説明

非接触式ICカードホルダー

【課題】2〜4枚の非接触式ICカードを収納したカードホルダーにおいて、カードホルダーから非接触式ICカードを取り出すことなく、カードホルダーをカードリーダ面にかざしても読み取りエラーが生じないカードホルダーであって、電波吸収体層(例えばフェライト層)を用いないカードホルダーを提供することによって、材料を省力化するとともに、製造工程を簡略にすることを目的とする。
【解決手段】2〜4枚の長方形状のICカード保持シート及び該ICカード保持シートと同寸同形の導電体保持シート1枚とからなり、各ICカード保持シートの長方形状の1辺は、導電体保持シートの同一の長さの1辺との間の屈折自在の連結部を介して連結されていることを特徴とする非接触式ICカードホルダーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の非接触式ICカードをまとめてカードホルダー収納した場合、カードホルダーから非接触式ICカードを取り出さないで使用する時に生じるICカードの読み取りエラーを防止することができる非接触式ICカードホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カードリーダ面にかざすだけで、すなわち、非接触式でカードリーダ面に設けられたアンテナ(以下リーダアンテナという)からの発信された磁力線の信号と交信することができる非接触式ICカードが普及してきている。
現在、非接触式ICカードは種類等異なるものが複数共存している。そのため、2枚以上の非接触式ICカードを例えば定期入れなどのカードケースに重ねて入れて、持ち歩く機会が多くなっている。
この場合、定期入れ又はカードホルダーに2枚以上の非接触式ICカードを収納したままカードリーダ面にかざすと非接触式であるために、2枚以上の非接触式ICカードが同時にカードリーダと交信することとなり、読み取りエラーが生じる問題がある。
このような問題を解決するために、従来技術としては、該導電性シートの両側に、フェライト等の電波吸収体(磁性体)層を設け、その電波吸収体層の両側の面に、2枚の非接触式ICカードを積層して、カード入れに収納するものが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
これらの従来技術のカードホルダーは、収納されている2枚の非接触式ICカードの間の導電性シート(金属シートなど)は、例えば、特許文献2に見られるように、非接触式ICカードの寸法よりも導電性シートの寸法を大きくして、カードリーダ面から見て、導電性シートの反対側にある非接触式ICカードと、リーダアンテナからの磁力線を遮断して反対側の非接触式ICカードが作動しないようにしている。
そして、カードリーダ面から見て、導電性シートの手前側にある非接触式ICカードが導電性シートによってリーダアンテナからの発信された磁力線を散乱させないために、導電性シートの手前側に電波吸収体層を設けた技術的思想である。
【特許文献1】特許第3630006号
【特許文献2】特許第3872496号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、2〜4枚の非接触式ICカード(以下単にICカードという)を収納したカードホルダーにおいて、カードホルダーから非接触式ICカードを取り出すことなく、カードホルダーをカードリーダ面にかざしても読み取りエラーが生じないカードホルダーであって、電波吸収体層(例えばフェライト層)を用いないカードホルダーを提供することによって、材料を省力化するとともに、製造工程を簡略にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、ICカードのアンテナとリーダアンテナとの交信を遮断するのは、導電性シートがICカードのリーダアンテナから磁力線が照射される側の面に密着している場合のみでなく、磁力線が照射される側の裏面側に導電性シートが近接している場合も、ICカードのアンテナとリーダアンテナとの交信を確実に遮断することを見いだし、この知見に基づき、複数のICカードと1枚の導電性シートの全体をまとめて積層した状態で持ち歩くことができ、カードリーダ面にICカードの1枚を使用するときは、使用すべき非接触式ICカードのみが導電性シートと積層状態になく、他のICカードは全て導電性シートと積層された状態でカードホルダー全体をカードリーダ面にかざすことができ、かつ、使用すべきICカードのみを導電性シートを含む積層面から簡単に分離できるカードホルダーの構造を案出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)2〜4枚の長方形状のICカード保持シート及び該ICカード保持シートと同寸同形の導電体保持シート1枚とからなり、各ICカード保持シートの長方形状の1辺は、導電体保持シートの同一の長さの1辺との間の屈折自在の連結部を介して連結されていることを特徴とする非接触式ICカードホルダー、
(2)2枚のICカード保持シート及び導電体保持シートを重ねて3枚束として、該3枚束の1辺を開閉自在に固定したことを特徴とする第1項記載の非接触式ICカードホルダー、
(3)ICカード保持シートが長方形状シートの少なくとも2辺を閉鎖してなる袋体であり、該袋体は、長方形状の1辺に開口部を有するものである第1又は2項記載の非接触式ICカードホルダー、
(4)ICカード保持シート及び導電体保持シートの材質が合成樹脂シートである第1〜3項のいずれか記載の非接触式ICカードホルダー、
(5)少なくとも1枚のICカード保持シートの面及び該ICカード保持シートを閉鎖したときに、ICカード保持シート閉鎖面に対向するICカード保持シート若しくは導電体保持シートの面に、互いに嵌合する樹脂製ジッパーを設けた第4項記載の非接触式ICカードホルダー、
