説明

非容積形ポンプ

【解決手段】翼室2内の羽根車3により吸込路15から翼室2へ吸入された搬送液を翼室2から吐出路7へ吐出する揚液作動のほかに、呼び水作用を行うことができる。吸込路15は、翼室2に面する吸込室16と、吸込室16に対し隔壁19により区画されて第一の連通口21を介して連通する貯液室20と、吸込室16に対し吸込口17を介して連通するとともに貯液室20に対し第二の連通口22を介して連通する供給室18とを備えている。
【効果】吸込路15において搬送液が供給室18から逆流した際に主に吸込室16や翼室2の搬送液が吸込口17から逆流し、吸込室16に対し隔壁19により区画した貯液室20の搬送液が逆流しにくくなり、貯液室20に搬送液が残り易くなるとともに、貯液室20に残った貯液が第一の連通口21から吸込室16を通って翼室2に戻り易くなり、吸込室16や翼室2に呼び水を確保し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼び水作用を行うことができる非容積形ポンプにおいて、吸込路の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1〜2に記載された自吸式ポンプにおいては、いずれも、翼室内の羽根車により吸込路から翼室へ吸入された搬送液を翼室から気液分離路を経て吐出路へ吐出する揚液作動のほかに、羽根車により翼室内の自吸液を気液分離路へ孔から渦流として噴出することにより翼室内に戻して循環させながら気液分離する自吸作動を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−179487号公報
【特許文献2】特開2002−21761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、吸込路に逆止弁が取り付けられて始動に必要な呼び水を確保することができるようになっている。しかし、逆止弁の取付けにより吸込路の構造が複雑になる問題があった。
【0004】
一方、上記特許文献2では、このような逆止弁の代わりに、吸込路に貯液空間(滞留部40)を設けて呼び水を確保することができるようになっている。しかし、この貯液空間は搬送液の供給経路内にあってその供給経路を兼用しているため、停止時に搬送液が逆流した際にこの貯液空間内の搬送液も逆流し易くなり、貯液空間内に搬送液が残りにくくなって呼び水を確保することが難しくなるおそれがあった。
【0005】
この発明は、非容積形ポンプにおいて吸込路や翼室に呼び水を確保し易くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜4)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる非容積形ポンプは下記のように構成されている。
この非容積形ポンプにおいては、翼室2内の羽根車3により吸込路15から翼室2へ吸入された搬送液を翼室2から吐出路7へ吐出する揚液作動のほかに、呼び水作用を行うことができる。前記吸込路15には、翼室2に搬送液を吸入する供給経路16,17,18のほかに、この供給経路16,17,18に対し隔壁19により区画されて翼室2に貯液を呼び水として供給する貯液室20を備えている。例えば、この貯液室20には、供給経路16,17,18の下流側に連通する第一の連通口21と、供給経路16,17,18の上流側に連通する第二の連通口22とを設け、この第一の連通口21における開口面積はこの第二の連通口22における開口面積よりも大きく設定されている。
【0007】
請求項1の発明では、供給経路16,17,18に対し隔壁19により区画した貯液室20を設けたので、貯液室20の搬送液が逆流しにくくなり、貯液室20に搬送液が残り易い。
【0008】
請求項2の発明にかかる非容積形ポンプは下記のように構成されている。
この非容積形ポンプにおいては、翼室2内の羽根車3により吸込路15から翼室2へ吸入された搬送液を翼室2から吐出路7へ吐出する揚液作動のほかに、呼び水作用を行うことができる。前記吸込路15は、翼室2に面する吸込室16と、この吸込室16に対し隔壁19により区画されて第一の連通口21を介して連通する貯液室20と、この吸込室16に対し吸込口17を介して連通するとともにこの貯液室20に対し第二の連通口22を介して連通する供給室18とを備えている。
【0009】
請求項2の発明では、吸込室16に対し隔壁19により区画した貯液室20を設けたので、貯液室20の搬送液が逆流しにくくなり、貯液室20に搬送液が残り易い。
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記第二の連通口22における開口面積は前記吸込口17における開口面積よりも小さく設定されている。請求項3の発明では、吸込路15において搬送液が供給室18から逆流した際に主に吸込室16や翼室2の搬送液が吸込口17から逆流して貯液室20には搬送液が残り易い。
【0010】
請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記第一の連通口21における開口面積は前記第二の連通口22における開口面積よりも大きく設定されている。請求項4の発明では、貯液室20に残った貯液が第一の連通口21から吸込室16を通って翼室2に戻り易い。
【0011】
