説明

非ペプチド性重合体で改質された免疫グロブリンFc断片およびこれを含む薬学的組成物

【課題】非ペプチド性重合体で改質されたIgG Fc断片、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして含む薬学的組成物、このFc断片がリンカーを介して薬物と結合した結合体、およびこの結合体を含む薬学的組成物の提供。
【解決手段】本発明によって非ペプチド性重合体で改質された薬物キャリアIgG Fc断片は、免疫原性とエフェクター機能が除去されることにより、これに結合する薬物の生体内活性は高く維持しながら血中半減期を著しく増加させるうえ、免疫反応の誘発危険を著しく減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ペプチド性重合体で改質されたIgG Fc断片、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして含む薬学的組成物、このFc断片がリンカーを介して薬物と結合した結合体、およびこの結合体を含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去、数多くの薬学者および化学者は、天然的に存在する生理活性分子の生体活性を化学的に変化および/または変形させようと努力した。このような努力の大部分は、生理活性物質の特定の生体活性を増加させるか、或いは生体活性を持続させるか、或いは毒性を減少させるか、或いは副作用を除去または減少させるか、或いは特定の生理活性を変形させることであった。生理活性物質を化学的に変形させる場合、大部分は生理活性が除去または相当減少するが、場合によっては生理活性が増加または変形する。よって、目的とするところに応じて生理活性を変化させることが可能な化学的変形に対する研究が多く行われているが、その大部分の研究は、生理活性物質(薬物)を、生理学的に許容されるキャリアと共有結合させることであった。
【0003】
タンパク質を安定化させ且つタンパク質加水分解酵素との接触および腎臓消失を抑制するための方法として、従来では、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下「PEG」という)のように溶解度の高い高分子をタンパク質薬物の表面に化学的に付加させる方法が使用されてきた。PEGは、目的タンパク質の特定の部位および様々な部位に非特異的に結合して溶解度を高めることによりタンパク質を安定化させ、タンパク質の加水分解を防止する効果があり、特別な副作用も起さないものと知られている(非特許文献1)。ところが、PEGの結合によってタンパク質の安定性は増加することができるが、生理活性タンパク質の力価が著しく低くなり、PEGの分子量が増加するほどタンパク質との反応性が低くなって収率が減少するという問題がある。
【0004】
最近では、PEGの両末端に同一のタンパク質薬物を結合させた二重体を作って活性増加を図り(特許文献1)、相異なる種類のタンパク質薬物をPEGの両末端に結合させて同時に2つの活性を示すタンパク質(特許文献2)も開発されたが、これらはタンパク質薬物の活性を持続させる面では著しい効果を示していない。
【0005】
Kinstler等は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)とヒトアルブミンをPEGに結合させた融合タンパク質が増加した安定性を示すと報告した(非特許文献2)。ところが、G−CSF−PEG−アルブミン構造を持つ前記文献の変形した薬物は、体内残留時間が天然型薬物を単独投与した場合に比べて約4倍増加するのに止まり、血中半減期の増加が微々であって、タンパク質薬物の効果的な持続性製剤として実用化されていない。
【0006】
生理活性タンパク質の生体内安定性を高める別の方法として、遺伝子組み換えにより血中安定性の高いタンパク質遺伝子と生理活性タンパク質遺伝子とを連結した後、前記組み換え遺伝子で形質転換された動物細胞などを培養して融合タンパク質を生産する方法が開発された。その例示として、現在までタンパク質の安定性増加に最も効果が高いものと知られているアルブミンまたはその断片を遺伝子組み換えによって目的の生理活性タンパク質に結合させて生産した融合タンパク質が報告されている(特許文献3、特許文献4及び特許文献5)。ヒューマンゲノムサイエンス(Human Genome Science)社が、酵母で生産したインターフェロンアルファとアルブミンの融合タンパク質(製品名:AlbuferonTM)を製造したが、この融合タンパク質は猿においてインターフェロンの半減期が5時間から93時間に増加したが、変形していないインターフェロンに比べて生体活性度は5%未満と著しく減少した(非特許文献3)。
【0007】
遺伝子組み換え方法によってインターフェロン(特許文献6)、およびインターロイキン−4受容体、インターロイキン−7受容体または赤血球生成因子受容体(特許文献7)を免疫グロブリンのFc断片と融合した形で哺乳動物において発現させたことがあり、特許文献8ではサイトカインまたは成長因子をペプチド結合によって免疫グロブリンのFc断片に結合させた融合タンパク質を製造したことがある。また、特許文献9ではFc断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に遺伝子組み換え方法によって融合させたタンパク質を開示しており、特許文献10ではIL−2を免疫グロブリンFc断片にペプチド結合によって融合させた融合タンパク質を開示している。この他にも、遺伝子組み換えによって製造されたFc融合タンパク質の例として、インターフェロン−βまたはその誘導体と免疫グロブリンFc断片の融合タンパク質(特許文献11)、IL−5受容体と免疫グロブリンFc断片の融合タンパク質(特許文献12)、インターフェロンアルファと免疫グロブリンG4のFc断片の融合タンパク質(特許文献13)、およびCD4タンパク質と免疫グロブリンG2のFc断片の融合タンパク質(特許文献14)が開示されている。
【0008】
ところが、Fc断片の融合タンパク質は、Fc断片のN末端またはC末端にポリペプチド/タンパク質がペプチド結合で連結された形態であって、これをコードする核酸分子が一つの宿主細胞において一つのポリペプチド/タンパク質の形で発現する組み換え生産のみが可能なので、融合タンパク質全体が糖化または非糖化して糖化タンパク質と非糖化タンパク質との融合は不可能である。このようなFc断の融合タンパク質は、依然としてFc断片が持っているエフェクター機能を発揮して、このようなFc断片のエフェクター機能によって、補体を固定させ或いはFcRsを発現する細胞に結合して特定の細胞を破壊させ、炎症を誘発する様々なサイトカインの生成および分泌を誘導して所望しない炎症を誘発させる(特許文献15、非特許文献4、非特許文献5)。また、融合部位のタンパク質配列は、人体に存在しない新規の配列なので、免疫反応を誘発させることができる。
【0009】
長い血中半減期を維持するが、エフェクター機能のない免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片を利用しようとする試みがあった。Cole等は、Fc受容体に対する親和力が減少したFc誘導体を生産するために、C2領域のうち、Fc受容体との結合に重要な役割を果たすものと知られている234、235、および237番目の残基をアラニンで置換することにより、ADCCの活性が抑制されることを報告した(非特許文献6)。また、特許文献16では、免疫グロブリンFc領域で、特に補体結合部位又は受容体結合部位のアミノ酸を変形させたFcを用いて遺伝子組み換え方法によって製造されたTNFR−IgG1 Fc融合タンパク質を開示している。ところが、これらはいずれも効果の面で著しい改善が行われていない。例えば、Fcは、他の不適切なアミノ酸残基の存在により、天然型ヒトFc領域に比べてさらに大きい免疫原性を持つことができ、ひいてはFc機能を失う。
【0010】
一方、抗原−抗体複合体を形成する免疫グロブリンをペグ化(pegylation、以下「PEG化」という)する方法と関連し、経口投与のために(非特許文献7)または凝集(aggregation)による補体反応の誘発を防止するために(非特許文献8)、PEG化を利用したことがある。特許文献17では、モノクローナル抗体の免疫原性を減らし且つFc受容体に対する非特異的結合を減少させるために、PEG方法を使用した。ところが、前記方法は、免疫グロブリン全体をPEG化させるために、分子量1〜5kDa PEGを用いた非特異的修飾方法であって、Fab機能の維持が難しく、PEG化反応の度合いを調節し難いという欠点があった。
【0011】
部位選択的PEG化方法によってリガンドを結合させて一次遮断した後、PEG化させる部位選択的PEG化方法も報告された。特許文献18では、TNFR−Fc融合タンパク質の免疫原性の抑制、溶解度の改善、および血中半減期の増加効果のためにPEG化方法を使用し、TNFを遮断剤とした用いた後PEG化させ、リガンド結合に関与しない部位にのみPEG化させた。前記方法は、分子量1〜5kDa PEGを使用し、全体Lys残基中の20%をPEG化させたときにFc受容体の結合を抑制することができた。ところが、FcRn結合部位にもPEG化する可能性があって血中半減期が減少するおそれがあり、遮断および脱遮断段階があって非常に複雑であり、均質なPEG化反応産物を得ることが難しいという欠点がある。
【0012】
上述したように、治療用免疫グロブリンまたはFc融合タンパク質に対する免疫原性の除去および非特異的Fc受容体結合の抑制のためにPEG−改質方法は報告されたことがあったが、キャリアとして用いるための天然型または組み換え免疫グロブリンFc断片を、PEG化方法で改質させようとした試みはなかった。
【0013】
本発明者は、免疫グロブリン全体ではなく、ペプチド断片に該当するFc断片が非融合タンパク質の形で薬物と結合して薬物の生体内持続性を向上させ且つ生体内活性の減少を最小化させることができることを見出し、キャリアとしての有用性を持つFc断片およびその利用を特許出願したことがある(特許文献19〜26)。
【0014】
本発明者は、上述したようなキャリアとしての有用性を持つFc断片をPEG化させてキャリアとして使用する場合、タンパク質加水分解酵素に対する敏感度が増加せず、FcRn結合は維持されるが、FcR I、II、IIIおよびClq結合は除去され、天然型Fcと類似の血中半減期を維持することを確認した。
【特許文献1】米国特許第5,738,846号明細書
【特許文献2】国際公開第WO92/16221号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO93/15199号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO93/15200号パンフレット
【特許文献5】ヨーロッパ特許公開第EP413,622号明細書
【特許文献6】韓国特許公開第2003−9464号明細書
【特許文献7】韓国特許登録第249572号明細書
【特許文献8】国際公開第WO01/03737号パンフレット
【特許文献9】米国特許第5116964号明細書
【特許文献10】米国特許第5349053号明細書
【特許文献11】国際公開第WO00/23472号パンフレット
【特許文献12】米国特許第5712121号明細書
【特許文献13】米国特許第5723125号明細書
【特許文献14】米国特許第6451313号明細書
【特許文献15】米国特許第6,656,728号明細書
【特許文献16】米国特許第5605690号明細書
【特許文献17】米国特許第4,732,863号明細書
