説明

非接触通信デバイス

【課題】 小型のICカード(SIM)を装着でき、IDデバイスと非接触リーダライタデバイスと、双方の機能を行う非接触通信デバイスを提供する。
【解決手段】 本非接触通信デバイス1は、SIMサイズの小型ICカード2が装着可能であって、USBインタフェースを有し、さらに、(1)制御回路チップ3と非接触通信用コンバータチップと、(2)非接触通信のためのアンテナコイル11と、(3)電池電源7とそのスイッチと、(4)モード切替スイッチと、を備える携帯可能なデバイスであって、前記モード切替スイッチが、(A)IDデバイスモードを選択している場合には、アンテナコイルを通じて外部非接触リーダライタとSIMとの通信が可能なIDデバイスとなり、(B)非接触リーダライタデバイスモードを選択している場合には、非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体との通信が可能となる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯可能な非接触通信デバイスに関する。詳しくは、より携帯に適したGSM11.11の規格に則ったSIMサイズの小型ICカードが装着可能なUSBインタフェース付き非接触通信デバイスであって、IDデバイスの機能をするとともに、自らが非接触通信用リーダライタとして機能する特徴がある。搭載した制御回路チップは、USBインタフェースを介してパソコン(以下、「PC」ともいう。)などの外部装置とSIM−ICカードとの通信を制御し、同じく搭載された非接触通信用コンバータチップとアンテナコイルを介して、外部の非接触リーダライタとの間でISO14443,ISO18092規格との電磁誘導方式での非接触通信によりSIMサイズの小型ICカードの利用を可能にするデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード、特にSIMサイズの小型ICカード(以下、「SIM」という。)とSIMを装着するリーダライタを一緒に持ち歩き、いつでも、どこでもPCに接続させてPCログオン、ネットワークログイン等のシステムに使用するようになってきている。 発明者は、特願2002−244613(特許文献1)、特願2002−284825(特許文献2)でこのようなリーダライタを明らかにしている。特に、特願2002−284825では、接触、非接触の両方のインタフェースを持ったSIMを装着し、リーダライタに敷設されたワイヤアンテナによって、ISO14443近接非接触通信を可能にしている。
【0003】
しかしながら、この特願2002−284825に示された技術は、装着するSIMが接触と非接触の両方のインタフェース機能を持つものに限られていた。また、そのSIMと直接アンテナコイルとの接続のために特殊なSIM−ICモジュール(ISO7816のC1からC8の8つの端子のC4,C8の端子をアンテナと接続可能な非接触端子とする)でなければならない問題があった。加えて、外部非接触リーダライタからの電磁誘導を起電力としてSIMが駆動するため、ISO14443非接触通信では、その通信距離が2cmから5cm程度しか得られないものであった。
【0004】
さらに、近年では、ますますICカードはネットワークセキュリティ認証デバイスとしての利用が拡大して、その暗号処理やデータ通信速度、データ処理速度の向上を目的として32bitCPUなどの高消費電力のICチップが使用されるに至って、上述の如くの接触、非接触の2つのインタフェースを持つチップでなくなってしまってきている。
すなわち、外部非接触電磁誘導による起電力では動作できないことから、非接触機能は実現されていない製品となっているため、特願2002−284825の技術が活かせなくなってきている。
【0005】
そこで発明者は、SIMサイズの小型ICカードが装着可能であって電池電源を有するSIMホルダーについて特許文献5により、かかる問題を解決する実施形態を提案している。本願は、特許文献5に新規機能を追加した発展的実施形態に関する。
なお、SIMホルダーに関しては、上記特許文献1、特許文献2以外に特許文献3、特許文献4等がある。特許文献3は、デュアルインターフェースSIMを装着するSIMリーダライタに関し、特許文献4は、CPUと電池を備える携帯機器に関する。
【0006】
【特許文献1】特開2004− 86402号公報(特願2002−244613)
【特許文献2】特開2004−118771号公報(特願2002−284825)
【特許文献3】特開2004−264915号公報
【特許文献4】特開2005−202563号公報
