説明

非接触型表面コーティングモニターおよびその使用方法

【課題】 従来技術における諸欠陥を克服する装置を提供することである。
【解決手段】 ディスプレイに連結された複数の温度センサーを含んでいる、表面用の非接触型表面コーティングモニター。これら複数の温度センサーは、前記表面におけるある帯域の温度をそれぞれ感知するように配列されている。相異なる温度センサー間における範囲外の温度差は、表面コーティング被覆のない区域および/または表面コーティング被覆のある区域を表示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2004年12月10日にマーク・ウィットホフト(Mark Witthoft)氏によって出願され、発明の名称が「非接触型表面コーティングモニターおよびその使用方法」である米国特許出願第10/905,021号の利益を主張するものである。
【0002】
この発明は一般に、表面コーティングの均一性をモニタリングすることに関するものである。さらに詳しくは、この発明は、コーティングされた表面にわたる温度差のモニタリングによる表面コーティングの均一性の非接触測定に関するものである。
【背景技術】
【0003】
接着剤コーティングおよび/または高分子コーティングのような表面コーティングは広範囲の相異なる製造プロセスに適用されている。例えば、高周波通信産業における同軸ケーブルには、内部導体と外部導体との間に施された押出気泡絶縁材を固定するために、内部導体の上に表面コーティング接着剤を塗布したものが使用されている。接着剤表面コーティングは、内部導体の外面について均一であるべきであり、結果として生じる同軸ケーブルの電気的均一性および/または機械的均一性は低下することがある。例えば、接着剤が内部導体を完全に覆わないときには、絶縁材はそれが施された後にたるむことがあり、かつ/または、空白部/空所のような他の欠陥がもたらされることがある。さらに、製造設備が汚れ、スクラップが発生し、また、さもなければ連続製造において破断が起きることがある。他の極端な場合には、接着剤の過剰塗布によって、製造コストが不必要に増大し、また、内部導体と外部導体との間の誘電率値の電気的不整合が生じることがある。
【0004】
典型的には、目標表面、例えば同軸ケーブルの内部導体の通路を取り囲んでいる、スプレーノズルあるいは小型押出機および関連する精密機械設備のような一列の表面コーティング塗布器は、その目標表面における引っかき試験の結果によって、個別に手で調節される。接着剤がコーティングされた内部導体の引っかき試験では、動いている内部導体の一方側部に引っかき具が保持され、接着剤表面コーティングの盛り上がりが短い試験時間にわたって測定される。内部導体の周りにおけるある範囲の異なった位置での引っかき試験のそれぞれが同様な高さの接着剤の盛り上がりを示すまで、さまざまな塗布器の流量および/または位置が調節される。引っかき試験は、時間のかかるものであり、面倒であり、また、表面コーティングがこの試験によって妨げられるため、それぞれの試験でスクラップの部分が作り出される。さらに、いったん製造工程が開始されると、引っかき試験は製造の中断を引き起こすことなしには実行することができない。
【0005】
接着剤表面コーティングの均一性をモニターする別の方法は、接着剤がコーティングされた内部導体にそれが通過するときに物理的にかする/触れることである。製造環境において動いているラインに触れることは危険であるとともに面倒である。さらに、塗布器の下流側で良好にモニターしないときには、熱い表面コーティングによってオペレーターの指がやけどする恐れがある。
【0006】
製造業者の間の競争は、増大した製造効率、製造投入量の最適化および減少したスクラップ製品に由来するコスト削減に注目が集まってきている。オペレーターの安全性もまた重要な関心事である。
【0007】
従って、この発明の目的は、従来技術における諸欠陥を克服する装置を提供することである。
【0008】
添付図面は、この明細書に組み入れられてその一部を構成するものであるが、この発明の実施形態を、先に与えられたこの発明の一般的説明および以下に与えられる実施形態の詳細な説明とともに図示しており、この発明の原理を説明するのに役立っている。
【詳細な説明】
【0009】
この発明者は、ある表面にわたる表面コーティングの厚さおよび/または均一性が、その表面が温度感知用ゲートウェイを越えて動くときのその表面にわたる温度差に比例していることを認識した。コーティングされた表面にわたる温度の非接触測定によって、コーティングの厚さおよび/または均一性についての従来の破壊的接触試験についての必要性が排除される。
【0010】
粘度およびそれによる塗布特性を改善するために、典型的には接着剤および/または高分子のような表面コーティング剤が、それらの施される表面の温度よりも高い温度で施される。塗布時と同時にコーティング剤は冷却され始める。そのコーティング剤の施される表面がほぼ均一であると仮定すると、均一にコーティングされた表面にわたる冷却もまた均一であるであろう。平坦な表面あるいはその表面の裏側における別々の箇所から離れて伸びている熱伝導性要素の端部のような表面における公知の熱交換特性の差がたとえ存在しても、これらの差は、もしあれば、観察された温度差を考慮に入れることができる。
【0011】
表面温度において検出された変化量は、オペレーターおよび/または表面コーティング厚さの存在および/またはその変化量の自動フィードバックを提供するために使用することができる。例えば、温度センサーによってモニターされた表面のある区域に表面コーティングが存在しないときには、著しく低い温度表示値がもたらされるであろう。同じように、それぞれの温度センサーが表面コーティングの存在を反映している最小温度表示値を少なくとも有しているものの、1つ以上の温度センサーが増大した温度表示値を表示しているときには、その増大した温度表示値の位置で表示された増大厚さとともに、コーティング厚さの変化が存在している。