【特許文献18】米国特許第6,548,644号明細書
【特許文献19】韓国特許出願第2004−092780号明細書
【特許文献20】韓国特許出願第2004−092781号明細書
【特許文献21】韓国特許出願第2004−092782号明細書
【特許文献22】韓国特許出願第2004−092783号明細書
【特許文献23】PCT/KR2004/002942号明細書
【特許文献24】PCT/KR2004/002943号明細書
【特許文献25】PCT/KR2004/002944号明細書
【特許文献26】PCT/KR2004/002945号明細書
【非特許文献1】Sada et al., J. Fermentation Bioengineering 71: 137-139, 1991
【非特許文献2】Kinstler et al., Pharmaceutical Research 12(12): 1883-1888, 1995
【非特許文献3】Osborn et al., J. Phar. Exp. Ther. 303(2): 540-548, 2002
【非特許文献4】Zheng et al., J. Immunology, 1999, 163:4041-4048
【非特許文献5】Huang et al., Immunology letters, 2002, 81:49-58
【非特許文献6】Cole et al., J. Immunol. 159: 3613-3621, 1997
【非特許文献7】J. Immunological Methods, 1992, 152:177-190
【非特許文献8】Biochimica et Biophysica Acta, 1984, 788:248-255
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者は、PEG化Fc断片を均質な状態で確保し、このようなFc断片をリンカーを介して薬物と結合させることにより、Fc断片のキャリアとしての欠点である免疫原性と免疫毒性は除去され、結合した薬物の生体内持続性と安定性は向上し、生体内活性の減少は最小化したことを確認し、キャリアとしての有用性を持つ改質されたFc断片およびその用途に対する本発明を完成した。
【0016】
本発明の目的は、非ペプチド性重合体で改質された薬物キャリアFc断片を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして含む薬学的組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がリンカーを介して薬物と連結された結合体を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がリンカーを介して薬物と連結された結合体を含む薬学的組成物を提供することにある。
【0020】
本発明お別の目的は、前記改質されたFc断片およびこの断片と薬物との結合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、非ペプチド性重合体で改質された薬物キャリアIgG Fc断片を提供する。
【0022】
また、本発明の他の観点によれば、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がリンカーを介して薬物と連結された結合体を提供する。
【0023】
また、本発明の別の観点によれば、前記結合体およびその薬学的に許容される担体を含む、薬物の生体内持続性および安定性増加用薬学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして含む薬学的組成物は、Fc断片と結合する薬物の血中半減期が増加して血中持続性を維持し、生体内活性の減少が最小化するだけでなく、抗体断片を用いたタンパク質持続型製剤の開発において最も大きい問題点である免疫グロブリンFc断片の免疫原性と毒性が除去されて免疫反応誘発の危険がないので、安全なタンパク質薬物の持続型製剤の開発に有用に利用できる。また、本発明に係る持続型製剤は、頻繁な注射による患者の苦痛を減少させることができ、活性ポリペプチドの血中濃度を持続的に維持して薬効を安定的に示すことができる。
【0025】
また、本発明の非ペプチド性重合体で改質されたFc断片を使用した薬物結合体の製造方法は、例えば発現システム確立の難しさや天然型と相異なる糖化、免疫反応の誘発、タンパク質融合方向性の制限などの遺伝子操作による誘導タンパク質生産方式の欠点、反応の非特異性による低収率、および結合体として用いられる化学物質の毒性問題などの化学的結合方式の問題点を克服し、増加した血中半減期と高い活性を持つタンパク質薬物を容易且つ経済的な方式で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
一つの様態として、本発明は、非ペプチド性重合体で改質された薬物キャリアFc断片に関するものである。
【0027】
本発明において、「キャリア」とは、薬物と共に結合する物質を意味する。一般に、薬物にキャリアを結合させた結合体の場合、薬物の生理活性が大きく減少するが、本発明の目的上、キャリアは結合する薬物の生理活性の減少を最小化させながらキャリアの免疫原性を減少させ、薬物の生体内安定性を増加させるためのものである。このような目的を達成するために、本発明では非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして使用する。
【0028】
薬物のキャリアとして脂質、重合体などの多くの物質が研究されてきたが、融合タンパク質の一部としてではなく、Fc断片そのものを薬物のキャリアとして用いた技術は公知になったことがない。本発明者は、免疫グロブリンタンパク質の一部分に該当するポリペプチド断片であるFc断片がそれ自体で、免疫グロブリンの有用性(例えば、抗原−抗体 反応による免疫反応の誘導)とは相異なる薬物キャリアとしての新たな有用性を持つ新規物質であることを明らかにしたことがある(韓国特許出願第2004−092780号、出願日:2004年11月13日)。
【0029】
本発明は、結合する薬物の生体内持続性の増進と生体内活性の減少を最小化させながらキャリアの免疫原性を減少させるためのいろいろの物質のうち、特に非ペプチド性重合体で改質されたFc断片を提供し、好ましくは非ペプチド性重合体で改質されたIgGまたはIgM由来のFc断片、より好ましくは非ペプチド性重合体で改質されたIgG由来のFc断片、特に好ましくはIgG2およびIgG4由来のFc断片を提供する。
【0030】
本発明において、「免疫グロブリン(以下、「Ig」と混用する)」とは、抗原に選択的に作用して生体免疫に関与するタンパク質の総称である。免疫グロブリンは、重鎖と軽鎖からなっており、重鎖の不変領域はガンマ(γ)、ミュー(μ)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を持つ。軽鎖の不変領域はカッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを持つ(Coleman et al., Fundamental Immunology, 2nd Ed., 1989, 55-73)。これらによって、免疫グロブリンはIgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMのイソタイプ(isotype)に分けられる。IgGはさらにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に分けられる。
【0031】
免疫グロブリンは、構造的に様々な断片からなり、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、Fcなどに区分される。免疫グロブリンの断片のうち、Fabは軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域および重鎖の第1不変領域(C1)を持つ構造であって、1つの抗原結合部位を持つ。Fab’断片は重鎖C1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を持つという点において、Fabと差異がある。F(ab’)2断片はFab’のヒンジ領域のシステイン残基がスルフィド結合を成しながら生成される。Fv断片は重鎖可変部位と軽鎖可変部位のみを持っている最小の抗体断片であり、scFv断片は重鎖可変部位および軽鎖可変部位のみがペプチドリンカーで連結された単一ポリペプチド鎖である。また、Fd断片は重鎖可変領域およびC1ドメインのみから構成された断片を意味する。
【0032】
本発明において、「Fc断片」は、免疫グロブリン(Ig)分子をパパインで分解させるときに得られる分節であって、軽鎖の可変領域(V)と不変領域(C)および重鎖の可変領域(V)と重鎖の不変領域1(C1)が除去された領域である。Fc断片は、生体内で生分解されるため、薬物のキャリアとして使用するのに適する。また、免疫グロブリン全体分子に比べて相対的に分子量が少ないため、結合体の製造、精製および収率の面で有利であるうえ、アミノ酸配列が抗体毎に相異して高い非均質性を示すFab部分が除去されるため、物質の同質性が大きく増加し、血中抗原性の誘発可能性も低い。前述したFc断片は、重鎖不変領域にヒンジ部分を含むことができる。また、前記Fc断片は、天然型と実質的に同等または向上した効果を持つ限りは、重鎖不変領域1(C1)および/または軽鎖不変領域1(C1)の一部または全体を含む拡張されたFc断片であり得る。また、前記Fc断片は、C2および/またはC3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された断片であり得る。好ましいFc断片はIgGまたはIgM由来のFc断片であり、より好ましいFc断片はIgG由来のFc断片、特に好ましいFc断片はIgG2 FcおよびIgG4 Fc断片である。
【0033】
本発明によって改質されるFc断片は、組み合わせ(combination)またはハイブリッド(hybrid)、具体的にはIgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来のFc断片の組み合わせまたはこれらのハイブリッドが使用できる。前記Fc断片の組み合わせは、同一起源の単鎖Fc断片が相異なる起源の単鎖Fc断片と結合を形成した二量体または多量体形態のポリペプチドである。例えば、IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 FcおよびIgG4 Fc断片よりなる群から選択された2つ以上のFc断片から二量体または多量体を形成することができる。ハイブリッドは、単鎖Fc断片内に相異なる起源からの2つ以上のドメインが存在するポリペプチドである。例えば、IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 FcおよびIgG4 Fc断片に含まれるC1、C2、C3およびC4ドメインから選択された1〜4個のドメインからなるハイブリッドが可能である。
【0034】
本発明によって改質されるFc断片は、ヒト起源、または牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であり、好ましくはヒト起源である。ヒト由来のFc断片は、ヒト生体で抗原として作用してこれに対する新しい抗体を生成するなどの望ましくない免疫反応を引き起こすことが可能な非ヒト由来のFc断片に比べて好ましい。
【0035】
