説明

非平面形状試料の複屈折測定装置

【課題】レンズ等の非平面形状の測定試料の複屈折特性を測定可能な複屈折測定装置を提供する。
【解決手段】光源2から発せられた光ビームを偏光子3を経由させて非平面形状の測定試料7の所望の位置に入射させる。測定試料7からの光ビームBの出射角度に応じて、検光子16および検知器17の位置および角度を変化可能とすることにより、測定試料7によって光ビームが大きく屈折しても、測定試料7を透過した光ビームBを検光子16を介して検知器17に適正に入射させることができるので、非平面形状の測定試料7の複屈折特性を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定試料の複屈折特性を測定する複屈折測定装置、特に非平面形状の測定試料の複屈折特性を測定可能な非平面形状試料の複屈折測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光弾性変調法、回転検光子法、液晶位相変調法、クロスニコル等を用いて測定試料の複屈折特性を測定する複屈折測定装置は、従来より多数開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−504673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に従来の複屈折測定装置においては、測定試料を透過した光ビームを検知器で受光する装置構成となっているため、測定試料が例えばレンズのような非平面形状であると、試料の入射角度と出射角度によっては光ビームが大きく屈折してしまい、検知器に入射できないことから、非平面形状の測定試料の複屈折特性の測定は不可能であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、非平面形状の測定試料の複屈折特性を測定可能な非平面形状試料の複屈折測定装置を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による非平面形状試料の複屈折測定装置は、
非平面形状の測定試料の複屈折特性を測定する非平面形状試料の複屈折測定装置であって、
光ビームを発する光源と、
前記光源からの光ビームを偏光とする偏光子と、
前記測定試料をセットされ、該測定試料の所望位置に前記偏光子を経由した光ビームが入射するように該測定試料の位置を変化させることができる試料ステージと、
前記測定試料への入射光ビームおよび前記試料ステージにセットされた前記測定試料に対し位置を可変、かつ傾斜角度を可変に支持された検光子と、
前記測定試料への入射光ビームおよび前記試料ステージにセットされた前記測定試料に対し位置を可変、かつ傾斜角度を可変に支持されており、前記測定試料から出射された光ビームを前記検光子を介して入射されると、該光を信号に変換する検知器とを有してなるものである。
【0008】
本発明においては、測定試料からの光ビームの出射角度に応じて、測定試料に対し検光子および検知器の位置および角度を変化することにより、測定試料によって光ビームが大きく屈折しても、測定試料を透過した光ビームを検知器に適正に入射させることができるので、非平面形状の測定試料の複屈折特性をも測定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非平面形状試料の複屈折測定装置は、非平面形状の測定試料の複屈折特性を測定できる等の優れた効果を得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による非平面形状試料の複屈折測定装置の実施例1の構成を簡略化して斜視図風に示した概略構成図である。
【図2】前記実施例1において、測定試料に対する変調光ビームの入射位置が変えられたとき、検光子および検知器の位置および角度がそれに追従する様子を示す説明図である(測定試料は凸レンズとされている)。
【図3】前記実施例1において、検知器の出力に基づき複屈折特性の演算並びに検光子および検知器の位置および角度の制御を行う部分のブロック図である。
【図4】前記実施例1において、測定試料が凹レンズである場合の、測定試料に対する変調光ビームの入射位置が変えられたとき、検光子および検知器の位置および角度がそれに追従する様子を示す説明図である。
