説明

非接触型支払カード取引を行う方法及びシステム

本発明は、消費者と販売者との間で電子支払取引を行うために使用する非接触型支払装置の機能的相互運用性を増強するためのシステム及び方法に関するものである。これらの非接触型支払装置は、消費者に対して発行されたRFID埋込型カード、及び販売者によって配備されたRFID対応型リーダのような近接型結合装置である。このシステム及び方法は、基準カード及び基準リーダを使用して、発行されたカード及び配備されたリーダのそれぞれについて許容される仕様を確立することを含む。これらの基準カード及び基準リーダは相互較正されて、カード及びリーダについての動作仕様を結び付ける。適正なカード及びリーダの機能のための重複した仕様範囲または許容誤差の適切な選択が、発行されたカードの配備されたリーダとの相互運用性を増強し、配備されたリーダの発行されたカードとの相互運用性も増強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願へのクロスリファレンス)
本願は、2004年7月15日出願の米国暫定特許出願番号60/588,270に基づいて優先権を主張する。本願は、同日出願の米国特許4件にも関連し、これらのすべてが特許出願番号60/588,270に基づいて優先権を主張する。上記特許出願のすべては、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【0002】
(発明の背景)
無線周波数識別(電波方式認識)(RFID:Radio Frequency Identification)タグは、アンテナに接続された小型集積回路(IC)であり、単純な識別情報を有する問合せRF信号、あるいはICのサイズ次第ではより複雑な信号に応答することができる。RFID技術は、通信のために接点または視線を必要としない。無線周波数識別(RFID)技術は現在、経済的に実現可能であり、商業及び工業用途においてより一層開発されている。例えば、RFID技術は現在、倉庫内、店舗内の品目上、ID(識別)またはアクセスカード上、等のタグに広範に使用されている。これに加えて、RFID技術は支払カード産業において(例えばマスターカード(MasterCard)社、アメリカンエクスプレス(American Express)社、及びビザ(Visa)社によって)、RFIDタグを埋め込んだ「非接触型」支払カードまたはクレジットカードの形で導入されてきている。これらの非接触型支払カードは、RFID対応型の支払端末での無線通信による電子支払取引を行うために使用することができる。非接触型支払カードは、例えば小売店舗、商店またはスーパーマーケットにおいて、商品またはサービスの対価を支払う簡単、迅速かつ便利な方法を消費者に提供することができる。
【0003】
非接触型支払カード及びカードリーダ(読取器)/端末での使用には、いくつかのRFID技術が利用可能である。非接触型システムの基本的構成要素は、非接触型リーダ(または近接結合装置(PCD:Proximity Coupling Device))及びトランスポンダ(中継器)である。非接触型リーダは電子回路に接続されたアンテナである。トランスポンダは、誘導アンテナ、及びこのアンテナの端に接続された集積回路から成る。リーダ−トランスポンダの組合せは変成器として振舞う。交番電流が一次コイル(リーダのアンテナを通って流れて電磁界を生成し、この電磁界が二次コイル(トランスポンダのアンテナ)中に電流を誘導する。このトランスポンダは、非接触型リーダ(PCD)によって伝送された電磁界(またはRFフィールド)を、ダイオード整流器によってDC電圧に変換する。このDC電圧がトランスポンダの内部回路に電力供給する。両方のアンテナの構成及び同調が、一方の装置から他方の装置への結合効率を決める。このトランスポンダは、非接触型支払カードとすることができる。
【0004】
【非特許文献1】ISO/IEC 10536規格書
【非特許文献2】ISO/IEC 14443規格書
【非特許文献3】ISO/IEC 15639規格書
【0005】
非接触型支払カードシステムが経済的に実現可能になり、商業的に受け入れられるためには、非接触型支払カードは、カード及び端末が、特定のカードプロバイダ(提供者)/発行者、ベンダー(販売者)、あるいは端末製造業者の独自の技術的特徴を有する際にも、すべての、あるいは大部分のRFID対応型支払端末において相互運用可能でなければならない。産業全体にわたる相互運用性が望まれる。この目的に向けて、工業標準化組織及びグループ(例えば国際標準化機構(ISO:International Organization for Standards)及び国際電気標準会議(IEC:International Electro-Technical Committee))が、非接触型支払技術の実現のための自主工業規格を公式化してきた。ISO/IECによって規定されているこうした規格の代表的な3つがISO/IEC 10536、ISO/IEC 14443、及びISO/IEC 15639であり、それぞれ密着型(Close Coupling)、近接型(Proximity)、及び近傍型(Vicinity)カードに適用可能である。