本発明によって改質されるFc断片は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列変異体を含む。アミノ酸配列変異体とは、天然アミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによって相異なる配列を持つことを意味する。分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知になっている(H. Neurath, R. L. Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミル化(amidation)などで修飾されることも可能である。
【0036】
前述したアミノ酸変異体は、天然タンパク質と同一の生物学的活性を示す機能的等価物であってもよく、必要に応じてはこのタンパク質の特性を変形させた変異体であってもよい。例えば、アミノ酸配列上の誘導と修飾によって熱、pHなどに対するタンパク質の構造的安定性または可溶性が増加した変異体であり得る。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322、または327〜331番のアミノ酸残基が変形のための適当な部位として利用できる。また、二硫化結合を形成することが可能な部位が除去されるか、または天然型FcからN末端の幾つかのアミノ酸が除去されるか、または天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加される変異体も可能である。また、エフェクター機能を無くすために、補体結合部位、例えばClq結合部位が除去されることも可能であり、ADCC部位が除去されることも可能である。このような免疫グロブリンFc領域の配列変異体を製造する技術は国際公開WO97/34631号、国際公開第96/32478号などに開示されている。
【0037】
本発明によって改質されるFc断片は、ヒトを含んだ動物の生体内で分離して獲得することもでき、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え方法を用いて獲得することもできる。
【0038】
本発明によって改質されるFc断片は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖、または糖鎖が除去された形態であってもよい。糖化Fc断片が非糖化Fc断片より高いCDC活性を示して免疫誘発危険が高いため、本発明の目的上、Fc断片は非糖化または脱糖化Fc断片を好ましく使用することができる。
【0039】
本発明において、「脱糖化(deglycosylation)Fc断片」は、糖を人為的に除去したFc断片を意味し、「非糖化(aglycosylation)Fc断片」は、原核細胞、好ましくは大腸菌で生産して糖化がなされていないFc断片を意味する。Fc断片の糖鎖の増減または除去には化学的方法、酵素学的方法、および微生物を用いた遺伝工学的方法などの通常の方法が利用できる。
【0040】
組み換えFc断片は、天然型との3次構造の差異により天然型に比べて酵素敏感度が増加する。また、非糖化IgGが天然型IgGに比べてタンパク質加水分解酵素(ペプシン、キモトリプシン)敏感度が非常に高い(Morrison et al., J. Immunology, 1989, 143:2595-2601)。組み換えFc断片は、パパイン処理によって得た天然型Fcと同一のFcRn結合力を示すが、天然型Fc断片が 組み換えFc断片より2〜3倍長い血中半減期を示す(Eur. J. Immunology, 1999, 29:2819-2825)。本発明に係る改質されたFc断片は、酵素作用部位が非ペプチド性重合体で遮断されるので、前述したFc断片に対して加水分解酵素敏感度の増加を防止し、血中半減期の減少を防止することができる。
【0041】
Fc断片の糖鎖が除去されると、その補体活性は約2倍以上著しい減少を示すが、補体の活性が完全には除去されない。ところが、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片は、糖鎖の有無と関係なく補体活性が完全に除去された(図8)。また、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片と薬物との結合体もエフェクター機能と免疫原性のない安全な薬物として作用した(図7)。このような結果より、本発明の非ペプチド性重合体で改質されたFc断片は、薬物の生体内活性は比較的高く維持しながら血中半減期を著しく増加させるうえ、免疫反応誘発の危険が殆どないので、生理活性ポリペプチドなどの薬物キャリアとして非常に有用であることが確認された。
【0042】
他の様態として、本発明は、Fc断片を改質させる方法に関するものである。
【0043】
具体的様態において、本発明の方法は、Fc断片をpH7以上、好ましくはpH7.5〜pH9、より好ましくはpH8.0で非ペプチド性重合体と反応させる段階を含む。
【0044】
Fc断片の改質化は、好ましくはPEG化による改質化が利用できる。
【0045】
Fc断片の改質化は部位選択的に行われる。これは下記事項に基づく。
【0046】
(1)Fc断片による血中半減期の増加は、Fc断片のFcRn結合力と酵素敏感度によって決定されるが、このような酵素敏感度は、FcRn結合部位のアミノ酸差異による。例えば、IgG3とIgG1の血中半減期はそれぞれ7日、20日であって約3倍の差異があるが、FcRn結合部位のアミノ酸差異(His435→Arg435)がFcRn結合力を3倍減少させる(Eur. J. Immunology, 1999, 29:2819-2825)。
【0047】
(2)Fc断片の抗体機能、すなわちADCCおよびCDC機能に必要な結合部位は、FcのC2ドメイン中のヒンジ領域に近い部位であり、Pro331、Lys322、Lys320、Glu318などのアミノ酸がFcRまたはClq結合に直接的な作用をする(JBC, 2001, 276:6591-6604)。FcRn結合部位はFcのC2−C3連結部位であり、His310、Ile253、His435、His433などのアミノ酸がFcRnと塩橋(salt bridge)を形成する(International Immunology, 2001, vol 13, 12:1551-1559)。
【0048】
上述したようにFcRn結合部位がヒスチジンリッチ(histidine-rich)なので、FcRnとFcRの相互作用はpH依存性が大きく、pH6.5以下で結合し、pH7.0以上で分離されるので(Molecular Cell, 2001, vol 7: 867-877)、HisとLys残基の改質化はpH6.5を基準として区別される。FcR I、II、IIIとFcRnの結合部位が3次構造上差異を示し、Fc領域に存在する大部分のLys残基はFcRI、II、III結合部位に存在し、FcRn結合部位はHis残基に富んでいるので、pH7.0以上、例えばpH8.0ではC2のヒンジ領域に近い部分(Lys322〜Lys320)に選択的に改質される。これにより、FcRn結合は維持され且つFcRI、II、IIIおよびClq結合は除去された、改質されたFc断片を製造することができる。
【0049】
前述した方法によって製造された改質されたFc断片は、FcRn結合力は維持し、FcR I、II、IIIおよびClq結合は除去され、天然型Fc断片と同一の血中半減期を維持する。
【0050】
前述したように製造された非ペプチド性重合体で改質されたFc断片は、薬物のキャリアとして作用するので、別の様態として、本発明は、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして含む薬学的組成物に関するものである。
【0051】
本発明において、Fc断片を改質させる「非ペプチド性重合体」とは、繰り返し単位が2つ以上結合した生体適合性重合体を意味する。このような非ペプチド性重合体の例としては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(PPG、polypropylene glycol)、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体 (co-poly(ethylene/propylene) glycol)、ポリオキシエチレン(POE、polyoxyethylene)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリサッカライド(polysaccharide)、デキストラン(dextran)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルエチルエーテル(polyvinyl ethyl ether)、ポリアクリルアミド(polyacryl amide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリシアノアクリレート(polycyanoacrylate)、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ヘパリン(heparin)などがある。好ましい非ペプチド性重合体はポリエチレングリコールである。「PEG化」とは、ポリエチレングリコールが結合する過程をいい、本発明の目的上、ポリエチレングリコールがFc断片に共有結合することを意味する。
【0052】
前記重合体は、特定の反応基を介してFc断片と連結されるが、このような反応基には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、ケトン基、ビニルスルホン(vinyl sulfone )基、チオール基、ヒドラジド基、カルボニルジミダゾール(CDI、carbonyldimidazole)基、ニトロフェニルカーボネート(NPC、nitrophenyl carbonate)基、トリシレート(trysylate)基、イソシアネート(isocyanate)基、スクシニミド(succinimide)誘導体などがある。スクシニミド誘導体の例としては、スクシニミジルプロピオネート(succinimidyl propionate)、スクシニミジルブタン酸(SBA、uccinimidyl butanoic acid)、スクシニミジルカルボキシメチレート(SCM succinimidyl carboxymethylate)、スクシニミジルスクシニミド(SSA、succinimidyl succinamide)、スクシニミジルスクシネート(SS、succinimidyl succinate)、スクシニミジルカーボネート(succinimidyl carbonate)、N−ヒドロキシスクシニミド(NHS、N-hydroxy succinimide)などを挙げることができる。Fc断片のリジン残基と選択的に結合することが好ましく、このために、スクシニミジルプロピオネート、スクシニミジルブタン酸、スクシニミジルカルボキシメチレート、スクシニミジルスクシミド、スクシニミジルスクシネートスクシニミジルカーボネート、N−ヒドロキシスクシニミドなどのスクシニミジル誘導体を反応基として持つポリエチレングリコールを使用することができ、より好ましくはスクシニミジルプロピオネート基、N−ヒドロキシスクシニミドを反応基として持つポリエチレングリコールを使用することができる。Fc断片のC2のヒンジ領域に近い部分、Lys322〜Lys320に選択的にPEG化させ、FcRn結合は維持され、FcRI、II、IIIおよびClq結合は除去されたPEG化Fc断片を製造することができる。
【0053】