(6)ICカード保持シート及び導電体保持シートが、布若しくは皮シートである第1〜3項のいずれか記載の非接触式ICカードホルダー、
(7)導電体保持シートの導電体が厚さ25〜100μmの金属膜又は厚さ0.1〜3mmの金属板である第4又は5項記載の非接触式ICカードホルダー、
(8)ICカード保持シート及び導電体保持シートの材質が合成樹脂シートであって、3枚束の1辺の開閉自在の固定が融着固定である第2項記載の非接触式ICカードホルダー、及び、
(9)導電体保持シートが金属板である第1、2又は7項記載の非接触式ICカードホルダー、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によるICカードホルダーを使用すれば、二枚のICカードを収納でき、使用したいICカードの使用時には、該ICカードが導電性シートと重ならないように開くことで、読み取りエラーが生じることなく正常に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を、図面によって説明する。本発明は、該図面によって制限されるものではない。
図1は、本発明の一態様のカードホルダーを、連結部を開いて展開した状態の平面図である。
図1は、4枚の長方形状のICカード保持シート1、2、3及び4が、中央の1枚の導電体保持シートDの長方形状の4辺と屈折自在の連結部Rによって連結されている。
4枚のICカード保持シートには、それぞれ袋体部Fが設けられている。この袋体部Fは、長方形状シートのICカード保持シートの少なくとも2辺を閉鎖して形成されていて、長方形状の1辺には非接触式ICカードAを挿入するための開口部Kが設けられている。
図1のICカードホルダーの導電体保持シートは、非導電性シートに保持されている。
保持の方法は、非導電性シートに接着剤等で貼付けたり、非導電性シートで形成された袋部に収納させることができる。
非導電性シートとしては、合成樹脂製又は布若しくは皮製とすることができる。
場合によっては、金属板に、直接屈曲自在の連結部をつけて、ICカード保持シートと連結することができる。
本発明の導電体保持シートに用いる導電体は、厚さ25〜100μm金属膜又は厚さ0.1〜3mmの金属板を用いることができる。金属層の厚さは、ICカードホルダーが折り畳むことができる範囲で厚くても問題なく使用できるが、厚さが薄いと磁力線の遮蔽効果が低下する。そのため、金属層の厚さは0.040〜3mmの金属層が好ましい。
図1のICカードホルダー連結部Rは、導電体保持シートDの面とICカード保持シートの面を、180〜360度の角度まで開くことができる。
例えば、図1のICカードホルダーのICカード保持シートにICカードを収納して、ICカード保持シート4、ICカード保持シート3、ICカード保持シート2をそれぞれの折り癖を付けた連結部Rにおいて、表側又は裏側方向に180度折り曲げて、最後にICカード保持シート1を表側に折り曲げ、表面にすると図2の平面図のような5重シートのICカードホルダーの平面形状にすることができる。そして、図2の状態からICカード保持シート1のみを左に開くと、ICカード保持シート1のみが、導電体保持シートDの面積の外側に外れる。この開いた状態で、カードリーダ面にICカードホルダーのどちらの面を向けてかざしても、ICカード保持シート1に収納されているICカードのみがカードリーダのアンテナと交信し、他のICカード保持シートのICカードが混信することはない。本発明のICカードホルダーのICカード保持シートの袋体部にはICカード以外に、プラスチック製プリペイドカード、クレジットカード又は名刺、メモ用紙等の紙類などの磁界を妨害しないものであれば特に制限無く収納することができる。
また、本発明のICカードホルダーを複数連結させた態様とすることができる。
【0007】
本発明のICカードホルダーの材質は、合成樹脂シート、布シート、皮シート、合成皮革シート等のシート形状であれば、特に制限無く用いることができる。
本発明の導電体保持シートの4辺に設ける連結部は、180〜360度の角度まで、屈曲することが必要であり、そのため可撓性のある合成樹脂、皮、布などを連結部の材質にすることができる。特に、合成樹脂としては、反復屈曲性の極めて大きいポリプロピレン樹脂が特に望ましい。
本発明のICカードホルダーの連結部並びにICカード保持シート及び導電体保持シートの材質を同一材質にすることが、ICカードホルダー全体を連続化できるので強度及び製造工程の観点から望ましい。
特に、本発明のICカードホルダーの全シートを熱可塑性合成樹脂で統一すると、プラスチック製袋体連続製造工程に常用されている熱シール手段、熱溶断手段によって、連続的に製造できるので好ましい。
本発明のICカードホルダーは、図1のICカード保持シート1〜4のいずれか1〜2枚を削除することができる。1枚を削除した場合には、導電体保持シートを中心にして3枚のICカード保持シートが、T字型に連結された展開形状となり、2枚を削除した場合は、導電体保持シートを中間にして、直線状又はL字型の展開図となる。
図3は、本発明のICカードホルダーの他の態様を示す正面図であり、図5は、本発明のICカードホルダーの他の態様を示す断面図である。図3に示すように、導電体保持シートを真ん中にして、2枚のICカード保持シートを長方形の1辺で束ねたICカードホルダーの袋体部にICカードを収納した状態のICカードホルダーとなっている。この実施例の導電体保持シートは60μmのアルミ箔を2枚の100μmの厚さの樹脂シートの間に封入したシートである。そして、導電体保持シート及びICカード保持シートは、綴じ部Jにおいて、一体的に溶着して固定されている。