請求項2または請求項3または請求項4の発明を前提とする請求項5の発明にかかる吸込路15において、搬送液が供給室18から逆流した状態で、第二の連通口22から貯液室20に流入した空気の圧力により、呼び水として貯液室20に残った貯液が第一の連通口21から吸込室16を通って翼室2に戻る。請求項5の発明では、貯液室20に残った貯液が第一の連通口21から吸込室16を通って翼室2に戻り易い。
【0012】
請求項1から請求項5のうちいずれかの請求項の発明を前提とする請求項6の発明においては、羽根車3により翼室2内の自吸液を循環させながら気液分離する自吸作動を行う。請求項6の発明では、請求項1から請求項5のうちいずれかの請求項の発明の効果を自吸ポンプにおいて発揮させることができる。
【0013】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項6の発明を前提とする第7の発明においては、翼室2内の羽根車3により吸込路15から翼室2へ吸入された搬送液を翼室2から気液分離路6を経て吐出路7へ吐出する揚液作動のほかに、羽根車3により翼室2内の自吸液を気液分離路6を通して翼室2内に戻して循環させながら気液分離する自吸作動を行うことができる。前記気液分離路6には、翼室内の自吸液を気液分離路6へ渦流(例えば主渦流)として噴出することができる主孔11を設けるとともに、その主孔11よりも上流側で翼室2内の自吸液を気液分離路6へ反発流(例えば主渦流の回転向きXFに対し逆向きに設定した回転向きXRを有する副渦流)として噴出することができる副孔12を設け、その反発流により渦流を減衰させる。第7の発明では、副孔12からの反発流により渦流を減衰させる減衰手段を採用したので、減衰手段が簡単になって気液分離路6内の形状を簡単にするとともに減衰手段の形成作業を容易にする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は非容積形ポンプにおいて吸込室16や翼室2に呼び水を確保し易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかる非容積形ポンプについて図面を参照して説明する。
図1に示す非容積形ポンプ(ターボ形ポンプ)は自吸式遠心ポンプ(自吸式うず巻ポンプ)であって、図3に示すケーシング1に設けられた翼室2内で羽根車3が主軸4を中心にして回転可能に支持されているとともに、その羽根車3の回転中心線4aの方向の両側のうち一方の側で吸込カバー5がケーシング1に取り付けられている。このケーシング1においては、翼室2の外周の一側で気液分離路6が羽根車3の回転方向に沿って設けられて吐出路7に接続されている。この気液分離路6においては、翼室2内の底部2aに導入口8が連通するととともに、翼室2内の天井部2bに隣接して配設された吐出路7に導出口9が連通し、その導入口8と導出口9との間で導出路10が下方から上方へ延設されている。この導入口8と導出口9と導出路10において内周面は円形状に形成されている。
【0016】
図3及び図4(a)に示すように、前記気液分離路6の導出口9には翼室2に面する側の壁6aに主孔11が翼室2との間で貫設されている。図3及び図4(b)に示すように、前記気液分離路6の導出路10には翼室2に面する側の壁6aに副孔12が翼室2との間で貫設されている。この主孔11の噴出中心線11a及び副孔12の噴出中心線12aはいずれも導出口9及び導出路10の内周面の接線方向に沿っているが、前記羽根車3の回転中心線4aの方向Yの両側のうち壁6aの一側に主孔11が形成されているとともに壁6aの他側に副孔12が形成されている。ちなみに、この気液分離路6において、副孔12の噴出中心線12aを含む横断面で区画されてその副孔12に連続する内孔13は、主孔11の噴出中心線11aを含む横断面で区画されてその主孔11に連続する内孔14の下方領域Sに対し交差し、この両内孔13,14は所定距離Lだけ互いに離間している。前記主孔11及び副孔12については、機械加工しているが、鋳抜きにより成形してもよい。なお、前記翼室2内の羽根車3については、ボリュート式及び単段式であるが、ディフューザ式や多段式であってもよい。
【0017】
前記吸込カバー5内に設けられた吸込路15においては、主軸4の外周で翼室2の端面部2cに吸込室16(供給経路)が面してこの端面部2cから斜め上方に延び、この吸込室16の天井部16bに対し吸込口17(供給経路)を介して供給室18(供給経路)が連通し、この吸込室16及び供給室18に対し隔壁19により区画された貯液室20が端面部2c及び吸込室16に対し前記羽根車3の回転中心線4aの方向Yで並設されている。この貯液室20の底部20aは端面部2cに隣接する吸込室16の底部16a(供給経路の下流側)に対し第一の連通口21を介して連通し、この貯液室20の天井部20bはこの供給室18(供給経路の上流側)に対し吸込口17に隣接する第二の連通口22を介して連通している。図2(a)(b)に示すように、この第二の連通口22における開口面積は、この吸込口17における開口面積よりも小さく設定されている。また、この第一の連通口21における開口面積は、この第二の連通口22における開口面積よりも大きく設定されている。なお、前記吸込路15については、片吸込式及び混流式であるが、両吸込式や半径流式であってもよい。
【0018】