Fc断片と非ペプチド性重合体は1:1以上のモル比で結合する。好ましくは1:1〜1:10、より好ましくは1:1〜1:2のモル比で結合する。このような割合で改質されたFc断片を製造するために、非ペプチド性重合体は1:1以上のモル比で反応させる。Fc断片が一つ以上の非ペプチド性重合体で改質される場合、非ペプチド性重合体は相異なる種類のものであり得る。
【0054】
Fc断片に結合するポリエチレングリコールの分子量と個数が増加するほど、補体の活性は減少するので、適切な分子量のポリエチレングリコールを使用しなければならない。ポリエチレングリコールの分子量は、好ましくは5kDa〜50kDa、より好ましくは10kDa〜40kDaである。ポリエチレングリコールとの結合による補体活性の減少はIgGサブタイプまたは糖鎖有無と関係なく発生した。
【0055】
別の様態として、本発明は、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がリンカーを介して薬物と連結された薬物結合体を提供する。
【0056】
本発明において、「薬物結合体」または「結合体」とは、相互交換的に使用されるが、一つ以上の薬物が一つ以上のFc断片と相互連結された状態の物質をいう。
【0057】
本発明において、「薬物」は、ヒトまたは動物に投与される場合、治療的または予防的活性を示す物質を意味し、ポリペプチド、化合物、抽出物、核酸などを含み、これに制限されないが、好ましくはポリペプチド薬物である。
【0058】
本発明において、「生理活性ポリペプチド薬物」、「ポリペプチド薬物」および「タンパク質薬物」は、同一の意味で使用されており、生体内で多様な生理的現象に拮抗作用を示す生理活性型であることを特徴とする。
【0059】
このようなポリペプチド薬物は、変性し易く、生体内にあるタンパク質分解酵素によってよく分解されるなどの理由により、長時間にわたって生理学的活性を持続することができないという欠点がある。ところが、本発明によって非ペプチド性重合体で改質されたFc断片とポリペプチド薬物とを連結させた結合体の場合、薬物の構造的安定性が増加し、分解半減期が増加する。Fc断片の結合によるポリペプチドの生理学的活性の減少は、その他公知の別のポリペプチド薬物製剤に比べて非常に軽微である。Fc断片と結合したIFN、G−CSF、hGHなどが、PEGのみと結合した既存の製剤或いはPEGおよびアルブミンと結合した既存の製剤に比べて、Fc断片との結合体の場合には半減期が約2倍〜約6倍程度増加した。
【0060】
本発明の以前に公知になった、Fc断片とポリペプチド薬物が組み換え方法によって融合された形態、すなわちFc断片とポリペプチド薬物との融合タンパク質は、Fc断片のN末端またはC末端にポリペプチドがペプチド結合によって連結された形態であり、これをコードする核酸配列において一つのポリペプチドとして発現されて製造されたものである。本発明のFc断片とタンパク質薬物の結合は、前述したような従来の組み換え方法による融合ではないことを特徴とする。タンパク質の生理学的機能体としての活性が構造によって決定されるという点に基づくとき、これは融合タンパク質活性の急激な減少をもたらす。ポリペプチド薬物がFcと組み換え方法によって融合される場合、構造的安定性が増加したとしても、生体内利用率の面で効果がないこともある。また、このような融合タンパク質は異常折り畳み(misfolding)がなされて凝集体の形で発現される傾向があるので、タンパク質の製造、分離の収率面で経済的ではない。また、活性型ポリペプチドが糖化した形態の場合、真核細胞で発現させなければならず、このような場合、Fcも糖化するので、生体内で不適な免疫反応を引き起こすおそれもある。本発明によって、始めて糖化活性型ポリペプチドを非糖化Fc断片と連結させた結合体が生産可能になり、最上のシステムでそれぞれが製造、分離されるので、タンパク質獲得の収率を高めることができるなど、前記問題点を全て克服することができる。
【0061】
本発明において、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片と結合する薬物は、血中半減期を増加させる必要があるものであればいずれでも特別な制限なく使用することができる。好ましくは、生理活性ポリペプチドを連結させることができ、例えばヒトの病気を治療または予防する目的で用いられるホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質および受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗物質などの様々な生理活性ペプチド、これらの誘導体及び類似体を例示することができる。
【0062】
具体的に、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類とインターフェロン受容体類(例:インターフェロン−α、−βおよび−γ、水溶性タイプIインターフェロン受容体など)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、グルカコン様ペプチド類(GLP−1など)、Gプロテイン関連受容体(G-protein-coupled receptor)、インターロイキン類(例えば、インターロイキン−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−20、−21、−22、−23、−24、−25、−26、−27、−28、−29、−30など)とインターロイキン受容体類(例えば、IL−1受容体、IL−4受容体など)、酵素類(例えば、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、イズロネート−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、α−ガラクトシダーゼ−A、アガルシダーゼ−α( agalsidase alpha)、β、α−L−イズロニダーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ(imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼなど)、インターロイキンおよびサイトカイン結合タンパク質類(例えば、IL−18bp、TNF−結合タンパク質など)、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞怪死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍怪死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、赤血球生成因子、高糖化赤血球生成因子、アンジオポイエチン類(angiopoietin)、ヘモグロビン、トロンビン(thrombin)、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン(thrombomodulin)、血液因子VII、血液因子VIIa、血液因子VIII、血液因子IX、血液因子XIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン(angiostatin)、アンジオテンシン(angiotensin)、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン(elcatonin)、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤(tissue factor pathway inhibitor)、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類(例えば、神経成長因子、毛様体神経栄養因子(cilliary neurotrophic factor)、アキソジェネシス因子−1(axogenesis factor-1)、脳−ナトリウム利尿ペプチド(brain-natriuretic peptide)、神経膠由来神経栄養因子(glial derived neurotrophic factor)、ネトリン(netrin)、中性球抑制因子(neurophil inhibitor factor)、 神経栄養因子、ニュートリン(neuturin)など)、副甲状腺ホルモン、リレキシン、シクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン(autotaxin)、ラクトフェリン(lactoferrin)、ミオスタチン(myostatin)、受容体類(例えば、TNFR(P75)、TNFR(P55)、IL−1受容体、VEGF受容体、B細胞活性因子受容体など)、受容体拮抗物質(例えばIL1−Ra等)、細胞表面抗原(例えば、CD2、3、4、5、7、11a、11b、18、19、20、23、25、33、38、40、45、69など)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片類(例えば、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFd)、ウィルス由来ワクチン抗原などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
特に好ましい生理活性ポリペプチドは、病気の治療または予防の目的で人体に投与されるときに投与頻度の高いヒト成長ホルモン、インターフェロン(インターフェロン−α、−β、−γなど)、(顆粒球)コロニー刺激因子、(ヒト)赤血球生成因子、抗体断片類などである。
【0064】
本発明において、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片と連結可能な薬物には、ポリペプチド薬物の他に別の薬物も使用可能であり、テトラサイクリン(tetracycline)、ミノサイクリン(minocycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、オフロキサシン(ofloxacine)、レボフロキサシン(levofloxacine)、シプロフロキサシン(ciploxacine)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、エリスロマイシン(erythromycin)、セファクロール(cefaclor)、セフォタキシム(cefotaxime)、イミペネム、ペニシリン(penicillin)、ゲンタマイシン(gentamicin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、バンコマイシン(vancomycin)などの誘導体および混合物から選択される抗生剤;メトトレキサート(methotrexate)、カルボプラチン(carboplatin)、タクソール(taxol)、シスプラチン(cisplatin)、5−フルオロウラシル(5-fluorouracil)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エトポシド(etoposide)、パクリタキセル(paclitaxel)、カンプトテシン(camptothecin)、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)などの誘導体および混合物から選択される抗癌剤;インドメタシン(indomethacin)、イブプロフェン(ibuprofen)、ケトプロフェン(ketoprofen)、ピロキシカム、フルルビプロフェン、ジクロフェナクなどの誘導体および混合物から選択される消炎剤;アシクロビア(acyclovir)、ロバビンなどの誘導体および混合物から選択される抗ウィルス剤;およびケトコナゾール(ketoconazole)、イトラコナゾール(itraconazole)、フルコナゾール(fluconazole)、アンフォテリシン−B、グリセオフルビン(griseofulvin)などの誘導体および混合物から選択される抗菌剤を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記結合体において、「リンカー」は非ペプチド性重合体で改質されたFc断片と薬物の連結を媒介する。このようなリンカーはペプチド性リンカーまたは非ペプチド性リンカーを全て含むが、好ましくは非ペプチド性リンカーである。
