説明

非接触式給電システムを用いたトロリーシステム

【課題】非接触式の給電システムを用いた場合に、トロリーシステムの簡素化や組立性を向上できる非接触式給電システムを用いたトロリーシステムの提供を図る。
【解決手段】一対の給電線6の接続端部6E同士を内部で電気的に接続することで前記給電線を伸長させるジョイナー8は、一対の給電線6の接続端部6Eを電気的に接続するとともに当該ジョイナー8を内部で固定する接続導体82と、一対の給電線6の接続端部6Eを当該ジョイナー8の内部へと挿入する場合には挿入力に応じて湾曲して当該ジョイナー8の内部へと導くとともに、一対の給電線6の接続端部6Eを当該ジョイナー8の内部へと挿入し接続導体82で固定させた後には挿入力の減少に応じて元の形状へと戻ることで開口凹部81を遮蔽するシャッター83とを有することで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式給電システムにより受け渡される電流を駆動源として移動体を走行させるトロリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では天井クレーンやモノレールなどのトロリーシステムにあって、自走式ホイストや搬送台車などの移動体に駆動源となる電気を供給するにあたって給電システムが用いられる。給電システムは、ホイストを走行させるレールに沿って配索した給電ダクト(給電線)とホイスト側に設けた集電子(ブラシ)との間で電流を受け渡しするようになっており、ブラシで受け取った電流で移動体を走行駆動する。このとき、一般的には、給電システムとしてブラシが給電線に常時接触する接触式給電システムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、接触式給電システムでは、ブラシが給電線に常時接触しつつ移動するため、ブラシや給電線に摩耗が発生して定期的に交換する必要があり、ランニングコストが高いものとなる。
【0004】
このため、近年では、給電線に高周波電流を流して、その給電線の周りに発生する磁界による電磁誘導によって、その給電線に非接触状態で近接させた受電子に誘導電流を発生させるようにした非接触式給電システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−255279号公報
【特許文献2】特開平11−4502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の非接触式給電システムを用いたトロリーシステムでは、給電線と受電子とが非接触であり、かつ、電磁誘導現象を効率良く利用する必要がある。このため、非接触式給電システムを用いたトロリーシステムは、接触式給電システムを用いたトロリーシステムとは自ずと細部の構成が異なることになり、その接触式給電システムを用いたトロリーシステムの構成を踏襲するわけにはいかない。
【0006】
そこで、本発明は、非接触式の給電システムを用いた場合に、トロリーシステムの簡素化や組立性を向上できる非接触式給電システムを用いたトロリーシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、躯体側に固定的に設置されたレールと、前記レールに走行可能に案内支持される移動体と、前記レールに沿って配索され高周波電流が流される給電線と、前記移動体に伴って移動し前記給電線から受け渡される電流で前記移動体を駆動する受電ブロックと、一対の前記給電線の接続端部同士を内部で電気的に接続することで前記給電線を伸長させる接続部とを備え、前記受電ブロックは、前記給電線に非接触状態で配置される受電子を有し、前記給電線と前記受電ブロックとの間の電流受け渡しは、給電線に発生する磁界による電磁誘導によって前記受電子に誘導電流を発生させるようにした非接触式給電システムを用いたトロリーシステムであって、前記接続部は、前記一対の給電線の接続端部を内部に挿入する開口部が形成され、前記一対の給電線の接続端部を当該接続部の内部へと挿入する場合には挿入力に応じて湾曲して当該接続部の内部へと導くとともに、前記一対の給電線の接続端部を当該接続部の内部へと挿入し前記接続導体で固定させた後には挿入力の減少に応じて元の形状へと戻ることで前記開口部を遮蔽するシャッターとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対の給電線を開口部から挿入するだけで接続端部同士を電気的に接続して固定させるとともに、給電線を接続部へと挿入する挿入力に応じて湾曲し、挿入力の減少に応じて元の形状へと戻るシャッター部を有することで、開口部における電気的接続部位の露出を簡易な施工によって容易に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1〜図4は本発明にかかる非接触式給電システムを用いたトロリーシステムの実施形態を示し、図1はトロリーシステムの全体を示す概略構成図、図2は図1中II−II線に沿った拡大断面図であり、図3は給電線の接続端部を示す拡大斜視図、図4は給電線を接続する接続具の拡大斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のトロリーシステム1は、図示省略した移動体用レールに沿って移動可能な移動体3と、この移動体3に電力を供給する非接触式給電システム4とを備えている。
【0012】
移動体3を案内する移動体用レールは、図示省略した工場や倉庫などの躯体に固定して設置される。そして、移動体3は、非接触式給電システム4から供給された電気によってモータ31を駆動して、所定の仕事、例えば移動体用レールに沿った走行や図示省略したチェーンブロックの作動、搬送ベルトの駆動などを行なう。
