説明

非接触リーダライタ装置

【課題】車両に搭載されている非接触ICカードリーダライタの電源を、ドップラ効果を利用するマイクロ波センサがかざされた非接触ICカードを検知したときに、供給するようにしたことにより、非接触ICカードリーダライタが不使用時には電源がオフされ、使用時のみ電源がオンされる非接触リーダライタ装置を提供する。
【解決手段】非接触リーダライタ装置は、非接触ICカードに対し電波を放射するアンテナを有する非接触ICカードリーダライタを備えた非接触リーダライタ装置であって、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサを前記車両に搭載し、前記車両に接近する人体を該マイクロ波センサで検知したときに、前記非接触ICカードリーダライタへの電源を供給するようにしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触リーダライタ装置に関し、詳しくは非接触ICカードリーダライタを使用しないときには電源をオフ状態にしておき、非接触ICカードリーダライタに非接触ICカード若しくは非接触ICカードを保持する手がかざされたことを検出したときに非接触ICカードリーダライタの電源をオンにするドップラ効果を利用したマイクロ波センサを備えた非接触リーダライタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードは、簡易迅速に読み取りできる特性と読み取り機である非接触ICカードリーダライタのメンテナンス容易性から広範に使用されるようになってきている。例えば、交通機関のゲートパスや特定施設への入場パスとして採用されている。
しかし、ゲートに設置されている非接触ICカードリーダライタは、非接触ICカードを動作させるために常時磁界を発生させているため、無駄な電力を消費してしまうという問題がある。
【0003】
そこで、非接触ICカードリーダライタの待機時における電力消費を低減する目的で、非接触ICカード内に永久磁石のような磁気部材を埋設しておき、非接触ICカードリーダライタが読み取る際、検出部がこの永久磁石が発生する直流磁界を検出すると、磁気検出部のリードスイッチが感応してリーダライタ内のリードスイッチをオンにし、無線部が制御されて発振磁界が形成される。従って、磁気部材を備えたICカードが接近しないかぎり電力が供給されず無駄な電力が抑制される利点がある。
【0004】
また、物体を検出するものとして、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサが多く用いられてきた。このセンサの原理は、センサから電波を発射し、物体に当たり反射してきた電波と発射した電波を混合する。このときに物体がセンサに対して近づく或いは遠ざかる場合には、反射電波はドップラシフトを受け周波数が変化するため、発射電波と反射電波を混合すると、その周波数の差をビート信号として取り出している。
【0005】
【特許文献1】特開2001−243432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術で説明した非接触ICカードリーダライタにおいて、特に車両に搭載した非接触ICカードリーダライタにおいては、車両のバッテリーを利用して電源が供給されるため、例え車両のエンジンが停止しているときであっても、待機時でも500mW以上の電力を費やすことになり、バッテリーの充電電圧が消耗してしまうという問題がある。
【0007】
そのため、従来技術で説明した磁気部材をICカードに埋設しておくものを使用すると、車両外からICカードをかざすことで車両内に搭載されている非接触ICカードリーダライタの電源を投入することができるが、個々の非接触ICカードに磁石を埋め込む必要があるため、ICカードの製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【0008】
従って、車両に搭載されている非接触ICカードリーダライタが不使用時には電源をオフ状態にしておき、使用する人が車両に近づいてきて実際に非接触ICカードリーダライタを使用するときに車両内に搭載されている非接触ICカードリーダライタに電源が供給できるような装置に解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る非接触リーダライタ装置は、次に示す構成にすることである。
【0010】
(1)非接触リーダライタ装置は、非接触ICカードに対して電波を放射するアンテナを有する非接触ICカードリーダライタを備えた非接触リーダライタ装置であって、前記非接触ICカードリーダライタが設置されている近傍位置であって、前記非接触ICカードをかざして検知することができる位置に、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサを設置し、前記マイクロ波センサが前記非接触ICカードリーダライタにかざす前記非接触ICカード若しくは該非接触ICカードを保持する手を検知したときに、前記非接触ICカードリーダライタへの電源を供給するようにしたことである。