【特許文献5】特願2007−023672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5のSIMホルダーでは、従来のICカードリーダライタの機能に加えて、SIMから読み出したデータを非接触通信用コンバータチップとアンテナコイルを介して外部の非接触通信リーダライタと電磁誘導方式で交信(外部非接触リーダライタにIDデータを与えるか、データを受信してICカードに書き込みを行う。)可能にしている。
本願は、この特許文献5の機能に加えて、モードを切り替えすることにより、自らが非接触通信用のリーダライタになり、相手のデータを読み取り、また書き込みする非接触通信デバイスとしても機能する形態を提案するものである。また、搭載された電池電源の消耗を抑えるべく、USB接続時はモードが非接触リーダライタモードであれば、USBバスパワーを利用するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨は、SIMサイズの小型ICカードが装着可能であって、USBインタフェースを有し、さらに、(1)制御回路チップと非接触通信用コンバータチップと、(2)非接触通信のためのアンテナコイルと、(3)電池電源とそのスイッチと、(4)IDデバイスと非接触リーダライタデバイスのいずれかの選択を行うモード切替スイッチと、を搭載した携帯可能なデバイスであって、前記モード切替スイッチが、(A)IDデバイスモードを選択している場合には、前記電池電源から制御回路チップ、非接触通信用コンバータチップ、及びSIMに電力を供給することによって、アンテナコイルを通じて外部非接触リーダライタとSIMとの通信が可能なIDデバイスとなり、(B)非接触リーダライタデバイスモードを選択している場合には、非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体との通信を可能とする、ことを特徴とする非接触通信デバイス、にある。
【0009】
上記において、非接触通信デバイスが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動するものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非接触通信モードであるかを判定し、USB接続されていなければ電池電源駆動であると判断して非接触通信モードに移行する、ようにすることができる。
【0010】
上記において、非接触通信デバイスが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動するものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非接触通信モードであるかを判定し、非接触通信モードであっても、途中からUSB接続してUSB接続モードと判定した場合は、電池電源の供給を停止する、ようにすることができる。
【0011】
また上記において、非接触通信デバイスがUSB機器に接続し、USBバスパワーで駆動している状態において、(A)IDデバイスモードでは、接続しているUSB機器に対してSIMのIDデータを与え、(B)非接触リーダライタデバイスモードでは、非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体と通信する、ようにすることができる。
【0012】
また上記において、非接触通信デバイスがUSB機器に接続しないで、前記電池電源により駆動している状態において、(A)IDデバイスモードでは、外部非接触リーダライタに対してSIMのIDデータを与え、(B)非接触リーダライタデバイスモードでは、非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体と通信する、ようにすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明の非接触通信デバイス(請求項1)は、USBインタフェースを有し、SIMとPC間のUSB接続が可能であると共に、SIMが接触型であっても、内蔵する電池電源とアンテナコイルにより、外部非接触リーダライタとSIM間の通信を可能にする。 さらに、本非接触通信デバイスは、IDデバイスか非接触リーダライタデバイスかのいずれかのモードの選択を行うモード切り替えスイッチを有し、モードの切り替えにより、IDデバイスとしての機能とともに、自らが非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体と通信する機能を有する。
