説明

非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステム

【課題】 人の歩行を非接触で、しかも相手に知られることなく高精度に検出できるようにすると共に、検出結果から個々の人間を識別することを可能とし、個人認証への応用も可能な非接触歩行検出システムと該システムを用いた認証システムを提供することが課題である。
【解決手段】 人の歩行路に近接して設けられた電極と、前記歩行路における人の歩行によって生じる前記電極の浮遊容量の変化を誘導電流の変化として捉える電流計測手段と、予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記電流計測手段で検出して出力波形を記憶した記憶手段と、前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形を前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形と比較し、両者が略一致したときに前記特定人であると認証して外部に通知する波形比較装置とでシステムを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の歩行状態を非接触で検出する非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の歩行に関するデータは、例えば医療面において新しい歩行装具やリハビリテーションへの応用、神経再生医療への適用等が考えられ、また、ロボットの開発においては、2足歩行ロボット、装具・歩行補助ロボット等への適用が考えられている。
【0003】
また人間の歩行は、個人の骨格、筋力、体重等の物理的な特性にのみ起因するものではなく、誕生時からの発達過程で人間が2足歩行を確立してゆく際の脊髄の学習によるものと考えられている。従って人間の歩行は、脊髄からの信号と感覚系のフィードバックの統合による自立的でダイナミックなリズムを備え、このリズムは、個々の人間固有のパターンを示すことが知られており、そのため、こういった医療やロボットなどへの応用だけでなく、例えばセキュリティ技術の一環として、非接触に人を認証する技術への応用なども考えられている。
【0004】
すなわち例えば、銀行などで接客を行うロボットは、個人に応じたサービスを提供するためユーザの認識を行う必要があるが、こういったユーザ認識の方式としては従来から、指紋や光彩を用いる方式、顔データを用いた画像認識や音声データを用いた音声認識による方式、RFIDタグ(Radio Frequency IDentification=無線ICタグ)を用いた方式などがあった。
【0005】
しかしながら、指紋や光彩を用いた方式は高信頼ではあるがこれらの採取はプライバシーの問題とも関わり、銀行などで用いることには抵抗がある。画像認識を用いた方式は、ユーザの顔がロボットと正対していないと正しく認識できないという問題があり、また音声認識も、反響音や他のノイズ音が混じった場合にうまく認識できないといった問題が生じる。さらにRFIDタグも、高信頼に人を識別できる方式ではあるが、タグを身につけている必要があり、タグを人のものとすり替えることによる「なりすまし」の可能性があり、セキュリティ上の問題がある。
【0006】
しかし人間の歩行は、前記したように個々の人間固有のパターンを示しているため、この歩行に伴うパターンを人と非接触で検出できれば、人間固有のパターンであるが故に信頼性が高く、プライバシー面やセキュリティ面からも非常に効果的な認識が行える。
【0007】
歩行者の歩行を検出する方式としては、いわゆる万歩計(登録商標)と称して振動子を内蔵し、歩行時におけるこの振動子の振動を検出する方式のものや、特許文献1に示されているように、地面と足との間に生じる静電気の電荷量が、歩行に伴う足を地面に付けたり離したりする動作で変化することを検出する方式、さらに特許文献2に示されているように、歩行時に発生する水平方向の振動に個人差が顕著に現れるため、水平方向の加速度波形を検出する加速度センサを万歩計(登録商標)のように人体に装着し、検出した加速度波形によって解析機器で自己相関関数を算出し、個人認識の分析手法に利用する方式などがある。
【0008】
また据置型の歩行検出装置としては、例えば床反力計と称して床に所定の大きさを有した反力板を設け、その下面に複数の床反力(垂直成分、前後成分、左右成分)を検出する歪みゲージ式ロードセルを配置して、歩行者が歩いたときの反力板の微小な変形を検出することにより歩行者の歩行を検出するようにした装置や、カメラで人の歩行の動きを画像として取り込み、歩行動作を検出するモーションキャプチャ方式、靴の中敷きに圧力を検知するセンサを貼り付け、歩行時の圧力分布を計測する中敷型面上圧力計方式などがある。
【0009】
そして特許文献3には、歩行者にマイクを取り付けて歩行者の体内を伝わってくる低周波帯域の音を採集し、解析部で解析して、歩行態様の識別、歩幅の推定、歩行者の認識などを行う装置が示され、さらに特許文献4には、リストバンドなどによって歩行者や歩行生物等の検出対象に直接あるいは間接的に接触させることにより、検出対象の身体と電荷的に略等価となる検出電極と、検出対象とは一定以上離間して分極による一定電位を保持した基準電極と、電位検出回路とを備え、基準電極で検出される電位を基準として検出電極での電位を検出し、歩行による電位の変化に基づいて検出対象の歩行を検出するようにした、歩行検出方法と歩行検出装置が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平9−269991号公報
【特許文献2】特開2001−190527号公報
【特許文献3】特開2002−197437号公報
【特許文献4】特開2003−58857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、万歩計(登録商標)のような振動子を内蔵したメカニカルな方式では、歩行時以外であっても振動子が動作するだけの振動が入力されれば歩数がカウントされることになり、計測精度が低く、また特許文献1のものは、静電気検出手段を歩行者に取り付ける必要があって非接触な歩行検出ができない。また、こういった振動子を内蔵した方式や、前記特許文献2のように加速度センサやジャイロセンサを用いる方式も、予め機器を人体に取付けねばならず、検出精度を高めるには、歩行者の腰等、特定の箇所に確実に取付ける必要があって非接触な計測はできないから、取り付けを忘れたり盗難などがあると検出が不可能になってセキュリティ方面に応用することはできない。しかも特許文献2の方法は、センサの向きによって検出結果が異なるから、歩行者にセットしてからセンサの軸方向の検出を行なうキャリブレーション作業が加わり、調整に手間がかかったり、プログラムや回路の構成が複雑になる。さらに、歩行に際しての歩行者の複雑な動きを高精度で検出するには、多軸の加速度センサが必要となって構成の複雑化、および高コスト化を招く。
