説明

非接触型超音波厚さ測定装置

【課題】押出成形工程において円筒形状以外の複雑な形状を有する物体の厚さをインラインで測定する。
【解決手段】ヘッド距離調整部2、ヘッド角度調整部3、及び測定位置調整部4を制御することにより、測定ヘッド1の位置及び角度を被測定物5の厚さを測定する上で最適な位置及び角度に制御する測定ヘッド制御部と、測定ヘッド1から出力された超音波パルス信号に対する被測定物5からの反射波パルス信号を受信し、受信した反射波パルス信号の波形に基づいて被測定物5の厚さを演算することにより、被測定物5の厚さを測定する超音波センサ制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形工程において、複雑な形状を有する超音波透過性の物体の厚さをインラインで測定する非接触型超音波厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波探触子の被測定物側に位置する面に超音波透過性の弾性体を固定的に接触配置し、押圧調整手段によって弾性体を介して被測定物に対し超音波探触子を一定圧で押圧することにより被測定物の厚さを測定する装置が知られている(特許文献1参照)。また、超音波センサヘッドの先端部から水を噴射しながらパイプの周囲を回転することによりパイプの厚さを測定する装置も知られている(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−11329号公報
【非特許文献1】超音波パイプ肉厚・外径測定装置パンフレット(川鉄アドバンテック)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置は、超音波探触子が接触型であるために、押出成形工程においては製品を傷つける恐れがあるために利用することができない。また、上記非特許文献1記載の装置は、非接触型であるために押出成形工程において製品を傷つける恐れはないが、円筒形状以外の形状を有する被測定物の厚さを測定することはできない。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、押出成形工程において、円筒形状以外の複雑な形状を有する物体の厚さをインラインで測定可能な非接触型超音波厚さ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る非接触型超音波厚さ測定装置は、被測定物に対し超音波パルス信号を出力する超音波センサと、被測定物に対し水を噴出する水ノズルを有する測定ヘッドと、測定ヘッドと被測定物との間の距離を調整するヘッド距離調整部と、被測定物に対する測定ヘッドの角度を調整するヘッド角度調整部と、被測定物の周囲に沿って測定ヘッドを移動する測定位置調整部と、ヘッド距離調整部、ヘッド角度調整部、及び測定位置調整部を制御することにより、測定ヘッドの位置及び角度を被測定物の厚さを測定する上で最適な位置及び角度に制御する測定ヘッド制御部と、超音波センサから出力された超音波パルス信号に対する被測定物からの反射波パルス信号を受信し、受信した反射波パルス信号の波形に基づいて被測定物の厚さを演算することにより、被測定物の厚さを測定する超音波センサ制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る非接触型超音波厚さ測定装置によれば、押出成形工程において円筒形状以外の複雑な形状を有する物体の厚さをインラインで測定し、押出成形工程の品質向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態となる非接触型超音波厚さ測定装置の構成について説明する。
【0008】
〔非接触型超音波厚さ測定装置の概観構成〕