(2)通常の非接触ICカードの場合、外部非接触リーダライタとの間では、5cm程度の通信距離しか得られないのに対し、本発明の非接触通信デバイスでは、10cm程度の通信距離が得られる。
【0014】
(3)請求項2の非接触通信デバイスは、USB接続によって、USBバスパワーで駆動しているか、USB接続されていなければ、電池電源で駆動しているかの判断をして、各々のUSB接続モードか非接触通信モードかの切り替えを行うことができる。
(4)請求項3の非接触通信デバイスは、USBバスパワーで駆動可能であって、USB接続している場合は電池電源の供給を停止するので、電池電源の消費を少なくできる。
【0015】
(5)請求項4の非接触通信デバイスは、USB接続でUSBバスパワーで駆動している状態においても、IDデバイスモードでSIMのIDデータをUSB機器に与え、非接触リーダライタデバイスモードでは、他の非接触通信媒体と通信できる。
(6)請求項5の非接触通信デバイスは、USB接続しないで、電池電源により駆動している状態において、IDデバイスモードでSIMのIDデータを外部非接触リーダライタに与え、非接触リーダライタデバイスモードでは、他の非接触通信媒体と通信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の非接触通信デバイスの例の外観図、図2は、非接触通信デバイスの機能ブロック図、図3は、非接触通信デバイス間で通信を行っている状態を示す図、図4は、非接触通信デバイスを携帯電話にUSB接続して、非接触リーダライタとして利用している状態を示す図、図5は、制御回路チップの初期フローを示す図、図6、図7は、制御回路チップの動作フローを示す図、図8は、ポーリング信号待機状態を説明するフロー図、図9は、タイマーの動作を説明するフロー図、である。
【0017】
図1は、本発明の非接触通信デバイスの例の外観図である。非接触通信デバイス1は、回路や部品、SIMを納めるる筐体10からなり、SIM2を挿入口15からスライドして挿入し着脱できる構造になっている。筐体10は透明な材質、例えば透明アクリル等で構成され、透明窓16からSIM2を観察できる構造になっている。
非接触通信デバイス1は、USBインターフェースのためにUSBコネクタ5を有する。図1の場合、USBコネクタ5はAコネクタ(雄型)であるが、筐体から突出しないミニBコネクタ(雌型)であってもよい。筐体10には、電源ボタン18(スイッチ8と一体のもの)、モード切り替えスイッチ12、及び使用状態を確認するLED表示17が設けられている。ただし、外観や構造、材質は、図1の例に限定されるものではない。
【0018】
非接触通信デバイス1は、(A)IDデバイスモードと、(B)非接触リーダライタデバイスモードと、のいずれかのモードを選択できるモード切り替えスイッチ12を有している。モード切り替えスイッチ12は、例えば左右にスライドして動き、いずれかのモードを選択できるようにされている。非接触通信デバイス1が、IDデバイスのモードを選択している場合は、非接触通信デバイス1は、前記特許文献5のSIMホルダーの機能を行い、USBを介して認証媒体としてのSIMの機能と、外部リーダライタが非接触でSIM2と交信可能にする機能を行う。この場合のSIMホルダーは、SIM2のIDデータを読み取りさせ、SIMに書き込みさせる機能であって、他の非接触通信媒体を能動的に読み書きする機能は有していない。
本非接触通信デバイス1が、非接触リーダライタデバイスモードを選択している場合は、非接触通信のリーダライタとして、同等機能を有する他の非接触通信デバイスや非接触ICカードとの交信を行う(相手の情報を読み、また書き込みする)特徴がある。
【0019】
本発明に使用するSIM(Subscriber Identity Module)2は、一般的には、長辺が25mm程度、短辺が15mm程度に形成されている。厚みは、1.0mm以内で通常は0.76mmの均一な薄板状のものである。SIM2の本来的目的は、携帯電話サービスの利用目的で開発されたが、一般のICカードと同様の使用方法が可能であり、クレジット決済用の個人識別情報などを暗号化して登録することも可能となっている。本発明で使用するSIM2は、接触型であって接触端子板22を有するが、基板20内にアンテナコイルを有していない。
【0020】
本発明の非接触通信デバイス1では小型ICカードのSIM2を使用することが、リーダライタの小型化に寄与することから、SIM対応として本非接触通信デバイス1を説明しているが、ICカードはSIMに限定されず、非接触通信デバイス1の外形を異なるものとすれば、通常の札入れサイズICカードにも対応でき、その機能を損なうものでないことは、当該分野に関わるものならば容易に類推できる。