【0013】
非接触式給電システム4は、レール2と、このレール2に沿って配索され高周波電源5から高周波の電流が流される複数の給電線6と、移動体3に従動し給電線6から受け渡される電流を移動体3に供給する受電ブロック7とを備える。この非接触式給電システム4は、電磁誘導によって給電線6に接触することなく給電線6から電気を受け取ることができるようになっている。
【0014】
受電ブロック7は、移動体3に固定されて移動体3に牽引されるようになっており、移動体に牽引されることでレール2に沿って移動する。
【0015】
受電ブロック7は、給電線6に非接触状態で配置される受電子としてのコア71を有している。コア71は、図2に示すように、給電線6を側方から跨るように断面ほぼU字状の外郭71sを有し、その外郭71sの内部には給電線6の両側方に位置するように一対のコイル71p、71mが対向配置されて電磁ピックアップが構成される。このとき、コイル71p、71mは給電線6に可能な限り近接させることが好ましい。そして、高周波電源5から給電線6に高周波電流が供給されることにより、給電線6の周囲には供給された高周波電流の周波数に応じた磁界MFの発生・減衰現象が発生し、それが磁束密度の変化となってコイル71p、71mに誘導電流が発生する。
【0016】
そして、コイル71p、71mに発生した電流は、図1に示すように、受電ブロック7に内蔵した共振回路72で安定化した後、定電圧回路73から移動体3に設けたインバータ32に送って直流に変換した電流をモータ31に供給するようになっている。
【0017】
給電線6は、図3に示すように、導体部61と、この導体部61を中心部に埋設した絶縁部62とによって所定長さの長尺体として形成される。給電線6は配索される長さに応じて複数本を繋いで使用される。
【0018】
導体部61は、チャンネル状の小径管61aと大径管61bとをほぼ同心円状に配置した二重管構造となっており、小径管61aの開放部61cと大径管61bの開放部61dとが同方向に配置される。そして、小径管61aと大径管61bとは、開放部61c、61dとは反対側で連結リブ61eを介して互いに連結される。また、大径管61bの連結リブ61eの配置側には、その連結リブ61eを中心として所定幅W0に亘って平坦部61fを形成してある。
【0019】
絶縁部62は、柔軟な合成樹脂などで形成される。この絶縁部62に導体部61をインサートして押出し成型することにより、所定長さの給電線6を連続的に成形することができる。絶縁部62は、全体的にほぼ断面矩形所に形成される。
【0020】
そして、図1に示すように、給電線6同士は、レール2に沿って配索される際、ジョイナー8、L型ジョイナー8A、エンドジョイナー8Bなどの接続具を介して繋げられる。
【0021】
ここで、レール2には、移動体3の予め設定した走行経路に沿って直線部分、折曲部分および湾曲部分などが形成され、これに伴って給電線6もレール2の直線部分は直線状配索部分6Aとなり、折曲部分は折曲状配索部分6Bとなり、かつ、湾曲部分は湾曲状配索部分6Cとなる。従って、給電線6の直線状配索部分6Aはジョイナー8によって接続され、折曲状配索部分6BはL型ジョイナー8Aによって接続される。また、給電線6は往路側の線6mと復路側の線6nとがほぼ平行して配索されることになるが、それら両線6m、6nの終端部同士はエンドジョイナー8Bで接続される。
【0022】
給電線6は、適宜部分を電線ハンガー9によってレール2に固定される。この電線ハンガー9によって、給電線6をレール2に沿わせて配索しつつ、給電線6の垂れ下がりを防止するようになっている。
【0023】
電線ハンガー9は、図2に示すように、一対の平行配置される給電線6を保持する保持アーム91、92と、これら保持アーム91、92の基端部同士を連結する連結部93とによってほぼU字状に形成され、それぞれの保持アーム91、92の先端部に給電線6を保持する保持部91H、92Hが形成される。保持部91H、92Hは、給電線6の外側形状、つまり、絶縁部62の外側断面形状にほぼ沿った内側形状に形成され、保持部91H、92Hによって給電線6をガタ無く密接して保持する。
【0024】
ここで、図1では、保持アーム91、92の長さを、便宜上、ほぼ等しい状態で示してあるが、実際には図2に示すように、往路側の線6mを保持する保持アーム91が、復路側の線6nを保持する保持アーム92よりも長く形成され、コア71が復路側の線6mをスペース的に余裕をもって通過できるようになっている。
【0025】
図4に示すように、給電線6同士を直線状に接続するジョイナー8は、全体が例えば合成樹脂などの絶縁部材によって給電線6よりも大きな幅W2となる直方体状に形成される。ジョイナー8の高さh方向(図中上下方向)の一端部には、給電線6を上方から挿入する開口凹部81が長さL方向(図中左右方向)に貫通して形成され、接続しようとする一対の給電線6の接続端部6Eを対向させて上方から挿入するようになっている。このとき、給電線6の接続端部6Eは、所定長さL1に亘って絶縁部62を切除して導体部61を露出させてある。
【0026】
開口凹部81は、給電線6の絶縁部62の外側形状にほぼ沿った断面形状となっており、開口凹部81に給電線6を差し込んだ状態では、給電線6はガタ無くジョイナー8に保持されて容易に離脱されないようになっている。
【0027】
開口凹部81の内部中央部には、給電線6の接続端部6Eから露出した導体部61を上方から挿入することで固定することができる銅、又は銅合金などで形成された接続導体82が取り付けてあり、その接続導体82を介して接続しようとする給電線6の導体部61同士が電気的に接続される。図5に示すように、接続導体82は、上部が開口部82aとして開口されるとともに導体部61の形状に応じて電気的な接続が良好となる形状に形成されている。また、ジョイナー8の幅W2はコア71が通過できる寸法となっている。