(2)非接触リーダライタ装置は、車両に搭載され且つ該車両の電源が供給される非接触ICカードリーダライタを備えた非接触リーダライタ装置であって、前記非接触ICカードリーダライタが設置されている近傍位置であって、非接触ICカードをかざして検知することができる位置に、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサを設置し、前記マイクロ波センサが前記非接触ICカードリーダライタにかざす前記非接触ICカード若しくは該非接触ICカードを保持する手を検知したときに、前記非接触ICカードリーダライタへの電源を供給するようにしたことである。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明に係る非接触リーダライタ装置は、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサを、非接触ICカードリーダライタの近傍位置に設置し、マイクロ波センサで非接触ICカードリーダライタにかざす非接触ICカード若しくは非接触ICカードを保持する手を検知したときに、非接触ICカードリーダライタへの電源を供給するようにしたことにより、非接触ICカードリーダライタが不使用時には電源がオフされ、使用時のみ電源がオンされる。そのため、非接触ICカードリーダライタの不使用時における無用な電力消費を抑制することができる。
【0012】
又、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサを車両に搭載した非接触ICカードリーダライタの近傍位置に設置し、マイクロ波センサで非接触ICカードリーダライタにかざす非接触ICカード若しくは非接触ICカードを保持する手を検知したときに、非接触ICカードリーダライタへの電源を供給するようにしたことにより、非接触ICカードリーダライタが不使用時には電源がオフされ、使用時のみ電源がオンされる。そのため、非接触ICカードリーダライタの不使用時における無用な電力消費が抑制され、特に車両のバッテリーの消耗を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係る非接触リーダライタ装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本発明に係る非接触リーダライタ装置11は、図1に示すように、移動体である車両に搭載された非接触ICカードリーダライタ12と、車両のバッテリー13からの電源を非接触ICカードリーダライタ12に供給する電源制御スイッチ14と、車両外での非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手の接近を検知するためのマイクロ波センサであるドップラセンサモジュール16と、非接触ICカード17とから大略構成されている。
【0015】
一般に、非接触ICカードリーダライタ12では、5Vから12V前後の直流電源を使用することが多く、消費電力は通信時と待機時で異なるが、待機時でも500mW以上の電力が必要とされる。従って、例えば、車両に搭載した場合には、終日待機電力が消費され、有限のバッテリー13に対して無視できない消費電力を費やすことになる。
【0016】
そこで、本願発明においては、車両に搭載される非接触型ICカードリーダライタ12において、不使用のとき、即ち、車両の外から手で持った非接触ICカード17をかざす行為を行う以外のときは非接触型ICカードリーダライタ12に供給されるバッテリー13からの電源を遮断させるようにしておけば不使用時における消費電力はゼロに近くなる。そして、手で持っている非接触ICカード17の接近を検知して電源を供給する制御をドップラ効果を利用したマイクロ波センサを使用することで、消費電力を極めて少なくすることができ、車両に搭載してもバッテリー13に与える影響は皆無に等しい。
【0017】
非接触ICカードリーダライタ12は、RF回路18とループ状アンテナ19、通信制御回路21、外部インターフェイス回路22、電源部24から大略構成されている。
【0018】
RF回路18は、受信した電波を復調する復調部や増幅部、送信する電波を変調する変調部からなる。
【0019】
通信制御回路21は、送受信を切り替えると共に通信を制御する回路である。
【0020】
外部インターフェイス回路22は、RS232C/RS422やUSB規格、或いはCMOSインターフェイスにより入力される信号をリーダライタに適合するように変換を行う回路である。
【0021】
電源部24は、各要素に電源を供給するもので、電源制御スイッチ14を介してバッテリー13からの電源を取り入れて各要素に電源を供給する。
