説明

非接触型情報媒体および非接触型情報媒体付属冊子

【課題】偽造や変造が困難になり、セキュリティ性を向上させることができる非接触型情報媒体および非接触型情報媒体付属冊子を提供することである。
【解決手段】外装基材21,23上に熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層51,52を設け、Iインレット10を挟んで熱圧をかけて接着することによって、偽変造防止機能をもった非接触型情報媒体を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、アンテナコイルとICチップとを備え、非接触でICチップに情報を記録させることができる非接触型情報媒体、および、この非接触型情報媒体を内蔵した非接触型情報媒体付属冊子に関し、特にIDカード、運転免許証、電子パスポートや預貯金通帳、年金手帳、船員手帳などに利用することが可能な非接触型情報媒体および非接触型情報媒体付属冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型情報媒体の普及は著しく、特に非接触ICカードや非接触ICタグを用いたシステムは各方面で利用されている。また、冊子形状の情報媒体、たとえば、パスポートや預貯金通帳等の冊子に非接触型情報媒体を付加した非接触型情報媒体付属冊子が開発されている。
【0003】
これらに利用されている非接触型情報媒体は、アンテナとそれに接続された非接触型ICチップからなるICインレットを外装基材で挟み込んだものであり、この非接触型情報媒体をカバークロスなどとも呼ばれる表紙用部材に貼り合わせた上で、内貼り用紙や本文用紙からなる冊子に貼り付けて装丁して冊子化したものが、非接触型情報媒体付属冊子である。
このような非接触型情報媒体付属冊子は、通常の冊子のようにデータの印字やVISAスタンプの付与ができるとともに、電子データの記録も可能であるという特徴がある。
【0004】
特許文献1には、このように裏表紙の内部に非接触型情報媒体を内蔵した冊子が記載されている。特許文献1に記載の非接触型情報媒体は、第1の基材、第2の基材、アンテナコイル、ICチップおよび接着剤層で構成されている。
【0005】
すなわち、第2の基材には所定の広さの開口部が設けられており、この第2の基材を第1の基材に接着することにより、前記開口部を凹部としている。そして、この凹部内にアンテナコイルとこれに接続されたICチップとを配置し、第1の基材に接着剤層を設けて非接触型情報媒体を構成している。この非接触型情報媒体は、前記接着剤層によって冊子の裏表紙の内面に貼付して使用することができる。
【0006】
また、一般に流通しているクレジットカードやICカードのように、熱可塑性の基材、たとえば、PVCやPET−Gなどのシートの間にICおよびアンテナ等を挟み込み、強い熱圧をかけることで基材を流動させて平滑にした非接触型情報媒体を冊子の表または裏の表紙と内貼り用紙との間に接着することで、非接触型情報媒体付属冊子を作成することも知られている。
【0007】
このような非接触型情報媒体付属冊子では、PVCやPET−Gなどのシートを使用しているため、剛度が高くなって表紙が開きにくくなったり、基材と内貼り用紙との接着が困難であったりといった問題があるが、これを解決する手法の1つとして、これらPVCやPET−Gなどのシートの代わりに、熱可塑性で基材中に空隙を有する多孔質のシートを利用することができる。
【0008】
このような多孔質熱可塑性シートは、樹脂を発泡させることで得られるため一般に材料が柔らかく剛度が低い。また、空隙の為に様々な接着剤の浸透も容易であるために内貼り用紙との接着性が高くなる。さらに、適度な圧力をかけることで凹凸も吸収することが可能である。
【0009】
このような多孔質熱可塑性シートを基材として使用する場合、シート自体を熱融着によって接着したり、熱可塑性の接着剤を塗布した後で熱ラミネート方式により接着したり、一般に使われるような水系や溶剤系の乾燥固化型の接着剤を塗布して接着したりすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−42068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような非接触型情報媒体や非接触型情報媒体付属冊子は、製造方法が単純である反面、容易に偽造することができるという問題がある。ICチップ自体の偽造は困難ではあるものの、見た目だけであればカード形状を簡単に真似ることができるため、たとえば、身分証明などに用いられるIDカードや免許証、パスポートのようなものであれば、外観だけを似せた偽造品を作って使用することが可能となってしまう。
【0012】