本発明の実施形態となる非接触型超音波厚さ測定装置は、図1に示すように、測定ヘッド1と、測定ヘッド1と被測定物5との間の距離を調整するヘッド距離調整部2と、被測定物5に対する測定ヘッド1の角度を調整するヘッド角度調整部3と、被測定物5の周囲に沿って測定ヘッド1を移動する測定位置調整部4とを主な構成要素として備える。また、測定ヘッド1は、図2に示すように、被測定物5に対し超音波パルス信号を出力する超音波センサ6と、被測定物に対し水を噴射する水ノズル7を有する。また、この非接触型超音波厚さ測定装置は、図3(a),(b)に示すように、測定位置調整部4に対して平行に配置された形状測定部8を備え、形状測定部8により被測定物の断面形状を測定することができる。
【0009】
〔非接触型超音波厚さ測定装置の制御系の構成〕
上記非接触型超音波厚さ測定装置の制御系は、図4に示すように、形状測定部8により測定された被測定物5の断面形状のデータを記憶する形状データ記憶部11と、形状データ記憶部11に記憶されている断面形状のデータと被測定物5の厚さを測定する被測定物5表面上の位置のデータに基づいて、被測定物5の厚さを測定する上で最適な測定ヘッド1の位置及び角度を演算し、測定ヘッド1が演算された位置及び角度になるようにヘッド距離調整部2、ヘッド角度調整部3、及び測定位置調整部4を制御する測定ヘッド制御部12と、超音波センサ6から出力された超音波パルス信号に対する被測定物5からの反射波パルス信号を受信し、反射波パルス信号の波形に基づいて被測定物5の厚さを演算することにより、被測定物5の厚さを測定する超音波センサ制御部13と、超音波センサ制御部13が受信した反射波パルス信号の波形を記録する反射パルス波形記憶部14を備える。なお、形状データ記憶部11は、図5に示すようなXY座標系(二次元座標系)データとして被測定物5の断面形状を記憶する。
【0010】
〔非接触型超音波厚さ測定装置の動作〕
上記のような構成を有する非接触型超音波厚さ測定装置は、以下に示すように動作することにより、押出成形工程において被測定物5の厚さをインラインで測定する。以下、図6に示すフローチャートを参照して、押出成形工程において被測定物5の厚さをインラインで測定する際の非接触型超音波厚さ測定装置の動作について説明する。
【0011】
図6に示すフローチャートは、被測定物5の厚さの測定指示が入力されるのに応じて開始となり、測定処理はステップS1の処理に進む。
【0012】
ステップS1の処理では、形状測定部8が、被測定物5の断面形状を測定し、測定された断面形状のデータを形状データ記憶部11に記録する。なお、断面形状のデータは、他の手段を利用してオフラインで測定し、測定された断面形状のデータを予め形状データ記憶部11に記録してもよい。これにより、ステップS1の処理は完了し、測定処理はステップS2の処理に進む。
【0013】
ステップS2の処理では、測定ヘッド制御部12が、形状データ記憶部11に記録されている被測定物5の断面形状データを参照して、被測定物5の厚さを測定する位置M(xm,ym)(図5参照)を決定する。これにより、ステップS2の処理は完了し、測定処理はステップS3の処理に進む。
【0014】
ステップS3の処理では、測定ヘッド制御部12が、ヘッド距離調整部2と測定位置調整部4を制御することにより、ステップS2の処理により決定された位置Mを中心とした半径L(=焦点距離)の円周上に沿って測定ヘッド1を移動させる。またこの時、測定ヘッド制御部12は、ヘッド角度調整部3を制御することにより、測定ヘッド1が常に円周に対する接線方向に向くように測定ヘッド1の角度を調整する。
【0015】
具体的には、図5及び図7に示すように、測定位置調整部4の断面形状を半径Rの円形、測定位置調整部4の角度をθ、ヘッド距離調整部2の長さをh、ヘッド角度調整部3の角度をαとした場合、測定ヘッド制御部12は、測定位置調整部4,ヘッド距離調整部2,及びヘッド角度調整部3についてそれぞれ以下の数式1,数式2,及び数式3に示す条件が満たされるように測定位置調整部4,ヘッド距離調整部2,及びヘッド角度調整部3を制御する。
【数1】