【0022】
非接触ICカード17は、RF回路25とループ状アンテナ26、通信制御回路27、CPU28、RAM29、ROM31、EEPROM32、充電部33等を有する。RF回路25は、非接触ICカードリーダライタ12と同様に受信した電波を復調する復調部や増幅部、送信する電波を変調する変調部からなる。受けた電波の一部は整流回路により電力に変換され充電部33に供給される。
【0023】
CPU28はROM31に記憶されているプログラムを読み込み、非接触ICカードリーダライタ12から送信されるコマンドを受信すると、コマンドと共に送信されたデータを読み込んで、必要な処理を行い、結果をEEPROM32の所定エリアに書き込みする。RAM29はCPU28が処理に必要な一時的なデータを書き込みするメモリである。
【0024】
電源制御スイッチ14は、車両のバッテリー13からの電源を非接触ICカードリーダライタ12の電源部24に供給するのをオン/オフ制御するもので、非接触ICカードリーダライタ12が不使用時には、スイッチをオフの状態にしてバッテリー13からの電源の供給を遮断し、車両に非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手が接近したことを検知したときには、非接触ICカードリーダライタ12が使用できるようにスイッチをオンに制御してバッテリー13からの電源を供給することで非接触ICカードリーダ17が使用できる状態になる。
【0025】
マイクロ波センサであるドップラセンサモジュール16は、電源を制御する電圧コントロール35、間欠動作させるためのパルス信号を発生させるパルス発生器36、パルス発生器36で発生させたパルス信号をドライブするパルスドライブ37、24.150GHZのマイクロ波を送信する発振器38、送受信アンテナ39、送受信アンテナ39で受信した反射したマイクロ波を受信する受信器41、受信したマイクロ波を増幅するDCアンプ42、パルス発生器36に同期させたアナログスイッチ43、アナログスイッチ43で同期させて得られた反射したマイクロ波信号のうち特定の周波数域の信号を得る波形整形部44、波形整形された信号を増幅させるACアンプ45と、このACアンプ45で増幅された信号をデジタル値に変換するA/D変換器46と、A/D変換器46で変換されたデジタル信号を入力して非接触ICカード検出の有無を判定し、かざした非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手を検出したときには制御信号を出力するマイコン等から構成されている制御部47とから大略構成されている。
【0026】
このような構成からなるドップラセンサモジュール16は、先ず、発振器38によって生成されたマイクロ波が送受信アンテナ39から外方向に向かって発射される。発射されたマイクロ波は、物体(この場合手若しくは手で持った非接触ICカード17)にあたり一部が反射されて送受信アンテナ39で受信して受信器41に入力される。受信器41で検波されたマイクロ波はDCアンプ42により増幅される。増幅された検波信号はアナログスイッチ43により、送信されたマイクロ波に対して送信している時間のみの検波信号を選別するように分別される。この分別された検波信号は波形整形部44により特定の周波数域の信号が抽出され、かざした非接触ICカード若しくは非接触ICカードを保持する手との距離及び速度に応じたマイクロ波センサ検波電圧が得られる。
このマイクロ波センサ検波電圧は、ACアンプ45によりA/D変換器42で変換するのに充分な電圧まで増幅され、増幅されたセンサ出力はA/D変換器42でA/D変換され制御部43に取り込まれる。
【0027】
非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手が近くに存在しないときには、マイクロ波センサ検波電圧(センサ出力)は一定である。このような状態では非接触ICカード17無しと判断される。
このとき、遠くから非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手が接近してくると一定だったマイクロ波センサ検波電圧にわずかに変動が観測される。
【0028】
次に、センサ出力が変動しているときには、非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手がある距離に接近していることになる。実際には手で持っている非接触ICカード17の接近を検出するわけであるが、手又は腕の部分の接近でも検出したことになる。
以上のようにして、非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手の接近を感知すると、制御信号がアクティブになり、電源制御スイッチ14をオンに制御する。
【0029】