【0012】
また、床反力を検出する方式は、接地運動のデータは取得可能であるが非接触計測が不可能であり、精度の良い検出結果を得るためには小さいメッシュで多数の圧力センサを床に配置する必要があり、装置自体が高価なものになるという問題がある。また、モーションキャプチャ方式は定量データの計測が可能だが、人の関節などの特徴部位に磁気器具やマーカを予め装着する必要があり、個人認証システムとしては受け入れられにくい。さらに、中敷型面上圧力計方式も、非接触の計測が困難であり、接地運動のデータのみが取得可能であるため用途が限定される。
【0013】
そして、特許文献3に示されたものは、歩行者に取り付けたマイクによって採集した音声波形のピークを単純にカウントするものであれば、波形の時系列的な変化をフーリエ変換やウェーブレット変換することによって周波数の強度スペクトルパターンに変換し、そのパターンを解析すれば歩行を検出できる。しかし、歩行を実際に検出する環境には、例えば歩行者が車両に搭乗している場合に車両側で発生するノイズ等、歩行者以外の外部から混入するノイズが存在する。このため、いずれの方式で歩行の検出を行なうにしても、これらのノイズがその検出精度(解析精度)に大きく影響する。このため、マイクで採集した音から歩行態様を解析し、個体(歩行者)を識別することは困難である。
【0014】
さらに特許文献4に示された方法は、リストバンドなどによって歩行者や歩行生物等の検出対象に直接あるいは間接的に接触させる必要があって非接触の計測はできず、これも前記したように取り付けを忘れたり、盗難などがあると検出が不可能になってセキュリティ方面に応用することはできない。
【0015】
そのため本発明においては、人の歩行を非接触で、しかも相手に知られることなく高精度に検出できるようにすると共に、検出結果から個々の人間を識別することを可能とし、個人認証への応用も可能な非接触歩行検出システムと該システムを用いた認証システムを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため本発明における非接触歩行検出方法は、
人の歩行を非接触で検出する歩行検出方法であって、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出し、該検出手段出力を解析して歩行に起因して生じる人固有の信号のパターンを導出することを特徴とする。
【0017】
このように、人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出して歩行に起因して生じる人固有の信号のパターンを導出することにより、歩行者とまったく非接触で歩行状態を検出することができる。また人の歩行は、前記したように個人の骨格、筋力、体重等の物理的な特性にのみ起因するものではなく、誕生時からの発達過程で人間が2足歩行を確立してゆく際の脊髄の学習によるものであり、脊髄からの信号と感覚系のフィードバックの統合による自立的でダイナミックなリズムを備えて個々の人間固有のパターンを有しており、そのパターンが歩行時の足の動きに反映され、歩行に伴う足の動きにより前記浮遊容量が変化するので、人間固有の歩行パターンに起因した信号を非接触で検出することができる。
【0018】
また、上記課題を解決するため本発明における個人認証方法は、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出し、該検出結果によって個人を特定する個人認証方法であって、
予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記検出手段で検出して出力波形を記憶し、人の歩行により生じた前記浮遊容量変化の検出手段出力波形を前記予め記憶した特定人の歩行時における検出手段出力波形又は出力波形の解析結果と比較することにより、前記特定人であると認証することを特徴とする。
【0019】
そして、この個人認証方法を実施する個人認証システムは、
人の歩行を非接触で検出する非接触歩行検出システムを用いた個人認証システムであって、
人の歩行路に近接して設けられた電極と、前記歩行路における人の歩行によって生じる前記電極の浮遊容量の変化を電流の変化として捉える電流計測手段と、
予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記電流計測手段で検出して出力波形を記憶した記憶手段と、
前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形を前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形と比較し、両者が略一致したときに前記特定人であると認証して外部に通知する波形比較装置とからなることを特徴とする。
【0020】
このように、前記した歩行における個々の人間が有している固有のパターンを、電極が有する浮遊容量の変化に置き換えて個人認証を行うことで、まったく歩行者に気付かれることなく、高い精度で個人を識別することができ、銀行などにおける認証システムとして最適なシステムを提供することができる。
【0021】
さらに、上記課題を解決するため本発明における個人認証方法は、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出すると共に、予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記検出手段で検出して出力波形を記憶し、人の歩行により生じた前記浮遊容量変化の検出手段出力波形を前記予め記憶した特定人の検出手段出力波形と比較して算出した歩行者データ照合率と、
歩行者を撮像して予め記憶してある前記特定人の撮像データと比較して算出した撮像データ照合率と、歩行者の発する音声を捉えて予め記憶してある前記特定人の音声データと比較して算出した音声データ照合率とから最も高い照合率を選択し、予め定めた閾値と比較して該閾値より前記最も高い照合率の方が高い場合、前記歩行者が前記最も高い照合率を示した特定人であると認証し、