【0021】
図2は、非接触通信デバイスの機能ブロック図である。全体の制御回路(CPU)として制御回路チップ(マイクロコンピュータチップ)3を用いた一例である。制御回路チップ3はCPUの機能を有するので、以下単に、「CPU3」という場合もある。
(プログラム)ROMやRAMは、CPU3に内蔵されているチップを想定しているが、外付けROMやRAMであっても同様に機能させることができる。SIM2とは物理的には、8本のコンタクトピンを有する端子板(不図示)により接続しているが、CPU3にはSIM(制御)コントローラ31が搭載されている。すなわち、SIM2はISO7816−3で規定するプロトコルを持ち、CPU3はこのISO7816−3のインタフェース、及びプロトコルを有している。CPU3はまた、USB(インタフェース)コントローラ32を有している。
【0022】
本非接触通信デバイス1をIDデバイスとして使用する場合には、モード切り替えスイッチ12を(ID)側にスライドする。これにより例えば、外部パソコンとUSB接続された状態で、パソコンのアプリケーションとSIM2とのトランスミッション(伝達)を本非接触通信デバイス1が行う。すなわち、アプリケーションからSIM2に記憶されたIDデータを読み出すコマンドがUSBインタフェース経由で本非接触通信デバイス1のCPU3に送信され、そのコマンドを解釈して(または変換して)SIM2へ通知し、SIM2からそのデータを受け取り、USBコネクタ5経由で外部パソコンのアプリケーションへ通知するといった機能を持っている。
【0023】
CPU3は非接触コントローラ33を有し、非接触通信用コンバータ(デジタル/アナログ変換)チップ4を制御させる機能を持っている。非接触通信用コンバータチップ4には、アンテナコイル11が接続している。アンテナコイル11は、筐体10の内側に沿って敷設されているもので、ISO14443、ISO18092のキャリア周波数13.56MHzの特性に合わせられている。
【0024】
一般の非接触ICカードでは外部非接触リーダライタからのポーリング応答要求信号を受信すると、そのポーリング信号の電磁波を誘導起電力として、ICカード自体がその電力で起動し、応答を外部非接触リーダライタに返信するが、本非接触通信デバイス1の場合は他のCPUを含めて動作電力が大きいために、電磁誘導起電力では動作できない。
そこで、本発明では、電池電源7での回路駆動としてその問題を解決している。電源ボタン(電源スイッチ8)18を「ON」にされた状態で、モード切り替えスイッチ12がIDデバイスモードを選択している場合には、前記電池電源から制御回路チップ、非接触通信用コンバータチップ、及びSIMに電力を供給することによって、アンテナコイルを通じて外部非接触リーダライタとSIMとの通信が可能なIDデバイスとなる。
【0025】
すなわち、CPU3、SIM2と非接触通信用コンバータチップ4を可動状態にした段階で、外部非接触リーダライタからのポーリング応答要求を受信した場合に、その応答を返信し、外部非接触リーダライタからのIDデータ要求コマンドを受け付けて、IDデータを送出するようにしたものである。すなわち、外部非接触リーダライタとSIM2とのトランスミッションをCPU3がその仲介を行っていることになる。
【0026】
すなわち、本非接触通信デバイス1はSIM2を挿入してから、USB接続することによって、SIM用リーダライタとなり、USB接続されていない時には電源「ON」して、自身の電池電源7によって駆動することにより、SIM2を非接触IDデバイスとして使用可能ならしめるという特徴を有するものである。
電池電源7は、二次電池でも一次電池であってもよい。二次電池の場合は、充電回路35を備える必要がある。二次電池にはリチウムイオン電池等を使用できる。電池電源7は電源ボタン(スイッチ8)18を「ON」にした際に、電源供給ライン36を通じて、CPU3、非接触通信用コンバータチップ4、SIM2に供給される。USB接続している場合は、パソコンから同様にバスパワーにより電源が供給される。
【0027】
この場合は、非接触通信用コンバータチップ4に電源供給する必要はない。また、非接触通信用コンバータチップ4に電源供給してもCPU3が非接触通信用コンバータチップ4を制御して、信号遮断を行うなどにより非接触通信は行わないようにする。
タイマー(電源コントローラ)34は、電池電源の無駄な消費を防ぐために設けられたもので、その機能については後述する。