電源制御スイッチ14がオンすることによりバッテリー13のDC電源(VCC)が非接触ICカードリーダライタ12の電源部24に一定時間供給され、非接触ICカードリーダライタ12はアクティブになり、かざされた非接触ICカード17若しくは非接触ICカードを保持する手が通信距離範囲内に入ってくるまでは、コマンドを定期的に送出する。
非接触ICカードリーダライタ12がアクティブになり、かざした非接触ICカード17若しくは非接触ICカード17を保持する手を検知できる状態になってから一定時間たっても非接触ICカード17若しくは非接触ICカードを保持する手が検出されなかったときには電源制御スイッチ14をオフに制御する。
【0030】
非接触ICカード17は、非接触ICカードリーダライタ12のコマンドをキャッチするとレスポンスを送信する。これにより、非接触ICカード17と非接触ICカードリーダライタ12間でトランザクションが開始される。その後、非接触ICカードリーダライタ12は必要に応じて相互認証のコマンドや情報のリード/ライトなどを行うコマンドを送信し、非接触ICカード17は受信したコマンドにより処理を行う。
【0031】
以上のように、車両に搭載された非接触ICカードリーダライタ12に対してドップラ効果を利用するドップラセンサモジュール16を、非接触ICカードリーダーライタ12の近傍位置であって、非接触ICカード17を手で持ってかざして検知することができる位置に設置した構成になっているがこれは車両に限定されることなく、例えば、自動販売機、交通機関のゲートパスや特定施設への入場パス等に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
非接触ICカードリーダライタの電源は、ドップラ効果を利用するマイクロ波センサがかざされた非接触ICカード若しくは非接触ICカードを保持する手を検知したときに、供給するようにしたことにより、非接触ICカードリーダライタが不使用時には電源がオフされ、使用時のみ電源がオンされる非接触ICカードリーダライタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願発明に係る非接触リーダライタ装置を略示的に示したブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
11 非接触リーダライタ装置
12 非接触ICカードリーダライタ
13 バッテリー
14 電源制御スイッチ
15 人体
16 ドップラセンサモジュール
17 非接触ICカード
18 RF回路
19 ループ状アンテナ
21 通信制御回路
22 外部インターフェイス回路
23 PLL
24 電源部
25 RF回路
26 ループ状アンテナ
27 通信制御回路
28 CPU
29 RAM
31 ROM
32 EEPROM
33 充電部
34 マイクロ波センサ
35 電圧コントロール
36 パルス発生器
37 パルスドライブ
38 発振器
39 送受信アンテナ
41 受信器
42 DCアンプ
43 アナログスイッチ
44 波形整形部
45 ACアンプ
46 A/D変換器
47 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICカードに対して電波を放射するアンテナを有する非接触ICカードリーダライタを備えた非接触リーダライタ装置であって、
前記非接触ICカードリーダライタが設置されている近傍位置であって、前記非接触ICカードをかざして検知することができる位置に、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサを設置し、
前記マイクロ波センサが前記非接触ICカードリーダライタにかざす前記非接触ICカード若しくは該非接触ICカードを保持する手を検知したときに、前記非接触ICカードリーダライタへの電源を供給するようにしたことを特徴とする非接触リーダライタ装置。
【請求項2】
車両に搭載され且つ該車両の電源が供給される非接触ICカードリーダライタを備えた非接触リーダライタ装置であって、
前記非接触ICカードリーダライタが設置されている近傍位置であって、非接触ICカードをかざして検知することができる位置に、ドップラ効果を利用したマイクロ波センサを設置し、
前記マイクロ波センサが前記非接触ICカードリーダライタにかざす前記非接触ICカード若しくは該非接触ICカードを保持する手を検知したときに、前記非接触ICカードリーダライタへの電源を供給するようにしたことを特徴とする非接触リーダライタ装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−98773(P2009−98773A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267744(P2007−267744)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(391065611)株式会社テクトム (6)
【Fターム(参考)】