前記最も高い照合率が予め定めた閾値より低い場合、前記特定人における撮像データ照合率と音声データ照合率、及び前記歩行データ照合率の平均値を算出し、該平均値が第2の閾値より高い場合に前記特定人であると認証することを特徴とする。
【0022】
そして、この個人認証方法を実施する個人認証システムは、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを誘導電流の変化として捉える電流計測手段と、予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記電流計測手段で検出して出力波形を記憶した記憶手段と、前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形を前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形と比較し、両者が略一致したときに前記特定人であると認証して外部に通知する波形比較装置とからなる非接触歩行検出システムと、
歩行者の撮像手段と、該撮像手段により撮像した前記特定人の撮像データを記憶する撮像データ記憶手段と、
歩行者が発する音声の補足手段と、該音声補足手段の捉えた前記特定人の発した音声データを記憶する音声データ記憶手段と、
前記波形比較装置の比較結果に基づき、前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形と前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形との照合率である歩行者データ照合率と、前記撮像手段の撮像した歩行者撮像データと前記撮像データ記憶装置に記憶された特定人の撮像データとを比較し、両者の照合率である撮像データ照合率と、前記音声補足手段の補足した歩行者音声と前記音声データ記憶手段に記憶した特定人の音声データとを比較し、両者の照合率である音声データ照合率とから最も高い照合率を選択し、予め定めた閾値と比較して該閾値より前記最も高い照合率の方が高い場合、前記歩行者が前記最も高い照合率を示した特定人であると認証し、
前記最も高い照合率が予め定めた閾値より低い場合、前記特定人における前記歩行データ照合率と撮像データ照合率、及び音声データ照合率の平均値を計算し、該平均値が第2の閾値より高い場合に前記特定人であると認証するデータ処理装置と、からなることを特徴とする。
【0023】
このように、歩行における個々の人間が有している固有のパターンを、電極が有する浮遊容量の変化に置き換えて算出した歩行者データ照合率と、撮像データにより算出した撮像データ照合率、音声を捉えて算出した音声データ照合率などの複数の個人認証手段により個人を特定することで、例えば接客ロボットにより個人に応じたサービスを提供する場合など、顔データや音声データではお客が撮像装置に正対していないとうまく認識できなかったり、音声に反響音やノイズが混ざって認識がうまく行えない場合が生じるが、本発明によれば非接触でまったく歩行者に気付かれることなく、さらに高い精度で個人を識別することができ、銀行などにおける認証システムとして最適なシステムを提供することができる。
【0024】
そして、上記課題を解決するため本発明における個人認証方法は、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出すると共に、予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記検出手段で検出して出力波形を記憶し、人の歩行により生じた前記浮遊容量変化の検出手段出力波形を前記予め記憶した特定人の検出手段出力波形と比較して前記特定人を特定する非接触歩行検出システムを用い、
前記歩行路を歩行している複数の歩行者のうち、前記非接触歩行検出システムで特定できない歩行者の前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻と歩行速度を算出すると共に、
前記歩行路を歩行している複数の歩行者を撮像して各歩行者の所定部位を検出し、前記特定できない歩行者の前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻における前記各歩行者の所定部位の位置と歩行速度を算出して前記歩行速度と同一の歩行速度を有し、かつ、前記非接触歩行検出システム近傍を通過している歩行者を特定し、該歩行者を不審者候補とすることを特徴とする個人認証方法。
【0025】
また、この個人認証方法を実施する個人認証システムは、
歩行路を歩行する複数の歩行者を撮像する撮像装置と、
歩行路を歩行する複数の歩行者を撮像する撮像装置と、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを電流の変化として捉える電流計測手段と、予め、前記特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記電流計測手段で検出して出力波形を記憶した記憶手段と、前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形を前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形と比較し、両者が略一致したときに前記特定人であると認証して外部に通知する波形比較装置とからなる非接触歩行検出システムと、
前記撮像した複数の歩行者のうち、前記非接触歩行検出システムで特定できない歩行者の、前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻と歩行速度を算出すると共に、
前記撮像装置出力から各歩行者の所定部位を検出し、前記特定できない歩行者の前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻における前記各歩行者の所定部位の位置と歩行速度を算出して前記歩行速度と同一の歩行速度を有し、かつ、前記非接触歩行検出システム近傍を通過している歩行者を特定して該歩行者を不審者候補として撮像した画像上に表示するデータ処理装置と、からなることを特徴とする。
【0026】
