO、0.5〜2.5重量%のF、10〜30重量%のSiO2、0.1〜5重量%のAl23、2〜8重量%のTiO2、0.3〜10重量%のBi23および4〜10重量%のB23を含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1つのガラスフリット1〜6重量%、および(c)酸化亜鉛1〜6重量%からなる無機分であり、ここで成分(a)〜(c)の重量%の合計はまた、合計100重量%になるが、フッ素含有量はその化合物供給源とは別に表わされる。フッ素供給源として役立つ化合物の例には、PbF2、BiF3およびAlF3などがある。
【0035】
銀ペーストは粘性組成物であり、電気導電性金属粉末およびガラスフリットおよび他の任意選択により存在している固体無機成分を有機ビヒクルと機械的に混合することによって調製されてもよい。一実施形態において、製造法において強力混合、従来のロール練りと同等の分散技術を用いてもよく、ロール練りまたは他の混合技術も用いることができる。
【0036】
銀ペーストをそのままで使用することができ、または例えば、付加的な有機溶剤を添加することによって希釈してもよい。したがって、銀ペーストの全ての他の成分の重量パーセンテージを減少させてもよい。
【0037】
本発明の方法の工程(2)において、銀ペーストが印刷され、特に、非テクスチャー化シリコンウエハの前面上のARC層上に前面電極パターンにおいてスクリーン印刷され、すなわちそれは印刷されて前面電極を形成する。前面電極は、(i)細い平行な指線と(ii)指線と直角に交わる2つ以上の平行な母線とを含むグリッドパターンの形態をとってもよい。実施形態において、グリッドパターンは、2つの平行な母線を有するHパターンである。平行な指線の互いの距離が例えば2〜5mm、乾燥層厚さが例えば3〜30μmおよび幅が例えば25〜150μmであってもよい。母線の乾燥層厚さが例えば10〜50μmおよび幅が例えば1〜3mmであってもよい。
【0038】
印刷された銀ペーストは例えば1〜100分間の間乾燥され、シリコンウエハは100〜300℃の範囲のピーク温度に達している。乾燥は、例えば、ベルト式、回転式または固定式乾燥装置、特に、IR(赤外線)ベルト式乾燥装置を利用して行なうことができる。
【0039】
本発明の方法の工程(3)において、印刷されて乾燥された銀ペーストを焼成する。工程(3)の焼成は、例えば1〜5分間の間行なわれてもよく、シリコンウエハは、700〜900℃の範囲のピーク温度に達している。焼成は、例えば単一または多領域ベルト炉、特に、多領域IRベルト炉を利用して実施することができる。焼成は不活性ガス雰囲気中でまたは酸素の存在下で、例えば、空気の存在下で行なわれてもよい。焼成の間に、不揮発性有機材料を含有する有機物および乾燥の間に蒸発されなかった有機部分は、除去されてもよく、すなわち燃焼および/または炭化されてもよく、特に、燃焼されてもよい。焼成の間に除去された有機物は、有機溶剤、任意選択により存在している有機ポリマー、任意選択により存在している有機添加剤の他、任意選択により存在している有機金属化合物の有機部分を含有する。任意選択により存在する成分(d)は、焼成の間に固体無機酸化物の形成下で分解する場合がある。焼成の間にさらなるプロセス、すなわち、ガラスフリットを電気導電性金属粉末と共に焼結することが行なわれる。銀ペーストがARC層をエッチし、ファイアスルーし、シリコン基板との電気的接触を形成する。
【0040】
既に記載されたように、焼成は、非テクスチャー化シリコンウエハに適用された裏面金属ペーストと一緒にいわゆる同時焼成として行なわれてもよい。
【実施例】
【0041】
(1)前面銀ペースト
実施例の前面銀ペーストは、ペースト成分を混合およびロール練りする工程を包含する従来の金属ペースト製造技術によって製造された。
【0042】
比較用ペースト1は、81重量%の銀粉末(平均粒度1.8μm)、12重量%の有機ビヒクル(有機ポリマー樹脂と有機溶剤)、2重量%のガラスフリットおよび5重量%の酸化亜鉛からなった。
【0043】
実施例のペースト2は、82.8重量%の銀粉末(平均粒度1.8μm)、12重量%の有機ビヒクル(有機ポリマー樹脂と有機溶剤)、1.5重量%のガラスフリットおよび3.7重量%の酸化亜鉛からなった。
【0044】
(2)太陽電池の製造
太陽電池を以下のように形成した。
【0045】
厚さ200μmの多結晶非テクスチャー化シリコンウエハ(面積243cm2、p型(ホウ素)バルクシリコン、CVDによって適用されたn型拡散POCl3エミッター、ウエハのエミッター上のSiNxARC層を有する)が提供された。ウエハの平均表面粗さRaは0.1172μmであり、ISO標準4288:1996に従って(0.0025mmに設定された下側カットオフフィルターおよび0.8mmの上側カットオフ、300:1のバンド幅によって)プロフィロメーターで定量された。ウエハはその裏面上に厚さ30μmのアルミニウム電極および2つの幅5mmの母線を提供され、アルミニウム薄膜を両端縁において1mm重ならせて電気的連続性を確実にした。ウエハの前面上に、互いの間の距離2.2mmを有する幅100μmおよび厚さ20μmの平行な指線によって接続されたウエハの端縁の2つの幅1.5mmおよび厚さ25μmの母線からなるHパターンに実施例の前面銀ペーストがスクリーン印刷されて乾燥された。全ての金属ペーストが、同時焼成する前に乾燥された。
【0046】
印刷されて乾燥されたウエハは、Centrotherm 4領域赤外線炉内で焼成された。スパイク焼成領域の整定値(ウエハが直面するピーク温度)は875〜950℃であった。焼成した後、金属化ウエハは機能性光電池デバイスになった。
【0047】
電気的性能の測定を実施した。光変換効率を測定するために、上述の方法によって形成された太陽電池を商用I−V試験機(h.a.l.m.elektronik GmbHによって供給された)内に置いた。I−V試験機のランプが公知の強度(約1000W/m2)の直射日光をシミュレートし、電池のエミッターを照明した。次いで、電池上の金属化部分を電気的プローブと接触させた。太陽電池によって発生された光電流(Voc、開回路電圧、Isc、短絡回路電流)を広範囲の抵抗について測定してI−V応答曲線を計算した。電気効率をI−V曲線から計算した。
【0048】