【0066】
本発明において、「ペプチド性リンカー」とは、アミノ酸、好ましくはペプチド結合で連結された1〜20個のアミノ酸を意味し、糖化した形態であってもよいが、本発明の目的上、糖化していないことが好ましい。このようなペプチド性リンカーはGly、Ser繰り返し単位を持つペプチドであって、T細胞に対して免疫学的に不活性なペプチドを使用することが好ましい。
【0067】
本発明において、「非ペプチド性リンカー」は、2つ以上の反応基を持つ前記ペプチド性リンカーを除いた全ての連結基をいい、非ペプチド性重合体が好ましい。改質されたFc断片と薬物の連結に用いられる非ペプチド性重合体リンカーは、上述した非ペプチド性重合体を例示することができる。このようなリンカーとして用いられる非ペプチド性重合体は、両末端に全て反応基を有し、それぞれの反応基はFc断片と薬物、例えばポリペプチドのアミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基の反応基にそれぞれ結合する。重合体の反応基にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、ケトン基、ビニルスルホン基、チオール基、ヒドラジド基、カルボニルジミダゾール基、ニトロフェニルカーボネート基、トリシレート基、イソシアネート基、スクシニミド誘導体などがある。スクシニミド誘導体は、スクシニミジルプロピオネート、スクシニミジルブタノン酸、スクシニミジルカルボキシメチレート、スクシニミジルスクニシミド、スクシニミジルスクシネート、スクシニミジルカーボネート、N−ヒドロキシスクシニミドなどを含む。前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は同一であってもよく、互いに異なってもよい。例えば、一方の末端にはマレイミド基、他方の末端にはアルデヒド基を持つことができる。
【0068】
カルボジイミドまたはグルタルアルデヒドなどの低分子量の化学的結合剤を使用する場合には、前記化学的結合剤がタンパク質のいろんな部位に同時に結合してタンパク質を変性させるか、或いは非特異的結合によって結合部位の調節を困難にするか、或いは結合したタンパク質の精製を難しくするなどの問題点があるが、このように非ペプチド性重合体を使用する場合、結合部位の調節が容易であり、非特異的反応が最小化し、精製が容易であるという利点を持つ。
【0069】
本発明の非ペプチド性重合体で改質されたFc断片と結合可能な薬物およびリンカーの数は特に限定されない。好ましくは、本発明の薬物結合体において薬物と改質されたFc断片は1:1〜10:1、好ましくは1:1〜2:1のモル比で結合できる。
【0070】
非ペプチド性重合体で改質されたFc断片、任意のリンカーおよび薬物の結合は、遺伝子組み換え方法によってFc断片とポリペプチド薬物が融合タンパク質の形で発現される場合のペプチド結合(peptide bond)を除いた全ての共有結合と水素結合、イオン結合、ファンデルワールス親和力、疎水性相互作用などの全種類の非共有結合を含む。ところが、薬物の生理活性面において共有結合が好ましい。
【0071】
薬物結合体は、「薬物−リンカー−非ペプチド性重合体で改質されたFc断片」の単位構造を一つ以上含むことができ、これらは好ましくは共有結合によって線形に連結される。一つのFc断片に薬物が一つ以上連結されることにより、Fc断片を媒介として薬物単量体、二量体、多量体を形成することができ、これにより生体内活性および安定性の増加をより効果的に達成することができる。
【0072】
具体的実施において、PEG化Fc断片とポリエチレングリコールによって結合した生理活性ポリペプチドの結合における17S−G−CSFとhGHの血中半減期は、5倍〜10倍程度増加し(図3、図4)、生体内活性は5倍以上増加した(図5、図6)。また、糖化Fc断片、PEGで改質された糖化Fc断片をキャリアとして用いてIFNαと結合体を作った後、Clqに対する結合力を調べた結果、糖化FcとIFNα結合体(IFNα−PEG−G1Fc)はClqに対する高い親和度を維持するが、糖化Fc部位に20kDa PEG〜40kDa PEGで修飾されたインターフェロン結合体はいずれもClq親和度が完全に除去された(図7)。
【0073】
別の様態として、本発明は、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がリンカーを介して薬物と連結された薬物結合体を含む薬物の生体内持続性および安定性を増加させる薬学的組成物を提供する。
【0074】
前記薬学的組成物は、いろんな経路によって投与できる。本発明において、「投与」はいずれの適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記結合体の投与経路は薬物が目的の組織に到達することができる限りはいずれの一般な経路を介して投与できる。例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与が挙げられるが、これに限定されない。ところが、経口投与の際に、ペプチドは消化がなされるため、経口用組成物は活性薬剤をコートし、或いは胃における分解から保護されるように剤形化することが好ましい。好ましくは、注射剤として投与できる。また、薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動することが可能な任意の装置によって投与できる。
【0075】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与の場合には結合剤、 滑沢剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される担体と混合して様々に製造できる。例えば、経口投与の場合には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウエハースなどの形で製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0076】
製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、または鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0077】
本発明において、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして含む薬学的組成物の投与量は、疾患、投与経路、患者の年齢、性別および体重、並びに疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。本発明の薬学的組成物は、生体内持続性に非常に優れるので、薬学的製剤の投与回数および頻度を著しく減少させることができる。また、本発明の組成物は、生体内で免疫原性として作用しないので、副作用のおそれが少なく、長期間の投与が可能で安全である。
【0078】
別の様態として、本発明は、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がリンカーを介して薬物と連結された薬物結合体を製造する方法を提供する。
【0079】
具体的様態において、前記方法は、
(a)両末端に反応基を持つリンカー、薬物および非ペプチド性重合体で改質されたFc断片を反応させ、これらを相互共有結合によって連結させる段階と、
(b)リンカーの両末端に、薬物および非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がそれぞれ共有結合によって連結された結合体を分離する段階とを含む。
【0080】
前記段階(a)において、3構成要素の共有結合は順次または同時に起こり得る。例えば、リンカーの両末端に、それぞれ薬物および非ペプチド性重合体で改質されたFc断片を結合させる場合には、薬物と非ペプチド性重合体で改質されたFc断片のうち、いずれか一つをまずリンカーの一方の末端に結合させた後、残りの成分をリンカーの他方の末端に結合させる方式で順次反応を行うことが目的の結合体外の副産物生成を最小化させるのに有利である。
【0081】
具体的に、前記段階(a)は、
(a1)リンカーの一方の末端に、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片および薬物を共有結合によって連結させる段階と、
(a2)前記反応混合物から、リンカーによって結合した非ペプチド性重合体で改質されたFc断片または薬物の複合体を分離する段階と、
(a3)前記で分離された複合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に、Fc断片または薬物を共有結合によって連結し、リンカーの両末端が、それぞれ非ペプチド性重合体で改質されたFc断片および薬物と結合した結合体を生成する段階とを含むことができる。
【0082】
前記段階(a1)において、薬物とリンカーの最適反応モル比は1:2.5〜1:5であり、非ペプチド性重合体で改質されたFc断片とリンカーの最適反応モル比は1:5〜1:10である。
【0083】
一方、段階(a3)において、段階(a2)で得られた複合体:非ペプチド性重合体で改質されたFc断片または生理活性ポリペプチドの反応モル比は1:0.5〜1:20の範囲であり、1:1〜1:3の範囲であることが好ましい。
【0084】
段階(a1)および段階(a3)の反応は、反応に参加するリンカーの両末端反応基の種類を考慮し、必要に応じて還元剤の存在下で行うことができる。好ましい還元剤としては、水素化シアノホウ素ナトリウム(NaCNBH)、水素化硼素ナトリウム、ジメチルアミンホウ酸塩またはピリジンホウ酸塩等を使用することができる。
【0085】
前記において、段階(a2)および(b)は、要求される純度および生成された産物の分子量および電荷量などの特性を考慮し、タンパク質の分離に用いられる通常の方法の中から必要に応じて適切に選択して行うことができる。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーを含む多様な公知の方法を適用することができ、必要に応じてはより高い純度で精製するために、複数の相異なる方法を組み合わせて使用することができる。
【0086】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0087】
<実施例1>キャリアおよびPEG化キャリアの製造
<段階1>免疫グロブリンを用いた天然型キャリア(免疫グロブリンFc断片)の製造