特に、電子パスポートは、非接触型情報媒体の機能を使用せずに身分証明として使用する場面も多く、外観の偽造が容易であることは大きな問題である。当然、これらの媒体には偽造防止要素が設けられているが、多くは媒体表面に設けられたものであり、偽造者はこれらの偽造防止要素を解析して、見た目を似せた偽造品を作っているという問題がある。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、偽造や変造が困難になり、セキュリティ性を向上させることができる非接触型情報媒体および非接触型情報媒体付属冊子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る非接触型情報媒体は、ICチップと当該ICチップに接続されたアンテナが少なくとも2つの外装基材に挟まれてなる非接触型情報媒体であって、前記外装基材に熱可塑性接着剤層および偽変造防止層が設けられているか、あるいは熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2に係る非接触型情報媒体は、前記外装基材に多孔質熱可塑性樹脂シートを用いたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3に係る非接触型情報媒体は、前記熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層として、赤外領域で吸収あるいは発光のある染料あるいは顔料を熱可塑性接着剤に混合したものを用いることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4に係る非接触型情報媒体は、前記熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層として、紫外線により蛍光を発する染料あるいは顔料を熱可塑性接着剤に混合したものを用いることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5に係る非接触型情報媒体は、アンテナシートの両側に設けられた2枚の外装基材のそれぞれに設けられた熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層が異なる波長の蛍光を発することを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6に係る非接触型情報媒体付属冊子は、前記請求項1〜5のいずれか1つに記載の非接触型情報媒体を表紙あるいは裏表紙の内部に内蔵して構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係る非接触型情報媒体によれば、外装基材に偽変造防止層を設けることで冊子自体の偽造を抑制することができる。偽変造防止層は、従来のようなIDページなどに設けられた偽変造防止機能とは異なり、通常の状態でIDページを観察してもその存在を見つけることは困難であるため、偽造を防止する効果が高い。なお、本発明は限られた情報を持つ警官や入国審査官など、一部の人間によって偽変造を判断することを想定している。
【0021】
本発明の請求項2に係る非接触型情報媒体によれば、外装基材に多孔質熱可塑性の樹脂シートを用いることで、柔軟性に富み、接着剤との相性の良い非接触型情報媒体を作成することができる。これは、特に非接触型情報媒体付属冊子を作成する際に重要な特徴である。
【0022】
本発明の請求項3に係る非接触型情報媒体によれば、偽変造防止層として赤外領域で吸収あるいは発光のある染料あるいは顔料を用いることで、偽造防止効果を得ることができる。このような偽変造防止層を使用する場合、目視での判断は不可能であるため、機械を用いて真贋を判定することになる。
【0023】
本発明の請求項4に係る非接触型情報媒体によれば、偽変造防止層として紫外線で発光する染料あるいは顔料を用いることで、偽造防止効果を得ることができる。紫外線で発光する偽造防止機能は一般的に多く用いられており、いわゆるUVランプなどを用いて簡易に真贋判定が可能である。
また、偽変造防止層は非接触型情報媒体の内側に設けられているため、UVランプなどを照射して検証する場合には非接触型情報媒体の断面部分を観察し、外装基材の層間から適切な色の蛍光が発せられていれば真正品であると判断することができる。この方式はあまり普及しておらず、偽造者に偽造される蓋然性が低いことも特徴である。
【0024】
本発明の請求項5に係る非接触型情報媒体によれば、2つの外装基材のそれぞれに異なる色の蛍光を生じる偽変造防止層を設けることにより、さらに偽造防止効果を高めることができる。各外装基材はアンテナシートを挟み込むように接着されるが、多孔質熱可塑性樹脂シートを外装基材に用いた場合にはアンテナシートは外装基材より寸法が小さく、得られる非接触型情報媒体の周辺部ではアンテナシートを介さず2つの外装基材が接着されている状態になることが多いため、偽変造防止層はほぼ1層として観察される。