表1は結果を記載する。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン太陽電池の前面電極の製造のための方法であって、
1.ARC層をその前面に有する非テクスチャー化シリコンウエハを提供する工程と、
2.銀ペーストを前記非テクスチャー化シリコンウエハの前記前面上の前記ARC層上に前面電極パターンで印刷して乾燥させる工程と、
3.前記印刷されて乾燥された銀ペーストを焼成する工程とを含み、
前記銀ペーストが(i)(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%、(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%および(d)工程(3)において焼成した時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物0〜6重量%を含む無機分と、(ii)有機ビヒクルとを含み、
前記電気導電性金属粉末と前記ガラスフリット+固体無機酸化物との重量比が、焼成された状態において>13〜19である、方法。
【請求項2】
前記銀ペーストの前記無機分が、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%、(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%および(d)工程(3)において焼成した時に固体無機酸化物を形成することができる少なくとも1つの化合物0〜6重量%からなり、成分(a)〜(d)の前記重量%の合計が100重量%になる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銀ペーストの前記無機分が、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)少なくとも1つのガラスフリット1〜7重量%および(c)少なくとも1つの固体無機酸化物0〜6重量%からなり、成分(a)〜(c)の前記重量%の合計が100重量%になる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記銀ペーストの前記無機分が、(a)銀粉末90〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%および(b)少なくとも1つのガラスフリット5〜7重量%からなり、成分(a)および(b)の前記重量%の合計が100重量%になる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガラスフリットが、40〜60重量%のPbO、5〜15重量%のPbF、10〜30重量%のSiO、0.1〜5重量%のAl、2〜8重量%のTiO、0.3〜10重量%のBiおよび4〜10重量%のBを含有するガラスフリットからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガラスフリットが、44〜65重量%のPbO、0.5〜2.5重量%のF、10〜30重量%のSiO、0.1〜5重量%のAl、2〜8重量%のTiO、0.3〜10重量%のBiおよび4〜10重量%のBを含有するガラスフリットからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記銀ペーストの前記無機分が、(a)銀粉末98〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)40〜60重量%のPbO、5〜15重量%のPbF、10〜30重量%のSiO、0.1〜5重量%のAl、2〜8重量%のTiO、0.3〜10重量%のBiおよび4〜10重量%のB含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1つのガラスフリット1〜6重量%、および(c)酸化亜鉛1〜6重量%からなり、成分(a)〜(c)の前記重量%の合計が100重量%になる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記銀ペーストの前記無機分が、(a)銀粉末98〜100重量%を含む電気導電性金属粉末93〜95重量%、(b)44〜65重量%のPbO、0.5〜2.5重量%のF、10〜30重量%のSiO、0.1〜5重量%のAl、2〜8重量%のTiO、0.3〜10重量%のBiおよび4〜10重量%のBを含有するガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1つのガラスフリット1〜6重量%、および(c)酸化亜鉛1〜6重量%からなり、成分(a)〜(c)の前記重量%の合計が100重量%になる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電気導電性金属粉末が銀粉末である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記銀ペーストが無機成分58〜95重量%と有機ビヒクル5〜42重量%とを含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前面電極が、(i)細い平行な指線と(ii)前記指線と直角に交わる2つ以上の平行な母線とを含むグリッドパターンの形態をとる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(2)においての前記印刷がスクリーン印刷である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって製造された前面電極。
【請求項14】
ARC層をその前面に有する非テクスチャー化シリコンウエハと請求項13に記載の前面電極とを含むシリコン太陽電池。

【公表番号】特表2013−508976(P2013−508976A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535254(P2012−535254)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/052782
【国際公開番号】WO2011/049820
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】