【図5】本発明による非平面形状試料の複屈折測定装置の実施例2の構成を簡略化して斜視図風に示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜4は、本発明による非平面形状試料の複屈折測定装置の実施例1を示しており、本実施例は光弾性変調器(PEM)を使用して偏光を変調する光弾性変調法を用いた複屈折測定装置に本発明を適用した例である。
【0013】
筺体1(部分的にのみ示している)内には次のような構成が収容されている。レーザー光源等の光源2から鉛直方向下向きに発せられた光ビームは偏光子3に入射され、直線偏光とされた後、光弾性変調器(PEM)4に入射されるようになっている。前記光弾性変調器4から出力された変調された円偏光である変調光ビームAは、試料ステージ5のホルダ6(図1では図示を省略、図2,4参照)にセットされた透明な測定試料7に入射されるようになっている。
【0014】
前記試料ステージ5は、XY移動装置8と回転装置9とを有している。前記XY移動装置8は、水平面(光源2から発せられる光ビームに対し垂直な面)上の互いに直交する2方向であるX方向およびY方向の移動を実現できるようになっている。すなわち、前記XY移動装置8は、Y方向に移動可能なY方向移動部10と、このY方向移動部10をY方向に駆動するY方向駆動装置11と、前記Y方向移動部10上に搭載されており、X方向に移動可能なX方向移動部12と、このX方向移動部12をX方向に駆動するX方向駆動装置13とを有している。前記回転装置9は、X方向移動部12上に搭載されており、鉛直方向に延びる回転軸14a周りに回転可能な回転台14と、この回転台14を回転駆動させる回転駆動装置15とを有してなる。前記ホルダ6は回転台14に取り付けられていて、測定試料7を支持するようになっている。このような構成を有することにより、前記試料ステージ5は、ホルダ6に支持された測定試料7をX方向およびY方向に移動できるとともに、鉛直な回転軸14a周りに回転させることができるようになっている。
【0015】
前記測定試料7から出射された楕円偏光ビームBは、検光子16を介して検知器17に入射されるようになっている。前記検光子16および検知器17は、X方向に移動可能とされた受光部支持部18に、Y方向に延びる回転軸周りに一体的に回動可能に支持されている。前記受光部支持部18は受光部位置駆動装置19によりX方向に駆動されるようになっている。前記検光子16および検知器17は、受光部角度駆動装置20により、受光部支持部18に対し、Y方向に延びる回転軸周りに一体的に回転駆動されるようになっている。このような構成により、検光子16および検知器17は、測定試料7に入射される変調光ビームAおよびホルダ6に支持されることにより試料ステージ5にセットされた測定試料7に対し位置を可変、かつ傾斜角度を可変であって、受光部位置駆動装置19により所望の位置に移動できるとともに受光部角度駆動装置20により所望の角度に傾斜できるようになっている。
【0016】
前記検知器17は、検光子16を介して入射された光を電気信号に変換する。図3に示されるように、前記検知器17の出力は、ロックインアンプ21を介しておよび演算回路24を介して、コンピュータ22に入力されるようになっている。前記コンピュータ22は、ロックインアンプ21および演算回路24を介して入力される検知器17の出力から測定試料7の複屈折特性および透過率を演算する複屈折特性および透過率演算処理装置として機能する(この機能は従来装置と同様である)のに加えて、検知器17の出力から受光部位置駆動装置19および受光部角度駆動装置20を介して検光子16および検知器17の位置および角度を制御する受光部制御装置としても機能できるようになっている。
【0017】
次に、本測定装置による複屈折特性の測定方法を説明する。
【0018】
測定試料7(図1および2は、測定試料7が凸レンズである場合を示している)を、その光軸を試料ステージ5の回転台14の回転軸14aに合致させるようにして、試料ステージ5のホルダ6に支持させた後、XY移動装置8のX方向駆動装置13およびY方向駆動装置11を駆動することにより、回転台14およびホルダ6とともに測定試料7をX方向およびY方向に移動し、測定試料7の所望の位置(点)に光弾性変調器4から出力された変調光ビームAが入射されるようにする。
【0019】