【0006】
ISO/IEC 14443近接型カード規格(ISO 14443)は、世界中に配備されたいくつかの非接触型カードに使用されてきた。ISO 14443近接型カードの目標動作範囲は10cmまでであるが、この範囲は電力要求、メモリーサイズ、CPU、及びコプロセッサに応じて変動する。
【0007】
ISO 14443規格書は次の4つの別個の部分を有する:
・第1部:物理特性、近接型集積回路カード(PICC:Proximity Integrated Circuit Card)の物理的寸法を規定する。このカードはID−1サイズ(85.6mm×54.0mm×0.76mm)である。これは銀行系クレジットカードと同じサイズである。
【0008】
・第2部:無線周波数電力及び信号インタフェース、非接触型ICチップのキー技術特性を規定し、周波数、データレート(速度)、変調、及びビット符号化手順のような項目を含む。第2部には2つの変種(バリエーション)が詳記され、即ちタイプA(Type A)インタフェース及びタイプB(Type B)インタフェースである。両インタフェースが同じ周波数で動作し同じデータレートを使用するが、これらは変調及びビット符号化の領域において互いに異なる
【0009】
・第3部:初期化及び衝突防止。初期化は、カードがリーダの無線周波数(FR)フィールド(電磁界)中に持ち込まれた際に、近接結合装置(PCD)(即ちリーダ)とカードとが通信を確立するための要求を記述する。衝突防止は、複数のカードが磁界中に同時に入った際に発生することを規定し、システムが取引に使用するカードを決定する方法を識別し、提示されたすべてのカードが目録に記入され処理されることを保証する。
【0010】
・第4部:伝送プロトコル、取引中の通信を可能にするデータフォーマット及びデータ要素を規定する。
【0011】
非接触支払カードのシステムをISO 14443に準拠させるためには、これらのカードは上記自主規格の各部の少なくとも一部の要求に合わなければならない。ISO 14443の下で標準化された非接触技術に加えて、多数の独自の非接触型インタフェース(例えばCubic(登録商標)のGO-Card(登録商標))及びソニー社のフェリカ(FeliCa)カード(登録商標))も産業において使用されている。既存のカード技術の発展により、相互運用性が問題となり得る。ベンダーによって市場に配備されたカードリーダは、好適には、いくつかの異なるカードのタイプに適応すべきである。例えば、望ましいカードリーダはISO 14443のタイプAカード及びタイプBカード、ISO 15639カード、及びあらゆる追加的な独自のカードタイプをサポートする。
【0012】
【非特許文献4】ISO/IEC 10373規格書
【0013】
相互運用性の問題は、恐らくは単一のISO規格(例えばISO 14443)に準拠したカード配備でも生じ得る。ISO 14443規格では、非接触型カード及びリーダシステムにおけるRF電力及び信号インタフェースに関するすべての要求及び仕様(即ち、システムのオープンシステム相互接続(OSI:Open System Interconnection)モデルの見方における物理層)は、カード用とリーダ用とで別個に標準化されたテストを用いて規定されている。ISO/IEC 10373規格の第6部(ISO 10373-6)は、非接触型集積回路カード技術(近接型カード)に特有のテスト方法を取り扱う。非接触型カード及びリーダのISO 14443への準拠は基準装置を用いて検証される。ISO 10373-6によれば、非接触型カードの特性を表現する一組の「基準」カード(即ち基準PICC)を用いて、非接触型リーダの仕様準拠を測定する(図1A参照)。例えば、基準PICCを用いて、PCDによって生成または伝送される磁界をテストし、そしてPCDがPICCに電力供給する能力をテストする。同様に、代表的な非接触型リーダの特性を表現することのできる「基準」リーダ(即ちテストまたは基準PCD)を用いて、非接触型カードの仕様準拠を測定する。例えば、基準PCDを用いて、テスト中にカードによって生成される負荷変調をテストする。
【0014】