例えばオフィスビルなどの監視カメラを用いた警備においては、撮像装置が撮像した複数の人の中から不審者を特定するにはその不審者がカメラに正対していないと認識精度を高められない場合が多いが、このように本発明の歩行検出システムを用いた個人認証システムと組み合わせることにより、歩行検出システムで不審者を特定すると共にその位置も特定することが可能であるから、監視カメラが撮像した複数の人の中から不審者のみを識別して表示するなどのことが可能となり、しかもその認識は、歩行者にまったく気付かれることなく高精度におこなうことができるから、大きな威力を発揮することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上記載のごとく本発明によれば、歩行における個々の人間が有している固有のパターンを、歩行路に設けた電極が有する浮遊容量の変化に置き換えるという簡単な方法で検出できるようにしたことにより、歩行者に知られることなく、高精度で歩行状態を検出すると共に個人の認証をおこなうことができ、銀行などにおける個人認証システムやオフィスビルなどにおける警備などに用いて好適な非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0029】
図1は本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを示したブロック図、図2は本発明の非接触歩行検出システムにより検出された複数の人の歩行による浮遊容量変化のパターンを示した図、図3は本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを撮像装置を用いた個人認識システムと音声を用いた個人認識システムと組み合わせた実施例のブロック図、図4はこの図3に示したシステムの認証方法のフロー図、図5は本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを撮像装置と組み合わせて複数の歩行者から不審者などを特定できるようにした実施例のブロック図、図6はこの図5に示したシステムの不審者特定のフロー図である。図中、同一構成要素には同一番号を付してある。
【0030】
最初に本発明の原理を簡単に説明すると、前記したように人間の歩行は、個人の骨格、筋力、体重等の物理的な特性にのみ起因するものではなく、誕生時からの発達過程で人間が2足歩行を確立してゆく際の、脊髄の学習によるものと考えられており、その歩行のパターンは、脊髄からの信号と感覚系のフィードバックの統合による自立的でダイナミックなリズムを備え、個々の人間固有のパターンを示す。そのため本発明においては、人の歩行路に近接して例えばステンレスやアルミなどを用いた電極を設け、人が歩行路を歩行したときにこの電極の浮遊容量が前記歩行パターンに対応して変化することを利用し、歩行状態の検出と個人認証を行うものである。
【0031】
そのため、前記電極に微小電流計を接続すると共に、その微小電流計出力から雑音成分となる所定周波数以上の周波数の成分を除くフィルタと第1の波形記憶装置、特定人が歩行したときの微小電流計出力波形を予め記憶した第2の記憶装置等を設け、第1の波形記憶装置に記憶した波形と第2の記憶装置に記憶した波形とを比較、又は出力波形の解析結果として例えばスペクトラムを比較することにより特定人であるという認証をする。
【0032】
このようにすることにより、歩行者に知られることなく、高精度で歩行状態を検出すると共に個人の認証をおこなうことができ、銀行などにおける個人認証システムやオフィスビルなどにおける警備などに用いて、好適な非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを提供することができる。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明になる非接触歩行検出システムと該システムを用いた個人認証システムを示したブロック図であり、1は歩行路2を歩行する歩行者、3はこの歩行路2に近接して設けた電極で、これは前記したように例えば30×30cm程度のステンレスやアルミなどを用いて作成され、歩行者から1〜1.5m程度離して設置する。この距離は短いほど好ましいが、あまり近いと歩行者の邪魔になると共に歩行者に不信感を抱かせ、またあまり遠くだと歩行による浮遊容量の変化を検出できなくなる。また、電極の大きさや形状もここに記したものは一例であり、長方形のものや設置する場所の雰囲気に合わせて円形としたり、より大きなものにしても良いことはもちろんであり、設置場所も歩行路の側面だけでなく、上や下に設けても良い。
【0034】
4はこの電極3における浮遊容量の変化を電流変化として検出する微小電流計で、pA(ピコアンペア)領域の電流を計測できる電流計を用いる。使用する電流計の入力インピーダンスが低いと計測対象に対して電流計が電圧降下を引き起こし、正確な計測が不能となるため、入力インピーダンスは数ギガオーム以上であることが好ましい。5はこの電流計4の出力からノイズの影響を低減させるため、例えば40Hz以下、好ましくは30Hz以下の低周波信号のみを通過させるローパスフィルタ、6はこのフィルタ5から出力された7で示したような出力波形を記録する波形記録装置、8は波形記録装置6に記録された出力波形を周波数分析し、スペクトラムに変換する周波数分析装置、9は予め個人波形記憶装置10に記憶させてある、複数の特定人の歩行時における微小電流計出力をスペクトラムに変換した波形と今波形記録装置6に記憶してスペクトラムに変換した歩行者の波形を比較し、結果を図示していない外部に設けた表示装置などに表示したり、例えば個人波形記憶装置10に記憶されていないパターンの個人の場合は不審者として通行を拒否する等の指示を出す個人波形比較装置、11の周波数分析装置8、個人波形比較装置9、個人波形記憶装置10を点線で囲ったブロックは、個人認証システムを示している。
【0035】
このように構成した本発明になる非接触歩行検出システムと個人認証システムでは、電極3に存在する所定の浮遊容量が、歩行路2を歩行する歩行者1の前記したような個人に特有な歩行パターンに応じて変化する。具体的には、まず、歩行に伴う足の動きにより電極3の周囲の誘電率が変化する。また、通常、人間は歩行していなくても帯電しているが、歩行により人間の電位が変化する。つまり、これらの人間による誘電率の変化と歩行に伴う人間の電位の変化が競合して、電極3に存在する浮遊容量の変化を引き起こす。従って、信号の強度は足等の運動の加速度と密接な関係がある。そのため、この浮遊容量の変化に伴って電極3に誘導電流が流れるから、微小電流計4はその誘導電流を検出し、その出力をローパスフィルタ5に送って例えば30Hz以下の周波数の信号成分のみを通過させ、7に示したような出力波形を得てこれを波形記録装置6に記憶させる。