これにより、一見したところでは2色の蛍光が加法混色して異なる1つの色として観察されるが、拡大して観察すれば2色の偽変造防止層を確認することができるため、より偽造防止効果を高めることができる。
【0025】
本発明の請求項6に係る非接触型情報媒体付属冊子によれば、上記の非接触型情報媒体を冊子に内蔵することにより、偽変造を防止する機能を付加した非接触型情報媒体付属冊子を作成することができる。また、この偽変造防止効果は赤外線を用いて機械検知で確認したりであったり、断面を観察して確認したりするものであるため、冊子に既に設けられている偽造防止機能とは干渉することなく別個の機能として働くことができ、より偽変造防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るICインレットの一例を模式的に示す平面図。
【図2】本発明の実施形態に係る非接触型情報媒体の製造方法の一例を説明するための縦断側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る非接触型情報媒体の製造方法の一例を説明するための縦断側面図。
【図4】本発明の実施形態に係る非接触型情報媒体の製造方法の一例を説明するための縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る非接触型情報媒体は、ICチップとこのICチップに接続されたアンテナが2つの外装基材に挟まれたものである。アンテナは、エッチング方式を使用したアンテナシートや巻き線アンテナ、印刷アンテナなどが使用可能であるが、ここではエッチング方式のアンテナを例にとって説明する。
【0028】
エッチング方式のアンテナの場合、ICチップとそれに接続されたアンテナシートをまとめてICインレット10と呼ぶ。ICインレット10は、図1に示されるように、アンテナ基材シート11の一方の面にアンテナコイル12が形成され、他方の面にアンテナジャンパー13が形成されたアンテナシートとICチップ14から構成され、ICチップ14とアンテナコイル12とが電気的に接続されている。
【0029】
アンテナコイル12は、エッチング方式あるいは印刷アンテナ方式によって形成することができるが、エッチング方式を用いて製造されたアンテナコイルが最も耐久性と信頼性が高いため、多く利用されている。
【0030】
エッチング方式によって形成されたアンテナコイル12とアンテナジャンパー13の素材としてはアルミ、銅が最も多く用いられる。また、印刷アンテナ方式による場合には、銀やカーボンを含有するインキを印刷することによってアンテナコイルが形成される。
【0031】
エッチング方式のアンテナを例にとると、基材11としてはPET、PEN等のプラスティックフィルムが多く用いられる。この基材11上に、メッキ法、蒸着法、貼り合せ法などにより、金属の薄膜を形成する。このようにして得られた金属箔付きの基材11上に樹脂を印刷することによってアンテナコイルパターンを形成する。次に、アンテナコイルパターンが形成された基材を腐食液に漬けてエッチング処理をすることにより、樹脂が印刷されたアンテナコイルパターン以外の部分が溶けてなくなり、アンテナコイル12を得ることができる。
【0032】
また、アンテナコイル12を形成した面の反対面にはアンテナジャンパー13が必要であるが、これはあらかじめ両面に金属箔と印刷パターンを設けて同時にエッチング処理を行なうか、片面にアンテナコイルパターンを形成した後にアンテナジャンパー13のみを貼り付けるかして形成する。
【0033】
なお、ICインレットを使用せず、巻き線加工などによって外装基材に直接アンテナを形成する方法もある。この方式では、被覆された銅線などを加熱しながら一方の外装基材に埋め込むようにしてアンテナを形成してからICチップに接続し、他方の外装基材を張り合わせることができる。この方式では、エッチング方式よりも簡易にアンテナを形成することができる反面、周波数特性などの安定性ではエッチング方式に劣る部分もあり、用途によって使い分けられている。
【0034】
外装基材としては、たとえば、PVC、PET−Gのような熱可塑性樹脂シートを用いることが一般的であるが、その他には多孔質熱可塑性シートを使用することができる。多孔質熱可塑性シートは、一般にインクジェットやオフセットなどに対する印刷適性を付与した樹脂シートあるいは合成紙として市販されている。
【0035】
外装基材として、このような多孔質熱可塑性シートを使用することで、柔軟性のある非接触型情報媒体を形成することが可能となり、また、この非接触型情報媒体を冊子など別の媒体と貼り合わせる場合にも、接着剤と良好な密着性を得ることができるため、加工性に優れている。
【0036】
