説明

非対称アントラセン誘導体の製造方法及びこれを用いた有機電界発光素子

本発明は、非対称アントラセン誘導体の新規な製造方法を提供する。より詳しくは、2番炭素がアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基で置換されていると共に、9番及び10番炭素がそれぞれアリール基又はヘテロアリール基で置換されたアントラセン誘導体を高い収率で製造することができる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称アントラセン誘導体の新規な製造方法及びこれを用いた有機発光ダイオード素子の製造に関する。より詳しくは、2番炭素がアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基で置換されていると共に、9番及び10番炭素がそれぞれアリール基又はヘテロアリール基で置換されたアントラセン誘導体を高い収率で製造し、これを発光材料又は正孔注入及び伝達材料又は電子伝達及び注入材料として使用することにより、高効率と長寿命を有するOLED材料を開発することを目指している。
【背景技術】
【0002】
アントラセンは、1960年代から有機発光素子の有機物層を構成し得る重要な化学構造として知られている。アントラセンは、発光効率、寿命性能、色純度などにおいて比較的良好な効果が得られるが、まだ改善の余地があり、このため、様々な研究が行われている。
【0003】
例えば、アントラセンをITO基板に蒸着させると、その形成された薄膜は、容易に結晶化する傾向が示される。この問題を解決すため、アントラセンの2番炭素の位置に置換基を導入し、アントラセンの対称性を防ぎ、アントラセンの結晶化を防止することにより、膜特性を向上させる方法が提示されている。
【0004】
また、アントラセンの9番及び10番炭素の位置にアリール基を置換することで、電気的特性を向上させる方法が提示された。さらに、前記9番及び10番炭素の位置にそれぞれ異なるアリール基を置換し、分子内双極子モーメントを増加させることで、電気的特性をさらに向上させる方法が提示されている。
【0005】
有機発光素子の発光効率、寿命性能及び色純度を高くするため、2番炭素がアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基で置換されていると共に、9番及び10番炭素がそれぞれアリール基又はヘテロアリール基で置換されたアントラセン誘導体に対する開発が求められ、特に経済性面から、前記アントラセン誘導体を高い収率で製造する方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、2番炭素がアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基で置換されていると共に、9番及び10番炭素がそれぞれアリール基又はヘテロアリール基で置換されたアントラセン誘導体を高い収率で製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アントラセン誘導体の製造方法において、
(a)化1で示される化合物と化2で示される化合物とを反応させて、化3で示される化合物を形成するステップ、
(b)化3で示される化合物の環化反応によって、化4で示される化合物を形成するステップ、及び
(c)化4で示される化合物のアントラセンの10番炭素の位置にアリール基を置換させるステップ、
を含む化5で示されるアントラセン誘導体を製造する方法を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
【化5】

【0013】
式中、Zは、MgX(Xはハロゲンである)、Li又はNaであり、Rは、C〜C30のアルキル基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基又はC〜C30のヘテロアリール基であり、Arは、C〜C30のアリール基又はC〜C30のヘテロアリール基であり、
前記アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル、炭素数2〜30のアルケニル、炭素数2〜30のアルキニル、炭素数5〜30のアリール、炭素数5〜30のヘテロアリール、炭素数5〜30のアリールオキシ、炭素数1〜30のアルキルオキシ、炭素数5〜30のアリールアミノ、炭素数5〜30のジアリールアミノ、炭素数5〜30のアリールアルキル、炭素数5〜30のシクロアルキル、炭素数5〜30のヘテロシクロアルキル及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つで置換されるものであることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた発光性能を発揮できるアントラセン誘導体を高い収率で製造することができるので、有機発光素子を開発するにあたって経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1のCpd1アントラセン誘導体に対するNMR分析結果を示す図である。
【図2】実施例2のCpd2アントラセン誘導体に対するNMR分析結果を示す図である。
【図3】実施例13のCpd13アントラセン誘導体に対するNMR分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明が提供しようとする化合物は、2番炭素がアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基で置換されていると共に、9番及び10番炭素がそれぞれアリール基又はヘテロアリール基で置換されたアントラセン誘導体(以下「目的のアントラセン誘導体」という)であって、化6で示すことができる。
【0017】
【化6】