【0036】
この微小電流計4で検出した電流の波形は、電極3に誘起された誘導電流の波形であるが、これは前記したように、歩行者1の歩行リズムや歩行するときの例えば踵から着地させたりつま先で蹴るように歩くなど、その人の癖や筋肉の動きなどの歩行パターンを総合した特有のパターンとなる。それを示したのが図2のグラフであり、この図2に示した3つのグラフは異なった人の歩行時のパターンを示していて、横軸は時間(sec)、縦軸は微小電流計4の出力で(単位はpA)あり、同じように歩行路2を歩行したにもかかわらずそれぞれの出力波形(A)、(B)、(C)は、それぞれの人に対応して全く異なった波形となる。
【0037】
一方、個人波形記憶装置10には、予めこの非接触歩行検出システムによって検出すべき個人の、図2に示したような歩行出力波形を記憶しておく。そして周波数分析装置8が、波形記録装置6に記憶した7で示したような出力波形を周波数分析し、スペクトラムに変換してそれを個人波形比較装置9に送る。具体的なスペクトラムへの変換方法として、フーリエ変換による方法やウェーブレット変換を利用するスタンダードな方法に加え、人体のゆらぎを考慮したパワースペクトル解析も有効な手法である。すると個人波形比較装置9は、先に個人波形記憶装置10に記憶した個人の歩行出力波形を読み出し、周波数分析装置8から送られてきた出力波形又はスペクトル解析結果と比較する。
【0038】
その結果、両者が略一致した場合、個人波形比較装置9は現在歩行している人は個人波形記憶装置10に記憶されている人の歩行パターンであると判断し、例えば同時に記憶されている個人名などの情報を表示したり、対応するデータを提供するようにする。また、比較の結果、個人波形記憶装置10に記憶されていないパターンの場合は、現在歩行している人は個人波形記憶装置10に記憶されていない人であると判断し、例えばオフィスビルなどの入室管理に適用する場合は、これが不審者であるとして入室を拒否したり、外部に警報を出すなどの処置を行う。
【0039】
このように非接触歩行検出システムと個人認証システムを構成することにより、歩行者にまったく気付かれることなく、高い精度で個人を識別することができ、銀行などにおける認証システムとして最適なシステムを提供することができる。
【実施例2】
【0040】
図3は、本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証システムと撮像装置を用いた個人認識システム、及び音声を用いた個人認識システムとを組み合わせた本発明における実施例2のブロック図で、これは一例として本発明を銀行などにおける接客ロボットによるサービスのための個人認証に応用した例を示したものである。
【0041】
例えば銀行などで接客を行うロボットは、個人に対応したサービスを提供するため、ユーザの認識が必要となる。そして、こういったロボットに搭載可能な認識方法としては、ユーザの顔データや音声データを予め登録しておき、画像認識や音声認識で照合する方法や、前記したRFIDタグを用いる方法などがある。
【0042】
しかしながら顔データで画像認識を行う方法は、ユーザの顔がロボットなどに設けた撮像装置と正対していない場合に正しく認識できない場合があり、登録した音声データによって認識する方法も、反響音や他のノイズが混じった場合にうまく認識できない場合がある。また、RFIDタグを用いる方法も、高信頼で人を認識できる方式ではあるが、タグを身につけている必要があり、盗難にあったり他人のタグを用いて不正が行われる場合があってセキュリティ上問題がある。
【0043】
しかし、前記図1に示した歩行パターンにより個人認識を行う方法では、例えば接客ロボットによってユーザを歩行検出位置まで誘導するようにすれば、ユーザに何ら気付かれることなく高精度での認識が可能であり、さらに、上記した画像認識や音声認識と組み合わせて融合した認識処理を行うことで、高精度な個人認識が可能となる。
【0044】
このような考えに従って構成したのが図3(A)であり、図中1は認識を行うユーザなどの歩行者、30は例えば銀行などで接客を行うロボットで、一例として31に撮像装置を、32にマイクを33aに前記図1に3で示した電極を組み込んである。34は撮像装置31からの信号を受けて画像認識を行う画像信号処理回路で、これは一般的に用いられている画像認識回路が組み込まれているものを用いる。35は音声認識を行う音声信号処理回路で、これも一般的に用いられている音声認識回路が組み込まれているものを用いる。36、37、38、41は、前記図1に4、6、8、10で示した微小電流計(36)、波形記録装置(37)、周波数分析装置(38)、個人波形記憶装置(41)、39は顔画像認識のため個人顔データ記憶装置、40は音声認識のための個人音声データ記憶装置、42はこれら画像認識や音声認識、及び歩行による個人認識を行うためのデータ処理装置であり、図3(B)はさらに歩行認識を正確なものとするため、ロボット30に設けた電極33b以外に、床にも埋め込み歩行検知センサ45を設け、無線通信装置46でその床埋め込み歩行検知センサ45が検出した信号を増幅して送信し、図3(A)に示した波形記録装置37に送るようにした構成例である。
【0045】
図4は、この図3に示したシステムにおけるユーザ(個人)認証方法のフロー図であり、今例えば銀行などに設置されたシステムで接客ロボット30がユーザ認識を行うものとすると、ユーザが来るとロボット30に設けられた撮像装置31よってこのユーザ1の顔画像が撮像され、マイク32によってユーザ1の発する音声が、ユーザ1の歩行により前記したように電極33aに生じた浮遊容量変化が電流計36で検出されて、それぞれ画像信号処理回路34、音声信号処理回路35、波形記録装置37に送られる。
【0046】
そして図4におけるステップS42で、画像信号処理回路34は撮像した顔画像から特徴量を抽出し、さらにステップS43でデータ処理回路42を介して送られてくる個人顔データ記憶装置39に記憶されているユーザの顔画像データと照合し、ステップS44で照合率Ai(%、iは対応する人の番号)を算出する。
【0047】