上記多孔質熱可塑性基材を使用する場合、図2に示すように、2枚の外装基材21,22)のそれぞれ内側にあたる部分に、あらかじめ熱可塑性の接着剤31,32を塗布し、ICインレット10を挟んで積層し、熱圧をかけることで接着させ、図3、図4に示すような非接触型情報媒体を得ることができる。
【0037】
ここで使用可能な熱可塑性の接着剤31,32は、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、アクリル系樹脂、ナイロン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、一般的な各種熱可塑性の樹脂を使用することができる。これらの中でも、特に水分に強く、酸素や塩化物イオンの透過を抑制するような塗膜を形成する樹脂、また熱や湿度により劣化し接着部分に剥がれを生じないものを使用する。これらの性能を両立させるために2種類以上の樹脂を混合したり、2層に塗工したりすることも可能である。
【0038】
また、後工程や作業性の面から、塗工が容易で、乾燥後のブロッキングが生じにくく、耐久性の高いものが使用に適する。たとえば、エチレン−メタクリル酸共重合体系の水系エマルジョン接着剤にエポキシ系架橋剤を添加したものや、ポリオレフィン系、アクリル系の接着剤などをグラビアコーターで塗工するなどで好適な性能を得ることができる。
なお、一般的にポリエステル系の接着剤は湿度による加水分解が生じる可能性があり、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤は経時劣化し易いので注意が必要である。
【0039】
上記のようにして作成される非接触型情報媒体に偽変造防止機能を付加する方法としては、図4に示すように、熱可塑性接着剤層31,32と別に偽変造防止機能層41,42を設ける方法と、熱可塑性接着剤層に偽造防止機能を付加した熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層51,52を設ける方法がある。
【0040】
熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層を設ける場合には、前記熱可塑性接着剤に偽造防止機能をもった顔料や染料などを混ぜることによって容易に作成することができるため、以下ではこの方式を主に想定して説明する。
【0041】
偽変造防止機能層あるいは熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層としては、多くの技術が利用できるが、代表的には赤外吸収を用いるもの、赤外蛍光を用いるもの、紫外蛍光を用いるものがあげられる。
【0042】
赤外吸収を用いる方式であるが、これは赤外領域の特定の波長での吸収を持つ染料や顔料を使用し、これらの吸収を検知することのできる機器で検証するというものである。検証機は、たとえば、赤外線を照射するランプ部と、特定の波長をカットするフィルタを取り付けたCCDカメラなどの検出部から構成される。
この方式は、特殊な吸収波長を持つ染料や顔料を使用することができれば、偽造防止効果を高めることができる反面、検証機が特殊なものになりがちであるため、一般に普及しづらいという問題もある。
【0043】
赤外蛍光を用いる方式は、前記赤外吸収を用いる方式とほぼ同じであるが、赤外吸収を用いる方式がカーボンブラックなどを使用して偽造されがちなのに対し、赤外蛍光はより偽造防止効果が高い。しかしながら、染料や顔料が特殊であるため高価になりがちである。
【0044】
紫外蛍光を用いる方式は、最も簡易かつ安価に利用できる。元来、紫外蛍光を使用した偽造防止技術は各方面で用いられており、検証機である紫外線照射機、いわゆるUVランプも一般に普及している。赤外光とは異なり、紫外光は基材を透過しづらいため、通常、紫外蛍光を用いた偽造防止技術は基材表面など再外層に設けられることが多いが、本実施形態ではあえて偽変造防止層を基材間に設け、断面から観察することによって検証するという方式を提示している。
【0045】
偽変造防止層を基材間に設ける利点は下記のとおりである。第1に、熱可塑性接着剤層を設けるのと同時に偽変造防止層を設けたり、熱可塑性接着剤に紫外蛍光染料や顔料を混ぜることによって熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層として設けたりと、工程上の負荷が少ないことが挙げられる。
【0046】
第2に、断面を観察するという操作自体は容易であり、一般に普及しているUVランプを用いた検証であるため、利用者への負担が少ないことが挙げられる。
【0047】
第3に、基材間に偽変造防止層を設けるためには、非接触型情報媒体を製造する段階で対応する必要があるため、偽造者への負担が大きいということである。すなわち、基材上に偽造防止技術を設けた場合には、偽造者は別途製造または入手した非接触型情報媒体にその偽造防止技術を設けることを検討するが、本実施形態のように基材間に設けた場合には、偽造者は非接触型情報媒体の製造時から偽造防止技術の偽造を検討しなければならないということである。