【0012】
この発明は、図1および図2に示されたような第1実施形態について、同軸ケーブルの製造の間に連続状に施された接着剤表面コーティングのモニタリングを参照して、詳しく説明される。当業者は、この発明を加熱表面コーティングのモニタリングが望まれる任意のプロセスに同じように適用することができることを認識するであろう。
【0013】
図1および図2に示されたように、同軸ケーブルの内部導体のような円筒体1の表面区域にわたる温度が、円筒体1の通路5の周りに配置された一列の温度センサー3によって測定される。示されたように、4つの温度センサー3は、上流側コーティング塗布器7の同様な配置の帯域範囲における代表箇所に配置することができる。隣り合う帯域どうしが重なり合うことがあるが、それぞれの帯域におけるコーティング剤塗布の大部分は関連した塗布器7に起因すると考えられる。それによって、その表面から個々の塗布器7までへの特定の調節および/または個々の塗布器における流量調節の結果は、対応する直列型下流側温度センサー3で観察することができる。いっそう正確なフィードバック、例えば個々の塗布器7のスプレーパターンおよび/または塗布範囲の表示が要求されるときには、それらの帯域は、増大した数の温度センサー3の間で、それぞれの帯域の一部だけを限定的に感知するように構成されたそれぞれの温度センサー3に分けることができる。この代わりに、より少数の温度センサー3、例えばより広いかつ/または重なり合わない帯域範囲がそれぞれに備わっているより少数の温度センサー3を、表面コーティングの均一性よりも表面コーティングの存在をモニターすることが優先されるときに、適用することができる。
【0014】
非接触型温度センサー3は例えば、熱電対、RTD(抵抗温度検知器)、サーミスター、赤外線型および/またはソリッドステート型温度センサーから選択することができる。制限された方向感知特性の備わった温度センサー3によれば、目標表面から得られた温度データーの精度が改善される。温度センサー3の選択におけるさらに別の考慮事項は、処理環境の中におけるほこり、はね、廃ガスなどの存在による汚染に対する温度センサー3の抵抗性および/またはその汚染からの回復の容易性である。
【0015】
表面温度データーは、必要に応じて、例えばオペレーターの評価および行為のために1つ以上の視覚的ディスプレイ9に表示することができる。この代わりにかつ/またはこれに加えて、ディスプレイ9は、プロセス制御器、プログラム可能論理制御器および/またはコンピュータを含んでいてもよく、これらに連結されていてもよく、これらのすべてはこの明細書では、品質管理記録、範囲外アラーム11および/または塗布器7付きプロセス制御リンク13のような機能のための入力値として温度データーを受ける「プロセッサー」と総称される。操作を容易にするためにかつ/または既知の温度差が存在する箇所では、プロセッサーは、温度センサーの出力値が警報目的のためにかつ/またはプロセス制御リンク13による自動化プロセス制御のために比較される最適温度プロフィールを取り込むことができる。
【0016】
モニターされる表面への温度センサー3の迅速な配置を可能にするために、温度センサー3は、例えばX軸およびY軸の両方における表面に関する位置調節のために適合されたアセンブリーに取り付けられるのが一般的である。それによって、温度センサー3の位置は、円筒体1の相異なる位置に関して、共通製造ラインにおいて処理可能な代わりの円筒体1および/または製造工程の進行につれて起きる円筒体1の位置の偏差によって決まる通路5に沿って迅速に調節することができる。
【0017】
さらに別の実施形態では、例えば図3に示されたように、この発明は、例えば多層積層パネル組立において平坦な表面15の一方側面への表面コーティングにも適用することができる。図2および図3によれば、当業者は、コーティングされた表面の広がりにわたる温度センサー3の配置により、コーティングされた表面が一方の平坦側面にわたって広がる同表面の目標区域に局部集中しているにしても360度にわたっているにしても、コーティングされる目標表面の完全なモニタリングが可能になる、ということを認識するであろう。
【0018】
当業者は、表面コーティングの人手による接触試験を省略することによって、この発明がオペレーターの安全性とプロセス制御との顕著な改善を示すということが分かるであろう。さらに、この発明によれば、プロセス中断およびスクラップ発生の著しい減少が可能になる。
【0019】
これまでの説明では、言及は比率、整数、公知の均等物を有している構成要素あるいはモジュールについてなされてきたが、このような均等物は、まるで個々に説明したように、この明細書に組み入れられる。
【0020】
この発明は、その実施形態の説明によって示されてきたが、また、それらの実施形態は相当詳しく説明されてきたが、添付された特許請求の範囲の範囲をそのような細部に制限したりいかなるようにも限定したりすることはこの出願人の意図するところではない。付加的な利点および変形例は当業者に直ちに明らかであるであろう。それゆえ、この発明は、そのより広い観点において、示されて説明された特定の細部、代表的な装置、方法、および説明例に限定されるものではない。従って、発明者の一般的発明概念の精神あるいは範囲から逸脱することなく、そのような細部からの脱却を行うことができる。さらに、それに対する改良および/または改変は、特許請求の範囲によって規定されたようなこの発明の範囲あるいは精神から逸脱することなく行うことができる、ということを認識すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、円筒体、例えば電気的導体の表面コーティングをモニターするために適用されたこの発明の第1実施形態の概略側面図である。