また同時に、図4におけるステップS45で、音声信号処理回路35はマイク32が補足したユーザの発した音声の特徴量を抽出し、ステップS46でデータ処理回路42を介して送られてくる個人音声データ記憶装置40に記憶されているユーザの個人音声データと照合し、ステップS47で照合率Bi(%、iは対応する人の番号)が算出される。
【0048】
さらに同時に、図4におけるステップS48で、波形記録装置37に記録された歩行に伴う電極33aの浮遊容量変化の波形が周波数分析装置38によって周波数分析され、前記したようにステップS49でデータ処理回路42を介して送られてくる個人波形記憶装置41に記憶された登録個人波形と比較されて、ステップS50で照合率Ci(%、iは対応する人の番号)が算出される。
【0049】
こうして顔画像による照合率Ai、Bi、Ciが算出されると今度はステップS51で、
Pi=Max(Ai、Bi、Ci) …… (1)
によって最大の照合率を示す照合率が算出され、その結果最大の照合率、
Zm=Max(Pi) …………………… (2)
が予め定めた閾値Ptと比較され、
Zm≧Pt ………………………………… (3)
を満足しているかどうかが判断される。
【0050】
そして、この(3)式を満足している場合は添字mに対応している人であると判断され、ステップS52で識別結果が表示されて接客ロボット30が、認識されたユーザ1に対応したサービスを提供する。
【0051】
一方、ステップS51で前記式(3)が満足されない場合は、さらに
Pi=Max((Ai+Bi+Ci)/3) …… (4)
によって3つの照合率Ai、Bi、Ciが加え合わされて3で除されて平均値が算出され、その結果
Zm=Max(Pi) …………………… (5)
が予め定めた第2の閾値Ptと比較され、
Zm≧Pt ………………………………… (6)
を満足しているかどうかが判断される。
【0052】
そして、この(6)式を満足している場合は添字mに対応している人であると判断され、ステップS52で識別結果が表示されて接客ロボット30が、認識されたユーザ1に対応したサービスを提供する。また、この(6)式が満足されない場合はステップS52で識別不能となってそれが表示される。
【0053】
このようにして、撮像データにより算出した撮像データ照合率Ai、音声を捉えて算出した音声データ照合率Bi、歩行における個々の人間が有している固有のパターンを電極が有する浮遊容量の変化に置き換えて算出した歩行者データ照合率Ciのように、複数の個人認証手段により個人を特定することで、歩行者1に全く気付かれることなく、さらに高い精度で個人を識別することができ、銀行などにおける認証システムとして最適なシステムを提供することができる。
【実施例3】
【0054】
図5は、本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証システムと、撮像装置により撮像したと画像から、オフィスビルなどの警備に用いることのできる不審者特定のためのシステムの例を示したものである。
【0055】
例えばオフィスビルなどにおける警備では、一般的に撮像装置などを用いて監視カメラで複数の人を撮像し、その中に不審者がいないかどうかを監視することが行われている。しかしながらこの方法では、監視カメラに多くの人が写っている場合や、不審者が監視カメラの方に正面を向いていない場合には不審者を発見しにくく、また、監視カメラが撮像した画像から、顔認識で特定の人を捜すようにした装置もあるが、やはり監視カメラに対して人が正面を向いていないと認識精度が得られないという課題がある。
【0056】
また、前記したようにRFIDタグやICカードなどを用いる方法では、高信頼で人を認識できる方式ではあるが、タグやカードが盗難にあったり他人のタグやカードを用いて不正が行われる場合があってセキュリティ上問題がある。
【0057】
しかし、前記図1に示した歩行パターンにより個人認識を行う方法では、複数の人が歩行していても、電極3から得られた浮遊容量変化の出力波形から、周波数分析装置8で個々の人の歩行パターンを分離することが可能であるから、それぞれの人を特定することが可能であり、この結果と監視カメラとを組み合わせることで、不審者を表示装置上で特定して表示することが可能である。
【0058】
このような考えに従って構成したのが図5であり、図中1は認識を行う歩行者、50は例えばオフィスなどにおける入り口などの壁に設置した電極、51は監視カメラ、52は監視カメラ51からの信号を受けて画像処理を行う画像信号処理回路、53はデータ処理装置、54、55、56、57、58は、前記図1に4、6、8、9、10で示した微小電流計(54)、波形記録装置(55)、周波数分析装置(56)、個人波形比較装置(57)、個人波形記憶装置(58)であり、59は監視カメラ51が撮像した画像を表示する表示装置である。
【0059】
図6は、この図5に示したシステムにおける例えば不審者表示方法のフロー図であり、今例えば、オフィスの入り口などに設置された監視カメラ51が撮像した複数の人の中から、不審者を選択して表示装置59上にその不審者を表示する場合を説明すると、まず個人波形記憶装置58に、オフィスに勤める複数の人の前記図2に示したような歩行時における出力パターンを記憶しておく。
【0060】
そして、入り口に例えばオフィスに勤める複数の人が歩いてきて、それを監視カメラ51が撮像して信号を画像信号処理回路52に送るとそのデータがデータ処理装置53を介して表示装置59に送られ、この表示装置59に複数の歩行者1が表示される。
【0061】
そして図6におけるステップS62で、画像信号処理回路53は撮像したデータから複数の人のそれぞれの頭部を抽出し、ステップS63で抽出した複数の頭部のトラッキング処理を行い、次のステップS64でその頭部の時刻毎の位置と速度を算出する。
【0062】
また同時に、図6におけるステップS65で、前記したのと全く同様にして複数のユーザ1の歩行により、壁に設けられた電極50に生じた浮遊容量変化が電流計54で検出されて、波形記録装置55に送られる。そして周波数分析装置56によって周波数分析がおこなわれ、個々の人の歩行パターンが分離されて個人波形比較装置57により、個人波形記憶装置58に記憶された登録個人波形と比較されてそれぞれのパターンが個人波形記憶装置58に記憶されているかどうかが判断される。
【0063】
そして個人波形記憶装置58に記憶されていない人がいた場合、ステップS66でそれが不審者であると判別され、ステップS67で、その不審者が壁に設置された電極50を通過する速度と時刻が算出される。