図1Bに、ISO 10373-6の下で、製品のリーダ上で行われる、カードとカードリーダとの間の電力リンク及びデータリンクをテストするための機能テストを示す。
【0015】
カードとリーダとで別個の、ISO 10373-6の下の準拠テスト手順は、配備された製品装置が個別に、カードまたはリーダのいずれかについての指定仕様範囲に入る特性を有することを保証することはできるが、実地における相互運用性は保証しない。準拠しているものとして検証されたカード及び/またはリーダは(例えば、指定された仕様範囲の終端または末端において特性値を有することによって)ぎりぎりの所でそう検証されているに過ぎないことがある。こうした規格準拠の方法は実地における動作支障に至り得る。例えば、ぎりぎりの所で準拠しているカードは、これもぎりぎりの所で準拠しているに過ぎないカードリーダを用いれば、読取り不能または読取り困難であり得る。
【0016】
現在、非接触型電子支払システムにおける電子支払装置の相互運用性を増強する方法の検討が行われている。一般に受け入れられている規格に合ったカード及びリーダの特性の変動を低減することが注目されている。特に、相互運用性を増強するための規格準拠手順を改善することが注目されている。
【0017】
(発明の概要)
本発明によれば、非接触型電子支払システムにおける電子支払装置の相互運用性を増強する方法及びシステムが提供される。この電子支払装置は、消費者に対して発行されたRFID埋込み型カード、及び販売者によって配備されたRFID対応型リーダのような近接結合装置を含む。この方法及びシステムは、基準カード及び基準リーダを使用して、発行されたカード及び配備されたリーダのそれぞれについて許容される仕様を確立することを含む。これらの基準カードと基準リーダとは、カード及びリーダについての動作仕様に結び付くように相互較正されている。そして、適正なカード及びリーダの機能についての重複した仕様範囲または許容誤差の適切な選択は、発行されたカードの配備されたリーダとの相互運用性を増強し、そして配備されたリーダの発行されたカードとの相互運用性も増強する。
【0018】
本発明のさらなる特徴、その性質、及び種々の利点は、以下の図面を参照した実施例の詳細な説明より一層明らかになる。
【0019】
【非特許文献5】MasterCard PayPassTM ISO/IEC 14443 Implementation Specification
【0020】
(実施例の詳細な説明)
以下、電子支払システムの関係で本発明を説明し、このシステムでは、非接触型支払カードはISO 14443規格のような一般的な産業規格に準拠することを意図され、こうした産業規格はさらに、個別の非接触型支払装置の仕様を検証するための標準化されたテスト方法(即ちISO 10373-6テスト法、近接型カード)を指定する。近年、マスターカード社(MasterCard International Incorporated)は、近接型支払カード技術の実現のための、独自仕様”MasterCard PayPassTM(登録商標)ISO/IEC 14443 Implementation Specification”(”PayPass”(登録商標))(マスターカード・ペイパス(登録商標)ISO/IEC 14443実現仕様、略称「ペイパス(登録商標)」)を開発した。ペイパス実現はISO 14443規格に整合し、本発明の原理を例示する好都合な例を提供する。例示目的でのペイパス実現の選択は好適なものに過ぎず、本発明の原理は、一般的な産業規格または独自規格の下で動作する電子支払装置及びシステムにより汎用的に適用することができることは明らかである。
【0021】
本発明は、実地において電子支払取引を行うために使用することのできる、非接触型支払装置(即ち、消費者に対して発行された製品のカード及び販売者によって配備された製品のリーダ)の相互運用性を増強するための方法及びシステムを提供する。このシステム及び方法は、個別製品のカード及びリーダが、ISO 14443規格の下で動作することを許容されているよりもきつい仕様範囲内で動作または機能することを保証する。このシステム及び方法は、ISO 14443及びISO 10373-6規格の下で個別製品のリーダ及びカードの仕様準拠をテストするために使用する基準装置(即ち基準PICC及び基準PCD装置)を相互較正することを含む(図2A参照)。基準PCDを用いて、規準PICCの観測される機能的挙動またはパラメータの範囲(「公称カード範囲」)を確立する。製品のカードリーダは、基準PCDによって測定されたこの公称カード範囲内にある機能的挙動またはパラメータを有することを要求される。逆に、規準PICCを用いて、基準PCDの観測される機能的挙動またはパラメータの範囲(「公称リーダ範囲」)を確立する。製品のリーダは、基準カードを読み取る際に、公称リーダ範囲内にある機能的挙動またはパラメータを有することを要求される。