天然型免疫グロブリンFc断片を製造するために、10mMリン酸塩緩衝液に溶解された分子量150kDaの免疫グロブリンG(IgG、緑十字)200mgにタンパク質加水分解酵素パパイン(Sigma社)を2mg処理して37℃で2時間徐々に攪拌しながら反応させた。酵素反応の後、生成された天然型免疫グロブリンFc断片を精製するために、スーパーデックスカラム、タンパク質Aカラム、および陽イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを順次行った。具体的に、反応液を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(PBS、pH7.3)で平衡化させたスーパーデックス200カラム(Pharmacia社)に点滴し、同一の緩衝液を用いて流速1mL/分で溶出させた。天然型免疫グロブリンFc断片より分子量が相対的に大きい未反応免疫グロブリン(IgG)とF(ab’)などは前方で溶出されるので、これを先に除去した。天然型免疫グロブリンFc断片と類似な分子量のFabは、次のようにタンパク質Aカラムクロマトグラフィーを行って除去した。20mMリン酸塩緩衝液(pH7.0)で平衡化させたタンパク質Aカラム(Pharmacia社)に、スーパーデックス200カラムから溶出された天然型免疫グロブリンFc断片含有画分を5mL/分の流速で負荷した後、カラムに結合していないタンパク質を除去するために同一の緩衝液で十分洗浄した。ここに100mMクエン酸ナトリウム(pH3.0)緩衝液を流して高純度の天然型免疫グロブリンFc断片を溶出させた。タンパク質Aカラムで精製されたFc画分を最後に陽イオン交換樹脂カラム(polyCAT、PolyLc社)を用いて最終精製したが、10mMアセテート緩衝液(pH4.5)を直線濃度勾配(塩化ナトリウム濃度0.15M→0.4M)の方法で流して高純度の天然型免疫グロブリンFc画分を得た。
【0088】
<段階2>組み換えキャリア(免疫グロブリンFc断片)の製造
<IgG4 Fc誘導体発現ベクターの製造>
ヒト免疫グロブリンIgG4重鎖不変領域を製造するために、天然型ヒンジ領域においてアミノ末端から9個のアミノ酸が除去された誘導体(dCysG4Fc)を製造した。
【0089】
大腸菌分泌配列を含んだ発現ベクターは、本発明者らによって開発されたpT14S1SH−4T20V22Q(韓国特許第38061号)を使用した。
【0090】
ヒト免疫グロブリンIgG4の重鎖不変領域を製作するために、ヒトの血液から得た血球細胞のRNAを鋳型にして次のようなRT−PCRを行った。Qiamp RNA bloodキット(Qiagen社)を用いて約6mLの血液から全体RNAを得た後、このRNAを鋳型とし、配列番号1および2、配列番号2と3のプライマー対を合成した後、One−Step RT−PCRキット(Qiagen社)を用いて遺伝子を増幅した。配列番号1は下記IgG4ヒンジ領域の12個のアミノ酸配列(配列番号9)中の10番目のアミノ酸配列セリンから始まる配列であり、配列番号3はC2ドメインの一番目のアミノ酸であるアラニンから始まるように設計されている。配列番号2は終結コドンを含んだBamHI制限酵素認識部位を挿入した。配列番号10はIgG4ヒンジ領域に該当するアミノ酸配列をコードするセンス鎖の核酸配列を示し、配列番号11はそのアンチセンス鎖の核酸配列を示す。
【0091】
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
gag tcc aaa tat ggt Ccc cca tgc cca Tca tgc Cca (配列番号10)
ctc agg ttt ata cca Ggg ggt acg ggt Agt acg ggt (配列番号11)
Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Ser Cys Pro (配列番号9)
【0092】
それぞれ増幅されたIgG4不変領域断片を、大腸菌分泌配列変異体を用いた発現ベクターにクローニングするために、本発明らによって開発された発現ベクターpT14S1SH−4T20V22Q(韓国特許第38061号)を使用した。前記発現ベクターは、配列番号4に示される塩基配列を持つ熱安定性エンテロトキシン分泌配列変異体を含む。クローニングを容易にするために、pT14S1SH−4T20V22Qプラスミドの熱安定性エンテロトキシン分泌配列変異体に配列番号5および6のプライマー対を用いた特定部位置換突然変異法(site-directed mutagenesis)を行い、分泌配列の最後の遺伝子配列にStuI制限酵素認識部位を挿入し、塩基配列分析法によって正確にStuI制限酵素認識部位が生成されたことを確認した。pT14S1SH−4T20V22QプラスミドにStuI制限酵素認識部位が生成されたプラスミドをpmSTIIと命名した。前述したように製作されたプラスミドpmSTIIにStuI/BamHI制限酵素を処理した後、アガロースゲルに電気泳動を行って大腸菌熱安定性エンテロトキシン分泌配列変異体を含む大きい断片(4.7kb)を回収した。前記で増幅された遺伝子を、BamHI制限酵素を処理した後で発現ベクターに挿入してプラスミドpSTIIdCG4FcおよびpSTIIdCG4Moを製作した。
【0093】
<IgG1 Fc誘導体発現ベクターの製造>
ヒト免疫グロブリンIgG1重鎖不変領域を製造するために、天然型ヒンジ領域においてアミノ末端から12個のアミノ酸が除去された誘導体(dCysG1Fc)を製造した。配列番号7と8のプライマー対を用いて前記と同一の方法を行った。配列番号7は、15個のアミノ酸配列(Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro)から構成されたヒンジ領域タンパク質配列中の13番目のアミノ酸配列であるプロリンから始まる配列である。配列番号7および8のプライマー対で増幅された遺伝子は、全体IgG1 Fc遺伝子配列のうち、ヒンジ領域のプロリン−システイン−プロリンから始まるアミノ末端とC2、C3ドメインから構成されるように設計した。
【0094】
前記で増幅されたIgG1 Fc遺伝子配列を、大腸菌分泌配列を用いた発現ベクターにクローニングするために、前述したpmSTIIベクターを使用した。前記実施例で行ったクローニング過程と類似の方法によって、プラスミドpmSTIIをStuI/BamHII制限酵素で処理した後、アガロースゲルに電気泳動を行って大腸菌熱安定性エンテロトキシン分泌配列変異体を含む大きい断片(4.6kb)を回収した。前記で増幅されたIgG1 Fc遺伝子をBamHI制限酵素で処理した後、前記で回収された発現ベクター断片に挿入してpSTIIdCG1Fcを製作した。
【0095】
前記製作された発現ベクターを発現宿主としての大腸菌BL21(DE3)に形質転換させて大腸菌形質転換体BL21/pSTIIdCG4Fc(HM10932)、BL21/pSTIIdCG4Mo(HM10934)およびBL21/pSTIIdCG1Fc(HM10927)を得、これらを韓国微生物保存センター(KCCM)に2004年9月15日付で寄託した(寄託番号:KCCM−10597、KCCM−10599、およびKCCM−10588)。その後、吸光度600nmでOD値が80となる時期に誘導物質(inducer)としてのIPTGを投与して発現を誘導した。これを40〜45時間吸光度600nmでOD値が100〜120となるように高濃度で培養した。発酵液から回収された大腸菌細胞を破砕して細胞溶血液(cell lysate)を得、細胞質内に存在する組み換え免疫グロブリン不変領域誘導体を2段階のカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0096】
タンパク質A親和カラム(protein A affinity column、Pharmacia社)5mLをPBSで平衡化させた後、前記細胞溶血液を5mL/分の流速で負荷した。結合していない画分をPBSで洗浄した後、100mMクエン酸溶液(pH3.0)で溶出した。溶出された画分を脱塩カラム(desalting column)(HiPrep 26/10、Pharmacia社)を用いて10mM Tris緩衝液(pH8.0)で交換した。その後、Q HP 26/10カラム(Pharmacia社)50mLを用いて2次陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを行い、1次精製された組み換え非糖化免疫グロブリンFc誘導体の画分を結合させた後、10mM Tris条件(pH8.0)で直線濃度勾配(塩化ナトリウム濃度0M→0.2M)方法によって流して、組み換え非糖化免疫グロブリンFc断片誘導体であるdCysG4FおよびdCysG1Fc画分を高純度で得た。
【0097】
<段階3>PEG化キャリア(pegylated carriers)の製造
pH8.0の50mMトリス塩酸緩衝液20mLで、天然型(G1Fc)または組み換えキャリア(dCysG4Fc、dCysG1Fc)100mgにポリエチレングリコールスクシニミジルプロピオネート(PEG−SPA、平均分子量5,000、12,000および20,000Da、Shearwater社)とポリエチレングリコールN−ヒドロキシスクシニミジル(PEG−NHS、平均分子量40,000Da、Shearwater社)それぞれをキャリアとPEGのモル比が1:2となるように添加した。反応混合物を4℃で2時間反応させた後、モノ−PEG化キャリアおよびジ−PEG化キャリアを精製した。反応液を、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したQセファロースHP(Pharmacia社)カラムに10mL/分の速度で適用させた。平衡緩衝液でカラムを十分洗浄した後、0.5MのNaClを用いた直線濃度勾配方法を用いて溶出し、溶出順序に従って高純度のジ−PEG化キャリアおよびモノ−PEG化キャリアを天然型(モノ−PEG化G1Fc、ジ−PEG化G1Fc)と組み換え(モノ−PEG化dCysG1Fc、モノ−PEG化dCysG4Fc)の2つの形態でそれぞれ精製して総10個のキャリア誘導体を製造した。モノ−PEG化G1FcはG1Fc−20K、G1Fc−40Kの2つの形態で製造し、ジ−PEG化G1FcはG1Fc−(20K)の形態で製造した。モノ−PEG化dCysG1FcはdCysG1Fc−5K、dCysG1Fc−12K、dCysG1Fc−20Kの3つの形態で製造し、モノ−PEG化dCysG4FcはdCysG4Fc−20Kの形態で製造した(表1)。
【0098】
【表1】

【0099】
<実施例2>インターフェロン−PEG−キャリア結合体の製造
<段階1>インターフェロン−PEG複合体の製造
両末端にアルデヒド反応基を持つ分子量3.4kDaのポリエチレングリコールであるALD−PEG−ALD(Shearwater社)を、ヒトインターフェロンα−2b(hIFNα−2b、分子量20kDa)が5mg/mLの濃度で溶解された100mMリン酸塩緩衝液にIFNα:PEGのモル比が1:1、1:2.5、1:5、1:10および1:20となるように添加した。ここに還元剤としての水素化シアノホウ素ナトリウム(NaCNBH、Sigma社)を最終濃度20mMとなるように添加し、4℃で徐々に攪拌しながら3時間反応させた。インターフェロンアルファのアミノ末端部位に選択的にPEGが連結され、PEGとインターフェロンアルファが1:1の割合で結合した複合体を得るために、前記反応混合物をもってスーパーデックス(Superdex、Pharmacia社)サイズ排除クロマトグラフィーを行った。溶出液として10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてIFNα−PEG複合体を精製し、PEGと結合していないインターフェロンアルファ、未反応PEGおよび2つのインターフェロンアルファがPEGと連結された二量体副産物を除去した。精製されたIFNα−PEG複合体を5mg/mLの濃度で濃縮した。この実験より、反応性が最もよく且つ二量体などの副産物が少ないIFNα:PEGの最適反応モル比は1:2.5〜1:5であることを確認した。