【0064】
こうして不審者が特定されて、その不審者の電極50を通過する速度と時刻が算出されるとそのデータはデータ処理装置53に送られ、ステップS68で、先にステップS64で算出された複数の人の頭部における時刻毎の位置と速度が参照され、両者が一致する人が特定される。そしてそのデータがデータ処理装置53から画像信号処理回路52に送られ、ここで画像データ上の不審者の頭部にマーキングがなされ、それがデータ処理装置53を介して表示装置59に送られる。(ステップS69)
【0065】
そのため、表示装置59にはマーキングされた不審者が表示され、どれが不審者であるか一目で判断できるようになる。しかもその認識は、歩行者にまったく気付かれることなく高精度におこなうことができるから、大きな威力を発揮することができる。
【0066】
以上種々述べてきたように本発明によれば、人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出して歩行を検出することにより、歩行者とまったく非接触で歩行状態を検出することができ、また人の歩行は、前記したように個々の人間固有のパターンを有しており、そのパターンが前記浮遊容量の変化に影響を与えるから、高精度に歩行を検出することができる。
【0067】
また、歩行における個々の人間が有している固有のパターンを、電極が有する浮遊容量の変化に置き換えて個人認証を行うことで、まったく歩行者に気付かれることなく、高い精度で個人を識別することができ、銀行などにおける認証システムとして最適なシステムを提供することができる。
【0068】
さらに、歩行における個々の人間が有している固有のパターンを、電極が有する浮遊容量の変化に置き換えて算出した歩行者データ照合率と、撮像データにより算出した撮像データ照合率、音声を捉えて算出した音声データ照合率などの複数の個人認証手段により個人を特定することで、例えば接客ロボットにより個人に応じたサービスを提供する場合など、顔データや音声データではお客が撮像装置に正対していないとうまく認識できなかったり、音声に反響音やノイズが混ざって認識がうまく行えない場合が生じるが、本発明によればまったく歩行者に気付かれることなく、さらに高い精度で個人を識別することができ、銀行などにおける認証システムとして最適なシステムを提供することができる。
【0069】
そして、例えばオフィスビルなどの監視カメラを用いた警備においては、撮像装置が撮像した複数の人の中から不審者を特定するにはその不審者がカメラに正対していないと認識精度を高められない場合が多いが、本発明の歩行検出システムを用いた個人認証システムと組み合わせることにより、歩行検出システムで不審者を特定すると共にその位置も特定することが可能であるから、監視カメラが撮像した複数の人の中から不審者のみを識別して表示するなどのことが可能となり、しかもその認識は、歩行者にまったく気付かれることなく高精度におこなうことができるから、大きな威力を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、歩行における個々の人間が有している固有のパターンを、歩行路に設けた電極が有する浮遊容量の変化に置き換えるという簡単な方法で検出できるようにしたことにより、歩行者に知られることなく、高精度で歩行状態を検出すると共に個人の認証をおこなうことができ、銀行などにおける個人認証システムやオフィスビルなどにおける警備などに用いて好適な非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを示したブロック図である。
【図2】本発明の非接触歩行検出システムにより検出された複数の人の歩行による浮遊容量変化のパターンを示した図である。
【図3】本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを撮像装置を用いた個人認識システムと音声を用いた個人認識システムと組み合わせた実施例のブロック図である。
【図4】図3に示したシステムの認証方法のフロー図である。
【図5】本発明になる非接触歩行検出方法とシステム及び該システムを用いた個人認証方法とシステムを撮像装置と組み合わせて複数の歩行者から不審者などを特定できるようにした実施例のブロック図である。
【図6】図5に示したシステムの不審者特定のフロー図である。
【符号の説明】
【0072】
1 歩行者
2 歩行路
3 電極
4 微小電流計
5 ローパスフィルタ
6 波形記録装置
7 出力波形
8 周波数分析装置
9 個人波形比較装置
10 個人波形記憶装置
11 個人認証システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の歩行を非接触で検出する歩行検出方法であって、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出し、該検出手段出力を解析して歩行に起因して生じる人固有の信号のパターンを導出することを特徴とする非接触歩行検出方法。
【請求項2】
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出し、該検出結果によって個人を特定する個人認証方法であって、
予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記検出手段で検出して出力波形を記憶し、人の歩行により生じた前記浮遊容量変化の検出手段出力波形を前記予め記憶した特定人の歩行時における検出手段出力波形又は出力波形の解析結果と比較することにより、前記特定人であると認証することを特徴とする個人認証方法。
【請求項3】
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出すると共に、予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記検出手段で検出して出力波形を記憶し、人の歩行により生じた前記浮遊容量変化の検出手段出力波形を前記予め記憶した特定人の検出手段出力波形と比較して算出した歩行者データ照合率と、
歩行者を撮像して予め記憶してある前記特定人の撮像データと比較して算出した撮像データ照合率と、歩行者の発する音声を捉えて予め記憶してある前記特定人の音声データと比較して算出した音声データ照合率とから最も高い照合率を選択し、予め定めた閾値と比較して該閾値より前記最も高い照合率の方が高い場合、前記歩行者が前記最も高い照合率を示した特定人であると認証し、