【0028】
非接触通信デバイス1は次のような使用方法が考えられる。電源ボタン(電源スイッチ8)18を「ON」にして、リーダライタ(外部非接触リーダライタ)が設置されたドアゲートにかざして、ドアを開閉して入室する。入室した部屋のパソコンにUSB接続してネットワークログインする、といった使用例が代表的である。このような使用法により、許可されたID者のみが入室し、パソコンに接続してネットワークログインすることが可能になる。他方、許可されないID者は入室もネットワークログインも禁止される。
【0029】
非接触デバイスとしての使用の典型的な例は、上記のようなドアゲートなどのゲート通過システムであるが、この場合にはデバイスの電源を「ON」にして、すばやく交信する必要がある。そのため、ゲートの外部非接触リーダライタにかざす前にデバイスに装着されたSIMをリセット解除し、SIMも非接触通信用コンバータチップ4も活性化状態にしておかねばならず、特にSIMはATR(Answer To Reset)データの送信を終えて(制御回路チップ3がATRデータを取得済み状態で)、コマンド入力待ち状態にしておくことが重要であり、最初にこの処理を行うように工夫されている。
【0030】
逆に、電源ONにしてから、外部非接触リーダライタと交信が行われなかった場合には、電池の消耗を最小限にするために、ある一定時間の交信がない場合は、制御回路チップ3が電力を遮断(停止)する機能を持たせた。ドアゲートに限らず、PC接続の卓上非接触リーダライタとの長時間の交信においても、ある一定時間の交信がない場合には、電池電源からの供給を停止する機能を持たせ、電池の無用な消耗を防ぐ工夫も行っている。
以上は、IDデバイスとして本非接触通信デバイス1を使用する場合であるが、この使用方法は前記した特許文献5のSIMホルダーと同様の内容である。
【0031】
本非接触通信デバイス1を非接触リーダライタデバイスとして使用する場合には、モード切り替えスイッチ12を(RW)側にスライドする。電源ボタン(スイッチ8)18が「ON」にされた状態で、モード切り替えスイッチ12が非接触リーダライタデバイスモードを選択している場合には、制御回路チップ3は非接触リーダライタデバイスのプログラムを遂行する。すなわち、外部パソコン等とUSB接続された状態、または非接続の状態で、他の非接触情報媒体の情報を読み取りし、また当該非接触情報媒体に対して、パソコンからのデータを書き込みする機能を非接触通信デバイス1が行う。
この場合も、PCと非接続の状態では、前記電池電源から制御回路チップ、非接触通信用コンバータチップ、及びSIMに電力を供給することは同様である。
【0032】
本発明の制御回路チップ3の非接触コントローラ33は、アクティブ(Active)モードにおいて、非接触リーダライタモードとしての機能を有する特徴がある。これにより、相手のICカード(SIM)のデータを読み取りし、また相手のメモリーに対して書き込みする機能を備える。パッシブ(Passive)モードである場合は、非接触IDデバイスとなることの違いがある。パッシブモードの場合は、自己のIDデータを相手側に読み取らせて、また自己のメモリーに書き込みさせて、IDデバイスとしての機能をすることが主体になる。IDデバイスとしての機能は特許文献5の場合と同様である。
【0033】
アクティブモードとパッシブモードでは、非接触通信デバイス1がポーリング応答要求信号を発するか否かの違いがある。すなわち、アクティブモードの非接触通信デバイス1では、応答を求めるポーリング応答要求信号を最初から発信している必要があり、パッシブモードではポーリング応答要求信号を発することはない。制御回路チップ3は、モード切り替えスイッチ12の状態を判断して、モード設定を行う。アクティブモードの場合は、非接触コントローラ33がコマンドを選択し、非接触通信用コンバータチップ4に対して、ポーリング応答要求信号発信を指示する。
ただし、アクティブモードとパッシブモードでは、制御回路チップ3自体もハード的にも異なるものとなる。例えば、インサイド コンタクトレス社の「PicoRead」などは、パッシブモードとアクティブモードの両方の機能を備えているので、これを非接触コントローラ33で切り替えコントロールすることで本発明のテバイスを実現できる。
【0034】
図3は、非接触通信デバイス間で通信を行っている状態を示す図である。2つの非接触通信デバイス1Aと1Bが接近して(2〜10cmの距離)置かれた状態にある。平面的に重なる状態でもよく、図のように略同一面に並置した状態でもよい。
