説明

非常時用給水システム

【課題】
非常用の水として水道水をタンクで保存すると、水道水中の残留塩素が蒸発してしまい水中で雑菌が繁殖するため、やがて飲めなくなる。
【解決手段】
タンク頂部の気相部を小さな容積にしぼり残留塩素の蒸発を最小限に抑え、そこに取付けた通気口から入って来る雑菌は紫外線灯で殺菌し、水中に菌を持込ませず。残留塩素を分解する作用を持つ紫外線が水中に入らないよう水面付近に遮光ガラリを取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、震災時などの非常時の緊急用の飲料水を確保するための非常時用給水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非常時に使用できる飲料水の確保は、予め貯水タンクに飲料水を確保しておくと良いことは言うまでもない。しかし単に飲料水を貯蔵したとしても、貯蔵期間中に細菌や微生物の繁殖があり、適宜な衛生安全性確保が必要である。
従前からの衛生安全性確保手段として、水道供給管路の途中に貯水タンクを設け、通常の水道供給を行いながら常に新鮮な飲料水を溜めておくという考え方が提案されている。しかし、タンクは埋設される上に6kg/cm2程度の圧力が直接加わるため、強い強度が必要で、しかも水道管の出入口が接続されているため、災害時管路が損傷した時にタンク内の貯溜水が流出しないように出入口に非常用遮断弁を設置しなければならない等、非常にコスト高となり、あまり採用が進んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−087215号公報
【特許文献2】特開平08−319642号公報
【特許文献3】特開平9−276435号公報
【特許文献4】特開平09−27644号公報
【特許文献5】特開平10−101185号公報
【特許文献6】特開平11−303156号公報
【特許文献7】特開2008−1754040号公報
【特許文献8】特開2008−240455号公報
【特許文献9】登録実用新案第3022527号公報
【特許文献10】特許第2887137号公報
【特許文献11】特願2009−123746号公報
【特許文献12】実全昭58−116597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯水タンクに飲料水を貯蔵しておき、非常時に貯溜水を殺菌や濾過して飲料水として使用する手法は、基本的にランニングコストを要しないので、各公共団体では設置し易い非常要施設である。然し濾過手段は、多数の濾過機自体が市販されているが、濾過装置のみによる場合は、雑菌や大腸菌をカットしようとすると目の細かなフィルターを用いなければならず、濾過するためには高い水圧で押さなければならないため動力が必要となる。つまり、濾過機自体に駆動源(例えばガソリンエンジン)を備える必要があり、操作の煩雑さは免れない。更にはまた燃料が残存していない場合や、他の動力源(電力等)がない場合等の使用も困難となる。
【0005】
殺菌処理は使用量を誤ると劇薬にもなる塩素剤を非常時の混乱時に使用する事は非常に危険である。又、殺菌剤添加後の殺菌効果が発揮されるまで攪拌した後、数時間放置する必要がある。
【0006】
そこで本発明は、単純な設備で非常時の飲料水の確保を実現し、更にその構成によっては、特別な駆動源を備えていなくとも、少なくとも全て人力のみで動作せしめることを可能とした非常時用給水システムを想定したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
タンクには水道水を投入するため、水道水中に含まれる残留塩素を出来るだけ減らさないようにすれば、低コストで菌の繁殖を抑える事が出来る。残留塩素が減る原因は蒸発と菌の持込みによると考えられ、タンクに雑菌が通気口から持込まれると菌を殺菌するために残留塩素が消費されてしまう。そこで、通気口を通して外気から持込まれる雑菌をその入口で殺菌してしまう必要がある。つまり、タンク頂部の気相部を小さな容積にしぼり、残留塩素の水面からの蒸発を最小限に抑え、そこに常時閉止型通気口を設けて外部への拡散を抑えると共に紫外線殺菌灯を取付けて、流入空気の殺菌を行う。しかし、紫外線は残留塩素を分解する作用があるため、そのままでは光がタンク内の水中に伝わって水中に含まれる残留塩素を分解してしまう。