【0028】
図5に示すようにジョイナー8には、ジョイナー8の開口凹部81の形成に伴い左右に形成された端部8aから、接続導体82が設けられた開口凹部81の位置を覆うように可撓性ならびに絶縁性のある、例えば、ゴムなどの材料にて形成された板状のシャッター83がそれぞれ設けられている。
【0029】
図5は、図4中III−III線に沿ってジョイナー8を切断した際に、給電線6の接続端部6Eから露出された導体部61を挿入させていない状態を示している。図6は、図4中III−III線に沿ってジョイナー8を切断した際に、給電線6の接続端部6Eから露出された導体部61を挿入中の状態を示している。図7は、図4中III−III線に沿ってジョイナー8を切断した際に、給電線6の接続端部6Eから露出された導体部61が完全に挿入された状態を示している。
【0030】
図5に示すように、2つのシャッター83は、一端がジョイナー8の端部8aに接続され、他端が接続導体82の開口部82aの中央位置辺りまで伸び、自然な状態において自身の重みにて開口部82a内部まで垂れ下がり重なりあうようにしながら接続導体82を覆っている。
【0031】
図6に示すように、給電線6の接続端部6Eから露出された導体部61をジョイナー8の開口凹部81に挿入させる途中において、シャッター83は、可撓性により挿入時の挿入力に応じて湾曲してジョイナー8内部の接続導体82へと導体部61を導く。
【0032】
図7に示すように、給電線6の接続端部6Eから露出された導体部61をジョイナー8内部へと挿入し、接続導体82で固定させると、シャッター83は、可撓性により挿入力の減少に応じて元の形状、つまり図5に示すような自然な状態へと戻る。上述したように、シャッター83は、絶縁性を有しているため、図7に示すように一対の給電線6の接続端部6Eから露出された導体部61同士が、接続導体82を介して電気的に接続された状態では、ジョイナー8の開口凹部81を遮蔽して、接続導体82、導体部61を外部から電気的に遮蔽することになる。
【0033】
このように、本発明の実施の形態として示す非接触式給電システムを用いたトロリーシステムでは、ジョイナー8にシャッター83を設けることで、ジョイナー8の開口凹部81における電気的接続部位である接続導体82、導体部61の露出を、カバーなどの別部材を設けることなく非常に簡易な施工によって容易に保護することができる。つまり絶縁性を有するシャッター83は、ジョイナー8の電気的接続部位を電気的に遮蔽するため、施工者又は使用者などが施工処理中又は使用中などに電気的接続部位に接触して感電することなどを防止することができる。
【0034】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態として示すトロリーシステムの全体を示す概略構成図である。
【図2】図1中II−II線に沿った拡大断面図である。
【図3】給電線の接続端部を示す拡大斜視図である。
【図4】給電線を接続するジョイナーの拡大斜視図である。
【図5】給電線の導体部を挿入する前における図4中III−III線に沿った拡大断面図である。
【図6】給電線の導体部を挿入中における図4中III−III線に沿った拡大断面図である。
【図7】給電線の導体部を挿入した後における図4中III−III線に沿った拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 トロリーシステム
2 レール
3 移動体
4 非接触式給電システム
5 高周波電源
6 給電線
6E 接続端部
7 受電ブロック
8 ジョイナー
8a 端部
61 導体部
62 絶縁部
81 開口凹部
82 接続導体
82a 開口部
83 シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体側に固定的に設置されたレールと、
前記レールに走行可能に案内支持される移動体と、
前記レールに沿って配索され高周波電流が流される給電線と、
前記移動体に伴って移動し前記給電線から受け渡される電流で前記移動体を駆動する受電ブロックと、
一対の前記給電線の接続端部同士を内部で電気的に接続することで前記給電線を伸長させる接続部とを備え、
前記受電ブロックは、前記給電線に非接触状態で配置される受電子を有し、前記給電線と前記受電ブロックとの間の電流受け渡しは、給電線に発生する磁界による電磁誘導によって前記受電子に誘導電流を発生させるようにした非接触式給電システムを用いたトロリーシステムであって、
前記接続部は、前記一対の給電線の接続端部を内部に挿入する開口部が形成され、
前記一対の給電線の接続端部を電気的に接続するとともに当該接続部の内部で固定する接続導体と、
前記一対の給電線の接続端部を当該接続部の内部へと挿入する場合には挿入力に応じて湾曲して当該接続部の内部へと導くとともに、前記一対の給電線の接続端部を当該接続部の内部へと挿入し前記接続導体で固定させた後には挿入力の減少に応じて元の形状へと戻ることで前記開口部を遮蔽するシャッターとを有すること
特徴とする非接触給電システムを用いたトロリーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−247141(P2009−247141A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91701(P2008−91701)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】