【0048】
2つの基材に別々の色に発光する紫外蛍光を設けることによって、さらに偽造防止効果を高めることができる。これは、2色の紫外蛍光層が隣接していることによって加法混色が生じ、一見して別の1色の層に見えることによる効果である。
【0049】
すなわち、偽造者が本実施形態の紫外蛍光層を設けた非接触型情報媒体を偽造しようと試みた場合、仮に紫外蛍光層が発光するということに気づいたとしても、その発光色に近い紫外蛍光層を設ける偽造にとどまるはずである。
【0050】
しかしながら、これらの非接触型情報媒体の真贋判定をする立場の人間は、紫外蛍光層が2層で2色から構成されているという情報を持っているため、拡大観察することによって、容易に偽造品を判別することができる。
【0051】
本実施形態は、偽変造防止層を設けるための製造上の負荷はほとんど変わらないにも関わらず大きな効果が得られるという点が特徴である。たとえば、一方の蛍光色を赤色、他方の蛍光色を緑色に設定しておけば、遠くから見た場合には加法混色で黄色の発光に観察され、近くで拡大して観察した場合には赤色の層と緑色の層がそれぞれ発光している様子が観察される。
【0052】
非接触型情報媒体付属冊子は、前記非接触型情報媒体を表紙用部材と内貼り用紙との間に挟み込んで接着し、冊子形状に加工したものである。非接触型情報媒体は内貼り用紙と接着剤とによって接着されるが、この接着剤は作業性や環境の側面からも水系のエマルジョン接着剤を使用する場合が多い。この理由として、一般的な冊子を製造するための設備は紙と紙や、布と紙との貼り合わせを行なうことが多いことがあげられる。
【0053】
仮に、非接触型情報媒体付属冊子に使用する非接触型情報媒体を、一般のICカードに使われるような外装基材、たとえば、PVCやPET−Gを使用して作成した場合、既存の設備および接着剤で内貼り用紙を接着することはできないうえ、剛度が高いことによる問題が生じる。このような問題を解決するため、多孔質熱可塑性基材シートを外装用基材として使用することで、様々なタイプの接着剤と良好な密着性を示し、かつ、凹凸が無く、柔軟な非接触型情報媒体付冊子を作成することができる。
【0054】
非接触型情報媒体と表紙用部材とを接着する際には、体積変化の無い反応硬化型の接着剤を好適に用いることができる。仮に、体積変化のある乾燥硬化型の接着剤を使用した場合、非接触型情報媒体の一部が凹んでいたとすると、接着剤の使用量が多くなるため、乾燥時の体積減少が大きくなり、表紙用部材の外側に凹みが生じてしまい、そのため外観上の問題となる。
【0055】
このような問題を解決するために、体積変化の無い接着剤を使用することが望ましく、たとえば、2液混合型エポキシ系接着剤、湿気硬化型シリコン系接着剤、1液硬化型ウレタン系接着剤などが使用できる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、各種のホットメルト接着剤なども使用可能である。
【実施例1】
【0056】
以下、図2、図3、図4を参照して実施例を説明する。
【0057】
(エッチング方式のアンテナを用いたICインレットの作成、図2参照)
38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートをアンテナシート基材11とし、両面に熱可塑性の接着剤を塗布してアルミフィルムを貼り合わせたうえで、一方の面にアンテナコイル形状のマスク層の印刷を、もう一方の面にアンテナジャンパー形状のマスク層の印刷を行ない、パターンエッチングによって表面にアンテナコイル12を形成するとともに、裏面にアンテナジャンパー13を形成した。
【0058】
上記熱可塑性の接着剤としては、EVAを主成分とし、溶融温度は110度のものを用いた。また、レーザ溶接により、アンテナコイル12とアンテナジャンパー13とを接合し、アンテナコイル12の接続端子部にICチップ14を溶接した。アンテナコイル12の外周は80mm×48mmで、内周は67mm×37mmである。また、アンテナコイル12の内側を65mm×35mmの大きさで打ち抜いて除去した。さらに、アンテナコイル12の外周およびICチップ14から2mm離れた輪郭を取ってその外側のアンテナシート基材11を打ち抜いて除去し、ICインレット10を得た。
【0059】
(熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層に用いる接着剤の作成)
熱可塑性の接着剤として、エチレンアクリル酸を主成分とし、溶融温度は140度の水系樹脂を準備した。この樹脂に蛍光染料「ルミコールA(赤色発光)」を5%添加したものを接着剤Aとし、おなじ樹脂に蛍光染料「ルミコールB(緑色発光」を5%添加したものを接着剤Bとして2種類の接着剤を作成した。