【0018】
式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、C〜C30のアリール基又はC〜C30のヘテロアリール基であり、Rは、C〜C30のアルキル基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基又はC〜C30のヘテロアリール基であり、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン原子、C〜C30のアルキル基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のアルコキシ基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基及びC〜C30のヘテロアリール基からなる群から選択されるものである。なお、Arは、−Ph−Rの構造を有するもので、Arとは異なるアリール基又はヘテロアリール基であることが好ましい。
【0019】
一方、目的のアントラセン誘導体を製造するため、従来は、アントラセンの2番炭素をアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換した後、9番炭素、10番炭素をアリール基又はヘテロアリール基に順次置換する方法をとっている。しかし、この場合、アントラセンの希望の炭素に希望の置換基を選択的に置換することは難しいので、その収率が低下するという問題点があった。特に、アントラセンの2番炭素に置換基を導入するステップ、及びアントラセンの9番炭素にアリール基又はヘテロアリール基を置換するステップにおいて、その選択性が劣るため、異性体が形成されることがあり、このような異性体は、分離が難しいという問題点を持っている。
【0020】
本発明は、2番及び9番炭素を順次置換するステップを行うことなく、1つのステップで、2番炭素がアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール又はヘテロアリール基で置換され、9番炭素がアリール基又はヘテロアリール基で置換されたアントラセン誘導体を形成することにより、目的のアントラセン誘導体の収率を高くすることに特徴がある。
本発明に係るアントラセン誘導体の製造方法は、下記の反応式1で示すことができる。
[反応式1]
【0021】
【化7】

【0022】
上記の(a)は、化1の化合物と化2の化合物とを反応させることで化3の化合物を形成するステップであって、化1の化合物と化2の化合物とは、1:1〜1:10のモル当量比、好ましくは、1:2のモル当量比で使用される。
前記化2の化合物は、目的のアントラセン誘導体の2番炭素に置換しようとするアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同様なアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基をRとして含む化合物である。
【0023】
上記のステップ(a)は、0〜50℃の温度下で1〜60時間かけて行われ、当業界で周知の不活性溶媒下で行うことができる。この不活性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で又は混合して使用することができる。
【0024】
また、上記の(b)は、化3の化合物を環化させることで化4の化合物を形成するステップである。本発明では、このようなステップ(b)によって、2番及び9番炭素を順次置換することなく、2番炭素にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が置換され、9番炭素にアリール基又はヘテロアリール基が置換されたアントラセン誘導体を形成することができ、この場合、異性体が形成されることがない。
【0025】
前記環化反応は、当業界で周知の方法を適用することができる。例えば、まず、化3の化合物を無水酢酸又はアセチルハライドと反応させてアセチル化し、次に、酸の存在下で反応させることで、2番の位置と9番の位置が選択的に置換されたアントラセン誘導体を製造することができるが、これに限定されない。
上記の(c)は、化4の化合物の10番炭素にアリール基(Ar)を置換させるステップであって、当業界で周知のカップリング反応で行うことができる。より具体的には、化4で示される化合物の10番炭素の位置にハロゲンを置換した後、スズキカップリング反応により、化5で示される化合物を形成することができる。
【0026】
前記ハロゲン化反応においては、当業界で周知のハロゲン剤を使用することができ、例えば、ハロスクシンイミド(化7)、ハロゲン(F、Cl、Br、I)などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、前記ハロゲン化剤は、化4の化合物に対して、0.8〜10モル当量、好ましくは、1〜5モル当量で使用される。
【0027】
【化8】