非接触通信デバイス1Aのモード切り替えスイッチ12は、アクティブの非接触リーダライタモード(RW)の状態であり、非接触通信デバイス1Bは、パッシブのIDデバイスモードの状態である。この状態では、非接触通信デバイス1BのIDデータを非接触通信デバイス1Aが読み取りし、認証する状態にある。非接触通信デバイス1Aからデータを送信してデバイス1Bに書き込みするものであってもよい。非接触通信デバイス1Aからはポーリング信号が発信されていて、デバイス1Bがこれに応答信号を発した場合に通信が成立する。USB機器に接続しない状態では、双方ともに電池電源で動作する。
【0035】
図3では、非接触通信デバイス1Aは、PC100等のUSB機器に接続した状態であってもよい。PC100に接続した状態では、PC100からのバスパワーによりデバイス1Aは動作する。接続した状態で、PC100がデバイス1Bを認証し、デバイス1Bに対して必要なデータを書き込みすることができる。
【0036】
図4は、非接触通信デバイスを携帯電話にUSB接続して、非接触リーダライタとして利用している状態を示す図である。携帯電話200もUSBコネクタを有し、非接触通信デバイス1AのUSBコネクタ5を差し込みして使用することができる。
図4の状態では、非接触通信デバイス1Aが非接触リーダライタモード(RW)の状態であり、非接触通信デバイス1Bは、IDデバイスモードの状態である。
非接触通信デバイス間同士ではなく、非接触通信デバイス1Aと非接触ICカード2、または図示してないが非接触ICタグ間との交信ができることも勿論である。非接触ICカード2や非接触ICタグの場合は、アンテナコイルを内蔵するものである。また、携帯電話200に替えて他の携帯端末やPCにも接続できる。
【0037】
図5は、制御回路チップの初期フローを示す図である。
CPU3は、パワーオンリセット(S11)直後にモードチェック(ポートチェック)を行う(S12)。すなわち、IDデバイスモードであるか非接触リーダライタデバイスモードであるか否かの判断を行う(S13)。IDデバイスモードである場合(yes)は、USBレジスタチェックを行う(S14)。USBレジスタチェックは、非接触通信デバイス1が、USBに接続した状態であるか否かの判断を行う(S15)。USBに接続していなければ(no)、非接触IDモードを起動して(S16)、非接触ID通信を行う。USBに接続していれば(yes)、USB接続インターフェースを起動して(S17)、SIM2に対して接触通信(USB機器とSIM2間の)を行う。
【0038】
IDデバイスモードでない場合(no)は、非接触リーダライタデバイスモードを起動する(S18)。USBレジスタチェックを行い(S19)、非接触通信デバイス1が、USBに接続した状態であるか否かの判断を行う(S20)。
USBに接続していれば(yes)、電池電源をOFFして(S21)、非接触リーダライタアプリケーションを起動して(S22)、他の非接触通信デバイスと非接触通信を行う。USBに接続していなければ(no)、電池電源を使用して非接触リーダライタアプリケーションを起動して(S22)、他の非接触通信デバイスと非接触通信を行う。
【0039】
図6、図7は、制御回路チップの動作フローを示す図である。いずれも、図5の初期フローの前提となる動作を意味する。
電源ONの状態でCPU3は、パワーオンリセット(S11)直後に、USBコントローラ32のレジスタの状態をチェックする(S12)。すなわち、CPU3が起動した場合に、USBバスパワーでの起動か、電池電源からの起動かは、CPU3の立ち上がり直後には不明なため、レジスタがUSB接続を示していればUSBでのトランスミッションを始める状態に移行する。USB接続されていなければ、電池電源駆動であると判断して(S13)、非接触通信モードでトランスミッションを始める状態に移行する。
【0040】
図7のようにCPU3は、パワーオンリセット(S11)直後に、USBコントローラ32のレジスタの状態をチェックする(S12)。レジスタがUSB接続を示していればUSBでのトランスミッションを始める状態に移行する。電池電源駆動していても(非接触通信モードであっても)、USB接続された場合には、CPU3は一定間隔でUSBレジスタをチェックしていて、その時点でUSB接続か否かを判断し(S13)、USB接続されたと判断した場合は、電池電源7のスイッチOFF信号を送出して(S14)、電池電源7を切断してUSBモードとする。
【0041】