【0100】
<段階2>IFNα−PEG−キャリア結合体の形成
前記段階1で精製されたIFNα−PEG複合体を天然型キャリア(またはPEG化天然型キャリア)のN末端に結合させるために、実施例1で準備された天然型免疫グロブリンFc断片(G1Fc、分子量約53kDa)を10mMリン酸塩緩衝液に溶解させた後、IFNα−PEG連結体:Fcのモル比がそれぞれ1:1、1:2、1:4および1:8となるようにIFNα−PEG複合体と混合して反応させた。反応液を100mMリン酸塩緩衝液の状態にし、還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で20時間徐々に攪拌しながら反応させた。この実験より、反応性が最もよく且つ二量体などの副産物が少ないIFNα−PEG複合体:Fcの最適反応モル比は1:2であることを確認した。モノ−20kDa PEG、ジ−20kDa PEG、およびモノ−40kDa PEGでそれぞれ改質された天然型免疫グロブリンFc断片(G1Fc−20K、G1Fc−(20K)、G1Fc−40K)を用いて前記と同一の方法でIFNα−PEG−キャリア結合体を製造した。
【0101】
<段階3>IFNα−PEG−キャリア結合体の分離および精製
前記段階2の結合反応の後、未反応物質および副産物を除去し、生成されたIFNα−PEG−キャリアタンパク質結合体を精製するために、PolyWAX LPカラム(PolyLC社)を10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液で平衡化させた後、反応液を負荷し、1M塩化ナトリウムを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液を直線濃度勾配(塩化ナトリウム濃度0M→0.3M)方法によって流して、純粋なIFNα−PEG−キャリア結合体を精製した。IFNα−PEG−キャリア結合体の画分を10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で平衡化させたPolyCAT LPカラム(PolyLC社)に仕込み、1M塩化ナトリウム(NaCl)を含む10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)緩衝液を直線濃度勾配(塩化ナトリウム濃度0M→0.5M)方法によって流して、IFNα−PEG−G1Fc、IFNα−PEG−G1Fc−20K、IFNα−PEG−G1Fc−(20K)、IFNα−PEG−G1Fc−40K結合体をそれぞれ精製した。
【0102】
<実施例3>ヒト顆粒球コロニー刺激因子誘導体(17S−G−CSF)−PEG−組み換えキャリア結合体の製造
インターフェロンアルファの代わりにヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を用いて、実施例2の段階1と同一の方法で17S−G−CSF−PEG複合体を製造および精製した。精製された17S−G−CSF−PEG複合体を、前記実施例1で製造されたPEG化組み換えキャリア(dCysG4Fc−20K)のN末端に結合させた。融合 反応は前記実施例2の段階2と同一の方法を使用した。融合反応の後、未反応物質及び副産物を除去し、生成された17S−G−CSF−PEG−dCysG4Fc−20K結合体を精製するために、Q HP 26/10カラム(Pharmacia社)50mLを使用した。カップリング反応液を脱塩カラムHiPrep 26/10(Pharmacia社)を用いて10mM Tris緩衝液(pH8.0)で交換した後、Q HP 26/10 50mLカラムに8mL/分の流速で負荷して結合させた後、直線濃度勾配(塩化ナトリウム濃度0M→0.2M)方法によって高純度の17S−G−CSF−PEG−dCysG4Fc−20K結合体の画分を得ることができた。
【0103】
<実施例4>ヒト成長ホルモン(hGH)−PEG−組み換えキャリア結合体の製造
インターフェロンアルファの代わりにヒト成長ホルモン(hGH、分子量22kDa)を用いて、実施例3と同一の方法で高純度のhGH−PEG−dCysG4Fc−20K結合体の画分を得ることができた。
【0104】
<実験例1>タンパク質結合体の確認および定量
<1−1>タンパク質結合体の確認
前記実施例で製造したタンパク質結合体は、4〜20%濃度勾配のゲルおよび10%ゲルを用いた還元性または非還元性SDS−PAGEおよびELISA(R&D System社)方法によって確認した。
【0105】
<1−2>タンパク質結合体の定量
前記実施例で製造したそれぞれのタンパク質結合体の量はスーパーデックスカラム(Superdex 26/60、Pharmacia社)と10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を溶出液として用いるサイズ排除クロマトグラフィー上でピーク面積を対照区と比較して換算する方法によって計算した。既に定量されているIFNα、hGH、17S−G−CSFおよびFcでそれぞれサイズ排除クロマトグラフィーを行った後、濃度とピーク面積間の換算係数を測定した。各タンパク質結合体の一定量を用いて同一のサイズ排除クロマトグラフィーを行い、ここで得られたピーク面積から、免疫グロブリンFc断片に該当するピーク面積を差し引いた値を、各タンパク質結合体に存在する生理活性タンパク質の定量値として決定した。
【0106】
Fcが生理活性ポリペプチドに結合すると、生理活性ポリペプチドの抗体を用いてその量を定量するとき、抗体と前記ポリペプチドとの結合が阻害され、クロマトグラフィーによって計算される実際値より少なく定量される。ELISA分析の結果、IFNα−PEG−Fcの場合にはELISAによって測定された値がおよそ実際値の約30%程度であると確認された。
【0107】
<1−3>タンパク質結合体の純度および質量の確認
前記実施例で獲得したタンパク質結合体IFNα−PEG−Fc、IFNα−PEG−DG(deglycosylated)FcおよびIFNα−PEG−組み換えAG(aglycosylated)Fc誘導体試料の純度を分析するために、逆相HPLCを行った。逆相カラム(Vydac社、259VHP54カラム)を用いて分析し、0.5%TFA存在の下にアセトニトリル溶媒を用いて100%まで濃度勾配(40〜100%)方法によって280nmの波長で純度を分析した。その結果、図2から分かるように、結合していないインターフェロンまたは免疫グロブリンFcは存在せず、IFNα−PEG−G1Fc結合体、17S−G−CSF−PEG−dCysG4Fc−20K結合体およびhGH−PEG−dCysG4Fc−20K結合体はいずれも96%以上の純度で純粋に精製されたことが分かった。
【0108】
各精製された試料の正確な分子量を確認するために、各試料の質量をMALDI−TOF(Voyager DE−STR、Applied Biosystems社)超高速質量分析器を用いて分析した。マトリックスとしてはシナピン酸を使用し、それぞれの試験用試料0.5μLを試料スライドに塗布して自然乾燥させた後、同量のマトリックス溶液を添加し、その後さらに自然乾燥させてイオン源に導入した。検出はポジティブ方式でリニアモードTOF方式の装置を用いて行い、イオンは遅延したイオン抽出(DE)を用いる分割抽出供給源において、遅延した抽出時間を750nsec/1500nsecとして、約2.5kVの全体電位差によって加速化した。
【0109】
下記表2は、前記実施例で得たそれぞれのFcタンパク質結合体のMALDI−TOF質量分析結果を数値化して示したものである。その結果、得られたタンパク質結合体の純度は95%以上であり、理論値と非常に近い分子量を示すことが分かった。また、免疫グロブリンFc断片にIFN、17S−G−CSF、hGHがそれぞれ1:1の割合で結合した形態であることが分かった。
【0110】
【表2】

【0111】
<実験例2>薬物動力学の調査
各群当たり5匹のSDラットに天然型生理活性タンパク質(対照群)と前記実施例3および4で製造した結合体の血液内安定性および薬物動力学係数を比較した。対照群および17S−G−CSF−PEG−dCysG4Fc−20K結合体とhGH−PEG−G4Fc−20K結合体(試験群)を各100μg/kgずつ皮下注射した後、対照群は注射0.5、1、2、4、6、12、24、30、48、72および96時間後に採血し、試験群は注射1、6、12、24、30、48、72,96、120、240および288時間後に採血した。ヘパリン含有チューブに血液試料を集めて凝固を防止し、エッペンドルフ高速マイクロ遠心分離機で5分間遠心分離して細胞を除去した。血漿内タンパク質量は各生理活性タンパク質に対する抗体を用いてELISA方法で測定した。
【0112】
薬物動力学分析結果を下記表3〜表4に示した。下記表において、Tmaxは最高薬物濃度に到達する時間を、T1/2は薬物の血中半減期を、MRT(mean residence time)は薬物分子の平均的な体内滞留時間をそれぞれ意味する。
【0113】
【表3】

【0114】
【表4】

【0115】
表3における顆粒球コロニー刺激因子とその誘導体に対する薬物動力学分析結果から分かるように、天然型(filgrastim)と比較して17S−G−CSF−PEG−dCysG4Fc−20K結合体が約10倍増加した血中半減期を示した。タンパク質の血中持続性を増加させる免疫グロブリンFc断片の効果はヒンジ部分の一部アミノ酸が除去され且つC2部位がPEGで修飾された誘導体においても維持されるので、このような結果は、PEG化後にもFcRn結合部位としてのC3部位に何の影響もなく、血中半減期増加効果が続けられることを示す。
【0116】
改善された血中半減期効果は、hGHを使用した場合にも同一の効果を示した。表4を参照すると、hGH−PEG−dCysG4Fc−20K結合体が天然型hGHに比べて約5倍以上増加した血中半減期を示し、MRTは10倍以上増加した。
【0117】
<実験例3>CDC活性の測定
前記実施例で製造した誘導体と大腸菌形質転換体から発現して精製された免疫グロブリン不変領域タンパク質がヒトClqと結合するか否かを確認するために、下記の如く活性酵素免疫測定分析法(ELISA)を行った。実験群として、形質転換体HM10932およびHM10927から生産された免疫グロブリン不変領域断片試料と前記実施例で製造した誘導体を使用し、比較群として、糖が結合している免疫グロブリン(IVIG−グロブリンS、緑十字PBM)を使用した。前記実験群と比較群の試料を10mMカーボネート緩衝液(pH9.6)に1μg/mLの濃度で準備した。準備された試料を96ウェルプレート(Nunc)にウェル当たり200ngの量で分注した後、4℃で一晩コートし、その後ウェルプレートをPBS−T溶液(137mM NaCl、2mM KCl、10mM NaHPO、2mM KHPO、0.05%ツイン20)で3回洗浄した。牛血清アルブミンを1%の濃度でPBS−T溶液に溶解させて準備した遮断緩衝液250μLを各ウェルに添加した後、常温で1時間放置し、同一のPBS−T溶液で3回洗浄した。標準液と試料を適切な濃度でPBS−T溶液で希釈した後、抗体がコートされたウェルに点滴して常温で1時間放置させて反応させた後、さらにPBS−T溶液で3回洗浄した。遮断反応済みのプレートに2μg/mL Clq(R&D System社、米国)を添加した後、2時間常温で反応させ、反応済みのプレートを前記PBS−T溶液で6回洗浄した。ヒトの抗ヒトClq抗体−ペルオキシダーゼコンジュゲート(Biogenesis社、米国)を遮断緩衝溶液に1000:1で希釈して各ウェルに200μLずつ点滴した後、1時間常温で反応させた。反応が完了した後、各ウェルをPBS−T溶液で3回洗浄し、その後発色溶液AとB(カラー−A−安定化ペルオキシダーゼ[Color A-Stabilized peroxidase]溶液およびカラーB−安定化色原体[Color B-stabilized chromogen]溶液、DY999、R&D System社)を同量で混合して各ウェルに200μLずつ添加し、30分間放置した。その後、反応停止溶液としての2M硫酸を50μLずつ添加して反応を停止させた。反応済みのウェルプレートは、マイクロプレートリーダー(Molecular Device社)を用いて450nmの波長で標準液と検液の吸光度を測定し、その結果を図7および図8にそれぞれ示した。