【0022】
図2Bに、本発明によるペイパス実現の下で行う機能テストを図式的に示す。
【0023】
基準PICCと基準PCDとの相互較正は、2つの標準装置間の関係を確立し、個別製品のカードについての仕様を製品のリーダについての仕様と結び付ける。このことは、従来の、カード及びリーダの仕様の、非接続または別個のテストの下で、例えば、カード及びリーダが、ISO 14443規格の下で許容されるそれぞれの仕様範囲の極端な所にある際に生じ得る相互運用性の支障を回避する。
【0024】
このシステム及び方法(本明細書では両者を集合的に「ペイパス実現」と称する)は、装置パラメータの適切な選択または仕様上で製品の支払装置の相互運用性を保証する数学的アルゴリズムに基づく。
【0025】
製品のリーダ(例えばPCDリーダ)が製品のカード(例えばPICCカード)と適正に機能することを保証するために、ペイパス基準PICCを用いて、変数xの関数である挙動の範囲[f2(x),f3(x)]を生成する。関数fは例えば、距離の関数としての磁界応答とすることができる。この挙動の範囲[f2(x),f3(x)]は、ペイパス基準PCD上で観測される(図3参照)。
【0026】
ペイパス実現は、製品のカード(即ちPICCカード)が、「準拠する」ものとして確立されたカード挙動の範囲[f2(x),f3(x)]内に入る挙動fc(x)を表わさなければならないことを要求または指定することができる。この挙動fc(x)はペイパス基準PCD上で観測される(図4参照)。
【0027】
さらに、ペイパス実現は、製品のリーダ(即ちPCDリーダ)が、ペイパス基準PCD上で「準拠する」ものとして観測されるカード挙動の範囲[f1(x),f4(x)]を示すペイパス基準PICCと適正に機能しなければならないことを要求または指定することができる。カード挙動の範囲[f1(x),f4(x)]がカード挙動の範囲[f2(x),f3(x)]を含まなければならないこと、即ち、
[f2(x),f3(x)]⊂[f1(x),f4(x)]
を要求または指定することによって、考察中の特定のカード(PICCカード)の挙動fc(x)は必ず、リーダ(PCDリーダ)の動作範囲[f1(x),f4(x)]内にある(図5及び6参照)。従って、製品のリーダ(PCDリーダ)が製品のカード(PICCカード)と適正に動作することが期待される。
【0028】
同様に、製品のカード(例えばPICCカード)が製品のリーダ(例えばPCDリーダ)と適正に機能することを保証するために、ペイパス基準PCDを用いて、ペイパス基準PICC上で観測される、変数yの関数gについてのリーダ挙動の範囲[g2(y),g3(y)]を生成する。ペイパス実現は、「準拠した」リーダ(PCDリーダ)が、確立された範囲[g2(y),g3(y)]内に入る挙動gc(y)を表わすべきであることを要求または指定することができ、挙動gc(y)はペイパス基準PICC上で測定される。さらに、ペイパス実現は、製品のカード(即ちPICCカード)が、ペイパス基準PICC上で観測ざれるリーダ挙動の範囲[g1(x),g4(x)]を示すペイパス基準PCDと適正に機能しなければならないことを要求または指定することができる。リーダ挙動の範囲[g1(x),g4(x)]がリーダ挙動の範囲[g2(x),g3(x)]を含むべきであること、即ち数学的に表現すれば
[g2(x),g3(x)]⊂[g1(x),g4(x)]
であることを要求または指定することによって、考察中の特定のリーダ(PCDリーダ)の挙動gc(x)は必ず、カード(PICCカード)の動作範囲[g1(x),g4(x)]内にある。従って、カード(PICCカード)はリーダ(PCDリーダ)と適切に動作することが期待される。
【0029】
上述した数学的アルゴリズムの実際的な例として、製品のPICCカードを作動させるための電力要求の例を考えることが有用であり得る。PCDリーダは、カードを作動させるために特定量の電力をPICCに供給または伝送しなければならない。逆に、製品のPICCカードは、PCDリーダから受信した特定量の電力で働かなければならない。ペイパス実現では、製品のPCDリーダによって送達または伝送される電力PC(d)を、ペイパス基準PICC上で距離dの関数として測定する。ペイパス基準PICC上で測定した電力レベルPC(d)の値は、電力レベルRtx,powerの範囲内に入るように要求または指定されている。
【0030】
