説明

非接触式移送システム

【課題】所定の移送経路に沿って検査などを行う際に、その移送を安全に行い得るとともに、比較的、安価な移動体を採用し得る非接触式移送システムを提供する。
【解決手段】トンネル内に配設された管体1と、この管体1内に配置されるとともに空気輸送により管軸方向で移動自在にされた移動体2と、この移動体2に設けられた超電導磁石体3と、この超電導磁石体3に対応する位置で永久磁石体22が設けられ且つこれら両磁石体3,22同士の反発力により管体1の外面に浮遊されるとともにそのピン止め力により移動体2の移動に追従するようにされた移送体4とから構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力を用いた非接触式移送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの内壁面を検査する場合には、トンネル内を走行する走行車両の荷台に、例えばトンネル内壁面の検査装置を搭載し、そして走行車両を低速で走行させながら、例えば赤外線カメラなどの検査装置により、内壁面が検査されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−311029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、トンネル内壁面の検査については、特に、その周囲の状態に配慮する必要はないが、例えば危険な環境下で検査を行わなければならないような場合、特に、走行車両については、何らかの対策を講じる必要がある。
【0004】
例えば、爆発の危険がある雰囲気下では、走行車両を防爆仕様にする必要が生じたり、また動力源などを搭載する必要が生じるため、重量化および大型化するとともに走行車両の価格が高くなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、所定の移送経路に沿って検査などを行う際に、その移送を安全に行い得るとともに、比較的安価な車両を採用し得る非接触式移送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の物体の非接触式移送システムは、移送経路に沿って配設された管体と、この管体内に配置されるとともに空気輸送により管軸方向で移動自在にされた移動体と、この移動体に設けられた超電導磁石体と、この超電導磁石体に対応する位置で永久磁石体が設けられ且つこれら両磁石体同士の反発力により管体の外面に浮遊されるとともにそのピン止め力により移動体の移動に追従するようにされた移送体とから構成したものである。
【0007】
また、請求項2に係る非接触式移送システムは、請求項1に記載の移送システムにおける移送体に、検査装置を搭載したものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、案内体を移動させるための移動体を、管体内に配置したので、例えば案内体側が爆発などの危険がある雰囲気下(環境状態下)にある場合でも、駆動源である移動体をその雰囲気下から分離された管体内に配置しているため、移動体については特別な仕様にする必要がなく、したがって安価なものを用いることができる。
【0009】
しかも、案内体については、超電導磁石体からの磁束による永久磁石体の反発力で管体の外側に浮上させるとともに超電導磁石体によるピン止め力により案内体を移動体側に追従させるようにしているため、当該案内体を駆動するための駆動源を必要とせず、また移動体については、空気輸送方式を用いているため、移動体自体に駆動源を具備させる必要がなく、したがって移動体自体の小型化および軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る非接触式移送システムを、図1〜図6に基づき説明する。
【0011】
なお、本実施の形態に係る非接触式移送システムにおいては、例えばトンネル内壁面の検査を行うために、検査装置をその内壁面に沿って移送するものとして説明する。したがって、トンネル内検査システムと呼ぶこともできる。なお、この非接触式移送システムは、後述するように、空気圧を用いて移送を行うようにしているため、気流駆動式移送システムと称することもできる。
【0012】