【図2】図2は、図1の概略端面図である。
【図3】図3は、平面体、例えば押出パネルの表面コーティングをモニターするために適用されたこの発明の第2実施形態の概略端面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 円筒体
3 温度センサー
5 通路
7 塗布器
9 ディスプレイ
11 アラーム
13 プロセス制御リンク
15 平坦体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面用の非接触型表面コーティングモニターであって、
ディスプレイに連結された複数の温度センサーを備えてなり、
これら複数の温度センサーは、前記表面におけるある帯域の温度をそれぞれ感知するように配列されている、非接触型表面コーティングモニター。
【請求項2】
前記ディスプレイからの表示が範囲外のものであるときに作動されるアラームをさらに含んでいる、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項3】
前記温度センサーの数は上流側塗布器の数よりも少ない、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項4】
前記温度センサーの数は上流側塗布器の数に等しい、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項5】
前記温度センサーの数は上流側塗布器の数よりも多い、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項6】
前記温度センサーは、表面コーティングのある表面の広がりの周りに配置されている、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項7】
前記温度センサーのための調節可能な取付用アセンブリーをさらに含んでいる、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項8】
前記取付用アセンブリーは、X軸およびY軸において調節可能なものである、請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項9】
前記ディスプレイは、相異なる温度センサー間の温度差を演算するプロセッサーを含んでいる、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項10】
前記ディスプレイに連結されたプロセッサーをさらに含んでいる、請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項11】
前記プロセッサーは、前記表面へ表面コーティングを施すノズル塗布器を制御するための出力値を有している、請求項10に記載のアセンブリー。
【請求項12】
前記プロセッサーは、前記温度センサーの出力値が比較される所望の参照温度プロフィールを取り込むことができるものである、請求項10に記載のアセンブリー。
【請求項13】
ある表面の表面コーティングの非接触式モニタリング方法であって、
その表面にわたって複数の温度センサーを配置するステップと、
これらの温度センサーの温度センサー出力値をディスプレイに連結するステップと、
その温度センサー出力値を温度差の存在について前記ディスプレイで解析するステップと
を備えている、非接触式モニタリング方法。
【請求項14】
前記温度差を減らすために前記温度差に従って表面コーティングの塗布器を調節するステップをさらに含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度差を最小にするように構成されたプロセッサーが前記塗布器を制御するために使用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表面用の非接触型表面コーティングモニターであって、
調節可能なアセンブリーに取り付けられ、
前記表面におけるある帯域の温度をそれぞれ感知するために、モニターされる前記表面の広がりにわたって配列された複数の温度センサーと、
これらの温度センサーに連結され、これらの温度センサーの出力値が比較される所望の参照温度プロフィールを取り込むことができるプロセッサーを有しているディスプレイと、
前記プロセッサーに連結され、前記温度センサーの出力値が前記参照温度プロフィールから所望の偏差を超えると作動するように構成されたアラームと
を備えている、非接触型表面コーティングモニター。
【請求項17】
前記プロセッサーと表面コーティングの塗布器との間に、所望の参照温度プロフィールからの偏差を最小にするように構成されたプロセス制御リンクをさらに含んでいる、請求項16に記載のアセンブリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−170977(P2006−170977A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329478(P2005−329478)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(591032275)アンドリュー・コーポレーション (22)
【氏名又は名称原語表記】ANDREW CORPORATION
【Fターム(参考)】