相互較正手順では、ペイパス基準PCDは、範囲RRx,power上で変化する異なる電力レベルを生成すべく構成する。ペイパス基準PCDによって生成されたパワーレベルはペイパス基準PICCに対して較正し、即ち、範囲RRx,powerはペイパス基準PICC上で測定した値である。この手順では、ペイパス−PCDに給電する信号発生器または電源(例えば電圧源)の出力を、ペイパス基準PICC上で観測した電力レベルが適切な電力レベルRRx,powerに達するまで増加または減少させることができる。数学的な要求
tx,power⊂Rrx,power
は、製品のPCDリーダが製品のPICCカードに適正に電力供給することを保証する(図7参照)。
【0031】
より一般的には、以上で説明したアルゴリズムは、製品の非接触型支払装置の電力、データ転送、及び他の機能的相互運用性を保証または増強するシステム及び方法をもたらす。このシステム及び方法は例えば次の項目を含むことができる:
(a) PCDによって供給される電力を基準PICC上で測定すること;
(b) 基準PICC上でデータ伝送(例えば変調の深さ、または他の信号パラメータ)を測定すること;
(c) 基準PICCによって異なる信号を発生することによって、PCDによるデータ受信(例えば負荷変調感度)をテストすること。ペイパス基準PICCをまず基準PCDに対して較正して、基準PICCが発生する異なる信号のレベル及び特性を測定する;
(d) 基準PICCによるデータ伝送をPCD上で測定すること、基準PCDは「平均」値コマンドをPICCに送信し、そして基準PCDは「平均」電力レベルを供給する。基準PCDが生成する電力レベル及びコマンド両方の特性を、基準PICCに対して較正する;
(e) 基準PCDを用いてPICCのデータ受信及び電力感度をチェックすること、基準PCDが、許容誤差間隔または範囲Rrxの境界にある変調特性及び電力レベルを有するコマンドを送信する。ここでも、これらの極値を設定するために、基準PCDを基準PICCに対して較正する。
【0032】
相互運用性を増強するためのこうしたシステム及び方法は、例えば、ペイパス実現仕様の実施に当たり利用される。PICCとPCDとの間の非接触型インタフェース(即ち、無線周波数及び信号インタフェース)の電気特性は、”MasterCard PayPassTM ISO/IEC 14443 Implementation Specification”の”Chapter 2”(第2章)に記載されている。この再掲部分は、支払装置間の電力リンク及びデータリンクを特徴付けるために使用する基準PICC装置と基準PCD装置とを相互較正するための段階毎の手順も含む。
【0033】
以上の説明は本発明の原理の例示に過ぎず、当業者は本発明の範囲を逸脱することなしに種々の変形を加えることができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】ISO 10373-6規格に規定された、製品の非接触型支払カードリーダの特性をテストするための基準PICCの使用、及び製品の非接触型支払カードの特性をテストするための基準PCDの使用を図式的に示すブロック図である。
【図1B】ISO 10373-6に従い、カードとリーダとの間の電源リンク及びデータリンクをテストするための通常の手順の下で製品のリーダ上で行われる一組の機能テストを図式的に示す図である。
【図2A】本発明の原理による、基準PICCと基準PCDとの相互較正のステップを図式的に示すブロック図である。そして、相互較正された基準のPICC及びPCD装置を用いて、製品の非接触型支払カード及びリーダのそれぞれの機能特性及び仕様をテストする。
【図2B1】本発明の原理による、非接触近接型カードとリーダとの間の電源リンク及びデータリンクをテストするための、製品のリーダ上で行われる機能テストを図式的に示す図である。
【図2B2】本発明の原理による、非接触近接型カードとリーダとの間の電源リンク及びデータリンクをテストするための、製品のリーダ上で行われる機能テストを図式的に示す図である。
【図2B3】本発明の原理による、非接触近接型カードとリーダとの間の電源リンク及びデータリンクをテストするための、製品のリーダ上で行われる機能テストを図式的に示す図である。
【図2B4】本発明の原理による、非接触近接型カードとリーダとの間の電源リンク及びデータリンクをテストするための、製品のリーダ上で行われる機能テストを図式的に示す図である。
【図3】本発明の原理による、基準カードによってシミュレートし、基準リーダによって測定または観測した多種のカードの挙動の範囲を示すグラフである。