これによって、USB接続モードか非接触モードかのどちらのモードで駆動すべきかを判断することができ、また、電池の無駄な消費を抑えることが可能となる。このチェック動作を一定間隔(例えば、0.5秒)毎に行う。なお、図2の機能ブロック図では、電池電源スイッチのOFF信号をタイマー(電源コントローラ)34により送出するように図示されているが、どのラインからでもよい。図2のように、コントロールする場合は、タイマーのカウント値を設定値まで強制的に繰り上げて信号送出するようにする。
【0042】
次に、図8のフローチャートを参照して、IDデバイスモードにおける信号待機状態などについて説明する。
上述のようなドアーゲートシステムでの使用では、電源ボタン(電源スイッチ8)18をONにしてから(S21)、外部非接触リーダライタ6にかざして非接触通信を行うが、電源ONにした状態の直後では上述の如く、USB接続モードか非接触通信モードかの選択を行う。非接触通信モードと判断した場合には直後にSIM2をリセットし(2a)、ATR応答を得て(2b)、SIM2を稼働状態にしておく。これにより、CPU3は、ポーリング信号確認待ち状態(S22)になり、SIM2は、コマンド入力待ち状態(S23)になる。
【0043】
このようにすることによって、いつ外部非接触リーダライタ6から非接触通信用コンバータチップ4にポーリング応答要求(2c)があって、ポーリング信号受信通知(2d)が、CPU3にされても、ポーリング応答返信通知(2e)をすることができる。
非接触通信用コンバータチップ4が、外部非接触リーダライタ6にポーリング応答(2f)をすると、外部非接触リーダライタ6は、IDデータ要求コマンド(2g)を非接触通信用コンバータチップ4に返し、CPU経由SIMに送信される(2h,2i)。
SIM2は、IDデータ返信をCPU3と非接触通信用コンバータチップ4を経由して、外部非接触リーダライタ6に返信する(2j,2k,2l)。この処理フローにより、使用上では電源ONからいつでも非接触システムとして使用可能とすることができる。通常では、0.5秒以内でSIMはコマンド入力待ちの状態にすることができる。
【0044】
本デバイス(非接触通信デバイス)1は、非接触通信モードでは電池電源7を使用するが、前述のドアゲートシステムを例にすると、電池電源スイッチ8を「ON」にしてから、外部非接触リーダライタにかざさない場合も想定することができる。この場合は延々と電池が消費されるので、電池電源の無駄な消費を防ぐためにタイマー機能を搭載する。
【0045】
図9のフローチャートを参照して、タイマーの動作などについて説明する。
前記のように、SIM2をリセットし(3a)、ATR応答を得て(3b)、SIM2を稼働状態にしておく。これにより、CPU3はポーリング信号確認待ち状態(S32)になり、SIM2は、コマンド入力待ち状態(S33)になる。このように、SIM2を活性化した直後に、CPU3は、自己のタイマーをセットする(S34)。
ドアゲートなどの非接触システムを想定すると10秒が最適と言える。10秒間、何も非接触通信用コンバータチップ4からの信号がない場合は、終了シーケンスを実行して、電源スイッチにOFF信号を出力して電池電源供給を「OFF」させる。
【0046】
図8と同様に、外部非接触リーダライタ6から、ポーリング応答要求(3c)があって、非接触通信用コンバータチップ4からの、ポーリング信号受信通知(3d)を受け、ポーリング応答返信通知(3e)し、ポーリング応答(3f)する。IDデータ要求コマンド(3g,3h,3i)に対して、IDデータ返信した場合(3j,3k,3l)は、その後、タイマー34をセットする(S35)。タイマーセット後、10秒間コマンド信号入力無しを確認(S36)した場合は、CPU3は、終了シーケンス(3m)をSIM2に送信し、電源スイッチOFF信号を出力し(S37)、電池電源供給を「OFF」させる。すなわち、非接触通信が途絶えて約10秒後には、必ず電池電源を「OFF」することが可能となり、無駄な電量消費を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明では小型ICカードのSIMを使用することが、リーダライタの小型化に寄与することから、SIMを例として記述し、SIM対応として本非接触通信デバイスを説明してきたが、ICカードはSIMに限定されず、通常の札入れサイズICカードにも適用できることは、当業者には自明のことである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の非接触通信デバイスの例の外観図である。
【図2】非接触通信デバイスの機能ブロック図である。
【図3】非接触通信デバイス間で通信を行っている状態を示す図である。