この非接触式移送システムは、図1および図2に示すように、トンネルT内の検査範囲の全長に亘って配設された所定内径(すなわち、円筒形である)の非磁性体の例えば合成樹脂にて形成された管体1と、この管体1の内部に且つ空気輸送により管軸方向で移動自在に配置された移動体2と、この移動体2に搭載された超電導磁石体(超電導バルク体ともいう)3と、上記管体1の外側の上方に且つ上記移動体2に搭載された超電導磁石体3からの磁力(磁束)により所定距離(所定隙間)だけ浮上されるとともに超電導磁石体3すなわち移動体2の移動に伴って移動される案内体(被移動体ともいう)4と、上記管体1内に空気(圧縮空気である)を供給または空気を吸引して上記移動体2を管軸方向で移動させるための給排気装置5とから構成されており、また上記案内体4にトンネル内壁面Tsの検査装置6が搭載されている。
【0013】
上記移動体2は、図3〜図5に示すように、管軸方向で長くされるとともに液体窒素11aが封入された冷却剤容器11と、この冷却剤容器11の前後面に管軸方向で突設された軸体部12と、この軸体部12の周囲四方に放射状に突設された取付ブラケット13の先端に回転自在に設けられた移動輪14と、上記冷却剤容器11の前後端面に設けられて空気圧を受けるための環状の空気受け板15とから構成されている。なお、この空気受け板15の外周面は、管体1内を移動するため、当該管体1の内壁面1aとの間には、少しの隙間が設けられている。勿論、空気が逃げるのを防止するために、空気受け板15側にシール材を取り付けるようにしてもよい。
【0014】
また、上記案内体4は、管体1の上面に覆い被さるような樋状(断面が円弧状)にされた案内本体21と、この案内本体21に且つ上記超電導磁石体3に対応する位置に設けられた永久磁石体22とから構成されており、またこの案内本体21の上面に、載置台23を介して検査装置6が搭載されている。
【0015】
ところで、上記超電導磁石体3は、超電導バルク体ともいい、イットリウム、バリウム、銅、酸素(YBCOとも呼ばれている)などから構成されており、超低温状態では永久に電流が流れるものであり、マイスナー効果およびピン止め効果により、当該超電導磁石体3に対向して配置された永久磁石体22は、浮上力とともに案内方向(管軸方向)が拘束され、したがって超電導磁石体3を移動させると、永久磁石体22が浮上した状態で当該超電導磁石体3に追従することになる。すなわち、移動体2が移動すれば、管体1の外側に配置される案内体4が管体1から浮上した状態で当該移動体2に追従して移動することになる。勿論、冷却剤容器11に封入された液体窒素11aにより超電導磁石体3の超低温状態が維持されている。
【0016】
なお、常温中で外部磁界中に置かれた超電導バルク体を臨界温度以下に冷却すると、超電導化した部分からマイスナー効果によりはじかれた磁束が、格子欠陥や不純物など超電導化しない部分に拘束される。このとき、超電導バルク体に外力が働いて、その位置を変えようとすると、拘束した磁束分布と外部磁界のパターンが一致する空間に戻ろうとする復元力が発生し、これをピン止め力という。
【0017】
次に、給排気装置5について説明する。
この給排気装置(空気輸送装置ともいう)5は、図1に示すように、上記管体1の一端側(閉塞側)に接続された空気配管31と、この空気配管31の途中に設けられた送風機32と、この送風機32の吐出側空気配管31aと吸込側空気配管31bとを接続する第1バイパス管33と、同じく送風機32の吐出側空気配管31aと吸込側空気配管31bとを接続する第2バイパス管34と、これら各バイパス管32,33の途中に設けられた第1および第2開閉弁35,36と、各空気配管31a,31bにおける両バイパス管33,34の接続部分間に設けられた第3および第4開閉弁37,38とから構成されている。なお、空気配管31の先端にはサイレンサー39が取り付けられている。
【0018】
したがって、第1および第2開閉弁35,36を開けるとともに第3および第4開閉弁37,38を閉じて送風機32を駆動すれば、矢印aにて示すように、空気が管体1内に供給されて移動体2は矢印方向bに移動される。
【0019】
また、逆に、第3および第4開閉弁37,38を開けるとともに第1および第2開閉弁35,36を閉じて送風機32を駆動すれば、矢印cにて示すように、管体1から空気が吸引されて移動体2は矢印方向dに移動される。
次に、上記構成によるトンネル内壁面1aの検査作業について説明する。
【0020】
まず、移動体2に設けられた超電導磁石体3に磁力を与えて磁束を発生させた状態にする。すると、この超電導磁石体3からの磁束により、管体1の外側に配置された案内体4は、その案内本体21に設けられた永久磁石体22の反発力により、僅かに、浮上した状態となる。
【0021】