【図4】本発明の原理による、その挙動が図3で観測される挙動の範囲内にある準拠カードの挙動を示すグラフである。
【図5】本発明の原理による、基準リーダ上で測定した基準カードの挙動を、図3に示す挙動に対して示すグラフである。
【図6】本発明の原理による、較正した基準リーダ上で測定した、図4の準拠カードの挙動を示すグラフである。
【図7】本発明の原理による、相互較正した基準装置から導出した重複した仕様を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード及びリーダ等の非接触型支払装置のシステムであって、前記装置の動作中に、前記リーダが信号を送信し、該信号は前記リーダの相手の前記カードによって受信され、前記カードが信号を送信し、該信号は前記カードの相手の前記リーダによって受信されるシステムにおいて、該システムが、
前記装置によって送信される信号に関するパラメータの仕様範囲Rtxと;
前記装置の相手の装置によって受信される信号のパラメータ値の仕様範囲Rrxとを具え、
前記装置の各々は、前記仕様範囲Rtx内にあるパラメータ値Cを有する信号を送信すべく仕様設定され、
前記相手の装置の各々は、受信した信号のパラメータが前記仕様範囲Rrx内の値を有する際に適正に動作すべく仕様設定され、前記仕様範囲Rtxは前記仕様範囲Rrxの部分集合であり、よって前記パラメータ値Cは前記仕様範囲Rrx内にあり、従って前記相手の装置は、任意の前記装置によって送信された信号に応答して適正に動作することができることを特徴とする非接触型支払システム。
【請求項2】
前記リーダによって送信される信号が、電力信号及びデータ信号を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カードによって送信される信号がデータ信号を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
さらに、基準装置、及び該基準装置の相手の基準装置を具えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
さらに、前記相手の基準装置を用いて測定した値が前記仕様範囲Rtx内にあるパラメータ値Cを有する信号を、前記装置の各々が送信していることの仕様検証を含むことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記装置の各々がリーダであり、前記相手の装置の各々がカードであり、前記リーダによって送信される信号はカードを作動させる電力信号であり、前記リーダによって送信される信号の電力レベルを、前記相手の基準装置上で測定することを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記装置の各々がリーダであり、前記相手の装置の各々がカードであり、前記リーダによって送信される信号はデータ信号であり、前記リーダによって送信される信号の特性を、前記相手の基準装置上で測定することを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記装置の各々がカードであり、前記相手の装置の各々がリーダであり、前記カードによって送信される信号は負荷変調されたデータ信号を含み、前記カードによって送信される信号の変調特性を、前記相手の基準装置上で測定することを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
さらに、前記基準装置を用いることによって受信した信号のパラメータが前記仕様範囲Rrx内の値を有する際に、前記相手の装置の各々が適正に動作していることの仕様検証を含むことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
前記基準装置を、前記相手の基準装置の特性に対して較正し、逆に、前記相手の基準装置を、前記基準装置の特性に対して較正することを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
各々が相互間の信号送信及び信号受信の機能を有する非接触型のカード及びリーダ等の支払装置に基づく電子支払システムにおいて、送信装置の、一組の異なる受信装置との相互運用性を増強し、逆に、受信装置の、一組の異なる送信装置との相互運用性の段階を向上させる方法において、
前記送信装置によって送信される信号に関するパラメータ値の範囲(Rtx)を識別し、前記信号に応答して、前記一組の異なる受信装置の各々が適正に動作するステップと;
前記一組の異なる送信装置が、適正な動作において、前記範囲Rtx内にあるパラメータ値を有する信号のみを送信するように、前記一組の異なる送信装置を仕様設定するステップと;