前記最も高い照合率が予め定めた閾値より低い場合、前記特定人における撮像データ照合率と音声データ照合率、及び前記歩行データ照合率の平均値を算出し、該平均値が第2の閾値より高い場合に前記特定人であると認証することを特徴とする個人認証方法。
【請求項4】
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを検出手段で検出すると共に、予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記検出手段で検出して出力波形を記憶し、人の歩行により生じた前記浮遊容量変化の検出手段出力波形を前記予め記憶した特定人の検出手段出力波形と比較して前記特定人を特定する非接触歩行検出システムを用い、
前記歩行路を歩行している複数の歩行者のうち、前記非接触歩行検出システムで特定できない歩行者の前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻と歩行速度を算出すると共に、
前記歩行路を歩行している複数の歩行者を撮像して各歩行者の所定部位を検出し、前記特定できない歩行者の前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻における前記各歩行者の所定部位の位置と歩行速度を算出して前記歩行速度と同一の歩行速度を有し、かつ、前記非接触歩行検出システム近傍を通過している歩行者を特定し、該歩行者を不審者候補とすることを特徴とする個人認証方法。
【請求項5】
人の歩行を非接触で検出する非接触歩行検出システムを用いた個人認証システムであって、
人の歩行路に近接して設けられた電極と、前記歩行路における人の歩行によって生じる前記電極の浮遊容量の変化を電流の変化として捉える電流計測手段と、
予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記電流計測手段で検出して出力波形を記憶した記憶手段と、
前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形を前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形と比較し、両者が略一致したときに前記特定人であると認証して外部に通知する波形比較装置とからなることを特徴とする個人認証システム。
【請求項6】
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを誘導電流の変化として捉える電流計測手段と、予め、特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記電流計測手段で検出して出力波形を記憶した記憶手段と、前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形を前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形と比較し、両者が略一致したときに前記特定人であると認証して外部に通知する波形比較装置とからなる非接触歩行検出システムと、
歩行者の撮像手段と、該撮像手段により撮像した前記特定人の撮像データを記憶する撮像データ記憶手段と、
歩行者が発する音声の補足手段と、該音声補足手段の捉えた前記特定人の発した音声データを記憶する音声データ記憶手段と、
前記波形比較装置の比較結果に基づき、前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形と前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形との照合率である歩行者データ照合率と、前記撮像手段の撮像した歩行者撮像データと前記撮像データ記憶装置に記憶された特定人の撮像データとを比較し、両者の照合率である撮像データ照合率と、前記音声補足手段の補足した歩行者音声と前記音声データ記憶手段に記憶した特定人の音声データとを比較し、両者の照合率である音声データ照合率とから最も高い照合率を選択し、予め定めた閾値と比較して該閾値より前記最も高い照合率の方が高い場合、前記歩行者が前記最も高い照合率を示した特定人であると認証し、
前記最も高い照合率が予め定めた閾値より低い場合、前記特定人における前記歩行データ照合率と撮像データ照合率、及び音声データ照合率の平均値を計算し、該平均値が第2の閾値より高い場合に前記特定人であると認証するデータ処理装置と、からなることを特徴とする個人認証システム。
【請求項7】
歩行路を歩行する複数の歩行者を撮像する撮像装置と、
人の歩行路に近接して設けた電極の浮遊容量が、前記歩行路における人の歩行で変化することを電流の変化として捉える電流計測手段と、予め、前記特定人の歩行により生じる前記電極の浮遊容量変化を前記電流計測手段で検出して出力波形を記憶した記憶手段と、前記電流計測手段が検出した人の歩行により生じる前記浮遊容量変化の出力波形を前記記憶手段に記憶した特定人の歩行時における出力波形と比較し、両者が略一致したときに前記特定人であると認証して外部に通知する波形比較装置とからなる非接触歩行検出システムと、
前記撮像した複数の歩行者のうち、前記非接触歩行検出システムで特定できない歩行者の、前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻と歩行速度を算出すると共に、
前記撮像装置出力から各歩行者の所定部位を検出し、前記特定できない歩行者の前記非接触歩行検出システム近傍通過時刻における前記各歩行者の所定部位の位置と歩行速度を算出して前記歩行速度と同一の歩行速度を有し、かつ、前記非接触歩行検出システム近傍を通過している歩行者を特定して該歩行者を不審者候補として撮像した画像上に表示するデータ処理装置と、からなることを特徴とする個人認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−110072(P2006−110072A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300311(P2004−300311)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】