すると、コンピュータ22は、検知器17の受光量が最大となるように、受光部位置駆動装置19および受光部角度駆動装置20を駆動して、検光子16および検知器17の位置および角度を変化させる。これにより、測定試料7から出射された光ビームBが検光子16を介して検知器17の受光中心位置に垂直に入射するように、光ビームBの出射角度に検光子16および検知器17の位置および角度が追従する。図2は、この追従の様子を示したもので、光弾性変調器4から出力された変調光ビームAがそれぞれ測定試料7の光軸(回転台14の回転軸14a)から半径R1,R2,Rnの位置において測定試料7に入射されたとき、測定試料7から出射された光ビームBを検知器17が測定試料7の光軸からそれぞれ半径D1,D2,Dnの位置においてそれぞれ角度θ1,θ2,θn傾いた状態で受光する。
【0020】
円周方向の位置に関しては、回転駆動装置15を駆動し、回転台14およびホルダ6とともに測定試料7を回転させることにより、測定試料7の所望の円周方向位置に光弾性変調器4から出力された変調光ビームAが入射されるようにすることができる。
【0021】
そして、検知器17の出力を演算回路24およびコンピュータ22が従来と同様に演算することによって、各位置における測定試料7の複屈折特性および透過率を求めることができる。
【0022】
図4は、測定試料7を凹レンズとした場合の、測定試料7に対する変調光ビームAの入射位置が変えられたとき、検光子16および検知器17の位置および角度がそれに追従する様子を示したものである。
【0023】
なお、上述のような複屈折特性の測定は、X方向駆動装置13、Y方向駆動装置11および回転駆動装置15を非連続的に駆動して、測定試料7上の離散した位置において行うこともできるし、測定試料7をXY方向または(および)回転方向に連続的に移動しながら測定することにより、測定試料7上の連続した位置において行うこともできる。
【0024】
また、前記実施例においては、検知器17の受光量が最大になるように制御することにより、測定試料7からの光ビームBの出射角度に検光子16および検知器17の位置および角度を追従させているが、測定試料7の形状および材質が既知で、測定試料7への変調光ビームAの入射位置と測定試料7からの光ビームBの出射角度との関係が既知の場合は、前述のような受光量による追従動作を行わせることなく、検光子16および検知器17の位置および角度を変化させて測定を行うこともできる。
【0025】
以上のように本装置では、測定試料7からの光ビームBの出射角度に応じて、測定試料7に対し検光子16および検知器17の位置および角度を変化することにより、測定試料7によって光ビームが大きく屈折しても、測定試料7を透過した光ビームを検知器17に適正に入射させることができるので、非平面形状の測定試料7の複屈折特性を測定することができる。
【実施例2】
【0026】
図5は、本発明による非平面形状試料の複屈折測定装置の実施例2を示している。前記実施例1においては、測定試料7からの光ビームBの出射角度の変化に対応するために、検光子16および検知器17を直線方向であるX方向に移動可能としていたが、本実施例では、検光子16および検知器17が、Y方向に対し垂直な鉛直面内の円弧軌道23に沿って移動可能とされている。他の構成は実施例1と同様である。
【0027】
このように、本発明においては、測定試料7からの光ビームBの出射角度の変化に対応するために、検光子16および検知器17を円弧軌道等の曲線軌道上を移動可能としても、検光子16および検知器17を直線方向に移動可能する場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
なお、前記各実施例は、本発明を光弾性変調法を用いた複屈折測定装置に適用した例であるが、本発明は回転検光子法、液晶位相変調法、クロスニコル等の他の測定法を用いる複屈折測定装置にも適用できるものである。
【0029】
また、前記各実施例では、光学系を鉛直方向に配列しているが、本発明においては、光学系を水平方向や斜め方向に配列してもよい。
【0030】
また、前記各実施例では、コンピュータ22を、検知器17の出力に基づいて演算回路24とともに複屈折特性および透過率を演算する複屈折特性および透過率演算処理装置として使用するとともに、検知器17の受光量が最大となるように受光部位置駆動装置19および受光部角度駆動装置20を介して検光子16および検知器17の位置および角度を制御する受光部制御装置として使用しているが、本発明においては、前記複屈折特性および透過率演算処理装置並びに受光部制御装置として、それぞれコンピュータではなく、その他の電子回路を用いてもよい。