前記受信装置によって受信される信号に関するパラメータ値の範囲(Rrx)を識別するステップであって、前記範囲Rrxは前記範囲Rtxを含むステップと;
前記一組の異なる受信装置が、前記範囲Rtx内にあるパラメータ値を有する受信信号に応答して適正に動作するように、前記一組の異なる受信装置を仕様設定するステップと
を具え、
前記仕様設定された通りに動作する前記送信装置のすべてが、所定信号に対応するパラメータ値を有する信号のみを発生することができ、前記受信装置は、前記所定信号に対して適正に動作するように仕様設定されていることを特徴とする電子支払方法。
【請求項12】
前記リーダによって送信される信号が、電力信号及びデータ信号を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カードによって送信される信号がデータ信号を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
さらに、基準装置及び該基準装置の相手の基準装置を具えて、装置のパラメータを検証するステップを具えていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記送信装置の各々が、前記相手の基準装置を用いて測定した値が前記範囲Rtx内にあるパラメータ値Cを有する信号を送信することの仕様検証のステップを具えていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記装置の各々がリーダであり、前記装置の相手の装置の各々がカードであり、前記リーダによって送信される信号はカードを作動させる電力信号であり、前記仕様検証のステップがさらに、前記リーダによって送信される信号の電力レベルを、前記相手の基準装置上で測定するサブステップを具えていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記装置の各々がリーダであり、前記相手の装置の各々がカードであり、前記リーダによって送信される信号はデータ信号を含み、前記仕様検証のステップがさらに、前記リーダによって送信される信号の特性を、前記相手の基準装置上で測定するサブステップを具えていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記装置の各々がカードであり、前記相手の装置の各々がリーダであり、前記カードによって送信される信号は負荷変調されたデータ信号を含み、前記カードによって送信される信号の変調特性を、前記相手の基準装置上で測定することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
さらに、前記基準装置を用いることによって受信した信号のパラメータ値が前記範囲Rrx内の値を有する際に、前記相手の装置の各々が適正に動作して、前記範囲Rrx全体にわたるパラメータ値を有する異なる信号を発生することの仕様検証のステップを具えていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
さらに、前記基準装置を前記相手の基準装置の特性に対して較正し、逆に、前記相手の基準装置を前記基準装置の特性に対して較正する較正ステップを具えていることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B1】
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【図2B2】
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【図2B3】
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【図2B4】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−507044(P2008−507044A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521665(P2007−521665)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/025119
【国際公開番号】WO2006/019997
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(500557864)マスターカード インターナシヨナル インコーポレーテツド (18)
【Fターム(参考)】