この状態で、給排気装置5の送風機32を駆動して空気を管体1内に供給すると、移動体2は矢印方向bで移動するとともに、超電導磁石体3のピン止め力により、案内体4側に設けられた永久磁石体22が、移動する超電導磁石体3と一体になろうとするため、当該案内体4は移動体2に追従して管体1に沿って移動する。すなわち、案内体4は、移動体2が移動する管体1内とは別な空間である外側で且つ他の部材とは非接触でもって移動案内される。
【0022】
そして、当然に、この案内体4に搭載された検査装置6により、トンネル内壁面Tsの検査が行われる。そして、この検査データについては、例えば無線通信などにより、データ収集箇所7に送られる。勿論、検査データを案内体4側に保持しておき、後で回収するようにしてもよい。
【0023】
このように、案内体4を移動させるための移動体2を、管体1内に配置したので、例えば案内体4側が爆発などの危険がある雰囲気下(環境状態下)にある場合でも、駆動源である移動体2をその雰囲気下から分離された管体1内に配置しているため、安全に移動させてトンネル内を検査することができる。
【0024】
しかも、案内体4については、超電導磁石体3からの磁束による永久磁石体22の反発力で管体1の外側に浮上させるとともに超電導磁石体3によるピン止め力により案内体4を移動体2側に追従させるようにしているため、当該案内体4を駆動するための駆動源を必要とせず、また移動体2については、空気輸送方式を用いているため、移動体2自体に駆動源を具備させる必要がなく、したがって移動体2自体の小型化および軽量化を図ることができる。
【0025】
ところで、上記実施の形態においては、管体の一端側から空気の供給および排出を行うことにより移動体を往復方向で移動させるように説明したが、例えば空気配管を管体の両端部に接続しておき、移動体の移動方向に応じた端部から管体内に空気を供給させることにより、当該移動体を所定方向(往方向または復方向)に移動させるようにしてもよい。
【0026】
また、上記実施の形態においては、管体を円筒形として、すなわち断面形状を円形(環状)として説明したが、円形以外の形状でもよく、例えば断面形状が正方形、長方形などの矩形状であってもよい。
【0027】
さらに、上記実施の形態においては、非接触式移送システムを、トンネル内壁面の検査を行うものに適用して説明したが、例えばクリーンルーム内における物品の移送システム、高放射線レベル下での検査用システムまたは移送用システムにも利用することができる。場合によっては、水中での検査用システムまたは移送用システムにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る非接触式移送システムの概略全体構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】同搬送システムにおける移動体および移送体の構成を示す断面図である。
【図4】同搬送システムにおける移動体および移送体の構成を示す一部切欠平面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】図3のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 管体
2 移動体
3 超電導磁石体
4 案内体
5 給排気装置
6 検査装置
11 冷却剤容器
15 空気受け板
21 案内本体
22 永久磁石体
31 空気配管
32 送風機
33 第1バイパス管
34 第2バイパス管
35〜38 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送経路に沿って配設された管体と、この管体内に配置されるとともに空気輸送により管軸方向で移動自在にされた移動体と、この移動体に設けられた超電導磁石体と、この超電導磁石体に対応する位置で永久磁石体が設けられ且つこれら両磁石体同士の反発力により管体の外面に浮遊されるとともにそのピン止め力により移動体の移動に追従するようにされた移送体とから構成したことを特徴とする非接触式移送システム。
【請求項2】
移送体に検査装置を搭載したことを特徴とする請求項1に記載の非接触式移送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−44829(P2006−44829A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225028(P2004−225028)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(597115369)関西設計株式会社 (5)
【Fターム(参考)】