ICカードは、左右のICカード保持シートに設けた袋体部Fの開口部Kから袋体に挿入されている。ICカードの端が外に露出しているのは、ICカードを取り出し易くするためである。
【0008】
本発明のICカードホルダーを、ポリプロピレン樹脂シートによって製造すると、表面光沢がよく、製品の印刷模様が鮮明になるとともに、屈曲反復に対する強度が大きいので好適である。
図3のICカードホルダーのICカード保持シートの縁には、凸状リブと凹状溝を組み合わせて固定できるジッパーGの片方が形成されている。そして、本発明のICカードホルダーを閉鎖したときに、ICカード保持シートの縁のジッパーGにちょうど一致する位置にジッパーGに嵌合するジッパーHが取り付けられている。
図3のICカードホルダーは、図4のように一方のICカード保持シートを広げて、カードリーダにかざすことができる。このとき、図4の上段の状態に導電体保持シートを左のICカード保持シート面を密着させると、右側のICカード保持シートのICカードは、カードリーダと交信可能であるが、左側のICカード保持シートのICカードは、ICカード保持シートの裏表のいずれの面から照射された磁力線にも反応しない。図4の下段の状態では、ICカード保持シートの裏表のいずれの側から磁力線が照射されても、左のICカード保持シートのICカードがカードリーダと交信可能となり、右側のICカード保持シートICカードは、作動しない。
本発明のICカードホルダーを使用するときは、使用するICカード保持シートを開いて、他のICカード保持シートは指で押さえて、カードリーダ面にかざせば、所定のICカードのみを使用することができる。
また、本発明のICカードホルダーでは、導電体保持シートを、金属板を露出した状態で使用することができる。この場合も、連結部は、可撓性の材質によって、ICカード保持シートと連結する必要が生じる。
また、本発明の導電体は、長方形の導電体シートが好適であるが、ICカードの全面積をカバーしていない態様となる長方形導電体シート中央部の導電体層部分を削除した穴あき導電体シートにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明の非接触式ICカードホルダーは、複数の非接触式ICカードを収納するカードホルダーとして使用することができる。カードホルダーに複数枚の非接触式ICカードを収納したまま、使用したい一枚の非接触式ICカードのみをカードリーダにかざして、正常に使用することができる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の一例を示す正面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の図3の他の実施形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 ICカード保持シート
2 ICカード保持シート
3 ICカード保持シート
4 ICカード保持シート
A 非接触式ICカード
D 導電体保持シート
F 袋体部
G ジッパー
H ジッパー
J 綴じ部
K 開口部
R 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜4枚の長方形状のICカード保持シート及び該ICカード保持シートと同寸同形の導電体保持シート1枚とからなり、各ICカード保持シートの長方形状の1辺は、導電体保持シートの同一の長さの1辺との間の屈折自在の連結部を介して連結されていることを特徴とする非接触式ICカードホルダー。
【請求項2】
2枚のICカード保持シート及び導電体保持シートを重ねて3枚束として、該3枚束の1辺を開閉自在に固定したことを特徴とする請求項1記載の非接触式ICカードホルダー。
【請求項3】
ICカード保持シートが長方形状シートの少なくとも2辺を閉鎖してなる袋体であり、該袋体は、長方形状の1辺に開口部を有するものである請求項1又は請求項2記載の非接触式ICカードホルダー。
【請求項4】
ICカード保持シート及び導電体保持シートの材質が合成樹脂シートである請求項1〜3のいずれか記載の非接触式ICカードホルダー。
【請求項5】
少なくとも1枚のICカード保持シートの面及び該ICカード保持シートを閉鎖したときに、ICカード保持シート閉鎖面に対向するICカード保持シート若しくは導電体保持シートの面に、互いに嵌合する樹脂製ジッパーを設けた請求項4記載の非接触式ICカードホルダー。
【請求項6】
ICカード保持シート及び導電体保持シートが、布若しくは皮シートである請求項1〜3のいずれか記載の非接触式ICカードホルダー。
【請求項7】
導電体保持シートの導電体が厚さ25〜100μmの金属膜又は厚さ0.1〜3mmの金属板である請求項4又は請求項5記載の非接触式ICカードホルダー。
【請求項8】
ICカード保持シート及び導電体保持シートの材質が合成樹脂シートであって、3枚束の1辺の開閉自在の固定が融着固定である請求項2記載の非接触式ICカードホルダー。
【請求項9】
導電体保持シートが金属板である請求項1、請求項2又は請求項7記載の非接触式ICカードホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−237598(P2009−237598A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39134(P2008−39134)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(500320039)
【出願人】(508053603)
【Fターム(参考)】