【0028】
式中、Xは、ハロゲンであり、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される。
前記ハロゲン化反応は、0〜200℃、好ましくは、20〜120℃の温度で、1〜24時間かけて行われ、不活性溶媒の存在下で行うことができる。前記不活性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン、水などが挙げられ、これらは、単独で又は混合して使用されることができる。
【0029】
また、スズキカップリング反応は、当業界で周知の方法で行うことができ、スズキカップリング剤としては、化学式Ar−B(OH)のアリール−ボロン酸が使用されることができる。
前記スズキカップリング反応は、一般に、常圧下で、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気下で行われるが、必要に応じて加圧の条件下で行うこともできる。また、前記スズキカップリング反応は、15〜300℃、好ましくは、30〜200℃の温度で1〜48時間かけて行うことができる。
【0030】
前記スズキカップリング反応の反応溶媒としては、水、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。これらは、単独で又は混合して使用されることができる。
【0031】
前記スズキカップリング反応に使用される塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、メトキシナトリウム、t−ブトキシカリウム、t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシリチウムなどが挙げられる。
【0032】
また、スズキカップリング反応に使用可能な触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムなどのパラジウム触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケルなどのニッケル触媒などが挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]目的のアントラセン誘導体(Cpd1)の製造
実施例1−1
【0035】
【化9】

【0036】
3Lの丸底フラスコに、フタルジアルデヒド50g(0.37mol)とテトラヒドロフラン1Lとを入れて攪拌した後、4−ビフェニルマグネシウムブロミド1L(1.5M in THF、1.5mol)を常温で滴下した。前記反応混合物を常温で1時間攪拌した後、アンモニウムクロリド水溶液を用いて反応を終結させた。前記反応液をエチルアセテートで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を濃縮した。
実施例1−2
【0037】
【化10】

【0038】
上記の実施例1−1で得られた化合物にメチレンクロリド1Lを入れて攪拌した。ここに、トリエチルアミン309mL(2.22mol)、無水酢酸140mL(1.48mol)及びジメチルアミノピリジン9g(0.074mol)を投入し、1時間攪拌した。次いで、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて反応を終結させ、メチレンクロリド層を抽出した。これを、硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒をろ過濃縮した後、メチレンクロリドとヘキサンを用いて再結晶し、白色固体のジアセタート化合物155g(収率80%)を得た。
1H NMR (CDCl3): δ2.02(s), 2.08(s), 7.15-7.51(m); HRMS for C36H30O4Na [M+Na]+: calcd 549, found 549.
【0039】
メチレンクロリド4Lに、上記で得られたジアセタート150g(0.28mol)及びトリフルオロメタンスルホン酸4mL(0.056mol)を投入した後、10分間常温で攪拌し、これをシリカゲルでろ過した。ろ液を濃縮した後、メタノール−メチレンクロリド溶液で再結晶し、黄色固体114g(収率82%)を得た。
1H NMR (CDCl3): δ7.25-7.60(m, 12H), 7.69-7.80(m, 6H), 7.95(s, 1H), 8.00(d, 1H), 8.07(d, 1H), 8.46(s, 1H); HRMS for C32H22 [M]+: calcd 406, found 406.
実施例1−3
【0040】
【化11】

【0041】
ジメチルホルムアミド1Lに、上記の実施例1−2で得られた黄色固体110g(0.27mol)及びN−ブロモスクシンイミド48g(0.27mol)を投入し、60℃で5時間攪拌した後、常温に冷やした。反応溶液をシリカゲルでろ過し、濃縮した後、真空下で乾燥させ、化合物を得た。
上記で得られた化合物を窒素雰囲気下でトルエン1Lに溶解させた後、ここに、2−ナフタレニルボロン酸51.6g(0.3mol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム9.3g(8.1mmol)、炭酸ナトリウム31.4g(0.3mol)、水300mLを投入した。この反応混合物を3時間かけて還流攪拌を行った。反応溶液を約60℃に冷やし、シリカゲルでろ過した後、トルエン層を抽出した。その抽出液を濃縮して有機溶媒を除去し、メタノールを加え、固体を生成させた。この固体をろ過して黄褐色のものを得た。これをメチレンクロリドで溶解させた後、メタノールを少しずつ加え、淡いクリーム色固体のアントラセン誘導体Cpd1 122g(収率58%)を得た。
このアントラセン誘導体を質量分析及びNMR(図1参照)などによって同定した。
C42H28に対する成分分析: calcd C 94.70, H 5.30, found C 94.90, H 5.10; HRMS for C42H28 [M]+: calcd 532, found 532.
【0042】
[実施例2〜24]目的のアントラセン誘導体(Cpd2〜Cpd24)の製造
上記の実施例1−1の4−ビフェニルマグネシウムブロミドと実施例1−3の2−ナフタレニルボロンと酸を、下記の表1に記載の通りに変化させた以外は、実施例1と同様にしてCpd2〜Cpd24のアントラセン誘導体を製造した。
【0043】
【表1−1】