【0031】
また、前記各実施例では、単体のレンズを測定試料7としているが、本発明においては、組み合わせレンズを測定試料とすることもできるし、レンズ以外の単体の物体や複数組み合わされた物体を測定試料とすることもできる。
【0032】
さらに、前記各実施例では、測定試料7が回転体形状とされているが、本発明においては、測定試料は回転体形状でなくてもよい。さらに、本発明の複屈折測定装置は、平面状の測定試料の複屈折特性も測定できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように本発明による非平面形状試料の複屈折測定装置は、非平面形状の測定試料の複屈折特性を測定する測定装置として有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 筺体
2 光源
3 偏光子
4 光弾性変調器
5 試料ステージ
6 ホルダ
7 測定試料
8 XY移動装置
9 回転装置
10 Y方向移動部
11 Y方向駆動装置
12 X方向移動部
13 X方向駆動装置
14 回転台
15 回転駆動装置
16 検光子
17 検知器
18 受光部支持部
19 受光部位置駆動装置
20 受光部角度駆動装置
21 ロックインアンプ
22 コンピュータ(複屈折特性および透過率演算処理装置並びに受光部制御装置)
23 円弧軌道
24 演算回路
A 変調光ビーム(測定試料への入射光ビーム)
B 測定試料から出射された光ビーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平面形状の測定試料の複屈折特性を測定する非平面形状試料の複屈折測定装置であって、
光ビームを発する光源と、
前記光源からの光ビームを偏光とする偏光子と、
前記測定試料をセットされ、該測定試料の所望位置に前記偏光子を経由した光ビームが入射するように該測定試料の位置を変化させることができる試料ステージと、
前記測定試料への入射光ビームおよび前記試料ステージにセットされた前記測定試料に対し位置を可変、かつ傾斜角度を可変に支持された検光子と、
前記測定試料への入射光ビームおよび前記試料ステージにセットされた前記測定試料に対し位置を可変、かつ傾斜角度を可変に支持されており、前記測定試料から出射された光ビームを前記検光子を介して入射されると、該光を信号に変換する検知器とを有してなる非平面形状試料の複屈折測定装置。
【請求項2】
前記測定試料から出射された光ビームが前記検光子を介して前記検知器に入射するように前記検光子および前記検知器の位置を移動させることができる受光部位置駆動装置と、
前記測定試料から出射された光ビームが前記検知器に垂直に入射するように前記検光子および前記検知器の角度を変えることができる受光部角度駆動装置とを有する請求項1記載の非平面形状試料の複屈折測定装置。
【請求項3】
前記検知器に入射する受光量が最大となるように前記受光部位置駆動装置および前記受光部角度駆動装置を介して前記検光子および前記検知器の位置および角度を制御する受光部制御装置を有する請求項2記載の非平面形状試料の複屈折測定装置。
【請求項4】
前記試料ステージは、前記光源から出射される光ビームに対し垂直でかつ互いに直交する2つの直線方向に前記測定試料を移動可能、かつ前記光源から出射される光ビームに対し平行に延びる回転軸周りに前記測定試料を回転可能である請求項1乃至3のいずれかに記載の非平面形状試料の複屈折測定装置。
【請求項5】
前記検光子および前記検知器は、前記互いに直交する2つの直線方向のうちの1つの直線方向に移動可能とされている請求項4に記載の非平面形状試料の複屈折測定装置。
【請求項6】
前記検光子および前記検知器は、前記互いに直交する2つの直線方向のうちの1つの直線方向に対し垂直な平面内の曲線軌道に沿って移動可能とされている請求項4に記載の非平面形状試料の複屈折測定装置。
【請求項7】
光弾性変調法を用いて前記測定試料の複屈折特性を測定する複屈折測定装置であって、前記偏光子からの偏光ビームを変調する光弾性変調器を有し、この光弾性変調器により変調された変調光ビームが前記測定試料に入射されるようになっている請求項1乃至6のいずれかに記載の非平面形状試料の複屈折測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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