さて、吸込路15や翼室2に十分な呼び水が確保された状態で、羽根車3が回転すると、搬送液は、供給室18から吸込口17を通って吸込室16に供給されるとともに、供給室18から第二の連通口22を通って貯液室20に供給された後にその貯液室20から第一の連通口21を通って吸込室16に供給され、その吸込室16から端面部2cを通って翼室2に吸入される。翼室2内の搬送液は、翼室2から気液分離路6の導入口8と導出路10と導出口9とを経て吐出路7へ吐出される。このような揚液作動のほかに、始動時には、羽根車3により翼室2内の自吸液(搬送液)を気液分離路6を通して翼室2内に戻して循環させながら気液分離する自吸作動を行う。すなわち、この自吸作動時には、翼室2内の自吸液が主孔11から導出口9へ噴出されて内孔14の内周面に沿った主渦流が発生するとともに、その主渦流よりも上流側で翼室2内の自吸液が副孔12から導出路10へ噴出されて内孔13の内周面に沿った副渦流が発生し、その副渦流の回転向きXRは主渦流の回転向きXFに対し逆向きに設定されている。気液分離路6において副渦流は主渦流の下方領域Sに対し交差する。サイクロン効果によりこの主渦流から空気が吐出路7へ抜けるとともに、この主渦流は副孔12の付近まで下がった後に副渦流に衝突して減衰される。一方、停止時に、吸込路15においては、まず翼室2や吸込室16内の搬送液が吸込口17を通って供給室18から逆流し、その逆流に伴い真空度が破壊されて生じた空気が第二の連通口22から貯液室20に流入するとともに、その空気の圧力により、呼び水として貯液室20に残った貯液が第一の連通口21から吸込室16を通って翼室2に戻る。
【0019】
従って、本実施形態では、吸込路15において搬送液が供給室18から逆流した際に主に吸込室16や翼室2の搬送液が吸込口17から逆流し、吸込室16に対し隔壁19により区画した貯液室20の搬送液が逆流しにくくなり、貯液室20に搬送液が残り易くなるとともに、貯液室20に残った貯液が第一の連通口21から吸込室16を通って翼室2に戻り易くなり、吸込室16や翼室2に呼び水を確保し易くなる。また、本実施形態では、副孔12からの副渦流により主渦流を減衰させる減衰手段が簡単になって気液分離路6内の形状が簡単になるとともに、その減衰手段の形成作業が容易になり、副渦流による主渦流の減衰効果を高めることができる。
【0020】
前記実施形態では、貯液室20の第一の連通口21が吸込室16に連通するとともに貯液室20の第二の連通口22が供給室18に連通しているが、貯液室20の第一の連通口21を翼室2に連通させたり、貯液室20の第二の連通口22を吸込室16に連通させたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態にかかる非容積形ポンプを正面側から見た部分断面図である。
【図2】(a)は図1のA−A線部分断面図であり、(b)は図1のB−B線部分断面図である。
【図3】本実施形態にかかる非容積形ポンプを側面側から見た部分断面図である。
【図4】(a)は図3のC−C線部分断面図であり、(b)は図3のD−D線部分断面図である。
【符号の説明】
【0022】
2…翼室、3…羽根車、7…吐出路、15…吸込路、16…吸込室、17…吸込口、18…供給室、19…隔壁、20…貯液室、21…第一の連通口、22…第二の連通口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼室内の羽根車により吸込路から翼室へ吸入された搬送液を翼室から吐出路へ吐出する揚液作動のほかに、呼び水作用を行うことができる非容積形ポンプにおいて、前記吸込路には、翼室に搬送液を吸入する供給経路のほかに、この供給経路に対し隔壁により区画されて翼室に貯液を呼び水として供給する貯液室を備えたことを特徴とする非容積形ポンプ。
【請求項2】
翼室内の羽根車により吸込路から翼室へ吸入された搬送液を翼室から吐出路へ吐出する揚液作動のほかに、呼び水作用を行うことができる非容積形ポンプにおいて、前記吸込路は、翼室に面する吸込室と、この吸込室に対し隔壁により区画されて第一の連通口を介して連通する貯液室と、この吸込室に対し吸込口を介して連通するとともにこの貯液室に対し第二の連通口を介して連通する供給室とを備えていることを特徴とする非容積形ポンプ。
【請求項3】
前記第二の連通口における開口面積は前記吸込口における開口面積よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の非容積形ポンプ。
【請求項4】
前記第一の連通口における開口面積は前記第二の連通口における開口面積よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の非容積形ポンプ。
【請求項5】
前記吸込路において、搬送液が供給室から逆流した状態で、第二の連通口から貯液室に流入した空気の圧力により、呼び水として貯液室に残った貯液が第一の連通口から吸込室を通って翼室に戻ることを特徴とする請求項2または請求項3または請求項4に記載の非容積形ポンプ。
【請求項6】
羽根車により翼室内の自吸液を循環させながら気液分離する自吸作動を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれかの請求項に記載の非容積形ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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