【0060】
(非接触型情報媒体の作成、図3参照)
外装基材21,22として、380μmの多孔質ポリオレフィンシートを準備した。外装基材21の片面に前記接着剤Aを10μm塗布し、熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層51を形成した。同じく、外装基材22の片面に前記接着剤Bを10μm塗布し、熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層52を形成した。これらのシートを乾燥させた後、150mm×200mmのシートに断裁した。
【0061】
上記で準備した一方の外装基材21の接着面側にICインレット10を重ね、その上にもう一方の外装基材22を同じく接着剤面を内側にして重ねあわせて積層し、この積層されたシートを2枚のSUS板に挟み込み加熱加圧することで接着した。加熱部温度は150℃、圧力20Kgf/cm2、処理時間60秒の条件で処理することによって、平滑な非接触型情報媒体を得ることができた。
【0062】
(効果の確認)
得られた偽変造防止機能付きの非接触型情報媒体の断面部分に365nmの紫外光を照射したところ、2層の熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層51,52が発光し、一見したところでは黄色の蛍光として観察された。これにより、第1の偽変造防止効果が確認された。さらに、この発光部分をルーペ等で拡大して観察したところ、2色に発光していることが確認され、一方は赤色、もう一方は緑色に発光していることを確認できた。これにより、第2の偽変造防止効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の非接触型情報媒体は、偽変造防止層を基材間に設けることによって変造や不正な再利用を防止することができる。この機能を備えた非接触型情報媒体を製造するためには、大きな設備や工程の変更は必要ないため、既存のものよりも高いセキュリティ性を備えたIDカードや電子パスポートを容易に供給することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…ICインレット、11…アンテナシート基材、12…アンテナコイル、13…アンテナジャンパー、14…ICチップ、21…外装基材、22…外装基材、31…熱可塑性接着剤層、32…熱可塑性接着剤層、41…偽変造防止機能層、42…偽変造防止機能層、51…熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層、52…熱可塑性接着剤層兼偽変造防止機能層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと当該ICチップに接続されたアンテナが少なくとも2つの外装基材に挟まれてなる非接触型情報媒体であって、前記外装基材に熱可塑性接着剤層および偽変造防止層が設けられているか、あるいは熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層が設けられていることを特徴とする非接触型情報媒体。
【請求項2】
前記外装基材に多孔質熱可塑性樹脂シートを用いたことを特徴とする請求項1記載の非接触型情報媒体。
【請求項3】
前記熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層として、赤外領域で吸収あるいは発光のある染料あるいは顔料を熱可塑性接着剤に混合したものを用いることを特徴とする請求項1または請求項2記載の非接触型情報媒体。
【請求項4】
前記熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層として、紫外線により蛍光を発する染料あるいは顔料を熱可塑性接着剤に混合したものを用いることを特徴とする請求項1または請求項2記載の非接触型情報媒体。
【請求項5】
アンテナシートの両側に設けられた2枚の外装基材のそれぞれに設けられた熱可塑性接着剤層兼偽変造防止層が異なる波長の蛍光を発することを特徴とする請求項4記載の非接触型情報媒体。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1つに記載の非接触型情報媒体を表紙あるいは裏表紙の内部に内蔵して構成された非接触型情報媒体付属冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89015(P2013−89015A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228783(P2011−228783)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】