【図4】非接触通信デバイスを携帯電話にUSB接続して、非接触リーダライタとして利用している状態を示す図である。
【図5】制御回路チップの初期フローを示す図である。
【図6】制御回路チップの動作フローを示す図である。
【図7】制御回路チップの動作フローを示す図である。
【図8】ポーリング信号待機状態を説明するフロー図である。
【図9】タイマーの動作を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0049】
1 非接触通信デバイス、本デバイス
2 SIM(小型ICカード)
3 制御回路チップ、CPU
4 非接触通信用コンバータチップ
5 USBコネクタ
6 外部非接触リーダライタ
7 電池電源
8 電源スイッチ
10 筐体
11 アンテナコイル
12 モード切り替えスイッチ
16 透明窓
17 LED表示
18 電源ボタン
20 基板
22 接触端子板
31 SIMコントローラ
32 USBコントローラ
33 非接触コントローラ
34 タイマー(電源コントローラ)
35 充電回路
36 電源供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIMサイズの小型ICカードが装着可能であって、USBインタフェースを有し、さらに、(1)制御回路チップと非接触通信用コンバータチップと、(2)非接触通信のためのアンテナコイルと、(3)電池電源とそのスイッチと、(4)IDデバイスと非接触リーダライタデバイスのいずれかの選択を行うモード切替スイッチと、を搭載した携帯可能なデバイスであって、前記モード切替スイッチが、
(A)IDデバイスモードを選択している場合には、前記電池電源から制御回路チップ、非接触通信用コンバータチップ、及びSIMに電力を供給することによって、アンテナコイルを通じて外部非接触リーダライタとSIMとの通信が可能なIDデバイスとなり、
(B)非接触リーダライタデバイスモードを選択している場合には、非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体との通信を可能とする、
ことを特徴とする非接触通信デバイス。
【請求項2】
非接触通信デバイスが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動するものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非接触通信モードであるかを判定し、USB接続されていなければ電池電源駆動であると判断して非接触通信モードに移行することを特徴とする請求項1記載の非接触通信デバイス。
【請求項3】
非接触通信デバイスが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動するものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非接触通信モードであるかを判定し、非接触通信モードであっても、途中からUSB接続してUSB接続モードと判定した場合は、電池電源の供給を停止することを特徴とする請求項1記載の非接触通信デバイス。
【請求項4】
非接触通信デバイスがUSB機器に接続し、USBバスパワーで駆動している状態において、(A)IDデバイスモードでは、接続しているUSB機器に対してSIMのIDデータを与え、(B)非接触リーダライタデバイスモードでは、非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体と通信する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項記載の非接触通信デバイス。
【請求項5】
非接触通信デバイスがUSB機器に接続しないで、前記電池電源により駆動している状態において、(A)IDデバイスモードでは、外部非接触リーダライタに対してSIMのIDデータを与え、(B)非接触リーダライタデバイスモードでは、非接触通信のリーダライタとして他の非接触通信媒体と通信する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項記載の非接触通信デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−151435(P2009−151435A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327178(P2007−327178)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】