【数2】

【数3】

【0016】
そして、超音波センサ制御部13は、測定ヘッド制御部12が測定ヘッド1を移動させている際、測定ヘッド1からの反射波パルス信号を連続的に受信し、受信した反射波パルス信号を測定ヘッド1の位置及び角度と関連づけさせて反射パルス波形記憶部14に記録する。これにより、ステップS3の処理は完了し、測定処理はステップS4の処理に進む。
【0017】
ステップS4の処理では、測定ヘッド制御部12が、反射パルス波形記憶部14に記憶された反射波パルス信号の中で最も感度が高い反射波パルス信号に対応する測定ヘッド1の位置及び角度を検出し、測定ヘッド1が検出された位置及び角度になるようにヘッド距離調整部2、ヘッド角度調整部3、及び測定位置調整部4を制御する。そして、超音波センサ制御部13は測定ヘッド1が検出された位置及び角度にある状態で被測定物5の厚さDを測定する。なお、反射波パルス信号は、一般に図8や図9に示すように、焦点距離付近や角度θ(図7参照)が0°付近において高い感度を示し、焦点距離から外れたり、角度θが0°からずれると感度が低下する。これにより、ステップS4の処理は完了し、一連の測定処理は終了する。
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる非接触型超音波厚さ測定装置は、被測定物5に対し超音波パルス信号を出力する超音波センサ6と、被測定物5に対し水を噴出する水ノズル7を有する測定ヘッド1と、測定ヘッド1と被測定物5との間の距離を調整するヘッド距離調整部2と、被測定物5に対する測定ヘッド1の角度を調整するヘッド角度調整部3と、被測定物5の周囲に沿って測定ヘッド1を移動する測定位置調整部4と、ヘッド距離調整部2、ヘッド角度調整部3、及び測定位置調整部4を制御することにより、測定ヘッド1の位置及び角度を被測定物5の厚さを測定する上で最適な位置及び角度に制御する測定ヘッド制御部12と、超音波センサ6から出力された超音波パルス信号に対する被測定物5からの反射波パルス信号を受信し、受信した反射波パルス信号の波形に基づいて被測定物5の厚さを演算することにより、被測定物5の厚さを測定する超音波センサ制御部13とを備えるので、押出成形工程において円筒形状以外の複雑な形状を有する物体の厚さをインラインで測定し、押出成形工程の品質向上を実現することができる。
【0019】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態となる非接触型超音波厚さ測定装置の概観を示す模式図である。
【図2】図1に示す測定ヘッドの内部構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態となる形状測定部の構成を示す模式図である。
【図4】図1に示す非接触型超音波厚さ測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】ヘッド距離調整部、ヘッド角度調整部、及び測定位置調整部の制御方法を説明するための模式図である。
【図6】本発明の実施形態となる厚さ測定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図7】被測定物と測定ヘッドの位置関係を示す模式図である。
【図8】被測定物と測定ヘッドの間の距離が焦点距離からずれることに伴う反射波パルス信号の感度変化を示す図である。
【図9】被測定物に対する測定ヘッドの角度が0°からずれることに伴う反射波パルス信号の感度変化を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1:測定ヘッド
2:ヘッド距離調整部
3:ヘッド角度調整部
4:測定位置調整部
5:測定ヘッド
6:超音波センサ
7:水ノズル
8:形状測定部
11:形状データ記憶部
12:測定ヘッド制御部
13:超音波センサ制御部
14:反射パルス波形記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に対し超音波パルス信号を出力する超音波センサと、被測定物に対し水を噴出する水ノズルを有する測定ヘッドと、
前記測定ヘッドと前記被測定物との間の距離を調整するヘッド距離調整部と、
前記被測定物に対する前記測定ヘッドの角度を調整するヘッド角度調整部と、
前記被測定物の周囲に沿って前記測定ヘッドを移動する測定位置調整部と、
前記ヘッド距離調整部、前記ヘッド角度調整部、及び前記測定位置調整部を制御することにより、前記測定ヘッドの位置及び角度を被測定物の厚さを測定する上で最適な位置及び角度に制御する測定ヘッド制御部と、
前記超音波センサから出力された超音波パルス信号に対する前記被測定物からの反射波パルス信号を受信し、受信した反射波パルス信号の波形に基づいて被測定物の厚さを演算することにより、被測定物の厚さを測定する超音波センサ制御部と
を備えることを特徴とする非接触型超音波厚さ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触型超音波厚さ測定装置であって、
予め測定された被測定物の断面形状のデータを記憶する形状データ記憶部を備え、前記測定ヘッド制御部は、前記形状データ記憶部に記憶されている断面形状のデータと被測定物の厚さを測定する位置のデータに基づいて、被測定物の厚さを測定する上で最適な測定ヘッドの位置及び角度を演算し、測定ヘッドが演算された位置及び角度になるように前記ヘッド距離調整部、前記ヘッド角度調整部、及び前記測定位置調整部を制御することを特徴とする非接触型超音波厚さ測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の非接触型超音波厚さ測定装置であって、
前記被測定物の形状を測定する形状測定部を備え、前記超音波センサ制御部は形状測定部において被測定物の形状を測定しながら被測定物の厚さを測定することを特徴とする非接触型超音波厚さ測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の非接触型超音波厚さ測定装置であって、
前記超音波センサ制御部が受信した反射波パルス信号の波形を記録する反射パルス波形記憶部を備え、超音波センサ制御部は、前記測定ヘッド制御部により測定ヘッドの位置及び角度を連続的に変化させながら反射波パルス信号を連続的に受信し、受信した反射波パルス信号を測定ヘッドの位置及び角度と関連づけさせて前記反射パルス波形記憶部に記憶し、前記測定ヘッド制御部は、反射パルス波形記憶部に記憶された反射波パルス信号の中で最も感度が高い反射波パルス信号に対応する測定ヘッドの位置及び角度を検出し、測定ヘッドが検出された位置及び角度になるようにヘッド距離調整部、ヘッド角度調整部、及び測定位置調整部を制御し、超音波センサ制御部は測定ヘッドが検出された位置及び角度にある状態で被測定物の厚さを測定することを特徴とする非接触型超音波厚さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−292609(P2007−292609A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121073(P2006−121073)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】