これを防止するため、水面上もしくは、水面近くに遮光ガラリを取付けて光が水中に伝わらないようにする。それでも残留塩素は少しずつ消費されていくため、消費された残留塩素不足分は、水道水を残留塩素は取らない除菌フィルターを通して間欠補給水することで最小限補い残留塩素を長期間一定濃度以上に保ち、水の衛生性を保ちながら備蓄することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、水道水中に含まれる残留塩素を減らさずに長期間維持できるため、使用量を誤ると劇薬になる塩素剤を使わずに、且つ設備が簡単でランニングコストもあまりかからずに衛生的な水を長期間備蓄することが出来る。又、災害時には待ち時間なしに飲むことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の全体の構成を示す説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施形態について説明する。
貯水タンク部1は、タンク本体11を適宜な土台上に設置してあり、内部は水道水を充満してある。補給水部2は、補給水管21、補給水電磁弁22、補給水フィルター23からなり、タンクへ水道水を補給水フィルター23を通して、定期的に電磁弁22を開閉して補給する。常時閉止型通気口部3は、常時閉止型通気口31をタンク頂部のマンホールも兼ねた気相部7に開口させ取付けてあり、タンクへ外気の導入を出来るだけ制限している。(常時閉止型通気口は正圧及び負圧に対し一定圧力までは開かない構造のものをいう。)オーバーフロー部4は、タンク本体頂部にオーバーフロー管41を開口させオーバーフロー電磁弁42、トラップ43を取付けてある。オーバーフロー電磁弁42は、補給水電磁弁と連動、開閉させてタンク内の水を排水する役目を持ち、新しい水と入れ換える。給水部5は、給水元弁51に蛇口52を取り付けて災害時には即時給水を開始出来る。
気相部7には、殺菌部6があり、気相部(マンホール)天井に殺菌灯61と遮光ガラリ62が取付けてあり、通気口31から入って来た外気に含まれる雑菌を紫外線で即座に殺菌する。紫外線は残留塩素を分解してしまう作用があるため、水面もしくは水面近くに遮光ガラリ62を設けて、紫外線がタンク内部の水に投射されるのを防止する。
さらに、気相部7には断熱保温8を行い、内部の空気が太陽熱で膨張収縮して通気口を開閉させるのを防止する。
【符号の説明】
【0011】
1 貯水タンク部
11 タンク本体
2 補給水部
21 補給水管
22 補給水電磁弁
23 補給水フィルター(残留塩素は取らない除菌フィルター)
3 常時閉止型通気口部
31 常時閉止型通気口
4 オーバーフロー部
41 オーバーフロー管
42 オーバーフロー電磁弁
43 オーバーフロートラップ
5 給水部
51 給水元弁
52 蛇口
6 殺菌部
61 殺菌灯
62 遮光ガラリ
7 マンホールを兼ねたタンク気相部
8 保温材


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンク頂部の気相部を小さくしぼり、この気相部に補給水口と通気口と紫外線灯と水面上もしくは水面近くに遮光ガラリを設け、紫外線でタンク内の水中に含まれる残留塩素を減らすことなく、通気口から空気と共に入って来た雑菌を紫外線灯で即座に殺菌し、水中に生きた菌を持込ませない事を特長とした飲料水非常時用給水システム。
【請求項2】
タンクへの水道水補給水管に補給水電磁弁、オーバーフロー管にオーバーフロー電磁弁を設け、タイマー等により定期的にタンクに補給水及びオーバーフロー排水を行い、タンク内の水を消費された残留塩素分に相当する水道水で入れ換えて、水中に含まれる残留塩素を補充するようにした請求項1記載の非常用給水システム。




































【図1】
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【公開番号】特開2011−74730(P2011−74730A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230097(P2009−230097)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(500546673)株式会社小笠原工業所 (5)
【Fターム(参考)】