【0044】
【表1−2】

【0045】
【表1−3】

【0046】
【表1−4】

【0047】
【表1−5】

【0048】
【表1−6】

【0049】
【表1−7】

【0050】
【表1−8】

【0051】
上記において、一部のアントラセン誘導体、実施例2のCpd2及び実施例13のCpd13に対してNMR分析を行った。その結果をそれぞれ図2及び図3に示す。
【0052】
[実験例1]有機電界発光素子の性能評価
次のような方法で有機電界発光素子を製造した。
用意したITO(インジウムスズ酸化物;陽極)上にDS−205(DOOSAN社製)を800Åの厚さで熱真空蒸着を行うことで正孔注入層を形成し、この正孔注入層の上にNPB(N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N−ジフェニルベンジジン)を150Åの厚さで真空蒸着することで正孔輸送層を形成した。上記の実施例1〜24で製造されたCpd1〜Cpd24のアントラセン誘導体のそれぞれに、下記の化8で示される化合物を5%ドープし、これを前記正孔輸送層の上に300Åの厚さで真空蒸着して発光層を形成し、この発光層の上に電子輸送物質であるAlqを250Åの厚さで真空蒸着した。次に、電子注入物質であるLiFを10Åの厚さで蒸着し、アルミニウム(陰極)を2000Åの厚さで真空蒸着することで有機発光素子を製作した。
【0053】
【化12】

【0054】
上記で製造された有機発光素子のそれぞれに対して、電流密度10mA/cm2における発光効率を測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0055】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によって製造されたアントラセン誘導体を有機発光素子の発光ホストとして使用した場合は、いずれも高い輝度を示した。特に、実施例2では、駆動電圧が低く、輝度が高いだけでなく、9000nitにおいて、輝度10%の減少に200時間がかかり、優れた寿命性能が得られた。この寿命性能は、TNAを有機発光素子の発光ホストとして使用する時、9000nitにおいて輝度10%の減少に180時間がかかっている従来のものに比べて同等以上の効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記の化1で示される化合物と下記の化2で示される化合物とを反応させて、下記の化3で示される化合物を形成するステップ、
(b)化3で示される化合物の環化反応によって、下記の化4で示される化合物を形成するステップ、及び
(c)化4で示される化合物のアントラセンの10番炭素の位置にアリール基を置換させるステップ、
を含む化5で示されるアントラセン誘導体の製造方法:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(式中、Zは、MgX(Xはハロゲンである)、Li又はNaであり、Rは、C〜C30のアルキル基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基又はC〜C30のヘテロアリール基であり、Arは、C〜C30のアリール基又はC〜C30のヘテロアリール基であり、
前記アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル、炭素数2〜30のアルケニル、炭素数2〜30のアルキニル、炭素数5〜30のアリール、炭素数5〜30のヘテロアリール、炭素数5〜30のアリールオキシ、炭素数1〜30のアルキルオキシ、炭素数5〜30のアリールアミノ、炭素数5〜30のジアリールアミノ、炭素数5〜30のアリールアルキル、炭素数5〜30のシクロアルキル、炭素数5〜30のヘテロシクロアルキル及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つで置換されるものであることができる)。
【請求項2】
前記ステップ(b)では、化3で示される化合物をアセチル化した後、環化反応を行うことを特徴とする請求項1に記載のアントラセン誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(c)では、化4で示される化合物のアントラセンの10番炭素の位置にハロゲンを置換した後、Ar−B(OH)の化合物とスズキカップリング反応を行うことにより、化5で示される化合物を形成することを特徴とする請求項1に記載のアントラセン誘導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−519970(P2011−519970A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509410(P2011−509410)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002550
【国際公開番号】WO2009/139579
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(507299367)ドゥサン コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】