【0118】
免疫グロブリンのFc断片の補体活性を糖鎖有無とPEG化有無に応じて比較した結果、糖鎖が除去されると、補体活性は約2倍以上著しい減少を示し、減少した補体活性はPEG化した後、完全に除去された。PEG化の後、補体活性の減少程度はdCysG1FcとdCysG4Fcのサブタイプ間に差異がなく、修飾されたPEG分子量が増加するほど補体活性の減少は大きくなり、PEG分子量が12kDa以上であれば、補体活性が完全に除去された(図8)。
【0119】
Clq親和度が除去されたキャリアの特性が、生理活性ペプチドと結合体を作った後にも依然として維持されるかを考察するために、IFNαをモデルとして糖化Fc、PEGで改質された糖化Fcをキャリアとして用いて各結合体を作った後、Clqに対する結合力を調査した。糖化FcとIFNα結合体(IFNα−PEG−G1Fc)はClqに対する依然として高い親和度を維持するが、糖化Fc部位に20kDa PEG〜40kDa PEGで修飾されたインターフェロン結合体はいずれもClq親和度が完全に除去され、PEG化されたFc誘導体がエフェクター機能のない安全なキャリアであると確認された(図7)。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】精製されたIFNα−PEG−G1Fc(レーン1)、17Ser−G−CSF−PEG−dCysG4Fc(レーン2)、およびhGH−PEG−dCysG4Fc−20K(レーン3)を非還元条件と還元条件でSDS−PAGEによって分析した結果である(レーンM:分子量サイズマーカー)。
【図2a】精製されたキャリアの純度確認のための逆相HPLC分析結果である。
【図2b】結合体の純度確認のための逆相HPLC分析結果である。
【図3】天然型G−CSFおよび17Ser−G−CSF−PEG−dCysG4Fc−20Kの薬物動力学を分析したグラフである。
【図4】天然型hGHおよびhGH−PEG−dCysG4Fc−20Kの薬物動力学を分析したグラフである。
【図5】天然型G−CSFおよび17Ser−G−CSF−PEG−dCysG4Fc−20Kの生体内効力を分析したグラフである。
【図6】天然型hGHおよびhGH−PEG−dCysG4Fc−20Kの生体内効力を分析したグラフである。
【図7】天然型G1Fc、dCysG1Fc、PEG化(pegylated)dCysG1Fc、およびPEG化dCysG4Fcキャリアの補体Clq結合活性を比較分析したグラフである。
【図8】IFNα−PEG−G1Fc結合体、IFNα−PEG−G1Fc−20K結合体、IFNα−PEG−G1Fc−(20K)結合体、およびIFNα−PEG−G1Fc−40K結合体の補体C1q結合活性を比較分析したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ペプチド性重合体で改質された薬物キャリアIgG Fc断片。
【請求項2】
前記IgGがIgG2またはIgG4であることを特徴とする、請求項1に記載のFc断片。
【請求項3】
非糖化したことを特徴とする、請求項1に記載のIgG Fc断片。
【請求項4】
前記非ペプチド性重合体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチレン、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレート、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、ヘパリン、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載のFc断片。
【請求項5】
前記非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項4に記載のFc断片。
【請求項6】
非ペプチド性重合体で改質されたFc断片をキャリアとして含む薬学的組成物。
【請求項7】
前記Fc断片がIgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ(combination)またはこれらのハイブリッド(hybrid)のFc断片であることを特徴とする、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記Fc断片がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドのFc断片であることを特徴とする、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記Fc断片がIgG4 Fc断片であることを特徴とする、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記Fc断片が非糖化したことを特徴とする、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記非ペプチド性重合体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチレン、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレート、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、ヘパリン、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択されたことを特徴とする、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
非ペプチド性重合体で改質されたFc断片がリンカーを介して薬物と連結された結合体。
【請求項14】
前記Fc断片がIgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ(combination)またはこれらのハイブリッド(hybrid)のFc断片であることを特徴とする、請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
前記Fc断片がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの組み合わせ(combination)またはこれらのハイブリッド(hybrid)のFc断片であることを特徴とする、請求項14に記載の結合体。
【請求項16】
前記Fc断片がIgG4 Fc断片であることを特徴とする、請求項15に記載の結合体。
【請求項17】
前記Fc断片が非糖化したことを特徴とする、請求項13に記載の結合体。
【請求項18】
前記リンカーが非ペプチド性重合体であることを特徴とする、請求項13に記載の結合体。
【請求項19】
前記非ペプチド性重合体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチレン、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレート、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、ヘパリン、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択されたことを特徴とする、請求項18に記載の結合体。
【請求項20】
前記非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項19に記載の結合体。
【請求項21】
前記薬物がポリペプチドであることを特徴とする、請求項13に記載の結合体。
【請求項22】
前記生理活性ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質、受容体、細胞表面抗原、および受容体拮抗物質よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の結合体。
【請求項23】
前記生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、コロニー刺激因子類、グルカコン様ペプチド類(GLP−1など)、Gプロテイン関連受容体(G-protein-coupled receptor)、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、酵素類、インターロイキン結合タンパク質類、サイトカイン結合タンパク質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞怪死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍怪死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、赤血球生成因子、高糖化赤血球生成因子、アンジオポイエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、およびXIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類、副甲状腺ホルモン、リレキシン、シクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および抗体断片類よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の結合体。
【請求項24】
前記生理活性ポリペプチドが、ヒト成長ホルモン、コロニー刺激因子、インターフェロンアルファ、およびヒト赤血球生成因子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の結合体。
【請求項25】
請求項13に記載の結合体およびその薬学的に許容される担体を含む、薬物の生体内持続性および安定性増加用薬学的組成物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534676(P2008−534676A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505221(P2008−505221)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001233
【国際公開番号】WO2006/107124
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507293549)ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】